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特開2023-110502導電性不織布及び導電性不織布の製造方法
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  • 特開-導電性不織布及び導電性不織布の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110502
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】導電性不織布及び導電性不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230802BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230802BHJP
   D04H 1/00 20060101ALI20230802BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20230802BHJP
   D06M 11/74 20060101ALI20230802BHJP
   D21H 13/24 20060101ALI20230802BHJP
   D21H 17/63 20060101ALI20230802BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M4/88
D04H1/00
D06M11/83
D06M11/74
D21H13/24
D21H17/63
D21H21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011996
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
【テーマコード(参考)】
4L031
4L047
4L055
5H018
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AA18
4L031AA20
4L031AB34
4L031BA02
4L031BA04
4L031CB11
4L031CB12
4L031CB14
4L031DA15
4L047AA03
4L047AA08
4L047AA14
4L047AA16
4L047AA17
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA22
4L047AA23
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA21
4L047CC14
4L055AF03
4L055AF13
4L055AF15
4L055AF21
4L055AF27
4L055AF30
4L055AF33
4L055AF34
4L055AF35
4L055AG02
4L055AG03
4L055BE20
4L055FA22
4L055GA01
5H018AA06
5H018BB05
5H018BB07
5H018BB08
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE05
5H018EE06
5H018EE08
5H018EE17
(57)【要約】
【課題】燃料電池のガス拡散層として使用可能であり、巻き付け性に優れた導電シートとしての導電性不織布を提供する。
【解決手段】燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布であって、上記導電性不織布は、有機繊維と導電性物質を含むことを特徴とする導電性不織布。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布であって、
前記導電性不織布は、有機繊維と導電性物質を含むことを特徴とする、導電性不織布。
【請求項2】
前記導電性不織布は、前記有機繊維と前記導電性物質の混合物の抄造物である請求項1に記載の導電性不織布。
【請求項3】
前記導電性不織布は、前記有機繊維からなる有機不織布と、前記有機不織布を構成する前記有機繊維の表面に付着した前記導電性物質とからなる請求項1に記載の導電性不織布。
【請求項4】
前記導電性物質は、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により、前記有機不織布を構成する前記有機繊維の表面に付着されている請求項3に記載の導電性不織布。
【請求項5】
前記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、PBO繊維、及びPPS繊維からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性不織布。
【請求項6】
前記有機繊維は、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性不織布。
【請求項7】
前記導電性物質は、黒鉛、カーボンブラック、炭素質ミルド繊維、カーボンナノチューブ、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性不織布。
【請求項8】
有機繊維と導電性物質の混合物を抄造する工程を含むことを特徴とする、燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布の製造方法。
【請求項9】
有機不織布を構成する有機繊維の表面に、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により、導電性物質を付着する工程を含むことを特徴とする、燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性不織布及び導電性不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、基本構造として、電解質膜と、電解質膜を隔てて配置された燃料極(負極)と酸素極(正極)とからなる。
