IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特開-基板およびセンサ装置 図1
  • 特開-基板およびセンサ装置 図2
  • 特開-基板およびセンサ装置 図3
  • 特開-基板およびセンサ装置 図4
  • 特開-基板およびセンサ装置 図5
  • 特開-基板およびセンサ装置 図6
  • 特開-基板およびセンサ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110681
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】基板およびセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012272
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉瀬 浩
(57)【要約】
【課題】基板に設けられる2系統の電子部品に、同じタイミングで異常が発生することを抑制できる基板およびセンサ装置を提供する。
【解決手段】基板23は、同一機能を有する2系統の電子部品が設けられる基板である。電子部品は、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46を含む。基板23は、第1の磁気センサ45を覆う第1のコーティング層81A、および、第2の磁気センサ46を覆う第2のコーティング層81Bを有している。第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとは、異なる液体浸透性を有する異なる種類の材料により構成されている。材料は、合成樹脂材料である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一機能を有する2系統の電子部品が設けられる基板であって、
第1の系統の前記電子部品を覆う第1のコーティング層と、第2の系統の前記電子部品を覆う第2のコーティング層と、を有し、
前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とは、異なる液体浸透性を有する異なる種類の材料により構成される基板。
【請求項2】
前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とを構成する前記材料は、合成樹脂である請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とは、同じ厚みを有している請求項1または請求項2に記載の基板。
【請求項4】
2系統の前記電子部品は、前記基板の周縁に並んで設けられており、
前記基板は、2系統の前記電子部品が設けられている側の前記基板の領域である第1の領域と、
前記第1の領域を除く前記基板の残りの領域である第2の領域と、を有し、
前記第1の領域は、さらに、第1の系統の前記電子部品が設けられている側の領域である第3の領域と、
第2の系統の前記電子部品が設けられている側の前記第1の領域の残りの領域である第4の領域と、に区画されており、
前記第1のコーティング層は、前記第3の領域および前記第4の領域のうちいずれか一方を覆っており、
前記第2のコーティング層は、前記第3の領域および前記第4の領域のうちいずれか他方を覆っている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
前記電子部品は、検出対象である回転軸の回転運動に関する物理量を検出するように構成されるセンサである請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられる永久磁石と、
前記回転軸のねじれに伴い前記永久磁石に対する回転位置が変化する磁気ヨークと、
前記磁気ヨークの周囲を囲み前記磁気ヨークからの磁束を集める集磁リングと、
請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の基板と、を有し、
前記電子部品は、前記集磁リングにより集磁される磁束を検出する磁気センサであるセンサ装置。
【請求項7】
前記回転軸は、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトである請求項6に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板およびセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トーションバーのねじれに伴い変化する磁束に基づきトルクを検出するトルクセンサが存在する。たとえば、特許文献1のトルクセンサは、磁気回路部、磁束誘導部材、および磁気センサを有している。磁気回路部は、トーションバーのねじりに応じた磁束を発生する。磁束誘導部材は、磁気回路部と磁気結合されて磁束を誘導する。磁気センサは、磁束誘導部材により誘導される磁束に応じた電気信号を生成する磁気検出素子を有している。
【0003】
