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  • 特開-鋼管柱の連結構造 図1
  • 特開-鋼管柱の連結構造 図2
  • 特開-鋼管柱の連結構造 図3
  • 特開-鋼管柱の連結構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110532
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】鋼管柱の連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230802BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20230802BHJP
   E04H 12/08 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
F16B7/20 C
E04H12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012036
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 智
(72)【発明者】
【氏名】高木 康秀
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AC16
2E125AG03
2E125BE10
2E125CA53
2E125CA78
3J039AA01
3J039BB01
3J039DA01
(57)【要約】
【課題】鋼管柱同士をテーパー状部分の嵌合で連結するにあたり、別途の回り止めの施工を不要としながら、鋼管柱の断面形状を加工時の亀裂や施工後の応力集中が生じにくい形状にする。
【解決手段】テーパー状の縮径部を含む第1の鋼管柱、およびテーパー状の拡径部を含む第2の鋼管柱を備え、上記縮径部を上記拡径部の内側に嵌合させることによって上記第1の鋼管柱に上記第2の鋼管柱を連結する鋼管柱の連結構造において、上記縮径部および上記拡径部は、互いに対応する非円形の滑らかな閉曲線断面で形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパー状の縮径部を含む第1の鋼管柱、およびテーパー状の拡径部を含む第2の鋼管柱を備え、前記縮径部を前記拡径部の内側に嵌合させることによって前記第1の鋼管柱に前記第2の鋼管柱を連結する鋼管柱の連結構造において、
前記縮径部および前記拡径部は、互いに対応する非円形の滑らかな閉曲線断面で形成される、鋼管柱の連結構造。
【請求項2】
前記縮径部および前記拡径部は、それぞれ前記第1の鋼管柱および前記第2の鋼管柱の円形断面の本体部の端部に形成される、請求項1に記載の鋼管柱の連結構造。
【請求項3】
前記縮径部および前記拡径部は、楕円形断面、片楕円形断面、長円形断面または卵形断面で形成される、請求項1または請求項2に記載の鋼管柱の連結構造。
【請求項4】
前記縮径部および前記拡径部の断面において、短径に対する長径の比は103%以上120%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鋼管柱の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱にテーパー状の縮径部および拡径部を形成し、縮径部を拡径部に嵌合させることによって鋼管柱を連結する技術が知られている。例えば、特許文献1および特許文献2には、2つの鋼管のテーパー状部分を面接触させた上でボルトを用いて固定する技術が記載されている。特許文献3には、ボルト等の部材点数を増やすことなく鋼管柱同士を互いに対して回転しないように連結するために、2つの鋼管が面接触する部分を回転不能な多角形断面にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5858816号公報
【特許文献2】特開2016-191213号公報
【特許文献3】特開2019-94676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献3に記載された技術では、連結された鋼管の回り止めのためのボルト等の施工が不要になるために施工性が向上する。ただし、その一方で、連結部の鋼管の断面が角部を含むために加工時に角部から亀裂が生じる可能性があり、また施工後も角部への応力集中が生じやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、鋼管柱同士をテーパー状部分の嵌合で連結するにあたり、別途の回り止めの施工を不要としながら、鋼管柱の断面形状を加工時の亀裂や施工後の応力集中が生じにくい形状にすることが可能な鋼管柱の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]テーパー状の縮径部を含む第1の鋼管柱、およびテーパー状の拡径部を含む第2の鋼管柱を備え、上記縮径部を上記拡径部の内側に嵌合させることによって上記第1の鋼管柱に上記第2の鋼管柱を連結する鋼管柱の連結構造において、上記縮径部および上記拡径部は、互いに対応する非円形の滑らかな閉曲線断面で形成される、鋼管柱の連結構造。