燃料極は、電解質膜に接する触媒層と、ガス拡散層とから構成される。同様に、酸素極は、電解質膜に接する触媒層と、ガス拡散層とから構成される。
ガス拡散層は、電池反応の場となる役割、及び、集電体の役割を果たす。
【0003】
特許文献1には、このようなガス拡散層として機能する導電シートとして、炭素繊維を構成材料とするものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-283878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池の製造工程において、ガス拡散層となる導電シートをロールに巻いた状態で供給し、ガス拡散層と他の層との積層工程を連続的に行うことで燃料電池の生産性の向上を図る取り組みがされている。この生産方式はロールtoロール方式と呼ばれる。
【0006】
ガス拡散層となる導電シートをロールtoロール方式で供給するためには、ロールに導電シートを巻き付ける必要がある。しかしながら、炭素繊維を使用した導電シートをロールに巻き付ける際に、ロールの径が小さいと炭素繊維が破断することがあるため、ロールの径を大きくせざるを得なかった。そして、ロールの径を大きくすると同体積のロール1つあたりの導電シートの巻き付け長さが短くなるため燃料電池の生産性が低下するという問題があった。そのため、ロールへの巻き付けの際に繊維の破断が生じにくく、巻き付け性に優れた導電シートが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、燃料電池のガス拡散層として使用可能であり、巻き付け性に優れた導電シートとしての導電性不織布及び導電性不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の導電性不織布は、燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布であって、上記導電性不織布は、有機繊維と導電性物質を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の導電性不織布は、不織布を構成する繊維として有機繊維を含む。有機繊維は炭素繊維に比べて柔軟であるので、ロールに巻き付けても繊維が破断しにくく、有機繊維を含む不織布は巻き付け性に優れる。また、有機繊維は導電性に乏しいが、有機繊維に加えて導電性物質を含むようにして有機繊維を導電化することで、燃料電池のガス拡散層としての使用に適した導電性不織布とすることができる。
すなわち、本発明の導電性不織布は、導電性を有するために燃料電池のガス拡散層として使用可能であり、巻き付け性に優れるため燃料電池の生産性の向上に適している。
【0010】
本発明の導電性不織布は、上記有機繊維と上記導電性物質の混合物の抄造物であることが好ましい。
有機繊維と導電性物質の混合物を抄造して不織布を得ることができ、このようにして得られた不織布は導電性不織布となる。不織布を構成する繊維は有機繊維であるので、導電性不織布は柔軟性に優れ、巻き付け性に優れる。
【0011】
本発明の導電性不織布は、上記有機繊維からなる有機不織布と、上記有機不織布を構成する上記有機繊維の表面に付着した上記導電性物質とからなることが好ましい。
予め有機不織布を準備しておき、有機不織布を構成する有機繊維の表面に導電性物質を付着させることによっても導電性不織布を得ることができる。
有機不織布を構成する繊維は有機繊維であるので、導電性不織布は柔軟性に優れ、巻き付け性に優れる。
【0012】
また、本発明の導電性不織布において、上記導電性物質は、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により、上記有機不織布を構成する上記有機繊維の表面に付着されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の導電性不織布において、上記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、PBO繊維、及びPPS繊維からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
導電性不織布の材料として炭素繊維を使用する場合、炭素繊維の製造過程で高温での焼成を行う必要があるが、これらの有機繊維は、繊維製造過程で高温での焼成を行う必要が無いので、CO発生量を低減する観点から好ましい。
【0014】
また、本発明の導電性不織布において、上記有機繊維は、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
有機繊維がこれらの繊維であると、その原料が植物由来であったり、生分解性を有していたりするため、これらの繊維を選択することによって環境負荷を低減することができるために好ましい。
【0015】
また、本発明の導電性不織布において、上記導電性物質は、黒鉛、カーボンブラック、炭素質ミルド繊維、カーボンナノチューブ、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
本発明の導電性不織布の製造方法の一の態様は、有機繊維と導電性物質の混合物を抄造する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の導電性不織布の製造方法の別の態様は、有機不織布を構成する有機繊維の表面に、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により、導電性物質を付着する工程を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、抄造物である導電性不織布の一例を模式的に示す斜視図である。
図2A図2Aは、有機不織布の一例を模式的に示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示す有機不織布を構成する有機繊維に導電性物質を付着させた導電性不織布の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