磁気センサは、センサハウジングを有している。センサハウジングの収容凹部には、回路基板、および磁束誘導部材が収容されている。回路基板には、2つの磁気検出素子が設けられている。磁束誘導部材、回路基板および磁気検出素子は、防水性を有する被覆材によって、一体的に被覆されている。被覆材は、たとえば、エポキシ樹脂である。これにより、磁束誘導部材、回路基板、および磁気検出素子が、水に晒されることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-134440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のセンサ装置は、つぎの懸念事項を有する。たとえば、使用環境によるものの、長期の使用に伴い、水あるいは化学薬品などの液体が被覆材に浸透し、やがて磁気検出素子に達するおそれがある。磁気検出素子に液体が付着した場合、磁気検出素子の正常な動作が損なわれることが懸念される。2つの磁気検出素子に、同じタイミングで異常が発生する場合、トルクを正常に検出することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得る基板は、同一機能を有する2系統の電子部品が設けられる基板である。基板は、第1の系統の前記電子部品を覆う第1のコーティング層と、第2の系統の前記電子部品を覆う第2のコーティング層と、を有している。前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とは、異なる液体浸透性を有する異なる種類の材料により構成される。
【0007】
水などの液体が基板に付着することが考えられる。基板に付着した水がコーティング層に浸透し、電子部品に到達するおそれがある。
上記の基板によれば、第1の系統の電子部品を覆う第1のコーティング層の液体浸透性と、第2の系統の電子部品を覆う第2のコーティング層の液体浸透性とが異なる。このため、基板に付着した液体が第1のコーティング層および第2のコーティング層に浸透するとき、浸透する液体が第1の系統の電子部品に到達するために必要とされる時間と、第2の系統の電子部品に到達するために必要とされる時間とが異なる。すなわち、基板に付着した液体が、2系統の電子部品に同じタイミングで到達することが抑えられる。したがって、2系統の電子部品に、同じタイミングで異常が発生することが抑制される。
【0008】
上記の基板において、前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とを構成する前記材料は、合成樹脂であってもよい。
この構成によるように、合成樹脂を使用することにより、第1のコーティング層と第2のコーティング層とを、より安価に形成することができる。
【0009】
上記の基板において、前記第1のコーティング層と前記第2のコーティング層とは、同じ厚みを有していてもよい。
この構成によるように、第1のコーティング層の厚みと、第2のコーティング層の厚みとが同じであっても、液体が第1の系統の電子部品に到達する時間と、液体が第2の系統の電子部品に到達する時間とを異ならせることができる。第1のコーティング層と第2のコーティング層とが、異なる液体浸透性を有するからである。
【0010】
上記の基板において、2系統の前記電子部品は、前記基板の周縁に並んで設けられていてもよい。前記基板は、2系統の前記電子部品が設けられている側の前記基板の領域である第1の領域と、前記第1の領域を除く前記基板の残りの領域である第2の領域と、を有していてもよい。前記第1の領域は、さらに、第1の系統の前記電子部品が設けられている側の領域である第3の領域と、第2の系統の前記電子部品が設けられている側の前記第1の領域の残りの領域である第4の領域と、に区画されていてもよい。前記第1のコーティング層は、前記第3の領域および前記第4の領域のうちいずれか一方を覆っており、前記第2のコーティング層は、前記第3の領域および前記第4の領域のうちいずれか他方を覆っていてもよい。
【0011】
この構成によれば、基板の第3の領域の全体を第1のコーティング層で覆うことにより、第1の系統の電子部品を第1のコーティング層で覆うことができる。また、基板の第4の領域の全体を第2のコーティング層で覆うことにより、第2の系統の電子部品を第2のコーティング層で覆うことができる。
【0012】
上記の基板において、前記電子部品は、検出対象である回転軸の回転運動に関する物理量を検出するように構成されるセンサであってもよい。
上記の基板によれば、2系統のセンサに、同じタイミングで異常が発生することが抑制される。
【0013】
上記課題を解決し得るセンサ装置は、検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられる永久磁石と、前記回転軸のねじれに伴い前記永久磁石に対する回転位置が変化する磁気ヨークと、前記磁気ヨークの周囲を囲み前記磁気ヨークからの磁束を集める集磁リングと、上記の基板と、を有している。前記電子部品は、前記集磁リングにより集磁される磁束を検出する磁気センサである。
【0014】
上記のセンサ装置によれば、上記の基板と同様の効果を得ることができる。
上記のセンサ装置において、前記回転軸は、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトであってもよい。
【0015】
上記のセンサ装置は、防水性の確保が要求される車両用途に好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板およびセンサ装置によれば、基板に設けられる2系統の電子部品に、同じタイミングで異常が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】センサ装置の一実施の形態の分解斜視図である。
