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特開2023-110471工作機械用工具交換装置および工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110471
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】工作機械用工具交換装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20230802BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B23Q3/155 G
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011945
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 明
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002AA08
3C002BB02
3C002DD14
3C002GG02
3C002KK04
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】主軸に取り付ける工具を多数収納しつつ小型化でき、工具交換を効率良く行うことができる工作機械用工具交換装置および工作機械を提供する。
【解決手段】工具交換装置2は、第1のマガジン4と、第1のマガジン4の後方に並んで配置された第2のマガジン3と、マガジン3,4が配置された第1領域A1と加工が行われる第2領域A2とを区画する隔壁としての下壁61と、を備える。下壁61は、第1領域A1と第2領域A2とを連通させる開口を有する。マガジン3,4は、回転可能なマガジン本体31,41と、複数の工具保持部5と、をそれぞれ有する。第2のマガジン3のマガジン本体31は、外周の一部が切り欠かれた切欠部を有する。工具保持部5は、マガジン本体31,41における切欠部以外の外周側に設けられている。第2のマガジン3のマガジン本体31における切欠部以外の外周側に、前記開口を開閉するシャッタ7が取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に取り付けた工具を交換するための工作機械用工具交換装置であって、
前記工具を収納可能な第1のマガジンと、
前記主軸の軸方向に沿う先端側を前方、基端側を後方とした場合に前記第1のマガジンの後方に並んで配置され、前記工具を収納可能な第2のマガジンと、
前記第1のマガジンおよび前記第2のマガジンが配置された第1領域と、前記主軸に取り付けた前記工具による加工が行われる第2領域とを区画する隔壁と、を備え、
前記隔壁は、前記第1領域と前記第2領域とを連通させる開口を有し、
前記第1のマガジンおよび前記第2のマガジンは、前記主軸の軸方向に平行な中心軸を中心として回転可能なマガジン本体と、前記マガジン本体に設けられた複数の工具保持部と、をそれぞれ有し、
前記第2のマガジンの前記マガジン本体は、外周の一部が切り欠かれた切欠部を有し、
前記工具保持部は、前記マガジン本体における前記切欠部以外の外周側に設けられ、
前記第2のマガジンの前記マガジン本体における前記切欠部以外の外周側に、前記開口を開閉するシャッタが取り付けられていることを特徴とする工作機械用工具交換装置。
【請求項2】
前方から見て、前記第2のマガジンの前記マガジン本体の中心軸と前記切欠部の中央とを結ぶ直線と、該中心軸と前記シャッタの中央とを結ぶ直線との間の角度は、90度以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械用工具交換装置。
【請求項3】
複数の前記マガジン本体は、中心軸が同一直線上に配置されており、外接円の直径が等しいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工作機械用工具交換装置。
【請求項4】
前記主軸は、前方から見て所定の間隔を置いて複数配置されており、
複数の前記工具保持部は、前方から見て前記主軸と同じ間隔を置いて配置された前記主軸と同じ個数の前記工具保持部を複数組有し、
前記主軸と同じ個数の前記工具保持部は、前方から見て前記マガジン本体の中心と前記主軸と同じ個数の前記工具保持部の並び方向の中央とを結ぶ直線に平行な中心線をそれぞれ有し、
