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  • 特開-気密端子 図1
  • 特開-気密端子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110688
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】気密端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20230802BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H01R9/16 101
C04B37/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012282
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伊織
【テーマコード(参考)】
4G026
5E086
【Fターム(参考)】
4G026BA03
4G026BA14
4G026BA16
4G026BA17
4G026BB21
4G026BF16
4G026BF24
4G026BH13
5E086PP03
5E086PP39
5E086PP47
5E086QQ05
5E086QQ06
5E086QQ12
(57)【要約】
【課題】高温および低温環境下で繰り返し使用しても、絶縁部材にクラックが発生しにくく、パーティクルも発生しにくい気密端子を提供する。
【解決手段】本開示に係る気密端子は、いずれか一方の端面の内周側に、第1段差部を有する筒状の絶縁部材と、絶縁部材の内周側に挿入され、軸方向の長さが絶縁部材よりも短い柱状の導電部材と、導電部材の外周面および第1段差部を形成する第1段差面に接合された鍔付き環状部材とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれか一方の端面の内周側に、第1段差部を有する筒状の絶縁部材と、
該絶縁部材の内周側に挿入され、軸方向の長さが前記絶縁部材よりも短い柱状の導電部材と、
該導電部材の外周面および前記第1段差部を形成する第1段差面に接合された鍔付き環状部材とを備える、
気密端子。
【請求項2】
前記鍔付き環状部材は、前記第1段差部を形成する第1内周面に接合されている、請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記導電部材は、前記第1段差部の側の端面の外周側に第2段差部を有し、前記鍔付き環状部材は、前記第2段差部を形成する外周面に接合されている、請求項1または2に記載の気密端子。
【請求項4】
前記鍔付き環状部材は、前記第2段差部を形成する第2段差面に接合されている、請求項3に記載の気密端子。
【請求項5】
前記導電部材は、少なくとも前記第1段差部が設けられた側に凹部を有する、請求項1~4のいずれかに記載の気密端子。
【請求項6】
前記鍔付き環状部材の平均線膨張率は、前記絶縁部材の平均線膨張率と前記導電部材の平均線膨張率との間である、請求項1~5のいずれかに記載の気密端子。
【請求項7】
前記鍔付き環状部材は、環状の基部と該基部の径方向に延出する鍔部とを有し、前記基部の外周面と前記鍔部の前記基部側に位置する環状面とが曲面を介して接続されている、請求項1~6のいずれかに記載の気密端子。
【請求項8】
前記基部の外周面と該外周面に対向する前記絶縁部材の第2内周面との間に、環状の空隙部が介在している、請求項7に記載の気密端子。
【請求項9】
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の第2内周面から前記絶縁部材の軸心に向かって伸び、前記環状の空隙部の一方の端部を封止する第3段差面を有する、請求項8に記載の気密端子。
【請求項10】
前記絶縁部材の第2内周面および前記第3段差面の少なくとも一方が焼成面である、請求項9に記載の気密端子。
【請求項11】
前記導電部材は、前記軸方向の中心に対して、前記鍔付き環状部材が接合されている側とは反対側の端部の外周面が、前記絶縁部材とは非接合で当接している、請求項1~10のいずれかに記載の気密端子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の気密端子を備える、冷却装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の気密端子を備える、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒の蒸発や凝縮作用を利用して半導体素子などの発熱体を冷却する冷却装置では、半導体素子と外部回路との導通を行うために、気密端子が使用されている。高価な低熱膨張金属を使用することなく、接合部分を少なくすることでコストを低減するために、特許文献1には、無酸素銅からなる中心電極と、アルミナ質セラミックスからなる絶縁筒とを備える気密端子が記載されている。
