(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110663
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ガス化装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/20 20060101AFI20230802BHJP
C10J 3/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C10J3/20
C10J3/02 M
C10J3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012248
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】306039120
【氏名又は名称】DOWAサーモテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和也
(72)【発明者】
【氏名】徐 思豪
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】皆川 豊
(57)【要約】
【課題】木質チップのガス化処理時に熱分解帯、燃焼帯および還元帯が形成されるガス化装置において、燃焼帯に貯留する木質チップの燃焼を促進する。
【解決手段】木質チップSをガス化するガス化装置1において、反応容器2と、原料供給路13と、テーパ容器20と、ガス供給機構30と、を設け、ガス化装置1は、木質チップSのガス化処理の際に、熱分解帯T1と、燃焼帯T2と、還元帯T3が形成されるように構成され、テーパ容器20の下端は、原料供給路13の上端に接続され、テーパ容器20は、燃焼帯T2に対応する領域に設けられた複数のスリットと、テーパ部20aと、を有し、ガス供給機構30は、テーパ容器20の外側から供給される燃焼促進ガスを、スリットを介してテーパ容器20の内側に供給する構成を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質チップをガス化するガス化装置であって、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを供給するガス供給機構と、を備え、
前記ガス化装置は、前記木質チップのガス化処理の際に、熱分解帯と、燃焼帯と、還元帯が形成されるように構成され、
前記テーパ容器の下端は、前記原料供給路の上端に接続され、
前記テーパ容器は、
前記木質チップが貯留する円錐台状または角錐台状のテーパ部と、
前記燃焼帯に対応する領域に設けられた複数の開口部と、を有し、
前記テーパ部は、該テーパ部の下端から上端に向かって横断面積が増加し、
前記ガス供給機構は、前記テーパ容器の外側から供給される前記燃焼促進ガスを、前記開口部を介して前記テーパ容器の内側に供給する構成を有する、ガス化装置。
【請求項2】
木質チップをガス化するガス化装置であって、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを供給するガス供給機構と、を備え、
前記ガス化装置は、前記木質チップのガス化処理の際に、熱分解帯と、燃焼帯と、還元帯が形成されるように構成され、
前記テーパ容器の下端は、前記原料供給路の上端に接続され、
前記テーパ容器は、
前記木質チップが貯留する円錐台状または角錐台状のテーパ部と、
複数の開口部と、を有し、
前記開口部は、前記反応容器内の底面から天井面までの高さをHとしたときに、0.25H~0.60Hの範囲内に形成され、
前記テーパ部は、該テーパ部の下端から上端に向かって横断面積が増加し、
前記ガス供給機構は、前記テーパ容器の外側から供給される前記燃焼促進ガスを、前記開口部を介して前記テーパ容器の内側に供給する構成を有する、ガス化装置。
【請求項3】
前記ガス供給機構は、
前記反応容器に接続されたガス供給管と
前記テーパ容器の外側に設けられたガス流路と、を備え、
前記ガス流路は、前記反応容器と前記ガス供給管との接続位置から、前記開口部の形成位置まで延びている、請求項1または2に記載のガス化装置。
【請求項4】
前記テーパ容器は、環状に形成された中空のガス貯留部を有し、
前記ガス供給機構は、前記ガス貯留部に接続されたガス供給管を有し、
前記開口部は、前記ガス貯留部に形成されている、請求項1または2に記載のガス化装置。
【請求項5】
前記テーパ容器は、前記テーパ部の上端に環状平面部を有し、
前記ガス貯留部は、前記環状平面部の上に配置されている、請求項4に記載のガス化装置。
【請求項6】
前記テーパ部の開き角度は、30~90°である、請求項1~5のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項7】
前記テーパ部は、円錐台状に形成され、
前記開口部は、スリットであり、
