(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110463
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】温度分布情報取得装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01K 11/30 20060101AFI20230802BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230802BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01K11/30
A61B5/00 G
A61B6/03 370A
A61B6/03 360Z
A61B6/03 377
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011936
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】原 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】水上 慎也
【テーマコード(参考)】
4C093
4C117
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA25
4C093AA26
4C093CA37
4C093FD11
4C093FF03
4C093FF08
4C093FF09
4C093FF28
4C093FF35
4C093FG01
4C117XA07
4C117XB01
4C117XD27
4C117XE23
4C117XE44
4C117XG22
4C117XG24
4C117XJ01
4C117XK05
4C117XR07
(57)【要約】
【課題】画像ノイズの影響を低減した温度分布情報を取得することができる温度分布情報取得装置を提供する。
【解決手段】温度分布情報取得装置は、CT画像から検査対象のCT値のばらつきを算出する算出部と、前記検査対象のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、前記CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて前記検査対象についての温度分解能を設定する設定部と、前記変換テーブルを用いて前記CT画像における前記検査対象のCT値を温度に変換する変換部と、設定した前記温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、前記検査対象の前記温度の分布を画像化した温度分布情報を生成する生成部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT画像から検査対象のCT値のばらつきを算出する算出部と、
前記検査対象のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、前記CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて前記検査対象についての温度分解能を設定する設定部と、
前記変換テーブルを用いて前記CT画像における前記検査対象のCT値を温度に変換する変換部と、
設定した前記温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、前記検査対象の前記温度の分布を画像化した温度分布情報を生成する生成部と、
を備える温度分布情報取得装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記検査対象内の関心領域の指定を受け付けて、当該関心領域内における前記CT値のばらつきを算出する、
請求項1に記載の温度分布情報取得装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記温度範囲毎に異なる色を設定したルックアップテーブルを作成し、当該ルックアップテーブルを用いて前記温度分布情報を生成する、
請求項1または2に記載の温度分布情報取得装置。
【請求項4】
前記CT画像に画像ノイズを低減するための画像処理を行う画像処理部をさらに備え、
前記算出部は、前記画像処理後の前記CT画像から前記検査対象の前記CT値のばらつきを算出し、
前記変換部は、前記画像処理後の前記CT画像における前記検査対象のCT値を前記温度に変換する、
請求項1から3の何れか一項に記載の温度分布情報取得装置。
【請求項5】
前記温度分布情報を前記CT画像に重畳して表示する表示部をさらに備える、
請求項1から4の何れか一項に記載の温度分布情報取得装置。
【請求項6】
CT画像から検査対象のCT値のばらつきを算出するステップと、
前記検査対象のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、前記CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて前記検査対象についての温度分解能を設定するステップと、
前記変換テーブルを用いて前記CT画像における前記検査対象のCT値を温度に変換するステップと、
設定した前記温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、前記検査対象の前記温度の分布を画像化した温度分布情報を生成するステップと、
