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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110700
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】気体圧サーボ弁
(51)【国際特許分類】
   F15B 13/043 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
F15B13/043 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012300
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】503094070
【氏名又は名称】ピー・エス・シー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝美
【テーマコード(参考)】
3H002
【Fターム(参考)】
3H002BA01
3H002BB01
3H002BB03
3H002BB07
3H002BC04
3H002BD04
(57)【要約】
【課題】振動を短時間で制振し易い気体圧サーボ弁を提供すること。
【解決手段】気体圧サーボ弁1が、スプール5の軸方向の両側の外方に設けられる気圧室12,13と、スプール5の軸方向の一方側の気圧室12の気圧とスプール5の軸方向の他方側の気圧室13の気圧に気圧差を生成する気圧差生成機構4と、気圧差生成機構4とスプール5とを連結するフィードバックばね6と、各気圧室12,13に制振流路7,8を介して連通されたタンク18,19と、を備える。制振流路7,8の内面が、第1平面部55と第1平面部55に略平行な第2平面部56とを含み、第1平面部55と第2平面部56の距離が、100μm以下になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの気体供給ポート、排気ポート、及び2つの出力ポートを有するスリーブと、
前記スリーブ内を摺動可能なスプールと、
前記スプールの軸方向の両側の外方に設けられる気圧室と、
前記スプールの軸方向の一方側の前記気圧室の気圧と前記スプールの軸方向の他方側の前記気圧室の気圧に気圧差を生成する気圧差生成機構と、
前記気圧差生成機構と前記スプールとを連結するフィードバックばねと、
前記各気圧室に制振流路を介して連通されたタンクと、を備え、
前記制振流路の内面が、第1平面部と前記第1平面部に略平行な第2平面部とを含み、
前記第1平面部と前記第2平面部の距離が、100μm以下である、気体圧サーボ弁。
【請求項2】
前記第1平面部が前記気圧室と前記制振流路の両方に連通する連通孔を有する側壁部に含まれると共に、前記第2平面部が平板部材に含まれ、
前記側壁部と前記平板部材とで挟持されると共に互いに間隔をおいて配置される複数の円環状のシムと、
前記各シムの貫通孔を貫通する軸部を有すると共に前記平板部材を前記側壁部に締結する締結手段とを更に備える、請求項1に記載の気体圧サーボ弁。
【請求項3】
前記第1平面部が前記気圧室と前記制振流路の両方に連通する連通孔を有する側壁部に含まれると共に、前記第2平面部が平板部材に含まれ、
前記制振流路が、前記連通孔の略径方向に延在する複数の制振流路部を有する、請求項1に記載の気体圧サーボ弁。
【請求項4】
前記各制振流路部の幅が略一定である、請求項3に記載の気体圧サーボ弁。
【請求項5】
前記各制振流路部の幅が前記径方向の外方側に行くにしたがって大きくなる、請求項3に記載の気体圧サーボ弁。
【請求項6】
前記側壁部の前記平板部材側の面と前記平板部材の前記側壁部側の面のうちの一方が前記径方向に延在する複数の溝を有し、
前記複数の制振流路部が、前記側壁部の前記平板部材側の面と前記平板部材の前記側壁部側の面のうちの他方が前記複数の溝の深さ方向の開口を塞ぐことで画定される、請求項3乃至5のいずれか1つに記載の気体圧サーボ弁。
【請求項7】
前記平板部材が円板形状を有し、
前記平板部材の中心が、前記連通孔の略中心に前記平板部材の厚さ方向に対向する、請求項2乃至6のいずれか1つに記載の気体圧サーボ弁。
【請求項8】
前記タンクが、円環状の開口を有するか又は円筒面に周方向に間隔をおいて配置される複数の開口を有する、請求項7に記載の気体圧サーボ弁。
【請求項9】
前記タンクが、前記スプールの内部に設けられる内部室で構成され、
前記スプールが、前記内部室と前記制振流路とを連通する連通孔を有する、請求項1に記載の気体圧サーボ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体圧サーボ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーボ弁としては、特許文献1に記載されているノズルフラッパ型の油圧サーボ弁が知られている。この油圧サーボ弁は、第1ノズルと、第1ノズルに対向する第2ノズルと、第1ノズルと第2ノズルの間を通過するように配置されるフラッパと、軸方向に移動可能なスプールを備える。この油圧サーボ弁は、スプールの軸方向の一端側に位置する第1油圧室と、スプールの軸方向の他端側に位置する第2油圧室を更に備える。第1ノズルは、第1油圧室に連通し、第1ノズルの背圧は、第1油圧室の油圧と一致する。また、第2ノズルは、第2油圧室に連通し、第2ノズルの背圧は、第2油圧室の油圧と一致する。
【0003】