前記スリットは、前記テーパ部の上面視において、該テーパ部の半径方向に延伸し、かつ、該テーパ部の周方向に沿って間隔をおいて複数形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項8】
前記テーパ部の周方向において隣り合う2つの前記スリットの中心線同士のなす角は、5~90°である、請求項7に記載のガス化装置。
【請求項9】
前記複数の開口部が直線状に配置されることで形成された開口部群を有し、
前記テーパ部は、円錐台状に形成され、
前記開口部群は、前記テーパ部の上面視において、該テーパ部の半径方向に延伸し、かつ、該テーパ部の周方向に沿って間隔をおいて複数形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項10】
前記テーパ部の周方向において隣り合う2つの前記開口部群の中心線同士のなす角は、5~90°である、請求項9に記載のガス化装置。
【請求項11】
前記ガス供給機構を制御する制御部を備え、
前記燃焼促進ガスは、空気であり、
前記制御部は、前記反応容器内の前記木質チップを酸化させるために供給する空気量A1と、前記反応容器内の前記木質チップを完全に酸化させるために必要な理論空気量A0との空気比(A1/A0)が0.40~0.90となるように、前記燃焼促進ガスを供給する制御を実行するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項12】
木質チップをガス化するガス処理方法であって、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、を備えたガス化装置を用いて、
前記反応容器の下方から前記テーパ容器の下端部に供給された前記木質チップの熱分解反応を生じさせる熱分解帯と、
前記木質チップから生じたガスの酸化反応を生じさせる燃焼帯と、
前記木質チップから生じたガスの還元反応を生じさせる還元帯と、を形成して前記木質チップをガス化する際に、
前記テーパ容器に形成された複数の開口部から前記燃焼帯に燃焼促進ガスを供給しながら、前記木質チップをガス化する、ガス化処理方法。
【請求項13】
前記燃焼促進ガスは、空気であり、
前記反応容器内の前記木質チップを酸化させるために供給する空気量A1と、前記反応容器内の前記木質チップを完全に酸化させるために必要な理論空気量A0との空気比(A1/A0)が0.40~0.90となるように、前記燃焼促進ガスを供給する、請求項12に記載のガス化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップをガス化するガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇や地球温暖化、エネルギー源の外国依存リスクなどの問題に対処するため、自然エネルギーや再生可能エネルギーの利用が世界的に進んでいる。再生可能エネルギーの中には、間伐材などの木材を利用して作られる木質バイオマスエネルギーがあり、日本などの森林地帯が多い地域における新エネルギーとして注目されている。また、木質バイオマスエネルギーは、エネルギー自給の観点や、非常時においても安定供給可能なエネルギーという観点でメリットの多いエネルギーである。
【0003】
そのような木質バイオマスエネルギーを高効率に利用するための方法として、間伐材などの木質チップをバイオマス原料として燃焼させ、それによって生じる可燃性ガスを発電用の燃料として用いる木質バイオマス発電が知られている。バイオマス原料を燃焼させてガス化するバイオマスガス化炉として、特許文献1および特許文献2には、炉の底部から供給される原料を燃焼させ、炉の上部から可燃性ガスを取り出す炉が開示されている。
【0004】
特許文献1には、半炭化処理された木質チップを投入する投入機構と、木質チップをガス化する反応塔とで構成された、木質チップをガス化するガス化装置が開示されている。このガス化装置においては、反応塔の下方から上方に向かって、熱分解帯T1と、燃焼帯T2と、還元帯T3の3つの層が形成される。なお、熱分解帯T1とは、半炭化木質チップを熱分解させる層であり、燃焼帯T2とは、熱分解で生じたガスを酸化反応させる層であり、還元帯T3とは、熱分解で生じたガスを還元反応させて発電などに利用される生成ガス(一酸化炭素や水素)を発生させる層である。半炭化処理された木質チップのガス化処理時においては、燃焼帯T2で発生した燃焼熱が熱分解帯T1と還元帯T3に伝達されることで、反応塔内部における木質チップの熱分解反応、酸化反応、還元反応が進む。
【0005】
特許文献2には、第1ガス化ステージの底部にターンテーブルが設けられ、その直上に、原料を下方より受け入れる容器が設けられた反応炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-109907号公報
【特許文献2】特公平6-031341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のガス化装置においては、反応塔の底部に連結されたガス化剤供給管(第1供給管)から、反応塔の内部に向けてガス化剤(空気および水蒸気)を供給することによって、木質チップの燃焼促進を図っている。
