(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110609
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】核燃料ペレットの製造方法、および燃料集合体
(51)【国際特許分類】
G21C 3/62 20060101AFI20230802BHJP
G21C 3/328 20060101ALI20230802BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20230802BHJP
C04B 35/01 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G21C3/62 700
G21C3/328 100
G21C3/30 100
C04B35/01
G21C3/62 225
G21C3/62 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012171
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229461
【氏名又は名称】株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】松永 純治
(72)【発明者】
【氏名】安達 淳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(57)【要約】
【課題】製造性および経済性に優れたガドリニア添加MOXペレットを製造するための核燃料ペレットの製造方法、および燃料集合体を提供する。
【解決手段】実施形態に係る核燃料ペレットの製造方法は、ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられる核燃料ペレットの製造方法であって、焼結助剤およびガドリニア粉末を混合、成形および焼結して、焼結体を製造する工程と、前記焼結体を粉砕して、ガドリニア入り焼結助剤粉末を生成する工程と、二酸化ウラン粉末と前記ガドリニア入り焼結助剤粉末を混合、成形および焼結して、(U,Gd)O
2ペレットを製造する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられる核燃料ペレットの製造方法であって、
焼結助剤成分およびガドリニアを含むガドリニア入り焼結助剤粉末を生成する工程と、
二酸化ウラン粉末と前記ガドリニア入り焼結助剤粉末を混合、成形および焼結して、(U,Gd)O2ペレットを製造する工程と、
を備える、核燃料ペレットの製造方法。
【請求項2】
焼結助剤およびガドリニア粉末を混合、成形および焼結して製造した焼結体を粉砕して前記ガドリニア入り焼結助剤粉末を生成する、請求項1に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末および/または二酸化ケイ素粉末を含む、請求項2に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記焼結助剤と前記ガドリニア粉末との混合比は、モル比で焼結助剤:ガドリニア粉末=9:1~7:3である、請求項3に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記焼結体を製造するための焼結温度は、1700~1800℃である、請求項2~4のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記(U,Gd)O2ペレットに対する前記ガドリニア入り焼結助剤粉末の質量比は、100~2000wtppmである、請求項1~5のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項7】
前記ガドリニア入り焼結助剤粉末と前記二酸化ウラン粉末を混合する際、これらに加えてガドリニア粉末および/または(U,Gd)O2回収材を混合する、請求項1~6のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項8】
前記(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃である、請求項1~7のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法で製造された(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を生成する工程と、
MOX粉末と前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する工程と、
を備える、核燃料ペレットの製造方法。
【請求項10】
前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末とMOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合する、請求項9に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項11】
前記ガドリニア添加MOXペレットに対する、前記焼結助剤に含まれるAlおよびSiの質量比は、25~500wtppmである、請求項9または10に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項12】
前記ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃である、請求項9~11のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項13】