このサーボ弁は、フラッパの位置を変えることで、第1ノズルの背圧と第2ノズルの背圧を変化させる。そして、その背圧の変化によって、スプールが両端から受ける力を変動させて、スプールを軸方向に移動させることで、弁の開閉を行うようになっている。このサーボ弁は、フィードバックばねが、フラッパとスプールを接続する。フラッパの位置変化によりスプールが中立位置から移動すると、それに起因して、フィードバックばねが撓み、フラッパが中立位置側に力を付与される。スプールの両端における背圧差がなくなると、フィードバックばねの働きにより、フラッパが中立位置で静止し、スプールも中立位置で静止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-032731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体サーボ弁の作動流体として気体を用いると、油圧式の場合と異なって流体漏れで搭載機器が損傷する心配がなく汎用性に優れる。しかし、フラッパとフィードバックばねを一体化した流体サーボ弁に関して、流体として気体を用いると、圧縮性流体である気体と非圧縮性流体である油との相違等によって発振現象が現われることがある。また、特に、流体サーボ弁が小型である場合、微小振動が現れることがあるが、この微小振動を短時間で制振できれば、汎用性に優れ、小型で高性能のサーボ弁を実現できる。そこで、本開示の目的は、振動を短時間で制振し易い気体圧サーボ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る気体圧サーボ弁は、2つの気体供給ポート、排気ポート、及び2つの出力ポートを有するスリーブと、前記スリーブ内を摺動可能なスプールと、前記スプールの軸方向の両側の外方に設けられる気圧室と、前記スプールの軸方向の一方側の前記気圧室の気圧と前記スプールの軸方向の他方側の前記気圧室の気圧に気圧差を生成する気圧差生成機構と、前記気圧差生成機構と前記スプールとを連結するフィードバックばねと、前記各気圧室に制振流路を介して連通されたタンクと、を備え、前記制振流路の内面が、第1平面部と前記第1平面部に略平行な第2平面部とを含み、前記第1平面部と前記第2平面部の距離が、100μm以下である。
【0007】
本発明者は、気体が100μm以下の距離に配置されると共に略平行な第1平面部と第2平面部との間を通過する場合、気体が制振効果を有するオリフィスを通過する場合との比較において振動を大幅に減衰させることができることを確認し、1実験例では、1/5以下に大幅に減衰できることを確認した。したがって、本開示によれば、振動を短時間で制振し易い気体圧サーボ弁を実現できる。
【0008】
また、本開示において、前記第1平面部が前記気圧室と前記制振流路の両方に連通する連通孔を有する側壁部に含まれると共に、前記第2平面部が平板部材に含まれ、前記側壁部と前記平板部材とで挟持されると共に互いに間隔をおいて配置される複数の円環状のシムと、前記各シムの貫通孔を貫通する軸部を有すると共に前記平板部材を前記側壁部に締結する締結手段とを更に備えてもよい。
【0009】
本構成によれば、シムの厚さを調整するだけで、第1平面部と第2平面部の距離を容易かつ精密に調整できる。したがって、所望の減衰特定を有する気体圧サーボ弁を簡単安価に作製できる。
【0010】
また、本開示において、前記第1平面部が前記気圧室と前記制振流路の両方に連通する連通孔を有する側壁部に含まれると共に、前記第2平面部が平板部材に含まれ、前記制振流路が、前記連通孔の径方向に延在する複数の制振流路部を有してもよい。
【0011】
なお、本明細書では、径方向を、連通孔の延在方向に略直交すると共に連通孔の延在方向の外方から見た平面視において連通孔に交わる直線方向として定義する。したがって、本開示では、例えば、連通孔が矩形の断面形状等を有する場合でも、径方向を定義できる。
【0012】
本構成によれば、タンクをスリーブの外部に設置できるので、制振通路の長さを長くできると共にタンクの容量を大きくでき、制振効果を高くできる。また、前記制振流路が、複数の制振流路部を有しているので、この理由からも、制振効果を高くできる。よって、それらの相乗効果で、制振性能を優れたものにできる。
【0013】
また、本開示において、前記各制振流路部の幅が略一定でもよい。
【0014】
本構成によれば、気体が気圧室からタンクに流動するときの制振性能と、気体がタンクから気圧室に流動するときの制振性能を略同一にできる。したがって、仕様によって制振性能を高くできる場合がある。
【0015】
また、本開示において、前記各制振流路部の幅が前記径方向の外方側に行くにしたがって大きくなってもよい。
【0016】
本構成によれば、気体が気圧室からタンクに流動する際に気体の流速を低下させることができ、ノイズを低減できる。
【0017】
また、本開示において、前記側壁部の前記平板部材側の面と前記平板部材の前記側壁部側の面のうちの一方が前記径方向に延在する複数の溝を有し、前記複数の制振流路部が、前記側壁部の前記平板部材側の面と前記平板部材の前記側壁部側の面のうちの他方が前記複数の溝の深さ方向の開口を塞ぐことで画定されてもよい。
【0018】
本構成によれば、側壁部の平板部材側の面と平板部材の側壁部側の面のうちの一方にエッチング等で深さが100μm以下の浅い溝を複数形成するだけで、制振性能が高い制振流路を簡単安価に形成できる。
【0019】
また、本開示において、前記平板部材が円板形状を有し、前記平板部材の中心が、前記連通孔の略中心に前記平板部材の厚さ方向に対向してもよい。