【0003】
しかし、無酸素銅の平均線膨張率とアルミナの平均線膨張率との差は大きい。そのため、無酸素銅からなる中心電極と、アルミナ質セラミックスからなる絶縁筒とをろう材で接合すると、接合直後に絶縁筒にクラックが入りやすくなる。接合直後にクラックが入らなくても、高温および低温環境下で繰り返し使用すると、絶縁筒にクラックが入りやすい。
【0004】
さらに、特許文献2には、半導体素子を冷媒液と共に密閉容器内に収納し、半導体素子を冷却する沸騰冷却装置が記載されている。この沸騰冷却装置には、密閉容器壁にブッシングが設置され、ブッシングの一部である絶縁筒の密閉容器外側にその絶縁筒を貫通する貫通導体を接合し、絶縁筒の密閉容器側内壁部と貫通導体との間に隙間が設けられている。特許文献2には、この隙間に絶縁チューブを挿入して、貫通導体と密閉容器壁と絶縁する構造が記載され、絶縁チューブの一例として、四フッ化エチレンチューブが記載されている。
【0005】
しかし、四フッ化エチレンチューブなどの絶縁チューブは耐クリープ性が低いため、経年劣化を起こしやすい。さらに、経年劣化した絶縁チューブは、パーティクルが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-245364号公報
【特許文献2】特開昭61-168249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高温および低温環境下で繰り返し使用しても、絶縁部材にクラックが発生しにくく、パーティクルも発生しにくい気密端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る気密端子は、いずれか一方の端面の内周側に、第1段差部を有する筒状の絶縁部材と、絶縁部材の内周側に挿入され、軸方向の長さが絶縁部材よりも短い柱状の導電部材と、導電部材の外周面および第1段差部を形成する第1段差面に接合された鍔付き環状部材とを備える。
【0009】
本開示に係る冷却装置は上記の気密端子を備える。さらに、本開示に係るプラズマ処理装置は上記の気密端子を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る気密端子は、上記のような構成を有することによって、高温および低温環境下で繰り返し使用しても、絶縁部材にクラックが発生しにくい。さらに、本開示に係る気密端子は、四フッ化エチレンチューブのような樹脂製の絶縁チューブを使用していないため、パーティクルも発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る気密端子を示す断面図である。
図2図1に示す領域Xを説明するための拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態に係る気密端子を、図1および2に基づいて説明する。図1に示す一実施形態に係る気密端子10は、絶縁部材1、導電部材2および鍔付き環状部材3を含む。図1は、一実施形態に係る気密端子10を示す断面図である。
【0013】
絶縁部材1は、例えば、セラミックスのような絶縁部材で形成されている。絶縁部材1を形成しているセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化珪素窒化珪素またはサイアロンを主成分とするセラミックスなどが挙げられる。
【0014】
本明細書において「主成分」とは、セラミックスを構成する成分の合計100質量%における80質量%以上を占める成分をいう。セラミックスに含まれる各成分の同定は、CuKα線を用いたX線回折装置で行い、各成分の含有量は、例えばICP(InductivelyCoupled Plasma)発光分光分析装置または蛍光X線分析装置により求めればよい。
【0015】
絶縁部材1は筒状を有しており、筒状であれば限定されない。絶縁部材1は、例えば、円筒状、角筒状(例えば、三角筒状、四角筒状、五角筒状、六角筒状など)などの形状を有している。絶縁部材1の大きさは、気密端子10を備える装置などに応じて適宜設定すればよい。絶縁部材1の長さ(軸方向の長さ)は、例えば、40mm以上80mm以下であり、最外周の外径は10mm以上20mm以下である。角筒状の場合の外径は、最も長い外縁の長さを意味する。