【0008】
しかしながら、本発明者らがガス化剤の流れについて検討したところ、反応塔の底部から供給されたガス化剤の大半が、熱分解帯T1で消費され、燃焼帯T2にはガス化剤が十分に拡散しないという知見が得られた。それによって、燃焼帯T2における酸化反応が促進されず、燃焼帯T2の温度が目標温度に対して低下することが判明した。
【0009】
燃焼帯T2の温度が目標温度よりも低い場合、燃焼帯T2から、熱分解帯T1と還元帯T3に対して伝達する熱量が低下し、熱分解帯T1と還元帯T3の温度も目標温度より低くなる。これにより、反応塔内部における熱分解反応、酸化反応、還元反応が生じ難くなり、単位時間あたりの生成ガスの発生量が低下することになる。この場合、バイオマス発電の発電量も低下する。
【0010】
上記問題の対処法として、燃焼帯T2の補助加熱を行い、燃焼帯T2における木質チップの燃焼を促進することも考えられるが、木質チップのガス化処理中に補助加熱を続けることは、エネルギー効率の低下を招く。したがって、燃焼帯T2における木質チップの燃焼を促進させるための他の手段が必要となるが、従来技術ではそのような手段が存在しなかった。
【0011】
なお、特許文献2に記載の反応炉は、熱分解帯、燃焼帯、還元帯の3層の領域が形成される装置構造ではない。すなわち、特許文献2には、上述した熱分解帯、燃焼帯、還元帯の3層の領域が形成されるガス化装置における燃焼帯の木質チップの燃焼を促進させる手段は開示されていない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、木質チップのガス化処理時に熱分解帯、燃焼帯および還元帯が形成されるガス化装置において、燃焼帯に貯留する木質チップの燃焼を促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、木質チップをガス化するガス化装置であって、前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを供給するガス供給機構と、を備え、前記ガス化装置は、前記木質チップのガス化処理の際に、熱分解帯と、燃焼帯と、還元帯が形成されるように構成され、前記テーパ容器の下端は、前記原料供給路の上端に接続され、前記テーパ容器は、前記木質チップが貯留する円錐台状または角錐台状のテーパ部と、前記燃焼帯に対応する領域に設けられた複数の開口部と、を有し、前記テーパ部は、該テーパ部の下端から上端に向かって横断面積が増加し、前記ガス供給機構は、前記テーパ容器の外側から供給される前記燃焼促進ガスを、前記開口部を介して前記テーパ容器の内側に供給する構成を有することを特徴としている。
【0014】
別の観点による本発明は、木質チップをガス化するガス化装置であって、前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを供給するガス供給機構と、を備え、前記ガス化装置は、前記木質チップのガス化処理の際に、熱分解帯と、燃焼帯と、還元帯が形成されるように構成され、前記テーパ容器の下端は、前記原料供給路の上端に接続され、前記テーパ容器は、前記木質チップが貯留する円錐台状または角錐台状のテーパ部と、複数の開口部と、を有し、前記開口部は、前記反応容器内の底面から天井面までの高さをHとしたときに、0.25H~0.60Hの範囲内に形成され、前記テーパ部は、該テーパ部の下端から上端に向かって横断面積が増加し、前記ガス供給機構は、前記テーパ容器の外側から供給される前記燃焼促進ガスを、前記開口部を介して前記テーパ容器の内側に供給する構成を有することを特徴としている。
【0015】
また、別の観点による本発明は、木質チップをガス化するガス処理方法であって、前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、前記反応容器の内部に設けられたテーパ容器と、を備えたガス化装置を用いて、前記反応容器の下方から前記テーパ容器の下端部に供給された前記木質チップの熱分解反応を生じさせる熱分解帯と、前記木質チップから生じたガスの酸化反応を生じさせる燃焼帯と、前記木質チップから生じたガスの還元反応を生じさせる還元帯と、を形成して前記木質チップをガス化する際に、前記テーパ容器に形成された複数の開口部から前記燃焼帯に燃焼促進ガスを供給しながら、前記木質チップをガス化することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、木質チップのガス化処理時に熱分解帯、燃焼帯および還元帯が形成されるガス化装置において、燃焼帯に貯留する木質チップの燃焼を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るガス化装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】テーパ容器の形状を模式的に示した斜視図である。