【0020】
本構成によれば、長さが略同一の複数の制振流路部を形成し易い。よって、ノイズを低減し易く、制振性能も高くし易い。
【0021】
また、前記タンクが円環状の開口を有するか又は円筒面に周方向に間隔をおいて配置される複数の開口を有してもよい。
【0022】
本構成によれば、放射状に互いに異なる方向に径方向に延びる複数の制振流路部を有する場合にも、複数の制振流路部からの気体を容易にタンク内に流動させることができる。
【0023】
また、本開示において、前記タンクが、前記スプールの内部に設けられる内部室で構成され、前記スプールが、前記内部室と前記制振流路とを連通する連通孔を有してもよい。
【0024】
本構成によれば、コンパクトでしかも制振性能が高い気体圧サーボ弁を実現し易い。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、振動を短時間で制振し易い気体圧サーボ弁を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態の気体圧サーボ弁の模式断面図である
図2】気圧差生成機構の動作について説明する図である。
図3】気圧差生成機構の動作について説明する図である。
図4】気圧差生成機構の動作について説明する図である。
図5】気体圧サーボ弁の動作について説明する模式断面図である。
図6】気体圧サーボ弁の動作について説明する模式断面図である。
図7図1における第1制振流路及び第1タンク周辺の拡大断面図である。
図8】第1制振流路の形成方法について説明する図である。
図9】全ての締結手段が挿通されると共に各締結手段の軸部がシムの貫通孔を通過している状態の平板部材を第1側壁部側から見たときの平面図である。
図10】参考例の気体圧サーボ弁における図7に対応する模式断面図である。
図11】変形例の平板部材における第1側壁部側の面を示す平面図である。
図12】他の変形例の平板部材における図11に対応する平面図である。
図13】別の変形例の平板部材における図11に対応する平面図である。
図14】他の変形例の気体圧サーボ弁の軸方向の模式断面図である
図15】別の変形例の気体圧サーボ弁のスプール周辺の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、気圧サーボ弁で用いられる気体は、如何なる気体でもよいが、当該気体としては、空気、又は不活性ガスを好適に用いることができ、不活性ガスの例としては、アルゴンや窒素が挙げられる。また、以下の説明及び図面において、X方向は、スプール5の軸方向であり、Y方向は、以下で説明する中立位置でフラッパ21が延在する方向である。X方向は、Y方向に直交する。また、以下では、径方向を、以下に説明する連通孔43の延在方向に略直交すると共に連通孔43の延在方向の外方から見た平面視において連通孔43に交わる直線方向として定義する。したがって、連通孔43が、如何なる断面形状を有する場合でも、径方向を定義することができる。また、径方向の内方側とは、径方向の連通孔側のことを言い、径方向の外方側とは、径方向における連通孔から離れる側のことを言うものとする。
【0028】
図1は、本開示の一実施形態の気体圧サーボ弁1をX方向とY方向を含む平面で切断したときの模式断面図である。図1に示すように、気体圧サーボ弁1は、ノズルフラッパ型のサーボ弁である。気体圧サーボ弁1は、カバー2、下側筐体3、気圧差生成機構4、スプール5、フィードバックばね6、第1制振流路7、第2制振流路8、第1ノズル9、第2ノズル10、スリーブ11、第1気圧室12、第2気圧室13、第1タンク18、及び第2タンク19を備える。
【0029】
気圧差生成機構4は、アーマチュア20、フラッパ21、第1コイル22、第2コイル23、第1背圧路15、第2背圧路16、断面コ字状の上部磁極25、及び断面コ字状の下部磁極26を有する。アーマチュア20とフラッパ21は、一体化され、T字状のアーマチュア・フラッパを構成する。アーマチュア20は、中立位置で、Y方向に細長く延びる磁性体アームである。上部磁極25及び下部磁極26は、上部磁極25の凹部25aと下部磁極26の凹部26aがY方向に対向している状態で、間隔をおいてY方向に対向配置される。アーマチュア20の両端部20a,20bは、上部磁極25のポール部25bと下部磁極26のポール部26bによって形成される磁気ギャップの間に配置される。
【0030】
第1コイル22は、アーマチュア20の中心よりも一方側に巻回され、第2コイル23は、アーマチュア20の中心よりも他方側に巻回される。第1コイル22及び第2コイル23から引き出された4本のリード線は、気体圧サーボ弁1の外部に引き出され、図示しない制御装置に含まれる駆動回路28に電気的に接続される。気圧差生成機構4は、制御装置によって制御された駆動回路28によって駆動される。
【0031】
フラッパ21は、カバー2の内部空間と下側筐体3の内部空間に渡って配置され、中立位置でY方向に延在する中空管である。フィードバックばね6は、フラッパ21の中空管の内部に配置される部分を有し、中立位置でY方向に延在する弾性軸である。フィードバックばね6の上端部は、中空のフラッパ21の内周面に固定され、フィードバックばね6の下端部は、スプール5の中央部に接続される。
【0032】