前記主軸と同じ個数の前記工具保持部のうちの隣り合う前記工具保持部の間には、隣の組の前記主軸と同じ個数の前記工具保持部のうちの一つが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の工作機械用工具交換装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工作機械用工具交換装置を備えることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用工具交換装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
自動工具交換装置(ATC)を備える工作機械には、ワークの加工に用いられる複数の工具を保持するマガジンが設けられている。マガジンは、例えば、回転可能な円盤状のマガジン本体と、マガジン本体の外周側に設けられた複数の工具保持部とを有している。工作機械は、工作機械の主軸に取り付けられた工具と、マガジンに収納された工具とを自動的に交換しながら、ワークに種々の加工を連続して施す。
【0003】
特許文献1には、マガジン配置領域と加工時移動領域とを隔てる隔壁を設けると共に、該隔壁に開口を形成し、マガジン本体に、該マガジンの旋回に伴って前記開口を開閉するシャッタを着脱可能に装着した自動工具交換装置が開示されている(引用文献1の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-012307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の工具交換装置は、シャッタを開いた状態で工具交換を行い、シャッタを閉じた状態で加工を行うことで、切り屑がマガジン側に飛散するのを防止している。この工具交換装置では、次工程工具を工具交換位置に割り出すことによりシャッタが自動的に開位置に移動させることができ、シャッタ専用の駆動機構およびシャッタの開閉を検知するセンサを不要にできる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の工具交換装置では、マガジン本体の外周側に工具保持部が設けられているため、主軸に取り付ける工具を多数収納する場合には、マガジン本体の径が大きくなってしまう。このため、工具交換装置が大型化し、これを搭載する工作機械の設置スペースを広く確保する必要があるという大きな制約が発生する。また、マガジン本体が大径化すると動作速度が遅くなって工作機械の非加工時間が増加するため、生産性が低下する。
【0007】
この問題を解決するために、主軸の軸方向に沿って複数のマガジンを並べて配置する構成が考えられる。しかし、複数のマガジンの各々にシャッタを取り付けると、工具交換の際に、シャッタ開閉のために複数のマガジン本体の回転制御をそれぞれ行う必要がある。また、工具交換のために主軸が一方のマガジン本体の工具保持部に接近する際に、主軸がシャッタおよび他方のマガジン本体に干渉しないようにする必要がある。
【0008】
本発明は、主軸に取り付ける工具を多数収納しつつ小型化でき、工具交換を効率良く行うことができる工作機械用工具交換装置および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、工作機械の主軸に取り付けた工具を交換するための工作機械用工具交換装置である。前記工作機械用工具交換装置は、前記工具を収納可能な第1のマガジンと、前記工具を収納可能な第2のマガジンと、隔壁と、を備えている。前記第2のマガジンは、前記主軸の軸方向に沿う先端側を前方、基端側を後方とした場合に前記第1のマガジンの後方に並んで配置されている。前記隔壁は、前記第1のマガジンおよび前記第2のマガジンが配置された第1領域と、前記主軸に取り付けた前記工具による加工が行われる第2領域とを区画する。前記隔壁は、前記第1領域と前記第2領域とを連通させる開口を有している。前記第1のマガジンおよび前記第2のマガジンは、前記主軸の軸方向に平行な中心軸を中心として回転可能なマガジン本体と、前記マガジン本体に設けられた複数の工具保持部と、をそれぞれ有している。前記第2のマガジンの前記マガジン本体は、外周の一部が切り欠かれた切欠部を有している。前記工具保持部は、前記マガジン本体における前記切欠部以外の外周側に設けられている。前記第2のマガジンの前記マガジン本体における前記切欠部以外の外周側に、前記開口を開閉するシャッタが取り付けられている。
