(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110530
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B60R13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012034
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】浅野 勇太
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB09
3D023BD08
3D023BE03
(57)【要約】
【課題】側突時にシートベルトリトラクタが車内側に進入しても、センターピラートリムが割れることを防止することができる車両側部構造を提供する。
【解決手段】車両側部構造100は、車両側部の中央を上下方向に延びるセンターピラー102と、センターピラーの内側面に位置するシートベルトリトラクタ104と、センターピラーとシートベルトリトラクタを車内側から覆うセンターピラートリム114と、センターピラートリムの車外側に車両前後方向にわたって設けられたリブ122と、リブからさらに車外側に向かって延びてリブを支点として回転するようヒンジ部130を介してリブに接合されている補強部材116と、センターピラートリムから車外側に突出して補強部材がリブを支点として下方に回転することで補強部材と係合する爪部124、126とを備え、補強部材は、爪部と係合したとき、車両側面視でシートベルトリトラクタと少なくとも一部が重なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の中央を上下方向に延びるセンターピラーと、該センターピラーの内側面に位置するシートベルトリトラクタとを備える車両側部構造であって、当該車両側部構造はさらに、
前記センターピラーおよび前記シートベルトリトラクタを車内側から覆うセンターピラートリムと、
前記センターピラートリムの車外側に車両前後方向にわたって設けられたリブと、
前記リブからさらに車外側に向かって延びていて該リブを支点として回転するよう所定のヒンジ部を介して該リブに接合されている補強部材と、
前記センターピラートリムから車外側に突出していて前記補強部材が前記リブを支点として下方に回転することにより該補強部材と係合する爪部とを備え、
前記補強部材は、前記爪部と係合したとき、車両側面視で前記シートベルトリトラクタと少なくとも一部が重なることを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記ヒンジ部の反力によって前記リブを支点として上方に回転しようとする付勢された状態で前記爪部と係合していて、車外側からの外力を受けると、前記リブを支点として下方に回転することにより、車内側に所定のストロークだけ移動することを特徴とする請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記補強部材のヒンジ部は、前記シートベルトリトラクタの上端よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記シートベルトリトラクタは、車両前側に配置されたガスジェネレータを有し、
前記補強部材は、前端に位置する第1箇所と、車両前後方向の中央よりも後方寄りで前記ヒンジ部に近接した頂部と、後端のうち前記第1箇所よりも高い位置にある第2箇所とを結ぶ上に凸の山なり形状の境界線によって区画されていて、
前記補強部材のうち前記境界線の下側の領域は板厚が最も大きく、該境界線を境に板厚は漸減していて、
前記補強部材のうち前記境界線の上側かつ前方側の領域は、前記ガスジェネレータに対面していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の側部には、例えば中央に上下方向に延びるセンターピラーが備えられ、センターピラーの下部の内側面にシートベルトリトラクタが設置されている場合がある。このような車両側部構造では、センターピラーおよびシートベルトリトラクタを車内側から覆う内装部材(センターピラートリム)が取り付けられて、意匠面が形成されている。
【0003】
このため車両側部構造では、側突時にシートベルトリトラクタが車内側に進入してセンターピラートリムに当接し、センターピラートリムが破損する可能性がある。特許文献1には、ピラーの車室内側から取り付けられるピラーガーニッシュが記載されている。
【0004】
このピラーガーニッシュは、シートベルト巻き取り装置(シートベルトリトラクタ)の車室内側を覆っていて、第1のリブと第2のリブとを有する。第1のリブは、シートベルト巻き取り装置側となるピラーガーニッシュの裏面に設けられていて、さらにスリットが形成されている。第2のリブは、第1のリブの側方に所定距離だけ離間して裏面に設けられている。
【0005】
