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  • 特開-接合体の製造方法及び接合体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110582
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】接合体の製造方法及び接合体
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/005 20060101AFI20230802BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230802BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20230802BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B23K1/005 A
B23K26/21 N
B23K26/04
B23K1/00 330H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012121
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森次 宣文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴昭
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA21
4E168BA31
4E168BA86
4E168BA87
4E168CB18
(57)【要約】
【課題】流路を有する部品を形成する際に、接合部分に用いられる接合材に含まれる物質が流路内へ溶出することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】2枚の金属板を接合することで形成される、液体が通過する流路部を備える接合体の製造方法である。接合体の製造方法は、配置工程と、接合工程と、を備える。配置工程では、2枚の金属板の間に接合材が設けられるように、2枚の金属板及び接合材を配置する。接合工程では、接合材が配置される位置よりも流路部側の所定の位置において、2枚の金属板のうちいずれか一方にレーザ光を照射し、第1接合部と第2接合部とを形成する。第1接合部は、レーザ溶接により形成される。第2接合部は、レーザ溶接時に発生する熱により接合材が溶融することによって形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の金属板を接合することで形成される、液体が通過する流路部を備える接合体の製造方法であって、
前記流路部は、前記2枚の金属板の非接合部分であり、前記2枚の金属板によって囲われた空間により構成され、
前記2枚の金属板の間に接合材が設けられるように、前記2枚の金属板及び前記接合材を配置する配置工程と、
前記接合材が配置される位置よりも前記流路部側の所定の位置において、前記2枚の金属板のうちいずれか一方にレーザ光を照射し、前記レーザ光を照射して溶接を行うレーザ溶接により形成される第1接合部と、前記レーザ溶接時に発生する熱により前記接合材が溶融することによって形成される第2接合部と、を形成する接合工程と、
を備える、接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合体の製造方法であって、
前記接合材は、ろう材である、接合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法であって、
前記レーザ光は、前記所定の位置において、前記2枚の金属板に対して斜めに入射する、接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
前記第1接合部及び前記第2接合部は、前記流路部に沿って延びるように形成される、接合体の製造方法。
【請求項5】
2枚の金属板を接合することで形成される接合体であって、
レーザ光を照射して溶接を行うレーザ溶接によって前記2枚の金属板が接合されている第1接合部と、
前記2枚の金属板の間に設けられる接合材によって前記2枚の金属板が接合されている第2接合部と、
前記2枚の金属板の非接合部分であり、前記2枚の金属板によって囲われた空間により構成される、液体が通過する流路部と、
を備え、
