(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110707
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ガラスレンズ成形装置及びガラスレンズ成形方法
(51)【国際特許分類】
C03B 11/16 20060101AFI20230802BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C03B11/16
C03B11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012309
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 有斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
(72)【発明者】
【氏名】和田 紀彦
(57)【要約】
【課題】ガラスレンズ成形装置において、金型を押圧するための上下のヒータブロック平行度と、面内温度分布の有無の両方を同時に検出する方法を提供する。
【解決手段】ガラスレンズ成形装置(D1)は、上型(2)と、下型(3)と、を含む金型(1)によりガラス素材(5a)を押圧することでガラスレンズを成形する。ガラスレンズ成形装置(D1)は、金型(1)によるプレス加工のプレス荷重を検出するための荷重検出装置(20)と、上型(2)を熱する上側ヒータブロック(7a)と、下型(3)を熱する下側ヒータブロック(7b)と、前記上側ヒータブロック及び前記下側ヒータブロックの温度を変えて荷重検出装置(20)により検出されたプレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する制御装置(30)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と、下型と、を含む金型によりガラス素材を押圧することでガラスレンズを成形するガラスレンズ成形装置であって、
前記金型によるプレス加工のプレス荷重を検出するための荷重検出装置と、
前記上型を加熱する上側ヒータブロックと、
前記下型を加熱する下側ヒータブロックと、
前記上側ヒータブロック及び前記下側ヒータブロックの温度を変えて前記荷重検出装置により検出された前記上側ヒータブロックのプレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する制御装置と、を備える、
ガラスレンズ成形装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記重心位置に基づき、前記上側ヒータブロックと前記下側ヒータブロックとの相対的な平行度を算出する、
請求項1に記載のガラスレンズ成形装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記重心位置に基づき、前記上側ヒータブロックまたは前記下側ヒータブロックの、プレス方向を法線方向とする面内における温度分布を算出する、
請求項2に記載のガラスレンズ成形装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記上側ヒータブロックまたは前記下側ヒータブロックの温度を昇温する前に、前記平行度を算出する、
請求項3に記載のガラスレンズ成形装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
第1プレス加工により前記下側ヒータブロックの前記温度分布を算出し、
第2プレス加工により前記上側ヒータブロックの前記温度分布を算出し、
前記第1プレス加工は、前記第2プレス加工よりも押圧時間が短い、
請求項3または4に記載のガラスレンズ成形装置。
【請求項6】
上側ヒータブロックによって加熱される上型と、下側ヒータブロックによって加熱される下型と、を含む金型によりガラス素材を押圧することでガラスレンズを成形するガラスレンズ成形方法であって、
荷重検出装置が、前記上側ヒータブロックのプレス荷重を検出し、
前記上側ヒータブロック及び前記下側ヒータブロックを加熱し、
荷重検出装置が、前記上側ヒータブロックのプレス荷重を再び検出し、
制御装置が、温度を変えて前記荷重検出装置により検出されたそれぞれの前記プレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する、
ガラスレンズ成形方法。
【請求項7】
前記制御装置は、前記重心位置に基づき、前記上側ヒータブロックと前記下側ヒータブロックとの相対的な平行度を算出する、
請求項6に記載のガラスレンズ成形方法。
【請求項8】
前記制御装置は、前記重心位置に基づき、前記上側ヒータブロックまたは前記下側ヒータブロックの、プレス方向を法線方向とする面内における温度分布を算出する、
請求項7に記載のガラスレンズ成形方法。
【請求項9】
前記制御装置は、前記上側ヒータブロックまたは前記下側ヒータブロックの温度を昇温する前に、前記平行度を算出する、
請求項7に記載のガラスレンズ成形方法。
【請求項10】
前記制御装置は、第1プレス加工により前記下側ヒータブロックの温度分布を算出し、第2プレス加工により前記上側ヒータブロックの温度分布を算出し、
前記第1プレス加工は、前記第2プレス加工よりも押圧時間が短い、
