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特開2023-11060光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる成形体およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011060
(43)【公開日】2023-01-23
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる成形体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20230116BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230116BHJP
   G02B 5/23 20060101ALI20230116BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C08G18/48
G02B1/04
G02B5/23
C08G18/48 033
C08G18/38 076
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020031316
(22)【出願日】2020-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】リベイロ,ニジェル
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】河戸 伸雄
【テーマコード(参考)】
2H148
4J034
【Fターム(参考)】
2H148DA04
2H148DA24
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA24
4J034CA25
4J034CA26
4J034CA32
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC13
4J034CC45
4J034CC67
4J034CD14
4J034DA01
4J034DA07
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG08
4J034DG12
4J034DL10
4J034DQ05
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034KA01
4J034KA02
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD25
4J034KE02
4J034MA14
4J034MA15
4J034MA18
4J034MA29
4J034QB08
4J034QD03
4J034RA13
(57)【要約】
【課題】ハンドリング性(ポットライフ)に優れた光学材料用重合性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の、光学材料用重合性組成物は、(a)ポリエーテルポリオールと、(b)下記一般式(1)で表される化合物と、(c)重合反応性化合物(ポリエーテルポリオール(a)を除く)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエーテルポリオールと、
(b)下記一般式(1)で表される化合物と、
(c)ポリイソ(チオ)シアネート化合物および二官能以上の活性水素化合物を含む重合反応性化合物(ポリエーテルポリオール(a)を除く)と、
を含む、光学材料用重合性組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素原子またはS(=O)を示す。nは0または1を示す。
はC1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。
は水素原子、C1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。
ただし、Xが炭素原子であり、かつRがC1~C5のハロアルキル基である場合を除く。)
【請求項2】
ポリエーテルポリオール(a)はポリオキシエチレン鎖を備える化合物を含む、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項3】
ポリエーテルポリオール(a)は下記一般式(a)で表される化合物を含む、請求項1または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【化2】
(一般式(a)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。)
【請求項4】
化合物(b)は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、酢酸、メタンスルホン酸無水物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項5】
化合物(b)を10ppm以上含む、請求項1~4のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項6】
前記ポリイソ(チオ)シアネート化合物が、脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、脂環族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、または芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項7】
さらにスズ触媒(d)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項8】
さらにフォトクロミック化合物(e)を含む、請求項1~7のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を硬化した成形体。
【請求項10】
請求項9に記載の成形体からなる光学材料。
【請求項11】
請求項9に記載の成形体からなるプラスチックレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる成形体およびその用途に関する。
【0002】
プラスチックレンズは、軽量で割れ難く、染色が可能なため眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきており、これまでに様々なプラスチック材料を用いたレンズ用成形体が開発され使用されている。
【0003】