【0016】
絶縁部材1には、図2に示すように、一方の端面の内周側に第1段差部11が設けられている。図2は、図1に示す領域Xを説明するための拡大説明図である。
【0017】
導電部材2は、例えば、金属のような導電性を有する素材で形成されている。導電部材2を形成している金属としては、例えば、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、Fe-Ni合金、Fe-Ni-Cr-Ti-Al合金、Fe-Cr-Al合金、Fe-Co-Cr合金、Fe-Co系合金、Fe-Co-C系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-Co系合金などが挙げられる。
【0018】
導電部材2を形成している金属が銅の場合、無酸素銅、タフピッチ銅またはりん脱酸銅であるとよい。特に、無酸素銅を選んだ場合、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅または真空溶解銅であるとよい。
【0019】
炭素鋼とは、FeとCとの合金であり、Cが0.02質量%以上2.14質量%以下の割合で含まれる。C以外にSi、Mn、PおよびSが含まれる。このような炭素鋼としては、例えば、JIS G 4051:2016で規定されるS10C、S12C、S15C、S17C、S20C、S22C、S25C、S28C、S30C、S33C、S35C、S38C、S40C、S43C、S45C、S48C、S50C、S53C、S55C、S58C、S60C、S65C、S70C、S75Cなどが挙げられる。
【0020】
低合金鋼とは、Al、B、Co、Cr、Cu、La、Mo、Nb、Ni、Pb、Se、Te、Ti、V、WおよびZrの少なくともいずれかを含み、これらの元素の含有量の合計が5質量%以下の炭素鋼をいう。
【0021】
工具鋼は、JIS G 4401:2009で規定される炭素工具鋼材およびJIS G 4404:2006で規定される合金工具鋼材をいう。
【0022】
ステンレス鋼とは、FeとCrとの合金であり、Crが10.5質量%以上の割合で含まれ、Cの含有量が1.2%以下の合金である。これら以外の成分は、例えば、ISO 15510:2014で規定される。ステンレス鋼は、例えば、SUS304、SUS304L、SUS304ULC、SUS310ULC、SUSXM15J1などが挙げられる。
【0023】
導電部材2は柱状を有しており、絶縁部材1の内周側に挿入され得る形状であれば、限定されない。導電部材2は、例えば、円柱状、角柱状(例えば、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状など)などの形状を有している。例えば、絶縁部材1が円筒状であれば、導電部材2は円柱状を有し、絶縁部材1が四角筒状であれば、導電部材2は四角柱状を有する。
【0024】
導電部材2の大きさは、絶縁部材1の内周側に挿入され得る大きさであれば限定されない。具体的には、導電部材2の長さ(軸方向の長さ)は、絶縁部材1の長さ(軸方向の長さ)よりも短く、導電部材2の最外周の外径は、絶縁部材1の内径に応じて、適宜設定される。
【0025】
鍔付き環状部材3は、図2に示すように、環状の基部31と基部31の径方向に延出する鍔部32とを有している。鍔付き環状部材3は、例えば、基部31と鍔部32とが金属などで一体的に成形されている。鍔付き環状部材3の材料となる金属としては、導電部材2と同様、例えば、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、Fe-Ni合金、Fe-Ni-Cr-Ti-Al合金、Fe-Cr-Al合金、Fe-Co-Cr合金Fe-Co系合金、Fe-Co-C系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-Co系合金などが挙げられる。
【0026】
鍔付き環状部材3は、導電部材2の外周面および絶縁部材1の第1段差部11を形成する第1段差面11aに接合されている。鍔付き環状部材3の大きさは、絶縁部材1および導電部材2の大きさに応じて、導電部材2の外周面および絶縁部材1の第1段差部11を形成する第1段差面11aに接合され得る大きさであれば、限定されない。
【0027】