請求項8または9に記載のガラスレンズ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラスレンズ成形装置及びガラスレンズ成形方法に関し、具体的には、光学素子を代表するレンズなどのガラス製品を、金型を用いた成形技術により量産するガラスレンズ成形装置及びガラスレンズ成形方法に関する。特に、ガラスレンズ成形装置におけるヒータブロックの機械的な平行度と面内の温度分布の有無の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガラスレンズ装置として、加熱軟化させたプレス材料を押圧して成形するプレス成形装置において、上下のダイプレートを平行に保持したままプレス成形を行うために、ダイプレート間に温調可能な間隔調整部材を設けたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図15に示す従来のプレス成形装置100において、上型103と下型104を、加熱機構105で加熱し、プレス成形素材を軟化させ、上型ダイプレート101と下型ダイプレート102で押圧し所定の形状の成形品を得る。
【0004】
また、プレス成形素材と接触しない位置に測定センサ(
図15において図示省略)を設け、上型103と下型104の平行度を検出する。プレス成形の過程で、平行度の測定値を基に、上型ダイプレート101及び下型ダイプレート102の間に少なくとも3箇所設けた間隔調整部材106を温度調整し、伸縮させることで平行度が小さくなるように調整しながら成形する。この方法により精度の良いプレス成形品の製造が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のプレス成形装置では、構造に起因する機械的な平行度を検出することは可能であるが、上型及び下型の面内における温度分布、すなわち、任意の点における温度差は検出できないという問題がある。
【0007】
上記を含む一般的な構造のプレス成形装置において、所定の形状の成形品の精度を向上させるためには、押圧する金型の機械的な平行度の他に、押圧面内の温度差を小さくする(均熱状態にする)必要がある。温度差が大きい場合、例えばガラスレンズの成形においては、ガラス素材の粘性は温度に依存するため、押圧したときに高温側の粘性が低くなり変形による広がりが大きくなる。ゆえに形状不良や光軸ズレ、肉厚不足などの不良が発生する。
【0008】
また、ガラスレンズの金型構造では、上型及び下型と、特にスリーブの熱膨張・熱収縮の影響が大きい。面内の温度差によりスリーブが不均一な熱変形を行うことで、成形品に前述同様の不良が発生する。以上の理由から面内の温度分布が均熱であることが必要である。
【0009】
一般的なプレス成形装置においては、加熱機構あるいは金型の近傍に熱電対などの温度センサを配置して、面内の中心などの1箇所の測定を行っている場合が多い。面内の温度分布を検出するためには、温度センサを複数箇所に配置する必要があるが、装置内のスペースの制限により設置ができないことや、制御回路が複雑になるなどの理由から非常に困難である。
【0010】
従って、本開示は、上述した従来のプレス成形装置の問題点に鑑み、成形時のガラスレンズの非対称な変形を低減するガラスレンズ成形装置及びガラスレンズ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示のガラスレンズ成形装置は、上型と、下型と、を含む金型によりガラス素材を押圧することでガラスレンズを成形するガラスレンズ成形装置である。ガラスレンズ成形装置は、金型によるプレス加工のプレス荷重を検出するための荷重検出装置と、上型を熱する上側ヒータブロックと、下型を熱する下側ヒータブロックと、上側ヒータブロック及び下側ヒータブロックの温度を変えて荷重検出装置により検出された上側ヒータブロックのプレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する制御装置と、を備える。
【0012】
また、本開示のガラスレンズ成形方法は、上側ヒータブロックによって加熱される上型と、下側ヒータブロックによって加熱される下型と、を含む金型によりガラス素材を押圧することでガラスレンズを成形するガラスレンズ成形方法である。荷重検出装置が、上側ヒータブロックのプレス荷重を検出し、上側ヒータブロック及び下側ヒータブロックを加熱し、荷重検出装置が、上側ヒータブロックのプレス荷重を再び検出し、制御装置が、荷重検出装置により検出されたプレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本開示のガラスレンズ成形装置及びガラスレンズ成形方法によれば、成形時のガラスレンズの非対称な変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ガラスレンズのプレス成形の工程を分割して生産が可能なガラスレンズ成形装置の一例を示す図である。
【
図2】ガラスレンズのプレス成形の成形・冷却工程における不均等な押圧成形を示す図である。
【
図3】本実施形態におけるガラスレンズ成形装置である。
【
図4】荷重検出装置の荷重センサの平面配置の構成例を示す図である。
【
図5】検出方法の流れを示すフローチャート図である。
【
図8】スリーブを高温状態にする様子を示す図である。
【
図9】下側ヒータブロックの温度分布の有無の検出を示す図である。
【
図10】上側ヒータブロックの温度分布の有無の検出を示す図である。
【
図11】重心位置と平行度の関係を示すグラフである。
【
図12】重心位置と温度分布の大きさの関係を示すグラフである。
【