次に、図2図4を用いて、気圧差生成機構4の動作について説明する。図2に示すように、例えば、上部磁極25の2つのポール(端部)25bは、N極に極磁され、下部磁極26の2つのポール(端部)26bは、反対のS極に極磁される。ここで、2つのコイル22,23に流れる電流の向きを制御することで、右ねじの法則により、アーマチュア20の一方側端部20aと他方側端部20bに反対の磁極を生成させることができる。2つのコイル22,23に流れる電流の向きを制御することで、図3に示すように、上部磁極25及び下部磁極26との間に働く引力及び斥力に基づいて、一方側端部20a及び他方側端部20bに、矢印Aに示す方向か矢印Bに示す方向の力を付与することができる。
【0033】
したがって、図4に示すように、アーマチュア20を、固定中心Sを支点として、矢印Cに示す時計回りの方向か、又は矢印Dに示す反時計回りの方向に回動でき、フラッパ21を、X方向に直交しているY方向に延在している中立位置から、固定中心Sを支点として、矢印Cに示す時計回りの方向か、又は矢印Dに示す反時計回りの方向に回動させることができる。その結果、フラッパ21及びフィードバックばね6を中立位置からX方向の一方側又は他方側に傾けることができる。なお、2つのコイル22,23の両方に電流が流れていない状態では、アーマチュア20が着磁せず、アーマチュア20と、上部磁極25及び下部磁極26との間に力が働かず、アーマチュア20がX方向に平行に延在する。2つのコイル22,23の両方に電流が流れていない状態におけるアーマチュア20の位置が中立位置である。
【0034】
再度、図1を参照して、第1ノズル9及び第2ノズル10は、X方向に延在する。第1ノズル9と、第2ノズル10は、フラッパ21を挟んで互いに向い合って配置される。第1ノズル9及び第2ノズル10は、所定の供給気体圧Psを有する気体供給源からの気体を先端のノズル口からX方向に沿ってフラッパ21に噴出する。気体供給源と、第1ノズル9の間には、第1固定絞り30が設けられ、気体供給源と、第2ノズル10の間には、第2固定絞り31が設けられる。したがって、第1ノズル9及び第2ノズル10には、所定の供給気体圧Psを有する気体供給源から第1固定絞り30及び第2固定絞り31によって絞られた後の気体が供給される。第1固定絞り30と第1ノズル9との間からは第1背圧路15が分岐し、第2固定絞り31と第2ノズル10との間からは第2背圧路16が分岐する。
【0035】
スリーブ11は、下側筐体3の内部空間に配置される筒形の部材である。スリーブ11の筒形の内壁面は、精密に加工されてスプール5を摺動可能に支持するスプール摺動空間を画定する。筒形の内壁面の断面形状は、矩形状等でもよいが、円形状である場合について説明する。したがって、スリーブ11は、円形断面の貫通穴の内壁面を有し、その円形断面の穴の中をスプール5が摺動する。第1気圧室12は、下側筐体3におけるスプール5のX方向一方側に設けられ、第2気圧室13は、下側筐体3におけるスプール5のX方向他方側に設けられる。第1背圧路15は、第1気圧室12に連通し、第2背圧路16は、第2気圧室13に連通する。
【0036】
スリーブ11は、外周面と内周面の間を貫通して気体が流通する4種類のポートを有する。詳しくは、スリーブ11は、第1気体供給ポートPs1、第2気体供給ポートPs2、第1出力ポートCY1、第2出力ポートCY2、及び排気ポートExを有する。下側筐体3の底面側には、スリーブ11における、第1気体供給ポートPs1、第2気体供給ポートPs2、第1出力ポートCY1、第2出力ポートCY2、排気ポートExに対応して、4つの外部接続口(図示せず)が設けられる。スリーブ11の5つのポートが4つの外部接続口に対応するのは、気体供給ポートPs1,Ps2に連通する2つの通路を下側筐体3内で連結して1つの通路にしたためである。
【0037】
気体供給ポートPs1,Ps2に対応する外部接続口は、図示しない気体供給源に接続され、所定の供給気体圧Psの気体が気体圧サーボ弁1に対して供給される。第1出力ポートCY1と第2出力ポートCY2に対応する2つの外部接続口は、図示しない外部負荷の2つの入力ポートに接続される。外部負荷は、例えば、各種機器に装備される気体圧弁である。気体圧サーボ弁1で使用済みの気体は、排気ポートExに対応する外部接続口から排気される。排気された気体は、回収タンクに戻され、あるいはそのまま大気に開放される。
【0038】
スプール5は、スリーブ11の貫通穴の内壁面を摺動可能な外径を複数の有する複数のランドと、ランドよりも小さな外径を有して隣接するランドの間を接続する複数のステムとを有する軸体である。スプール5は、第1ランド34、第2ランド35、第3ランド36、及び第4ランド37を有する。第2ランド35と第3ランド36との間のステム39の中心には、フィードバックばね6の下端部が接続されている。各ランド34~37の間には、気体圧室が形成される。
【0039】
図1に示す中立位置では、スリーブ11とスプール5の間に3つの気体圧室が形成される。詳しくは、中立位置では、第2ランド35はスリーブ11の第1出力ポートCY1を閉じ、第3ランド36は、スリーブ11の第2出力ポートCY2を閉じる。また、中立位置では、第1ランド34と第2ランド35との間の気体圧室は、スリーブ11の第1気体供給ポートPs1に連通し、第3ランド36と第4ランド37の間の気体圧室は、スリーブ11の第2気体供給ポートPs2に連通する。また、中立位置では、第2ランド35と第3ランド36の間の気体圧室は、スリーブ11の排気ポートExに連通するようになっている。
【0040】
