(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110501
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】炭素繊維集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/83 20060101AFI20230802BHJP
D01F 9/22 20060101ALI20230802BHJP
C04B 35/524 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C04B35/83
D01F9/22
C04B35/524
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011995
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
【テーマコード(参考)】
4L037
【Fターム(参考)】
4L037AT03
4L037CS02
4L037CS03
4L037FA02
4L037FA14
4L037PA53
4L037PC05
4L037PS02
4L037UA04
4L037UA09
4L037UA20
(57)【要約】
【課題】CO
2排出等の環境負荷が充分に抑制され、かつ、導電性が充分に高い炭素繊維集合体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維前駆体を集合し集合体を形成する集合体形成工程と、上記集合体に樹脂を含浸し、樹脂含浸集合体を形成する樹脂含浸工程と、上記樹脂含浸集合体に対し、加圧しながら焼成を行うことにより、上記炭素繊維前駆体及び上記樹脂を、それぞれ、炭素繊維及び樹脂炭化物とし、上記樹脂含浸集合体を炭素繊維集合体とする焼成工程とを含むことを特徴とする炭素繊維集合体の製造方法。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維前駆体を集合し集合体を形成する集合体形成工程と、
前記集合体に樹脂を含浸し、樹脂含浸集合体を形成する樹脂含浸工程と、
前記樹脂含浸集合体に対し、加圧しながら焼成を行うことにより、前記炭素繊維前駆体及び前記樹脂を、それぞれ、炭素繊維及び樹脂炭化物とし、前記樹脂含浸集合体を炭素繊維集合体とする焼成工程とを含むことを特徴とする炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程では、焼成を1回のみ行う請求項1に記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項3】
前記炭素繊維前駆体は、耐炎化処理されている請求項1又は2に記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程では、1000~2500℃、1~60minで焼成する請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂及びピッチからなる群から選択される少なくとも1種からなる請求項1~4のいずれかに記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程では、前記樹脂含浸集合体に対し、0.1~50kPaで加圧する請求項1~5のいずれかに記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項7】
前記炭素繊維前駆体の重量に対する前記樹脂の重量割合は、5~80重量%である請求項1~6のいずれかに記載の炭素繊維集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維が樹脂炭化物で結着された炭素繊維集合体は、燃料電池のガス拡散層や、誘導加熱炉の断熱材等の種々の用途で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料電池のガス拡散層として用いられる炭素繊維と炭素質粉末を樹脂炭化物で結着した多孔質炭素板において、厚さが0.1~0.3mm、密度が0.25~0.55g/cm3、3点曲げ試験(JIS K6911-1995準拠)における曲げ強度が20MPa以上の範囲内であって、かつ細孔径が25~55μmの範囲内にあることを特徴とする多孔質炭素板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多孔質炭素板を製造する場合は、炭素繊維集合体に樹脂を含浸し、当該炭素繊維集合体を焼成する。この炭素繊維集合体の焼成により、樹脂は樹脂炭化物となる。
なお、炭素繊維集合体を構成する炭素繊維は、炭素繊維前駆体を焼成することにより作製される。
つまり、特許文献1に記載の多孔質炭素板を製造する場合、少なくとも炭素繊維の作製時及び樹脂の炭素化時の2回の焼成が必要になる。
多孔質炭素板を製造するにあたり、焼成の回数が増えると、多くのエネルギーが必要になり、CO2排出等の環境負荷が大きくなるという問題がある。
特許文献1に記載の多孔質炭素基材をガス拡散層として使用する場合、導電性が不充分であり改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、CO2排出等の環境負荷が充分に抑制され、かつ、導電性が充分に高い炭素繊維集合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法は、炭素繊維前駆体を集合し集合体を形成する集合体形成工程と、上記集合体に樹脂を含浸し、樹脂含浸集合体を形成する樹脂含浸工程と、上記樹脂含浸集合体に対し、加圧しながら焼成を行うことにより、上記炭素繊維前駆体及び上記樹脂を、それぞれ、炭素繊維及び樹脂炭化物とし、上記樹脂含浸集合体を炭素繊維集合体とする焼成工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法の焼成工程では、炭素繊維前駆体及び樹脂を、同時にそれぞれ炭素繊維及び樹脂炭化物とするので、これらを個別に焼成するよりも焼成の回数を減らすことができる。そのため、焼成に伴うCO2排出等の環境負荷を低減することができる。