焼結助剤、ガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末を混合、成形および焼結して、(U,Gd)O2ペレットを製造する工程と、
前記(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を生成する工程と、
MOX粉末と前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する工程と、
を備える、核燃料ペレットの製造方法。
【請求項14】
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末および/または二酸化ケイ素粉末を含む、請求項13に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項15】
前記(U,Gd)O2ペレットに対する前記焼結助剤の質量比は、70~2500wtppmである、請求項13または14に記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項16】
前記(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃である、請求項13~15のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項17】
前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末と前記MOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合する、請求項13~16のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項18】
前記ガドリニア添加MOXペレットに対する、前記焼結助剤に含まれるAlおよびSiの質量比は、25~500wtppmである、請求項13~17のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項19】
前記ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃である、請求項13~18のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
【請求項20】
沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体であって、
複数の燃料棒を備え、
前記複数の燃料棒のうち少なくとも1本には、請求項9または13に記載の製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填され、
前記ガドリニア添加MOXペレットのプルトニウム富化度は1種類のみである、燃料集合体。
【請求項21】
沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体であって、
複数の燃料棒を備え、
前記複数の燃料棒のうち、コーナ位置に配置された燃料棒、および/またはコーナ位置から最外周燃料層の1燃料棒ピッチ分だけ離れた位置に配置された燃料棒には、請求項9または13に記載の製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填されている、燃料集合体。
【請求項22】
前記複数の燃料棒に装填される核燃料ペレットはすべてプルトニウムを含み、使用済燃料の再処理で得られる回収ウランを除き、濃縮ウランを含む核燃料ペレットを含まない、請求項21に記載の燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料ペレットの製造方法および燃料集合体に関し、より詳しくは、ガドリニアが添加された核燃料ペレットの製造方法、および燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
日本が保有するプルトニウムを国策に従い着実に利用することが求められているところ、近い将来にプルトニウム消費を加速するためには、軽水炉におけるMOX燃料の利用を推進する必要がある。しかし、現在のMOX燃料はウラン燃料をベースに設計され、MOX燃料として最適化されておらず、プルトニウム装荷量が大幅に制限されている。この制限の主たる要因としては、現行のMOX燃料集合体が単に二酸化ウラン(UO2)燃料棒をMOX燃料棒に置き換えたものであり、反応度制御のために添加されるガドリニア(Gd2O3)をMOX燃料棒に適用していない(すなわち、MOXペレットにガドリニアを添加していない)ことが挙げられる。
【0003】
現行の8×8型MOX燃料集合体を9×9型MOX燃料集合体とし、取出燃焼度を33GWd/tから45GWd/tに高燃焼度化する場合、炉心制御に必要なGd反応度は約30%増加する。このため、ガドリニア添加UO2ペレット((U,Gd)O2ペレット)の割合を約30%増加させる必要があり、その分だけMOX燃料棒の本数が減ってしまうことになる。
【0004】
また、燃料集合体あたりのプルトニウム富化度を高めたとしても、高燃焼度化により取替燃料体数は減少するため、1炉心あたりのプルトニウムの年間消費量は高燃焼度化により低下してしまう場合がある。非特許文献1によれば、標準の9×9型MOX燃料集合体(取出燃焼度45GWd/t)は、燃料集合体あたりのプルトニウム富化度が高められたにもかかわらず、8×8型MOX燃料集合体(取出燃焼度33GWd/t)と比較してプルトニウムの年間消費量は約30%低下すると評価されている。また、9×9型MOX燃料集合体の燃料棒配置を最適化したとしても、プルトニウムの年間消費量は8×8型MOX燃料集合体に比較して約10%の向上に留まる。
【0005】
上記の課題を克服するために、これまでに以下の提案がなされている。