図14】表示部による平行度と温度分布の表示の一例を示す図である。
【
図15】従来技術の事例である平行度の検出と調整が可能なプレス装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。また、図中において、X-Y-Z座標系は、発明の理解を容易にするものであって、発明を限定するものではない。XY平面は、プレス方向を法線方向とする平面を示し、Z軸方向はプレス方向を示している。X、Y、Z方向は互いに直交する。
【0016】
図1は、本実施の形態におけるガラスレンズ製造工程を示す模式図である。ガラスレンズ製造工程は、プレス成形の工程を分割して生産が可能な製造工程を一例として示している。
【0017】
製造工程は、金型1が一定の時間間隔で各工程へと移載・搬送される(
図1において図示省略)ことで、
図1中の右から左にかけて投入工程、加熱工程、成形工程、第1冷却工程、第2冷却工程、取出し工程へとそれぞれ進む。以降、各工程について説明する。なお、金型1は上型2、下型3、スリーブ4を含む。また、
図1の説明において、成形前のガラス素材をガラス素材5a、成形後のガラス素材を、ガラスレンズに相当するガラス素材5bと呼称する。
【0018】
投入工程では、金型1が移載・搬送機構(
図1において図示省略)により横滑りし、加熱工程におけるヒータブロック7の中央部に置かれる。投入部シャッター13aは金型1の移載・搬送の直前に開き、金型1がヒータブロック7の中央に置かれた直後に閉まることで、加工室12の雰囲気温度の低下を防止している。また加工室12は、金型の酸化防止を目的として、真空もしくは窒素雰囲気で制御されている。
【0019】
加熱工程から第2冷却工程までの計4工程において、ヒータブロック7には複数の棒状のヒータ6が挿入されており、各工程の温度が所定温度となるように制御されている。
【0020】
加熱工程においては、ヒータ6は、ガラス素材5aが軟化し成形可能な温度まで上昇させることを目的とするため、プレス軸11を下降させて上側ヒータブロック7aによって荷重をかけることはほとんどなく、上型2の温度を上昇させるためにヒータブロック7が接近もしくは接しているという場合が多い。理由としては、ガラス素材5aの温度が低い状態で大きい荷重を掛けると、ガラス素材5aが割れたり、上型2と下型3の表面にキズや凹みが生じたりする原因となるためである。一定時間加熱された後、金型1は成形工程へと移載・搬送され、加熱工程には次の金型が投入される。
【0021】
成形工程では、プレス軸11が下降することにより、ヒータブロック7によってガラス素材5aに荷重が掛かり、ガラス素材5aが熱変形するため金型形状が転写される。再び一定時間経過すると、金型1は第1冷却工程へと送られ、成形工程には次の金型が投入される。
【0022】
第1冷却工程では、成形工程と同様にしてガラス素材5bに荷重が掛けられるが、転写のために金型1を保持することが目的であるので、成形工程よりも小さい荷重である。また一般的に、成形工程よりもヒータブロック7の温度が低くなるように制御されている。第1冷却工程では、ガラス素材5bの温度が下がることで収縮し、上型2及び下型3の形状の転写を完全なものとする。一定時間経過後、金型1は第2冷却工程へと送られ、第1冷却工程には次の金型が投入される。
【0023】
第2冷却工程では、プレス軸11によりヒータブロック7が下降し、上型2に接近もしくは接することで、金型1及びガラス素材5bの冷却を行う。第2冷却工程は、ガラス素材5bを冷却し、次の取出工程で取り出せるようにすることが目的なので、温度を下げるためヒータブロック7の温度は第1冷却工程と比べて非常に低く設定されている。
【0024】
取り出し工程では、金型1が分解され、成形されたガラス素材5bが取り出される。
【0025】
さらに金型1は、新たなガラス素材5aを収納し組み立てられた後、成形部10に投入する投入工程から同様の工程を繰り返す。
【0026】
ガラスレンズ成形装置D1における成形プロセスについては、ガラス素材の種類や成形タクト時間に合わせて加熱工程や冷却工程をさら多段階に分けてもよい。また、ヒータブロック7の温度は一般的に各工程によって異なることが多く、概ね加熱工程と成形工程が高く、冷却工程が低い。また投入工程への投入前に、ガラス素材5aを格納し金型1を組み立てる工程と、取出し工程後の金型分解は生産性を高めるために自動化してもよい。
【0027】
次に、ガラスレンズのプレス成形における課題について、
図2を用いてより詳細に説明する。
図2は金型1の押圧状態を示す図である。
図1に示す製造工程において、押圧は成形工程及び冷却工程において行われる。なお、以下の説明において、上側のヒータブロック7を上側ヒータブロック7a、下側のヒータブロック7を下側ヒータブロック7bと呼称するが、上側及び下側ヒータブロック7a、7bに対して共通して説明する場合は、単にヒータブロック7と呼称する。
【0028】
成形工程及び第1及び第2冷却工程はガラスレンズの形状を決定するプロセスである。
図2(a)のように上下から押圧する上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bとの平行度が小さく、またヒータブロック7の表面温度が面内で均一となっていれば、ガラス素材5は全方向に均等に変形・収縮を行うため、精度の良いガラスレンズを得ることができる。
【0029】
しかし、
