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特開2023-110555気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110555
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20230802BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20230802BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C03B8/04 Q
C03B37/018 Z
B01J4/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012081
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】角 児太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝也
【テーマコード(参考)】
4G014
4G021
4G068
【Fターム(参考)】
4G014AH12
4G021EA00
4G068AA02
4G068AB02
4G068AC01
4G068AC13
4G068AD40
4G068AE01
4G068AF01
4G068AF17
4G068AF36
(57)【要約】
【課題】スート体製造用気化装置への液体原料の供給にあたり、液体原料用フィルターの詰まり具合を把握しつつ、スート体の製造を停止することなく、液体原料用フィルターの交換ができるようにした、気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法を提供する。
【解決手段】スート体の製造に用いられる気化装置への液体原料の供給システムであり、前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入するための液体原料導入ライン及び前記液体原料導入ラインにそれぞれ設けられた液体原料用フィルター、をそれぞれ有する第一及び第二の液体原料供給機構と、前記気化装置の気化タンクへの前記液体原料の導入速度をモニターするための液体原料導入速度測定機器と、前記第一及び第二の液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構と、を少なくとも含むようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成石英ガラス母材であるスート体を製造するのに用いられる気化装置への珪素含有化合物を含む液体原料の供給システムであり、
前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入するための第一の液体原料導入ライン及び前記第一の液体原料導入ラインに設けられた第一の液体原料用フィルター、を有する第一の液体原料供給機構と、
前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入するための第二の液体原料導入ライン及び前記第二の液体原料導入ラインに設けられた第二の液体原料用フィルター、を有する第二の液体原料供給機構と、
前記気化装置の気化タンクへの前記液体原料の導入速度をモニターするための液体原料導入速度測定機器と、
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構と、
を少なくとも含む、気化装置への液体原料供給システム。
【請求項2】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のそれぞれが、パージを行うためのパージ用不活性ガス導入ライン及びパージ排気ラインをさらに有する、請求項1記載の気化装置への液体原料供給システム。
【請求項3】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のそれぞれが、前記液体原料のリークが無いかを検知するためのリーク検知用不活性ガス導入口及び液体原料導入ライン内の空気を置換するための真空ポンプ接続口、をさらに有する、請求項1又は2記載の気化装置への液体原料供給システム。
【請求項4】
前記液体原料の導入速度が、下記式(1)で表されるγである、請求項1~3いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給システム。
γ=(液体原料の導入質量速度)÷(気化装置からの気体原料の導出質量速度) …(1)
【請求項5】
前記γが、4≦γ<20である、請求項4記載の気化装置への液体原料供給システム。
【請求項6】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構に加えて、さらに液体原料供給機構を含み、前記弁機構がそれら液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構である、請求項1~5いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給システム。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給システムを用いた、気化装置への液体原料供給方法であり、