特許文献1では、車両側面衝突などにおいて、サイドエアバッグの展開荷重がピラーガーニッシュに作用した場合に、第1のリブに形成されたスリットにより撓み変形させることで衝撃エネルギーを吸収し、ピラーガーニッシュの割れの発生を防止して入力荷重を低減することができる、としている。また、第1のリブにスリットが形成されている分だけ低下する剛性は、第2のリブにより補完することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のピラーガーニッシュは、複数のリブを設けることで強度を向上させることができる。しかし、このピラーガーニッシュでは、側突時にシートベルトリトラクタからの外力を受けると、リブの根元に応力が集中し易く、リブの根元からピラーガーニッシュが割れてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、側突時にシートベルトリトラクタが車内側に進入しても、センターピラートリムが割れることを防止することができる車両側部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両側部の中央を上下方向に延びるセンターピラーと、センターピラーの内側面に位置するシートベルトリトラクタとを備える車両側部構造であって、車両側部構造はさらに、センターピラーおよびシートベルトリトラクタを車内側から覆うセンターピラートリムと、センターピラートリムの車外側に車両前後方向にわたって設けられたリブと、リブからさらに車外側に向かって延びていてリブを支点として回転するよう所定のヒンジ部を介してリブに接合されている補強部材と、センターピラートリムから車外側に突出していて補強部材がリブを支点として下方に回転することにより補強部材と係合する爪部とを備え、補強部材は、爪部と係合したとき、車両側面視でシートベルトリトラクタと少なくとも一部が重なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、側突時にシートベルトリトラクタが車内側に進入しても、センターピラートリムが割れることを防止することができる車両側部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両側部構造を示す図である。
【
図4】
図3の補強部材をセンターピラートリムに組み付けた状態を示す図である。
【
図6】
図3の車両側部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の代表的な構成は、車両側部の中央を上下方向に延びるセンターピラーと、センターピラーの内側面に位置するシートベルトリトラクタとを備える車両側部構造であって、車両側部構造はさらに、センターピラーおよびシートベルトリトラクタを車内側から覆うセンターピラートリムと、センターピラートリムの車外側に車両前後方向にわたって設けられたリブと、リブからさらに車外側に向かって延びていてリブを支点として回転するよう所定のヒンジ部を介してリブに接合されている補強部材と、センターピラートリムから車外側に突出していて補強部材がリブを支点として下方に回転することにより補強部材と係合する爪部とを備え、補強部材は、爪部と係合したとき、車両側面視でシートベルトリトラクタと少なくとも一部が重なることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、補強部材は、爪部と係合したとき、爪部がセンターピラートリムから車外側に向かって突出しているため、センターピラートリムから車外側に離間した状態となる。また補強部材は、センターピラートリムから車外側に立設したリブにヒンジ部を介して接合されているため、センターピラートリムから車外側に離間した状態となる。
【0014】
つまり補強部材は、爪部と係合したとき、車両側面視でシートベルトリトラクタと少なくとも一部が重なり、シートベルトリトラクタとセンターピラートリムとの間に位置するだけでなく、センターピラートリムから離間した位置にある。このため、側突時にシートベルトリトラクタが車内側に進入すると、シートベルトリトラクタは、まず、補強部材に当接する。つぎに、補強部材は、シートベルトリトラクタからの外力を受けて車内側に押されて車内側に移動することにより、リブに応力が集中することを回避することができる。
【0015】
そして、シートベルトリトラクタは、補強部材を介してセンターピラートリムに当接し、センターピラートリムに直接当接することがない。したがって上記構成によれば、側突時にシートベルトリトラクタがセンターピラートリムに直接当接することを回避して、センターピラートリムが割れることを防止することができる。
【0016】
また補強部材は、展開した状態、すなわちリブからさらに車外側に向かって延びていて所定のヒンジ部を介してリブに接合されている状態で成形し、成形後、リブを支点として下方に回転させて爪部と係合させることにより、センターピラートリムに組み付けることができる。
【0017】