図2(b)のように上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bとの平行度が大きい場合、下側ヒータブロック7bを水平基準としたとき、上側ヒータブロック7aで上型2を垂直ではなく斜めから押圧することになる。
【0030】
また、スリーブ4は上型2と下型3のガイドであり、成形工程ではガラスレンズの肉厚を決定し、冷却工程では熱収縮することで上側ヒータブロック7aからの荷重を上型2にかかるようにすることで面の転写性を上げる役割を持つ部品である。したがって、一般的にスリーブ4は熱膨張係数の大きい材質で作られることが多い。
【0031】
したがって、ヒータブロック7の表面温度が面内の任意の点で異なる、すなわちヒータブロック7の表面温度が均一でなく温度分布が発生している場合、スリーブ4の高温の箇所は熱変形量が大きく、低温の箇所は熱変形が小さい不均一な熱変形が生じる。
【0032】
したがって、ヒータブロック7が互いに平行であっても、ヒータブロック7の表面温度に偏りが発生している場合、この表面温度の偏りによりスリーブ4の高低差が発生する。これにより上型2と下型3とが相対的に平行ではなくなるため、均等に押圧できなくなる。このように不均等な押圧成形を行うことで、成形したガラスレンズの形状不良、光軸偏心、肉厚不足などの不良が発生し、歩留まりが悪くなることが課題である。
【0033】
上述の課題を解決するために、本開示では、成形を行う前にヒータブロック7の平行度と面内の温度分布の有無を検出する。
【0034】
図3は本開示のガラスレンズ成形装置D1の構成を示す図である。
図3はプレス成形装置としてのガラスレンズ成形装置D1の全体を示すために金型1を図示しているが、後で説明する平行度・温度分布の検出は金型1を用いず行うことができる。本開示のガラスレンズ成形装置D1は、成形部10と、荷重検出装置20と、制御装置30と、表示部33を備える。
【0035】
成形部10は、上述の成形工程及び冷却工程において押圧を行う装置である。成形部10において、スリーブ4を上側ヒータブロック7aと対向するように、下側ヒータブロック7b上に配置する。上側及び下側ヒータブロック7a、7bはそれぞれスリーブ4とは反対側に断熱板8と冷却板9を取り付け、成形部10の装置全体への熱伝導を小さくする。下側ヒータブロック7b、断熱板8、冷却板9のさらに下方には荷重検出装置20の荷重センサ21が設置されている。なお、荷重検出装置20については後で説明する。スリーブ4は、中心軸11aが成形部10における各工程のヒータブロック7の中心と同じ位置になるように、移載・搬送機構によって移動される(
図3において図示省略)。
【0036】
荷重検出装置20は、上側ヒータブロック7aによりスリーブ4を押圧したときの荷重検出を行う。荷重検出装置20は荷重センサ21と増幅器22とを備えている。荷重センサ21は、成形部10の各工程の冷却板9の下方に設置されている。荷重センサ21が荷重を検出し、増幅器22により増幅され、制御装置30に検出値が送信される。
【0037】
次に、荷重センサ21の構成について説明する。
図4は、荷重センサ21の平面配置の構成例を示す図である。
【0038】
図4に示す4個の荷重センサ21a1、21a2、21a3、及び、21a4は、それぞれプレス方向(Z軸)の荷重を検出可能な1軸荷重センサである。荷重センサ21a1、21a2、21a3、及び、21a4はそれぞれ、駆動軸と直交する平面内におけるX軸に対して±m、Y軸に対して±n離れた位置に配置している。このように、X-Y座標の原点Oに対して、荷重センサを対称的に配置するのは、後述する荷重中心の座標を導出する計算を容易にするためである。荷重センサを対称的配置しない場合は、荷重中心の座標の計算が煩雑となる。そのため、荷重センサ21はX-Y座標の原点Oに対して点対称となるよう配置することが望ましい。
【0039】
なお、
図4に示す荷重センサ21の構成例において1軸荷重センサを4つ配置したが、少なくとも3つ以上あれば後述する重心位置の算出が可能なため、一直線上にない3か所(例えば、X-Y平面における第1象限から第4象限までの4つの領域のうち3つの領域)に配置してもよい。
【0040】
次に、
図4に示す荷重センサ21の構成により、プレス荷重の重心位置を算出する手法について説明する。
【0041】
荷重中心の位置を導出する仮想面を作用面Fとし、
図4に示すX-Y座標の平面とする。プレス成形中にプレス力が生じるとき、1軸荷重センサ21a1~21a4は、それぞれZ軸の荷重z1,z2,z3,z4を検出し、作用面F1におけるZ軸の荷重はz1~z4の合算値となる。4つの荷重センサ21a1~21a4が、それぞれZ軸の荷重z1~z4の検出値を検出した場合、X-Y座標の原点Oを中心にX軸まわりのモーメントとY軸まわりのモーメントMxとMyとは、それぞれ以下の(1)式、(2)式により算出される。
Mx=-m(z1+z2)+m(z3+z4)・・・(1)式
My=-n(z1+z4)+n(z2+z3)・・・(2)式
【0042】
作用面Fにおける荷重中心Gの座標(ax,ay)は、以下の(3)式、(4)式によって求めることができる。
【0043】
成形部10の金型1の中心軸11aの位置が、作用面FのX-Y座標の原点Oに一致する場合、プレス成形を開始してからガラスが押し広げられた状態になるまで、荷重中心GがX-Y座標の原点Oと一致し、(3)式、及び(4)式の算出結果は、ax=ay≒0となることが推定できる。
【0044】
一方、プレス成形中にガラス素材に非対称な変形が発生した場合、すなわち成形後のガラス素材5bが