[2]上記縮径部および上記拡径部は、それぞれ上記第1の鋼管柱および上記第2の鋼管柱の円形断面の本体部の端部に形成される、[1]に記載の鋼管柱の連結構造。
[3]上記縮径部および上記拡径部は、楕円形断面、片楕円形断面、長円形断面または卵形断面で形成される、[1]または[2]に記載の鋼管柱の連結構造。
[4]上記縮径部および上記拡径部の断面において、短径に対する長径の比は103%以上120%以下である、[1]から[3]のいずれか1項に記載の鋼管柱の連結構造。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、互いに嵌合する縮径部および拡径部が非円形の断面で形成されているため、例えば鋼管柱にねじり力が作用した場合でも接触面で作用する支圧力によって回転に抵抗することができる。また、縮径部および拡径部が滑らかな閉曲線断面で形成されることによって、断面において角部が形成されない。従って、上記の構成によれば、鋼管柱同士をテーパー状部分の嵌合で連結するにあたり、別途の回り止めの施工を不要としながら、鋼管柱の断面形状を加工時の亀裂や施工後の応力集中が生じにくい形状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の連結構造を構成する第1の鋼管柱を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の連結構造を構成する第2の鋼管柱を示す図である。
図3図1および図2に示した鋼管柱の連結構造を示す縦断面図である。
図4】本発明の実施形態における縮径部および拡径部の断面形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る鋼管柱の連結構造を構成する第1の鋼管柱を示す図であり、(a)が端面図、(b)が縦断面図、(c)が横断面図である。図1に示された鋼管柱10は、鋼管柱を上下方向に連結する場合に下側に位置する鋼管柱である。なお、以下の説明では鋼管柱が上下方向に連結される場合について説明するが、例えば鋼管柱が連結後に建植される場合など、鋼管柱が水平方向に連結される場合もありうる。鋼管柱10は、軸方向に延びる本体部11と、本体部11の上端部に続いて形成されるテーパー状の縮径部12とを含む。本体部11は、図1(c)の横断面図に示されるように、外周の直径D1の円形断面で形成される。本体部11もテーパー状に、つまり下にいくほど直径が大きくなるように形成されてもよい。一方、縮径部12は、後述する鋼管柱20の拡径部の内側に嵌合する部分であり、非円形の滑らかな閉曲線断面、具体的には楕円形断面で形成される。図1(a)の端面図には、縮径部12の上端部が、外周の長径d1、短径d2(d1>d2)の楕円形として図示されている。本体部11と縮径部12との間には移行部13が形成される。移行部13において、鋼管柱10の断面形状は円形から楕円形に移行する。
【0011】
図2は本発明の一実施形態に係る鋼管柱の連結構造を構成する第2の鋼管柱を示す図であり、(a)が横断面図、(b)が縦断面図、(c)が端面図である。図2に示された鋼管柱20は、鋼管柱を上下方向に連結する場合に上側に位置する鋼管柱である。鋼管柱20は、本体部21と、本体部21の下端部に続いて形成されるテーパー状の拡径部22とを含む。本体部21は、図2(a)の横断面図に示されるように、外周の直径D2の円形断面で形成される。上記の鋼管柱10の本体部11との関係では、D1>D2である。本体部21もテーパー状に、つまり上にいくほど直径が小さくなるように形成されてもよい。一方、拡径部22は、上述した鋼管柱10の縮径部12が内側に嵌合する部分であり、縮径部12と同様の非円形の滑らかな閉曲線断面、具体的には楕円形断面で形成される。図2(c)の端面図には、拡径部22の下端部が、内周の長径d3、短径d4(d3>d4)の楕円形として図示されている。本体部21と拡径部22との間には移行部23が形成される。移行部23において、鋼管柱20の断面形状は円形から楕円形に移行する。
【0012】
図3は、図1および図2に示した鋼管柱の連結構造を示す縦断面図である。図示されるように、鋼管柱10および鋼管柱20は、鋼管柱10の縮径部12を鋼管柱20の拡径部22の内側に嵌合させることによって互いに連結される。縮径部12の外周面を拡径部22の内周面に面接触させたときの嵌合区間Sは、図1および図2にも示されている。この嵌合区間Sにおいて、縮径部12および拡径部22の断面は互いに対応する。具体的には、嵌合区間Sの上端では拡径部22の内周の形状が縮径部12の上端部における外周の形状、すなわち長径d1、短径d2の楕円形に実質的に一致する。また、嵌合区間Sの下端では縮径部12の外周の形状が拡径部22の下端部における内周の形状、すなわち長径d3、短径d4の楕円形に実質的に一致する。