前記第1接合部は、前記流路部と前記第2接合部との間に位置する、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合体の製造方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱交換器に用いられる複数のブレージングシートにおける接合面同士の接合に、ろう付けが用いられることが開示されている。接合面同士がろう付けにより接合された状態にある複数のブレージングシートの接合面に隣接する非接合隣接面同士の間の空間は、冷却水が流れる冷却流路として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-63263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなブレージングシートにおけるろう付けされた接合部分と冷却水とが接触すると、ろう材に含まれるフラックスが冷却水に溶出する可能性があるという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、流路を有する部品を形成する際に、接合部分に用いられる接合材に含まれる物質が流路内へ溶出することを抑制する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、2枚の金属板を接合することで形成される、液体が通過する流路部を備える接合体の製造方法である。流路部は、2枚の金属板の非接合部分であり、2枚の金属板によって囲われた空間により構成される。接合体の製造方法は、配置工程と、接合工程と、を備える。配置工程では、2枚の金属板の間に接合材が設けられるように、2枚の金属板及び接合材を配置する。接合工程では、接合材が配置される位置よりも流路部側の所定の位置において、2枚の金属板のうちいずれか一方にレーザ光を照射し、第1接合部と、第2接合部と、を形成する。第1接合部は、レーザ光を照射して溶接を行うレーザ溶接により形成される。第2接合部は、レーザ溶接時に発生する熱により接合材が溶融することによって形成される。
【0007】
このような構成では、接合材が配置される位置よりも流路部側の所定の位置においてレーザ光が照射される。このため、レーザ溶接により形成される第1接合部が、接合材が溶融することによって形成される第2接合部よりも流路部側に位置する。すなわち、流路部と第2接合部との間には、第1接合部が位置する。これにより、流路部を通過する液体と第2接合部とが接触しにくい。したがって、第2接合部を形成する接合材に含まれる物質が流路内へ溶出することを抑制することができる。また、第1接合部と第2接合部とが形成されることによって、第1接合部及び第2接合部のいずれか一方しか形成されない構成と比較して、シール性及び接合強度を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、接合材は、ろう材であってもよい。このような構成では、レーザ溶接時に発生する熱により溶融したろう材が固まることによって第2接合部が形成される。そして、第2接合部と流路部との間に位置する第1接合部によって流路部を通過する液体と第2接合部とが接触しにくいため、ろう材に含まれるフラックスが流路内に溶出することを抑制することができる。また、レーザ溶接により形成される第1接合部のシール性をろう材によるろう付けによって補助することができる。また、第2接合部は、第1接合部を形成するレーザ溶接時に発生する熱により溶融したろう材が固まることによって形成されるため、第2接合部を形成する際に、ろう付けで用いられるような加熱炉を要しない。
【0009】
本開示の一態様では、レーザ光は、所定の位置において、2枚の金属板に対して斜めに入射してもよい。このような構成では、所定の位置において、金属板に対して斜めからレーザ光が入射する。このため、所定の位置において、金属板に対して略垂直にレーザ光が入射する場合と比較して、第1接合部におけるレーザ溶接によって溶ける金属の溶け込み距離が長くなり、その結果接合強度を向上させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、第1接合部及び第2接合部は、流路部に沿って延びるように形成されてもよい。このような構成では、第1接合部及び第2接合部が流路部に沿って延びるため、流路部を通過する液体と第2接合部との間には必ず第1接合部が位置する。これにより、第1接合部によって第2接合部と流路部とが物理的に隔離されるため、当該液体と第2接合部とが接触する可能性が低い。したがって、第2接合部を形成する接合材に含まれる物質が流路内へ溶出することをより抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様は、2枚の金属板を接合することで形成される接合体であって、第1接合部と、第2接合部と、液体が通過する流路部と、を備える。第1接合部は、レーザ光を照射して溶接を行うレーザ溶接によって2枚の金属板が接合されている。第2接合部は、2枚の金属板の間に設けられる接合材によって2枚の金属板が接合されている。流路部は、2枚の金属板の非接合部分であり、2枚の金属板によって囲われた空間により構成される。第1接合部は、流路部と第2接合部との間に位置する。このような構成では、流路部と第2接合部との間に、第1接合部が位置する。これにより、流路部を通過する液体と第2接合部とが接触しにくい。したがって、第2接合部を形成する接合材に含まれる物質が流路内へ溶出することを抑制することができる。また、第1接合部と第2接合部とが形成されることによって、第1接合部及び第2接合部のいずれか一方しか形成されない構成と比較して、シール性及び接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液体が通過する流路を備える接合体を上面から見た模式的な断面図である。