提案1:ガドリニアをMOXペレット((U,Pu)O2)に添加する(特許文献1~3)。
提案2:MOXペレットを中空構造にして、その中心部にガドリニア棒を装荷する(特許文献4)。
提案3:MOXペレット間にガドリニアディスクを配置する(特許文献5)。
提案4:燃料棒の燃料被覆管にガドリニアを内張りする(特許文献6)。
提案5:燃料集合体のチャンネルボックスにガドリニアを埋め込む(特許文献7)。
【0006】
提案1に関しては、MOX粉末にガドリニアを混合するプロセスが従来想定されていないことから、ガドリニアをMOXペレットに混合するための、独立した製造ラインをMOX工場に新たに設ける必要がある。しかし、MOX工場を大幅に改造することとなるため、MOX燃料のコストが上昇することが懸念される。
【0007】
また、従来、ウラン燃料にガドリニアを添加することにより、UO2ペレットの焼結性が低下することが知られている(非特許文献2)。これに対しては、アルミナ(Al2O3)や二酸化ケイ素(SiO2)などの焼結助剤を用いて焼結性を改善する方法が提案されている(特許文献8~11)。
【0008】
しかし、MOXペレットについてはUO2ペレットよりも構成元素が多いため、MOXペレットの材料(MOX粉末、UO2粉末等)にガドリニアをさらに混合してガドリニア添加MOXペレットを製造する場合、その焼結性の制御はUO2ペレットの場合よりも格段に難しくなることが予想される。その結果、たとえば、十分な焼結密度が得られなかったり、焼結密度のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0009】
上記のように焼結性が低下すると、ガドリニア添加MOXペレットの製造歩留まりが低下し、燃料コストの増加につながる。また、わずかではあるが、燃料集合体あたりのプルトニウム装荷量が減少してしまうことにもなる。
【0010】
よって、従来考えられる方法でガドリニアをMOX粉末に添加してガドリニア添加MOXペレットを製造することは、製造性および経済性の面で大きな課題がある。
【0011】
なお、特許文献1~3では、いずれも、複数のプルトニウム富化度またはガドリニア添加率を有するガドリニア添加MOX燃料棒を用いている。しかし、ガドリニア添加MOX燃料棒の種類を増やしてしまうと、製造工程で管理が必要な材料の種類が増加し、材料の貯蔵スペースが逼迫して製造工程に大きな制約が課せられる懸念がある。
【0012】
提案2~提案5に関しては、いずれも、MOXペレットにガドリニアを添加することを回避しつつ、MOX燃料内にガドリニアを配置するための方法である。しかし、提案2および3については、ガドリニア棒およびガドリニアディスクの装填性に課題がある。提案4および5については、燃料被覆管やチャンネルボックスの融点が低下したり、耐食性が低下するといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010-127718号公報
【特許文献2】特表2001-501310号公報
【特許文献3】特表2004-507711号公報
【特許文献4】特開平5-019078号公報
【特許文献5】特開平9-304566号公報
【特許文献6】特開2000-298187号公報
【特許文献7】特開2000-46978号公報
【特許文献8】特許第2015893号
【特許文献9】特許第2021813号
【特許文献10】特許第1731699号
【特許文献11】特許第2603382号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】D. Goto, et al., "HIGH BURN-UP BWR MOX FUEL DESIGN WITH MAXIMIZED PLUTONIUM INVENTORY", PHYSOR 2000, May 7-12, 2000, Pittsburgh, PA, U.S.A.
【非特許文献2】M. Durazzo, et al., “Remarks on the sintering behavior of UO2-Gd2O3 fuel”, J. Nucl. Mater., 405 (2010) 203-205.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製造性および経済性に優れたガドリニア添加MOXペレットを製造するための核燃料ペレットの製造方法、および燃料集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様に係る核燃料ペレットの製造方法は、
ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられる核燃料ペレットの製造方法であって、
焼結助剤成分およびガドリニアを含むガドリニア入り焼結助剤粉末を生成する工程と、
二酸化ウラン粉末と前記ガドリニア入り焼結助剤粉末を混合、成形および焼結して、(U,Gd)O2ペレットを製造する工程と、
を備える。
【0017】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
焼結助剤およびガドリニア粉末を混合、成形および焼結して製造した焼結体を粉砕して前記ガドリニア入り焼結助剤粉末を生成してもよい。
【0018】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末および/または二酸化ケイ素粉末を含んでもよい。
【0019】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記焼結助剤と前記ガドリニア粉末との混合比は、モル比で焼結助剤:ガドリニア粉末=9:1~7:3であるようにしてもよい。
【0020】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記焼結体を製造するための焼結温度は、1700~1800℃であるようにしてもよい。