【0013】
嵌合区間Sにおいて縮径部12の外周および拡径部22の内周のそれぞれの楕円形の長径および短径が互いに対応する変化率で連続的に変化することによって、嵌合区間Sにおいて縮径部12の外周面と拡径部22の内周面とを面接触させ、鋼管柱10と鋼管柱20とを安定的に連結することができる。このような縮径部および拡径部が例えば円形断面である場合には、鋼管柱に作用するねじり力に対して接触面で作用する摩擦力だけでは抵抗できずに鋼管柱同士が互いに対して回転する可能性がある。この場合、例えば開孔を形成してボルトを挿通するなどの回り止めの施工が必要になる。これに対して、本実施形態では、嵌合区間Sにおいて縮径部12および拡径部22が楕円形断面のような非円形の断面で形成されているため、例えば鋼管柱20にねじり力が作用した場合も接触面で作用する支圧力によって回転に抵抗することができる。従って、本実施形態では別途の回り止めの施工は必要とされず、例えば上記の円形断面で回り止め施工を実施する場合に比べて部品数が低減され、施工性が向上する。
【0014】
図4は、本発明の実施形態における縮径部および拡径部の断面形状の例を示す図である。なお、それぞれの断面形状は単線で図示されているが、この形状が縮径部の内周および拡径部の外周の形状に対応する。上述のように、本発明の実施形態における縮径部および拡径部の断面形状は、非円形の滑らかな閉曲線断面として総称される。ここで、「非円形」は、断面形状が全体として円形ではないことを意味する。断面形状が部分的に円弧を含むことはありうる。「滑らかな閉曲線断面」は、数学的に定義される滑らかな閉曲線、より厳密には滑らかな単純閉曲線によって形成される断面を意味する。滑らかな閉曲線は、折れ点を含まずに接続される円弧、楕円弧、放物線、非円弧曲線および直線によって構成される。本発明の実施形態では、上記のように鋼管柱の縮径部および拡径部が滑らかな閉曲線断面で形成されるため、縮径部および拡径部の断面において角部が形成されない。これによって、加工時の亀裂や施工後の応力集中を生じにくくすることができる。
【0015】
具体的には、縮径部および拡径部の断面形状は、例えば図4(a)に示す楕円形、図4(b)に示す片楕円形、図4(c)に示す長円形、図4(d)に示す卵形、または図4(e)に示すような円弧と直線の組み合わせによる形状でありうる。ここで、片楕円形は、半円弧とその半円弧の直径を長径または短径とする楕円弧とを組み合わせた形状である。これらの形状はいずれも非円形であることを示すため、図4にはこれらの形状と部分的に径が共通する円形が参考のために破線で図示されている。長円形は、同じ直径の2つの半円弧と、それらの間をつなぐ直線とを組み合わせた形状である。卵形は、一方の短径が他方の長径であるような2つの楕円弧を組み合わせた形状である。これらの形状において、円弧、楕円弧および直線はいずれも折れ点を形成することなく滑らかに接続されている。この場合、円弧に接続される直線は接続点における円弧の接線になる。図4には、この場合の接線も参考のために破線で図示されている。
【0016】
また、図4には、それぞれの形状における長径dAおよび短径dBが示されている。一般的に定義される楕円形の長径および短径と同様に、片楕円形や長円形、卵形のような形状でも長径および短径を定義することができる。具体的には、図形の内部を通過する距離が最も長い直線の長さを長径として定義することができ、図形が長径の直線に対して線対称であれば、長径の直線に直交する直線のうち、図形の内部を通過する距離が最も長い直線の長さを短径として定義することができる。上述したように接触面で作用する支圧力によって回転に抵抗する効果をより確実に発揮するために、縮径部および拡径部の断面形状において短径に対する長径の比は103%以上であることが好ましい。一方、例えば元の円形断面を変形させて上記のような非円形の断面にする際の加工性を考慮すると、縮径部および拡径部の断面形状において短径に対する長径の比は120%以下であることが好ましい。同様の観点から、より好ましくは、縮径部および拡径部の断面形状における短径に対する長径の比は105%以上、110%以下である。
【0017】
上述したような本発明の実施形態に係る鋼管柱の連結構造は、例えばアンテナ、照明灯、信号機、スピーカーまたは避雷針などを取り付ける鋼製組立柱に利用可能である。3本以上の鋼管柱を連結することも可能である。例えば、上述した例において鋼管柱10が、上端部に形成される縮径部12とともに下端部に形成される拡径部を含み、別の鋼管柱の上方に連結されていてもよい。同様に、鋼管柱20が、下端部に形成される拡径部22とともに上端部に形成される縮径部を含み、別の鋼管柱が上方に連結されていてもよい。
【0018】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0019】
10,20…鋼管柱、11,21…本体部、12…縮径部、22…拡径部、13,23…移行部、S…嵌合区間、d1,d3,dA…長径、d2,d4,dB…短径。
図1
図2
図3
図4