代表的な例としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートやジアリルイソフタレートから得られるアリル樹脂や、(メタ)アクリレートから得られる(メタ)アクリル樹脂、イソシアネート化合物とチオール化合物から得られるポリチオウレタン樹脂が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、メルカプト基を1個以上有する化合物と、数平均分子量200以上の脂肪族直鎖状オリゴマーと、イソシアネート化合物等と、を含む、光学材料用重合性組成物が開示されている。当該文献には、ポリカプトラクトンジオール等の脂肪族直鎖状オリゴマーがソフトセグメントとして機能することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、ブロックコポリマーと、フォトクロミック化合物と、ポリチオールおよびポリイソ(チオ)シアナート化合物と、を含む、光学材料用重合性組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ポリエーテルポリオールと、フォトクロミック化合物と、ポリチオールおよびポリイソ(チオ)シアナート化合物と、を含む、光学材料用重合性組成物が開示されている。
【0007】
特許文献4には、p-トルエンスルホン酸等がポリウレタンのポットライフを改善する効果があると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-265402号公報
【特許文献2】国際公開第2018/070383号
【特許文献3】国際公開第2019/117305号
【特許文献4】米国特許番号4,877,829号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】P. Alexandridis, T.A. Hatton/Colloids Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 96 (1995) 1-46
【非特許文献2】Phys. Chem. Chem. Phys., 1999, 1, 3331-3334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3の従来技術においては、重合性組成物が増粘することからハンドリング性(ポットライフ)に改善の余地があった。特許文献4には、ポリエーテルポリオールを用いることについては記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリエーテルポリオールと、所定の一般式で表される化合物と、重合反応性化合物を組み合わせて用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
[1](a)ポリエーテルポリオールと、
(b)下記一般式(1)で表される化合物と、
(c)ポリイソ(チオ)シアネート化合物および二官能以上の活性水素化合物を含む重合反応性化合物(ポリエーテルポリオール(a)を除く)と、
を含む、光学材料用重合性組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素原子またはS(=O)を示す。nは0または1を示す。
はC1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。
は水素原子、C1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。
ただし、Xが炭素原子であり、かつRがC1~C5のハロアルキル基である場合を除く。)
[2] ポリエーテルポリオール(a)はポリオキシエチレン鎖を備える化合物を含む、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[3] ポリエーテルポリオール(a)は下記一般式(a)で表される化合物を含む、[1]または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化2】
(一般式(a)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。)
[4] 化合物(b)は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、酢酸、メタンスルホン酸無水物から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[5] 化合物(b)を10ppm以上含む、[1]~[4]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[6] 前記ポリイソ(チオ)シアネート化合物が、脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、脂環族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、または芳香族ポリイソ(チオ)シアネート化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[7] さらにスズ触媒(d)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[8] さらにフォトクロミック化合物(e)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を硬化した成形体。
[10] [9]に記載の成形体からなる光学材料。
[11] [9]に記載の成形体からなるプラスチックレンズ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハンドリング性(ポットライフ)に優れた光学材料用重合性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の光学材料用重合性組成物は、
(a)ポリエーテルポリオールと、
(b)一般式(1)で表される化合物と、
(c)ポリイソ(チオ)シアネート化合物および二官能以上の活性水素化合物を含む重合反応性化合物(ポリエーテルポリオール(a)を除く)と、
を含む。
本発明の光学材料用重合性組成物は、これらの成分を含むことによりハンドリング性(ポットライフ)に優れる。
【0015】
[ポリエーテルポリオール(a)]
ポリエーテルポリオール(a)は、本発明の効果を得ることができれば公知の化合物を用いることができる。
【0016】
ポリエーテルポリオール(a)の一実施形態は、少なくとも1つのポリエーテルのセグメントを含み、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリオレフィン、またはポリスチレンのいずれかの少なくとも1つのセグメントと組み合わされていてもよいブロックコポリマーである。
【0017】
ポリエーテルポリオール(a)の他の実施形態は、少なくとも2つの異なるセグメントを有する、直鎖状のポリエーテルブロックコポリマーである。セグメントの構造としては、エチレングリコレート、プロピレングリコレート、ブチレングリコレートなどから誘導される2価の有機基や、エタンジチオレート、プロパンジチオレートなどのチオレートから誘導される2価の有機基を有するセグメント構造を挙げることができる。