図2】一実施の形態のセンサ装置を軸方向に切断した断面図である。
図3】基板の比較例の平面図である。
図4図3の4-4線に沿って切断した基板の切断部端面図である。
図5】一実施の形態の基板の平面図である。
図6図5の6-6線に沿って切断した基板の切断部端面図である。
図7図5の7-7線に沿って切断した基板の切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、センサ装置の一実施の形態を説明する。
<センサ装置の全体構成>
図1に示すように、センサ装置10は、検出対象である回転軸11に設けられる。回転軸11は、入力軸12、トーションバー13、および出力軸14を有している。入力軸12と出力軸14とは、トーションバー13を介して互いに連結される。入力軸12、トーションバー13、および出力軸14は、同一の軸線O上に位置している。回転軸11は、たとえば車両の操舵装置を構成するラックアンドピニオン機構のピニオンシャフトである。ピニオンシャフトには、ステアリングシャフトを介してステアリングホイールが連結される。
【0019】
センサ装置10は、ステアリングホイールの操作を通じて回転軸11に加わるトルクを検出する。センサ装置10は、永久磁石21、磁気ヨーク22、基板23、センサハウジング25、およびカバー26を有している。
【0020】
永久磁石21は、円筒状である。永久磁石21は、その周方向において、S極とN極とが交互に着磁されている。永久磁石21の内周面と入力軸12の外周面とは、互いに嵌り合っている。永久磁石21の内周面は、入力軸12の外周面に固定される。
【0021】
磁気ヨーク22は、円筒状である。磁気ヨーク22の内部には、永久磁石21が挿入される。磁気ヨーク22は、第1のヨーク31、第2のヨーク32、およびホルダ33を有している。第1のヨーク31および第2のヨーク32は、磁性体からなる環状の部材である。第1のヨーク31および第2のヨーク32は、回転軸11の軸線Oに沿って並んでいる。磁気ヨーク22は、第1のヨーク31および第2のヨーク32が合成樹脂材料によりモールドされることにより形成される。ホルダ33は、磁気ヨーク22の合成樹脂材料により形成された部である。ホルダ33は、第1のヨーク31と第2のヨーク32との位置関係を保持する。磁気ヨーク22は、出力軸14に固定される。
【0022】
第1のヨーク31は、複数の歯部31aを有している。歯部31aは、第1のヨーク31の周方向において、等間隔に並んでいる。第2のヨーク32は、複数の歯部32aを有している。歯部32aは、第2のヨーク32の周方向において、等間隔に並んでいる。歯部31aと歯部32aとは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において、互いに反対側へ延びている。また、歯部31aと歯部32aとは、第1のヨーク31および第2のヨーク32の周方向において、交互に配置されている。トーションバー13に捩れ変形が生じていない状態において、歯部31a,32aの周方向における中心は、永久磁石21のN極とS極との境界に一致する。
【0023】
基板23は、矩形の板状である。基板23は、軸線Oに沿った方向において、互いに反対側に位置する第1の主面および第2の主面を有している。また、基板23は、3つの支持孔41、複数の端子接続孔42、第1の磁気センサ45、および第2の磁気センサ46を有している。支持孔41は、基板23の中央付近に設けられている。支持孔41は、基板23の長辺方向に一列に並んでいる。端子接続孔42は、基板23の第1の長辺に沿って、たとえば二列に並んでいる。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、基板23の第1の主面に設けられている。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、基板23の周縁に位置している。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、基板23の第2の長辺に沿って並んでいる。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、同一品であって、同一機能を有している。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、回転軸11の回転角度を検出するためのものであって、たとえばホールセンサである。回転軸11の回転角度は、回転軸11の回転運動に関する物理量である。第1の磁気センサ45は、第1の系統の電子部品である。第2の磁気センサ46は、第2の系統の電子部品である。
【0024】
センサハウジング25は、アウターハウジング25Aおよび筒状のインナーハウジング25Bを有している。アウターハウジング25Aおよびインナーハウジング25Bは、それぞれ樹脂成形品である。インナーハウジング25Bは、インサート成形によって、アウターハウジング25Aと一体的に設けられる。インサート成形は、開いた状態の金型にインサート品であるインナーハウジング25Bを装着し、その後、金型を閉じて射出成形を行う成形技術である。金型の内部において、インナーハウジング25Bは、一部分を除き、金型に注入される溶融樹脂により包み込まれる。この溶融樹脂が冷却固化することにより、インナーハウジング25Bの外側にアウターハウジング25Aが形成される。センサハウジング25は、インナーハウジング25Bの径方向外側へ張り出す張出部を有している。回転軸11は、センサハウジング25を軸方向に貫通するように設けられる。