図2(b)の状態であるときを考える。荷重中心GがX-Y座標の原点Oから移動し、(3)式、及び(4)式による荷重中心Gの座標ax、ayの計算値はゼロにならない。
【0045】
次に、算出した重心位置から、平行度と温度分布の有無を検出する方法について、
図5~
図10を用いて説明する。
【0046】
図5は、本実施の形態におけるヒータブロック7の平行度と面内の温度分布の検出方法の流れを示すフローチャートである。
【0047】
まず、ステップS1において、上側ヒータブロック7aとスリーブ4との接触荷重を検出する。接触荷重の検出の具体例について、
図6~
図7を用いて説明する。
図6はスリーブ4の押圧前の状態を示す図である。
【0048】
図6(a)はスリーブ4を前工程から移載・搬送した直後の状態を示し、スリーブ4の中心軸11aと下側ヒータブロック7bの中心軸とが同じ位置にあるように配置される。さらに、下側ヒータブロック7bの中心は4つ荷重センサ21の原点Oと同じ位置にあるものとする。前提条件として上側及び下側ヒータブロック7a、7bの平行度は大きくなっているものとし、それぞれの工程の所定の加工温度に加熱されているが、面内に温度分布が発生していると仮定する。また、移載・搬送直後であるため、スリーブ4は常温状態であり、上側及び下側ヒータブロック7a、7bの熱の影響は受けていない。そして、
図6(b)に示すように、この時点では押圧していないため重心位置は検出されない。なお、スリーブ4の移載・搬送が完了した時間をt=0secとする。
【0049】
図7(a)は上側ヒータブロック7aによってスリーブ4を押圧した瞬間の様子を示す図である。
図7(a)に示す押圧の瞬間は、例えば、
図6(a)に示す移載・搬送の完了より1sec経過したとする。上側ヒータブロック7aがスリーブ4に接触した瞬間から荷重Pがスリーブ4及び下側ヒータブロック7bに作用し、荷重検出装置20により上側ヒータブロック7aからスリーブ4への接触荷重が検出される。なお、加工室12へ金型1を投入直後にスリーブ4を押圧し荷重を検出するため、この時点において、下側ヒータブロック7bからスリーブ4への熱伝導はほとんどなく、スリーブ4の熱膨張は起きていないと考えられる。
【0050】
次に、
図5のステップS2において、接触荷重における重心位置を算出する。具体的には、荷重検出装置20と制御装置30によって
図7(b)に示す重心位置Aが算出される。
【0051】
ここで、スリーブ4は常温状態であれば、その加工精度によってスリーブ4の上面と底面の平行は保証されているため、ほとんど平行であると考えられる。したがって、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bの平行度が0、または、限りなく小さい場合、下側ヒータブロック7bの中心にあるスリーブ4が均等に押圧されるため、重心位置Aは原点Oとほぼ同じ位置となる。しかしながら、平行度が0でない場合、上側ヒータブロック7aがスリーブ4の上面の不定の一点に接触するため、均等な押圧ではない。また、平行度が大きいほど重心位置Aと原点Oとの距離は大きくなるため、重心位置Aの検出位置が平行度のズレを表す。
【0052】
次に、
図5のステップS3において、算出した重心位置から平行度を算出する。
【0053】
次に、
図7(b)において検出した原点Oからの重心位置Aの距離と、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7b間の平行度の関係について、
図11を用いて説明する。
図11は検出した重心位置の距離と平行度の大きさの関係を示す図である。
【0054】
図11(a)は
図4に示した荷重センサ21により
図7(b)における重心位置Aを検出したときの図である。
図11(a)において、
図7で前述したような重心位置Aを検出したとき、原点Oとの距離をd1とする。d1は重心位置Aの座標(ax,ay)より以下の式(5)によって求めることができる。
【0055】
d1は上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bの平行度が0であればd1=0となり、平行度が大きくなればなるほど大きくなる比例関係にある。この平行度の大きさは、例えば押圧時に厚みが既知であるシムプレートなどをスリーブ4の片側に挿入し、任意の高低差を付けたときの重心位置の差を検出することで数値的に求めることができる。この場合は平行度の大きさはスリーブ4の円周上での高低差となる。
【0056】
また、上下のそれぞれのヒータブロック7の任意の点の高低差を予め測定し、高低差を変動させたときの重心位置の差を検出するなどして数値的に求めることができる。この場合は平行度の大きさはヒータブロック7の任意の測定点での高低差となる。したがって、これらの事前実験の結果から
図11(b)で示すような重心位置Aの原点Oからの距離d1と任意の位置の高低差の関係を示すグラフを得ることができる。
【0057】
このグラフを基にステップS2において算出した重心位置から、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bの平行度を検出する。任意の位置の高低差は、下側ヒータブロック7bを基準としたとき、上側ヒータブロック7aの勾配を表すため、調整点の位置によって換算することも可能である。
【0058】
なお、
図11(b)に示すような関係のグラフは、重心位置Aを検出するために用いるスリーブや用いる部品の形状や材質によって異なるため、押圧した部品によって異なる。これらの数値的関係は後述する制御装置30の記憶部32に内蔵されている。