【0018】
ポリエーテルポリオール(a)の別の実施形態では、ポリエーテルブロックコポリマーは、デンドリマー、星型ブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマーなどの分岐状のブロックコポリマーである。 分岐ブロックコポリマーは、少なくとも2つの異なるセグメントの組み合わせによって作られた少なくとも3つの分岐鎖を有してもよい。
分岐鎖部分の構造としては、例えば、グリセロール、トリオキシエチルアミン、トリオキシエチル(アルキル)アンモニウム塩などから誘導される3価の有機基、エチレンジアミン、アルキルアンモニウム塩などから誘導される4価の有機基、テトラオキシエチレンジアミン、ペンタエリスリトールのオキシ型などから誘導される4価の有機基、ジペンタエリスリトールのオキシ型などから誘導される6価の有機基のような、3価以上の有機基を有する構造を挙げることができる。
【0019】
前記ポリエーテルとしては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリブチレングリコール等を挙げることができる。
前記ポリエステルとしては、特に限定されないが、ジカルボン酸とジオールとの縮合から得られる組成物が含まれる。
前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸等、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0020】
前記ジオールとしては、エチレン-1,2- ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2- ジメチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール等、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0021】
前記ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはそれらの組み合わせを挙げることもできる。
前記ポリカーボネートとしては、特に限定されないが、カーボネートとジオールとの縮合によって得られた組成物を挙げることができる。
【0022】
前記ジオールとしては、エチレン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘプタン -1,7-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0023】
前記ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ )アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0024】
前記ポリアミドとしては、特に限定されないが、ジカルボン酸とジアミンとの縮合によって得られた組成物を挙げることができる。
前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸等、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。前記ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。
【0025】
前記ポリアミドとしては、ポリカプロラクタムなどのラクタムを挙げることもできる。
ポリマー鎖であるポリエチレンイミン鎖としては、ポリエチレンイミン鎖、ポリプロピオニルアジリジン鎖、ポリアセチルアジリジン鎖、およびポリホルミルアジリジン鎖等を挙げることができる。
【0026】
ポリマー鎖であるポリシロキサン鎖としては、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメチルフェニルシロキサン鎖等を挙げることができる。
前記ポリスルフィドは、ポリエチレンスルフィド鎖等を含むことができる。
前記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
前記ポリスチレンとしては、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート等、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0027】
本実施形態のポリエーテルブロックコポリマーは、ミクロ相分離により好ましくはミセルを形成し、均一に分散したナノサイズ構造体を提供することができる。ミセル構造は、硬化したポリウレタン熱硬化性樹脂中に含まれていてもよく、硬化プロセス中に形成されてもよい。ミセルの形態は、ブロック共重合体の性質、濃度、および温度に依存し、たとえば、球状、ワーム(worm)状、および小胞(vesicular)等を挙げることができる。
ミセル構造は、樹脂靭性の改善などの有用な特性に寄与し、さらにポリ(チオ)ウレタン樹脂のガラス転移温度、機械的および光学的特性を維持しながら、フォトクロミック染料などの機能性分子を効果的に分散させることができる。
【0028】
本実施形態において、ポリエーテルポリオール(a)は、下記一般式(a)で表される化合物を含むことができる。
【0029】
【化3】
【0030】
一般式(a)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。
【0031】
一般式(a)で表される化合物は、本発明の効果の観点から、重量平均分子量が2000以上、好ましくは5000以上、さらに好ましくは10000以上とすることができる。また、樹脂の透明性を良好に保つ観点から、20000以下、好ましくは15000以下とすることができる。
【0032】
本実施形態においては、ポリエーテルポリオール(a)として一般式(a)で表される化合物から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
一般式(a)で表される化合物としては、具体的に下記一般式(a-1)で表される化合物を用いることができる。
【0033】
【化4】
【0034】
一般式(a-1)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。a+cは2以上499以下、好ましくは2以上400以下の整数であり、bは1以上300以下、好ましくは1以上100以下の整数を表す。複数存在するRおよびRは、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
このような化合物の例としてはBASF社製のプルロニック(Pluronic)シリーズなどが挙げられる。プルロニックに含まれる化合物の構造は非特許文献1に示される。