【0025】
センサハウジング25は、円筒状の挿通孔51、円筒状の第1の収容室52、および第2の収容室53を有している。挿通孔51と第1の収容室52とは、互いに連通している。挿通孔51および第1の収容室52は、それぞれ同一の軸線O上に位置している。挿通孔51の内径は、回転軸11の外径よりも若干大きい。挿通孔51には、第1の収容室52を介して、入力軸12が挿通される。
【0026】
第1の収容室52の内径は、磁気ヨーク22の外径よりも若干大きい。インナーハウジング25Bの内周面は、第1の収容室52の内周面を構成する。第1の収容室52は、永久磁石21および磁気ヨーク22を収容する。
【0027】
第2の収容室53は、センサハウジング25の張出部に設けられている。第2の収容室53は、基板23を収容する。第2の収容室53は、矩形の開口部53aを有している。開口部53aは、インナーハウジング25Bの径方向外側へ開口している。開口部53aは、カバー26によって閉塞される。
【0028】
第2の収容室53の内端面には、3つの支持突部54が設けられている。支持突部54は、たとえば段付き円柱状である。各支持突部54は、開口部53aの長辺に沿って、一列に並んでいる。各支持突部54は、基板23の各支持孔41に対応している。
【0029】
第2の収容室53の内端面には、複数の端子55の第1の端部が突出して設けられている。複数の端子55は、開口部53aの長辺に沿って、たとえば二列に並んでいる。端子55の第1の端部は、開口部53aの開口方向において、支持突部54の外側に位置している。複数の端子55は、基板23に設けられた複数の端子接続孔42に対応する。
【0030】
センサハウジング25の張出部の端壁外面には、四角筒状のコネクタ嵌合部56が突出して設けられている。複数の端子55の第2の端部は、センサハウジング25の張出部の端壁を貫通して、コネクタ嵌合部56の内部に露出する。コネクタ嵌合部56には、基板23の端子55と外部機器との間を電気的に接続する配線のコネクタ(図示略)が嵌合される。外部機器は、たとえば操舵装置の制御装置である。
【0031】
第1の収容室52の内周面には、第1の集磁リング61および第2の集磁リング62が設けられている。第1の集磁リング61および第2の集磁リング62は、インサート成形によって、インナーハウジング25Bと一体的に設けられる。第1の集磁リング61および第2の集磁リング62は、磁気ヨーク22の外周に沿って湾曲する円弧板状である。第1の集磁リング61および第2の集磁リング62は、回転軸11の軸線Oに沿った方向に並んでいる。第1の集磁リング61は、第1のヨーク31に対応する。第2の集磁リング62は、第2のヨーク32に対応する。第1の集磁リング61は、2つの集磁突部61a,61bを有している。これら集磁突部61a,61bは、第2の収容室53の内部に露出している。第2の集磁リング62は、2つの集磁突部62a,62bを有している。これら集磁突部62a,62bは、第2の収容室53の内部に露出している。1つの組である集磁突部61aと集磁突部62aとは、軸線Oに沿った方向において、互いに対向している。他の組である集磁突部61bと集磁突部62bとは、軸線Oに沿った方向において、互いに対向している。
【0032】
<センサ装置の取り付け状態>
図2に示すように、センサ装置10は、ハウジング15に取り付けられる。センサハウジング25の内部とハウジング15の内部とは、互いに連通している。ハウジング15は、検出対象である回転軸11を回転可能に支持する。ハウジング15は、たとえば車両の操舵装置を構成するラックアンドピニオン機構を収容するギヤハウジングである。ラックアンドピニオン機構は、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフト、および転舵シャフトのラック歯に噛み合うピニオンシャフトを有する。本実施の形態では、回転軸11は、ピニオンシャフトである。回転軸11に取り付けられた磁気ヨーク22は、センサハウジング25の第1の収容室52に収容された状態に維持される。
【0033】
基板23は、第2の収容室53の内端面に取り付けられている。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46が設けられる基板23の第1の主面は、センサハウジング25の張出部の端壁と反対側を向いている。基板23は、2つの切欠23aを有している。これら切欠23aは、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46に対応する、基板23の側縁部に設けられている。基板23が第2の収容室53の内端面に取り付けられた状態において、第1の集磁リング61の集磁突部61a,61bは、基板23の切欠23aの内部に位置した状態に維持される。
【0034】
図示は割愛するが、第2の収容室53の内端面に設けられた各支持突部54は、基板23の各支持孔41を貫通している。これにより、基板23が第2の収容室53の内端面に対して相対的に移動することが規制される。また、第2の収容室53の内端面から突出する各端子55の第1の端部は、基板23の各端子接続孔42を貫通している。各端子55の第1の端部は、半田付けによって基板23に接合されている。基板23のパターン配線と各端子55とは電気的に接続されている。