を温度分布情報取得装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度分布情報取得装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線CT装置が測定した対象物の各部(例えば筋肉および脂肪)のCT値を温度に換算して、対象物の温度分布情報を取得する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線CT装置が撮影した画像にはノイズが多く含まれるため、その影響に起因するCT値のバラツキ(標準偏差)が発生し、CT値から換算した温度値にもバラツキが反映される。特許文献1に記載の装置で取得した温度分布情報において、温度値に色付け(mapping)をした画像情報を生成した場合、画像ノイズの影響による実際の温度と異なる表示色が示される可能性がある。すなわち、各部位の温度値を正確に認識することが困難となる可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、画像ノイズの影響を低減した温度分布情報を取得することができる温度分布情報取得装置およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の第1の態様によれば、温度分布情報取得装置は、CT画像から検査対象のCT値のばらつきを算出する算出部と、前記検査対象のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、前記CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて前記検査対象についての温度分解能を設定する設定部と、前記変換テーブルを用いて前記CT画像における前記検査対象のCT値を温度に変換する変換部と、設定した前記温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、前記検査対象の前記温度の分布を画像化した温度分布情報を生成する生成部と、を備える。
【0007】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る温度分布情報取得装置において、前記算出部は、前記検査対象内の関心領域の指定を受け付けて、当該関心領域内における前記CT値のばらつきを算出する。
【0008】
(3)本開示の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る温度分布情報取得装置において、前記生成部は、前記温度範囲毎に異なる色を設定したルックアップテーブルを作成し、当該ルックアップテーブルを用いて前記温度分布情報を生成する。
【0009】
(4)本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る温度分布情報取得装置は、前記CT画像に画像ノイズを低減するための画像処理を行う画像処理部をさらに備え、前記算出部は、前記画像処理後の前記CT画像から前記検査対象の前記CT値のばらつきを算出し、前記変換部は、前記画像処理後の前記CT画像における前記検査対象のCT値を前記温度に変換する。
【0010】
(5)本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る温度分布情報取得装置は、前記温度分布情報を前記CT画像に重畳して表示する表示部をさらに備える。
【0011】
(6)本開示の第6の態様によれば、プログラムは、CT画像から検査対象のCT値のばらつきを算出するステップと、前記検査対象のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、前記CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて前記検査対象についての温度分解能を設定するステップと、前記変換テーブルを用いて前記CT画像における前記検査対象のCT値を温度に変換するステップと、設定した前記温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、前記検査対象の前記温度の分布を画像化した温度分布情報を生成するステップと、を温度分布情報取得装置に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る温度分布情報取得装置およびプログラムによれば、画像ノイズの影響を低減した温度分布情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の温度分布情報取得システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の温度分布情報取得装置のプロセッサの機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の温度分布情報取得装置の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
【
図4】本発明の温度分布情報取得装置の機能を説明するための第1の図である。
【
図5】本発明の変換テーブルの一例を示す図である。
【
図6】本発明の器官毎の温度分解能の一例を示す図である。
【
図7】本発明の温度分布情報取得装置の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
【
図8】本発明の温度分布情報取得装置の機能を説明するための第2の図である。