【0021】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記(U,Gd)O2ペレットに対する前記ガドリニア入り焼結助剤粉末の質量比は、100~2000wtppmであるようにしてもよい。
【0022】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア入り焼結助剤粉末と前記二酸化ウラン粉末を混合する際、これらに加えてガドリニア粉末および/または(U,Gd)O2回収材を混合するようにしてもよい。
【0023】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃であるようにしてもよい。
【0024】
本発明の第2の態様に係る核燃料ペレットの製造方法は、
前記(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を生成する工程と、
MOX粉末と前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する工程と、
を備える。
【0025】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末とMOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合するようにしてもよい。
【0026】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加MOXペレットに対する、前記焼結助剤に含まれるAlおよびSiの質量比は、25~500wtppmであるようにしてもよい。
【0027】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃であるようにしてもよい。
【0028】
本発明の第3の態様に係る核燃料ペレットの製造方法は、
焼結助剤、ガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末を混合、成形および焼結して、(U,Gd)O2ペレットを製造する工程と、
前記(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を生成する工程と、
MOX粉末と前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末を混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する工程と、
を備える。
【0029】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末および/または二酸化ケイ素粉末を含んでもよい。
【0030】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記(U,Gd)O2ペレットに対する前記焼結助剤の質量比は、70~2500wtppmであるようにしてもよい。
【0031】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃であるようにしてもよい。
【0032】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加二酸化ウラン粉末と前記MOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合するようにしてもよい。
【0033】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加MOXペレットに対する、前記焼結助剤に含まれるAlおよびSiの質量比は、25~500wtppmであるようにしてもよい。
【0034】
また、前記核燃料ペレットの製造方法において、
前記ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結温度は、1700~1800℃であるようにしてもよい。
【0035】
本発明の第1の態様に係る燃料集合体は、
沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体であって、
複数の燃料棒を備え、
前記複数の燃料棒のうち少なくとも1本には、前記製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填され、
前記ガドリニア添加MOXペレットのプルトニウム富化度は1種類のみである。
【0036】
本発明の第2の態様に係る燃料集合体は、
沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体であって、
複数の燃料棒を備え、
前記複数の燃料棒のうち、コーナ位置に配置された燃料棒、および/またはコーナ位置から最外周燃料層の1燃料棒ピッチ分だけ離れた位置に配置された燃料棒には、前記製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填されている。
【0037】
また、前記燃料集合体において、
前記複数の燃料棒に装填される核燃料ペレットはすべてプルトニウムを含み、使用済燃料の再処理で得られる回収ウランを除き、濃縮ウランを含む核燃料ペレットを含まないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、製造性および経済性に優れたガドリニア添加MOXペレットを製造するための核燃料ペレットの製造方法、および燃料集合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】第1の実施形態に係るガドリニア添加MOXペレットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】第2の実施形態に係るガドリニア添加MOXペレットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態に係る燃料集合体の全体構造を表す縦断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る燃料集合体における燃料配置を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