【0035】
磁気ヨーク22の第1のヨーク31および第2のヨーク32の内側には、永久磁石21が位置している。永久磁石21、第1のヨーク31、および第2のヨーク32は、磁気回路を形成する。回転軸11の軸線Oに沿った方向において、第1の集磁リング61は第1のヨーク31に対応した位置に保持されている。第1の集磁リング61は、第1のヨーク31の周囲を取り囲んでいる。第1の集磁リング61は、第1のヨーク31からの磁束を誘導する。第2の集磁リング62は第2のヨーク32に対応した位置に保持されている。第2の集磁リング62は、第2のヨーク32の周囲を取り囲んでいる。第2の集磁リング62は、第2のヨーク32からの磁束を誘導する。
【0036】
第1の集磁リング61の集磁突部61aと、第2の集磁リング62の集磁突部62aとは、互いに平行である。第1の磁気センサ45は、第1の集磁リング61の集磁突部61aと、第2の集磁リング62の集磁突部62aとの間に介在されている。図示は割愛するが、第1の集磁リング61の集磁突部61bと、第2の集磁リング62の集磁突部62bとは、互いに平行である。第2の磁気センサ46は、第1の集磁リング61の集磁突部61bと、第2の集磁リング62の集磁突部62bとの間に介在されている。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、第1の集磁リング61および第2の集磁リング62に誘導される磁束を検出する。
【0037】
ステアリングホイールの操作を通じて入力軸12にトルクが加わることにより、トーションバー13は、ねじれ変形する。入力軸12に加えられるトルクに応じて、入力軸12と出力軸14との間に相対的な回転変位が生じる。すると、永久磁石21と第1のヨーク31との回転方向における相対位置が変化する。このため、永久磁石21から第1のヨーク31を通じて第1の集磁リング61に誘導される磁束が変化する。また、永久磁石21と第2のヨーク32との回転方向における相対位置が変化する。このため、永久磁石21から第2のヨーク32を通じて第2の集磁リング62に誘導される磁束が変化する。
【0038】
第1の磁気センサ45は、第1の集磁リング61の集磁突部61aと、第2の集磁リング62の集磁突部62aとの間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。第2の磁気センサ46は、第1の集磁リング61の集磁突部61bと、第2の集磁リング62の集磁突部62bとの間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46により生成される電気信号は、トーションバー13のねじれ変形、すなわちトーションバー13のねじれ角に応じて変化する。操舵装置の制御装置は、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46により生成される電気信号に基づき、トーションバー13に作用するトルクを演算する。トルクは、回転軸11の回転運動に関する物理量である。
【0039】
<基板の比較例>
つぎに、基板23の比較例を説明する。
何らかの理由によって、第2の収容室53の内部に、水あるいは化学薬品などの液体が浸入する場合を想定して、基板23には防水処理が施される。
【0040】
図3に示すように、基板23は、コーティング層71を有している。コーティング層71は、基板23の表面に設けられている。表面は、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46が設けられている基板23の面である。コーティング層71は、たとえば、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46が設けられている側の基板23の表面の半分の領域を覆っている。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46は、コーティング層71によって覆われている。これにより、たとえ第2の収容室53の内部に液体が浸入したとしても、液体が第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46に付着することが抑制される。
【0041】
比較例の基板23は、つぎの懸念事項を有する。
すなわち、長期の使用に伴い、コーティング層71に付着した液体がコーティング層71に浸透し、やがて第1の磁気センサ45あるいは第2の磁気センサ46に達するおそれがある。
【0042】
図4に示すように、コーティング層71の厚みは、均一である。このため、液体が第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46に同じタイミングで到達するおそれがある。この場合、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46の正常な動作が、同時に損なわれることが懸念される。
【0043】
そこで、本実施の形態では、基板23として、つぎの構成を採用している。
<基板の実施例>