このように、補強部材は、展開した状態で成形した後、下方に回転させてセンターピラートリムに組み付け可能であるため、組み付けた状態での車幅方向の寸法を小さくすることができる。したがって、シートベルトリトラクタとセンターピラートリムとの間隔が小さいスペースであっても、補強部材を配置することができ、スペースを効率的に活用することができる。
【0018】
上記の補強部材は、ヒンジ部の反力によってリブを支点として上方に回転しようとする付勢された状態で爪部と係合していて、車外側からの外力を受けると、リブを支点として下方に回転することにより、車内側に所定のストロークだけ移動する。
【0019】
これにより、補強部材では、爪部と係合した状態で側突時に車外側からの外力を受けると、リブを支点として下方に回転して車内側に移動することができる。このため、リブに接合された補強部材のヒンジ部などに側突時の衝撃が集中することを回避して、補強部材が破損することを防止することができる。さらに、補強部材が外力を受けて所定のストロークだけ移動できるため、衝撃エネルギーを吸収することができ、センターピラートリムの破損も防止することができる。
【0020】
上記の補強部材のヒンジ部は、シートベルトリトラクタの上端よりも上方に位置している。これにより、側突時にシートベルトリトラクタが補強部材に当接しても、シートベルトリトラクタは、補強部材のヒンジ部に直接衝突することがない。このため、補強部材のヒンジ部とリブに側突時の衝撃が集中することを回避して、センターピラートリムの破損を防止することができる。
【0021】
上記のシートベルトリトラクタは、車両前側に配置されたガスジェネレータを有し、補強部材は、前端に位置する第1箇所と、車両前後方向の中央よりも後方寄りでヒンジ部に近接した頂部と、後端のうち第1箇所よりも高い位置にある第2箇所とを結ぶ上に凸の山なり形状の境界線によって区画されていて、補強部材のうち境界線の下側の領域は板厚が最も大きく、境界線を境に板厚は漸減していて、補強部材のうち境界線の上側かつ前方側の領域は、ガスジェネレータに対面している。
【0022】
このように、補強部材は、前端の第1箇所と、ヒンジ部に近接した頂部と、後端の第2箇所とを結ぶ山なり形状の境界線によって区画され、境界線を境に板厚が漸減している。これにより補強部材は、ヒンジ部付近において車両前後方向で板厚が変化していて、さらに側突時に大きな外力を受ける部位となる境界線の下側の領域の板厚を最も大きくしているので、衝撃吸収の最適化を図りつつ、重量やコストを低減することができる。
【0023】
また補強部材では、境界線を境に板厚が漸減しているため、境界線の頂部から車両前後方向に遠ざかるほど板厚が小さくなるため、ヒンジ部と接合したリブのうち、衝撃が集中し易いリブの両端に応力が集中することを低減できる。これにより、側突時の衝撃でセンターピラートリムが割れることを防止することができる。
【0024】
さらに境界線では、その頂部が車両前後方向の中央よりも後方寄りでヒンジ部に近接していて、後端の第2箇所が前端の第1箇所よりも高い位置にある。これにより、補強部材のうち境界線の上側かつ前方側の領域(前側領域)は、境界線の上側かつ後方側の領域よりも広い範囲にわたって形成され、板厚をより小さくすることができる。
【0025】
そして、この補強部材の前側領域は、シートベルトリトラクタの硬度の高いガスジェネレータに対面しているため、ガスジェネレータとの間で広いクリアランスを確保することができる。これにより、補強部材では、側突時にガスジェネレータが前側領域に衝突し、板厚の小さい前側領域が変形するため、衝撃を吸収し易くすることができる。
【実施例0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る車両側部構造100を示す図である。
図2は、
図1の車両側部構造100のA-A断面図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、
図1の車両右側の車両側部構造100を例示するが、車両左側の側部に本実施例を適用してもよい。
【0028】
車両側部構造100は、
図1に示すようにセンターピラー102と、シートベルトリトラクタ104とを備える。センターピラー102は、車両側部の中央を上下方向に延びる部材であり、車内側に位置するインナパネル106を有する。インナパネル106の下部には、シートベルトリトラクタ104を収納するリトラクタ用開口108が形成されている。
【0029】
シートベルトリトラクタ104は、シートベルト110の引き出しおよび巻き取りが可能な装置であって、
図1に示すようにリトラクタ用開口108に収納されてセンターピラー102の内側面に配置されている。またシートベルトリトラクタ104は、硬度の高いガスジェネレータ112を有する。ガスジェネレータ112は、車両緊急時にガスを発生する装置であり、シートベルトリトラクタ104のうち車両前側に配置されている。
【0030】
車両側部構造100はさらに、
図2に示すセンターピラートリム114と、補強部材116とを備える。なお
図1では、センターピラートリム114および補強部材116の外形のみを鎖線で模式的に示している。