まず、第1および第2の実施形態に係るガドリニア添加MOXペレットの製造方法について説明する。その後、製造されたガドリニア添加MOXペレットを使用した燃料集合体に係る2つの実施形態について説明する。
【0042】
<ガドリニア添加MOXペレット(第1の実施形態)>
第1の実施形態に係るガドリニア添加MOXペレットの製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る製造フローは、ステップS11~ステップS15を含む。このうち、ステップS11~S13は、ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられる(U,Gd)O
2ペレットを製造する工程である。(U,Gd)O
2ペレットは、Gd
2O
3添加UO
2ペレットであり、二酸化ウラン(UO
2)にガドリニウム(Gd)を固溶させた核燃料ペレットである。
【0043】
以下、
図1に沿って、第1の実施形態の製造方法について説明する。
【0044】
ステップS11:焼結助剤およびガドリニア粉末を混合、成形および焼結して、焼結体を製造する。焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末(Al2O3)および/または二酸化ケイ素粉末(SiO2)を含む。すなわち、焼結助剤は、酸化アルミニウム粉末のみを含んでよく、二酸化ケイ素粉末のみを含んでよく、あるいは、酸化アルミニウム粉末と二酸化ケイ素粉末の両方を任意の割合で含んでもよい。
【0045】
焼結助剤とガドリニア粉末を混合する際において、焼結助剤とガドリニア粉末との混合比は、所要の焼結性を確保する観点から、モル比で焼結助剤:ガドリニア粉末=9:1~7:3であることが好ましい。
【0046】
上記のように焼結助剤およびガドリニア粉末を混合した後、円柱状等の所定の形状に成形する。その後、成形体を加熱、焼結して焼結体を製造する。焼結温度は、共晶温度以上の温度である。
【0047】
Al2O3-Gd2O3系の結晶では、共晶温度は1720℃と報告されている(水野他、“Al2O3-Eu2O3およびAl2O3-Gd2O3系の高温状態図”,窯業協会誌 85[11] 1977 543-548)。また、Gd2O3-Al2O3-SiO2系では1400℃付近に共晶点があると報告されている(U.Kolitsch, et al., “Phase relationships in the system Gd2O3-Al2O3-SiO2”, J. Alloys Compd. 257 (1997) 104-114)。これらの点を考慮して、ステップS11の焼結温度は、たとえば1700~1800℃とする。
【0048】
ステップS12:ステップS11で得られた焼結体を粉砕して、ガドリニア入り焼結助剤粉末を生成する。このように、ステップS11の焼結体を粉砕することにより、ガドリニアが添加された焼結助剤粉末が得られる。
【0049】
ステップS13:二酸化ウラン粉末(UO2粉末)と、ステップS12で得られたガドリニア入り焼結助剤粉末とを混合、成形、焼結および研削して、(U,Gd)O2ペレットを製造する。
【0050】
二酸化ウラン粉末(UO2粉末)と、ステップS12で得られたガドリニア入り焼結助剤粉末とを混合させる際、(U,Gd)O2ペレットに対するガドリニア入り焼結助剤粉末の質量比は、たとえば、100~2000wtppmである。質量比の下限値(100wtppm)は、直径15μmの真球と仮定した(U,Gd)O2またはMOX結晶の粒を1nm厚さで被覆するために必要なガドリニア入り焼結助剤粉末の量と、実験結果に基づいて決定した値である。質量比の上限値(2000wtppm)は、ガドリニア入り焼結助剤粉末をそれ以上添加しても、ガドリニア添加MOXペレットの結晶粒径および固溶性がさらに改善されることがないことが実験結果から確かめられていることから決定した値である。なお、(U,Gd)O2ペレットの所要のガドリニウム濃度に応じて、上記質量比を2000wtppm以上としてもよい。
【0051】
ステップS13において、(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、たとえば1700~1800℃である。
【0052】
ステップS13では、焼結により得られた焼結体(たとえば鼓状)を所定の形状(たとえば円柱状)に研削する。なお、研削工程は、必須ではなく適宜省略してもよい。
【0053】
なお、ステップS13において、ガドリニア入り焼結助剤粉末と二酸化ウラン粉末を混合する際、これらに加えてガドリニア粉末および/または(U,Gd)O2回収材を混合してもよい。(U,Gd)O2回収材とは、(U,Gd)O2ペレットの製造工程で生じる不良ペレット(スクラップペレット)を粉砕および/または微粉化した粉末のことである。また、「粉砕」は粉砕機等の機械を用いて焼結体を粉砕することを意味し、「微粉化」は焼結体を酸化により粉化することを意味する。粉砕と微粉化の両方を行ってもよい。
【0054】
ステップS14:ステップS13において製造された(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを、ガドリニア濃度調整用の二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末(UO2+(U,Gd)O2粉末)を生成する。