【
図5】開口部の配置例を説明するためのテーパ容器の上面図である。
【
図7】開口部群について説明するためのテーパ容器の上面図である。
【
図8】開口部群における開口部の配置例を示す図である。
【
図9】テーパ容器の開き角度を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態に係るガス化装置の概略構成を示す説明図である。
【
図14】燃焼実験におけるガス化装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、図中の白抜き矢印は、後述する燃焼促進ガスの流れを示している。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るガス化装置の概略構成を示す説明図である。本実施形態に係るガス化装置1は、バイオマス原料として木質チップを用い、この木質チップの熱分解反応、酸化反応、還元反応を生じさせてガス化し、発生した生成ガス(例えば一酸化炭素や水素など)を上方から回収するアップドラフト方式の装置である。以下、ガス化装置1の構成の概略について説明するが、公知のアップドラフト方式の装置構成を適用可能である部分については、装置構成の説明を省略することがある。
【0020】
なお、ガス化処理によって得られる生成ガスの生産効率を高める観点では、木質チップは、半炭化処理されていることが好ましい。木質チップの半炭化処理とは、酸素の供給量を制限した状態、または遮断した状態の容器に水蒸気を供給した雰囲気下において所定の温度(200~350℃)で木質チップを加熱し、木質チップの水分含有量を調整する処理である。半炭化処理された木質チップは、木質チップの水分含有量が4~12質量%であって、好ましくは6~10質量%、さらに好ましくは7~9質量%である。
【0021】
ガス化装置1は、木質チップSのガス化処理が行われる反応容器2と、反応容器2の内面に設けられた断熱材3と、断熱材3の内方に設けられたテーパ容器20を備えている。また、ガス化装置1は、反応容器2の内部温度を上昇させるヒータ4と、反応容器2の内部で発生した生成ガスを外部に放出するための放出管5と、反応容器2の底部から木質チップSを供給する原料供給機構10を備えている。
【0022】
反応容器2は、略円筒状の縦型容器である。この反応容器2の内部においては、木質チップSをガス化させる際に、熱分解帯T1と、燃焼帯T2と、還元帯T3の3つの層が下方から上方に向かってこの順で形成される。
【0023】
なお、反応容器2およびテーパ容器20の形状や材質、大きさ等は、後述するガス化処理を実施可能であれば、特に限定されない。反応容器2の形状は、円筒状に限定されず、例えば角筒状であってもよい。また、反応容器2の大きさは、例えば全長(高さ方向の長さ)が1200~1800mm、直径が500~1800mmである。テーパ容器20の材質は、例えばステンレス鋼、炭素鋼、炭化ケイ素(SiC)、レンガ等が採用され得る。形状加工の容易性および耐熱性の観点からは、テーパ容器20の材質としてステンレス鋼を用いることが好ましい。加えて、テーパ容器20は、例えば内側表面にカロライジング処理などのコーティングが施されてもよい。
【0024】
上記の熱分解帯T1は、燃焼帯T2から熱を受け取ることで木質チップSの熱分解反応が生じる層である。燃焼帯T2は、木質チップSを酸化反応させて熱分解帯T1と還元帯T3に熱を与える層である。還元帯T3は、燃焼帯T2から熱を受け取ることで木質チップSから発生したガスの還元反応が生じ、一酸化炭素や水素ガスなどの生成ガスが生じる層である。
【0025】
ガス化処理中の熱分解帯T1の温度は、例えば450℃未満であり、燃焼帯T2の温度は、例えば450~600℃であり、還元帯T3の温度は、例えば650℃以上である。なお、生成ガスの生産効率を高める観点からは、ガス化処理中の還元帯T3の温度は、800℃以下であることが好ましい。
【0026】
断熱材3は、反応容器2やテーパ容器20の形状等によって必要に応じて設けられる。本実施形態では、反応容器2内の天井面2aおよび側面2bの全体と、底面2cの一部領域に配置されている。この断熱材3の下部においては、後述するテーパ容器20のテーパ部20aに対向する部分に傾斜部3aが形成されていて、この断熱材3の傾斜部3aとテーパ容器20のテーパ部20aは略平行な状態にある。これらの傾斜部3aとテーパ部20aは、互いに接触しておらず、間隔が空いている。また、断熱材3の傾斜部3aの上端には、後述するテーパ容器20の環状平面部20bが載る平面部3bが形成されている。
【0027】
ヒータ4は、木質チップSのガス化処理を開始する際に、反応容器2の内部温度を高め、燃焼帯T2の温度を所定の温度(例えば450~600℃)まで昇温させる装置である。ヒータ4は、燃焼帯T2が所定の温度に到達した後に停止する。その後のガス化処理の熱源は、燃焼帯T2の酸化反応で発生する燃焼熱となり、この燃焼熱が熱分解帯T1および還元帯T3に伝達される。これにより、反応容器2に供給される木質チップSの熱分解反応、および木質チップSから生じたガスの酸化反応と還元反応が自動的に進む。