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれかの液体原料供給機構により前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入する工程と、
前記気化装置の気化タンクへの前記液体原料の導入速度をモニターする工程と、
前記液体原料の導入速度の低下に応じて、前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を弁機構で切り替える工程と、
を含む気化装置への液体原料供給方法。
【請求項8】
前記弁機構で切り替え後、前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料用フィルターを交換する工程を含む、請求項7記載の気化装置への液体原料供給方法。
【請求項9】
前記弁機構で切り替え後、前記液体原料用フィルターを交換する工程の前後に、前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料導入ラインに対してパージを行うパージ工程を含む、請求項8記載の気化装置への液体原料供給方法。
【請求項10】
前記交換する工程の後に、
前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料導入ラインに対して、リークが無いかを検知するリーク検知工程と、
前記リーク検知工程後に、前記導入ライン内の空気を置換する置換工程と、
を含む、請求項8又は9記載の気化装置への液体原料供給方法。
【請求項11】
前記液体原料の導入速度が、下記式(1)で表されるγである、請求項7~10いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給方法。
γ=(液体原料の導入質量速度)÷(気化装置からの気体原料の導出質量速度) …(1)
【請求項12】
前記γが、4≦γ<20である、請求項11記載の気化装置への液体原料供給方法。
【請求項13】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構に加えて、さらに液体原料供給機構を含み、前記弁機構がそれら液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構であり、
前記弁機構で切り替える工程が、前記弁機構でそれら液体原料供給機構のいずれかに切り替える工程を含む、請求項7~12いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給方法。
【請求項14】
請求項1~6いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給システムを用いて、合成石英ガラス母材であるスート体が製造されてなるスート体の製造方法。
【請求項15】
請求項7~13いずれか1項記載の気化装置への液体原料供給方法を用いて、合成石英ガラス母材であるスート体が製造されてなるスート体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiOスート体を製造するのに用いられる気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスは、高純度で、耐化学薬品性に優れているところから、従来から、半導体処理用、光学用、理化学機器用、装飾用等の材料として広く使用されている。合成石英ガラスの製造にあたっては、スート体といわれるSiOスート体(多孔質石英ガラス母材とも呼ばれる)を製造し、それを焼結透明化することが一般的である。スート体の製造では、珪素含有の液体のガラス原料を気化し、火炎加水分解や熱分解によって、ターゲット上に微細なSiO粒子を堆積することによりスート体を製造する。
【0003】
上記液体のガラス原料を気化するのに用いられる原料気化供給装置である気化装置(気化器とも呼ばれる)としては、例えば特許文献1に記載されるような気化器120がある。
【0004】
このような気化装置の気化タンク内に、異物が混入すると、液体原料が気化されたときに不純物が混入する可能性がある。このため、液体原料中の不純物、異物、結晶物等が入らないように、気化装置への液体原料の導入ラインには液体原料用フィルターが設けられているが、液体原料用フィルターが目詰まりすると、液体原料の気化装置への導入速度が低下してしまう。なお、本願明細書において、ラインとは液体や気体が通る道である配管を指す。
【0005】
図9に、従来の気化装置への液体原料供給システムを示す。図9において、符号100は、従来の気化装置への液体原料供給システムである。液体原料供給システム100は、液体原料であるSiClを、SiCl導入ライン104から、途中に液体原料用フィルター106が設けられた液体原料導入ライン108を通して、気化装置110に送るための液体原料供給システムである。また、液体原料導入ライン108をパージするためのパージガスであるNが通るN導入ライン102も設けられている。N導入ライン102、SiCl導入ライン104、及び液体原料導入ライン108のそれぞれには、弁112,114,116が設けられている。
【0006】
液体原料供給システム100の先には原料気化供給装置である気化装置110が設けられている。気化装置110は、液体原料導入ライン108から送られてきたSiCl等の液体原料を気化させるための気化タンク118を有しており、途中に気体原料用フィルター120及びマスフローコントローラ122が設けられた気体原料導入ライン124を有している。
