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2023-110666化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法
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  • -化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法 図1A
  • -化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法 図1B
  • -化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法 図2A
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  • -化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法 図2E
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  • -化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110666
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/655 20060101AFI20230802BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C07F9/655 CSP
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012252
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真之介
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓也
【テーマコード(参考)】
2G043
4H050
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043DA02
2G043EA01
4H050AA01
4H050AB92
4H050AC10
4H050AD17
4H050BA95
4H050BB12
4H050BB14
4H050BC19
4H050BE30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い発光効率を示す1,2-ジオキセタン誘導体の提供。
【解決手段】例えば、下記構造式[I-P]で表される化合物またはその塩が示される。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]で表される化合物またはその塩。
【化1】
[式中、
は、C1-8アルキル基であり;
およびRは、各々独立して、C3-18アルキル基またはC3-7シクロアルキル基であり;
およびR、RおよびR、または、RおよびRは、これらが結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい環を形成してもよく;
Xは、Hまたはケージング基であり;
Lは、不存在であるか、式L1、L2、L3、またはL4:
【化2】
(各式中、
Mは、不存在であるか、-O-または-NH-であり、
波線は、Xとの結合点を表し、
アスタリスクは、Yとの結合点を表す)
で表されるリンカーであり;
式L1、L2、およびL3中のベンゼン環は、ハロ基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよく;
で表されるリンカーであり;
Yは、不存在であるか、-O-または-NH-であり;
は、Hであるか、または、-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した電子求引基であり;および
Aは、-C≡C-E(式中、Eは、-COOH、-H、-CN、-COO-アルキル、または置換基で置換されていてもよいアリール基、ピリジニル基、ピリジニウム基、3H-インドリル基、もしくは3H-インドール-1-イウム基である)、または、電子求引基で置換されているアリール基である]
【請求項2】
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位またはパラ位に結合している、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、-C≡C-Eである、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
Eが、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-8アルキル、フェニル、-CO-C1-8アルキル、-CCOOH、-CCOO-C1-8アルキル、4-ピリジニル、メチルピリジニウム-4-イル、3,3-ジメチル-3H-インドリル、または1,3,3-トリメチル-3H-インドール-1-イウム-2-イルである、請求項1~3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合したアリール基であり、
当該アリール基は、-COOR、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-CO-R、および-SO-R10からなる群より選ばれる電子求引基で置換されており、
、R、およびR10は、各々独立して、HまたはC1-18アルキル基である、
請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合したフェニル基であり、
当該フェニル基は、-COOR、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-CO-R、および-SO-R10からなる群より選ばれる電子求引基で置換されており、
、R、およびR10は、各々独立して、HまたはC1-8アルキル基である、
請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した、ハロ基もしくは-CNである、請求項1~6のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合したハロ基もしくは-CNである、請求項1~7のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
Xが、H、トリアルキルシリル基、(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基、3,4,6-トリメチル-2,5-ジオキソベンジル基、2-(3-カルボキシ-4-ニトロフェニル)-S-S-エチルオキシカルボニル基、4-アジドベンジルオキシカルボニル基、あるいは、式X1、X2、X3、X4、X5、X6、またはX7:
【化3】
(式中、
は、1つのアミノ酸残基、または、複数のアミノ酸残基が連結した基であり、これらの基のC末端がNHに連結しており、
波線は、Lとの結合点を表す)
で表される基である、請求項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
下記(1)~(4)のいずれかを満たす、請求項1~9のいずれかに記載の化合物またはその塩:
(1)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、XがHである;
(2)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、Xが式X3:
【化4】
で表される基である;
(3)Yが-O-または-NH-であり、Lが式L1、L2、L3もしくはL4で表されるリンカーであり、Mが-O-または-NH-であり、Xがケージング基である;あるいは
(4)Yが不存在であり、Lが不存在であり、Xが式X1またはX2:
【化5】
で表される基である。
【請求項11】
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい縮合環、スピロ環、または架橋環を形成している、請求項1~10のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項12】
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、ハロ基で置換されていてもよいアダマンタン環を形成している、請求項1~11のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩と、水性溶媒とを含む組成物。
【請求項14】
Xがケージング基である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤をさらに含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
Xがケージング基である請求項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩を、前記ケージング基を遊離させる物質と反応させる工程を含む、化学発光方法。
【請求項17】
Xが、式X3:
【化6】
で表されるケージング基であり、前記ケージング基を遊離させる物質がアルカリホスファターゼである、請求項16に記載の化学発光方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の化学発光方法により発生した化学発光シグナルを測定する工程を含む、化学発光シグナルの測定方法。
【請求項19】
Xがケージング基である請求項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩、あるいは、請求項13~15のいずれかに記載の組成物を含む、検体中の被検物質を測定するための試薬。
【請求項20】
Xがケージング基である請求項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩、あるいは、請求項13~15のいずれかに記載の組成物を含む第1試薬と、
前記ケージング基を遊離させる物質を含む第2試薬と、
を含む、検体中の被検物質を測定するための試薬キット。
【請求項21】
検体中の被検物質を測定する方法であって、
固相上に、前記被検物質と、前記被検物質に結合する捕捉体と、前記被検物質に結合してケージング基を遊離させる物質を含む検出体とを含む免疫複合体を形成する工程と、
前記免疫複合体中の前記ケージング基を遊離させる物質を、Xがケージング基である請求項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩と反応させ、化学発光シグナルを発生させる工程と、
前記化学発光シグナルを測定することにより、前記被検物質を測定する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物またはその塩、組成物、化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、試薬、試薬キットおよび被検物質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2-ジオキセタン誘導体は、酵素などの化学物質との反応をトリガーとして化学発光を誘導することができる化合物である。例えば、特許文献1には、式IVb:
