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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110600
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】MEMSセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20230802BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20230802BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
H01L41/113
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012152
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA43
3C081BA48
3C081BA75
3C081CA20
3C081CA26
3C081DA03
3C081EA02
(57)【要約】
【課題】センサ素子の電極を電気的に分離する分離部が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させる。
【解決手段】MEMSセンサは、表面10aに一部が露出する空洞12を有するn型半導体基板10と、n型半導体基板10に設けられて空洞12内に配置される梁部20と、梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50と、p型エピタキシャル成長層50を少なくとも一方がセンサ素子の電極を形成する第1及び第2領域R1,R2に電気的に分離する分離部16とを備える。分離部16は、第1領域R1及び第2領域R2と梁部20との間にそれぞれpn接合部D1,D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を厚さ方向に貫通して梁部20内まで延びている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に一部が露出する空洞を有するn型半導体基板と、
前記n型半導体基板に設けられて前記空洞内に配置される梁部と、
前記梁部上に形成されるp型エピタキシャル成長層と、
前記p型エピタキシャル成長層を少なくとも一方がセンサ素子の電極を形成する第1領域及び第2領域に電気的に分離する分離部とを備え、
前記分離部は、前記第1領域と前記梁部との間に第1pn接合部を形成すると共に前記第2領域と前記梁部との間に第2pn接合部を形成するように前記p型エピタキシャル成長層を厚さ方向に貫通して前記梁部内まで延びている、
MEMSセンサ。
【請求項2】
前記第1pn接合部及び前記第2pn接合部にそれぞれ、逆バイアス電圧が印加されている、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記第1領域及び第2領域にそれぞれ、配線が接続されている、
請求項1又は請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記n型半導体基板の裏面に、リードフレームが接続されている、
請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記p型エピタキシャル成長層に、n型コンタクトが形成され、
前記n型半導体基板の表面に、前記n型コンタクトを介して配線が接続されている、
請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
前記第1領域又は前記第2領域は、前記センサ素子の電極を形成する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項7】
前記電極は、前記センサ素子の可動電極又は固定電極である、
請求項6に記載のMEMSセンサ。
【請求項8】
前記第1領域は、前記センサ素子の第1電極を形成し、
前記第2領域は、前記センサ素子の第2電極を形成する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項9】
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ、前記センサ素子の可動電極又は固定電極である、
請求項8に記載のMEMSセンサ。
【請求項10】
前記n型半導体基板は、n型シリコン基板である、
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項11】
前記p型エピタキシャル成長層は、p型シリコンエピタキシャル成長層である、
請求項10に記載のMEMSセンサ。
【請求項12】
前記分離部は、酸化シリコンを有している、
請求項11に記載のMEMSセンサ。
【請求項13】
前記センサ素子は、静電容量型加速度センサ素子である、
請求項1から請求項12の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが知られている。MEMSセンサとして、例えば特許文献1には、静電容量型MEMS加速度センサが開示されている。静電容量型MEMS加速度センサは、半導体基板に形成された空洞内に配置された互いに噛み合う櫛歯状の固定電極と可動電極とを備え、固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより加速度を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定電極と可動電極とを有する静電容量型MEMS加速度センサなどのMEMSセンサでは、基板の表面に一部が露出する空洞内に配置されるようにセンサ素子の電極を形成するとともに空洞内に突出して配置される絶縁膜からなる分離部によって電極と電極を支持する支持部とを電気的に分離させることがある。