【0007】
気化装置110の先には成長炉126が設けられている。成長炉126には、酸水素バーナー128が設けられており、酸水素バーナー128内の同心管に気体原料導入ライン124から、気化したSiClガスを供給することにより成長炉126でスート堆積が行われ、スート体が製造される。
【0008】
気化装置110内の気化タンクに液体原料を供給するラインに液体原料用フィルター106を設置した場合、液体原料中に含まれる不純物等が液体原料用フィルター106に蓄積し徐々に目詰まりを起こす。その為、目詰まりが進行した場合は液体原料用フィルター106を交換する必要があるが、従来は液体原料用フィルター106の詰まりを把握する術がない為、詰まりが進行してしまう十分前に液体原料用フィルター106を交換する必要があり、その交換の頻度は増加していた。しかしそれでも上流側から多くの不純物が流れてきた場合には急速に目詰まりが進行し、予期せぬタイミングでの交換が必要になる場合がありスート体の生産活動に大きな影響を与えることがあった。
【0009】
また、液体原料用フィルター106の交換の際には導入ラインの配管内の液体原料とその残留ガスを十分に除去する必要がある。SiClは空気と接触すると腐食性ガスであるHClを生成する為、装置の保全上の問題が発生する事と人体へ害を与える可能性がある。
よってNによる十分なパージが必要となるが、液体原料導入ライン108及び液体原料用フィルター106を十分に安全な状態にするには120時間以上のパージが必要となり、更に液体原料用フィルター106の交換後に液体原料導入ライン108の配管内に混入した空気を置換するのに更に48時間以上のパージが必要となる。パージと交換作業を合わせると1度の液体原料用フィルター106の交換において170時間以上のスート体の生産活動時間が失われることとなる。また、交換する頻度も多く、更に1回の交換に要する時間が長い為、生産活動への影響は大きい。
【0010】
尚、気化タンク118前の液体原料導入ライン108の配管に設置する液体原料用フィルター106は液体原料の輸送経路において、液体原料に混入する不純物を気化タンク118に混入させない為に設置するものである。
【0011】
液体SiClは気化タンク118内に導入され気化し導出されるが、製造、輸送、貯蔵等の経路でわずかに混入した不純物の個体は気化タンク118内で気化されずに徐々に蓄積する為、長時間使用することにより気化タンク118内の不純物は濃縮されて不純物濃度は高くなる。また、もし常温では固体であっても気化タンク内の温度(70℃~80℃)で融解する物質が混入していた場合、わずかでも蒸気圧があれば、気化されたSiClガスに混入することが懸念される。不純物濃度の管理がppbレベルで求められる高純度合成石英ガラスにおいて、わずかな量であってもSiClガスに不純物が混入し製造された合成石英ガラス製品は品質上に大きな問題を有する可能性がある。
【0012】
さらに、液体SiClに含まれる不純物は製造、輸送、貯蔵等のどこで混入するのか特定するのは煩雑で難しく、その原因調査と対策には多額のコストがかかる。よって気化タンク内に入る前に液体の状態でフィルタリングする事は実用的かつコスト面でも優位である。
【0013】
このため、従来は、液体原料用フィルターの目詰まりの程度を作業者が把握し、液体原料が気化装置に供給できているうちに、タイミングを見て液体原料用フィルターの交換をする必要がある。しかしながら、前記液体原料用フィルターの目詰まりの程度は区々であり、前記液体原料用フィルターの交換時期を予測することは困難であった。
【0014】
また、前記液体原料用フィルターを交換するにあたっては、腐食性有害物質が発生する液体原料の場合には、パージを十分に行う必要があり、前記液体原料用フィルターの交換にあたっては、交換の前後に長い時間を要するが、その間は、当該ラインでのスート体の製造作業を停止せざるを得ないという問題があった。
【0015】
例えば、特許文献2には、ガラス原料を気化させる気化装置からバーナーに送られる原料ガスの流路にある気体用のフィルターの交換時間を短縮させる方法が開示されている。しかし、特許文献2では、あくまでも、気化装置からバーナーに送られる原料ガスの流路にある気体用のフィルターに関する技術であり、前記液体原料用フィルターの目詰まりの問題は解消しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特表2015-502316号公報
【特許文献2】特開2021-8391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するのに用いられる気化装置への液体原料の供給にあたり、液体原料用フィルターの詰まり具合を把握しつつ、スート体の製造を停止することなく、液体原料用フィルターの交換ができるようにした、気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の気化装置への液体原料供給システムは、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するのに用いられる気化装置への珪素含有化合物を含む液体原料の供給システムであり、前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入するための第一の液体原料導入ライン及び前記第一の液体原料導入ラインに設けられた第一の液体原料用フィルター、を有する第一の液体原料供給機構と、前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入するための第二の液体原料導入ライン及び前記第二の液体原料導入ラインに設けられた第二の液体原料用フィルター、を有する第二の液体原料供給機構と、前記気化装置の気化タンクへの前記液体原料の導入速度をモニターするための液体原料導入速度測定機器と、前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構と、を少なくとも含む、気化装置への液体原料供給システムである。