なお、一般式(a)で表される化合物の末端水酸基は、イソシアネート等の重合性化合物(c)と反応する場合もある。
【0036】
本実施形態においては、一般式(a)で表される化合物として下記一般式(a-2)または下記一般式(a-3)で表される化合物を用いることができる。
【0037】
【化5】
【0038】
一般式(a-2)中、a、b、cはそれぞれユニット数を示し、それぞれ独立に3以上300以下の整数である。
このような化合物の例としてはPluronicシリーズ(BASF社製)などが挙げられる。
【0039】
【化6】
【0040】
一般式(a-3)中、a、b、cはそれぞれユニット数を示し、それぞれ独立に3以上300以下の整数である。
このような化合物の例としてはPluronic Rシリーズ(BASF社製)などが挙げられる。
【0041】
ポリエーテルポリオール(a)の重量平均分子量は、本発明の効果の観点から、2000以上、好ましくは5000以上、さらに好ましくは10000以上とすることができる。また、樹脂の透明性を良好に保つ観点から、20000以下、好ましくは15000以下とすることができる。
【0042】
[化合物(b)]
化合物(b)は、下記一般式(1)で表される。
【0043】
【化7】
【0044】
一般式(1)中、Xは炭素原子またはS(=O)を示す。なお、XがS(=O)を示す場合、硫黄原子には2つの=Oが結合する。nは0または1を示す。
はC1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。Rは水素原子、C1~C5のアルキル基、C1~C5のハロアルキル基、置換または無置換のフェニル基を示す。
【0045】
置換フェニル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、C1~C3のアルキル基、C1~C3のハロアルキル基等が挙げられる。
【0046】
化合物(b)としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、酢酸、メタンスルホン酸無水物から選択される少なくとも1種を含む。
化合物(b)としてこれらの化合物を含むことにより、よりハンドリング性(ポットライフ)に優れた光学材料用重合性組成物を得ることができる。
【0047】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、本発明の効果の観点から、化合物(b)を10ppm以上、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上の量で含む。
【0048】
なお、本実施形態において、化合物(b)は一般式(1)においてXが炭素原子であり、かつRがC1~C5のハロアルキル基である化合物を含まない。化合物(b)から除外される当該化合物としては、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
【0049】
[重合反応性化合物(c)]
重合反応性化合物(c)は、必要に応じて添加される開始剤および触媒等の添加剤の存在下あるいはそれら不存在下においても、自己重合、共重合、或いは付加重合できる重合性官能基を少なくとも1個以上有する重合反応性化合物が含まれる。なお、重合反応性化合物(c)は、ポリエーテルポリオール(a)を含まない。
【0050】
重合反応性化合物としては、本発明の効果を得ることができれば公知の化合物を用いることができるが、例えば、イソシアナト基またはイソチオシアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物、エポキシ基またはチオエポキシ基を1個以上有する(チオ)エポキシ化合物、オキセタニル基を1個以上有するオキセタン化合物、チエタニル基を1個以上有するまたはオキセタニル基とチエタニル基を有するチエタン化合物、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルチオ基、アクリロイルチオ基、メタクリルアミド基、またはアクリルアミド基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物、メタアリル基またはアリル基を1個以上有する(メタ)アリル化合物、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルチオ基、アクリロイルチオ基、メタクリルアミド基、またはアクリルアミド基以外の重合性炭素炭素二重結合基を1個以上有するアルケン化合物、重合性炭素炭素三重結合基を1個以上有するアルキン化合物、二官能以上の活性水素化合物、酸無水基を1個以上有する酸無水物、などが挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の化合物を用いることができる。
【0051】
これらの化合物としては、本発明の効果を得ることができれば従来公知の化合物から選択して用いることができ、例えば、国際公開第2018/070383号に記載の化合物を用いることができる。
本実施形態においは、重合反応性化合物(c)が、前記ポリイソ(チオ)シアネート化合物および二官能以上の前記活性水素化合物を含むことが好ましい。
【0052】
ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、および2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0053】
二官能以上の活性水素化合物としては、ヒドロキシ基またはメルカプト基を2個以上有するポリ(チ)オール化合物、アミノ基または第二アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物、カルボキシル基を2個以上有するポリカルボン酸化合物等を挙げることができる。また、一分子中に、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、第二アミノ基、カルボキシル基等から選ばれる2個以上の活性水素基を有する化合物も挙げることができる。2個以上の活性水素基は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
これらの化合物としては、本発明の効果を得ることができれば従来公知の化合物から選択して用いることができ、例えば、国際公開第2018/070383号に記載の化合物を用いることができる。
【0055】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-ジメタノール、等の脂肪族ポリオール;
ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA-ビス-(2-ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA-ビス-(2-ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオールが挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0056】