図5に示すように、基板23は、第1の領域A1および第2の領域A2を有している。第1の領域は、たとえば、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46が設けられている側の基板23の半分の領域である。第2の領域A2は、第1の領域A1とは反対側の基板23の残る半分の領域である。第2の領域A2には、支持孔41および端子接続孔42が設けられている。第1の領域A1は、さらに第3の領域A3と第4の領域A4とに区画されている。第3の領域A3は、たとえば、第1の磁気センサ45が設けられている側の第1の領域A1の半分の領域である。第4の領域A4は、第2の磁気センサ46が設けられている側の第1の領域A1の残る半分の領域である。
【0044】
基板23は、第1のコーティング層81A、および第2のコーティング層81Bを有している。第1のコーティング層81Aは、基板23の第3の領域A3の表面の全体を覆っている。第1の磁気センサ45は、第1のコーティング層81Aにより覆われている。第2のコーティング層81Bは、基板23の第4の領域A4の表面の全体を覆っている。第2の磁気センサ46は、第2のコーティング層81Bにより覆われている。
【0045】
図6に示すように、第1のコーティング層81Aの厚みT1は、均一である。図7に示すように、第2のコーティング層81Bの厚みT2は、均一である。図6および図7に示すように、第1のコーティング層81Aの厚みT1と、第2のコーティング層81Bの厚みT2とは、基本的には、同じ厚みを有している。
【0046】
第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとは、異なる液体浸透性を有する異なる種類の材料により構成されている。材料は、たとえば合成樹脂である。このため、第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとは、異なる液体浸透性を有する。液体浸透性は、液体が浸透していく性質である。液体浸透性が高いほど、液体が浸透しやすい。液体浸透性が低いほど、液体が浸透しにくい。
【0047】
第1のコーティング層81Aを構成する合成樹脂は、たとえばフッ素系樹脂である。第2のコーティング層81Bを構成する合成樹脂は、たとえばウレタン系樹脂である。フッ素系樹脂の液体浸透性は、ウレタン樹脂の液体浸透性よりも低い。このため、本実施の形態において、第1のコーティング層81Aの液体浸透性は、第2のコーティング層81Bの液体浸透性よりも低い。
【0048】
<基板23の製造方法>
つぎに、基板23の製造方法の一例を説明する。第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46が設けられた基板23は、予め用意される。
【0049】
まず、基板23の第3の領域A3の表面に、第1のコーティング剤を塗布する。第1のコーティング剤は、たとえば溶融した合成樹脂である。合成樹脂は、フッ素系樹脂を含む。溶融した合成樹脂である第1のコーティング剤が冷却固化することにより、第1のコーティング層81Aが形成される。
【0050】
つぎに、基板23の第4の領域A4の表面に、第2のコーティング剤を塗布する。第2のコーティング剤は、第1のコーティング剤と異なる成分を有する。第2のコーティング剤は、溶融した合成樹脂であって、第1のコーティング剤の成分である合成樹脂とは異なる種類の合成樹脂である。溶融した合成樹脂である第2のコーティング剤が冷却固化することにより、第2のコーティング層81Bが形成される。
【0051】
以上で、基板23の製造が完了となる。
なお、第1のコーティング層81Aおよび第2のコーティング層81Bは、つぎのようにして形成してもよい。すなわち、溶媒に合成樹脂を溶かしてなるコーティング剤を用意する。そして、まず、コーティング剤を第3の領域A3の表面および第4の領域A4の表面に塗布する。この後、塗布したコーティング剤を乾燥させる。これにより、第1のコーティング層81Aおよび第2のコーティング層81Bが形成される。
【0052】
<本実施の形態の作用および効果>
本実施の形態は、つぎの作用および効果を奏する。
(1)第1の磁気センサ45を覆う第1のコーティング層81Aと、第2の磁気センサ46を覆う第2のコーティング層81Bとは、異なる液体浸透性を有する異なる種類の合成樹脂材料により構成されている。このため、第1のコーティング層81Aと、第2のコーティング層81Bとの液体浸透性は異なる。すなわち、第1のコーティング層81Aに付着した液体が第1の磁気センサ45に到達するために必要とされる時間と、第2のコーティング層81Bに付着した液体が第2の磁気センサ46に到達するために必要とされる時間とは、異なる。したがって、液体が第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46に、同じタイミングで到達することが抑えられる。ひいては、第1の磁気センサ45および第2の磁気センサ46に、同じタイミングで異常が発生することを抑制できる。
【0053】
(2)第1のコーティング層81Aは、フッ素系樹脂により構成されている。第2のコーティング層81Bは、ウレタン系樹脂により構成されている。合成樹脂を使用することにより、第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとを、より安価に形成することができる。
【0054】