図2図2Aは配置工程における2枚の金属板の間に接合材が配置された状態を示す模式的な断面図である。図2Bは接合工程におけるレーザ溶接により第1接合部が形成された状態を示す模式的な断面図である。図2Cは接合工程におけるレーザ溶接時に発生する熱により溶融した接合材が固まって第2接合部が形成された状態を示す模式的な断面図である。
図3】接合工程における所定の位置において金属板の外表面に対して斜めに入射したレーザ光によって第1接合部及び第2接合部が形成された状態を示す模式的な断面図である。
図4図4A及び図4Bは、接合材が配置される側から流路部側に向かって一方側のレーザ光が傾いて照射され、流路部側から接合材が配置される側に向かって他方側のレーザ光が傾いて照射される2つの態様を示す図である。図4Cは、接合材が配置される側から流路部側に向かって両側のレーザ光が傾いて照射される態様を示す図である。図4Dは、流路部側から接合材が配置される側に向かって両側のレーザ光が傾いて照射される態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1及び図2Cに示す接合体100は、2枚の金属板1a,1bを重ね合わせた状態で接合することで形成される部材である。接合体100は、2枚の金属板1a,1bによって囲われた空間により構成される流路部2が設けられるように形成される。以下では、2枚の金属板1a,1bのうち、上方側に配置される金属板を上方金属板1aと称し、上方金属板1aの下方に配置される金属板を下方金属板1bと称する。なお、接合体100を形成する2枚の金属板1a,1bが上下方向に配置される構成を例示したが、2枚の金属板1a,1bの配置は例示的な方向に限定されるものではない。なお、図1では、上方金属板1aの図示は説明の便宜上省略する。接合体100は、例えば、流路部2に冷却水を流すような熱交換器に用いられる。接合体100は、上方金属板1aと、下方金属板1bと、流路部2と、第1接合部3と、第2接合部4と、を備える。
【0014】
上方金属板1a及び下方金属板1bは、熱伝導率が高い金属により形成される。上方金属板1a及び下方金属板1bには、例えば、銅、アルミなどが用いられることが望ましい。図2Aに示す例では、上方金属板1aは、平面部11と、傾斜部12と、当接部13と、を有する。平面部11は、平面状に広がる下方金属板1bと間隔を空けて平行に、平面状に広がる部分である。傾斜部12は、平面部11の端部から金属板1bに向かって延びる部分である。当接部13は、傾斜部12の端部から下方金属板1bと平行に平面状に広がる部分であり、後述する第1接合部3及び第2接合部4を介して下方金属板1bと当接する部分である。なお、上方金属板が平面状に広がり、下方金属板が上述した平面部、傾斜部及び当接部を有していてもよい。また、上方金属板及び下方金属板の両方とも、上述した平面部、傾斜部及び当接部を有していてもよい。なお、上方金属板及び下方金属板の形状は上述した形状に限定されるものではなく、様々な形状を有してもよい。すなわち、2つの金属板1a,1bによって形成される流路部の形状は、例えば円形、多角形状等の様々な形状を有してもよい。
【0015】
流路部2は、接合された状態にある接合体100における、上方金属板1a及び下方金属板1bの非接合部分であり、上方金属板1a及び下方金属板1bによって囲われた空間により構成される。本実施形態では、上方金属板1aの平面部11及び傾斜部12と、下方金属板1bと、の間に形成される空間である。流路部2には、例えば、熱交換器において熱を回収するために用いられる冷却水等の液体が通過する。
【0016】
第1接合部3及び第2接合部4は、上方金属板1a及び下方金属板1bの間に形成され、上方金属板1a及び下方金属板1b同士が接合された部分である。図2Bに示すように、第1接合部3は、レーザ光Lを照射するように構成されたレーザ発振器200を用いて形成される。第1接合部3は、レーザ光Lを照射して溶接を行うレーザ溶接により形成される。第1接合部3は、上方金属板1a及び下方金属板1bのうちいずれか一方の外表面、本実施形態では上方金属板1aの外表面にレーザ光Lを照射することによって形成される。外表面とは、上方金属板1a及び下方金属板1bにおける、上方金属板1a及び下方金属板1bの間に配置された図2Aに示す接合材41と対向しない側の面である。具体的には、第1接合部3は、レーザ発振器200から照射されるレーザ光Lを熱源に上方金属板1a及び下方金属板1bを溶かして、上方金属板1a及び下方金属板1bを接合させることによって形成される。
【0017】
第2接合部4は、上方金属板1a及び下方金属板1bの間に配置される接合材41に熱を加え、接合材41が溶けた後に固まることによって形成される。本実施形態では、第1接合部3を形成する際のレーザ光Lの照射によって発生する熱により接合材41が溶融する。すなわち、第2接合部4は、レーザ溶接時に発生する熱により溶融した接合材41が固まることによって形成される。本実施形態では、接合材41には、上方金属板1a及び下方金属板1bよりも融点の低い、例えばろう材が用いられる。接合材41として用いられるろう材は、例えば、2枚の金属板1a,1bが銅材である場合、銅ろう、リン銅ろうなどが望ましく、2枚の金属板1a,1bがアルミ材である場合、アルミろうが望ましい。
【0018】