【
図9】本発明の変形例における温度分布情報取得装置のプロセッサの機能構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る温度分布情報取得システム1および温度分布情報取得装置20について、
図1~
図8を参照しながら説明する。
【0015】
(温度分布情報取得システムの全体構成)
図1は、本発明の温度分布情報取得システムの全体構成を示す図である。
本発明に係る温度分布情報取得システム1は、検査対象の内部の温度分布を画像表示するシステムである。検査対象は、例えば、温熱療法、焼灼術、凍結療法などの治療を受ける患者などの生体である。なお、検査対象は人間に限られることはなく、他の実施形態では動物を検査対象としてもよい。また、さらに他の実施形態は、食品(例えば、発酵食品)などの非生体を検査対象としてもよい。なお、本実施形態では、検査対象が生体である態様を例として説明する。
図1に示すように、温度分布情報取得システム1は、X線CT(Computed Tomography)装置10と、温度分布情報取得装置20とを備えている。
【0016】
X線CT装置10は、生体にX線を照射し、X線透過量(生体を透過したX線の量)を測定する。X線CT装置10は、複数の方向から生体にX線を照射して方向毎にX線透過量を測定し、測定結果を解析して生体の各部におけるCT値を算出する。そして、X線CT装置10は、算出したCT値を検出可能なCT画像を温度分布情報取得装置20へ送信する。X線CT装置10として、既存のX線CT装置を用いることができる。
【0017】
CT値は、X線を吸収する度合いを、空気の場合を-1000とし、水の場合を0とした相対値で示す値であり、単位としてHU(Hounsfield Unit)が用いられる。CT値を算出する方法は、例えば特許文献1に記載の方法を用いることができる。
【0018】
温度分布情報取得装置20は、X線CT装置10から受信したCT値に基づいて、生体の温度分布情報を算出し、対象物の温度分布を画像にて表示する。
図1に示すように、温度分布情報取得装置20は、例えばプロセッサ200、メモリ201、ストレージ202、インタフェース203、表示部204、および操作受付部205からなるコンピュータを用いて構成される。
【0019】
プロセッサ200は、温度分布情報取得装置20の動作全体を司る。
【0020】
メモリ201は、プロセッサ200がプログラムに基づいて動作するための命令及びデータが展開される。
【0021】
ストレージ202は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などであってよい。
【0022】
インタフェース203は、X線CT装置10と通信可能に接続するためのインタフェース(通信インタフェース)である。
【0023】
表示部204は、温度分布情報を表示するディスプレイである。
【0024】
操作受付部205は、温度分布情報取得装置20の操作者による入力操作を受け付ける入力デバイスであり、例えば、一般的なマウス、キーボード、タッチセンサなどであってよい。
【0025】
(温度分布情報取得装置の機能構成)
図2は、本発明の温度分布情報取得装置のプロセッサの機能構成を説明するためのブロック図である。
図2に示すように、温度分布情報取得装置20のプロセッサ200は、所定のプログラムにしたがって動作することにより、算出部2001、設定部2002、変換部2003、および生成部2004としての機能を発揮する。
【0026】
算出部2001は、CT画像から生体のCT値のばらつきを算出する。
【0027】
設定部2002は、生体のCT値と温度との関係を表す変換テーブルを用いて、CT値のばらつきを温度のばらつきに変換し、当該温度のばらつきに基づいて生体についての温度分解能を設定する。
【0028】
変換部2003は、変換テーブルを用いてCT画像における生体のCT値を温度に変換する。
【0029】
生成部2004は、設定した温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様で、生体の温度の分布を画像化した温度分布情報を生成する。生成部2004は、例えば、温度範囲毎に異なる色を設定したルックアップテーブルを作成し、当該ルックアップテーブルを用いて温度分布情報を生成する。
【0030】
(温度分布情報取得装置の処理フロー)
図3は、本発明の温度分布情報取得装置の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
まず、
図3を参照しながら、温度分布情報取得装置20による温度分解能設定処理の流れについて詳細に説明する。ここでは、温度分布情報取得装置20が、温熱療法、焼灼術、凍結療法などの治療を受ける患者の体内(特に、治療を施す部位)の温度分布情報を取得する例について説明する。
【0031】
温度分布情報取得装置20は、X線CT装置10からCT画像を取得する(ステップS01)。このCT画像は、温度分布情報取得装置20の表示部204に表示される。
【0032】
次に、温度分布情報取得装置20の操作受付部205は、操作者によるCT画像上の対象領域R1および関心領域R2を指定する操作を受け付ける(ステップS02)。
【0033】
図4は、本発明の温度分布情報取得装置の機能を説明するための第1の図である。