【0019】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のそれぞれが、パージを行うためのパージ用不活性ガス導入ライン及びパージ排気ラインをさらに有するのが好適である。
【0020】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のそれぞれが、前記液体原料のリークが無いかを検知するためのリーク検知用不活性ガス導入口及び液体原料導入ライン内の空気を置換するための真空ポンプ接続口、をさらに有するのが好適である。
【0021】
前記液体原料の導入速度が、下記式(1)で表されるγであるのが好適である。
γ=(液体原料の導入質量速度)÷(気化装置からの気体原料の導出質量速度) …(1)
【0022】
前記γが、4≦γ<20であるのが好適である。
【0023】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構に加えて、さらに液体原料供給機構を含み、前記弁機構がそれら液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構である、のが好適である。
【0024】
本発明の気化装置への液体原料供給方法は、前記気化装置への液体原料供給システムを用いた、気化装置への液体原料供給方法であり、前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれかの液体原料供給機構により前記気化装置の気化タンクへ前記液体原料を導入する工程と、前記気化装置の気化タンクへの前記液体原料の導入速度をモニターする工程と、前記液体原料の導入速度の低下に応じて、前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を弁機構で切り替える工程と、を含む気化装置への液体原料供給方法である。
【0025】
前記弁機構で切り替え後、前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料用フィルターを交換する工程を含むのが好適である。
【0026】
前記弁機構で切り替え後、前記液体原料用フィルターを交換する工程の前後に、前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料導入ラインに対してパージを行うパージ工程を含む、のが好適である。
【0027】
前記交換する工程の後に、前記液体原料が流れなくなった方の前記液体原料供給機構の液体原料導入ラインに対して、リークが無いかを検知するリーク検知工程と、前記リーク検知工程後に、前記導入ライン内の空気を置換する置換工程と、を含む、のが好適である。
【0028】
前記液体原料の導入速度が、下記式1で表されるγであるのが好適である。
γ=(液体原料の導入質量速度)÷(気化装置からの気体原料の導出質量速度) …(1)
【0029】
前記γが、4≦γ<20であるのが好適である。
【0030】
前記第一の液体原料供給機構及び前記第二の液体原料供給機構に加えて、さらに液体原料供給機構を含み、前記弁機構がそれら液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構であり、前記弁機構で切り替える工程が、前記弁機構でそれら液体原料供給機構のいずれかに切り替える工程を含むのが好適である。
【0031】
本発明のスート体の製造方法は、前記気化装置への液体原料供給システムを用いて、合成石英ガラス母材であるスート体が製造されてなるスート体の製造方法である。
【0032】
本発明のスート体の製造方法は、前記気化装置への液体原料供給方法を用いて、合成石英ガラス母材であるスート体が製造されてなるスート体の製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するのに用いられる気化装置への液体原料の供給にあたり、液体原料用フィルターの詰まり具合を把握しつつ、スート体の製造を停止することなく、液体原料用フィルターの交換ができるようにした、気化装置への液体原料供給システム及び液体原料供給方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る気化装置への液体原料供給システム、気化装置及び成長炉の構成図である。
図2】γの値の経時的変化を示すグラフである。
図3】第一の液体原料導入ラインへの切り替えの様子を示す模式図である。
図4図3の次の段階を示す模式図である。
図5】第二の液体原料導入ラインへの切り替えの様子を示す模式図である。
図6図5の次の段階を示す模式図である。