【0055】
以上のステップS11~S14を経て、ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられるガドリニア添加二酸化ウラン粉末が得られる。
【0056】
上記のステップS11~S14ではプルトニウムを扱わないため、ステップS11~S14は、MOX工場を大幅に改造することなく、従来の希釈用UO2粉末製造施設またはウラン燃料成形加工施設で行うことができる。なお、MOX工場内のプルトニウムを扱わないエリアでステップS11~S14を行ってガドリニア添加二酸化ウラン粉末を製造してもよい。
【0057】
なお、ガドリニア入り焼結助剤粉末は、焼結助剤成分(Al2O3および/またはSiO2)とガドリニアを含むものであれば、上記以外の方法で生成されてもよい。たとえば、焼結助剤、ガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末を混合、成形および焼結して製造された焼結体を粉砕および/または微粉化することにより、ガドリニア入り焼結助剤粉末を生成してもよい。
【0058】
次に、上記のようにして製造されたガドリニア添加二酸化ウラン粉末を用いて、ガドリニア添加MOXペレットを製造する工程について説明する。
【0059】
ステップS15:MOX粉末と、ステップS14で得られたガドリニア添加二酸化ウラン粉末とを混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する。ここで、MOX粉末とは、ウラン(U),プルトニウム(Pu),アメリシウム(Am)を含有する二酸化物粉末のことである。ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結温度は、たとえば1700~1800℃である。
【0060】
ステップS15の混合工程においては、従来のMOXペレットの製造と同様に、たとえば、一次混合、および凝集体をメッシュで取り除く篩い分けを行った後、最終的なプルトニウム濃度に調整するための二次混合を行う。研削工程では、焼結工程で得られた焼結体を研削して円柱状のペレットとする。
【0061】
なお、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末とMOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合してもよい。MOX回収材とは、MOXペレットの製造工程で生じる不良ペレット(スクラップペレット)を粉砕および/または微粉化した粉末のことである。
【0062】
以上説明したステップS11~S15を経て、ガドリニア添加MOXペレットが製造される。
【0063】
第1の実施形態に係る核燃料ペレットの製造方法では、MOX粉末と希釈用のUO2粉末とを混合する前に、焼結助剤(Al2O3および/またはSiO2)をガドリニア粉末と共晶温度以上で予め反応させておき(ステップS11)、その後、ステップS11の焼結体に基づいて得られるガドリニア添加二酸化ウラン粉末(UO2+(U,Gd)O2粉末)をMOX粉末に添加する(ステップS15)。このように焼結助剤粉末をガドリニア粉末と予め反応させておくことで、ガドリニア粉末をMOX粉末に直接添加する場合に比べて、ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結の際において、焼結性の低下を緩和することができる。
【0064】
より詳しくは、焼結助剤は単体ではMOX粉末との焼結時に溶融せず液相を生じないが、予めガドリニアと共晶反応することでステップS15の焼結温度で液相が生じやすくなる。このように焼結助剤をガドリニア粉末と予め共晶反応させておくことで、ステップS15の焼結の際に液相焼結を実現することができる。焼結中に液相が生じることで粒成長が促進されるため、焼結性(すなわち、粒径および均一性)を高めることが可能となる。焼結性が改善することによって、ガドリニア添加MOXペレットの歩留まりが向上して製造コストの低減を図ることができたり、プルトニウム装荷量の改善を図ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、MOXペレット製造前において二段階の焼結工程(すなわち、ステップS11とステップS13)を行うことにより、UO2へのGdの固溶反応を予め進めておくことができる。その結果、ステップS15の焼結の際に、焼結性をより高めることができる。
【0066】
また、中間材であるガドリニア添加二酸化ウラン粉末の製造においてはプルトニウムを取り扱わないため、従来の希釈用UO2粉末製造施設またはウラン燃料成形加工施設を用いてガドリニア添加二酸化ウラン粉末を製造することができる。このため、ガドリニア添加MOXペレットを製造するためにMOX工場を大幅に改造する必要がない。すなわち、MOX工場では、従来の希釈用ウラン粉末とMOX粉末を混合する設備を用いて、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末(UO2+(U,Gd)O2粉末)とMOX粉末を混合すればよい。よって、本実施形態によれば、ガドリニア添加MOXペレットの製造性および経済性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態の製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットを用いて燃料集合体を構成することで、燃料集合体あたりのプルトニウムの装荷量を増加させることができる。その結果、プルトニウム消費を加速することができるようになる。
【0068】
<ガドリニア添加MOXペレット(第2の実施形態)>