【0005】
センサ素子の電極と電極に隣接する支持部などの隣接領域とを分離部によって電気的に分離させるとき、電極と隣接領域とを確実に電気的に分離するためなど、分離部を空洞内に突出するように電極と隣接領域との間に配置する場合、空洞内に突出する分離部が折れてセンサの信頼性を低下させるおそれがある。特にセンサ素子の電極が可動電極である場合、可動電極の移動に伴って分離部が折れやすくセンサの信頼性を低下させるおそれがある。
【0006】
本開示は、センサ素子の電極を電気的に分離する分離部が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させることができるMEMSセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、表面に一部が露出する空洞を有するn型半導体基板と、前記n型半導体基板に設けられて前記空洞内に配置される梁部と、前記梁部上に形成されるp型エピタキシャル成長層と、前記p型エピタキシャル成長層を少なくとも一方がセンサ素子の電極を形成する第1領域及び第2領域に電気的に分離する分離部とを備え、前記分離部は、前記第1領域と前記梁部との間に第1pn接合部を形成すると共に前記第2領域と前記梁部との間に第2pn接合部を形成するように前記p型エピタキシャル成長層を厚さ方向に貫通して前記梁部内まで延びている、MEMSセンサを提供する。
【0008】
本開示によれば、p型エピタキシャル成長層の第1領域及び第2領域を、分離部によって分離するとともに第1pn接合部及び第2pn接合部によって梁部から第1領域及び第2領域に電気が流れることを抑制して、センサ素子の電極を形成し得る第1領域及び第2領域を電気的に分離することができる。分離部は、p型エピタキシャル成長層を貫通して梁部内まで延びるものの空洞内に突出しないので、分離部が折れることを抑制することができる。したがって、センサ素子の電極を電気的に分離する分離部が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。
図2図2は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。
図3図3は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。
図4図4は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図8図8は、図4のVIII-VIII線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図9図9は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図10図10は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図11図11は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図12図12は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図13図13は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図14図14は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
図15図15は、基板に設けられた電極と基板とを分離する分離部が基板に形成されたMEMSセンサを説明する図である。
図16図16は、本開示の別の実施形態に係るMEMSセンサの断面図である。
図17図17は、分離部の別の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。図1に示すように、本開示の実施形態に係るMEMSセンサ1は、センサ素子2としての静電容量型加速度センサ素子を有する静電容量型加速度センサである。MEMSセンサ1は、センサ素子2を有する基板10を備えた基板アセンブリ11を備えている。MEMSセンサ1は、半導体微細加工技術を用いて基板10を加工して製造される。
【0012】
以下では、基板10の表面に沿う所定方向をX方向とするとともにX方向と直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向と直交する基板10の厚さ方向をZ方向とする。図1では、Z方向上側から見た基板アセンブリ11を示している。なお、図1では、基板10に形成される配線を除いて示している。
【0013】
センサ素子2は、X方向に作用する加速度を検出するセンサ素子2である。センサ素子は、これに限定されるものでなく、Y方向に作用する加速度を検出するセンサ素子、あるいはZ方向に作用する加速度を検出するセンサ素子であってもよい。また、センサ素子2を覆う蓋基板を備えた別の基板アセンブリを基板アセンブリ11に接合させるようにしてもよい。
【0014】
基板10には、互いにX方向に離間して複数、具体的には5つのパッド部3が設けられている。パッド部3は、外部の電子部品などに接続されている。パッド部3は、センサ素子2に電気信号を入力したりセンサ素子2の電気信号を出力したりするようになっている。図1では、パッド部3とセンサ素子2とを電気的に接続する配線を省略して示している。
【0015】
図2は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。図3は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。図4は、図1に示すMEMSセンサの一部の要部拡大図である。図2図3及び図4はそれぞれ、図1のA1部、A2部及びA3部を拡大して示している。図5は、図2のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。図6は、図2のVI-VI線に沿うMEMSセンサの断面図である。図7は、図3のVII-VII線に沿うMEMSセンサの断面図である。図8は、図4のVIII-VIII線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【0016】