また、本発明は、前記工作機械用工具交換装置を備えることを特徴とする工作機械である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主軸に取り付ける工具を多数収納しつつ小型化でき、工具交換を効率良く行うことができる工作機械用工具交換装置および工作機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械用工具交換装置を搭載した工作機械を示す側面図である。
図2図1に示す工具交換装置を搭載した工作機械の正面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV-IVに沿う断面図である。
図5】シャッタが閉じた状態における工具交換装置を右前方の斜め上から見た、カバーの一部を破断して示す斜視図である。
図6】シャッタが閉じた状態におけるマガジンを左後方の斜め下から見た斜視図である。
図7図3においてシャッタが開いた状態を示す断面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図であり、図4においてシャッタが開いた状態を示す。
図9図5においてシャッタが開いた状態を示す斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る工具交換装置を搭載した工作機械の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素または同種の構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る工作機械用工具交換装置(以下、単に「工具交換装置」ともいう)を搭載した工作機械100を示す側面図である。図2は、図1に示す工具交換装置2を搭載した工作機械100の正面図である。以下、説明の都合上、主軸11の軸方向に沿う先端側を前方、その反対側である基端側を後方とする。図1図2において、X軸方向は左右方向(横方向)、Y軸方向は上下方向(鉛直方向)、Z軸方向は前後方向(奥行き方向)に相当する。
【0014】
図1図2に示すように、本実施形態では、工作機械100は、主軸11を有している。この工作機械100は、主軸11が水平方向に沿うように配置される横形の工作機械である。
【0015】
工作機械100は、ベース101と、コラム102と、サドル103と、主軸装置1と、ワーク支持装置104と、工具交換装置2と、制御装置(図示せず)とを備えている。主軸装置1は、主軸11を有しており、主軸11はモータ(図示せず)によって回転させられる。
【0016】
ベース101には、コラム102がベース101に対してX軸方向(左右方向)に移動可能に設けられている。コラム102は、モータ(図示せず)によるねじ軸106の正逆回転によってねじ送りされることで、X軸方向に沿って移動させられる。サドル103は、コラム102に対してY軸方向(上下方向)に移動可能に設けられている。サドル103は、モータ107によるねじ軸(図示せず)の正逆回転によってねじ送りされることで、Y軸方向に沿って移動させられる。主軸装置1は、サドル103に対してZ軸方向(前後方向)に移動可能に設けられている。主軸装置1は、サドル103に取り付けられたモータ108によるねじ軸109の正逆回転によってねじ送りされることで、Z軸方向に沿って移動させられる。
【0017】
ワーク支持装置104は、加工対象のワークWを支持する。ワーク支持装置104は、ワークWを保持するワーク保持部105を備えている。ワーク保持部105は、例えば、X軸に平行な軸を中心として揺動可能に、Y軸に平行な軸を中心として旋回可能に構成される。
【0018】
工作機械100は、主軸装置1における回転する主軸11の先端に取り付けた工具Tによって、ワークWに対して加工を行う。また、工具交換装置2によって、工具Tの交換動作が行われるようになっている。工作機械100の各部の動作は、制御装置(図示せず)によって統括的に制御される。
【0019】
図1に示すように、工具Tは、主軸11に取り付けられるホルダTaと、ホルダTaに固定される刃部Tbとから構成されている。主軸11の先端部には、工具Tが取り外し可能に装着される。なお、理解の容易化のため、図1図2は、前方のマガジン4と後方のマガジン3とにそれぞれ1本ずつの工具Tが保持された図とした。
【0020】