図4図4は、巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、燃料電池の製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、巻き付け性評価の方法を模式的に示す斜視図である。
【0018】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の導電性不織布について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0019】
本発明の導電性不織布は、燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布であって、上記導電性不織布は、有機繊維と導電性物質を含むことを特徴とする。
【0020】
導電性不織布を構成する有機繊維は、有機繊維自体が導電性を有していてもよく、有機繊維自体は導電性を有さなくてもよい。
有機繊維は、炭素繊維と比べて柔軟であり、繊維を曲げることにより繊維の折れ、割れが生じにくいので、有機繊維を使用する導電性不織布は柔軟性に優れ、巻き付け性に優れる。
【0021】
有機繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、PBO繊維、及びPPS繊維からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
また、ポリエステル繊維としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
また、ポリオレフィン繊維としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維が好ましい。
導電性不織布の材料として炭素繊維を使用する場合、炭素繊維の製造過程で高温での焼成を行う必要があるが、これらの有機繊維は、繊維製造過程で高温での焼成を行う必要が無いので、CO発生量を低減する観点から好ましい。
【0022】
また、有機繊維としては、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
有機繊維がこれらの繊維であると、繊維製造過程で高温での焼成を行う必要が無いので、CO発生量を低減することができることに加えて、その原料が植物由来であったり、生分解性を有していたりするため、これらの繊維を選択することによって環境負荷を低減することができるために好ましい。
【0023】
有機繊維の平均繊維長としては、20mm以上であることが好ましく、平均繊維径としては、1~50μmであることが好ましい。
有機繊維の平均繊維長が上記範囲であると、ガス拡散層に通常使用される炭素繊維の平均繊維長より長く、長い繊維が絡み合っているために曲げに強くなると考えられる。
【0024】
導電性物質は、炭素系材料又は金属であることが好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック、炭素質ミルド繊維及びカーボンナノチューブからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。また、黒鉛としては、膨張黒鉛又は鱗片状黒鉛でであることが好ましい。
金属としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
導電性物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよく、短繊維状であってもよい。また、膜状であってもよい。
導電性物質の形状が粒子状である場合、その平均粒子径は1.0~100nmであることが好ましい。
【0026】
導電性不織布の厚さは、0.01~1.00mmであることが好ましく、0.03~0.80mmであることがより好ましく、0.04~0.15mmであることがさらに好ましい。厚さが厚すぎると巻き付け性が低下し、厚さが薄すぎると強度が不足して導電性不織布が破断する可能性がある。
【0027】
導電性不織布の面比重は2.0~100.0g/mであることが好ましく、5.0~80.0g/mであることがより好ましく、10.0~35.0g/mであることがさらに好ましい。
また、導電性不織布の嵩密度は0.100~0.500g/cmであることが好ましく、0.150~0.400g/cmであることがより好ましく、0.200~0.300g/cmであることがさらに好ましい。
【0028】
導電性不織布は、ガス拡散層として機能するために、気孔率が65%以上であることが好ましい。不織布の気孔率Pは下記式で求められる。
P=(1-FG/(d・ρ))・100
式中、FGは面比重(単位はg/m)、dは厚さ(単位m)、ρは導電性繊維の真密度(単位g/m)である。
【0029】
導電性不織布は、体積抵抗率が1.0Ω・cm以下であることが好ましい。
導電性不織布の体積抵抗率は、JIS K7194に準拠した4探針法により測定することができる。
体積抵抗率が低いことで、ガス拡散層に必要な導電性が充分となり、電子の経路として好適に作用する。
【0030】
導電性不織布は、直径20mmの円柱に巻き付けても割れが生じない巻き付け性を有していることが好ましい。巻き付け性の評価は、所定の直径の円柱に導電性不織布を巻き付けて、割れの有無を目視観察することによって行うことができる。
【0031】
以下、本発明の導電性不織布の具体的な態様として、抄造法により得られる導電性不織布と、有機不織布に導電性物質を付着させて得られる導電性不織布についてそれぞれ説明する。
【0032】
(抄造法により得られる導電性不織布)
図1は、抄造物である導電性不織布の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す導電性不織布1は、有機繊維と導電性物質の混合物の抄造物であり、有機繊維10に導電性物質20の粒子が付着している。