以上の構成において、気体圧サーボ弁1は、次のように弁の開閉動作を行うようになっている。先ず、中立位置では、制御装置の駆動回路84からコイル22,23に駆動電流が供給されず、アーマチュア20は着磁されない。そして、フラッパ21は、第1ノズル9と第2ノズル10の中間に位置する。したがって、気体供給源から供給気体圧Psの気体が第1ノズル9及び第2ノズル10に供給されても、第1ノズル9の背圧及び第2ノズル10の背圧は同じで、第1気圧室12と第2気圧室13の気圧は、同一になる。よって、スプール5は、フィードバックばね6がY方向に平行に延在する中立位置に存在し、その結果、第1出力ポートCY1は、第2ランド35によって閉じられ、第2出力ポートCY2は、第3ランド36によって閉じられる。
【0041】
一方、コイル22,23にアーマチュア20が図3に矢印Aで示す方向に傾く方向の電流を流したとする。すると、図5に示すように、アーマチュア20が矢印Aで示す方向に回転し、それに伴って、アーマチュア20と一体化しているフラッパ21が回転中心の周りに回転し、フラッパ21が、中立位置よりも第2ノズル10側に近接し、中立位置よりも第1ノズル9から遠ざかる。すると、それに伴って、第1ノズル9の背圧及び第2ノズル10の背圧が変化し、図5の例では、(第2ノズル10の背圧)>(第1ノズル9の背圧)となる。第1ノズル9の背圧は、第1背圧路15によって第1気圧室12に導かれ、第2ノズル10の背圧は、第2背圧路16によって第2気圧室13に導かれる。
【0042】
これにより、スプール5の軸方向の両端に懸る圧力に差が生じるので、その圧力差に応じてスプール5は軸方向に移動し、図5に示す例では、X方向における紙面の右側に移動する。この移動によって、第3ランド36が第2出力ポートCY2を開き、第2気体供給ポートPS2が第2出力ポートCY2と連通する。また、第2ランド35が第1出力ポートCY1を開き、排気ポートExが第1出力ポートCY1と連通する。
【0043】
スプール5のX方向右側への移動に伴い、フィードバックばね6の下端部もX方向右側に移動する。これによってフィードバックばね6がX方向右側に撓むので、その弾性反力がX方向左側に作用する。つまり、フィードバックばね6の弾性反力は、スプール5をX方向左側へ戻すように生じる。アーマチュア20がフィードバックばね6の歪に起因してフラッパ21から受けるX方向右側の力と、アーマチュア20が上部磁極25及び下部磁極26から受けるX方向左側の力が一致すると、フィードバックばね6がY方向に対してY方向下側に行くにしたがってX方向右側に傾いている状態で、アーマチュア20が静止してスプール5が釣合状態となり、スプール5が静止する。
【0044】
図6は、スプール5のX方向の移動が停止した釣合状態を示す図である。釣合状態において、第2出力ポートCY2には、釣合状態における第3ランド36の位置で定まる第2出力ポートCY2の開口度に応じた流量Qの気体が第2気体供給ポートPS2側から流れ込む。流量Qは、駆動回路からコイル22,23に供給される駆動電流に応じた値となる。また、第1出力ポートCY1においては、釣合状態における第2ランド35の位置で定まる第1出力ポートCY1の開口度に応じ、負荷側から排気ポートExに向けて排気が行われる。
【0045】
なお、アーマチュア20が図3に矢印Bで示す方向に回動した場合は、図5図6で説明した場合との比較で、スプール5がX方向右側でなくて、X方向左側に移動する点のみが、異なり、動作は、図5図6で説明した場合と同様である。この場合には、第1出力ポートCY1が第1気体供給ポートPS1と連通し、第2出力ポートCY2が排気ポートExと連通する。
【0046】
次に、第1制振流路7と第1タンク18の構造について説明する。なお、第2制振流路8と第2タンク19の構造は、制振流路7と第1タンク18の構造と同一であるので、その説明は、省略する。図7は、図1における第1制振流路7及び第1タンク18周辺の拡大断面図である。図7に示すように、第1気圧室12のX方向の内面を画定する側壁40は、第1側壁部41と第2側壁部42を有する。第1側壁部41は、第1気圧室12と第1制振流路7の両方に連通すると共にX方向に延在する連通孔43を有する。なお、本実施形態では、連通孔43が円筒孔であるが、連通孔43は、如何なる形状でもよく、例えば、断面形状が矩形状等でもよい。
【0047】
気体圧サーボ弁1は、平板部材の一例としての円板形状のディスク45を備える。第1側壁部41における第1気圧室12側とは反対側の外面41aは、X方向に略直交する平面になっている。ディスク45は、その中心が連通孔43の中心にX方向に対向している状態で、締結手段(例えば、ボルト)46で第1側壁部41に固定される。詳しくは、図8に示すように、ディスク45は、周方向に間隔をおいて配置されると共に略同じ径方向位置に位置する複数の締結手段46で第1側壁部41に固定される。この固定は、第1側壁部41の外面41aとディスク45の間に円環状のシム48を挟持した状態で行われる。
【0048】
各締結手段46の軸部46aは、シム48の貫通孔48aを通過する。ディスク45の外面41a側の面は、平面45aになっており、X方向に略直交する。外面41aは、平面45aに略平行になっている。第1側壁部41の外面41aとディスク45の平面45aの間には、シム48の厚さに一致するX方向の隙間が生じる。このX方向の隙間は、100μm以下に設定され、好ましくは、50μm以下に設定され、更に好ましくは、30μm以下に設定され、最も好ましくは20μm以下(例えば、5μm以上15μm以下)に設定される。外面41aのうちでシム48でなくて平面45aに対向する部分は、第1平面部55を構成し、平面45aにおいてシム48でなくて外面41aに対向する部分は、第2平面部56を構成する。
【0049】