図1図2に示すように、工具交換装置2は、工作機械100の主軸11に取り付けた工具Tを交換するための工作機械用工具交換装置である。工具交換装置2は、本実施形態では、前後方向に並んで配置された2個のマガジン3,4と、マガジン3,4を収容するカバー6とを備えている。マガジン3,4は、工具Tを収納可能に構成されている。ここでは、マガジン4は、前方のマガジン(第1のマガジン)、マガジン3は、後方のマガジン(第2のマガジン)に相当する。
【0021】
図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図3のIV-IVに沿う断面図である。図5は、シャッタ7が閉じた状態における工具交換装置2を右前方の斜め上から見た、カバー6の一部を破断して示す斜視図である。図6は、シャッタ7が閉じた状態におけるマガジン3,4を左後方の斜め下から見た斜視図である。ただし、図3図4では、主軸装置1および工具交換装置2以外の部材の図示を省略し、断面で示す部材はカバー6のみとした。また、カバー6の厚みは誇張して大きく表した。
【0022】
図4に示すように、マガジン3,4は、マガジン本体31,41と、複数の工具保持部5と、モータ32,42と、をそれぞれ有している。マガジン本体31,41は、主軸11の軸方向に平行な中心軸CLを中心としてそれぞれ独立して回転可能な板状体である。マガジン本体31,41は、本実施形態では、前方から見て円盤状を呈している。
【0023】
工具保持部5は、マガジン本体31,41に設けられている。工具保持部5は、工具TのホルダTaを例えば弾性力により挟み込むことによって、工具Tを保持する。モータ32,42は、マガジン本体31,41を、中心軸CLを中心としてそれぞれ独立して所定角度回転させることができる。図1に示すように、モータ32,42は、ベース101上に設置された門型の支持部111,112の上にそれぞれ固定されている。
【0024】
図6に示すように、後方のマガジン3のマガジン本体31は、外周の一部が切り欠かれた切欠部33を有している。ここでは、切欠部33は、マガジン本体31の外周の一部が直線状にカットされた平坦部である。ただし、切欠部33は、このような形状に限定されるものではなく、例えば外周の一部が内側に凹状に切り欠かれて形成された凹状部であってもよい。つまり、切欠部33は、主軸11が工具交換のために前方のマガジン4に近接離反することを許容するための逃げ構造として機能する。
【0025】
本実施形態では、工具保持部5は、マガジン本体31,41における切欠部33以外の外周側に設けられている。ここでは、工具保持部5は、後方のマガジン本体31の切欠部33以外の外周側に14個設けられており(図6参照)、前方のマガジン本体41の外周側に24個設けられている(図3参照)。なお、マガジン本体31,41に設けられる工具保持部5の個数は適宜変更可能である。
【0026】
図4に示すように、2個のマガジン本体31,41は、中心軸CLが同一直線上に配置されており、外接円の直径(ここでは外径)が等しいことが好ましい。マガジン本体31,41は、ここでは円盤状を呈しているが、例えば多角形状を呈していてもよい。
【0027】
図3図5に示すように、カバー6は、外形が直方体の箱状を呈しており、下壁61、上壁62、左壁63、右壁64、前壁65および後壁66を備えている。カバー6は、例えば支持部112に固定されている。下壁61は、2個のマガジン3,4が配置された第1領域A1(図1参照、以下同様)と、主軸11に取り付けた工具Tによる加工が行われる第2領域A2(図1参照、以下同様)とを区画する隔壁を構成している。なお、カバー6を構成する下壁61以外の壁のいずれかは省略されてもよい。
【0028】
下壁61は、第1領域A1と第2領域A2とを連通させる開口67を有している。開口67は、下壁61の後端から前方に延びて形成された例えば矩形状の孔であり、開口67の後端は後方に向けて開放されている。また、後壁66は、第1領域A1とその後方の領域とを連通させる開口68(図4参照、以下同様)を有している。開口68は、後壁66の下端から上方に延びて形成された例えば矩形状の孔であり、開口68の下端は下方に向けて開放されている。つまり、開口67,68は、主軸11が工具交換のためにマガジン3,4に近接離反することを許容するための逃げ構造として機能する。
【0029】
下壁61の開口67は、シャッタ7によって開閉される。シャッタ7は、後方のマガジン本体31における切欠部33以外の外周側に取り付けられている。シャッタ7は、開口67を閉じた状態で覆う本体部71と、本体部71の後端側と後方のマガジン本体31とを接続する接続部72とを有している。本体部71は、前方から見て後方のマガジン本体31の中心軸CLを中心とした円筒の一部を構成している。