図5から図8に示すように、基板アセンブリ11は、表面である第1主面1010aと、第1主面10aの反対側の裏面である第2主面10bとを有する基板10を備えている。基板10は、平面視で、X方向に延びる2辺とY方向に延びる2辺とを有して矩形状に形成されている。基板10は、リンなどのn型不純物をドーピングして導電性を付与した単結晶n型半導体基板である。基板10として、導電性単結晶n型シリコン基板が用いられる。
【0017】
基板10には、センサ素子2が形成される領域に、第1主面10aにエピタキシャル成長層50が形成されている。エピタキシャル成長層50は、基板10の第1主面10aから所定厚さを有するように形成されている。エピタキシャル成長層50は、ボロンなどのp型不純物がドーピングされてエピタキシャル成長された単結晶p型エピタキシャル成長層である。p型エピタキシャル成長層50は、p型不純物を高濃度、例えば1019~21/cm程のp型高不純物濃度を有する。p型エピタキシャル成長層50として、導電性単結晶p型シリコンエピタキシャル成長層が用いられる。
【0018】
基板10は、図1に示すように、中央側にセンサ素子2に対応して第1主面10aに一部が露出する空洞12を有している。空洞12は、第1主面10aから基板10の厚さ方向に略直方体状に窪んで形成され、底壁部12aと底壁部12aから基板10の厚さ方向に延在する側壁部12bとを有している。
【0019】
基板10は、図5に示すように、センサ素子2の電極13に対応して形成された電極用の梁部20と、梁部20を支持する梁部支持部14とを有している。梁部20は、基板10の空洞12内に配置され、空洞12内に浮いた状態で梁部支持部14に支持されている。梁部20は、基板10の一部によって形成されている。梁部支持部14は、図1に示すように、センサ素子2の周囲を囲むように平面視で略四角形状に環状に形成されている。梁部支持部14の内周面は、空洞12の側壁部12bを構成する。
【0020】
エピタキシャル成長層50は、基板10の梁部20及び梁部支持部14に対応して形成され、梁部20及び梁部支持部14と平面視で同一形状に形成されている。センサ素子2の電極13は、梁部20上に形成されるエピタキシャル成長層50によって形成されている。センサ素子2の電極13を支持する電極支持部15は、梁部20及び梁部支持部14上に形成されるエピタキシャル成長層50によって形成されている。
【0021】
電極13は、固定電極30と、固定電極30に対してX方向に移動可能である可動電極40とを備えている。固定電極30及び可動電極40は、第1基板10の厚さ方向に同一厚さで形成されている。梁部20は、梁部支持部14に接続されて電極支持部15の下方に配置される支持用梁部21(図5参照)と、図6固定電極30の下方に配置される固定電極用梁部22(図6参照)と、可動電極40の下方に配置される可動電極用梁部24(図5参照)とを備えている。固定電極用梁部22及び可動電極用梁部24は、支持用梁部21に接続されている。
【0022】
固定電極30は、図1に示すように、電極支持部15に接続される接続部31と、接続部31に接続されるベース部32と、ベース部32に接続されると共にY方向に延在するように櫛歯状に形成される複数の電極部33とを有している。
【0023】
接続部31は、図2に示すように、平面視でX方向に直線状に延在する2つの横直線部分31aと、平面視でY方向に直線状に延在する2つの縦直線部分31bとを有し、横直線部分31aと縦直線部分31bとは、格子状に設けられている。横直線部分31aは、X方向両側が電極13と該電極13に隣接する隣接領域である電極支持部15とを分離する分離部16を介して電極支持部15に接続されている。分離部16は、酸化シリコンを有し、絶縁膜である酸化シリコン膜によって形成されている。
【0024】
ベース部32は、図3に示すように、平面視でX方向に直線状に延在する2つの横直線部分32aと、平面視でY方向に直線状に延在する複数の縦直線部分32bとを有し、横直線部分32aと縦直線部分32bとは、梯子状に設けられている。
【0025】
複数の電極部33は、ベース部32からY方向に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に配置されている。固定電極30の接続部31、ベース部32及び複数の電極部33は、エピタキシャル成長層50によって一体的に形成されている。
【0026】
固定電極用梁部22は、固定電極30と平面視で同一形状を有して固定電極30の下側に配置され、固定電極30の接続部31、ベース部32及び複数の電極部33にそれぞれ対応して接続部31、ベース部32及び複数の電極部33のそれぞれの下方に配置される接続基部22a、ベース基部22b、及び複数の電極基部22cを有している。
【0027】
可動電極40は、図1に示すように、電極支持部15に接続される接続部41と、接続部41に接続されてY方向に延在するバネ部44と、バネ部44を介して接続部41に接続されるベース部42と、ベース部42に接続されると共にY方向に延在するように櫛歯状に形成される複数の電極部43とを有している。
【0028】
接続部41は、X方向一方側に配置される第1接続部45とX方向他方側に配置される第2接続部46とを備えている。第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、センサ素子2のX方向内側にX方向に直線状に延在する第1横直線部分41a(図2参照)と、センサ素子2のX方向外側にX方向に直線状に延在する第2横直線部分41b(図3参照)と、センサ素子2のY方向一方側にY方向に直線状に延在する複数の縦直線部分41c(図3参照)とを有している。
【0029】