【0059】
次に、
図5のステップS4において、加熱器、例えば、カートリッジヒータ6により加熱されたヒータブロック7の接触によりスリーブ4の温度を上昇させる。ステップS1~S3において、常温状態のスリーブ4を押圧することで平行度を検出した。ステップS4以降においてヒータブロック7の温度分布を検出するためには、スリーブ4にヒータブロック7からの熱の影響を与える必要があるため、スリーブ4を昇温させる。
【0060】
図8(a)に示すように、上側ヒータブロック7aを上げて押圧を中止し、一定時間放置する。この一定時間は、例えば、t=300secとなるまでであるがこれに限られない。スリーブ4を下側ヒータブロック7bからの熱伝導により高温状態とさせることが目的であるため、下側ヒータブロック7bからの熱がスリーブ4の上部まで行き渡るまででよい。逆に
図7(a)において、上側ヒータブロック7aよりスリーブ4を押圧して重心位置Aを検出してから長時間放置すると、スリーブ4が上側ヒータブロック7aからの熱の影響を受けてしまうため、可能な限り短時間とする。例えば、t=5sec以内に押圧を中止する。そして、
図8(b)に示すように、この時点では押圧していないため重心位置は検出されない。
【0061】
図8(a)に示すように、スリーブ4は温度が上がると、熱膨張により高さが大きくなる。下側ヒータブロック7bの面内に温度分布が発生しておらず均熱であれば、スリーブ4の底面から受ける熱量はすべての箇所で同じとなるため、変化する高さは一定である。しかしながら、下側ヒータブロック7bの面内に温度分布が発生している場合、温度の高い箇所が熱膨張によるスリーブ4の高さの変化量が大きいため、スリーブ4は不均一な高さとなる。
【0062】
次に、
図5のステップS5において、接触荷重による重心位置を検出する。具体的には
図8(a)に示したように、下側ヒータブロック7bの温度分布により、スリーブ4の上面に高低差が生じた状態で、再び押圧を行う。その様子を
図9に示す。
【0063】
図9(a)はヒータブロック7とスリーブ4の挙動を示す図であり、
図9(b)は重心位置の挙動を示す図である。
図9(a)に示すように、2回目の押圧で上側ヒータブロック7aがスリーブ4の上面に接触した瞬間、荷重センサ21により荷重が検出され、荷重検出装置20と制御装置30によって
図9(b)に示すような重心位置Bが算出される。
図9(b)の重心位置Aは、例えば、t=1secのときに、押圧1回目の接触した瞬間の重心位置を示す。
図9(b)の重心位置Bは、例えば、t=301secのときに、押圧2回目の接触した瞬間の重心位置を示す。
【0064】
もし下側ヒータブロック7bが温度分布のない均熱状態であるとすれば、スリーブ4の高さが熱膨張により均等に変化するので、Z方向の荷重に影響はなく、押圧1回目の接触した瞬間の重心位置Aと重心位置Bは同じ位置となる。しかしながら、下側ヒータブロック7bの温度分布によりスリーブ4に不均等な熱膨張が発生しているため、各荷重センサに作用する荷重が変動し、重心位置Bは重心位置Aと異なる位置で検出される。これはヒータブロックの平行度の大小は関係なく、かつ上側ヒータブロック7aが接触した瞬間であるため、熱による影響は下側ヒータブロック7bからのみ受けている。ゆえに重心位置Aと重心位置Bの位置の違いで下側ヒータブロック7bの温度分布の有無の検出が可能である。
【0065】
このように、重心位置Aの状態と重心位置Bの状態ではスリーブ4の状態に違いがある。重心位置Aの状態では、スリーブ4は常温であり、ヒータブロック7の温度分布の影響を受けていない。これに対して、重心位置Bの状態では、スリーブ4は高温であり、下側ヒータブロック7bの温度分布の影響を受けている。
【0066】
次に、
図5のステップS6における下側ヒータブロックの温度分布の検出方法は、ステップS8における上側ヒータブロックの温度分布の検出方法と同様であるため、後述におけるステップS8における上側ヒータブロックの温度分布の検出方法にまとめて記載する。
【0067】
ステップS7における押圧荷重の検出について説明する。
図9(a)に示した上側ヒータブロック7aがスリーブ4を押圧した状態を継続し、熱伝導させ一定時間経過した状態を
図10に示す。この場合の継続時間を例えば約300secとし、t=600sec経過したとする。この時間は上側ヒータブロック7aからの熱を伝えることができれば、任意の時間でよい。
【0068】
この時、荷重センサ21は押圧荷重を検出し、重心位置の算出を継続して行っている。ここで、上側ヒータブロック7aが温度分布のない均熱状態であるとすれば、スリーブ4の高さが熱膨張により均等に変化し、Z方向の荷重に影響はないため、算出された重心位置は重心位置Bと同じ座標位置から動かない。しかし上側ヒータブロック7aに温度分布が発生していると、スリーブ4の上面に伝わる熱量の差から不均等な熱変形が生じるため、算出された重心位置が熱変形の影響を受けるにつれて動いていく。
【0069】
一定時間経過し、上側ヒータブロック7aからの熱の影響を完全に受け終わると、スリーブ4の熱変形も止まり、算出された重心位置の移動も止まる。止まった位置の重心位置をCとする。重心位置Bから重心位置Cへの矢印は、時間経過に伴う荷重中心(COP;Center of Pressure)の移動軌跡を示す。この重心位置Bから重心位置Cの移動量から、上側ヒータブロック7aからの熱伝導による影響、すなわち温度分布の有無を検出する。
【0070】