【0028】
本明細書における熱分解反応、酸化反応および還元反応は、以下の反応式で示される反応である。
【0029】
【0030】
なお、ヒータ4は、燃焼帯T2を昇温させるための手段の一例である。このため、公知の昇温手段などの他の手段で燃焼帯T2を昇温させることができれば、ヒータ4を設けなくてもよい。例えばヒータ4に代えて、燃焼帯T2にある木質チップSの点火を行う点火装置(図示せず)を設けてもよい。
【0031】
放出管5は、反応容器2の内部で発生した生成ガス(例えば一酸化炭素や水素など)を外部に放出するための管であり、反応容器2の上部に設けられている。放出管5から放出された生成ガスは、図示しない生成ガス貯留部に送られ、例えばバイオマス発電用の燃料として用いられる。
【0032】
原料供給機構10は、木質チップSが投入される投入部11と、投入部11に投入された木質チップSを搬送する搬送路12と、搬送路12で搬送された木質チップSを反応容器2の底部に供給するための原料供給路13を有する。
【0033】
投入部11は、ホッパー14と、ホッパー14の下端に接続された投入路15を有する。投入路15は、反応容器2の高さ方向に延伸する形状であり、投入路15の内部にはホッパー14に投入された木質チップSが貯留する。搬送路12は、水平方向に延伸する形状であり、投入路15の下端に接続されている。原料供給路13は、反応容器2の高さ方向に延伸する形状であり、原料供給路13の上面には、反応容器2に向けて木質チップSを供給するための供給口(図示せず)が形成されている。搬送路12および原料供給路13の内部には、それぞれスクリュー16、17が設けられ、例えばモータなどの回転駆動源によって回転する。
【0034】
上記構成の原料供給機構10によれば、投入部11に投入された木質チップSが搬送路12を介して原料供給路13に搬送され、原料供給路13の内部のスクリュー17によって木質チップSが上方に押し出される。
【0035】
次に、本実施形態に係るテーパ容器20について説明する。
図2は、テーパ容器の形状を模式的に示した斜視図である。
図3は、テーパ容器の上面図である。
図4は、
図3のA-A断面を示す図である。なお、
図4では断熱材3の図示が省略されている。
【0036】
テーパ容器20は、円錐台状のテーパ部20aを有する容器であって、テーパ容器20の上端と下端は開口している。テーパ部20aは、テーパ部20aの下端から上端に向かって拡径するように形成されている。換言すると、テーパ部20aは、テーパ部20aの下端から上端に向かって横断面積(テーパ容器20の軸心Cに垂直な切断面の面積)が増加するように形成されている。
【0037】
図3および
図4に示すように、テーパ部20aの上端には、環状平面部20bが形成されている。環状平面部20bの周縁には、テーパ容器20の軸心Cに平行であって、上方に延伸する壁面部20cが形成されている。
図1に示すように、テーパ容器20の環状平面部20bは、断熱材3の平面部3bの上に載せられ、テーパ容器20の壁面部20cは、断熱材3の側壁内面に接している。
【0038】
テーパ部20aの下端は、反応容器2の底面2cから下方に突出し、前述の原料供給路13の上端に接続されている。これにより、原料供給路13から供給される木質チップSがテーパ部20aの下端から供給され、テーパ容器20の内側が木質チップSで満たされる。なお、ガス化処理が行われている間は、スクリュー16、17が一定のサイクルで回転動作を行い、単位時間あたり一定量の木質チップSが供給され続ける。
【0039】
なお、テーパ部20aの下端の内径は、原料供給路13の上端の内径と同一であることが好ましい。これにより、原料供給路13からテーパ部20aに供給された木質チップSを、テーパ部20a内で滞留させることなく上方に押し上げることができる。例えばテーパ部20aの下端の内径が原料供給路13の上端の内径よりも大きい場合には、テーパ部20aの下端に底面を設ける必要があり、その底面とテーパ部の下端の間に角部が存在することになる。その場合、テーパ部内に供給された木質チップSが角部に滞留し、滞留した木質チップSの周囲では温度分布に乱れが生じる。したがって、そのような角部が形成されないように、テーパ部20aの下端の内径は、原料供給路13の上端の内径と同一であることが好ましい。
【0040】
図3および
図4に示すように、テーパ容器20には、開口部21が形成されている。この開口部21は、木質チップSのガス化処理時に形成される燃焼帯T2に対応する領域の高さに形成されている。なお、熱分解帯T1、燃焼帯T2および還元帯T3の各層の領域の大きさは、反応容器2の形状やテーパ容器20の形状などの装置構成に応じて異なるが、当業者であれば、ガス化装置の構成から各層の領域の大きさを推定することが可能である。すなわち、当業者であれば、開口部が形成されたテーパ容器を有するガス化装置において、その開口部が燃焼帯T2に対応する領域の高さに形成されているか否かを判別することができる。