次に、第2の実施形態に係るガドリニア添加MOXペレットの製造方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る製造フローは、ステップS21~ステップS23を含む。このうち、ステップS21は、ガドリニア添加MOXペレットを製造するために用いられる(U,Gd)O
2ペレットを製造する工程である。第1の実施形態との相違点は、(U,Gd)O
2ペレットの製造方法である。
【0069】
以下、
図2に沿って、第2の実施形態の製造方法について説明する。
【0070】
ステップS21:焼結助剤、ガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末を混合、成形、焼結および研削して、(U,Gd)O2ペレットを製造する。焼結助剤は、第1の実施形態と同様に、酸化アルミニウム粉末および/または二酸化ケイ素粉末を含む。
【0071】
(U,Gd)O2ペレットに対する焼結助剤の質量比は、70~2500wtppmである。質量比の下限値(70wtppm)は、直径15μmの真球と仮定した(U,Gd)O2またはMOX結晶の粒を1nm厚さで被覆するために必要な焼結助剤粉末の量と、実験結果に基づいて決定した値である。質量比の上限値(2500wtppm)は、焼結助剤粉末をそれ以上添加しても、ガドリニア添加MOXペレットの結晶粒径および固溶性がさらに改善されることがないことが実験結果から確かめられていることから決定した値である。
【0072】
(U,Gd)O2ペレットを製造するための焼結温度は、共晶温度以上の温度であり、たとえば1700~1800℃である。
【0073】
ステップS21では、焼結により得られた焼結体(たとえば鼓状)を円柱状に研削する。なお、研削工程は、必須ではなく適宜省略してもよい。
【0074】
ステップS22:ステップS21で製造された(U,Gd)O2ペレットを粉砕および/または微粉化したものを、ガドリニア濃度調整用の二酸化ウラン粉末と混合して、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末(UO2+(U,Gd)O2粉末)を生成する。ステップS22は、第1の実施形態で説明したステップS14と同様である。
【0075】
ステップS23:MOX粉末と、ステップS22で得られたガドリニア添加二酸化ウラン粉末とを混合、成形、焼結および研削して、ガドリニア添加MOXペレットを製造する。ステップS23は、第1の実施形態で説明したステップS15と同様である。
【0076】
なお、ガドリニア添加二酸化ウラン粉末とMOX粉末を混合する際、これらに加えてMOX回収材を混合してもよい。
【0077】
また、ガドリニア添加MOXペレットに対する、焼結助剤に含まれるAlおよびSiの質量比は、25~500wtppmである。
【0078】
以上説明したステップS21~23を経て、ガドリニア添加MOXペレットが製造される。
【0079】
第2の実施形態の製造方法では、MOX粉末と希釈用のUO2粉末とを混合する前に、焼結助剤(Al2O3および/またはSiO2)をガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末と共晶温度以上の温度で予め反応させておき(ステップS21)、その後、ステップS21の焼結体に基づいて得られるガドリニア添加二酸化ウラン粉末(UO2+(U,Gd)O2粉末)をMOX粉末に添加する(ステップS23)。このように焼結助剤粉末をガドリニア粉末およびUO2粉末と予め反応させておくことで、ガドリニア粉末をMOX粉末に直接添加する場合に比べて、ガドリニア添加MOXペレットを製造するための焼結の際において、焼結性の低下を緩和することができる。すなわち、焼結助剤をガドリニア粉末および二酸化ウラン粉末と予め共晶反応させておくことで、ステップS23の焼結の際に液相焼結を実現できる。その結果、第1の実施形態の場合と同様に、ガドリニア添加MOXペレットの焼結性(すなわち、粒径および均一性)を高めることが可能となる。焼結性が改善することによって、製造コストの低減およびプルトニウム装荷量の改善を図ることができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、MOXペレット製造前において焼結工程(すなわち、ステップS21)を行うことにより、UO2へのGdの固溶反応を予め進めておくことができる。その結果、ステップS23の焼結の際に、焼結性をより高めることができる。
【0081】
また、中間材であるガドリニア添加二酸化ウラン粉末の製造においてプルトニウムを取り扱わないため、従来の希釈用UO2粉末製造施設またはウラン燃料成形加工施設を用いてガドリニア添加二酸化ウラン粉末を製造することができる。このため、ガドリニア添加MOXペレットを製造するためにMOX工場を大幅に改造する必要がない。よって、ガドリニア添加MOXペレットの製造性および経済性を向上させることができる。
【0082】
以上説明したように、第1および第2の実施形態によれば、製造性および経済性に優れたガドリニア添加MOXペレットを製造することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態の製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットを用いて燃料集合体を構成することで、燃料集合体あたりのプルトニウムの装荷量を増加させることができる。その結果、プルトニウム消費を加速することができるようになる。
【0084】
次に、第1および第2の実施形態に係る製造方法により製造されるガドリニア添加MOXペレットを用いた燃料集合体に係る2つの実施形態について説明する。
【0085】
<燃料集合体(第1の実施形態)>
図3は、第1の実施形態に係る燃料集合体11の全体構造を表す縦断面図である。
【0086】