図4に示すように、表示部204には、X線CT装置10から取得した患者のCT画像が表示されている。操作者は、表示部204に表示されたCT画像を見ながら、患者の温度分布情報を生成する対象領域R1、および関心領域R2を指定する操作を行う。対象領域R1は、例えば、治療を施す器官を示す領域である。関心領域R2は、対象領域R1内においてCT値がより均一に近い領域であり、例えば、操作者がCT画像を目視確認して、関心領域R2を設定する位置を決める。
【0034】
このとき、対象領域R1および関心領域R2の範囲は、操作者が操作受付部205(マウスなど)を使って手動で指定してよい。
【0035】
また、操作者がCT画像上のポイントを指定する操作を行うと、温度分布情報取得装置20の算出部2001がそのポイントに基づいて対象領域R1および関心領域R2の範囲を自動的に設定するようにしてもよい。例えば、算出部2001は、既知の画像処理を使ってCT画像上の指定されたポイントの周囲に存在する器官(例えば、筋肉、脂肪、肝臓、腎臓など)の輪郭を抽出し、この輪郭内の領域を対象領域R1として設定する。また、算出部2001は、CT画像上の指定されたポイントから所定距離の円形領域を関心領域R2として設定する。所定距離は、予め器官毎に固定値が設定されていてもよいし、操作者が任意の値を指定してもよい。また、関心領域は円形に限られることはなく、矩形など他の形状であってもよい。
【0036】
なお、対象領域R1は複数設定されてもよい。また対象領域R1が複数設定された場合、対象領域R1それぞれについて1箇所ずつ関心領域R2が設定される。
【0037】
次に、算出部2001は、対象領域R1の関心領域R2内のCT値のばらつきを算出する(ステップS03)。ここでは、算出部2001は、CT値の標準偏差SD(σCT)を算出する。
【0038】
なお、算出部2001は、複数の対象領域R1(例えば、器官T1~T4の4つ)が設定されている場合、各対象領域R1について、CT値の標準偏差SD(σCT1~σCT4)を算出する。
【0039】
また、設定部2002は、CT値のばらつきを、温度のばらつきに変換する(ステップS04)。具体的には、設定部2002は、以下の式(1)により、CT値の標準偏差SD(σCT)を温度の標準偏差SD(σT)に変換する。
【0040】
【0041】
なお、式(1)において、f´(T)はCT値と温度の関係を表す関数f(T)(以下、「変換テーブル」とも記載する。)の傾きである。
【0042】
図5は、本発明の変換テーブルの一例を示す図である。
図5は、生体の複数の器官T1~T4それぞれのCT値と温度との関係を線形近似したグラフである。例えば、器官T1~T4は、それぞれ肝臓、筋肉、腎臓、脂肪である。これらのグラフは、事前に各器官T1~T4(例えば、肝臓、筋肉、腎臓、脂肪)のCT値および温度の計測値に基づき求めておいたものであり、CT値から温度への変換に用いる変換テーブルとして、ストレージ202に記録されている。変換テーブルは、全ての患者に対し同じものを使用してよい。
【0043】
また、例えば性別、年齢、身長、体重などで分類したグループ毎に変換テーブルを用意しておき、患者が属するグループに対応する変換テーブルを使用してもよい。
【0044】
例えば、ステップS02において、器官T1が対象領域R1として設定されたとする。この場合、設定部2002は、器官T1の変換テーブルの傾きf´(T)を用いて、器官T1のCT値の標準偏差SD(σCT)を、温度の標準偏差SD(σT)に変換する。
【0045】
なお、設定部2002は、複数の対象領域R1(例えば、器官T1~T4の4つ)が設定されている場合、各対象領域R1について、CT値の標準偏差SD(σCT1~σCT4)を温度の標準偏差SD(σT1~σT4)に変換する。
【0046】
次に、設定部2002は、温度の標準偏差SD(σT)に基づいて、対象領域R1における温度分解能を設定する(ステップS05)。例えば、設定部2002は、温度の標準偏差SD(σT)の2倍の値である、2σT(すなわち、±σTの範囲)を対象領域R1の温度分解能として設定する。
【0047】
図6は、本発明の器官毎の温度分解能の一例を示す図である。
図6の例のように、複数の対象領域R1(例えば、器官T1~T4の4つ)が設定されている場合、設定部2002は、各対象領域の温度分解能を設定する。
【0048】
図6の例では、設定部2002は、算出部2001が算出した器官T1のCT値の標準偏差SD(σ
CT1=1.3)と、器官T1の変換テーブルの傾き(-0.5)とを上記した式(1)に代入し、温度の標準偏差SD(σ
T1=2.6)に変換する。また、設定部2002は、器官T1の温度分解能を2σ
Tである「5.2」に設定する。同様に、設定部2002は、他の対象領域R1(器官T2、T3、T4)の温度分解能をそれぞれ設定する。
【0049】
なお、1つのCT画像に複数の対象領域R1が含まれる場合、設定部2002は、これら複数の対象領域R1のうち最も温度分解能が大きい(悪い)ものに合わせて、CT画像全体に適用する1つの温度分解能を設定してもよい。
図6の例では、設定部2002は、器官T3の温度分解能(9.4)が最大となるため、この器官T3の温度分解能を切り上げた値(10.0)をCT画像全体の温度分解能として設定する。
【0050】
温度分布情報取得装置20は、
図3に示す一連の処理を、例えば患者の治療を行う直前に1回実施する。また、温度分布情報取得装置20は、他の患者の治療を行う際には、改めて
図3の一連の処理を実施して、患者に応じた温度分解能を設定する。
【0051】
また、患者の治療中にX線CT装置10の撮影条件などを変更した場合、CT値のばらつきが変化する可能性がある。この場合、温度分布情報取得装置20は、