第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、第1横直線部分41aが電極13と該電極13に隣接する隣接領域である電極支持部15とを分離する分離部16を介して電極支持部15に接続されている。分離部16は、酸化シリコンを有し、絶縁膜である酸化シリコン膜によって形成されている。
【0030】
第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、複数の縦直線部分41cがそれぞれ分離部16を介して固定電極30のベース部32に接続されるとともに、第2横直線部分41bがバネ部44に接続されている。
【0031】
バネ部44は、図1に示すように、第1接続部45に接続される第1バネ部47と第2接続部46に接続される第2バネ部48とを備えている。第1バネ部47及び第2バネ部48は、センサ素子2のX方向両側に配置されてY方向に延び、X方向に作用する加速度に応じてX方向に移動可能に構成されている。
【0032】
ベース部42は、図4に示すように、平面視でY方向に直線状に延在する複数の第1縦直線部分42a及び第2縦直線部分42bと、平面視でX方向に直線状に延在する複数の横直線部分42cとを有し、複数の第1縦直線部分42a及び第2縦直線部分42bと複数の横直線部分42cとは、格子状に設けられている。第1縦直線部分42aと第2縦直線部分42bとは、X方向に交互に配置され、第1縦直線部分42aのY方向一方側に第1バネ部47が接続され、第2縦直線部分42bのY方向一方側に第2バネ部48が接続されている。
【0033】
第1縦直線部分42a及び第2縦直線部分42bは、横直線部分42cに設けられた分離部16によって電気的に分離されて絶縁されている。複数の第1縦直線部分42aは、第1縦直線部分42a上に設けられた複数のコンタクト61及びコンタクト61間を接続する配線62を介して電気的に接続されている。複数の第2縦直線部分42bは、第2縦直線部分42b上に設けられた複数のコンタクト63及びコンタクト63間を接続する配線64を介して電気的に接続されている。
【0034】
複数の電極部43は、ベース部42からY方向他方側に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に配置されている。複数の電極部43は、第1縦直線部分42aのY方向他方側からY方向に直線状に延在する複数の第1電極部43aと、第2縦直線部分42bのY方向他方側からY方向に直線状に延在する複数の第2電極部43bとを有している。
【0035】
第1電極部43aと第2電極部43bとは、一対として固定電極30の電極部33間に配置され、第1電極部43a及び第2電極部43bはそれぞれ、対向する固定電極30の電極部33と接触しないように配置されている。一対の第1電極部43a及び第2電極部43bは、Y方向に直線状に延在する複数の横直線部分43cによって接続されると共に横直線部分43cに設けられた分離部16によって電気的に分離されて絶縁されている。
【0036】
可動電極40は、第1電極部43aを備えた第1可動電極40aと、第2電極部43bを備えた第2可動電極40bとを有している。第1可動電極40aと第2可動電極40bとは、分離部16によって電気的に分離されて絶縁されている。第1可動電極40aは、第1電極部43a、ベース部42の第1縦直線部分42a、第1バネ部47及び第1接続部45を備えて構成され、第2可動電極40bは、第2電極部43b、ベース部42の第2縦直線部分42b、第2バネ部48及び第2接続部46を備えて構成されている。
【0037】
センサ素子2にX方向の加速度が作用すると、加速度に応じて固定電極30の電極部33に対して可動電極40の電極部43が相対的に移動して固定電極30の電極部33と可動電極40の電極部43との間の間隔が変化して固定電極30と可動電極40との間の静電容量、具体的には固定電極30及び第1可動電極40a間並びに固定電極30及び第2可動電極40b間の静電容量が変化する。センサ素子2は、固定電極30と可動電極40との間の静電容量の変化を電気信号として取り出すことで加速度を検出できるようになっている。
【0038】
図2に示すように、固定電極30には、固定電極30とパッド部3とを電気的に接続する固定電極用の配線65が固定電極用のコンタクト66を介して接続されている。第1可動電極40aには、第1可動電極40aとパッド部3とを電気的に接続する第1可動電極用の配線67が第1可動電極用のコンタクト68を介して接続されている。第2可動電極40bには、第2可動電極40bとパッド部3とを電気的に接続する第2可動電極用の配線が第2可動電極用のコンタクト70(図1参照)を介して接続されている。
【0039】
電極支持部15には、電極支持部15とパッド部3とを電気的に接続する電極支持部用の配線74が電極支持部用のコンタクト75を介して接続されている。基板10には、基板10とパッド部3とを電気的に接続する基板用の配線71が基板用のコンタクト72を介して接続されている。
【0040】
エピタキシャル成長層50上には、図5から図8に示すように、絶縁膜として酸化シリコン膜80が形成されている。酸化シリコン膜80には、コンタクト66,68,70,72及び75が形成されている。前記コンタクト66,68,70,72及び75は、コンタクト孔にタングステンなどの金属が埋め込まれた金属コンタクトとして形成されている。
【0041】
図5に示すように、基板用のコンタクト72は、エピタキシャル成長層50に形成されたn型コンタクト73を介して基板10の第1主面10aに電気的に接続されている。n型コンタクト73は、p型エピタキシャル成長層50にリンなどのn型不純物を拡散させて形成されている。
【0042】