燃料集合体11は、沸騰水型原子炉(BWR)または改良型BWR(Advanced-BWR:ABWR)に装荷されるように構成されている。
【0087】
燃料集合体11は、正方格子状に配列された複数の燃料棒12と、複数の燃料棒12の水平面内の中央領域に配置されたウォータロッド13(ここでは2本)と、燃料棒12およびウォータロッド13を束ね、軸方向に隔設された複数のスペーサ14と、燃料棒12およびウォータロッド13の上端を保持する上部タイプレート15と、燃料棒12およびウォータロッド13の下端を保持する下部タイプレート16と、スペーサ14で束ねられた燃料棒12の束を取り囲み、上部タイプレート15に取り付けられたチャンネルボックス17と、を備える。なお、ウォータロッド13は複数の燃料棒12の中央領域に配置される場合に限られず、中央領域以外の領域に配置されてもよい。
【0088】
各燃料棒12は、燃料被覆管を有し、その中に複数の核燃料ペレットが装填されている。燃料被覆管の両端は端栓で気密に塞がれている。
【0089】
燃料集合体11が有する複数の燃料棒12のうち少なくとも1本には、第1または第2の実施形態に係る製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填されている。
【0090】
また、燃料集合体11に使用されるガドリニア添加MOXペレットの種類は1種類のみである。すなわち、燃料集合体11に使用されるガドリニア添加MOXペレットのプルトニウム富化度は1種類のみである。プルトニウム富化度は、たとえば5wt%以上である。
【0091】
上記のように、本実施形態に係る燃料集合体11では、ガドリニア添加MOXペレットのプルトニウム富化度を1種類のみとすることで、ガドリニア添加MOXペレットを製造するMOX工場において取り扱う材料の種類の増加をできる限り抑制することができる。すなわち、ガドリニア添加MOXペレットを採用する場合、製造工程で管理が必要な材料の種類が増加し、製造工程の制約となるおそれがあるところ、本実施形態の燃料集合体によれば、ガドリニア添加MOXペレットのプルトニウム富化度を1種類のみとすることにより、MOX工場において取り扱う材料の種類が増えることをできる限り抑制することができる。
【0092】
<燃料集合体(第2の実施形態)>
次に、第1または第2の実施形態に係る製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットを用いた燃料集合体に係る第2の実施形態について説明する。第1の実施形態の燃料集合体との相違点は、ウラン燃料棒(UO2燃料棒)を排除し、燃料棒をすべてMOX燃料棒とした点である。
【0093】
図4は、第2の実施形態に係る燃料集合体21における燃料配置を模式的に示す横断面図である。
図4において、10行10列の各格子は燃料棒を示している。燃料棒G1はコーナ位置に配置された燃料棒であり、燃料棒G2はコーナ位置から最外周燃料層の1燃料棒ピッチ分だけ離れた位置に配置された燃料棒である。燃料棒Pは、部分長(短尺)の燃料棒である。また、
図4において、符号WRはウォータロッドを示し、符号30は制御棒を示している。
【0094】
燃料集合体21は、BWRまたはABWRに装荷されるように構成されている。燃料集合体21の概略的な構造は、
図3を参照して説明した燃料集合体11と同様である。すなわち、燃料集合体21は、複数の燃料棒12と、ウォータロッド13と、複数のスペーサ14と、上部タイプレート15と、下部タイプレート16と、チャンネルボックス17と、を備える。
【0095】
燃料棒G1および/または燃料棒G2には、第1または第2の実施形態に係る製造方法により製造されたガドリニア添加MOXペレットが装填されている。本実施形態では、燃料棒G1,G2には、プルトニウム富化度が比較的低いガドリニア添加MOXペレットが装填されている。
図4に示すように、ウォータロッドWRに近い中央領域には、プルトニウム富化度が比較的高いMOX燃料棒が配置されている。
【0096】
図4の燃料配置を採った燃料集合体のみを改良型BWRの炉心に装荷した場合における、核分裂性プルトニウムの消費量(Puf消費量)の評価結果(計算結果)を表1に示す。核分裂性プルトニウムの年間消費量は従来のMOX燃料を使用する場合と比較して約20%増加することが分かる。なお、他のBWR炉型や集合体設計であっても、プルトニウム消費量は増加すると考えられる。
【表1】
【0097】
なお、
図4では10行10列の構成例を示したが、これに限られず、8行8列、9行9列、11行11列等の構成であってもよい。また、
図4の燃料棒の配置は一例に過ぎず、ガドリニア添加MOXペレットが装填された燃料棒を反応度制御の必要性が比較的高い位置に配置するものであれば、これに限られない。
【0098】
また、燃料集合体21の複数の燃料棒に装填される核燃料ペレットはすべてプルトニウムを含み、使用済燃料の再処理で得られる回収ウランを除き、濃縮ウランを含む核燃料ペレットを含まないようにしてもよい。これにより、材料の種類を最小限に抑え、燃料集合体の製造コストを低減させることができる。
【0099】
上記のように、第2の実施形態に係る燃料集合体21では、UO2燃料棒を排除し、すべての燃料棒をMOX燃料棒とし、ガドリニア添加MOXペレットを装填した燃料棒G1,G2をコーナ位置等、一部の位置に配置するようにした。これにより、上記評価例から分かるように、プルトニウム消費量を増加させることができる。
【0100】
また、第2の実施形態によれば、UO2燃料棒を用いないため、MOX工場のみで燃料集合体を製造することが可能となる。
【0101】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0102】
11,21 燃料集合体
12 燃料棒
13 ウォータロッド
14 スペーサ
15 上部タイプレート
16 下部タイプレート
17 チャンネルボックス
30 制御棒