ポリチオール化合物としては、例えば、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、およびエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
好ましくは、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンおよびペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0057】
[スズ触媒(d)]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、重合反応性化合物(c)がポリイソ(チオ)シアネート化合物および二官能以上の活性水素化合物を含む場合、さらにスズ触媒(d)を含むことができる。
【0058】
スズ触媒(d)を含む場合、光学材料用重合性組成物が増粘しポットライフが短くなる傾向があるものの、本実施形態の光学材料用重合性組成物は化合物(b)を含むことから、増粘抑制効果に優れており、スズ触媒の触媒性能を生かしつつポットライフを改善することができる。
【0059】
スズ触媒(d)としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等を挙げることができ、1種または2種以上を併用することができる。
スズ触媒(d)の使用量は、特に限定されるものではないが、重合反応性化合物(c)100重量部に対して0~10重量部の範囲である。
【0060】
[フォトクロミック化合物(e)]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらにフォトクロミック化合物(e)を含むことができる。
【0061】
フォトクロミック化合物(e)としては、特定の波長の光に対して吸光特性(吸収スペクトル)が変化する化合物が挙げられる。フォトクロミック化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、ナフトピラン、クロメン、スピロピラン、スピロオキサジンおよびチオスピロピラン、ベンゾピラン、スチルベン、アゾベンゼン、チオインジゴ、ビスイミダゾール、スピロジヒドロインドリジン、キニーネ、ペリミジンスピロシクロヘキサジエノン、ビオロゲン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ヒドラジン、アニリン、アリールジスルフィド、アリールチオスルホネート、スピロペリミジン、トリアリールメタンなどの化合物から誘導される化合物が挙げられる。
本実施形態においては、フォトクロミック化合物(e)としてナフトピラン誘導体を用いることが好ましい。
【0062】
(その他の成分)
本実施形態においては、前記(a)、(b)および(c)成分、必要に応じて添加される前記(d)成分または前記(e)成分に加えて、紫外線吸収剤、内部離型剤、光安定剤、重合触媒、樹脂改質剤等をさらに含んでいてもよい。
【0063】
<光学材料用重合性組成物の製造方法>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、前記成分を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0064】
<成形体およびその用途>
本実施形態においては、光学材料用重合性組成物を硬化することにより成形体を得ることができる。
【0065】
光学材料用重合性組成物を重合させる際のモールド形状を変えることにより種々の形状の成形体およびかかる成形体からなる光学材料を得ることができる。本実施形態の成形体は、所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0066】
光学材料としては、プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター等を挙げることができる。特に、プラスチックレンズとして好適である。
以下、本実施形態の成形体からなるプラスチックレンズについて説明する。プラスチックレンズは以下のように製造することができる。
【0067】
<プラスチックレンズの製造方法>
本実施形態のプラスチックレンズは、通常、上述の光学材料用重合性組成物を用いた注型重合法によって製造される。本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、具体的には、光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む。
【0068】
当該工程においては、得られた本実施形態の組成物をガラスモールドとガスケットまたはテープからなるキャビティーに注入し、加熱または赤外線以外の紫外線等の放射線を照射することにより、重合硬化せしめて本実施形態の樹脂およびその樹脂からなるプラスチックレンズ基材が製造される。当該工程により、重合反応性化合物(c)が重合して樹脂を形成するとともに重合体(a)がミクロ相分離構造体を形成し、前記樹脂と前記ミクロ相分離構造体と酸(b)とからなるプラスチックレンズ基材を得ることができる。
【0069】
重合条件については、光学材料用重合性組成物、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50~150℃の温度で1~50時間かけて行われる。
【0070】
モールドから離型して得られたレンズ基材は、重合完結化または残留応力による歪を取り除く目的等で、必要に応じて再加熱処理(アニーリング)を行ってもよい。
本実施形態においては、成形体からなるレンズ基材上に、ハードコート層と、反射防止層と、をこの順で備える、積層体とすることができる。
耐衝撃性の観点から、前記レンズ基材と前記ハードコート層との間に、プライマーコート層を備えることも好ましい。
【0071】
上記プライマー層に用いるコート剤としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂をビヒクルの主成分とするコート剤を用いることができる。
【0072】
積層体は、その他の層として、調光コート層、帯電防止コート等の機能性コート層を設けることができる。さらに、ファッション性付与のための染色処理を行ったり、表面およびエッジの研磨等の処理を行ったり、さらには偏光性を付与する目的で偏光フィルムを内部に入れたり表面に貼り付けたり様々な機能性を付与する加工等を行ってもよい。
【0073】
さらにこれら機能性コート層と基材との密着性を向上させる等の目的で、得られたレンズ基材(成形体)の表面を、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等による酸化処理、火炎処理等の物理的または化学的処理を施すこともできる。