【化1】
で表され、当該式中のAが、-CN、-CH=CH-E等のπ*アクセプター基であり、当該π*アクセプター基が、-Y-L-R基に対してオルト位またはパラ位に結合した、化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/290787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い発光効率を示す化合物またはその塩、これを含む組成物、試薬、および試薬キットを提供することを課題とする。また、本発明は、当該化合物またはその塩を用いた化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、および被検物質測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、1,2-ジオキセタンの3位に結合するベンゼン環が、特定の置換基、すなわち、-C≡C-E(式中、Eは、-COOH、-H、-CN、-COO-アルキル、または置換基で置換されていてもよいアリール基、ピリジニル基、ピリジニウム基、3H-インドリル基、もしくは3H-インドール-1-イウム基である)、または、電子求引基で置換されているアリール基を有する化合物が、高い発光効率を示すことを見出した。
【0006】
本開示は、下記の実施態様を包含する:
[項1]
式[I]で表される化合物またはその塩。
【化2】
[式中、
は、C1-8アルキル基であり;
およびRは、各々独立して、C3-18アルキル基またはC3-7シクロアルキル基であり;
およびR、RおよびR、または、RおよびRは、これらが結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい環を形成してもよく;
Xは、Hまたはケージング基であり;
Lは、不存在であるか、式L1、L2、L3、またはL4:
【化3】
(各式中、
Mは、不存在であるか、-O-または-NH-であり、
波線は、Xとの結合点を表し、
アスタリスクは、Yとの結合点を表す)
で表されるリンカーであり;
式L1、L2、およびL3中のベンゼン環は、ハロ基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよく;
で表されるリンカーであり;
Yは、不存在であるか、-O-または-NH-であり;
は、Hであるか、または、-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した電子求引基であり;および
Aは、-C≡C-E(式中、Eは、-COOH、-H、-CN、-COO-アルキル、または置換基で置換されていてもよいアリール基、ピリジニル基、ピリジニウム基、3H-インドリル基、もしくは3H-インドール-1-イウム基である)、または、電子求引基で置換されているアリール基である]
[項2]
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位またはパラ位に結合している、項1に記載の化合物またはその塩。
[項3]
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、-C≡C-Eである、項1または2に記載の化合物またはその塩。
[項4]
Eが、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-8アルキル、フェニル、-CO-C1-8アルキル、-CCOOH、-CCOO-C1-8アルキル、4-ピリジニル、メチルピリジニウム-4-イル、3,3-ジメチル-3H-インドリル、または1,3,3-トリメチル-3H-インドール-1-イウム-2-イルである、項1~3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項5]
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合したアリール基であり、
当該アリール基は、-COOR、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-CO-R、および-SO-R10からなる群より選ばれる電子求引基で置換されており、
、R、およびR10は、各々独立して、HまたはC1-18アルキル基である、
項1または2に記載の化合物またはその塩。
[項6]
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合したフェニル基であり、
当該フェニル基は、-COOR、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-CO-R、および-SO-R10からなる群より選ばれる電子求引基で置換されており、
、R、およびR10は、各々独立して、HまたはC1-8アルキル基である、
項1または2に記載の化合物またはその塩。
[項7]
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した、ハロ基もしくは-CNである、項1~6のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項8]
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合したハロ基もしくは-CNである、項1~7のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項9]
Xが、H、トリアルキルシリル基、(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基、3,4,6-トリメチル-2,5-ジオキソベンジル基、2-(3-カルボキシ-4-ニトロフェニル)-S-S-エチルオキシカルボニル基、4-アジドベンジルオキシカルボニル基、あるいは、式X1、X2、X3、X4、X5、X6、またはX7:
【化4】
(式中、
は、1つのアミノ酸残基、または、複数のアミノ酸残基が連結した基であり、これらの基のC末端がNHに連結しており、
波線は、Lとの結合点を表す)
で表される基である、項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項10]
下記(1)~(4)のいずれかを満たす、項1~9のいずれかに記載の化合物またはその塩:
(1)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、XがHである;
(2)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、Xが式X3:
【化5】
で表される基である;
(3)Yが-O-または-NH-であり、Lが式L1、L2、L3もしくはL4で表されるリンカーであり、Mが-O-または-NH-であり、Xがケージング基である;あるいは
(4)Yが不存在であり、Lが不存在であり、Xが式X1またはX2:
【化6】
で表される基である。
[項11]
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい縮合環、スピロ環、または架橋環を形成している、項1~10のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項12]
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、ハロ基で置換されていてもよいアダマンタン環を形成している、項1~11のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[項13]
項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩と、水性溶媒とを含む組成物。
[項14]
Xがケージング基である、項13に記載の組成物。
[項15]
界面活性剤をさらに含む、項13または14に記載の組成物。
[項16]
Xがケージング基である項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩を、前記ケージング基を遊離させる物質と反応させる工程を含む、化学発光方法。
[項17]
Xが、式X3:
【化7】
で表されるケージング基であり、前記ケージング基を遊離させる物質がアルカリホスファターゼである、項16に記載の化学発光方法。
[項18]
項16または17に記載の化学発光方法により発生した化学発光シグナルを測定する工程を含む、化学発光シグナルの測定方法。
[項19]
Xがケージング基である項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩、あるいは、項13~15のいずれかに記載の組成物を含む、検体中の被検物質を測定するための試薬。
[項20]
Xがケージング基である項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩、あるいは、請求項13~15のいずれかに記載の組成物を含む第1試薬と、
前記ケージング基を遊離させる物質を含む第2試薬と、
を含む、検体中の被検物質を測定するための試薬キット。
[項21]
検体中の被検物質を測定する方法であって、
固相上に、前記被検物質と、前記被検物質に結合する捕捉体と、前記被検物質に結合してケージング基を遊離させる物質を含む検出体とを含む免疫複合体を形成する工程と、
前記免疫複合体中の前記ケージング基を遊離させる物質を、Xがケージング基である項1~12のいずれかに記載の化合物またはその塩と反応させ、化学発光シグナルを発生させる工程と、
前記化学発光シグナルを測定することにより、前記被検物質を測定する工程と、
を含む、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い発光効率を示す化合物またはその塩、これを含む組成物、試薬、および試薬キットが提供される。また、本発明により、当該化合物またはその塩を用いた化学発光方法、化学発光シグナル測定方法、および被検物質測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、実施例1~3の発光効率を、比較例1および2の発光効率と比較したグラフである。
図1B図1Bは、実施例4の発光効率を、比較例1および2の発光効率と比較したグラフである。
図2A図2Aは、アルカリホスファターゼの使用量と、実施例1の発光シグナルとの関係を示すグラフである。
図2B図2Bは、アルカリホスファターゼの使用量と、実施例2の発光シグナルとの関係を示すグラフである。
図2C図2Cは、アルカリホスファターゼの使用量と、実施例3(Sapphire-II(商標)Enhancerを添加したもの)の発光シグナルとの関係を示すグラフである。
図2D図2Dは、アルカリホスファターゼの使用量と、実施例3(Sapphire-II(商標)Enhancerを添加していないもの)の発光シグナルとの関係を示すグラフである。
図2E図2Eは、アルカリホスファターゼの使用量と、実施例4の発光シグナルとの関係を示すグラフである。
図3図3は、実施例3(Sapphire-II(商標)Enhancerを添加していないもの)を用いて、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)の免疫学的測定を行った結果を示すグラフである。