【0030】
図6に示すように、本実施形態では、シャッタ7は、切欠部33の近傍に取り付けられる。具体的には、前方から見て、後方のマガジン本体31の中心軸CLと切欠部33の中央とを結ぶ直線R1と、中心軸CLとシャッタ7の中央とを結ぶ直線R2との間の角度αは、90度以下に設定されている(図7参照)。
【0031】
次に、このように構成された工作機械100の動作について説明する。
例えば、マガジン本体31,41の各工具保持部5に、各種の工具Tがそれぞれ保持されているとする。ここでは、後方のマガジン3には14個の工具Tが収納され、前方のマガジン4には24個の工具Tが収納される。
【0032】
まず、工具Tが未だ取り付けられていない状態の主軸11に、前方のマガジン4に収納された工具Tが取り付けられる場合の動作の一例について説明する。
図3図5に示すように、初期状態では、後方のマガジン本体31のシャッタ7は、下方位置にあって、下壁61の開口67を閉じているとする。このとき、図6に示すように、後方のマガジン本体31の切欠部33は、略左方位置にある。
【0033】
図7は、図3においてシャッタ7が開いた状態を示す断面図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う断面図であり、図4においてシャッタが開いた状態を示す。図9は、図5においてシャッタ7が開いた状態を示す斜視図である。
【0034】
主軸11に前方のマガジン4に収納された工具Tを取り付ける場合、図7図9に示すように、後方のマガジン3のマガジン本体31は、切欠部33が下方位置に来るように回転させられる。これに伴って同時に、シャッタ7が略右方位置に来て、下壁61の開口67を開ける。また、図8に示す待機位置にある主軸装置1は、主軸11が前方のマガジン4に収納された取付対象の工具Tの保持高さに一致するまで上昇させられる。この状態は、後方のマガジン3を前方から見た場合、主軸装置1の先端側の部分が切欠部33を通して完全に見える状態である。
【0035】
続いて、主軸装置1の先端側が後方のマガジン3の切欠部33を通過して前方に移動させられる。そして、前方のマガジン4に収納された工具Tが、主軸11の先端に装着され、クランプ機構(図示せず)のクランプ動作によってクランプされることで取り付けられる。なお、前方のマガジン4の取付対象の工具Tが正面視でマガジン本体41の下端部に無い場合には、マガジン本体41の下端部に来るように、マガジン本体41が回転させられる。
【0036】
続いて、主軸11に工具Tが取り付けられた主軸装置1がマガジン本体41の径方向外側(下方)に移動させられることで、工具Tが工具保持部5から取り外される。これにより、工具Tが未だ取り付けられていない状態の主軸11への前方のマガジン4に収納された工具Tの取付けが完了する。その後、工作機械100は、主軸装置1を移動させながら、主軸11に取り付けた工具TによってワークWを加工する。
【0037】
次に、主軸11に取り付けられた使用済の工具Tを、次に使用する別の工具Tに交換する場合の動作の一例について説明する。ここでは、取付対象の別の工具Tは、正面視でマガジン本体41の下端部にある工具保持部5よりも一つ右側に隣接する位置にある工具保持部5に保持されているとする。
【0038】
この場合、使用済の工具Tが主軸11に取り付けられた主軸装置1が移動させられて、該工具Tが元々保持されていた空の工具保持部5に向けて下から上に移動させられることで工具Tが元の工具保持部5に保持される。
【0039】
続いて、主軸11の先端への使用済の工具Tのクランプがクランプ機構のアンクランプ動作によって解除された後、主軸装置1が後方に所定距離移動させられることで、使用済の工具Tは主軸11の先端から取り外される。
【0040】
続いて、マガジン本体41は、隣接する工具保持部5間の角度だけ正面視で時計回りに回転させられる。この状態において、主軸11の先端は、正面視でマガジン本体41の下端部にある工具保持部5に保持された取付対象の別の工具Tの真後ろに位置する。
【0041】
続いて、主軸装置1が前方に移動させられると、取付対象の別の工具Tが、主軸11の先端に装着され、クランプ機構(図示せず)のクランプ動作によってクランプされることで取り付けられる。
【0042】
続いて、主軸11に取付対象の別の工具Tが取り付けられた主軸装置1がマガジン本体41の径方向外側(下方)に移動させられることで、工具Tが工具保持部5から取り外される。これにより、主軸11に取り付けられた使用済の工具Tを、次に使用する別の工具Tに交換する作業が完了する。
