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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110710
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】医療用X線電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/58 20060101AFI20230802BHJP
   H05G 1/20 20060101ALI20230802BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H05G1/58
H05G1/20
A61B6/00 320Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012312
(22)【出願日】2022-01-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】増田 正
(72)【発明者】
【氏名】三村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】半田 清高
(72)【発明者】
【氏名】三保谷 博
(72)【発明者】
【氏名】富田 光
(72)【発明者】
【氏名】須藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晃平
(72)【発明者】
【氏名】木暮 克己
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 大地
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘昌
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勘成
(72)【発明者】
【氏名】征矢 正治
(72)【発明者】
【氏名】高仲 信
【テーマコード(参考)】
4C092
4C093
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092AB13
4C092AB27
4C092AC01
4C092BB35
4C092CC08
4C092CD03
4C092CG08
4C092CH07
4C093CA32
4C093FA14
(57)【要約】
【課題】モードによって定格出力が大きく異なるような交流電力の制御が可能な、小型且つ効率の高い医療用X線電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る医療用X線電源装置301は、X線管球EDTが出力するX線で、被写体を透視する透視モードと被写体を撮影する撮影モードを有するX線装置に電力を供給する医療用X線電源であって、透視モードと撮影モードとで周波数を違えた交流を出力するインバータinvと、一次側に入力された交流を二次側に接続されるX線管球EDTに出力するトランスTrと、インバータinvとトランスTrの一次側とを接続する共振回路RCと、を備え、共振回路RCは、透視モードの周波数で共振する経路P1、撮影モードの周波数で共振する経路P2、及び透視モードのときに経路P1を選択し、撮影モードのときに経路P2を選択するスイッチSWを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管球が出力するX線で、被写体を透視する透視モードと前記被写体を撮影する撮影モードを有するX線装置に電力を供給する医療用X線電源であって、
前記透視モードと前記撮影モードとで周波数を違えた交流を出力するインバータと、
一次側に入力された交流を二次側に接続される前記X線管球に出力するトランスと、
前記インバータと前記トランスの一次側とを接続する共振回路と、
を備え、
前記共振回路は、前記透視モードの周波数で共振する第1の経路、前記撮影モードの周波数で共振する第2の経路、及び前記透視モードのときに前記第1の経路を選択し、前記撮影モードのときに前記第2の経路を選択するスイッチを有することを特徴とする医療用X線電源。
【請求項2】
前記第1の経路は、第1インダクタンス手段、及び第1コンデンサと第2インダクタンス手段とが並列する並列回路を有し、前記第1インダクタンス手段と前記並列回路とが直列に接続され、前記透視モードの周波数で前記第1コンデンサと前記第2インダクタンス手段とが並列共振することを特徴とし、
前記第2の経路は、第3インダクタンス手段及び第2コンデンサが直列に接続され、前記撮影モードの周波数で前記第3インダクタンス手段と前記第2コンデンサとが直列共振することを特徴とする
請求項1に記載の医療用X線電源。
【請求項3】
前記共振回路は、前記第1の経路と前記第2の経路とが共有する第1インダクタンス手段を有しており、
前記第1の経路は、第1コンデンサと第2インダクタンス手段とが並列する並列回路を有し、前記第1インダクタンス手段と前記並列回路とが直列に接続され、前記透視モードの周波数で前記第1コンデンサと前記第2インダクタンス手段とが並列共振することを特徴とし、
前記第2の経路は、第2コンデンサを有し、前記第1インダクタンス手段と前記第2コンデンサとが直列に接続され、前記撮影モードの周波数で前記第1インダクタンス手段と前記第2コンデンサとが直列共振することを特徴とする
請求項1に記載の医療用X線電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線管球に直流電力を供給する医療用X線電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を利用する医療装置には、レントゲン撮影のように撮影モードとカテーテル検査のように透視モードの双方を実現する装置がある。ここで、撮影モードの場合、短時間(例えば0.1秒)であるが、大きな定格出力(例えば80kWから100kW)が必要であり、透視モードの場合、小さな定格出力(例えば25Wから1kW)を連続で出力することが必要となる。このように、1台の医療装置で撮影モード(大出力電力モード)と透視モード(小出力電力モード)の双方を実現させようとすると、定格出力が4000倍も異なり、当該装置に供給する交流電力の制御が困難である。
【0003】
モードによって定格出力が大きく異なる場合の交流電力の制御について、コンデンサとインダクタンスとの共振を利用することが知られている(例えば、特許文献1の図2を参照。)。インバータの出力周波数を共振周波数に近づけることで大出力電力モードとなり、逆にインバータの出力周波数を共振周波数から遠ざけることで小出力電力モードとなる。
【0004】