図4図4は、本開示の試薬の提供形態の一例を示す。
図5図5は、本開示の試薬キットの提供形態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.定義
本明細書中、ハロ基とは、ハロゲンで構成される一価の基をいう。ハロ基としては、例えば、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)などが挙げられる。
【0010】
本明細書中、アルキル基とは、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素から1個の水素原子を除いた一価の基をいう。アルキル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~20である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-へプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基(ラウリル基)、イソラウリル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基(ミリスチル基)、イソミリスチル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、n-ヘキサデシル基(パルミチル基)、イソパルミチル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、n-オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基などが挙げられる。
【0011】
本明細書中、C1-8アルキル基とは、炭素数が1~8個の直鎖状または分岐状アルキル基をいう。C1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-へプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0012】
本明細書中、C3-18アルキル基は、炭素数が3~18個の直鎖状または分岐状アルキル基をいう。C3-18アルキル基としては、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-へプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基(ラウリル基)、イソラウリル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基(ミリスチル基)、イソミリスチル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、n-ヘキサデシル基(パルミチル基)、イソパルミチル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、n-オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基などが挙げられる。
【0013】
本明細書中、シクロアルキル基とは、飽和脂肪族炭化水素環に由来する一価の基をいう。シクロアルキル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば3~20である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0014】
本明細書中、C3-7シクロアルキル基とは、炭素数が3~7個のシクロアルキル基をいう。具体的には、C3-7シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0015】
本明細書中、アリール基とは、芳香族炭化水素環に由来する一価の基をいう。アリール基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば6~20である。アリール基としては、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基などが挙げられる。
【0016】
本明細書中、アルコキシ基とは、-O-アルキルで表される基をいう。当該基におけるアルキルは、上記の「アルキル基」と同義である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基などが挙げられる。
【0017】
本明細書中、ケージング基(保護基とも称される)とは、1,2-ジオキセタニルフェノラートのような不安定な化学種の発生を防止するための基をいう。ケージング基は、加水素分解、加水分解、酵素反応などの化学的プロセスにより、または電気分解、光分解などの物理的プロセスによりアンケージング(脱保護とも称される)することができる。アンケージングにより発生する化学種は、例えば励起状態になることができ、励起状態から基底状態に戻る際に発光し得る。
【0018】
ケージング基の一例としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基などが挙げられる。トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などのトリC1-4アルキルシリル基などが挙げられる。ジアルキルモノアリールシリル基としては、例えば、ジメチルフェニルシリル基などのジC1-4アルキルモノC6-10アリールシリル基などが挙げられる。モノアルキルジアリールシリル基としては、例えば、tert-ブチルジフェニルシリル基などのモノC1-4アルキルジC6-10アリールシリル基などが挙げられる。トリアリールシリル基としては、例えば、トリフェニルシリル基などのトリC6-10アリールシリル基などが挙げられる。
【0019】
ケージング基の別の例としては、(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基、3,4,6-トリメチル-2,5-ジオキソベンジル基、2-(3-カルボキシ-4-ニトロフェニル)-S-S-エチルオキシカルボニル基、4-アジドベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0020】
ケージング基のさらに別の例としては、式X1、X2、X3、X4、X5、X6、またはX7:
【化8】
(式中、
は、1つのアミノ酸残基、または、複数のアミノ酸残基が連結した基であり、これらの基のC末端がNHに連結しており、
波線は、Lとの結合点を表す)
で表される基などが挙げられる。
【0021】
本明細書中、ケージング基を遊離(または脱離)させる物質は、アンケージング物質と表記する場合がある。アンケージング物質としては、例えば、Xが(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基である場合、グルタチオンであり、Xが式X2で表される基である場合、過酸化水素であり、Xが式X3で表される基である場合、アルカリホスファターゼであり、Xが式X4で表される基であり、Rが、酵素により切断可能なアミノ酸配列(例:Phe-Lys、シトルリン-Val、またはGly-Phe-Leu-Glyを含むアミノ酸配列のような、カテプシンBにより切断可能なアミノ酸配列;N-カルボベンゾイル-Ala-Ala-Asn-エチレンジアミンを含むアミノ酸配列のような、レグマインにより切断可能なアミノ酸配列;γ―Glu-を含むアミノ酸配列のような、γ-グルタミルトランスペプチダーゼにより切断可能なアミノ酸配列)を有する場合、当該酵素であり、Xが式X5で表される基(β-ガラクトシル基)である場合、β-ガラクトシダーゼである。
【0022】
本明細書中、アミノ酸残基とは、代表的には、下記式:
【化9】
(式中、R71およびR72は、各々独立して、アミノ酸の側鎖である)
で表される基をいう。アミノ酸残基としては、例えば、グリシン残基、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、セリン残基、トレオニン残基、システイン残基、メチオニン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リシン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基、フェニルアラニン残基、チロシン残基、ヒスチジン残基、トリプトファン残基、プロリン残基などが挙げられる。
【0023】
本明細書中、電子求引基とは、ハメットの置換基定数σp値が正である官能基をいう。σp値の定義、および、各官能基のσp値は、例えば、Hansch, C et al., Chem. Rev., 91, pp. 165-195 (1991) 等を参照することができる。「電子求引基」としては、例えば、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-COOH、-COO-C1-18アルキル、-COH、-CO-C1-18アルキル、-SOH、-SO-C1-18アルキルなどが挙げられる。
【0024】
本明細書中、検体とは、生体から採取された試料であり、被検物質を含有する可能性のある試料をいう。検体は、液状試料および固体試料のいずれであってもよい。液状試料としては、血液試料、脳脊髄液、喀痰、気管支肺胞洗浄液、鼻咽頭拭い液、リンパ液、尿、大便、唾液などが例示される。血液試料は、血漿、血清または全血である。液状試料は、固体試料を可溶化したものであってもよい。固体試料としては、切除組織などが例示される。被検物質の検出は、インビトロでの検体中の被検物質の検出およびインビボでの検体中の被検物質の検出を含む。
【0025】
本明細書中、被検物質とは、後述の化学発光プローブ、組成物、試薬、試薬キット、または被検物質測定方法によって検出される、検体中の物質をいう。被検物質としてはタンパク質、ペプチド、核酸などが挙げられる。これらの被検物質は、検体中に遊離状態で存在していてもよいし、細胞、リポタンパク質、ベシクル、ウイルスなどの表面や内部に存在していてもよい。
【0026】
2.式[I]で表される化合物またはその塩
式[I]において、Aが、-C≡C-E(式中、Eは、-COOH、-H、-CN、-COO-アルキル、または置換基で置換されていてもよいアリール基、ピリジニル基、ピリジニウム基、3H-インドリル基、もしくは3H-インドール-1-イウム基である)、または、電子求引基で置換されているアリール基である化合物が、高い発光効率を示すことを見出した。
【0027】
Aは、-Y-L-X基に対してオルト位またはパラ位に結合していることが好ましく、-Y-L-X基に対してオルト位に結合していることがより好ましい。
【0028】
一実施形態において、Aは、-Y-L-X基に対してオルト位またはパラ位に結合した、-C≡C-Eであることが好ましく、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、-C≡C-Eであることがより好ましい。
【0029】
Eが、置換基で置換されているアリール基、ピリジニル基、ピリジニウム基、3H-インドリル基、または3H-インドール-1-イウム基である場合、当該置換基の数は、1つであっても複数(例えば、2つ、3つ、または4つ)であってもよい。
【0030】