導電部材2の外周面および第1段差面11aに鍔付き環状部材3を接合する接合剤がろう材である場合、このろう材は、例えば、BAg-8、BAg-8A、BAg-8B、BAg-9などの銀ろう材、Ag-Cu-Ti系の活性ろう材などである。銀ろう材を用いる場合は、予め、第1段差面11aに、第1段差面11a側からMo-Mn層、ニッケルめっき層を順次形成し、これらの層を介してろう材で接合するとよい。
【0028】
一実施形態に係る気密端子10は、上記のように絶縁部材1、導電部材2および鍔付き環状部材3を備える。そのため、一実施形態に係る気密端子10は、高温および低温環境下で繰り返し使用しても、絶縁部材にクラックが発生しにくい。さらに、一実施形態に係る気密端子10は、は、四フッ化エチレンチューブのような樹脂製の絶縁チューブを使用していないため、パーティクルも発生しにくい。
【0029】
鍔付き環状部材3は、図2に示すように、絶縁部材1の第1段差部11を形成する第1内周面11bに接合されていてもよい。このような構成によって、鍔付き環状部材3と絶縁部材1との接合面が増える。その結果、絶縁部材1と鍔付き環状部材3との接合強度を向上させることができ。さらに、得られる気密端子10の気密性も、より向上させることができる。
【0030】
鍔付き環状部材3を第1内周面11bに接合する接合剤がろう材である場合、このろう材は、例えば、BAg-8、BAg-8A、BAg-8B、BAg-9などの銀ろう材、Ag-Cu-Ti系の活性ろう材などである。銀ろう材を用いる場合は、予め、第1内周面11bに、第1内周面11b側からMo-Mn層、ニッケルめっき層を順次形成し、これらの層を介してろう材で接合するとよい。
【0031】
導電部材2には、図2に示すように、絶縁部材1に設けられた第1段差部11の側の端面の外周側に第2段差部21が設けられていてもよい。この第2段差部21を形成する外周面21bに、鍔付き環状部材3が接合されていてもよい。このような構成によって、位置決めの精度が向上し、導電部材2を安定して設けることができる。さらに、絶縁部材1の軸心側に接合位置を近づけることができるので、振動が径方向に与えられるような環境で用いられても、ろう材などの接合剤にはたらく遠心力を小さくすることができ、長期間に亘って、接合強度を維持することができる。鍔付き環状部材3を外周面21bに接合する接合剤がろう材である場合、ろう材は、例えば、BAg-8、BAg-8A、BAg-8B、BAg-9などの銀ろう材、Ag-Cu-Ti系の活性ろう材などである。
【0032】
導電部材2には、図1に示すように、少なくとも第1段差部11が設けられた側に凹部5が設けられていてもよい。このような凹部5が設けられていることによって、導電部材2と電気的に接続し得る部材を、凹部5の内部に装着することができる。さらに、装着された部材の脱離をも低減することができる。
【0033】
鍔付き環状部材3は、図2に示すように、導電部材2の第2段差部21を形成する第2段差面21aに接合されていてもよい。このような構成によって、鍔付き環状部材3と導電部材2との接合面積が増える。その結果、導電部材2と鍔付き環状部材3との接合強度を向上させることができ。さらに、得られる気密端子10の気密性も、より向上させることができる。鍔付き環状部材3を第2段差面21aに接合する接合剤がろう材である場合、例えば、BAg-8、BAg-8A、BAg-8B、BAg-9などの銀ろう材、Ag-Cu-Ti系の活性ろう材などである。
【0034】
一実施形態に係る気密端子10において、絶縁部材1の平均線膨張率、導電部材2の平均線膨張率、および鍔付き環状部材3の平均線膨張率は、特に限定されない。絶縁部材1の平均線膨張率は、例えば2.4×10-6/K以上7.5×10-6/K以下であってもよい。導電部材2の平均線膨張率は、例えば4.6×10-6/K以上17.7×10-6/K以下であってもよい。鍔付き環状部材3の平均線膨張率は、例えば4.6×10-6/K以上17.7×10-6/K以下であってもよい。本実施形態の気密端子は、特に、導電部材2の平均線膨張率が絶縁部材1の平均線膨張率よりも大きく、その差が10×10-6/K以上である場合に有効である。
【0035】
絶縁部材1の平均線膨張率はJIS R 1618:2002に準拠して求めればよい。導電部材2および鍔付き環状部材3のそれぞれの平均線膨張率は、JIS Z 2285:2003に準拠して求めればよい。但し、上記各部材のサイズが小さく、各部材から切り出した試料が上記JIS規格で規定する試料のサイズとすることができない場合、可能な限り大きく切り出した試料を平均線膨張率測定用の試料としてもよい。いずれの平均線膨張率も測定の対象とする温度範囲は、40℃以上400℃以下である。