図9は、全ての締結手段46が挿通されると共に締結手段46の軸部46aがシム48の貫通孔48aを通過している状態のディスク45を第1側壁部41側から見たときの平面図である。なお、図9において円の点線で囲まれた領域80は、連通孔43にX方向に対向する領域である。図9に示すように、外面41aとディスク45との間における周方向に隣り合うシム48の間に気体が流動する制振流路7が存在する。
【0050】
図9に示す例では、周方向に等間隔に配置される3つのシム48が存在するため、制振流路7は、周方向に等間隔に位置する3つの制振流路部7aを有する。各制振流路部7aは、略径方向に延在する。図7に示すように、第2側壁部42は、第1側壁部41側の平面部に円板状の凹部42aを有している。この凹部42aの内径は、ディスク45の外径よりも大きく、凹部42aの深さは、ディスク45の厚さよりも大きくなっている。第2側壁部42は、凹部42aの中心軸がディスク45の中心軸に略一致している状態で、第2側壁部42は、第1側壁部41に密接した状態で固定される。
【0051】
このため、図7に示すように、側壁40内に断面略コ字状の室が生じる。この室が、第1タンク18を構成する。第1タンク18は、円筒外周面18aを有する。また、第1タンク18は、円環状の開口18bを有する。この構成により、第1気圧室12は、連通孔43、制振流路7を介して第1タンク18に連通する。なお、図7に示すように、気体圧サーボ弁1は、第1Oリング61と、第2Oリング62とを備える。第1Oリング61は、気体が下側筐体3(図1参照)と第1側壁部41との間から漏れるのを防止し、第2Oリング62は、気体が第1側壁部41と第2側壁部42との間から漏れるのを防止する。
【0052】
以上、気体圧サーボ弁1は、2つの気体供給ポートPS1,PS2、排気ポートEx、及び2つの出力ポートCY1,CY2を有するスリーブ11と、スリーブ11内を摺動可能なスプール5と、スプール5の軸方向の両側の外方に設けられる気圧室12,13と、スプール5の軸方向の一方側の気圧室12の気圧とスプール5の軸方向の他方側の気圧室13の気圧に気圧差を生成する気圧差生成機構4と、気圧差生成機構4とスプール5とを連結するフィードバックばね6と、各気圧室12,13に制振流路7,8を介して連通されたタンク18,19と、を備える。また、制振流路7,8の内面が、第1平面部55と第1平面部55に略平行な第2平面部56とを含み、第1平面部55と第2平面部56の距離が、100μm以下になっている。
【0053】
図10は、参考例の気体圧サーボ弁601における図7に対応する模式断面図である。気体圧サーボ弁601は、制振流路の替わりにオリフィス607を用いている点が、上記実施形態と異なる。参考例の気体圧サーボ弁601も、オリフィス607で気体の振動を抑制でき、高性能の気体圧サーボ弁601を実現し易い。
【0054】
係る背景において、本発明者は、気体が制振効果を有するオリフィス607を通過してタンク609に到達する場合との比較において、気体が100μm以下の距離に配置されると共に略平行な第1平面部55と第2平面部56との間を通過した場合、振動を大幅に減衰させることができることを確認し、1実験例では、オリフィス607を用いた場合との比較で、振動を単位時間当り1/5以下に大幅に減衰できることを確認した。また、1実験例では、振動を制振できるまでの時間も、オリフィス607を用いた場合との比較で1/5以下の時間に短縮できることを確認した。したがって、本開示によれば、振動を短時間で制振し易い気体圧サーボ弁1を実現できる。
【0055】
また、第1平面部55と第2平面部56の距離が、50μm以下であってもよい。
【0056】
本構成によれば、特に、手の平に乗るような小型の気体圧サーボ弁1において、微小振動を効果的に減衰させることができ、小型で使い勝手が良くしかも高性能の気体圧サーボ弁1を実現できる。
【0057】
また、第1平面部55が気圧室12,13と制振流路7,8の両方に連通する連通孔43を有する第1側壁部41に含まれると共に、第2平面部56がディスク(平板部材)45に含まれてもよい。また、気体圧サーボ弁1が、第1側壁部41とディスク45とで挟持されると共に互いに間隔をおいて配置される複数の円環状のシム48と、各シム48の貫通孔48aを貫通する軸部46aを有すると共にディスク45を第1側壁部41に締結する締結手段46とを更に備えてもよい。
【0058】
本構成によれば、シム48の厚さを調整するだけで、第1平面部55と第2平面部56の距離を容易かつ精密に調整できる。したがって、所望の減衰特定を有する気体圧サーボ弁1を簡単安価に作製できる。
【0059】
また、第1平面部55が気圧室12,13と制振流路7,8の両方に連通する連通孔43を有する第1側壁部41に含まれると共に、第2平面部56がディスク45に含まれてもよい。また、制振流路7,8が、連通孔43の略径方向に延在する複数の制振流路部7aを有してもよい。
【0060】
本構成によれば、タンク18,19をスリーブ11の外部に設置できるので、タンク18,19の容量を大きくでき、制振効果を高くできる。また、制振流路7,8が、複数の制振流路部7aを有しているので、制振効果を高くできる。よって、それらの相乗効果で、制振性能を優れたものにし易い。
【0061】
また、ディスク45が円板形状を有し、ディスク45の中心が、連通孔43の略中心にディスク45の厚さ方向に対向してもよい。
【0062】
本構成によれば、長さが略同一の複数の制振流路部7aを形成し易い。よって、ノイズを低減し易く、制振性能も高くし易い。
【0063】