Eは、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-8アルキル、フェニル、-CO-C1-8アルキル、-CCOOH、-CCOO-C1-8アルキル、4-ピリジニル、メチルピリジニウム-4-イル、3,3-ジメチル-3H-インドリル、または1,3,3-トリメチル-3H-インドール-1-イウム-2-イルであることが好ましく、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-4アルキル、-CCOOH、または-CCOO-C1-4アルキルであることがより好ましく、-COOH、-H、-COO-C1-4アルキル、-CCOOH、または-CCOO-C1-4アルキルであることがさらに好ましく、-COOH、-H、-COOCH、-CCOOH、または-CCOOCHであることがさらにより好ましい。
【0031】
一実施形態において、Aは、-Y-L-X基に対してオルト位またはパラ位に結合した、電子求引基で置換されているアリール基であることが好ましく、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、電子求引基で置換されているアリール基であることがより好ましい。前記アリール基は、フェニル基などのC6-10アリール基であることが好ましい。前記電子求引基は、-COOR、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-CO-R、および-SO-R10からなる群より選ばれることが好ましく、-COORであることがより好ましく、-COOHであることがさらに好ましい。前記電子求引基の数は、1つであっても複数(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つ)であってもよい。
【0032】
、R、およびR10は、各々独立して、HまたはC1-18アルキル基であることが好ましく、HまたはC1-8アルキル基であることがより好ましい。
【0033】
は、好ましくはC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基などのC1-4アルキル基である。
【0034】
およびRは、各々独立して、分岐状C3-18アルキル基またはC3-7シクロアルキル基であることが好ましい。分岐状C3-18アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソラウリル基、イソトリデシル基、イソミリスチル基、イソペンタデシル基、イソパルミチル基、イソヘプタデシル基、イソステアリル基などが挙げられる。
【0035】
およびRは、例えば、これらが結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい環、好ましくは置換基で置換されていてもよい縮合環、スピロ環、または架橋環、より好ましくは置換基で置換されていてもよい架橋環を形成している。前記架橋環は、炭素数5~10個の架橋環であることが好ましく、当該架橋環としては、例えば、ノルボルナン環、キュバン環、アダマンタン環などが挙げられる。これらのうち、アダマンタン環が特に好ましい。前記置換基は、好ましくはハロ基、より好ましくはクロロ基である。前記環が前記置換基で置換されている場合、前記置換基の数は、1つであっても複数(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つ)であってもよい。
【0036】
は、好ましくはHであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した、ハロ基、-OH、-NO、-CN、-COOH、-COO-C1-18アルキル、-COH、-CO-C1-18アルキル、-SOH、もしくは-SO-C1-18アルキルであり、より好ましくはHであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した、ハロ基もしくは-CNであり、さらに好ましくはHであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、ハロ基もしくは-CNである。
【0037】
Xは、H、トリアルキルシリル基、(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基、3,4,6-トリメチル-2,5-ジオキソベンジル基、2-(3-カルボキシ-4-ニトロフェニル)-S-S-エチルオキシカルボニル基、4-アジドベンジルオキシカルボニル基、あるいは、式X1、X2、X3、X4、X5、X6、またはX7:
【化10】
(式中、
は、1つのアミノ酸残基、または、複数のアミノ酸残基が連結した基であり、これらの基のC末端がNHに連結しており、
波線は、Lとの結合点を表す)
で表される基であることが好ましい。
【0038】
Y、L、およびXは、下記(1)~(4)のいずれかの組合せが好ましい。
(1)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、XがHである;
(2)Yが-O-または-NH-であり、Lが不存在であり、Xがケージング基、好ましくは式X3で表される基である;
(3)Yが-O-または-NH-であり、Lが式L1、L2、L3もしくはL4で表されるリンカーであり、Mが-O-または-NH-であり、Xがケージング基である;あるいは
(4)Yが不存在であり、Lが不存在であり、Xがケージング基、好ましくは式X1またはX2で表される基である。
【0039】
式[I]で表される化合物またはその塩は、溶液中においてイオンの状態であり得る。例えば、当該化合物またはその塩が、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有する場合は、溶液中において-COOまたは-Oとなり得る。
【0040】
一実施形態において、
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した-C≡C-Eであり、
Eが、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-8アルキル、フェニル、-CO-C1-8アルキル、-CCOOH、-CCOO-C1-8アルキル、4-ピリジニル、メチルピリジニウム-4-イル、3,3-ジメチル-3H-インドリル、または1,3,3-トリメチル-3H-インドール-1-イウム-2-イルであり、
およびRが、各々独立して、分枝状C318アルキル基またはC37シクロアルキル基であるか、これらと結合する炭素原子と一緒になって、置換基で置換されていてもよい縮合環、スピロ環、または架橋環を形成しており;
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位もしくはパラ位に結合した、ハロ基もしくは-CNであることが好ましい。
【0041】
一実施形態において、
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した-C≡C-Eであり、
Eが、-COOH、-H、-CN、-COO-C1-4アルキル、-CCOOH、または-CCOO-C1-4アルキルであり、
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、ハロ基で置換されていてもよいアダマンタン環を形成しており;
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、ハロ基もしくは-CNであることが好ましい。
【0042】
一実施形態において、
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した-C≡C-Eであり、
(i)Eが-Hであり、Yが-O-であり、Lが不存在であり、XがH、トリアルキルシリル基、もしくは式X3で表される基である;または
(ii)Eが-COOHであり、Yが-O-であり、Lが不存在であり、XがH、トリアルキルシリル基、もしくは式X3で表される基である;または
(iii)Eが-CCOOHであり、Yが-O-であり、Lが不存在であり、XがH、トリアルキルシリル基、もしくは式X3で表される基であり、
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、ハロ基で置換されていてもよいアダマンタン環を形成しており、
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、ハロ基もしくは-CNであることが好ましい。
【0043】
一実施形態において、
Aが、-Y-L-X基に対してオルト位に結合した-COOHで置換されているアリール基であり、
およびRが、これらと結合する炭素原子と一緒になって、ハロ基で置換されていてもよいアダマンタン環を形成しており、
が、Hであるか、または-Y-L-X基に対してオルト位に結合した、ハロ基もしくは-CNであることが好ましい。
【0044】
式[I]で表される化合物は、好ましくは下記式[I-A]、[I-B]、[I-C]、[I-D]、[I-E]、[I-F]、[I-G]、[I-H]、[I-I]、[I-J]、[I-K]、[I-L]、[I-M]、[I-N]、または[I-O]で表される化合物である:
【0045】
【化11】
(式中、
Arは、電子求引基で置換されているアリール基であり、
は、式X1またはX2で表される基であり、
は、H、トリアルキルシリル基、または式X3で表される基であり、
は、H、トリアルキルシリル基、または、式X3、X5、X6、もしくはX7で表される基であり、
は、(2,4-ジニトロフェニル)スルホニル基、または、式X4で表され且つRが複数のアミノ酸残基が連結し、酵素により切断可能なアミノ酸配列を有する基であり、
A、E、R、R、R、R、X、L、およびYは、前記と同じである)。
【0046】
式[I]で表される化合物は、さらに好ましくは下記式[I-P]、[I-Q]、[I-R]または[I-S]で表される化合物である:
【化12】
【0047】
式[I]で表される化合物は、例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはラセミ混合物の形態で存在し得る。
【0048】
式[I]で表される化合物の塩は、無機塩であってもよく、有機塩であってもよい。前記塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例:ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム塩、マグネシウム塩)、他の金属塩(例:アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩)、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、アミン塩(例:t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩)、無機酸塩(例:フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩)、有機酸塩(例:メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩)、アミノ酸塩(例:グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩)などが挙げられる。
【0049】