(3)第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとは、同じ厚みを有している。第1のコーティング層81Aと、第2のコーティング層81Bとでは、液体の浸透性が異なる。このため、第1のコーティング層81Aの厚みT1と、第2のコーティング層81Bの厚みT2とが同じであっても、第1のコーティング層81Aに付着した液体が第1の磁気センサ45に到達する時間と、第2のコーティング層81Bに付着した液体が第2の磁気センサ46に到達する時間とを異ならせることができる。
【0055】
(4)第1のコーティング層81Aは、基板23の第3の領域A3の全体を覆っている。第2のコーティング層81Bは、基板23の第4の領域A4の全体を覆っている。基板23の第3の領域A3の全体を第1のコーティング層81Aで覆うことにより、第1の系統の電子部品である第1の磁気センサ45を第1のコーティング層81Aで覆うことができる。また、基板23の第4の領域A4の全体を第2のコーティング層81Bで覆うことにより、第2の系統の電子部品である第2の磁気センサ46を第2のコーティング層81Bで覆うことができる。
【0056】
(5)たとえば、液体が、第1の磁気センサ45よりも先に第2の磁気センサ46に到達した場合、たとえ第2の磁気センサ46の正常動作が損なわれたとしても、第1の磁気センサ45は正常に動作を継続する。第1の磁気センサ45により生成される電気信号に基づき、回転軸11のトルクを検出することができる。また、液体が、第2の磁気センサ46よりも先に第1の磁気センサ45に到達した場合、たとえ第1の磁気センサ45の正常動作が損なわれたとしても、第2の磁気センサ46は正常に動作を継続する。第2の磁気センサ46により生成される電気信号に基づき、回転軸11のトルクを検出することができる。このため、センサ装置10の動作信頼性が向上する。
【0057】
<他の実施の形態>
本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1のコーティング層81Aの厚みT1と、第2のコーティング層81Bの厚みT2とは、異なっていてもよい。第1のコーティング層81Aに付着した液体が第1の磁気センサ45に到達する時間と、第2のコーティング層81Bに付着した液体が第2の磁気センサ46に到達する時間とが異なればよい。
【0058】
・合成樹脂材料は、先のフッ素系樹脂およびウレタン系樹脂の他、たとえば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、およびシリコン系樹脂を使用してもよい。第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bとが、異なる液体浸透性を有する異なる種類の合成樹脂材料により構成されていればよい。このようにしても、第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bの液体浸透時間を異ならせることができる。
【0059】
・第1のコーティング層81Aと第2のコーティング層81Bを構成する材料は、合成樹脂材料に限らない。たとえば、二酸化ケイ素などのガラス成分を主体としたコーティング剤を使用して、コーティング層を形成するようにしてもよい。コーティング層は、ガラス質の被膜となる。
【0060】
・センサ装置10は、回転軸11の回転角度を検出する回転角センサであってもよい。この場合、たとえば、回転軸11の外周面には、主動歯車が一体回転可能に装着される。第2の収容室53の内部には、2つの従動歯車が回転可能に支持される。これら従動歯車の歯数は互いに異なっている。基板23には、各従動歯車の回転角度に応じた電気信号を生成するセンサが設けられる。従動歯車は、第1の収容室52と第2の収容室53との境界部分に設けられる開口部を介して、主動歯車に噛み合う。このため、主動歯車の回転に連動して、2つの従動歯車は回転する。2つの従動歯車の歯数は互いに異なっているため、主動歯車の回転角度に対する2つの従動歯車の回転角度は、それぞれ異なる。このため、第1のセンサおよび第2のセンサが生成する電気信号の位相は、互いに異なる。操舵装置の制御装置は、センサにより生成される電気信号に基づき、回転軸11の回転角度を検出する。たとえば、第1のセンサを覆う第1のコーティング層と、第2のセンサを覆う第2のコーティング層とを、異なる液体浸透性を有する異なる種類の材料で構成することにより、先の(1)~(5)欄に記載の効果を得ることができる。
【0061】
・本実施の形態は、センサ装置10の基板23に限らず、2系統の電子部品を有する基板全般に適用することが可能である。
・第1のコーティング層81Aおよび第2のコーティング層81Bを含め、コーティング層が設けられる基板23の領域のサイズあるいは形状は、基板23上の電子部品の個数あるいは配置などに応じて、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…センサ装置
11…回転軸
21…永久磁石
22…磁気ヨーク
23…基板
45…第1の磁気センサ(電子部品)
46…第2の磁気センサ(電子部品)
61…第1の集磁リング
62…第2の集磁リング
81A…第1のコーティング層
81B…第2のコーティング層
A1…第1の領域
A2…第2の領域
A3…第3の領域
A4…第4の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7