酸化シリコン膜80上には、固定電極用の配線65、第1可動電極用の配線67、第2可動電極用の配線、電極支持部用の配線74及び基板用の配線71が形成されている。酸化シリコン膜80上にはまた、第1可動電極40aの複数の第1縦直線部分42aを電気的に接続する配線62と第2可動電極40bの複数の第2縦直線部分42bを電気的に接続する配線64とが形成されている。前記配線は、AlとCuとの合金であるAlCu層などの配線層がパターニングされて形成されている。前記配線は、Ti層とTiN層とが積層されたTi/TiN層などのバリア層を介して酸化シリコン膜80上に形成するようにしてもよい。
【0043】
MEMSセンサ1では、基板10、固定電極30、第1可動電極40a、第2可動電極40b、電極支持部15にそれぞれ接続されたパッド部3には、基板10と固定電極30、第1可動電極40a、第2可動電極40b、電極支持部15との間にそれぞれ逆バイアス電圧が印加されるように電圧が加えられる。
【0044】
本実施形態に係るMEMSセンサ1の分離部16についてさらに説明する。
MEMSセンサ1では、図2に示すように、固定電極30と電極支持部15とが分離部16によって分離され、可動電極40と電極支持部15とが分離部16によって分離され、図3に示すように、第1可動電極40aと第2可動電極40bとが分離部16によって分離され、固定電極30と可動電極40とが分離部16によって分離されている。
【0045】
センサ素子2の電極13と該電極13に隣接する隣接領域とが分離部16によって電気的に分離され、分離部16は、p型エピタキシャル成長層50を少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電気的に分離する。
【0046】
図5では、第1可動電極40aと電極支持部15とを電気的に分離する分離部16が示されている。分離部16は、p型エピタキシャル成長層50によって形成された第1可動電極40aと電極支持部15とを分離するように第1可動電極40aと電極支持部15との間にp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びている。分離部16は、梁部20の下方に配置される空洞12に突出することなく、基板10の厚さ方向に梁部20の内側まで延びている。
【0047】
図2に示すように、p型エピタキシャル成長層50によって形成された第1可動電極40aと基板10の梁部20に設けられた可動電極用梁部24とは、平面視で同一形状に形成され、p型エピタキシャル成長層50によって形成された電極支持部15と基板10の梁部20に設けられた支持用梁部21とは、平面視で同一形状に形成されている。分離部16によって、第1可動電極40aと電極支持部15とが区画されている。
【0048】
分離部16は、p型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びているので、図5に示すように、第1可動電極40aを形成するp型エピタキシャル成長層50とn型半導体基板10の可動電極用梁部24との間に第1pn接合部D1が形成され、電極支持部15を形成するp型エピタキシャル成長層50とn型半導体基板10の支持用梁部21との間に第2pn接合部D2が形成されている。
【0049】
これにより、第1可動電極40a及び電極支持部15を、分離部16によって分離するとともに第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2によって梁部20から第1可動電極40a及び電極支持部15に電気が流れることを抑制して、第1可動電極40a及び電極支持部15を電気的に分離することができる。分離部16は、p型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びるものの空洞12内に突出しないので、分離部16が折れることを抑制することができる。
【0050】
MEMSセンサ1では、基板10と第1可動電極40aとの間に逆バイアス電圧が印加され、第1pn接合部D1に逆バイアス電圧が印加されている。基板10と電極支持部15との間にも逆バイアス電圧が印加され、第2pn接合部D2にも逆バイアス電圧が印加されている。これにより、梁部20から第1可動電極40a及び電極支持部15に電流が流れることを抑制して分離部16によって第1可動電極40a及び電極支持部15を電気的に分離することができる。第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2には、同一又は異なる逆バイアス電圧が印加される。
【0051】
第2可動電極40bと電極支持部15とを分離する分離部16についても、第1可動電極40aと電極支持部15とを分離する分離部16と同様に形成されている。分離部16は、第2可動電極40bと梁部20との間に第1pn接合部を形成するとともに電極支持部15と梁部20との間に第2pn接合部を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びている。第1pn接合部及び第2pn接合部にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0052】
固定電極30と電極支持部15とを分離する分離部16、第1可動電極40aと第2可動電極40bとを分離する分離部16、第1可動電極40aと固定電極30とを分離する分離部16、第2可動電極40bと固定電極30とを分離する分離部16、第1可動電極40aの第1縦直線部分42aと第2可動電極40bの第2縦直線部分42bとを分離する分離部16についても、第1可動電極40aと電極支持部15とを分離する分離部16と同様に形成されている。
【0053】
図6に示すように、固定電極30と電極支持部15とを分離する分離部16は、固定電極30と梁部20との間に第1pn接合部D1を形成するとともに電極支持部15と梁部20との間に第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延び、第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0054】