図2では、センターピラートリム114および補強部材116と、シートベルトリトラクタ104との位置関係を示すために、シートベルトリトラクタ104を鎖線で示している。
【0031】
センターピラートリム114は、センターピラー102およびシートベルトリトラクタ104を車内側から覆う内装部材であって意匠面を形成する。補強部材116は、平板状の部材であって、
図2に示すようにセンターピラートリム114とシートベルトリトラクタ104の間に位置している。また補強部材116は、
図1に示すように車両側面視でシートベルトリトラクタ104と少なくとも一部が重なるように配置されている。さらに補強部材116は、
図1に示す上に凸の山なり形状の境界線118によって各領域に区画される(
図5参照)。
【0032】
また車両側部構造100は、
図2に示すセンターピラートリム114の裏面120とシートベルトリトラクタ104との車幅方向の間隔の寸法Laが通常の構造よりも小さく設定されている。なおセンターピラートリム114の裏面120とは、意匠面の反対側に位置していて、シートベルトリトラクタ104に対面する面である。
【0033】
図3は、
図1の車両側部構造100の要部を示す図である。
図3(a)は、センターピラートリム114の裏面120を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)のB-B断面図である。
【0034】
車両側部構造100はさらに、
図3(a)に示すようにリブ122と、一対の爪部124、126とを備える。リブ122は、センターピラートリム114の裏面120から車外側に立設し、車両前後方向にわたって設けられている。
【0035】
また補強部材116の上端部128には、ヒンジ部130が形成されている。補強部材116は、リブ122からさらに車外側に向かって延びている展開した状態で成形される。さらに補強部材116は、展開した状態から図中矢印Cに示すようにリブ122を支点として回転するよう上端部128のヒンジ部130を介して、リブ122に接合されている。なお補強部材116は、樹脂製部材であり、ヒンジ部130を介してセンターピラートリム114と接合した一体構造となっている。
【0036】
ヒンジ部130は、
図3(b)に示すようにリブ122の先端に接続されている。またヒンジ部130は、
図2に示すようにシートベルトリトラクタ104の上端すなわちガスジェネレータ112の上端112aよりも上方に位置している。
【0037】
一対の爪部124、126は、センターピラートリム114の裏面120から車外側に突出している。また一対の爪部124、126は、補強部材116の側部となる前端132、後端134とそれぞれ係合するよう車両前後方向に離間している。
【0038】
図4は、
図3の補強部材116をセンターピラートリム114に組み付けた状態を示す図である。
図4(a)は、センターピラートリム114の裏面120を示す図である。
図4(b)、
図4(c)は、
図4(a)のB-B断面、D-D断面を示す図である。
【0039】
補強部材116は、
図3(a)および
図3(b)に示す下端部136を矢印Cに示すように下方に押し下げることにより、
図4(a)および
図4(b)に示すようにリブ122を支点として下方に回転する。そして補強部材116は、ヒンジ部130の反力によってリブ122を支点として上方に回転しようとする付勢された状態で、
図4(a)および
図4(c)に示すように下端部136の前端132、後端134が一対の爪部124、126とそれぞれ係合する。これにより補強部材116は、下端部136が保持されて、センターピラートリム114に組み付けられた状態となる。
【0040】
このように補強部材116は、成形時にはヒンジ部130の反力によって上方に展開した状態であり、センターピラートリム114への組付け時には、ヒンジ部130で下方に折り曲げて変形させることにより、下端部136の前端132、後端134を一対の爪部124、126と係合可能な組付け位置まで移動させることができる。
【0041】
また一対の爪部124、126は、
図4(c)に示す係合部138、140を有する。係合部138、140は、補強部材116のヒンジ部130の反力によって前端132、後端134とそれぞれ当接し係合する部位であり、センターピラートリム114の裏面120から車外側に寸法Lbだけ突出している。さらに補強部材116の下端部136は、前端132、後端134が係合部138、140に係合した状態で、センターピラートリム114の裏面120から車外側に寸法Lcだけ離間している。なお、この寸法Lcは、
図4(c)に示すように寸法Lbよりも補強部材116の板厚分だけ小さい寸法となっている。
【0042】
また
図2に示すように、補強部材116の下端部136とシートベルトリトラクタ104との車幅方向の間隔の寸法Ldは、補強部材116の下端部136とセンターピラートリム114の裏面120との車幅方向の間隔の上記寸法Lcよりも大きく設定されている。なお寸法Lcは、