式[I]で表される化合物またはその塩は、フルオロフォアと結合してコンジュゲートを形成していてもよい。フルオロフォアとしては、例えば、フルオレセイン色素(例:FAM)、ローダミン色素(例:TAMRA)、クマリン色素、シアニン色素、ピレン色素、ボロンジピロメテン色素などが挙げられる。
【0050】
式[I]で表される化合物またはその塩は、特に限定されるものではないが、例えば、下記の反応式に従って製造することができる。
【化13】
(式中、
Haloは、ハロ基であり、
は、H、あるいは式X1またはX2で表される基(但し、破線はAとの結合点を表す)であり、
およびQは、各々独立して、1つ以上のハロ基で置換されていてもよいアルキル基であり、
A、R、R、R、R、X、L、およびYは、前記と同じである)。
【0051】
工程(i)は、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応である。典型的には、式[VII]で表される化合物をアルコール、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解し、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸カリウム、n-ブチルリチウムなどの塩基を添加してアニオンを発生させた後、式[VI]で表される化合物を添加することにより反応を行う。当該反応は、例えば-78℃~還流温度で実施することができる。
【0052】
工程(ii)は、ハロゲン化反応である。典型的には、式[V]で表される化合物をトルエンなどの溶媒に溶解し、N-ヨードスクシンイミドなどのハロゲン化剤を添加することにより反応を行う。当該反応は、例えば0~30℃で実施することができる。
【0053】
工程(iii)は、カップリング反応[例えば薗頭カップリング反応、鈴木カップリング反応]である。薗頭カップリングの場合、典型的には、式[IV]で表される化合物と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)などのパラジウム触媒と、ヨウ化銅(I)などの銅塩と、イソプロピルアミン、トリエチルアミンなどの塩基(溶媒にもなり得る)との混合物に、式[III]で表され且つRがHである化合物を添加することにより反応を行う。前記混合物には、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィンなどの配位子を添加してもよい。前記反応は、例えば5~30℃で実施することができる。鈴木カップリングの場合、典型的には、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))などのパラジウム触媒、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(Sphos)などの配位子、およびリン酸カリウムなどの塩基の存在下、式[IV]で表される化合物を、式[III]で表され且つRが式X1またはX2で表される基である化合物と反応させる。前記反応は、例えば、水と、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサンなどの有機溶媒との混合溶媒中で実施することができる。また、前記反応は、例えば5~100℃で実施することができる。
【0054】
工程(iv)は、式[II]で表される化合物を一重項酸素と反応させる工程である。当該反応は、例えば、溶媒(例:ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素および/またはメタノール、エタノールなどのアルコール)および光増感剤(例:メチレンブルー、ローズベンガル、テトラフェニルポルフィン)の存在下、式[II]で表される化合物を、酸素雰囲気中で光照射する方法により実施することができる。当該反応は、例えば5~30℃で実施することができる。
【0055】
各工程の反応に供する化合物が、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基などを有する場合、これらの基を、必要に応じて汎用の保護基で保護し、反応後に保護基を脱保護してもよい。各工程の反応生成物は、必要に応じて、洗浄、蒸留、ろ過、クロマトグラフィー、再結晶などにより精製してもよい。
【0056】
3.化学発光プローブ
式[I]で表される化合物またはその塩は、インビトロ又はインビボでの被検物質の検出のためのプローブ(以下、「化学発光プローブ」ともいう)として用いられ得る。インビトロでの検体中の被検物質の検出は、例えば酵素免疫アッセイ(EIA)により行うことができる。インビボでの被検物質の検出は、インビボイメージングと呼ばれ、例えば米国特許出願公開第2019/290787号に記載の方法によることができる。
【0057】
4.組成物
一実施形態において、組成物は、式[I]で表される化合物またはその塩と、溶媒とを含む。溶媒は、有機溶媒であってもよいが、水性溶媒であってもよい。水性溶媒としては、例えば、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。緩衝液としては、例えば、HEPES、TAPS、MOPS、BES、TESなどのグッド緩衝液、トリス塩酸緩衝液、オーレンベロナール緩衝液、イミダゾール塩酸緩衝液などが挙げられる。緩衝液に含まれる緩衝剤は1種であっても2種以上であってもよい。必要に応じて、緩衝液にグリシンを添加してもよい。
【0058】
前記組成物において、水性溶媒の量は、式[I]で表される化合物またはその塩100質量部に対して、例えば10~1010質量部、好ましくは10~10質量部、さらに好ましくは10~10質量部である。
【0059】
前記組成物は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、塩などが挙げられる。添加剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
前記組成物は、界面活性剤を含まなくても高い発光効率を示すが、界面活性剤を含むことにより、さらに高い発光効率を示し得る。界面活性剤としては、界面活性を有する限り、特に限定されない。界面活性剤は、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、または両性イオン界面活性剤であることができる。これらのうち、非イオン界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤としては、例えばソルビタンモノラウレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;Tween(商標)-20、Tween(商標)-40、Tween(商標)-60、Tween(商標)-80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポロキサマー188などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;Triton(商標) X-100などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
界面活性剤の量は、式[I]で表される化合物またはその塩100質量部に対して、例えば10~10質量部、好ましくは100~10質量部である。
【0062】
塩としては、例えば、塩化マグネシウムなどの塩化物、酢酸ナトリウムなどの酢酸塩などが挙げられる。塩の量は、式[I]で表される化合物またはその塩100質量部に対して、例えば1~10質量部、好ましくは10~1000質量部である。
【0063】
当該組成物は、インビトロ又はインビボでの被検物質の検出に用いられ得る。インビトロでの検体中の被検物質の検出は、例えばEIAにより行うことができる。インビボでの被検物質の検出は、インビボイメージングと呼ばれ、例えば米国特許出願公開第2019/290787号に記載の方法によることができる。
【0064】
5.化学発光方法
一実施形態において、化学発光方法は、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩を、アンケージング物質と反応させる工程を含む。当該アンケージング物質としては、上記「1.定義」で記載したものと同じものを使用することができる。当該アンケージング物質は、好ましくは酵素である。例えば、式[I]のXが式X3で表されるケージング基である場合、当該アンケージング物質は、アルカリホスファターゼであり得る。
【0065】
前記反応では、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩100質量部に対して、アンケージング物質は、例えば10―10~1010質量部、好ましくは10―7~10質量部使用することができる。
【0066】
前記反応の反応温度および反応時間は、反応が進行する限り特に制限されない。反応温度としては、酵素の至適温度であることができ、例えば25~45℃である。反応時間としては、例えば30秒~3時間であり、好ましくは50秒~2時間、さらに好ましくは160秒~2時間である。
【0067】
6.化学発光シグナルの測定方法
一実施形態において、化学発光シグナルの測定方法は、上記「5.化学発光方法」に記載の化学発光方法により発生した化学発光シグナルを測定する工程を含む。当該工程において、化学発光シグナルの測定には、シグナルの有無を検出すること、およびシグナルの強度を定量することを含む。化学発光シグナルの測定は公知の方法により行うことができる。具体的には、市販のルミノメーター、化学発光免疫測定(CLIA)用の装置などを用いることができる。
【0068】
7.試薬
式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩、当該化合物またはその塩からなる化学発光プローブ、あるいは、当該化合物またはその塩を含有する組成物は、試薬として提供され得る。当該試薬は、インビトロでの被検物質の検出に好適に用いられる。インビトロでの検体中の被検物質の検出は、例えばEIAにより行うことができる。前記化学発光プローブおよび組成物は、それぞれ、上記「3.化学発光プローブ」および「4.組成物」で記載したものを使用することができる。
【0069】
前記試薬において、式[I]のXがケージング基である化合物またはその塩の濃度は、被検物質の種類および測定条件などに応じて適宜設定することができ、例えば0.01μM~10mM、好ましくは0.1μM~1mMである。
【0070】
前記試薬は、通常、溶媒を含んでいる。溶媒としては、例えば、上記「4.組成物」で記載した溶媒と同じものが挙げられる。また、前記試薬は、他の任意成分、例えば、防腐剤、抗酸化剤、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
8.試薬キット
上記の試薬は、通常容器に収容されてユーザに提供される。当該容器は、箱に梱包され、試薬キットとしてユーザに提供されてもよい。当該箱には、試薬キットの使用方法などを記載した添付文書を同梱してもよい。図4に前記試薬キットの提供形態の一例を示す。当該試薬キット11において、12は梱包箱を示し、13は前記試薬を収容した容器を示し、14は添付文書を示す。
【0072】