【0009】
また、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の焼成工程では、加圧しながら焼成している。
そのため、焼成の際の熱により炭素繊維前駆体や樹脂の一部が分解されて、収縮や変形が生じても、圧力により収縮部や変形部を埋めることができる。そのため、製造される炭素繊維集合体において、一部のみに空隙ができることを防ぐことができる。また、製造される炭素繊維集合体において、樹脂炭化物の一部のみに応力がかかることを防ぐことができ、樹脂炭化物に亀裂や剥がれが生じることを防ぐことができる。その結果、製造される炭素繊維集合体の強度を高くすることができる。
【0010】
なお、炭素繊維集合体において、樹脂炭化物は導電パスを形成する。上記の通り、本発明の炭素繊維集合体の製造方法で製造された炭素繊維集合体では、樹脂炭化物の亀裂や剥がれが少ないので、導電性が高くなる。
そのため、炭素繊維集合体に、高い導電性が求められる場合、本発明の炭素繊維集合体の製造方法で製造された炭素繊維集合体は有用である。
【0011】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法の上記焼成工程では、焼成を1回のみ行うことが好ましい。
1回の焼成で、炭素繊維前駆体及び樹脂を、それぞれ炭素繊維及び樹脂炭化物とすると、焼成に伴うCO2排出等の環境負荷を低減することができる。
なお、本明細書において「焼成を1回のみ行う」とは、昇温開始から焼成終了まで、冷却期間等のインターバルを置かずに樹脂含浸集合体を加熱することを意味する。
【0012】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法では、上記炭素繊維前駆体は、耐炎化処理されていることが好ましい。
耐炎化処理とは、炭素繊維前駆体を環化反応により、化学構造を変化させることであり、炭素繊維前駆体が耐炎化処理されていると、炭化・黒鉛化時に炭素繊維前駆体が溶融することを防ぐ事ができる。
【0013】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法の焼成工程では、1000~2500℃、1~60minで焼成することが好ましい。
上記条件で加熱を行うことにより、炭素繊維前駆体及び樹脂が、それぞれ好適に、炭素繊維及び樹脂炭化物に焼成される。
【0014】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法では、上記樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂及びピッチからなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
これらの樹脂は、樹脂炭化物を形成するのに適している。
【0015】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法の上記焼成工程では、上記樹脂含浸集合体に対し0.1~50kPaで加圧することが好ましい。
樹脂含浸集合体に上記範囲の圧力をかけながら加熱することにより、樹脂炭化物に亀裂や剥がれが生じることをより防ぐことができる。
【0016】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法では、上記炭素繊維前駆体の重量に対する上記樹脂の重量割合は、5~80重量%であることが好ましい。
上記重量割合が、5重量%未満であると、樹脂の量が少ないので、炭素繊維同士を結着しにくくなる。
上記重量割合が、80重量%を超えると、相対的に炭素繊維の数が少なくなり、炭素繊維集合体の強度が低下しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の集合体形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の樹脂含浸工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の焼成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図2】
図2は、燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、昇華法に用いるSiC結晶成長炉の一例を示す模式図である。
【0018】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の炭素繊維集合体の製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0019】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法は、炭素繊維前駆体を集合し集合体を形成する集合体形成工程と、上記集合体に樹脂を含浸し、樹脂含浸集合体を形成する樹脂含浸工程と、上記樹脂含浸集合体に対し、加圧しながら焼成を行うことにより、上記炭素繊維前駆体及び上記樹脂を、それぞれ、炭素繊維及び樹脂炭化物とし、上記樹脂含浸集合体を炭素繊維集合体とする焼成工程とを含むことを特徴とする。
各工程について、以下に図面を用いて説明する。