図7に示すように、第1可動電極40aと第2可動電極40bとを分離する分離部16は、第1可動電極40aと梁部20との間に第1pn接合部D1を形成するとともに第2可動電極40bと梁部20との間に第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延び、第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0055】
図3に示すように、第1可動電極40aと固定電極30とを分離する分離部16は、第1可動電極40aと梁部20との間に第1pn接合部を形成するとともに固定電極30と梁部20との間に第2pn接合部を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延び、第1pn接合部及び第2pn接合部にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0056】
第2可動電極40bと固定電極30とを分離する分離部16についても、第2可動電極40bと梁部20との間に第1pn接合部を形成するとともに固定電極30と梁部20との間に第2pn接合部を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延び、第1pn接合部及び第2pn接合部にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0057】
図8に示すように、第1可動電極40aの第1縦直線部分42aと第2可動電極40bの第2縦直線部分42bとを分離する分離部16は、第1縦直線部分42aと梁部20との間に第1pn接合部D1を形成するとともに第2縦直線部分42bと梁部20との間に第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延び、第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2にはそれぞれ逆バイアス電圧が印加されている。
【0058】
MEMSセンサ1は、n型半導体基板10の梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50を少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電気的に分離する分離部16を備え、分離部16は、第1領域R1及び第2領域R2と梁部20との間にそれぞれ第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びている。
【0059】
このようにして構成されるMEMSセンサ1は、固定電極30及び第1可動電極40aの電極部とパッド部3とが電気的に接続されるとともに固定電極30及び第2可動電極40bの電極部とパッド部3とが電気的に接続され、固定電極30と第1可動電極40aの電極部間の静電容量及び固定電極30と第2可動電極40bの電極部間の静電容量の変化から加速度を検出するようになっている。
【0060】
次に、MEMSセンサ1の製造方法について説明する。
図9から図14は、MEMSセンサ1の製造方法を説明する図である。エピタキシャル成長層50上に形成される酸化シリコン膜及び配線については、図9から図14では省略するとともに説明を省略する。図9図11図13は、図2のV-V線に沿うMEMSセンサ1の断面を示し、図12図14は、図2のXII-XII線に沿うMEMSセンサ1の断面を示している。
【0061】
MEMSセンサ1の製造では、n型シリコン基板であるn型半導体基板10が準備され、p型不純物がドーピングされてエピタキシャル成長によって、n型半導体基板10の第1主面10aにp型エピタキシャル成長層50が形成される。エピタキシャル成長層50の形成後には、CMP(Chemical Mechanical Polish)処理によって平坦化される。
【0062】
次に、CVD法によって、エピタキシャル成長層50上に絶縁膜として酸化シリコン膜が形成され、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、酸化シリコン膜がパターニングされ、酸化シリコン膜における分離部16に対応する部分が開口される。
【0063】
そして、酸化シリコン膜をマスクとして、異方性エッチングによって、エピタキシャル成長層50及び基板10における分離部16に対応する部分が除去されてトレンチ81が形成される。トレンチ81の形成後に、エッチングによって酸化シリコン膜が取り除かれ、図9に示すように、エピタキシャル成長層50及び基板10における分離部16に対応するトレンチ81が形成される。
【0064】
次に、熱酸化法によってトレンチ81の内面全体及びエピタキシャル成長層50の表面全体が熱酸化されてトレンチ81を埋めると共にエピタキシャル成長層50の表面全体に熱酸化膜である酸化シリコン膜が形成される。トレンチ81が酸化シリコン膜で埋められて分離部16が形成されると、CMP処理によって平坦化され、図10に示すように、エピタキシャル成長層50及び基板10に分離部16が形成される。
【0065】
次に、酸化シリコン膜をマスクとして、基板用のコンタクト72に対応する部分にn型不純物を熱拡散させ、図11に示すように、p型エピタキシャル成長層50にn型コンタクト73が形成される。
【0066】
次に、CVD法によって、エピタキシャル成長層50上に絶縁膜として酸化シリコン膜が形成され、フォトリソグラフィ及び異方性エッチングによってエピタキシャル成長層50及び基板10の第1主面10aがパターニングされ、図12に示すように、センサ素子2の電極13及び電極支持部15の形状を残すようにトレンチ84が形成される。
【0067】
次に、等方性エッチングによって、トレンチ84の底面が深く形成されるとともに、基板10の第1主面10aに平行な方向にエッチングされ、図13及び図14に示すように、基板10の第1主面10aに空洞12の一部が露出する空洞12が形成されるとともに、空洞12内に梁部20が浮いた状態で配置される。
【0068】