有機繊維10及び導電性物質20としては、上述した仕様の物質を使用することができる。
有機繊維10に導電性物質20が付着することにより、有機繊維10が導電性を有する導電性繊維となり、導電性繊維の抄造物である不織布は導電性不織布1となる。
導電性物質20の粒子としては、上述した炭素系材料又は金属の粒子を使用することができる。粒子の種類は1種類であっても複数種類であってもよい。
【0033】
抄造物からなる導電性不織布の製造方法は、有機繊維と導電性物質の混合物を抄造する工程を含むことを特徴とする。
当該導電性不織布の製造方法は、本発明の導電性不織布の製造方法の一の態様である。
【0034】
上記混合物は、有機繊維と導電性物質の混合物であり、抄造においては、有機繊維と導電性物質に加えて水又は他の溶媒を含む抄造スラリーを調製し、抄造を行う。
上記混合物中における、有機繊維と導電性物質の合計重量を100重量%とした場合に、有機繊維の割合が70.0~99.7重量%であることが好ましく、導電性物質の割合が0.3~30.0重量%であることが好ましい。
また、上記混合物には、さらに分散剤、無機バインダ、有機バインダ等が含まれていてもよい。
【0035】
(有機不織布を構成する有機繊維に導電性物質を付着させて得られる導電性不織布)
図2Aは、有機不織布の一例を模式的に示す斜視図である。図2Bは、図2Aに示す有機不織布を構成する有機繊維に導電性物質を付着させた導電性不織布の一例を模式的に示す斜視図である。
図2Aに示す有機不織布30は、有機繊維10からなる。
図2Bに示す導電性不織布2は、有機不織布30を構成する有機繊維10に導電性物質40の膜が付着しており、有機繊維が導電性を有する導電性繊維となっている。
図2Bには、図2Bの手前側において、導電性物質40の膜の一部を透過して有機繊維10を示している。
有機繊維10及び導電性物質40としては、上述した仕様の物質を使用することができる。
導電性物質40は、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により有機不織布30を構成する有機繊維10の表面に付着されていることが好ましい。
【0036】
導電性物質40としては、導電性物質を含む溶液に有機不織布30を含浸することにより有機不織布30を構成する有機繊維10の表面に付着した導電性物質を使用することができる。この場合、導電性物質40としては上述した炭素系材料又は金属を使用することができ、その種類は1種類であっても複数種類であってもよい。
また、導電性物質40としては、有機不織布30を構成する有機繊維10の表面に蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により成膜した金属膜を使用することができる。この場合、導電性物質としては金属であることが好ましく、その種類は1種類であっても複数種類であってもよい。
【0037】
有機不織布を構成する有機繊維に導電性物質が付着することにより、有機繊維が導電性を有する導電性繊維となり、有機不織布は導電性不織布となる。
【0038】
当該導電性不織布の製造方法は、有機不織布を構成する有機繊維の表面に、含浸、蒸着、メッキ、スパッタリング、スプレー塗布又は印刷により、導電性物質を付着する工程を含むことを特徴とする。
なお、印刷の方法としては、ロールコーターによる印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
当該導電性不織布の製造方法は、本発明の導電性不織布の製造方法の別の態様である。
【0039】
(燃料電池及びガス拡散層)
本発明の導電性不織布は、燃料電池のガス拡散層に用いられる導電性不織布である。
燃料電池は、燃料極のガス拡散層及び/又は空気極のガス拡散層として、本発明の導電性不織布を備えていることが好ましい。
【0040】
以下に、燃料電池及び燃料電池のガス拡散層の一例について説明する。
図3は、燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
燃料電池100においては、燃料極200において水素210が供給され、触媒層220において水素210が触媒(白金)によって水素イオン230と電子240に分離される。
水素イオン230は電解質膜250を通過して空気極300へ移動する。電子240は外部に抜け出し導線を伝って電流となる。
空気極300には酸素310を含む空気が導入される。触媒層320において、酸素310と、電解質膜250を通って入ってきた水素イオン230と外部の導線を経由してきた電子240との反応で水330が生成される。
【0041】
上記の燃料電池100は、燃料極200に燃料極側ガス拡散層260を備えており、空気極300に空気極側ガス拡散層360を備えている。
ガス拡散層は、燃料である水素210及び酸素310(空気)の拡散、触媒層220及び触媒層320への供給、触媒層220での化学反応により生じた電子240の集電、触媒層320での反応において生じた水330の排出といった役割を担う。
【0042】
(巻付体)
本発明の導電性不織布は、ロールに巻きつけられた巻付体の形態であってもよい。
導電性不織布をロールに巻きつけられた巻付体の形態とすることによって、燃料電池の製造に適した形態となる。
【0043】
図4は、巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示す巻付体400は、芯材410に導電性不織布1が巻きつけられてなる。
図4の点線で示す円内には、巻付体400を構成する導電性不織布1の拡大図を示している。
【0044】
芯材の外径は特に限定されるものではないが、巻付体1つあたりの導電性不織布の巻き付け長さを長くする観点からは芯材の外径は小さい方が好ましく、40mm以下であることが好ましい。芯材の外径は、導電性不織布のロールの内径と一致するので、導電性不織布のロールの内径が40mm以下であることが好ましいともいえる。
本発明の導電性不織布は巻き付けの際に導電性繊維の破断が生じにくく、巻き付け性に優れるので、芯材の外径が40mm以下(導電性不織布のロールの内径が40mm以下)であっても導電性繊維の破断を生じさせることなく、巻付体を得ることができる。