図4(c)に示す係合部138、140の寸法Lbを適宜変更することで、例えば補強部材116の下端部136の板厚よりも大きく設定することができる。
【0043】
さらに
図2に示すように、補強部材116は、上端部128から下端部136に向かうほどセンターピラートリム114の裏面120から車外側に離間するように傾斜した姿勢になっている。また補強部材116では、ヒンジ部130が形成された上端部128の板厚が小さく、下端部136の板厚が大きく設定されている。
【0044】
車両側部構造100によれば、補強部材116は、センターピラートリム114の裏面120から車外側に向かって突出した一対の爪部124、126と係合したとき、センターピラートリム114の裏面120から車外側に離間した状態となる。また補強部材116は、センターピラートリム114の裏面120から車外側に立設したリブ122にヒンジ部130を介して接合されているため、センターピラートリム114の裏面120から車外側に離間した状態となる。
【0045】
つまり補強部材116は、一対の爪部124、126と係合したとき、車両側面視でシートベルトリトラクタ104と少なくとも一部が重なり、シートベルトリトラクタ104とセンターピラートリム114との間に位置するだけでなく、センターピラートリム114の裏面120から離間した位置にある。
【0046】
このため車両側部構造100では、側突時にシートベルトリトラクタ104が車内側に進入すると、
図2に示すシートベルトリトラクタ104は、まず、補強部材116に当接する。つぎに、補強部材116は、シートベルトリトラクタ104からの
図2に示す外力Fを受けて車内側に押されて車内側に移動することにより、リブ122に応力が集中することを回避することができる。
【0047】
またシートベルトリトラクタ104は、側突時に補強部材116を介してセンターピラートリム114に間接的に当接し、センターピラートリム114に直接当接することがない。したがって車両側部構造100では、側突時にシートベルトリトラクタ104がセンターピラートリム114に直接当接することを回避して、センターピラートリム114が割れることを防止することができる。
【0048】
また補強部材116は、展開した状態、すなわちリブ122からさらに車外側に向かって延びていてヒンジ部130を介してリブ122に接合されている状態で成形し、成形後、リブ122を支点として下方に回転させて一対の爪部124、126と係合させることにより、センターピラートリム114に組み付けることができる。
【0049】
このように、補強部材116は、展開した状態で成形した後、下方に回転させてセンターピラートリム114に組み付け可能であるため、組み付けた状態での車幅方向の寸法を小さくすることができる。したがって車両側部構造100では、
図2に示すようにシートベルトリトラクタ104とセンターピラートリム114との車幅方向の間隔の寸法Laが小さいスペースであっても、補強部材116を配置することができ、スペースを効率的に活用することができる。
【0050】
さらに補強部材116は、ヒンジ部130の反力によってリブ122を支点として上方に回転しようとする付勢された状態で一対の爪部124、126と係合している。このため補強部材116は、側突時に車外側からの
図2に示す外力Fを受けると、リブ122を支点として下方に回転して、車内側に所定のストロークすなわち
図2および
図4(c)に示す寸法Lcだけ移動することができる。
【0051】
このため車両側部構造100では、リブ122に接合された補強部材116のヒンジ部130などに側突時の衝撃が集中することを回避して、補強部材116が破損することを防止することができる。さらに、補強部材116が外力Fを受けて所定のストロークだけ移動できるため、衝撃エネルギーを吸収することができ、センターピラートリム114の破損も防止することができる。
【0052】
さらに、補強部材116のヒンジ部130は、
図2に示すシートベルトリトラクタ104の上端すなわちガスジェネレータ112の上端112aよりも上方に位置している。これにより、シートベルトリトラクタ104は、側突時に補強部材116に当接しても、ヒンジ部130に直接衝突することがない。このため車両側部構造100では、補強部材116のヒンジ部130とリブ122に側突時の衝撃が集中することを回避して、センターピラートリム114の破損を防止することができる。
【0053】
図5は、
図1の補強部材116を示す図である。
図5(a)は、補強部材116が
図1に示す境界線118によって各領域に区画されている状態を示す図である。
図5(b)は、
図5(a)のE-E断面図である。
【0054】
境界線118は、
図5(a)に示すように前端132に位置する第1箇所142と、頂部144と、後端134に位置する第2箇所146とを結ぶ上に凸の山なり形状を有する。境界線118の頂部144は、車両前後方向の中央よりも後方寄りで上端部128のヒンジ部130に近接している。後端134の第2箇所146は、前端132の第1箇所142よりも高い位置にある。