試薬キットの別の実施形態は、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩、当該化合物またはその塩からなる化学発光プローブ、あるいは、当該化合物またはその塩を含有する組成物を含む第1試薬と、前記アンケージング物質を含む第2試薬とを含む。第1試薬は、上記「7.試薬」で記載したものを使用することができる。
【0073】
第2試薬において、アンケージング物質としては、上記「1.定義」で記載したものと同じものが挙げられる。アンケージング物質の濃度は、当該アンケージング物質の種類および測定条件などに応じて適宜設定することができ、例えば10―18M~1M、好ましくは10―15M~1Mである。
【0074】
第2試薬は、通常、溶媒を含んでいる。溶媒としては、例えば、上記「4.組成物」で記載した溶媒と同じものが挙げられる。また、前記試薬は、他の任意成分、例えば、防腐剤、抗酸化剤、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
第1試薬および第2試薬は、別々の容器に収容し、当該容器を箱に梱包してユーザに提供してもよい。当該箱には、試薬キットの使用方法などを記載した添付文書を同梱してもよい。図5に、前記試薬キットの提供形態の一例を示す。当該試薬キット21において、22は箱梱包を示し、23aは第1試薬を収容した容器、23bは第2試薬を収容した容器、24は添付文書を示す。
【0076】
9.被検物質測定方法
一実施形態において、検体中の被検物質を測定する方法は、
固相上に、前記被検物質と、前記被検物質に結合する捕捉体と、前記被検物質に結合してアンケージング物質を含む検出体とを含む免疫複合体を形成する工程と、
前記免疫複合体中の前記アンケージング物質を、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩と反応させ、化学発光シグナルを発生させる工程と、
前記化学発光シグナルを測定することにより、前記被検物質を測定する工程と、
を含む。
【0077】
検体中の被検物質を測定する方法は、公知の免疫学的測定方法に基づく方法であればよく、好ましくは酵素結合免疫吸着法(ELISA法)、さらに好ましくはサンドイッチELISA法に基づく方法である。また、米国特許第5236849号公報に記載の免疫複合体転移法を用いることもできる。
【0078】
免疫複合体を形成する工程において、固相としては、特に限定されるものではないが、例えば、ラテックス、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、スチレン-メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン-エチレングリコールジメタクリレート共重合体、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコーン、アガロース、ゼラチン、赤血球、シリカゲル、ガラス、不活性アルミナ、磁性体などが挙げられる。これらは1種単独であっても2種以上を組み合わせてもよい。固相の形状としては、例えば、粒子、マイクロプレート、マイクロチューブ、膜、試験管などが挙げられ、それらの中でも粒子が特に好ましい。一実施形態において、固相は磁性粒子であることが好ましい。当該磁性粒子は、基材としてFeおよび/またはFe、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを含む粒子が挙げられる。
【0079】
被検物質に結合する捕捉体は、固相上に結合して被検物質を捕捉し得る限り、特に制限されないが、例えば、抗原、抗体などであり得る。検出体は、被検物質に結合してアンケージング物質を含み得る。当該アンケージング物質としては、上記「1.定義」で記載したものと同じものが挙げられ、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩と反応して化学発光シグナルを発生させる。検出体としては、例えば、アンケージング物質で標識された抗体などが挙げられる。
【0080】
被検物質が抗体Aである場合、抗原が抗体Aを捕捉するための捕捉体として機能する。検体が抗体Aを含む場合、当該検体と抗原と検出用抗体Bとを含む免疫複合体が形成され得る。当該免疫複合体を含む溶液と、抗原を固定できる固相とを接触させることにより、当該免疫複合体を固相上に形成できる。あるいは、抗原があらかじめ固定された固相と、検体と、検出用抗体とを接触させることにより、上記免疫複合体を固相上に形成できる。
【0081】
捕捉体の固相への固定の態様は、特に限定されない。例えば、捕捉体と固相とを直接的に結合させてもよいし、捕捉体と固相とを別の物質を介して間接的に結合させてもよい。直接的な結合としては、例えば、物理的吸着、架橋剤による共有結合などが挙げられる。間接的な結合としては、例えば、ビオチン類(ビオチン、および、デスチオビオチン、オキシビオチンなどのビオチン類縁体を含む)とアビジン類(アビジン、および、ストレプトアビジン、タマビジン(登録商標)などのアビジン類縁体を含む)の組合せ、ハプテンと抗ハプテン抗体(例:2,4-ジニトロフェニル基(DNP基)を有する化合物と抗DNP抗体)の組合せなどが利用できる。一実施形態において、あらかじめビオチン類で修飾した捕捉体と、あらかじめアビジン類を結合した固相とを用いることにより、ビオチン類とアビジン類との結合を介して、捕捉体を固相上に固定できる。
【0082】
免疫複合体の形成工程と化学発光シグナルを発生させる工程との間に、複合体を形成していない未反応の遊離成分を除去するB/F(Bound/Free)分離を行ってもよい。未反応の遊離成分とは、免疫複合体を構成しない成分をいう。例えば、被検物質と結合しなかった捕捉体および検出体などが挙げられる。B/F分離の手段は特に限定されないが、固相が粒子であれば、遠心分離によりB/F分離ができる。固相がマイクロプレートやマイクロチューブなどの容器であれば、未反応の遊離成分を含む液を除去することによりB/F分離ができる。また、固相が磁性粒子の場合は、磁石で磁性粒子を磁気的に拘束した状態でノズルによって未反応の遊離成分を含む液を吸引除去することによりB/F分離ができ、自動化の観点で好ましい。未反応の遊離成分を除去した後、免疫複合体を捕捉した固相をPBSなどの適切な水性媒体で洗浄してもよい。
【0083】
化学発光シグナルを発生させる工程において、式[I]においてXがケージング基である化合物またはその塩100質量部に対して、アンケージング物質の量が、例えば、10―10~1010質量部、好ましくは10―7~10質量部となるようにして、両者を反応させることが好ましい。
【0084】
化学発光シグナルを測定する工程は、例えば、上記「6.化学発光シグナルの測定方法」に記載の方法により実施することができる。
【実施例0085】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
<合成例>
(参考例1)
【0087】
【化14】
【0088】
3-ヒドロキシベンズアルデヒド(50.0g、0.41mol)のメタノール(MeOH)溶液(500mL)にオルトぎ酸トリメチル(130g、1.22mol)とテトラブチルアンモニウムトリブロミド(BuNBr)(15.0g、0.03mol)を加えて、室温で終夜撹拌した。反応溶液を水に加えて、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、3-(ジメトキシメチル)フェノールを黄色液体として得た。(75.0g、quant.)
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.21-7.25(m、1H)、6.99-7.01(m、2H)、6.85-6.87(m、1H)、5.36(s、1H)、3.35(s、6H).
【0089】
(参考例2)
【0090】
【化15】
【0091】
参考例1の化合物(75.0g)とイミダゾール(41.8g、0.61mol)のジクロロメタン(DCM)溶液(750mL)にtert-ブチルジメチルクロロシラン(TBSCl)(74.1g、0.49mol)を加えて、室温で1時間撹拌した。反応溶液を水に加えて、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=50:1~20:1)で精製し、tert-ブチル(3-(ジメトキシメチル)フェノキシ)ジメチルシランを無色液体として得た(80.0g、69%(2ステップ))。
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.23(t、J=8.0Hz、1H)、7.04d、J=7.6Hz、1H)、6.96(s、1H)6.80(dd、J=2.0、8.0Hz、1H)、5.39(s、1H)、3.33(s、9H)、1.00(s、6H)、0.21(s、6H).
【0092】
(参考例3)
【0093】
【化16】
【0094】
参考例2の化合物(80.0g、0.28mol)と亜りん酸トリメチル(52.7g、0.42mol)のジクロロメタン溶液(800mL)を0℃に冷却し、塩化チタン(IV)(80.5g、0.42mol)を滴下した。反応溶液を0℃で1時間撹拌した。反応溶液を水に加えて、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=30/1~10/1)で精製し、ジメチル((3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)(メトキシ)メチル)ホスホネートを無色液体として得た(57.0g、56%)。
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.24(t、J=8.0Hz、1H)、7.03(d、J=7.2Hz、1H)、6.96(d、J=2.0Hz、1H)6.83(d、J=8.4Hz、1H)、4.50(d、J=15.6Hz、1H)、3.66-3.73(m、6H)、3.39(s、3H)、0.99(s、9H)、0.21(s、6H).
【0095】
(参考例4)
【0096】
【化17】
【0097】
参考例3の化合物(57.0g、0.16mol)の無水テトラヒドロフラン(THF)溶液(570mL)を-78℃に冷却し、窒素雰囲気下でn-ブチルリチウム(n-BuLi)(2.5M、110mL、0.28mol)を加えた。反応溶液を窒素雰囲気下、-78℃で1時間撹拌した。5-クロロ-2-アダマンタノン(35.0g、0.19mol)の無水テトラヒドロフラン溶液(150mL)を-78℃で滴下して加えた。反応溶液を窒素雰囲気下、-78℃で30分間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に加えて、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=30/1~10/1)で精製し、tert-ブチル(3-((Z)-((1R、3S、5S、7S)-5-クロロアダマンタン-2-イリデン)(メトキシ)メチル)フェノキシ)ジメチルシランを無色液体として得た(30.0g、45%)。
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.23(t、J=8.0Hz、1H)、6.90(d、J=7.6Hz、1H)、6.78-6.83(m、2H)3.46(s、1H)、3.30(s、3H)、2.79(s、1H)、2.16-2.28(m、7H)、1.71-1.85(m、4H).1.00(s、9H)、0.22(s、6H).