図7】液体原料導入ラインを切り替える際のフィルター交換前のフローを示すフローチャートである。
図8】液体原料導入ラインを切り替える際のフィルター交換後のフローを示すフローチャートである。
図9】従来の気化装置への液体原料供給システム、気化装置及び成長炉の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0036】
本発明に係る気化装置への液体原料供給システム、気化装置及び成長炉の構成図を図1に示す。本発明に係る気化装置への液体原料供給システム10は、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するのに用いられる気化装置への珪素含有化合物を含む液体原料の供給システムである。
【0037】
図1において、気化装置への液体原料供給システム10は、前記気化装置110の気化タンク118へ前記液体原料を導入するための第一の液体原料導入ライン12及び前記第一の液体原料導入ライン12に設けられた第一の液体原料用フィルター14、を有する第一の液体原料供給機構16と、前記気化装置110の気化タンク118へ前記液体原料を導入するための第二の液体原料導入ライン18及び前記第二の液体原料導入ライン18に設けられた第二の液体原料用フィルター20、を有する第二の液体原料供給機構22と、前記気化装置110の気化タンク118への前記液体原料の導入速度をモニターするための液体原料導入速度測定機器24と、前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を切り替える弁機構25と、を少なくとも含む、気化装置への液体原料供給システムである。弁機構25としては、バルブ26a~26fを設けた例を示した。
【0038】
前記液体原料としては、合成石英ガラス母材の製造に用いられる公知の珪素含有化合物を含む液体原料を広く使用することができ特に制限はないが、例えば、SiCl等が好適に用いられる。図1では、前記液体原料として、SiClの例を示した。
【0039】
また、前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のそれぞれが、パージを行うためのパージ用不活性ガス導入ライン28,30及びパージ排気ライン52,54をさらに有している。なお、ここでパージ排気ライン52,54とはパージ用不活性ガスの排気のための通り道である配管を指す。また、パージ用不活性ガスとしては、Nの例を示したが、パージに使われる公知の不活性ガスであればいずれも適用可能であり、例えば、N、アルゴン等が好適に用いられる。パージ排気ライン52,54はパージ用不活性ガス導入ライン28,30にベント用に接続されている。
【0040】
前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のそれぞれが、前記液体原料のリークが無いかを検知するためのリーク検知用不活性ガス導入口32,34及び液体原料導入ライン内の空気を置換するための真空ポンプ接続口36,38をさらに有している。符号48,50は真空ポンプである。リーク検知用不活性ガスとしては、配管の漏れの確認に使用可能な公知の不活性ガスが適用可能であり、例えば、図1に示したHeが好適に用いられる。
【0041】
さらにまた、前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のそれぞれには、排液のためのドレイン41,43を備えたドレインライン40,42が設けられている。
【0042】
前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のそれぞれの側のパージ用不活性ガス導入ライン28,30及びリーク検知用不活性ガス導入口32,34、並びにドレインライン40,42、パージ排気ライン52,54には、バルブ44a~44h,46a~46hがそれぞれ設けられている。
【0043】
このように、本発明では、気化装置110の気化タンク118に珪素含有化合物を含む液体原料(図示例ではSiCl)を導入するラインに、液体原料用フィルター、パージ用不活性ガス(図示例では窒素)導入口、リーク検知用不活性ガス(図示例ではヘリウム)導入口、真空ポンプ、ドレイン、各種バルブを備えた液体原料供給機構を2系列並列に設置し、それぞれを第一の液体原料用フィルター14を通るラインを第一の液体原料供給機構16、第二の液体原料用フィルター20を通るラインを第二の液体原料供給機構22とした。
【0044】
さらに気化タンク118の上流には液体原料の導入速度を測定する液体原料導入速度測定機器24を設置した(図1)。液体原料導入速度測定機器24としては、液体マスフローメーターが最適であるが、SiClなどの腐食性に耐えうる流量計であれば超音波式やフローメーターでもよい。また、液体原料導入速度測定機器24としては、図示の例の他に、気化タンク118の下にロードセルを設置し、導入された液体原料の質量とその経過時間を測定する事により単位時間当たりの質量流量を算出する構成としてもよい。図示例では、液体原料導入速度測定機器24としては、液体マスフローメーターの例を示した。
【0045】
第一の液体原料用フィルター14及び第二の液体原料用フィルター20に適したフィルターとしては、ステンレス鋼を用いた金属フィルターが好適であり、例えば、濾過材には、SiClなどの腐食性に耐えうる素材を使用しているのが好適であり、例えば、通常のステンレス材よりも腐食に強く、耐薬品性に優れるSUS316L材などを使用した金属フィルターを好適に使用できる。また、濾過精度としては、0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下の濾過精度のフィルターが好適である。