【0074】
こうして得られる成形体または積層体からなる本実施形態のプラスチックレンズは、メガネレンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズ、およびレンチキュラレンズ等様々なレンズ用途に使用できる。それらの中でも特に好ましい用途として、表面が平滑なメガネレンズ、カメラレンズ、およびピックアップレンズが挙げられる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0076】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
なお、以下の実施例においては、以下の測定法により物性を測定した。
・粘度:JIS K 7117に準拠し測定した。
・フォトクロミック特性
測定方法:
・ΔT%@550nm:2mm厚に加工した成形体に、温度23℃で、ウシオ電機MS-35AAF/FBキセノンランプ光源装置(照度50000ルクス)を用いて、15分間照射した後の550nmにおける透過率を測定し、発色前後の550nmでの光線透過率変化量を算出した。この変化量が大きいほど発色時の遮光性が高いことを示す。
・Fading speed t1/2(退色半減期):上記と同様に成形体に15分間光線照射した後、光線照射を止めてから成形体サンプルの550nmにおける吸光度が発色前後の吸光度の中間値まで回復するのに要する時間(s)を測定した。この時間を退色半減期とした。退色半減期が速い成形体を調光性能が良好と判断する。
【0078】
〔実施例1〕
ポリエーテルポリオール(a)としてポリオールL64(カネカ社製)2.0重量部と、酸性リン酸エステルJP-506H(城北化学工業社製)0.2重量部と、化合物(b)としてメタンスルホン酸(東京化成社製)0.01重量部と、メタキシリレンジイソシアネート40.22重量部とを室温で混合した。続いてこの混合物に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを含むポリチオール組成物47.82重量部を添加し、さらに、スズ触媒(d)としてジメチルスズジクロリド(東京化成製)0.005重量部が溶解したメタキシリレンジイソシアネート10重量部を添加して重合性組成物を調製した。この重合性組成物を20℃で攪拌して、重合性組成物調製直後からそれぞれ1時間、3時間、5時間経過後の重合性組成物の粘度を、B型粘度計(Brookfield製)を使用して測定した。測定結果を表-1に示す。
【0079】
〔参考例1、実施例2~15、比較例1~10〕
ポリエーテルポリオール(a)、化合物(b)の種類と添加量、およびスズ触媒(d)の添加量を表-1および表-2に記載の値に変更した以外は、実施例1に記載の方法にて重合性組成物を調製して粘度を測定した。測定結果を表-1および表-2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
〔実施例16〕
フォトクロミック化合物(e)としてReversacol Wembley Grey(Vivimed社製)0.078重量部、Reversacol Heath green(Vivimed社製)0.064重量部と、ポリエーテルポリオール(a)としてポリオールL64(カネカ社製)2.0重量部と、酸性リン酸エステルJP-506H(城北化学工業社製)0.2重量部と、化合物(b)としてメタンスルホン酸(東京化成製)0.05重量部と、メタキシリレンジイソシアネート40.22重量部とを室温で混合した。続いてこの混合物に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを含むポリチオール組成物47.82重量部を添加し、さらに、スズ触媒(d)としてジメチルスズジクロリド(東京化成社製)0.004重量部が溶解したメタキシリレンジイソシアネート10重量部を添加して重合性組成物を調製した後、この重合性組成物を20℃で1時間攪拌した。真空ポンプを用いて133~400Paの減圧度で減圧しながら、1μmのPTFE製メンブランフィルターで重合性組成物を濾過し、攪拌しながら泡が消えるまで40分間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。重合性組成物を2mm厚のガラスモールドに注入し、オーブンで室温から120℃まで昇温して重合性組成物を硬化させて成形体を調製した。重合性組成物の調製時に重合性組成物の粘度が急速に上昇することはなく、ガラスモールドに重合性組成物を注入することができた。フォトクロミック特性の測定結果を表-3に示す。
【0083】
〔実施例17〕
化合物(b)の種類および添加量を表-3に記載の値に変更した以外は、実施例16に記載の方法にて成形体を調製してフォトクロミック特性を測定した。測定結果を表-3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表-1~表-3に記載の化合物は以下の通り。
PEG2000:ポリエチレングリコール(重量平均分子量2000、Sigma Aldrich社製)
PPG2000:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量2000、Sigma Aldrich社製)
Polyol L64:ブロックPEG/PPG(カネカ社製)
DMC:ジメチル錫ジクロライド(東京化成工業社製)
MSA:メタンスルホン酸(東京化成工業社製)
MSANa:メタンスルホン酸ナトリウム(和光化学社製)
MSAA:メタンスルホン酸無水物(和光化学社製)
Phosphoric acid:リン酸(和光化学社製)
PTSA:p-トルエンスルホン酸(東京化成工業社製)
PTSAA:p-トルエンスルホン酸無水物(東京化成工業社製)
Triflic anhydride:トリフルオロメタンスルホン酸無水物(東京化成工業社製)
Acetic acid:酢酸(東京化成工業社製)
TFA:トリフルオロ酢酸(和光化学社製)
Reversacol Wembley Grey:フォトクロミック化合物(Vivimed社製)
Reversacol Heath Green:フォトクロミック化合物(Vivimed社製)
【0086】
表1および表2の比較例の結果から、重合性組成物にポリエーテルポリオールまたはポリエーテルポリオールおよびスズ触媒の両方を添加すると重合性組成物の粘度が上昇するが、実施例の結果から、これらの重合性組成物に、一般式(1)で表される化合物を添加することにより、重合性組成物の粘度上昇を抑制することが可能であり、ハンドリング性(ポットライフ)に優れた光学材料用重合性組成物を提供できることが明らかとなった。
また、表3の結果から、本発明の一般式(1)で表される化合物を含む重合性組成物にフォトクロミック化合物を添加した場合においても、得られる成形体(フォトクロミック材料)は、良好なフォトクロミック特性を示すことが明らかとなった。