図3の一連の処理を再度実施して、この患者についての温度分解能を更新してもよい。
【0052】
図7は、本発明の温度分布情報取得装置の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
次に、
図7を参照しながら、温度分布情報取得装置20による温度分布情報生成処理の流れについて詳細に説明する。
図3の一連の処理によって温度分解能の設定が完了すると、温度分布情報取得装置20は、治療時における対象領域の温度分布情報生成処理を実行する。
【0053】
まず、
図7に示すように、温度分布情報取得装置20は、X線CT装置10からCT画像を取得する(ステップS11)。このCT画像は、温度分布情報取得装置20の表示部204に表示される。
【0054】
次に、変換部2003は、対象領域R1の変換テーブルf(T)を用いて、対象領域R1のCT値を温度に変換する(ステップS12)。
【0055】
次に、生成部2004は、設定部2002が設定した温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる色を割り当てたルックアップテーブルD1(
図8)を作成し、このルックアップテーブルD1を用いて対象領域R1の温度の分布を色分けした温度分布情報D2(
図8)を生成する(ステップS13)。
【0056】
図8は、本発明の温度分布情報取得装置の機能を説明するための第2の図である。
図8に示すように、ルックアップテーブルD1は、所定の温度範囲を温度分解能2σ
T毎の階調に分割し、階調毎に異なる色を設定したテーブルである。
図8の例では、温度範囲は-20℃~60℃であり、温度分解能は10.0℃である。したがって、ルックアップテーブルD1は8つの階調に分割され、それぞれに異なる色が設定される。
図8に示すように、ルックアップテーブルD1は、操作者が色と温度の対応を理解できるように、表示部204に表示されてもよい。また、ルックアップテーブルD1には、CT画像を撮影したときの患者の体温を示す情報が含まれていてもよい。
【0057】
生成部2004は、ルックアップテーブルD1を参照し、対象領域R1の各部(各ピクセル)を、温度に対応する色で塗った画像である温度分布情報D2を生成する。
【0058】
また、表示部204は、CT画像上に、生成部2004が生成した温度分布情報D2を重畳表示する(ステップS14)。これにより、操作者は、CT画像上において、対象領域R1(患者の治療部位)の温度分布を容易に把握することができる。
【0059】
なお、温度分布情報取得装置20は、例えば患者に温熱療法を実施する前、実施中、および実施後の各時点でCT画像を撮影する度に、
図7に示す一連の処理を実施するようにしてもよい。これにより、操作者は、治療部位が適切な温度となっているかを確認しながら、治療を行うことができる。
【0060】
(温度分布情報取得装置の作用効果)
以上のように、本発明に係る温度分布情報取得装置20は、CT画像における生体(検査対象)のCT値のばらつきを温度のばらつきを求め、この温度のばらつきに基づいて生体についての温度分解能を設定する。また、温度分布情報取得装置20は、温度分解能に基づく温度範囲毎に異なる表示態様(色)で、生体のCT値から変換した温度の分布を画像化した温度分布情報を生成する。
【0061】
このようにすることで、温度分布情報取得装置20は、画像ノイズに起因する温度のばらつきを低減した温度分布情報を取得することができる。
【0062】
また、温度分布情報取得装置20は、この温度分布情報をCT画像に重畳表示する。
【0063】
このようにすることで、温度分布情報取得装置20は、温熱療法などの治療により、生体内の温度分布が適切な状態になっているかを、操作者に容易に把握させることができる。
【0064】
<変形例>
図9は、本発明の変形例における温度分布情報取得装置のプロセッサの機能構成を説明するためのブロック図である。
図9に示すように、変形例に係る温度分布情報取得装置20のプロセッサ200は、画像処理部2005としての機能をさらに発揮してもよい。
【0065】
画像処理部2005は、X線CT装置10から受信したCT画像に画像ノイズを低減させるための画像処理を行う。画像処理は、例えば平滑化処理である。
【0066】
本発明の変形例において、画像処理部2005は、
図3のステップS01において、X線CT装置10から取得したCT画像に対し、画像ノイズを低減させるための画像処理(平滑化処理など)を行う。この場合、
図3のステップS03において、算出部2001は、画像処理後のCT画像に基づいてCT値のばらつきを算出する。
【0067】
同様に、画像処理部2005は、
図7のステップS11において、X線CT装置10から取得したCT画像に対し、画像ノイズを低減させるための画像処理を行う。この場合、
図7のステップS12において、変換部2003は、画像処理後のCT画像に基づいてCT値から温度への変換を行う。
【0068】
このようにすることで、温度分布情報取得装置20は、より画像ノイズの影響を低減した温度分布情報を取得することができる。
【0069】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 温度分布情報取得システム
10 X線CT装置
20 温度分布情報取得装置
200 プロセッサ
2001 算出部
2002 設定部
2003 変換部
2004 生成部
2005 画像処理部
201 メモリ
202 ストレージ
203 インタフェース
204 表示部
205 操作受付部