このようにして、第1主面10aに一部が露出する空洞12を有するn型半導体基板10に、空洞12内に配置される梁部20が設けられるとともに、梁部20上にp型エピタキシャル成長層50が形成される。梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50は、分離部16によって少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電気的に分離される。分離部16は、第1領域R1と梁部20との間に第1pn接合部D1を形成すると共に第2領域R2と梁部20との間に第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を厚さ方向に貫通して梁部20内まで延びている。
【0069】
これにより、p型エピタキシャル成長層50の第1領域R1及び第2領域R2を、分離部16によって分離するとともに第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2によって梁部20から第1領域R1及び第2領域R2に電気が流れることを抑制して、センサ素子2の電極13を形成し得る第1領域R1及び第2領域R2を電気的に分離することができる。分離部16は、p型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びるものの空洞12内に突出しないので、分離部16が折れることを抑制することができる。
【0070】
図15は、基板に設けられた電極と基板とを分離する分離部が基板に形成されたMEMSセンサを説明する図である。図15に示すMEMSセンサ201は、半導体基板210に設けられた電極213と基板210とを分離する分離部216が基板210に形成されている。MEMSセンサ201は、基板210の表面210aに一部が露出するように形成された空洞212内にセンサ素子の電極213が配置されるように基板210に電極213を形成するとともに、空洞212内に突出して配置される絶縁膜からなる分離部216によって電極213と電極213を支持する支持部214とが電気的に分離されている。
【0071】
このように、電極213と支持部214との間に配置される分離部216が空洞212内に突出する場合、空洞212内に突出する分離部216が折れるおそれがある(図15の二点鎖線参照)。特に電極213が可動電極である場合、分離部216が折れるおそれがある。分離部216が折れると、電極213の移動などを妨げてセンサの信頼性を低下させるおそれがある。
【0072】
本実施形態では、前述したように、分離部16は、n型半導体基板10の第1主面10aに形成されるp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びるものの、空洞12内に突出しないので、分離部16が折れることを抑制することができる。
【0073】
図16は、本開示の別の実施形態に係るMEMSセンサの断面図である。本開示の別の実施形態に係るMEMSセンサ101は、前述した実施形態に係るMEMSセンサ1と、基板10をパッド部3に電気的に接続する方法が異なるものであり、同様の構成については説明を省略する。
【0074】
図16に示すように、MEMSセンサ101では、n型半導体基板10の裏面である第2主面10bに、銀ペーストなどの導電性接着剤82を介してリードフレーム83が取り付けられている。リードフレーム83には、基板10のパッド部3に接続されるフレーム側パッド部(不図示)が設けられるとともに、基板10の第2主面10bと前記フレーム側パッド部とを電気的に接続する配線が形成されている。
【0075】
このように、MEMSセンサ101では、n型半導体基板10の第2主面10bに、リードフレーム83が接続されている。MEMSセンサ101では、基板10に形成された電極用のパッド部3とリードフレーム83のフレーム側パッド部とは、ボンディングワイヤなどによって電気的に接続される。
【0076】
図17は、分離部の別の製造方法を説明する図である。前述した実施形態に係るMEMSセンサ101では、図9に示すように、エピタキシャル成長層50及び基板10に分離部16に対応する1つのトレンチ81が形成され、熱酸化して分離部16を形成しているが、図17の二点鎖線で示すように、エピタキシャル成長層50及び基板10に分離部16に対応する複数のトレンチ88を形成した後に熱酸化して、図17の実線で示すように、複数のトレンチ88全体が熱酸化されて一体化された分離部16を形成するようにしてもよい。
【0077】
本実施形態では、可動電極40は、第1可動電極40aと第2可動電極40bとを備えているが、1つの可動電極を有するようにしてもよい。また、電極支持部15に接続される配線74は、梁部支持部14上に形成される電極支持部15にコンタクト75を介して接続されているが、支持用梁部21上に形成される電極支持部15にコンタクトを介して接続するようにしてもよい。
【0078】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1は、n型半導体基板10の空洞12内に配置される梁部20と、梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50と、p型エピタキシャル成長層50を少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電気的に分離する分離部16とが備えられ、分離部16は、第1領域R1及び第2領域R2と梁部20との間にそれぞれ第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2を形成するようにp型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びている。
【0079】