図1Aは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の集合体形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図1Bは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の樹脂含浸工程の一例を模式的に示す工程図である。
図1Cは、本発明の炭素繊維集合体の製造方法の焼成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【0020】
(集合体形成工程)
集合体形成工程では、
図1Aに示すように、炭素繊維前駆体21を集合し集合体11を形成する。
【0021】
炭素繊維前駆体21を集合させる方法としては、特に限定されないが、乾式法、メルトブローン法、抄造法、ニードルパンチ法、クロス工法、水流絡合法等を採用することができる。
【0022】
炭素繊維前駆体としては、焼成により炭素繊維となる有機繊維であれば、特に限定されないが、アクリロニトリルを主成分として含有するアクリル繊維等を用いることができる。
また、炭素繊維前駆体は、耐炎化処理されていることが好ましい。
耐炎化処理とは、炭素繊維前駆体を環化反応により、化学構造を変化させることであり、炭素繊維前駆体に耐炎化処理がされていると、焼成時に炭素繊維前駆体の溶融を防ぐことができる。
【0023】
(樹脂含浸工程)
次に、集合体11に樹脂31を含浸し、樹脂含浸集合体12を形成する。
【0024】
集合体11に樹脂31を含浸する方法としては、例えば、樹脂31を含む分散液に集合体11を浸す方法や、集合体11に樹脂31を含む分散液を噴霧する方法、印刷法(ロールコター、スクリーン)等が挙げられる。
なお、分散液には、メタノール等の分散媒や、黒鉛、カーボンブラック等の炭素粒子等を混合してもよい。
【0025】
また、集合体形成工程において、抄造法を採用する場合、抄造用のスラリーに樹脂31を混合してもよい。これにより、集合体形成工程と樹脂含浸工程とを同時に行うことができる。
【0026】
樹脂としては、焼成により樹脂炭化物となる有機樹脂であれば、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ピッチ等を用いることができる。
これらの中ではフェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂や、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0027】
樹脂含浸工程では、炭素繊維前駆体21に樹脂31を含浸することになるが、この際の炭素繊維前駆体21の重量に対する樹脂31の重量割合は、5~80重量%であることが好ましく、10~60重量%であることがより好ましい。
上記重量割合が、5重量%未満であると、樹脂の量が少ないので、炭素繊維同士を結着しにくくなる。
上記重量割合が、80重量%を超えると、相対的に炭素繊維の数が少なくなり、炭素繊維集合体の強度が低下しやすくなる。
【0028】
なお、本工程では、樹脂含浸集合体12を形成した後、必要に応じ樹脂含浸集合体12を乾燥させてもよい。
【0029】
(焼成工程)
次に、樹脂含浸集合体12に対し、加圧しながら焼成を行うことにより、炭素繊維前駆体21及び樹脂31を、それぞれ、炭素繊維20及び樹脂炭化物30とする。
本工程を行うことにより、炭素繊維20同士は、樹脂炭化物30により結着される。
以上の工程を経て炭素繊維集合体10を製造することができる。
【0030】
焼成工程では、炭素繊維前駆体21及び樹脂31を、同時にそれぞれ炭素繊維20及び樹脂炭化物30とするので、これらを個別に焼成するよりも焼成の回数を減らすことができる。そのため、焼成に伴うCO2排出等の環境負荷を低減することができる。
【0031】
また、焼成工程では、樹脂含浸集合体12に対し、加圧しながら焼成している。
そのため、焼成の際の熱により炭素繊維前駆体21や樹脂31の一部が分解されて、収縮や変形が生じても、圧力により収縮部や変形部を埋めることができる。そのため、製造される炭素繊維集合体10において、一部のみに空隙ができることを防ぐことができる。また、製造される炭素繊維集合体10において、樹脂炭化物30の一部のみに応力がかかることを防ぐことができ、樹脂炭化物30に亀裂や剥がれが生じることを防ぐことができる。その結果、製造される炭素繊維集合体10の強度を高くすることができる。
【0032】
なお、炭素繊維集合体10において、樹脂炭化物30は導電パスを形成する。上記の通り、炭素繊維集合体10では、樹脂炭化物30の亀裂や剥がれが少ないので、導電性が高くなる。そのため、炭素繊維集合体10は、高い導電性が必要な用途に適している。このような用途を例示すると、燃料電池のガス拡散層の用途が挙げられる。
【0033】
焼成工程では、焼成を1回のみ行うことが好ましい。
1回の焼成で、炭素繊維前駆体21及び樹脂31を、それぞれ炭素繊維20及び樹脂炭化物30とすると、焼成に伴うCO2排出等の環境負荷を低減することができる。
【0034】
焼成工程では、樹脂含浸集合体12に対し0.1~50kPaで加圧することが好ましく、1000~2000℃、1~30minであることがより好ましい。
樹脂含浸集合体12に上記範囲の圧力をかけながら加熱することにより、樹脂炭化物30に亀裂や剥がれが生じることをより防ぐことができる。
【0035】
焼成工程では、1000~2500℃、1~60minで焼成することが好ましく、1000~2000℃、1~30minで焼成することがより好ましい。
上記条件で加熱を行うことにより、炭素繊維前駆体21及び樹脂31が、それぞれ好適に、炭素繊維20及び樹脂炭化物30に焼成される。
【0036】