本実施形態では、図1及び図2Cに示すように、接合体100において、第1接合部3は、液体が通過する流路部2と第2接合部4との間に位置する。また、図1に示すように、第1接合部3及び第2接合部4は、流路部2に沿って延びるように形成される。換言すると、第1接合部3及び第2接合部4は、流路部2を通過する液体の流れ方向に沿って延びるように形成される。図1に示す例では、接合体100は、折れ曲がる部分を複数有するように蛇行した流路部2が形成されるように接合されている。
【0019】
[2.接合体の製造方法]
次に、接合体100の製造方法について説明する。接合体100の製造方法には、配置工程と、接合工程と、が含まれる。
【0020】
<配置工程>
まず、図2Aに示すように、上方金属板1a及び下方金属板1bの間に接合材41が設けられるように、上方金属板1a、下方金属板1b及び接合材41が配置される。具体的には、上方金属板1aの当接部13と、下方金属板1bと、の間に接合材41が配置される。なお、接合材41は、互いに対向するように配置された状態の上方金属板1a及び下方金属板1bの間に挿入されるように配置されてもよい。また、接合材41は、下方金属板1bの上に配置され、その後接合材41を挟むように上方金属板1aが下方金属板1bの上方に配置されてもよい。
【0021】
<接合工程>
次に、図2Bに示すように、上方金属板1a及び下方金属板1bの間にある接合材41が配置される位置よりも流路部2側の所定の位置において、上方金属板1aの外表面にレーザ発振器200を用いてレーザ光Lが照射される。これにより、接合材41が配置された位置と流路部2との間に第1接合部3が形成される。本実施形態では、レーザ光Lは、上方金属板1aの外表面に対して略垂直に入射して、第1接合部3が形成される。なお、流路部2側の所定の位置とは、上方金属板1a及び下方金属板1bの間に配置された接合材41にレーザ光Lによる熱Hが届く範囲であって、レーザ溶接時に発生する熱Hによって接合材41が溶融する範囲内における位置である。
【0022】
そして、レーザ光Lの照射によって発生する上方金属板1a及び下方金属板1bのレーザ溶接時の熱Hにより、接合材41が溶け広がる。このように溶け広がった接合材41が冷えて固まることによって、図2Cに示すような第2接合部4が形成される。
上述した方法によって、流路部2と第2接合部4との間に第1接合部3が位置するように構成された接合体100が形成される。
【0023】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0024】
(3a)本実施形態では、接合材41が配置される位置よりも流路部2側の所定の位置においてレーザ光Lが照射される。このため、レーザ溶接により形成される第1接合部3が、接合材41が溶融することによって形成される第2接合部4よりも流路部2側に位置する。すなわち、流路部2と第2接合部4との間には、第1接合部3が位置する。また、上記実施形態では、第1接合部3及び第2接合部4が流路部2に沿って延びるため、流路部2を通過する液体と第2接合部4との間には必ず第1接合部3が位置する。これにより、第1接合部3によって第2接合部4と流路部2とが物理的に隔離されるため、流路部2を通過する液体と第2接合部4とが接触する可能性が低い。したがって、第2接合部4を形成する接合材41に含まれる物質が流路内へ溶出することを抑制することができる。
【0025】
(3b)本実施形態では、第1接合部3と第2接合部4とが形成されるため、第1接合部3及び第2接合部4のいずれか一方しか形成されない構成と比較して、上方金属板1a及び下方金属板1bの接合におけるシール性及び接合強度を向上させることができる。
【0026】
(3c)本実施形態では、接合材41としてろう材が用いられ、レーザ溶接時に発生する熱Hにより溶融したろう材が固まることによって第2接合部4が形成される。そして、第2接合部4と流路部2との間に位置する第1接合部3によって流路部2を通過する液体と第2接合部4とが接触しにくいため、ろう材に含まれるフラックスが流路内へ溶出することを抑制することができる。例えば、熱交換器に用いられる冷却水にろう材に含まれるフラックスが溶出した場合、冷却水の絶縁性が低下する。このようにフラックスが溶出した冷却水が熱交換器内から漏れ出て、熱交換器を備える装置内の電極等の導通部に接触した場合、短絡が発生する可能性がある。このため、ろう材に含まれるフラックスが流路内へ溶出することが抑制される結果、流路内から冷却水が漏れ出た場合にも、短絡等の発生を抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、レーザ溶接により形成される第1接合部3のシール性をろう材によるろう付けによって補助することができる。また、第2接合部4は、第1接合部3を形成するレーザ溶接時に発生する熱Hにより溶融したろう材が固まることによって形成される。このため、第2接合部4を形成する際に、ろう付けで用いられるような加熱炉を要しない。また、加熱炉を用いずにろう材を溶融させることができるため、加熱炉を用いる場合と比較して、第2接合部4を形成する時間、すなわち上方金属板1a及び下方金属板1bの接合時間を短縮することができる。
【0028】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0029】