【0098】
(参考例5)
【0099】
【化18】
【0100】
参考例4の化合物(30.0g、71.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(300mL)を0℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のテトラヒドロフラン溶液(1M、80mL、80mmol)を加えた。反応溶液を0℃で30分間撹拌した。反応溶液を水に加えて、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、3-((Z)-((1R、3S、5S、7S)-5-クロロアダマンタン-2-イリデン)(メトキシ)メチル)フェノールを無色液体として得た(24g、quant.)。
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.21-7.25(m、1H)、6.81-6.86(m、3H)、3.45(s、1H)、3.32(s、3H)、2.81(s、1H)、2.15-2.30(m、7H)、1.85-1.86(m、1H)、1.71-1.79(m、3H).
【0101】
(参考例6)
【0102】
【化19】
【0103】
参考例5の化合物(24g)のトルエン溶液(500mL)を0℃に冷却し、N-ヨードスクシンイミド(NIS)(17.7g、78.6mmol)を加えた。反応溶液を室温で1時間撹拌した。反応溶液を水に加えて、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20/1~3/1)で精製し、5-((Z)-((1R、3S、5S、7S)-5-クロロアダマンタン-2-イリデン)(メトキシ)メチル)-2-ヨードフェノールを白色固体として得た(9.3g、30%(2ステップ))。
HNMR(CDCl、400MHz):δ7.66(d、J=8.0Hz、1H)、6.94(d、J=1.6Hz、1H)、6.64(dd、J=1.6、8.0Hz1H)、5.41(s、1H)、3.45(s、1H)、3.31(s、3H)、2.80(s、1H)、2.15-2.27(m、7H)、1.85-1.86(m、1H)、1.71-1.78(m、3H).Mass Calcd.:430;MS Found:431[M+H]
【0104】
(参考例7)
【0105】
【化20】
【0106】
参考例6の化合物(430.7mg、1.0mmol、1eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)(115.6mg、0.1mmol、0.1eq)、ヨウ化銅(I)(38.1mg、0.2mmol、0.2eq)、トリフェニルホスフィン(PPh)(52.5mg、0.2mmol、0.2eq)、ジイソプロピルアミン(iPrNH)(2mL)、トリエチルアミン(TEA)(4mL)を混合し、アルゴン雰囲気下、室温で30分間撹拌した。4-エチニル安息香酸メチル(320.4mg、2.0mmol、2eq)を加え、80℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、反応溶液をジクロロメタンで希釈し、セライト濾過した。有機層を1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、式[II-A]で表される化合物を黄色固体として得た(222.4mg、48%)。
ESI-MS m/z:461[M-H]
【0107】
(参考例8)
【0108】
【化21】
【0109】
亜りん酸トリアリル(P(OAllyl))(71.6μL、0.51mmol、6eq)の無水ジクロロメタン溶液(2mL)を0℃に冷却し、ヨウ素(108.5mg、0.43mmol、5eq)を加えた。0℃で5分間撹拌し、室温に戻した。参考例7の化合物(39.6mg、0.09mmol、1eq)とDMAP(62.7mg、0.51mmol、6eq)の無水ジクロロメタン溶液(2mL)に室温で滴下して加えた。室温で40分間撹拌した後、ジクロロメタンで希釈し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、式[II-B]で表される化合物を赤色液体として得た(28.7mg、55%)。
ESI-MS m/z:624[M+H]
【0110】
(参考例9)
【0111】
【化22】
【0112】
参考例8の化合物(127.1mg、0.20mmol、1eq)のテトラヒドロフラン溶液(3mL)にぎ酸(38.5μL、1.02mmol、5eq)、トリエチルアミン(34.1μL、0.24mmol、1.2eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(23.6mg、0.02mmol、0.1eq)を加え、50℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、溶媒を減圧除去した。残渣をテトラヒドロフラン(4mL)と1N水酸化ナトリウム水溶液(1mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1~3/1)で精製し、式[II-C]で表される化合物を黄色固体として得た(160.4mg、quant.)。
ESI-MS m/z:527[M-H]
【0113】
(実施例1)
【0114】
【化23】
【0115】
参考例9の化合物(60.8mg、0.12mmol、1eq)とメチレンブルー(2mg)をジクロロメタン(2mL)/メタノール(0.5mL)に溶解し、酸素雰囲気下で光(LED、25W、5000K)を照射しながら45分間撹拌した。反応溶液をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=1/1)で精製し、粗生成物を得た。粗生成物をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[I-P]で表される化合物を白色固体として得た(8.6mg、13%)。
ESI-MS m/z:559[M-H]
【0116】
(参考例10)
【0117】
【化24】
【0118】
参考例6の化合物(1.29g、3.0mmol、1eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(173.3mg、0.15mmol、0.05eq)、ヨウ化銅(I)(57.1mg、0.3mmol、0.1eq)、トリフェニルホスフィン(78.7mg、0.3mmol、0.1eq)、ジイソプロピルアミン(5mL)、トリエチルアミン(10mL)を混合し、アルゴン雰囲気下、室温で30分間撹拌した。トリメチルシリルアセチレン(1.24mL、9.0mmol、3eq)を加え、90℃で2時間撹拌した。室温に冷却後、反応溶液をジクロロメタンで希釈し、セライト濾過した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をテトラヒドロフラン(15mL)に溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオリド溶液(1M、テトラヒドロフラン)を加えた。室温で20分間撹拌し、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、式[II-D]で表される化合物を褐色固体として得た(820.2mg、83%)。
ESI-MS m/z:327[M-H]
【0119】
(参考例11)
【0120】
【化25】
【0121】
参考例10の化合物(32.9mg、0.1mmol、1eq)、脱水ピリジン(169.2μL、2.10mmol、21eq)の脱水ジクロロメタン溶液(5mL)を0℃に冷却し、塩化ホスホリル(93.2μL、1.0mmol、10eq)を滴下して加えた。アルゴン雰囲気下、0℃で3.5時間撹拌し、溶媒を減圧除去した。トルエンを加えて溶媒を減圧除去する操作を2回繰り返し、粗生成物を得た。粗生成物をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[II-E]で表される化合物を白色固体として得た(17.1mg、42%)。
ESI-MS m/z:407[M-H]
【0122】
(実施例2)
【0123】
【化26】
【0124】
参考例11の化合物(14mg、0.027mmol、1eq)とローズベンガルBポリスチレン結合型(20mg)をジクロロメタン(2mL)/メタノール(0.5mL)に加え、酸素雰囲気下で光(LED、25W、5000K)を照射しながら1時間撹拌した。反応溶液を綿栓ろ過し、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[I-Q]で表される化合物を白色固体として得た(4.5mg、30%)。
ESI-MS m/z:439[M-H]
【0125】
(参考例12)
【0126】
【化27】
【0127】
参考例10の化合物(611.7mg、1.86mmol、1eq)とイミダゾール(253.3mg、3.72mmol、2eq)のジクロロメタン溶液(19mL)にtert-ブチルジメチルクロロシラン(420.5mg、2.8mmol、1.5eq)を加えた。反応溶液をアルゴン雰囲気下、室温で30分間撹拌した。反応溶液にイミダゾール(126mg、1.86mmol、1eq)とtert-ブチルジメチルクロロシラン(210mg、1.4mmol、0.7eq)を加え、室温で4時間撹拌した。反応溶液をろ過し、ろ液を減圧除去し、残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、式[II-F]で表される化合物を無色液体として得た(720.6mg、87%)。
ESI-MS m/z:443[M+H]
【0128】
(参考例13)
【0129】
【化28】
【0130】