【0041】
上述のように、燃焼帯T2の形成領域は、ガス化装置の構成に応じて異なるが、開口部21は、例えば反応容器2内の底面2cから天井面2aまでの高さをHとしたときに、0.25H(0.25×H)~0.60H(0.60×H)の範囲内に形成される。換言すると、開口部21の下端から上端までの領域は、0.25H~0.60Hの範囲内に位置している。また、この数値範囲内に形成された開口部21は、ガス化処理時に形成される燃焼帯T2の高さに位置する。
【0042】
上記数値範囲は、0.55H以下であることが好ましく、より好ましくは0.50H以下である。
【0043】
本実施形態に係る開口部21は、スリット21aである。このスリット21aは、テーパ部20aの上端近傍に形成され、テーパ部20aと環状平面部20bの境界に跨るようにして、
図3に示すテーパ容器20の上面視においてテーパ部20aの半径方向に延伸している。
【0044】
スリット21aは、テーパ容器20の周方向に間隔をおいて複数設けられている。燃焼帯T2における木質チップSをより均一に燃焼させる観点では、隣り合う2つのスリット21aの中心線(長軸方向の中心線)同士のなす角θ1は、5~90°であることが好ましく、より好ましくは5~30°である。燃焼帯T2内にある木質チップSを均一に燃焼させることができれば、反応容器2内における熱分解反応、酸化反応および還元反応を安定させることができ、反応容器2内における原料温度および雰囲気温度を所定温度内に維持しやすくなる。
【0045】
なお、スリット21aの数は、隣り合う2つのスリット21aの中心線同士のなす角θ
1の設定に応じて適宜変更される。また、
図5に示すように、テーパ容器20の周方向において隣り合う各々のスリット21aは、テーパ容器20の半径方向における位置が互いに異なるように千鳥状に配置されてもよい。さらに、スリット21aの形状は、本実施形態で説明された形状に限定されない。例えばスリット21aは、テーパ容器20の周方向に沿って円弧状に形成されてもよい。
【0046】
また、開口部21は、スリット21aに限定されず、テーパ容器20に貯留する木質チップSが開口部21から落下しない形状の穴であればよい。例えば開口部21は、
図6(a)に示すような丸穴や、
図6(b)に示すような角穴、
図6(c)に示すようなジグザグ状の穴であってもよい。あるいは、開口部21は、
図6(d)に示すような開口部21の下端から上端に向かって幅が漸減する形状の穴や、
図6(e)に示すような開口部21の下端から上端に向かって幅が漸増する形状の穴であってもよい。
【0047】
また、
図7に示すように、複数の開口部21を直線状に配置することによって、開口部21が連なる開口部群Gが設けられてもよい。このような開口部群Gは、前述したスリット21aのように機能すると推察される。
【0048】
図7に示す開口部群Gは、テーパ部20aの上面視において、テーパ部20aの半径方向に延伸し、テーパ部20aの周方向に沿って間隔をおいて複数配置されている。この例においては、前述のスリット21aの場合と同様に、木質チップSをより均一に燃焼させる観点では、隣り合う2つのスリット21aの中心線(各開口部21の穴中心を結ぶ直線)同士のなす角θ
1は、5~90°であることが好ましく、より好ましくは5~30°である。
【0049】
なお、
図7に示す開口部群Gは、
図8(a)に示すように開口部21としての丸穴21bが一直線状に配置されているが、例えば
図8(b)に示すように、丸穴21bは、開口部群G内において千鳥配置されてもよい。すなわち、開口部群Gに含まれる各々の開口部21は、厳密に直線状に配置されなくてもよく、「開口部21が直線状に配置されることで形成された開口部群G」には、開口部21が
図8(b)のように配置された形態も含まれる。また、開口部群Gに含まれる開口部21の形状は、丸穴21bに限定されない。さらに、複数の開口部群Gは、
図5のように千鳥配置されてもよい。
【0050】
図9に示すように、テーパ容器20のテーパ部20aの開き角度θ
2は、90°以下であることが好ましい。開き角度θ
2の下限は特に限定されないが、テーパ容器20内の木質チップSの貯留空間を拡大して生産ガスの生成量を増大させる観点からは、開き角度θ
2は、30°以上であることが好ましい。なお、開き角度θ
2とは、テーパ容器20を軸心Cに沿って切断したときの、切断面内における対向するテーパ部20a同士のなす角である。
【0051】
なお、テーパ部20aの形状は、円錐台状に限定されず、四角錐台などの角錐台状であってもよい。また、
図10に示すように、テーパ部20aの形成位置は、テーパ容器20の下端でなくてもよい。
【0052】
次に、燃焼帯T2に貯留する木質チップSに燃焼促進ガスを供給するガス供給機構30について説明する。なお、燃焼促進ガスとは、例えば空気であるが、木質チップSの燃焼を促進させることが可能であれば、ガスの種類は特に限定されない。