(4a)上記実施形態では、上方金属板1aの外表面に対してレーザ光Lが略垂直に入射して第1接合部3が形成されたが、第1接合部を形成するためのレーザ光Lの入射角度はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、上方金属板1aの外表面に対してレーザ光Lが斜めに入射して第1接合部3aが形成されてもよい。ここで、上方金属板1aの外表面に対して斜めに入射するとは、当該外表面に対して直交する仮想線Sに対して所定の角度θを有するように入射することである。具体的には、仮想線Sに対して、所定の角度θは、約70°以下の値をとりうる。約20°以上であることが望ましく、また、約50°以下であることが望ましい。このように、レーザ光Lが斜めに入射する場合、レーザ光Lが略垂直に入射する場合と比較して、上方金属板1a及び下方金属板1bにおける溶け込み距離、すなわち第1接合部3a長さを長くすることができる。このため、上方金属板1a及び下方金属板1bの接合強度を向上させることができる。
【0030】
また、上方金属板1aの外表面に対してレーザ光Lを斜めに入射させる場合、レーザ光Lを傾ける向きは限定されるものではなく、例えば、レーザ光Lを傾ける向きは、仮想線Sを中心として360°の様々な向きをとりうる。例えば、上方金属板1aの外表面に対して、接合材41が配置される側から流路部2側に向かってレーザ光Lが斜めに入射するように、レーザ光Lを傾けてもよい。また、例えば、上方金属板1aの外表面に対して、流路部2側から接合材41が配置される側に向かってレーザ光Lが斜めに入射するように、レーザ光Lを傾けてもよい。また、例えば、上方金属板1aの外表面に対して、流路部2の長さ方向に沿って、下流側から上流側又は上流側から下流側に向かってレーザ光Lが斜めに入射するように、レーザ光Lを傾けてもよい。
【0031】
また、例えば、流路部2を形成するために当該流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aは、上述したようにレーザ光Lを傾けて、それぞれ同じ方向に傾くように形成されてもよい。具体的には、図4A及び図4Bに示すように、上方金属板1aの外表面に対して、接合材41が配置される側から流路部2側に向かって一方側のレーザ光Lが傾いて照射され、流路部2側から接合材41が配置される側に向かって他方側のレーザ光Lが傾いて照射されることで、流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aがそれぞれ同じ方向に傾くように形成されてもよい。
【0032】
また、例えば、流路部2を形成するために当該流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aは、上述したようにレーザ光Lを傾けて、それぞれ異なる方向に傾くように形成されてもよい。具体的には、図4Cに示すように、上方金属板1aの外表面に対して、接合材41が配置される側から流路部2側に向かって両側のレーザ光Lが傾いて照射されることで、流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aがそれぞれ異なる方向に傾くように形成されてもよい。また、図4Dに示すように、上方金属板1aの外表面に対して、流路部2側から接合材41が配置される側に向かって両側のレーザ光Lが傾いて照射されることで、流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aがそれぞれ異なる方向に傾くように形成されてもよい。
【0033】
上述した態様のうち、上方金属板1aの外表面に対して、接合材41が配置される側から流路部2側に向かって両側のレーザ光Lが傾いて照射されることで、流路部2の両側に配置される2つの第1接合部3aが形成される図4Cに示す態様が最も好ましい。図4Cに示す態様では、レーザ光Lの照射により温度が高くなる部分がより接合材41に近くなるため、接合材41に最も熱が伝わりやすい。このため、レーザ溶接時の熱により、接合材41を溶けやすくすることができる。
【0034】
(4b)上述した接合体100の製造方法で説明した第1接合部3及び第2接合部4を形成する方法は、熱交換器に用いられる接合体100の形成に限定されるものではなく、例えば、熱交換器以外に用いられるようなパイプの接合の際にも活用することができる。
【0035】
(4c)上記実施形態では、上方金属板1a及び下方金属板1bに用いられる熱伝導率が高い金属として、銅及びアルミを例示したが、上方金属板1a及び下方金属板1bには、レーザ光Lの照射によるレーザ溶接が可能な他の金属が用いられてもよい。他の金属としては、例えば、ステンレス、鉄などが挙げられる。
【0036】
(4d)上記実施形態では、接合材41としてろう材が用いられることを例示したが、接合材はこれに限定されるものではない。接合材として、例えば、熱可逆性樹脂の接着剤などが用いられてもよい。
【0037】
(4e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0038】
1a…上方金属板、1b…下方金属板、2…流路部、3,3a…第1接合部、4…第2接合部、11…平面部、12…傾斜部、13…当接部、41…接合材、100…接合体、200…レーザ発振器、H…熱、L…レーザ光、S…仮想線。
図1
図2
図3
図4