図5の説明に戻る。ステップS6における下側ヒータブロックの温度分布の検出方法と、ステップS8における上側ヒータブロックの温度分布の検出方法について説明する。
【0071】
図9(b)と
図10(b)における検出した重心位置B、Cと下側ヒータブロック7b、上側ヒータブロック7aの温度分布との関係を
図12に示す。
【0072】
図12(a)に示すように、上側及び下側ヒータブロック7a、7bのどちらかの温度分布を検出する場合、
図12(a)において■で示す基準となる点と、
図12(a)において●で示す検出した点との距離をd2とする。基準となる点■は、
図9(b)においては重心位置A、
図10(b)においては重心位置Bに当たる。また。検出した点●は
図9においては重心位置B、
図10においては重心位置Cに当たる。距離d2は、点■の座標を(x1,y1),点●の座標を(x2,y2)とすると、以下の(6)式によって求めることができる。
【0073】
この重心位置の差d2は、ヒータブロック7の面内の温度差により、スリーブ4の熱膨張差による高低差が生じ、各荷重センサ21に作用する力が変わることで検出される。したがって平行度と同様に、面内の温度差が大きいほど高低差が大きく比例関係にあると考えられる。また、スリーブ4の熱膨張差による高低差も重心位置の差d2と比例関係にあるため、面内のスリーブ4が接触している部分の温度差ΔTは、重心位置の差d2の値によって検出することができる。
【0074】
例えば、事前にヒータブロック7の複数の箇所の温度を測定し面内の温度分布、すなわち、任意の点の温度差を把握した状態で、スリーブ4を押圧し重心位置の差d2を測定することで、
図12(b)に示すような重心位置の差d2と温度差の関係をグラフ化することができる。この事前実験により求めたグラフを基に、算出した重心位置の差d2からヒータブロック7の面内の温度差を検出することができる。
【0075】
また、平行度と同様、温度差を検出するために用いるスリーブや部品の形状や材質によって異なるため、
図12(b)に示すような関係のグラフは押圧した部品によって異なる。これらの数値的関係は後述する制御装置30の記憶部に内蔵されている。
【0076】
このように、原点Oから見た重心位置Aの距離と方向により平行度、重心位置Aから見た重心位置Bの距離と方向により下側ヒータブロック7bの温度分布の有無、重心位置Bから見た重心位置Cの距離と方向により上側ヒータブロック7aの温度分布の有無を1連の動作プロセスで検出することが可能となる。
【0077】
このような構成により、常温状態のスリーブ4と、ガラスレンズ成形装置D1のヒータブロック7の加熱により高温状態となった金型スリーブとを押圧したときの重心位置から上側及び下側ヒータブロック7a、7bの平行度と温度分布を検出することが可能となる。
【0078】
なお、このステップS1~S8の荷重検出からヒータブロックの平行度及び温度分布を算出する順序については、先行して各ステップの荷重検出を行ってからヒータブロックの平行度及び温度分布を算出するなど前後しても問題はない(つまり、ステップS3、ステップS6、ステップS8は後でまとめて行ってもよい)。
【0079】
また、本開示ではスリーブ4を押圧することで検出を行ったが、重心位置A、B、Cの位置関係の大きさは押圧する物体の材質や形状と関係する。したがってスリーブ4とは異なる、形状・寸法が既知である物体であってもよい。形状については上下のヒータブロック7が接する面、つまり上面と底面の平行度は1μm以下であるものとする。材質については熱の影響を受けやすいもの(例えば、SUS316など)であることが好ましいが、それ以外の物体を用いてもよい。
【0080】
また、本開示による実施例では検出のみを行う方法であって、平行度と温度分布の有無を調整する方法ではない。したがって調整方法は任意の手法で行ってよい。例えば、平行度は成形部10におけるプレスの中心軸11aと上側ヒータブロック7aとの間の部品の隙間にシムプレートを挿入するなどして、意図的に高低差を無くす方法や、ヒータブロック自体を研削加工するなどして高低差を無くす方法を取ってもよい。また、温度分布はカートリッジヒータ6それぞれに個体差に起因する温度分布があることから、ヒータブロック7への挿入位置を微小に変化させて均熱状態を作り出すか、カートリッジヒータ6を個別に温度制御するといった方法を取ってもよい。
【0081】
次に、制御装置30の構成について、
図13を用いて説明する。
図13は制御装置30の構成の一例を示すブロック図である。制御装置30は、処理部31と、記憶部32と、表示部33とで構成される。
【0082】
記憶部32は、重心位置演算プログラム34を含む。また、
図11(b)に示す重心位置と平行度の関係と、
図12(b)に示す重心位置と温度差の関係とを、スリーブ4の形状と材質ごとに記録している。
【0083】
重心位置演算プログラム34は、荷重検出装置20から各荷重センサ21より検出した荷重値を受け取り、前述した(1)式~(4)式を基に重心位置を演算する。
【0084】
処理部31は、例えばCPU、マイクロコンピュータ、FPGA、あるいはコンピュータで実行可能な命令を実行できる処理装置であればよい。
【0085】
また記憶部32は、例えば、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュSSD、ハードディスク、USBメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の少なくとも一つであってもよい。
【0086】