【0046】
液体原料導入速度測定機器24を設置する事により、第一の液体原料用フィルター14及び第二の液体原料用フィルター20の詰まりの程度を経時的に把握することができ、交換作業を詰まりの実態に合わせて行う事ができる。
【0047】
前記液体原料の導入速度としては、下記式(1)で表されるγであるのが好適である。
γ=(液体原料の導入質量速度)÷(気化装置からの気体原料の導出質量速度) …(1)
【0048】
上記のように、気化タンク118内への液体原料の導入質量速度を気化タンク118から導出される気体原料の導出質量速度で除した値をγ値と定義する。
【0049】
γ値を算出する際には、気化タンク118内に液体原料を導入するバルブ26d(図1)が、「開」のタイミングで、液体原料導入速度測定機器24である液体マスフローメーターで単位時間当たりの導入される液体原料の質量を計測し、その値(液体原料の導入質量速度)を、原料ガスとしてバーナー128に供給しているガスマスフローコントローラ122の単位時間当たりの導出される気体原料の質量(気化装置からの気体原料の導出質量速度)で除して求める事ができる。
【0050】
γ値としては1以上が好適である。γ値が1を下回った状態でスート体の製造を継続すると、気化タンク118内の液体原料が無くなり、バーナー128への気化原料の供給が困難になる。安定してスート体の製造を実施できるγ値としては、γ≧4がより適切であり、γ<4はフィルター交換の目安として適している。
【0051】
また逆にγ≧20となると気化タンク内に急激に液体原料が導入される事になる為、タンク内の液体原料の温度が一時的に低下し、気化を安定して行う事ができなくなる。よってγ値は4≦γ<20の範囲に管理する事が好ましい。
【0052】
図2に、液体原料導入速度測定機器24である液体マスフローメーターを取り付けてからのγ値の経時変化を示す。γ≦4になった場合に、液体原料用フィルターを、第一の液体原料供給機構16のラインと、第二の液体原料供給機構22のラインを切り替えて、第一の液体原料用フィルター14と第二の液体原料用フィルター20とを交互に交換し使用した。
【0053】
図2では、図2に示したγ値の推移に追記して、第一の液体原料供給機構16ラインと第二の液体原料供給機構22のラインを切り替えたタイミング、即ち第一の液体原料用フィルター14と第二の液体原料用フィルター20とを切り替えて交換したタイミングを付加した。図2に示されるように、γ<4となる周期は不規則でその時々によって大きく異なる状況であった。しかし、液体原料導入速度測定機器24によりγ値を把握する事ができた為、第一の液体原料用フィルター14と第二の液体原料用フィルター20の交換タイミングを適宜把握する事ができた。
【0054】
また、液体原料用フィルター14,20とそれのパージ及び交換に必要なパージ用不活性ガス(図示例では窒素)導入口、真空排気口、パージ排気口、リーク検知用不活性ガス(図示例ではヘリウム)導入口、真空ポンプ、ドレイン、各種バルブを備えた液体原料供給機構を、2系統を並列に設けている事により、スート体の製造を停止させる事なく、液体原料用フィルター14,20を交換する事ができた。
【0055】
なお、図示例では、第一の液体原料供給機構16と第二の液体原料供給機構22という2系列のラインを並列に設置し、それぞれのラインを切り替える例を示したが、前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22に加えて、さらなる液体原料供給機構を設け、弁機構でそれら液体原料供給機構のいずれの液体原料供給機構を液体原料が流れるか、を切り替えるようにすることも可能である。
【0056】
本発明の気化装置への液体原料供給方法は、上述した気化装置への液体原料供給システム10を用いた、気化装置への液体原料供給方法である。
【0057】
本発明の気化装置への液体原料供給方法は、前記気化装置110への前記液体原料の導入速度をモニターする工程と、前記液体原料の導入速度の低下に応じて、前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のいずれの液体原料供給機構を前記液体原料が流れるか、を弁機構25で切り替える工程と、含む。
【0058】
そして、前記液体原料が流れる前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のいずれかの液体原料供給機構に切り替えるにあたっては、液体原料が流れる次の液体原料供給機構に対してパージを行うパージ工程を行うのが好適である。
【0059】
また、前記液体原料が流れる前記第一の液体原料供給機構16及び前記第二の液体原料供給機構22のいずれかの液体原料供給機構に切り替えるにあたっては、液体原料が流れる次の液体原料供給機構に対して、液体原料のリークが無いかを検知するリーク検知工程と、液体原料が流れる次の液体原料供給機構に対して、前記導入ライン内の空気を置換する置換工程と、を行うのが好適である。
【0060】
<第二の液体原料用フィルター20の交換>
本発明の気化装置への液体原料供給装置における液体原料用フィルター20を交換する際のステップを、図3図4及び図7図8を参照しながら、以下に述べる。