【0043】
前記したように、本実施形態に係る工具交換装置2は、工作機械100の主軸11に取り付けた工具Tを交換するためのものである。工具交換装置2は、工具Tを収納可能な第1のマガジン4と、工具Tを収納可能な第2のマガジン3と、隔壁としての下壁61と、を備えている。第2のマガジン3は、第1のマガジン4の後方に並んで配置されている。下壁61は、マガジン3,4が配置された第1領域A1と、主軸11に取り付けた工具Tによる加工が行われる第2領域A2とを区画する。下壁61は、第1領域A1と第2領域A2とを連通させる開口67を有している。マガジン3,4は、主軸11の軸方向に平行な中心軸CLを中心として回転可能なマガジン本体31,41と、マガジン本体31,41に設けられた複数の工具保持部5と、をそれぞれ有している。第2のマガジン3のマガジン本体31は、外周の一部が切り欠かれた切欠部33を有している。工具保持部5は、マガジン本体31,41における切欠部33以外の外周側に設けられている。第2のマガジン3のマガジン本体31における切欠部33以外の外周側に、開口67を開閉するシャッタ7が取り付けられている。
【0044】
本実施形態では、第1のマガジン4に収納された工具Tを主軸11に取り付ける際には、マガジン本体41の回転によってマガジン4における取付対象の工具Tを保持した工具保持部5が交換位置(下方位置)に位置する。また、主軸11に取り付けられた工具Tを第1のマガジン4に収納する際には、マガジン本体41の回転によって工具Tを保持させるべき空の工具保持部5が交換位置(下方位置)に位置する。そして、第2のマガジン3におけるマガジン本体31の回転によって切欠部33が交換位置(下方位置)に位置することに伴って同時に、シャッタ7が下壁61の開口67を開けることになる。したがって、第2のマガジン3におけるマガジン本体31の切欠部33、および下壁61の開口67が、主軸11に対する逃げ構造の機能を発揮する。これにより、主軸11は、第2のマガジン3に干渉すること無く第1のマガジン4に近接離反できる。このため、第1のマガジン4を使用した工具交換が妨げられることはない。
【0045】
また、シャッタ7が下壁61の開口67を閉じた状態で加工を行うことで、切り屑などがマガジン3,4側に飛散するのを防止できる。加工時には、第1のマガジン4のマガジン本体41を回転させるか否かは任意であり、シャッタ7が開口67を閉じたまま第1のマガジン4のマガジン本体41を回転させて次工程の準備を行うことも可能である。
【0046】
一方、2個のマガジン3,4が備えられている場合にはマガジン3よりも後方に他のマガジンが無い。また、後方のマガジン3において取付対象の工具Tを保持した工具保持部5または工具Tを保持させるべき空の工具保持部5を交換位置(下方位置)に位置させることで、シャッタ7は開口67を開ける。このため、後方のマガジン3を使用した工具交換は、主軸11の干渉が無く、通常通り行われる。このとき、第1のマガジン4のマガジン本体41を回転させるか否かは任意であり、回転させて次工程の準備を行うことも可能である。
【0047】
このように本実施形態は、第2のマガジン3の切欠部33を下方位置に位置させると、第2のマガジン3のマガジン本体31における切欠部33以外の外周側に取り付けられたシャッタ7が開口67を開ける。このため、複数のマガジン3,4のいずれを使用する場合でも、主軸11の干渉が無く、しかも効率良く工具交換ができる。また、本実施形態は、多重に配置されたマガジン3,4によって、マガジン本体31,41が大径化することなく、より多くの工具Tを収納できる。
すなわち、本実施形態によれば、主軸11に取り付ける工具Tを多数収納しつつ小型化でき、工具交換を効率良く行うことができる工具交換装置2を提供できる。
【0048】
また、本実施形態では、前方から見て、第2のマガジン3のマガジン本体31の中心軸CLと切欠部33の中央とを結ぶ直線R1と、中心軸CLとシャッタ7の中央とを結ぶ直線R2との間の角度αは、90度以下に設定されている。シャッタ7が下方位置にあって開口67を閉じた状態から第1のマガジン4に収納された工具Tを主軸11が取りに行く際には、切欠部33を下方に位置させる必要がある。この場合、前記した構成では切欠部33がシャッタ7の近くにあるため、切欠部33を下方に位置させるための後方のマガジン本体31の回転時間を削減できる。これにより、サイクルタイムを短縮でき、生産性が向上する。