参考例12の化合物(680.5mg、1.54mmol、1eq)の脱水テトラヒドロフラン溶液(8mL)を-78℃に冷却し、窒素雰囲気下でn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(2.6M、1.77mL、4.61mol、3eq)を滴下して加えた。反応溶液を窒素雰囲気下、-78℃で30分間撹拌した。クロロぎ酸メチル(589.9μL、7.68mmol、5eq)を加え、室温で1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくり加え、酢酸で2回抽出し、水、飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製し、式[II-G]で表される化合物を淡黄色液体として得た(774.1mg、quant.)。
ESI-MS m/z:501[M+H]
【0131】
(参考例14)
【0132】
【化29】
【0133】
参考例13の化合物(751.6mg、1.50mmol、1mmol)のテトラヒドロフラン溶液(7.5mL)に、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1M、1.8mL、1.8mmol、1.2eq)を加え、室温で20分間撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、式[II-H]で表される化合物を白色固体として得た(456.3mg、79%)。
ESI-MS m/z:385[M+H]
【0134】
(参考例15)
【0135】
【化30】
【0136】
参考例14の化合物(50.3mg、0.13mmol、1eq)、脱水ピリジン(219.9μL、2.73mmol、21eq)の脱水ジクロロメタン溶液(2.6mL)を0℃に冷却し、塩化ホスホリル(121.2μL、1.3mmol、10eq)を滴下して加えた。アルゴン雰囲気下、0℃で40分間撹拌し、溶媒を減圧除去した。トルエンを加えて溶媒を減圧除去する操作を2回繰り返し、残渣を得た。残渣を水(2mL)に懸濁し、水酸化カリウム(218.8mg、3.9mmol、30eq)を加え、室温で5分間撹拌した。反応溶液をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[II-J]で表される化合物を白色固体として得た(36.6mg、62%)。
ESI-MS m/z:451[M-H]
【0137】
(実施例3)
【0138】
【化31】
【0139】
参考例15の化合物(36.6mg、0.081mmol、1eq)とローズベンガルBポリスチレン結合型(30mg)をジクロロメタン(5mL)/メタノール(2mL)に加え、酸素雰囲気下で光(LED、25W、5000K)を照射しながら2時間撹拌した。反応溶液を綿栓ろ過し、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[I-R]で表される化合物を白色固体として得た(18.4mg、47%)。
ESI-MS m/z:483[M-H]
【0140】
(参考例16)
【0141】
【化32】
【0142】
参考例6の化合物(215.4mg、0.50mmol、1eq.)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)安息香酸メチル(196.6mg,0.75mmol,1.5eq)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))(22.9mg、0.03mmol、0.05eq)、SPhos(20.5mg、0.05mmol、0.1eq),リン酸カリウム(212.3mg、1.00mmol、2eq)、テトラヒドロフラン(2mL)、水(0.5mL)を混合し、アルゴン雰囲気下、室温で28時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、式[II-K]で表される化合物を白色固体として得た(163.9mg、75%)。
ESI-MS m/z:439[M-H]
【0143】
(参考例17)
【0144】
【化33】
【0145】
亜りん酸トリアリル(96.1μL、0.69mmol、2.5eq)の無水ジクロロメタン溶液(2mL)を0℃に冷却し、ヨウ素(139.9mg、0.55mmo2eq)を加えた。0℃で5分間撹拌し、室温に戻した後、参考例7の化合物(121.9mg、0.28mmol、1eq)とDMAP(101.0mg、0.83mmol、3eq)の無水ジクロロメタン溶液(3mL)に室温で滴下して加えた。室温で2時間撹拌した後、ジクロロメタンで希釈し、有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、式[II-L]で表される化合物を得た(114.1mg、69%)。
ESI-MS m/z:599[M+H]
【0146】
(参考例18)
【化34】
【0147】
参考例17の化合物(60.4mg、0.10mmol、1eq)のテトラヒドロフラン溶液(2mL)にぎ酸(19.0μL、0.50mmol、5eq)、トリエチルアミン(16.9μL、0.12mmol、1.2eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(11.7mg、0.01mmol、0.1eq)を加え、60℃で10分間撹拌した。室温に冷却後、溶媒を減圧除去した。残渣をテトラヒドロフラン(3mL)と1N水酸化ナトリウム水溶液(0.5mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=4/1~1/1)で精製し、式[II-N]で表される化合物を白色固体として得た(44.1mg、87%)。
ESI-MS m/z:503[M-H]
【0148】
(実施例4)
【0149】
【化35】
【0150】
参考例18(35.9mg、0.07mmol、1eq)とメチレンブルー(2mg)をジクロロメタン(2mL)/メタノール(0.5mL)に溶解し、酸素雰囲気下で光(LED、25W、5000K)を照射しながら30分間撹拌した。反応溶液をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=1/10)で精製し、粗生成物を得た。粗生成物をHPLC(溶離液A:水、5mM炭酸アンモニウム水溶液、溶離液B:アセトニトリル、A/B=90/10-10/90(20分間))で精製し、式[I-S]で表される化合物を白色固体として得た(2.9mg、8%)。
ESI-MS m/z:535[M-H]
【0151】
<試験例1>
1、2-ジオキセタン誘導体(実施例1~4、比較例1~2)のジメチルスルホキシド溶液(1mM、5μL)を反応溶液155μLに加え、42℃で1時間保温した。アルカリホスファターゼ1pmolを含む溶液20μLを加え、42℃で10時間発光シグナルを計測し、その積算値を算出した。反応溶液は緩衝液(塩化マグネシウムおよびSapphire-II(商標)Enhancer(Thermo Fischer Scientific社)を含む緩衝液(pH9.6))とHISCL R4試薬(シスメックス株式会社)を2:1で混合したものを用いた。
【0152】
試験例1の結果を図1Aおよび図1Bに示す。図1Aおよび図1Bに示されるように、実施例1~4は、比較例1(CDP-Star(商標))および比較例2(AquaSpark(商標))に比べて、化学発光効率が高かった。
【0153】
<試験例2>
1、2-ジオキセタン誘導体(実施例1~4)のジメチルスルホキシド溶液を反応溶液155μLに加え、42℃で1時間保温した。アルカリホスファターゼを含む溶液20μLを加え、42℃で5分間保温した後、化学発光強度を測定した。反応溶液は緩衝液(塩化マグネシウムおよびSapphire-II(商標)Enhancer(Thermo Fischer Scientific)を含む緩衝液(pH9.6))とHISCL R4試薬(シスメックス株式会社)を2:1で混合したものを用いた。実施例3は、Sapphire-II(商標)Enhancerを添加したもの(S (+))およびSapphire-II(商標)Enhancerを添加していないもの(S (-))の2種類を用いた。
【0154】
実施例1~4の検出限界(Limit of Detection(LOD))は表1に示される通りであった。また、図2A~2Eに示される通り、計測されたカウント値はアルカリホスファターゼの濃度に依存することがわかった。
【表1】
【0155】
<試験例3>
試験例1の条件で数時間経過後に、分光蛍光光度計 F-7000(株式会社 日立ハイテクサイエンス)で測定し、最大発光波長を測定した。
【0156】
実施例1~4の最大発光波長は表2に示される通りであった。
【0157】
【表2】
【0158】
<試験例4>
研究用全自動高感度免疫測定装置HI-1000(シスメックス株式会社)とB型肝炎ウイルス表面抗原キット HISCL(商標) HBsAg試薬(シスメックス株式会社)を用いてHISCL(商標) HBsAgキャリブレータ(シスメックス株式会社)を測定した。実施例3の測定には、HISCL R5試薬の代わりに、1、2-ジオキセタン誘導体(実施例3)のジメチルスルホキシド溶液を緩衝液(塩化マグネシウムを含む緩衝液(pH9.6))に希釈し(実施例3の終濃度:93μM)、遮光条件下42℃で1時間保温し、室温に戻したものを使用した。なお、当該緩衝液には、Sapphire-II(商標)Enhancer(Thermo Fischer Scientific)は含まれていなかった。
【0159】
図3に示される通り、HISCLカウント値はHBsAgの濃度に依存することが分かった。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5