【0061】
第二の液体原料供給機構22の第二の液体原料導入ライン18に設けられた第二の液体原料用フィルター20を使用している状況下(即ち、バルブ26a,26f,26e,26dが開状態及びバルブ26b,26c,46f,46e,46aが閉状態)で、液体原料導入速度測定機器24の測定値により、液体原料用フィルター20の目詰まりが進行していると判断された場合には、以下の手順を行う。
【0062】
まず、第二の液体原料導入ライン18の液体原料用フィルター20から、第一の液体原料供給機構16の第一の液体原料導入ライン12の液体原料用フィルター14に切り替える為に、バルブ44f,44e,44aを閉状態とし、弁機構25によりバルブ26b,26cを開状態、バルブ26f,26eを閉状態とする。
【0063】
次に、図3において実線の矢印で示されるように、第一の液体原料供給機構16の第一の液体原料導入ライン12に設けられた第一の液体原料用フィルター14を使用した状態(即ち、バルブ26a,26b,26c,26dが開状態、バルブ44a,44e,44f,26f,26eが閉状態)のまま、第二の液体原料導入ライン18の第二の液体原料用フィルター20の液体原料を、パージ用不活性ガスであるNで圧送しドレイン43より排液する為、バルブ46c,46h,46d,46g,46eを閉状態のままバルブ46f,46a,46bを開状態とする(図3)。
【0064】
更に、第二の液体原料用フィルター20とその配管をパージするために、バルブ26e,26fを閉状態、バルブ46c,46h,46d,46fを閉状態、バルブ46b,46a,46e,46gを開状態でパージ用不活性ガスであるNをかけ流し、図3の点線の矢印で示される範囲のパージを行う(図7)。なお、本願明細書で、かけ流しパージとは、フローパージのことを指す。更にバルブ46gを開閉する事で窒素バッチパージを行う。
【0065】
更にバルブ26e,26fを閉状態、バルブ46c,46h,46g,46fを閉状態、バルブ46b,46a,46eを開状態でバルブ46dの開閉及び真空ポンプ50を使用する事により、窒素真空バッチパージを行う事で図4の点線の矢印で示される範囲の経路を十分に安全な状況までパージし、バルブ46dを閉状態とする。そして、バルブ26e,26fを閉状態、バルブ46c,46d,46g,46fを閉状態、バルブ46b,46a,46hを開状態で第二の液体原料用フィルター20の液体原料の入口側と出口側、即ち第二の液体原料用フィルター20の上流側と下流側の両方より、パージ用不活性ガスのNを流しながら第二の液体原料用フィルター20を交換する。
【0066】
第二の液体原料用フィルター20を交換後は、再度バルブ46dを開状態とし、パージ用不活性ガスのNをかけ流してパージし、且つバルブ46dの開閉と真空ポンプ50を使用したバッチパージを行い、第二の液体原料用フィルター20中の空気や交換で混入した空気を完全に置換する(図8)。
【0067】
尚、上記のパージや第二の液体原料用フィルター20の交換においては、第一の液体原料供給機構16の第一の液体原料導入ライン12を使用した状況下で実施できるため、十分に時間をかけて安全に実施することができる。
【0068】
液体原料フィルターを交換する前の交換前パージの手順の一例を図7に示す。図7に示すように、交換前パージでは、残っている液体原料をドレインから回収(S110)し、不活性ガス(図示例ではN)のかけ流しパージ(S102)を行った後、液体原料用フィルターの交換(S108)を行う。各パージ処理の条件は配管の構成やサイズ等に応じて適宜選択すればよく、特に制限はないが、後述する処理条件が好適である。なお、パージ処理は処置回数及び時間が多い程ガスが置換される為、ガス置換の点では好ましく、各パージ処理の回数及び時間の上限についての制限は特になく、コスト等を勘案して適宜判断して行えばよい。
前記かけ流しパージ(S102)は、30分以上行うことが好適であり、10時間以上がより好ましい。
また、前記かけ流しパージ(S102)後、加圧と減圧を繰り返すバッチパージを複数回行うことが好適である。例えば、図7に示したように、前記かけ流しパージ(S102)後、不活性ガス(図示例ではN)によるバッチパージ(S104)として、バルブを閉じた状態で不活性ガスを加圧条件下(好ましくは、ゲージ圧で0.1MPa以上に加圧)で経路内に充填させた後、バルブを開いて大気圧とするバッチパージを複数回(好ましくは、20回以上)繰り返し、その後、不活性ガス(図示例ではN)による真空バッチパージ(S106)として、バルブを閉じた状態で不活性ガスを加圧条件下(好ましくは、ゲージ圧0.1MPa以上に加圧)で経路内に充填させた後、真空ポンプで経路内を減圧条件下(好ましくは、ゲージ圧で-0.05MPa以下に減圧)とする不活性ガス真空バッチパージを複数回(好ましくは、5回以上)繰り返すことがより好ましい。
前記液体原料用フィルターの交換(S108)は、液体原料用フィルターの両側(上流側と下流側)から不活性ガス(図示例ではN)によるパージをしながら、液体原料用フィルターの交換を行うことが好適である。
図7に示した例では、これらを合計50時間以上かけて安全に実施することができる。
【0069】
次に、液体原料フィルターを交換した後の交換後パージの手順の一例を図8に示す。図8に示すように、交換後パージでは、不活性ガス(図示例ではN)のかけ流しパージ(S110)を行い、使用可能な状態とする(S118)。前記かけ流しパージ(S110)は、30分以上行うことが好適であり、5時間以上がより好ましい。