また、タンク18,19が円環状の開口18bを有してもよい。
【0064】
本構成によれば、制振流路7,8が放射状に互いに異なる方向に略径方向に延びる複数の制振流路部51aを有する場合に、複数の制振流路部51aからの気体を容易にタンク18,19内に流動させることができる。
【0065】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、2つの平面部55,56の間にシム48を挟持することで、2つの平面部55,56の間に制振流路7,8を設ける場合について説明した。しかし、側壁部の平板部材側の面と平板部材の側壁部側の面のうちの一方が径方向に延在する複数の溝を有し、側壁部の平板部材側の面と平板部材の側壁部側の面のうちの他方が複数の溝の深さ方向の開口を塞ぐことで複数の制振流路部を画定してもよい。
【0067】
詳しくは、例えば、円板状のディスク45の替わりに、図11に第1側壁部41側の面145aを示す略円板状の変形例のディスク145を用いてもよい。ディスク145の面145aは平面である。ディスク145は、面145aにおいて連通孔43に対向する平面視において円形の中心部に円板状の凹部146を有する。また、ディスク145は、径方向に延在する複数の溝147を有する。複数の溝147の深さは、同一である。各溝147の底面は、X方向(図11には、図示せず)に直交する平面である。各溝147は、凹部146に連通する。
【0068】
各溝147の深さは、100μm以下であり、50μm以下であると好ましく、30μm以下であると更に好ましい。ディスク145は、ディスク145を第1側壁部41に固定するための締結手段を挿通する締結手段挿通孔135を有する。図示しない締結手段を用いてディスク145を第1側壁部41に固定することで、第1側壁部41のディスク145側の平面で各溝147の深さ方向の開口を隙間なく塞ぐ。この固定により、複数の溝147の存在位置に複数の制振流路部107を形成できる。
【0069】
本構成によれば、第1側壁部41のディスク145側の面とディスク145の第1側壁部41側の面のうちの一方にエッチング等で深さが100μm以下の浅い溝147を複数形成するだけで、制振性能が高い制振流路を簡単安価に形成できる。
【0070】
また、図11に示すように、各制振流路部107の幅が略一定でもよい。
【0071】
本構成によれば、気体が気圧室12,13からタンク18,19に矢印αで示す方向に流動するときの制振性能と、気体がタンク18,19から気圧室12,13に矢印βで示す方向に流動するときの制振性能を略同一にできる。したがって、仕様によっては、制振性能を高くできる。
【0072】
また、図12、すなわち、他の変形例のディスク245における図11に対応する図に示すように、各制振流路部207の幅が径方向の外方側に行くにしたがって大きくなってもよい。
【0073】
本構成によれば、気体が気圧室12,13からタンク18,19に矢印γに示す方向に流動する際に気体の流速を低下させることができ、ノイズを低減できる。
【0074】
なお、平板部材として、ディスク145,245を採用した場合、タンク18,19が、円筒面に周方向に間隔をおいて配置される複数の開口を有することになる。しかし、この場合においても、ディスク45を採用した場合と同様に、放射状に延びる複数の制振流路部107,207からの気体をタンク18,19内に容易に流動させることができる。
【0075】
なお、図13、すなわち、別の変形例のディスク345における図11に対応する図に示すように、制振流路は、径方向に延在する1つのみの制振流路部307で構成されてもよい。また、平板部材は、円板形状でなくてもよく、平板であれば如何なる平面形状を有してもよい。例えば、平板部材は、平面視が略矩形の形状や楕円の形状等を有してもよい。
【0076】
また、気体圧サーボ弁1が、ノズルフラッパ型のサーボ弁であって、気圧差生成機構4が、アーマチュア20、フラッパ21、第1コイル22、第2コイル23、第1背圧路15、第2背圧路16、断面コ字状の上部磁極25、及び断面コ字状の下部磁極26を有する場合について説明した。しかし、気体圧サーボ弁は、ノズルフラッパ型のサーボ弁でなくてもよく、気圧差生成機構がフラッパを有さなくてもよい。
【0077】
詳しくは、気体圧サーボ弁は、噴射式のサーボ弁でもよく、気圧差生成機構がジェットパイプを有する構成でもよい。図14は、他の変形例の気体圧サーボ弁401の軸方向の模式断面図である。なお、図14においては、気体圧サーボ弁401が、制振構造406,407を有する。制振構造406,407は、図7及び図8を用いて説明した制振構造と同様の制振流路及びタンクを有する制振構造である。また、図14においては、フィードバックばねの図示を省略している。図14を参照して、気体圧サーボ弁401では、トルクモータ等の駆動装置によりジュットパイプ431が、いずれか一方の制御ポート413,414側に傾くと、噴射口431aから噴射されている気体が、傾いた側の制御ポート413,414に多く流れ込み、これにより均衡していた気圧室421,422の圧力バランスが崩れ、スプール405が低圧側に変位する。気体圧サーボ弁401の気圧差生成機構404は、トルクモータ等の駆動装置と、ジュットパイプ431を備える。なお、気体圧サーボ弁401では、ジュットパイプ431とスプール405とが、図示しないフィードバックばねで連結されていることは言うまでもない。
【0078】