次に、制御装置30の表示部33の表示例について、
図14を用いて説明する。
図14は、検出した平行度と温度分布の有無を表示部33に表示する一例を示す図である。処理部31は、
図7(b)に示した重心位置Aと
図11(b)に示したグラフとの関係から、ヒータブロック7の平行度がどちらにどれだけ高いあるいは低いかを、矢印と数値とにより表示部33に表示させる。
【0087】
また、温度分布については、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bの面内の温度分布すべてが分かるわけではないので、
図9(b)における重心位置Aから重心位置Bの方向や、
図10(b)における重心位置Bから重心位置Cへの方向から、面内のどの方向に温度勾配が発生しているかが分かる。また、
図12(b)のグラフからどれだけの温度差があるかが分かる。
【0088】
したがって、処理部31は、重心位置を検出した点付近の温度差を表示部33に矢印と数値により表示することができる。この表示部33に表示された情報を基に、作業者が任意の方法でヒータブロック7の平行度と温度分布の均一化のための調整を行う。重心位置及び温度差の検出と調整を繰り返し行うことで、平行度の最小化と温度分布の均一化をすることができ、高精度なレンズを得ることを可能とし、レンズ生産の歩留まりが改善する。
【0089】
本開示のガラスレンズ成形装置D1は、上型2と、下型3と、を含む金型1によりガラス素材5aを押圧することでガラスレンズ(ガラス素材5b)を成形する。ガラスレンズ成形装置D1は、金型1によるプレス加工のプレス荷重を検出するための荷重検出装置20と、上型を熱する上側ヒータブロック7aと、下型を熱する下側ヒータブロック7bと、上側ヒータブロック7a及び下側ヒータブロック7bの温度を変えて荷重検出装置20により検出された上側ヒータブロック7aのプレス荷重に基づき、プレス成形の重心位置を算出する制御装置30と、を備える。
【0090】
これにより、異なる温度で検出されたプレス荷重に基づいてプレス成形の重心位置を算出することができるので、重心位置に偏りがある場合、プレス成形の重心位置を調整することで、成形時のガラスレンズの非対称な変形を低減することができる。
【0091】
また、制御装置30は、重心位置に基づき、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bとの相対的な平行度を算出する。上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bとの相対的な平行度を算出することで、上側ヒータブロック7aと下側ヒータブロック7bとのそれぞれの位置調整をしやすくなる。
【0092】
また、制御装置30は、重心位置に基づき、上側ヒータブロック7aまたは下側ヒータブロック7bの、プレス方向を法線方向とする面内における温度分布を算出する。これにより、上側ヒータブロック7aまたは下側ヒータブロック7bの温度分布によるプレス成形の重心位置の変化に応じてそれぞれの位置を調整することができる。
【0093】
また、制御装置30は、上側ヒータブロック7aまたは下側ヒータブロック7bの温度を昇温する前に、平行度を算出する。これにより、温度変化の影響を受ける前の重心位置の偏りを検出することができる。
【0094】
制御装置30は、第1プレス加工により下側ヒータブロック7bの温度分布を算出し、第2プレス加工により上側ヒータブロック7aの温度分布を算出し、第1プレス加工は、第2プレス加工よりも押圧時間が短い。
【0095】
これにより、ガラスレンズ成形装置D1における金型1を上下から押圧するためのヒータブロック7間の平行度と、面内の温度分布の両方を同時に検出することが可能となる。検出した値を基に平行度と面内の温度差が最小となるように調整することで、成形時のガラスレンズの非対称な変形による不良発生の原因を排除することができ、歩留まりが向上する。
【0096】
本開示に係るガラスレンズ成形装置D1及びヒータブロック7の平行度と温度分布の有無の検出方法によって、昇温した上下のヒータブロック7により常温のスリーブ4を投入直後に押圧し、荷重検出装置20、制御装置30によって算出した重心位置から平行度を検出する。さらにヒータブロック7により高温となったスリーブ4を再度押圧し、重心位置の差を検出することで、ヒータブロック7の面内の温度分布の有無を検出し、ヒータブロック7の位置調整を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示のガラスレンズ成形装置では、荷重を作用させたときの重心位置の検出によりヒータブロックの平行度と温度分布の有無の検出を可能とすることで、調整し高精度なガラスレンズを得ることが可能となる。製品の精度が熱の影響を大きく受ける射出成形の金型の面内温度分布の検出や、使用温度が大きく異なる樹脂レンズの成形にも応用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 金型
2 上型
3 下型
4 スリーブ
5a 成形前のガラス素材
5b 成形後のガラス素材
6 カートリッジヒータ
7 ヒータブロック
7a 上側ヒータブロック
7b 下側ヒータブロック
8 断熱板
9 冷却板
10 成形部
11 プレス軸
11a 中心軸
12 加工室
13a 投入部シャッター
14 架台
20 荷重検出装置
21 荷重センサ
22 増幅器
30 制御装置
31 処理部
32 記憶部
33 表示部
34 重心位置演算プログラム
40 表示部