前記かけ流しパージ(S110)後、リークが無いかを検知するリーク検知工程と、前記リーク検知工程後に、前記導入ライン内の空気を置換する置換工程をさらに行うことが好ましい。前記置換工程としては、加圧と減圧を繰り返すバッチパージを複数回行うことが好適である。具体的には、図8に示したように、前記かけ流しパージ(S110)後、リーク検査用の不活性ガス(図示例ではHe)を配管内に導入し、加圧条件下(好ましくは、ゲージ圧で+0.1MPa以上に加圧)で経路内に充填させて導入し、不活性ガス(図示例ではHe)ディテクターによるリークチェックを行い(S114)、その後、不活性ガス(図示例ではN)による真空バッチパージ(S116)として、バルブを閉じた状態で不活性ガスを加圧条件下(好ましくは、ゲージ圧で+0.1MPa以上に加圧)で経路内に充填させた後、真空ポンプで経路内を減圧条件下(好ましくは、ゲージ圧で-0.05MPa以下に減圧)とする不活性ガス真空バッチパージを複数回(好ましくは、5回以上)繰り返すことがより好ましい。
図8に示した例では、これらを合計30時間以上かけて安全に実施することができる。
【0070】
<第一の液体原料用フィルター14の交換>
本発明の気化装置への液体原料供給装置における第一の液体原料用フィルター14を交換する際のステップを、図5図6及び図7図8を参照しながら、以下に述べる。
【0071】
図5において実線の矢印で示されるように、第一の液体原料供給機構16の第一の液体原料導入ライン12に設けられた第一の液体原料用フィルター14を使用している状況下で、液体原料導入速度測定機器24の測定値により、第一の液体原料用フィルター14の目詰まりが進行していると判断された場合も、前述と同様に下記の手順で実施できる。
【0072】
まず、弁機構25により、第一の液体原料導入ライン12に設けられた第一の液体原料用フィルター14から、第二の液体原料導入ライン18に設けられた液体原料用フィルター20に切り替える。
【0073】
次に第二の液体原料導入ライン18の第二の液体原料用フィルター20を使用した状態のまま、第一の液体原料導入ライン12の第一の液体原料用フィルター14の液体原料をパージ用不活性ガスであるNで圧送しドレイン41より排液する(図5)。
【0074】
第一の液体原料用フィルター14及び第一の液体原料導入ライン12を、不活性ガス(図示例ではN)によるかけ流しパージを行う。これは図5の点線の矢印で示される範囲でパージを行う。
【0075】
更にバルブ44gの開閉によるバッチパージと、バルブ44dの開閉と、真空ポンプ48を使用する事による真空バッチパージを行い、図6の点線の矢印で示される範囲の経路を十分に安全な状況までパージし、バルブ44dを閉状態とする。そして、第一の液体原料用フィルター14の液体原料の入口側と出口側、即ち第一の液体原料用フィルター14の上流側と下流側の両方より、パージ用不活性ガスのNを流しながら第一の液体原料用フィルター14を交換する。
【0076】
第一の液体原料用フィルター14の交換後は再度Nかけ流しパージ及び真空ポンプ48を使用したバッチパージを行い、第一の液体原料用フィルター14中の空気や交換で混入した空気を完全に置換する。
【0077】
上述のように、気化装置への液体原料供給システム10を用いて、上述の工程を行うことで、スート体の製造を停止することなく、液体原料用フィルター14又は20の交換をすることができる。
【0078】
図9に示した、従来の装置を用いた方法では、液体原料用フィルターを交換する際には、170時間以上に亘ってスート体の生産活動停止時間を要した。しかし、本発明の気化装置への液体原料供給システム10を用いて、上述の工程を行う場合、スート体の製造を停止する必要がないため、スート体の生産活動停止時間が0時間で済む。
【0079】
本発明のスート体の製造方法は、気化装置への液体原料供給システム10を用いて、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するものである。また、本発明のスート体の製造方法は、上記した本発明の気化装置への液体原料供給方法を用いて、合成石英ガラス母材であるスート体を製造するものである。
【符号の説明】
【0080】
10:本発明の気化装置への液体原料供給システム、12:第一の液体原料導入ライン、14;第一の液体原料用フィルター、16:第一の液体原料供給機構、18:第二の液体原料導入ライン、20:第二の液体原料用フィルター、22:第二の液体原料供給機構、24:液体原料導入速度測定機器、25:弁機構、26a~26f:バルブ、28,30:パージ用不活性ガス導入ライン、32,34:リーク検知用不活性ガス導入口、36,38:真空ポンプ接続口、40,42:ドレインライン、41,43:ドレイン、44a~44h,46a~46h:バルブ、48,50:真空ポンプ、52,54:パージ排気ライン、100:従来の気化装置への液体原料供給システム、102:N導入ライン、104:SiCl導入ライン、106:液体原料用フィルター、108:液体原料導入ライン、110:気化装置、112,114,116:弁、118:気化タンク、120:気体原料用フィルター、122:マスフローコントローラ、124:気体原料導入ライン、126:成長炉、128:酸水素バーナー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9