また、気体圧サーボ弁1が、スリーブ11の外部にタンク18,19を備える場合について説明した。しかし、気体圧サーボ弁は、スプール内にタンクを備えてもよい。図15は、別の変形例の気体圧サーボ弁501のスプール505のX方向片側端部の周辺の模式断面図である。気体圧サーボ弁501は、ノズルフラッパ型のサーボ弁である。なお、気体圧サーボ弁501は、スプール505のX方向両側端部に同一の制振構造を有する。図15に示すように、スプール505は、X方向の両側の端部内に同一のタンク518を有する。タンク518は、連通孔532を介して制振流路550に連通している。
【0079】
気圧室512は、円板状の室であり、気圧室512の内径は、スリーブ511の内径よりも大きくなっている。気圧室512は、図示しないノズルに背圧路515を介して連通する。気圧室512は、スリーブ511よりもX方向外方に位置している。スプール505のX方向端部は、気圧室512内に位置し、スプール505のX方向端部は、スリーブ511の内径よりも大きな外径を有する大径部571となっている。大径部571は、スプール505においてスリーブ511内に位置する小径部570よりも大きな外径を有している。
【0080】
制振流路550は、大径部571に設けられている。連通孔532は、大径部571の中心軸上をX方向に延在している。制振流路550は、例えば、複数の制振流路部550aを有し、複数の制振流路部550aは、大径部571の径方向に延在する。複数の制振流路部550aは、例えば、図11を用いて説明した構造により形成される(図15では、ボルト等の締結手段の図示は省略している)。図15に示す変形例のように、気圧室512の内径を、スリーブ511の内径よりも大きくして、スプール505のX方向端部に大径部571を設けるようにすると、制振流路550の長さを長くできるので、制振流路550の制振性能を高くできる。
【0081】
本構成によれば、タンク518が、スプール505の内部に設けられる内部室で構成され、スプール505が、内部室と制振流路550とを連通する連通孔532を有する。したがって、コンパクトでしかも制振性能が高い気体圧サーボ弁501を実現し易い。
【0082】
より詳しく説明すると、スプールは、スプール本体と、円板状のディスクを備えてもよい。そして、制振流路は、軸部材であるスプール本体のX方向端面に、円板状のディスクを固定することで形成してもよい。詳しくは、タンクが、スプール本体の内部に設けられる内部室で構成され、スプール本体が、タンクと制振流路を連通する連通孔を有してもよい。また、連通孔は、如何なる断面形状を有してもよく、例えば、円筒孔でもよい。また、連通孔の中心は、ディスクの中心にX方向に対向し、ディスクは、上述の方法と同一の方法で、スプール本体のX方向の端面に環状のシムを挟んだ状態で締結手段で固定されてもよい。
【0083】
又は、上述の方法と同一の方法で、スプール本体のX方向の端面と、ディスクの端面側の面のうちの一方に径方向に延在する1以上の溝が設けられてもよく、スプール本体のX方向の端面とディスクの面が密着している状態でディスクが締結手段でスプール本体のX方向の端面に固定されてもよい。
【0084】
本変形例では、第1平面部が、スプール本体の軸方向の端面に固定されたディスクに含まれると共に、第2平面部が、スプール本体の軸方向の端面に含まれる。また、連通孔の開口が、ディスクによって外部から視認不可能になっている。本構成を採用すれば、コンパクトでしかも制振性能が高い気体圧サーボ弁を実現できる。なお、図15に示す例では、スプール本体のX方向端部がスプール本体においてスリーブ511内に配置される部分よりも大きな外径を有していた。しかし、スプール本体にタンクを設ける構成において、スプール本体のX方向端部の外径が、スリーブの内径と略一致する構成でもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,401,501 気体圧サーボ弁、 2 カバー、 3 下側筐体、 4,404 気圧差生成機構、 5,405,505 スプール、 6 フィードバックばね、 7 第1制振流路、 7a 制振流路部、 8 第2制振流路、 9 第1ノズル、 10 第2ノズル、 11,511 スリーブ、 12 第1気圧室、 13 第2気圧室、 15 第1背圧路、 16 第2背圧路、 18 第1タンク、 19 第2タンク、 20 アーマチュア、 21 フラッパ、 22 第1コイル、 23 第2コイル、 25 上部磁極、 26 下部磁極、 28 駆動回路、 30 第1固定絞り、 31 第2固定絞り、 34 第1ランド、 35 第2ランド、 36 第3ランド、 37 第4ランド、 39 ステム、 40 側壁、 41 第1側壁部、 第1側壁部の41a 外面、 42 第2側壁部、 42a 第2側壁部の凹部、 43,532 連通孔、 45,145,245,345 ディスク、 45a 平面、 46 締結手段、 46a 軸部、 48 シム、 48a 貫通孔、 51a,107,207,307,550a 制振流路部、 55 第1平面部、 56 第2平面部、 84 駆動回路、 145a ディスクにおける第1側壁部側の面、 147 溝、 406 制振構造、 413,414 制御ポート、 421 気圧室、 431 ジュットパイプ、 431a 噴射口、 512 気圧室、 515 背圧路、 518 タンク、 550 制振流路、 570 小径部、 571 大径部、 CY1 第1出力ポート、 CY2 第2出力ポート、 Ex 排気ポート、 PS1 第1気体供給ポート、 PS2 第2気体供給ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15