【0053】
ガス供給機構30は、燃焼促進ガスの供給源となるガスボンベなどのガス供給源31と、ガス供給源31に接続された配管32と、配管32に接続されたガス供給管33を備えている。
【0054】
ガス供給管33は、反応容器2の底部に接続されていて、反応容器2の周方向に沿って複数設けられている。これらのガス供給管33から供給される燃焼促進ガスは、反応容器2の内側、かつ、テーパ容器20の外側に供給される。本実施形態においては、断熱材3の傾斜部3aとテーパ容器20のテーパ部20aとの間に隙間が形成されていて、この隙間が燃焼促進ガスのガス流路34となる。
【0055】
ガス流路34は、反応容器2とガス供給管33の接続位置から、スリット21aの形成位置まで延びている。このガス流路34は、テーパ部20aの外周面に沿って形成された環状空間であって、ガス供給管33から供給された燃焼促進ガスは、その空間内を流れる。そして、その空間から、スリット21aを介してテーパ容器20の外側から内側に向けて燃焼促進ガスが供給される。前述のようにスリット21aは、テーパ容器20の燃焼帯T2に対応する領域に形成されていることから、スリット21aを通る燃焼促進ガスは、燃焼帯T2に貯留する木質チップSに供給される。
【0056】
ガス供給機構30の説明は以上の通りであるが、ガス供給機構30の構成は本実施形態で説明された構成に限定されない。例えばガス供給管33は、反応容器2の側壁部に接続されてもよい。この場合であっても、ガス供給管33からガス流路34に燃焼促進ガスを供給することができれば、スリット21aを介して燃焼帯T2に燃焼促進ガスを供給することができる。
【0057】
図1に示すように、反応容器2の側壁部には、燃焼帯T2の温度を測定する温度センサ40が設けられている。この温度センサ40によって、ガス化処理中の燃焼帯T2の温度が監視される。なお、図示はしていないが、ガス化装置1は、熱分解帯T1や還元帯T3の温度を測定する温度センサや、テーパ容器20に貯留する木質チップSの貯留量を測定するセンサなどの各種センサが設けられている。
【0058】
ガス化装置1は、原料供給機構10やガス供給機構30などを制御する制御部100を備えている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、各種センサから得られた情報等に基づいてガス化装置1におけるガス化処理を制御する各種のプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0059】
制御部100は、温度センサ40で測定された燃焼帯T2の温度に基づいて燃焼促進ガスの流量を調節する制御を行う。例えば燃焼帯T2の測定温度が目標温度に対して低下した場合には、制御部100が出力される制御信号に基づいてガス供給源31のバルブの開度が調節され、燃焼促進ガスの流量が増加する。
【0060】
また、燃焼促進ガスが空気である場合、制御部100は、反応容器2内の木質チップSを酸化させるために供給する空気量A1と、反応容器2内の木質チップSを完全に酸化させるために必要な理論空気量A0との空気比(A1/A0)が0.40~0.90となるように、空気の供給量を調節する制御を行う。なお、理論空気量A0を算出する際には、使用する木質チップSの炭素含有量および水素含有量を予め測定しておき、それらの測定値を用いて理論空気量A0を算出する。
【0061】
なお、以上の例では、制御部100によって反応容器2内への空気供給量の自動調節が行われているが、この自動調節は実施されなくてもよい。例えば原料投入量の設定値に基づき、空気比(A1/A0)が0.40~0.90となるように空気量を設定し、ここで設定された量の空気をガス化処理の間に供給し続けてもよい。
【0062】
空気比(A1/A0)は、好ましくは0.45以上であり、より好ましくは0.50以上である。
【0063】
以上、本実施形態に係るガス化装置1について説明した。このガス化装置1においては、テーパ容器20の、燃焼帯T2に対応する領域にスリット21aが形成され、そのスリット21aを介して燃焼帯T2に局所的に燃焼促進ガスを供給することができる。このため、燃焼帯T2における木質チップSの燃焼が促進され、燃焼帯T2から、熱分解帯T1と還元帯T3への熱量の供給を安定させることができる。これにより、ガス化処理中の熱分解帯T1、燃焼帯T2および還元帯T3の各層内の温度変動が抑制され、木質チップSの熱分解反応と、木質チップSから生じたガスの酸化反応および還元反応が安定的に起こる。その結果、生成ガスの発生量を増加させることができ、バイオマス発電の発電量も増加させることができる。
【0064】
また、燃焼帯T2への燃焼促進ガスの供給によって燃焼帯T2を昇温させることができるため、従来のガス化装置で必要になる燃焼帯T2の補助加熱用ヒータが不要となる。すなわち、本実施形態に係るガス化装置1によれば、エネルギー効率を改善し、バイオマス発電における発電効率を高めることが可能となる。