【0036】
例えば、鍔付き環状部材3の平均線膨張率が、絶縁部材1の平均線膨張率と導電部材2の平均線膨張率との間であってもよい。各部材の平均線膨張率がこのような関係を満たす場合、各部材に応力が蓄積されにくい状態になる。その結果、このような構成を有する気密端子10を高温および低温環境下で繰り返し使用しても、長期間にわたって使用することができる。
【0037】
鍔付き環状部材3は、上述のように、環状の基部31と基部31の径方向に延出する鍔部32とを有している。図2に示すように、基部31の外周面と鍔部32の基部31側に位置する環状面とは、曲面を介して接続されていてもよい。このような構成を有していると、基部31の外周面と鍔部32の基部31側に位置する環状面とが直交している場合と比べて、高温および低温環境下で繰り返し使用しても、鍔付き環状部材3に蓄積される応力が少なくなる。その結果、このような構成を有する気密端子10は、長期間にわたって使用することができる。
【0038】
この曲面の曲率は限定されず、例えば、1.25(1/mm)以上5(1/mm)以下であってもよい。曲率を求めるには、まず、走査型電子顕微鏡を用いて、鍔付き環状部材3の軸心を含む断面全体を撮影する。撮影された画像に表示された基部31の外周面と鍔部32の基部31側に位置する環状面と介する曲面をトレースすることによって、曲面の曲率を求めればよい。
【0039】
図1および2に示すように、一実施形態に係る気密端子10において、基部31の外周面と外周面に対向する絶縁部材1の内周面との間に、環状の空隙部4が介在していてもよい。このような環状の空隙部4が存在していると、空隙部4内に絶縁部材1と鍔付き環状部材3と接合するろう材などの接合剤のフィレットを、空隙部4内に形成することができる。その結果、絶縁部材1と鍔付き環状部材3との接合面積を増やすことができ、両者の接合強度を高くすることができる。さらに、導電部材1の平均線膨張率が大きくても、この空隙部4によって膨張を吸収することができる。そのため、絶縁部材1にクラックが発生しにくくなる。
【0040】
図2に示すように、絶縁部材1は、絶縁部材1の第2内周面11cから絶縁部材1の軸心に向かって伸び、環状の空隙部4の一方の端部を封止する第3段差面41aを有していてもよい。第3段差面41aを有することによって、第3段差面41aがない場合よりも空隙部4の体積を増やすことができる。その結果、接合剤のフィレットの量を増やすことができ、絶縁部材1と鍔付き環状部材3との接合の信頼性を向上させることができる。
【0041】
絶縁部材1の第2内周面11cおよび第3段差面41aの少なくとも一方が、焼成面であってもよい。絶縁部材1の第2内周面11cおよび第3段差面41aの少なくとも一方が焼成面であれば、破砕層が絶縁部材1の第2内周面11cおよび第3段差面41aに存在しない。その結果、絶縁部材1の第2内周面11cおよび第3段差面41aに沿ってガスが流れても、粒子が脱離するおそれが低減する。
【0042】
一実施形態に係る気密端子10において、導電部材2は、絶縁部材1の軸方向の中心に対して、鍔付き環状部材3が接合されている側と反対側の端部の外周面が、絶縁部材1とは非接合で当接していてもよい。このような構成を有することによって、導電部材2と接合している側で絶縁部材1に生じる残留応力を逃がすことができる。そのため、絶縁部材1にクラックが発生しにくくなる。
【0043】
一実施形態に係る気密端子10は、種々の装置において使用される。このような装置としては、例えば、冷却装置、プラズマ処理装置、電気自動車、ハイブリッド自動車などが挙げられる。
【0044】
本開示に係る気密端子は、上述の気密端子10に限定されない。例えば、本開示に係る気密端子において、絶縁部材に設けられた第1段差部および第1段差面にメタライズ層が形成されていてもよい。上述の一実施形態に係る気密端子10では、絶縁部材1に設けられた第1段差部11および第1段差面11aにメタライズ層が形成されていないものの、このようなメタライズ層が形成されていることによって、例えば、セラミックスで形成された絶縁部材と金属で形成された鍔付き環状部材との接合強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 絶縁部材
11 第1段差部
11a 第1段差面
11b 第1内周面
11c 第2内周面
2 導電部材
21 第2段差部
21a 第2段差面
21b 第2段差部を形成する外周面
3 鍔付き環状部材
31 基部
32 鍔部
4 環状の空隙部
41a 第3段差面
5 凹部
10 気密端子
図1
図2