【0055】
そして補強部材116は、境界線118によって、境界線118の下側の中央領域148と、境界線118の上側かつ前方側の前側領域150と、境界線118の上側かつ後方側の後側領域152とに区画されている。補強部材116では、
図5(b)に示すように中央領域148の板厚が最も大きく、境界線118を境に板厚は漸減していて、前側領域150の板厚が最も小さくなっている。また前側領域150は、硬度の高いガスジェネレータ112に対面している(
図1参照)。
【0056】
このように補強部材116は、境界線118によって中央領域148、前側領域150および後側領域152に区画され、境界線118を境に板厚が漸減している。このため、補強部材116は、境界線118の頂部144が近接するヒンジ部130付近において車両前後方向で板厚が変化する。そして補強部材116は、側突時に大きな外力を受ける部位となる境界線の下側の中央領域148の板厚を最も大きくしているので、衝撃吸収の最適化を図りつつ、重量やコストを低減することができる。
【0057】
また補強部材116では、境界線118の頂部144から車両前後方向に遠ざかるほど板厚が小さくなるため、ヒンジ部130と接合したリブ122のうち、ヒンジ部130の両端154、156と接合し衝撃が集中し易いリブ122の両端に応力が集中することを低減できる。これにより、側突時の衝撃でセンターピラートリム114が割れることを防止することができる。
【0058】
さらに境界線118は、その頂部144が車両前後方向の中央よりも後方寄りでヒンジ部130に近接していて、後端134の第2箇所146が前端132の第1箇所142よりも高い位置にある。これにより、補強部材116は、前側領域150を後側領域152よりも広い範囲にわたって形成し、板厚をより小さくすることができる。なお前側領域150の板厚は、ここでは後側領域152の板厚よりも小さくしたが、これに限られず、後側領域152と同じ板厚としてもよく、後側領域152の板厚より大きくしてもよい。
【0059】
そして補強部材116では、板厚の小さい前側領域150がシートベルトリトラクタ104の硬度の高いガスジェネレータ112に対面しているため、ガスジェネレータ112との間で広いクリアランスを確保することができる。これにより補強部材116は、側突時にガスジェネレータ112が前側領域150に衝突して、板厚の小さい前側領域150が変形するため、衝撃を吸収し易くすることができる。
【0060】
図6は、
図3の車両側部構造100の変形例を示す図である。変形例の車両側部構造100Aは、補強部材116に代えて、補強部材116Aを備える点で、上記の車両側部構造100と異なる。
図6(a)は、補強部材116Aが展開した状態でのセンターピラートリム114の裏面120を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)のG-G断面図である。
【0061】
補強部材116Aは、
図6(b)に示すように複数のリブ158を有する。これらのリブ158は、補強部材116Aが展開した状態で下方に向かって突出していて、センターピラートリム114に組み付けられた状態でセンターピラートリム114の裏面120に対面する。またリブ158は、補強部材116Aの表面から遠ざかるほど薄くなる形状となっている。
【0062】
このため車両側部構造100Aでは、補強部材116Aが側突時に車外側からの
図2に示す外力Fを受けると、リブ122を支点として下方に回転して車内側に移動する。これにより、補強部材116Aは、センターピラートリム114の裏面120に複数のリブ158が当接して変形することにより、側突時の衝撃を吸収することができる。
【0063】
複数のリブ158は、補強部材116Aが展開した状態で下方に向かって突出しているので、
図6(b)に鎖線で示す金型ブロック160を矢印Hに示す方向にスライドして抜くことで成形することが可能となる。なお複数のリブ158は、図中では車両前後方向に延びるように成形したが、これに限られず、車両上下方向や放射状に延びるように適宜金型ブロックを用意して成形するようにしてもよい。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100、100A…車両側部構造、102…センターピラー、104…シートベルトリトラクタ、106…インナパネル、108…リトラクタ用開口、110…シートベルト、112…ガスジェネレータ、112a…ガスジェネレータの上端、114…センターピラートリム、116、116A…補強部材、118…境界線、120…センターピラートリムの裏面、122、158…リブ、124、126…爪部、128…補強部材の上端部、130…ヒンジ部、132…補強部材の前端、134…補強部材の後端、136…補強部材の下端部、138、140…係合部、142…前端の第1箇所、144…境界線の頂部、146…後端の第2箇所、148…中央領域、150…前側領域、152…後側領域、154、156…ヒンジ部の両端、160…金型ブロック