これにより、p型エピタキシャル成長層50の第1領域R1及び第2領域R2を、分離部16によって分離するとともに第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2によって梁部20から第1領域R1及び第2領域R2に電気が流れることを抑制して、センサ素子2の電極13を形成し得る第1領域R1及び第2領域R2を電気的に分離することができる。分離部16は、p型エピタキシャル成長層50を貫通して梁部20内まで延びるものの空洞12内に突出しないので、分離部16が折れることを抑制することができる。したがって、センサ素子2の電極13を電気的に分離する分離部16が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させることができる。
【0080】
また、第1pn接合部D1及び第2pn接合部D2にそれぞれ、逆バイアス電圧が印加されている。これにより、梁部20から少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電流が流れることを抑制して第1領域R1及び第2領域R2を電気的に分離することができる。
【0081】
また、第1領域R1及び第2領域R2にそれぞれ、配線が接続されている。これにより、少なくとも一方がセンサ素子2の電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2に電気信号を入力したり出力したりすることができる。
【0082】
また、n型半導体基板10の裏面10bに、リードフレーム83が接続されている。これにより、n型半導体基板10の裏面10bに銀ペーストなどを用いて接合されたリードフレーム83を介して、n型半導体基板10の裏面10bを外部の電子部品などに接続することが可能である。
【0083】
また、p型エピタキシャル成長層50に、n型コンタクト73が形成され、n型半導体基板10の表面10aに、n型コンタクト73を介して配線71が接続されている。これにより、n型コンタクト73からp型エピタキシャル成長層50に電気が流れることを抑制して、n型半導体基板10の表面10aからn型コンタクト73を介して配線71に電気的に接続することができる。
【0084】
また、第1領域R1又は第2領域R2は、センサ素子2の電極13を形成する。これにより、n型半導体基板10の梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50の第1領域R1及び第2領域R2を、センサ素子2の電極13及び電極13を支持する電極支持部15として用いることが可能である。
【0085】
また、前記電極13は、センサ素子2の可動電極40又は固定電極30である。これにより、n型半導体基板10の梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50の第1領域R1又は第2領域R2をセンサ素子2の可動電極40又は固定電極30として用いる場合に、分離部16が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、第1領域R1は、センサ素子2の第1電極を形成し、第2領域R2は、センサ素子2の第2電極を形成する。これにより、n型半導体基板10の梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50の第1領域R1及び第2領域R2をセンサ素子2の電極13として用いることができる。
【0087】
また、前記第1電極及び前記第2電極は、センサ素子2の可動電極40又は固定電極30である。これにより、n型半導体基板10の梁部20上に形成されるp型エピタキシャル成長層50の第1領域R1及び第2領域R2をそれぞれセンサ素子2の可動電極40又は固定電極30として用いる場合に、分離部16が折れることを抑制してセンサの信頼性を向上させることができる。
【0088】
また、n型半導体基板10は、n型シリコン基板10である。これにより、n型シリコン基板10の梁部20上にp型エピタキシャル成長層50を形成して分離部16によって第1領域R1及び第2領域R2に分離させることで、第1領域R1及び第2領域R2と梁部20との間にそれぞれpn接合部D1,D2を形成することができる。
【0089】
また、p型エピタキシャル成長層50は、p型シリコンエピタキシャル成長層50である。これにより、n型シリコン基板10の梁部20上にp型シリコンエピタキシャル成長層50を形成して分離部16によって第1領域R1及び第2領域R2に分離させることで、第1領域R1及び第2領域R2と梁部20との間にそれぞれpn接合部D1,D2を形成することができる。
【0090】
また、分離部16は、酸化シリコンを有している。これにより、n型シリコン基板10の梁部20上にp型エピタキシャル成長層50を形成した後に分離部16に対応するトレンチ81、88を形成してトレンチ81,88を埋めるように熱酸化膜などの酸化シリコン膜を形成することで、比較的容易に分離部16を形成することができる。
【0091】
また、センサ素子2は、静電容量型加速度センサ素子2である。静電容量型加速度センサ素子2を有するMEMSセンサ1において、分離部16によって少なくとも一方が電極13を形成する第1領域R1及び第2領域R2を電気的に分離させるとともに分離部16が折れることを抑制してセンサ1の信頼性を向上させることができる。
【0092】
本実施形態では、MEMSセンサとして、静電容量型加速度センサについて記載されているが、空洞内に配置される電極を有するセンサ素子を有する他のMEMSセンサについても同様に適用可能である。
【0093】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1,101 MEMSセンサ
2 センサ素子
10 n型半導体基板
12 空洞
13 電極
16 分離部
20 梁部
30 固定電極
40 可動電極
50 p型エピタキシャル成長層
73 n型コンタクト
83 リードフレーム
D1 第1pn接合部
D2 第2pn接合部
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17