【0065】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係るガス化装置1の概略構成を示す説明図である。
図12は、テーパ容器の上面図である。
図13は、
図12のB-B断面を示す図である。なお、本実施形態に係るガス化装置1の構成のうち、第1実施形態で説明したガス化装置と同様の構成である部分については説明を省略する。
【0066】
本実施形態に係るテーパ容器20は、環状に形成された中空のガス貯留部22を有する。ガス貯留部22は、燃焼帯T2に対応する領域に設けられていて、本実施形態においては、テーパ容器20の環状平面部20bの上にガス貯留部22が設けられている。なお、ガス貯留部22の断面形状は、本実施形態のような矩形状に限定されない。
【0067】
ガス貯留部22の内周面には、開口部21として、テーパ容器20の高さ方向に延びるスリット21aが形成され、スリット21aは、テーパ容器20の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられている。これらのスリット21aは、第1実施形態と同様に、燃焼帯T2に対応する領域の高さに位置している。詳述すると、スリット21aは、第1実施形態と同様に、反応容器2内の底面2cから天井面2aまでの高さをHとしたときに、0.25H~0.60Hの範囲内に形成されている。
【0068】
なお、本実施形態のように、燃焼帯T2に対して燃焼促進ガスが水平方向に供給される場合、上記数値範囲は、好ましくは0.27H以上、より好ましくは0.30H以上、さらに好ましくは0.35H以上である。一方、上記数値範囲は、0.55H以下であることが好ましく、より好ましくは0.50H以下である。
【0069】
燃焼促進ガスを供給するガス供給管33は、ガス貯留部22に接続されている。このため、ガス供給管33から燃焼促進ガスが供給される際には、ガス貯留部22に燃焼促進ガスが流入してガス貯留部22の内部空間に拡散する。そして、ガス貯留部22内に燃焼促進ガスが充填されて、ガス貯留部22の内圧が十分に大きくなると、燃焼促進ガスがスリット21aを通り燃焼帯T2に向けて噴出する。
【0070】
本実施形態に係るガス化装置1においては、ガス供給管33から供給される燃焼促進ガスが、ガス貯留部22に充填され、ガス貯留部22の内部圧力と外部圧力との差によってスリット21aから燃焼促進ガスが噴出する。そのため、スリット21aから噴出する燃焼促進ガスの流量がテーパ容器20の周方向において均一になりやすい。すなわち、燃焼帯T2において、木質チップSをより均一に燃焼させることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば燃焼帯T2に局所的に燃焼促進ガスを供給する手段は、第1実施形態で説明した構成と第2実施形態で説明した構成を組み合わせて実現されてもよい。
【実施例0073】
図14に示す実験炉1を用い、木質チップの燃焼実験を実施した。実験炉1は、前述の第1実施形態におけるガス化装置に対応した構成である。
【0074】
具体的には、円筒状の反応容器2の内部に円錐台状のテーパ容器20が設けられ、テーパ容器20の下端は、原料供給路13の上端に接続されている。また、反応容器2の底面から供給された燃焼促進ガスとしての空気を、テーパ容器20の上端部からテーパ容器20の内側に供給するためのスリット21aも形成されている。このスリット21aは、テーパ容器20の、燃焼帯T2に対応する領域に設けられている。詳述すると、反応容器2内の底面から天井面までの高さをHとしたときに、スリット21aの下端は、0.30Hの高さに、スリット21aの上端は、0.39Hの高さに形成されている。
【0075】
また、熱電対式の温度センサTR1~TR4が反応容器2の側壁部に設置されている。温度センサTR1は、燃焼実験中の熱分解帯の温度を測定し、温度センサTR2、TR3は、燃焼実験中の燃焼帯の温度を測定し、温度センサTR4は、燃焼実験中の還元帯の温度を測定する。
【0076】
燃焼実験の実験方法は次の通りである。まず、木質チップを2.6kg/hで供給しながら、温度センサTR4による測定温度が700℃になるまでヒータを作動させる。そして、測定温度が700℃に到達した後にヒータを停止し、その後の90分間の温度変化を監視する。また、燃焼実験中は、反応容器内の木質チップを酸化させるために供給する空気量A1と、木質チップを完全に酸化させるために必要な理論空気量A0との空気比(A1/A0)が0.50となるようにスリット21aに空気を供給する。以上の条件で実施した燃焼実験の結果を以下の表1に示す。
【0077】
【0078】
表1に示すように、温度センサTR1で測定される熱分解帯の平均温度、温度センサTR2、TR3で測定される燃焼帯の平均温度、および温度センサTR4で測定される還元帯の平均温度は、いずれも目標温度との差が±30℃以内である。この結果によれば、燃焼帯への空気供給が促進されることによって、反応容器内における熱分解反応、酸化反応および還元反応が安定的に発生していることがわかる。