焼成工程における焼成の雰囲気は特に限定されないが、アルゴン、窒素等であることが好ましい。
【0037】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法により製造された炭素繊維集合体は、燃料電池のガス拡散層や、誘導加熱炉の断熱材等として好適に用いることができる。
各用途について、以下に図面を用いて説明する。
【0038】
(燃料電池)
図2は、燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
燃料電池100においては、燃料極200において水素210が供給され、触媒層220において水素210が触媒(白金)によって水素イオン230と電子240に分離される。
水素イオン230は電解質膜250を通過して空気極300へ移動する。電子240は外部に抜け出し導線を伝って電流となる。
空気極300には酸素310を含む空気が導入される。触媒層320において、酸素310と、電解質膜250を通って入ってきた水素イオン230と外部の導線を経由してきた電子240との反応で水330が生成される。
【0039】
上記の燃料電池100は、燃料極200に燃料極側ガス拡散層260を備えており、空気極300に空気極側ガス拡散層360を備えている。
ガス拡散層は、燃料である水素210及び酸素310(空気)の拡散、触媒層220及び触媒層320への供給、触媒層220での化学反応により生じた電子240の集電、触媒層320での反応において生じた水330の排出といった役割を担う。
本発明の炭素繊維集合体の製造方法により製造された炭素繊維集合体は、燃料極側ガス拡散層260や、空気極側ガス拡散層360として好適に用いることができる。
【0040】
(誘導加熱炉)
図3は、昇華法(PVT)に用いる誘導加熱炉の一例を示す模式図である。
図3に示す誘導加熱炉(SiC結晶成長炉)400は、SiC原料411を含むカーボン製の坩堝420と、坩堝420の周囲を覆う断熱材430と、これらを収容する石英管440と、石英管440の外周に配置された加熱用のコイル450とからなる。
また、坩堝420の上部には、種結晶410が配置されている。
【0041】
SiC結晶を成長させる場合、コイル450に高周波電流を流し、坩堝420を加熱することで、SiC原料を昇華させ、昇華したSiC原料411が、種結晶410に到達して再結晶化することにより種結晶410を結晶成長させることができる。
【0042】
本発明の炭素繊維集合体の製造方法により製造された炭素繊維集合体は、断熱材430として好適に用いることができる。
【0043】
なお、本発明の炭素繊維集合体の製造方法により製造された炭素繊維集合体は、上記の昇華法に用いる誘導加熱炉400の断熱材430だけでなく、抵抗加熱炉や燃焼炉等の断熱材としても好適に用いることができる。
【0044】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
(集合体形成工程)
炭素繊維前駆体として、平均繊維長が60mmの酸化ポリアクリロニトリルからなる炭素繊維前駆体を集合させて集合体を形成した。
【0046】
(樹脂含浸工程)
次に、メタノール100重量部に対し、レゾール型フェノール樹脂が3重量部、ノボラック型フェノール樹脂が3重量部、鱗片黒鉛が0.8重量部及びカーボンブラックが0.8重量部含まれた分散液を準備し、当該分散液をスポイトで均一に集合体に塗布し、樹脂含浸集合体を形成した。
この際、含浸させた樹脂(レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂)の重量割合を、炭素繊維前駆体の重量に対して60重量%とした。
その後、280kPaで加圧しながら、145℃、15minの条件で樹脂含浸集合体を乾燥させた。
【0047】
(焼成工程)
上記樹脂含浸集合体を、アルゴン雰囲気下、7kPaで加圧しながら、100℃/hrで昇温して500℃になった時点で5min保持し、その後、100℃/hrで昇温して1000℃になった時点で5min保持し、その後100℃/hrで昇温して2000℃になった時点で5min保持することにより焼成を行った。
【0048】
以上の工程を経て、実施例1に係る炭素繊維集合体を製造した。
【0049】
(実施例2)、(比較例1)及び(比較例2)
樹脂含浸工程において含侵する樹脂の重量割合及び焼成工程における圧力を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、実施例2、比較例1及び比較例2に係る炭素繊維集合体を製造した。
【0050】
【0051】
(体積抵抗率評価)
各実施例及び各比較例に係る炭素繊維集合体を、サイズ50mm×50mmに切断し、JISK7194に準拠した4探針法によって体積抵抗率の評価を行った。
装置としてはロレスターGP MCP-T610(三菱ケミカルアナリテック株式会社製)を使用し、プローブとしてASPプローブMCP-TP03Pを使用した。
電圧10Vで1シートにつき5カ所を測定しその平均値を求めた。
結果を表1に示す。
【0052】
表1に示すように、炭素繊維前駆体を集合させた集合体に樹脂を含浸し、加圧して焼成を行うと、製造された炭素繊維集合体の体積抵抗率が低くなることが示された。
【符号の説明】
【0053】
10 炭素繊維集合体
11 集合体
12 樹脂含浸集合体
20 炭素繊維
21 炭素繊維前駆体
30 樹脂炭化物
31 樹脂
100 燃料電池
200 燃料極
210 水素
220 触媒層
230 水素イオン
240 電子
250 電解質膜
260 燃料極側ガス拡散層
300 空気極
310 酸素
320 触媒層
330 水
360 空気極側ガス拡散層
400 誘導加熱炉
410 種結晶
411 SiC原料
420 坩堝
430 断熱材
440 石英管
450 コイル