また、芯材の外径(導電性不織布のロールの内径)は10mm以上であることが好ましい。
また、芯材が無くても巻付体の形状の保持及び燃料電池の製造時の工程上問題が無いようであれば、巻付体が芯材を有さなくてもよい。
【0045】
図4には、巻付体を構成する導電性不織布として図1に示した抄造物である導電性不織布1を示しているが、巻付体を構成する導電性不織布は図2Bに示した有機不織布に導電性物質を付着させて得られる導電性不織布2であってもよい。
【0046】
(燃料電池の製造方法)
本発明の導電性不織布がロールに巻きつけられた巻付体を用いて、燃料電池を製造することが好ましい。
本発明の導電性不織布がロールに巻きつけられた巻付体を用いた燃料電池の製造方法は、上記巻付体から連続的に、ガス拡散層となる導電性不織布を供給して、上記導電性不織布上に触媒層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0047】
図5は、燃料電池の製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
図5に示す工程では、導電性不織布がロールに巻きつけられた巻付体400を供給側ロール510として、ガス拡散層となる導電性不織布1を連続的に供給し、塗工装置530を用いて触媒層ペースト540を塗工する。ヒーター550で触媒層ペースト540を乾燥して触媒層を形成し、巻き取り側ロール520において巻き取る。
このような工程を含む燃料電池の製造方法では、ガス拡散層と他の層との積層工程を連続的に行うことで燃料電池の生産性の向上を図ることができる。
本発明の導電性不織布は、ロールに巻きつけられた巻付体の形態で供給することに適しているので、当該燃料電池の製造工程に用いることに適している。
【0048】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
有機不織布としてポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布(ミライフTY1515FE:ENEOSテクノマテリアル株式会社製)を準備した。
この有機不織布に対して、スパッタ装置(日本電子株式会社製:JFC-1600)を用いて、白金をスパッタ電流30mA、処理時間30分の条件で成膜して導電性不織布とした。
【0050】
(実施例2、3)
実施例2では、有機不織布としてポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布(ミライフTY1010FE:ENEOSテクノマテリアル株式会社製)を準備し、実施例3では有機不織布としてポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布(ミライフTY0505FE:ENEOSテクノマテリアル株式会社製)を準備した。
実施例1と同様にして白金を成膜して導電性不織布とした。
なお、実施例1~3で準備した有機不織布の平均繊維径はいずれも10μmであり、試料サイズは50mm×50mmである。
【0051】
表1には、実施例1~3における、成膜前の有機不織布の仕様及び成膜後の導電性不織布の仕様を示した。
【0052】
【表1】
【0053】
(比較例1)
炭素繊維(表2ではCFと表記)に樹脂を添着して焼成して得られた導電シートを評価用シートとして準備した。その仕様を表2に示した。
【0054】
(比較例2)
実施例1で準備した有機不織布につき、白金の成膜を行わないものを比較例2の評価用シートとして準備した。
【0055】
(巻き付け性評価)
図6は、巻き付け性評価の方法を模式的に示す斜視図である。
直径20mm~35mmの円柱をそれぞれ準備し、各実施例で得た導電性不織布を長さ50mm、幅10mmに加工して評価用シートとした。同様に各比較例の評価用シートも同じサイズに加工した。
図6に示すように円柱600に評価用シート610を巻き付けて、評価用シートに割れが発生するかを目視で観察した。巻き付け方向は長さ50mmの辺が巻き付け方向(図6の矢印方向)となるようにした。
直径が小さい円柱に対しても評価用シートに割れが生じることなく巻き付けが可能であるほど、巻き付け性が良好であるといえる。
評価結果を表2に示した。
【0056】
(体積抵抗率評価)
各実施例で得た導電性不織布及び各比較例で準備した評価用シート(いずれもサイズ50mm×50mm)につき、JISK7194に準拠した4探針法によって体積抵抗率の評価を行った。
装置としてはロレスターGP MCP-T610(三菱ケミカルアナリテック株式会社製)を使用し、プローブとしてASPプローブMCP-TP03Pを使用した。
電圧10Vで1シートにつき5カ所を測定しその平均値を求めた。
評価結果を表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示した結果から、実施例1~3の導電性不織布は巻き付け性に優れていた。また、体積抵抗率も低くなっていた。
比較例1の評価用シートは炭素繊維からなるため、巻き付け性に劣っていた。
比較例2の評価用シートは導電性を付与する処理をしていない有機不織布であるため、体積抵抗率が高く、導電性不織布ではないためにガス拡散層の用途に適していないものであった。
【符号の説明】
【0059】
1、2 導電性不織布
10 有機繊維
20 導電性物質(粒子)
30 有機不織布
40 導電性物質(膜)
100 燃料電池
200 燃料極
210 水素
220 触媒層
230 水素イオン
240 電子
250 電解質膜
260 燃料極側ガス拡散層
300 空気極
310 酸素
320 触媒層
330 水
360 空気極側ガス拡散層
400 巻付体
410 芯材
510 供給側ロール
520 巻き取り側ロール
530 塗工装置
540 触媒層ペースト
550 ヒーター
600 円柱
610 評価用シート

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6