【0049】
また、本実施形態では、複数のマガジン本体31,41は、中心軸CLが同一直線上に配置されており、外接円の直径が等しい。この構成では、複数のマガジン3,4は、最小限の占有スペースでありながら、より多くの工具を収納できる。
【0050】
図10は、本発明の他の実施形態に係る工具交換装置2を搭載した工作機械100aの正面図である。この実施形態では、図1図9に示す実施形態と相違する点を主に説明し、共通する点の説明を省略する。なお、理解の容易化のため、図10では、工具T(図1等参照、以下同様)の図示を省略した。
【0051】
図10に示すように、工作機械100aの主軸装置1aは、前方から見て所定の間隔Aを置いて2個配置された主軸11,12を有している。複数の工具保持部5は、前方から見て主軸11,12と同じ間隔Aを置いて配置された一対の工具保持部5,5を複数組有している。一対の工具保持部5,5は、前方から見てマガジン本体31,41の中心軸CLと該一対の工具保持部5,5の並び方向の中央とを結ぶ直線Lに平行な中心線L1,L2をそれぞれ有している。そして、一対の工具保持部5a,5aの間には、隣の組の一対の工具保持部5b,5bのうちの一つが配置されている。
【0052】
この構成では、一対の工具保持部5,5のそれぞれの中心線L1,L2は、中心軸CLを中心とした放射状を呈しておらず、直線Lに平行となっている。このため、主軸装置1a(主軸11,12)を上下方向に移動させることで、一対の工具保持部5,5に2個の工具Tが一度に着脱され得る。すなわち、この実施形態では、2個の主軸11,12に取り付けた2個の工具Tを同時に交換できる。
【0053】
なお、図10では、2個の主軸11,12が工作機械100aに配置され、これに対応して一対の工具保持部5,5がマガジン本体31,41にそれぞれ複数組配置されているが、これに限定されるものではない。例えば3個の主軸が工作機械に配置され、これに対応して3個の工具保持部がマガジン本体31,41にそれぞれ複数組配置されていてもよい。
【0054】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0055】
例えば、工具交換装置2は、前記した実施形態では2個のマガジン3,4を備えているが、これに限定されるものではなく、3個以上のマガジンを備えていてもよい。なお、3個以上のマガジンが備えられている場合で工具交換に使用するマガジンの後方に他のマガジンが有るとき、工具交換時には、当該他のマガジンのマガジン本体の切欠部が交換位置(下方位置)に位置する。これにより、工具交換が妨げられることはない。
マガジン本体31,41は、前記した実施形態では円盤状を呈しているが、これに限定されるものではなく、六角形状等の多角形状を呈していてもよい。
複数のマガジン本体31,41は、前記した実施形態では切欠部33の有無を除けば正面視で同一形状であるが、これに限定されるものではなく、形状およびサイズの両方または一方が異なっていてもよい。
シャッタ7の本体部71は、円筒形状に限られず、平板状であってもよい。
シャッタ7の本体部71は、該本体部71の後端からマガジン本体31の中心軸CLの方向、すなわち径方向内側に延びる端板部を有し、全体としてL字形状を呈していてもよい。この場合、シャッタ7は、閉じた状態において開口67,68を覆うことができる。
【0056】
工作機械100,100aは、前記した実施形態では横形の工作機械であるが、これに限定されるものではなく、主軸が鉛直方向に沿うように配置される縦形の工作機械であってもよい。この場合、工具交換装置2は、上下方向に並んで配置された複数のマガジンを備えているとよい。
ワーク支持装置104は、Z軸方向(前後方向)およびX軸方向(左右方向)の両方または一方の方向に移動可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1a 主軸装置
11,12 主軸
2 工具交換装置
3 マガジン(第2のマガジン)
31 マガジン本体
33 切欠部
4 マガジン(第1のマガジン)
41 マガジン本体
5 工具保持部
6 カバー
61 下壁(隔壁)
67 開口
7 シャッタ
100,100a 工作機械
A 間隔
A1 第1領域
A2 第2領域
CL 中心軸
R1,R2 直線
α 角度
L 直線
L1,L2 中心線
T 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10