また、特許文献1では、小出力電力モードのときにインバータの出力周波数が可聴周波数域まで低下すると騒音となるという課題に対し、小出力電力モード時のインバータの出力周波数を可聴周波数域より上に固定し、インバータに入力する直流電圧を下げることで実現することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-310295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような電源装置は、サイリスタを利用してインバータへ入力する直流電圧を下げていること(サイリスタ回路の追加)、及びインバータをパルス幅制御すること(スイッチングロスの発生)で小出力電力を実現しているため、装置の小型化及び小出力電力時の効率の向上が困難という課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、モードによって定格出力が大きく異なるような交流電力の制御が可能な、小型且つ効率の高い医療用X線電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用X線電源装置は、小出力電力モード用の共振回路と大出力電力モード用の共振回路を有し、モード毎にインバータの出力周波数を違え、且つスイッチでそれぞれのモードの共振回路へ切り替えることとした。
【0009】
具体的には、本発明に係る医療用X線電源装置は、X線管球が出力するX線で、被写体を透視する透視モードと前記被写体を撮影する撮影モードを有するX線装置に電力を供給する医療用X線電源であって、
前記透視モードと前記撮影モードとで周波数を違えた交流を出力するインバータと、
一次側に入力された交流を二次側に接続される前記X線管球に出力するトランスと、
前記インバータと前記トランスの一次側とを接続する共振回路と、
を備え、
前記共振回路は、前記透視モードの周波数で共振する第1の経路、前記撮影モードの周波数で共振する第2の経路、及び前記透視モードのときに前記第1の経路を選択し、前記撮影モードのときに前記第2の経路を選択するスイッチを有することを特徴とする。
【0010】
本医療用X線電源装置は、小出力電力モード用の共振回路(第1の経路)を備える。小出力電力モード用の共振回路を並列共振させることで、サイリスタを利用してインバータへ入力する直流電圧を下げること、及びインバータをパルス幅制御することなく小出力電力を実現できる。すなわち、サイリスタ回路が不要で小型化でき、且つ小出力電力時の変換効率の向上を図ることができる。なお、小出力電力モード用の共振回路の共振周波数を可聴周波数域より上に設定することで騒音の課題も解決できる。
【0011】
従って、本発明は、モードによって定格出力が大きく異なるような交流電力の制御が可能な、小型且つ効率の高い医療用X線電源装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、モードによって定格出力が大きく異なるような交流電力の制御が可能な、小型且つ効率の高い医療用X線電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に関連する医療用X線電源装置を説明する図である。
図2】本発明に関連する医療用X線電源装置を説明する図である。
図3】インダクタンス手段とコンデンサの共振回路を説明する図である。
図4】本発明に係る医療用X線電源装置を説明する図である。
図5】本発明に係る医療用X線電源装置を説明する図である。
図6】本発明に係る医療用X線電源装置を説明する図である。
図7】本発明に係る医療用X線電源装置を説明する図である。
図8】本発明に係る医療用X線電源装置のスイッチング周波数と出力モードとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本実施形態の医療用X線電源装置301を説明する図である。医療用X線電源装置301は、X線管球EDTが出力するX線で、被写体を透視する透視モードと前記被写体を撮影する撮影モードを有するX線装置に電力を供給する医療用X線電源であって、
透視モードと撮影モードとで周波数を違えた交流を出力するインバータinvと、
一次側に入力された交流を二次側に接続されるX線管球EDTに出力するトランスTrと、
インバータinvとトランスTrの一次側とを接続する共振回路RCと、
を備え、
共振回路RCは、透視モードの周波数fで共振する第1の経路P1、撮影モードの周波数fで共振する第2の経路P2、及び透視モードのときに第1の経路P1を選択し、撮影モードのときに第2の経路P2を選択するスイッチSWを有することを特徴とする。
【0016】
本実施形態の第1の経路P1は、第1インダクタンス手段L1、第1コンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが並列する並列回路PCを有し、第1インダクタンス手段L1と並列回路PCとが直列に接続され、透視モードの周波数fで第1コンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが並列共振することを特徴とする。
本実施形態の第2の経路P2は、第3インダクタンス手段L3と第2コンデンサC2とが直列接続しており、撮影モードの周波数fで第3インダクタンス手段L3と第2コンデンサC2とが直列共振することを特徴とする。
【0017】
なお、図1ではスイッチSWが第1の経路P1に配置したスイッチSW1と第2の経路P2に配置したスイッチSW2の2つで構成されているが、スイッチSWは第1の経路P1と第2の経路P2を排他的に選択する1つのスイッチであってもよい。
【0018】
ここで、直列共振と並列共振の違いを図3で説明する。図3(A1)はインダクタンス手段LとコンデンサCが直列に接続する直列共振回路を説明する図である。電源Vがインダクタンス手段LとコンデンサCの共振周波数fの交流を出力した場合、電源Vから見ると直列共振回路が短絡しているように見える(図3(A2))。
【0019】
一方、図3(B1)はインダクタンス手段LとコンデンサCが並列に接続する並列共振回路を説明する図である。電源Vがインダクタンス手段LとコンデンサCの共振周波数fの交流を出力した場合、電源Vから見ると並列共振回路が解放しているように見える(図3(B2))。
【0020】
医療用X線電源装置301の共振回路RCは、このような直列共振と並列共振の動作を利用している。第1の経路P1の共振周波数はfである。第2の経路P2の共振周波数はfである。ここで、f≠fである。
【0021】
インバータinvのスイッチング周波数をfとしてインバータinvが出力する交流の周波数をfとし、スイッチSWで第1の経路P1を選択(SW1をオン、SW2をオフ)すると、第1の経路P1が並列共振し、図3(B2)のように解放状態となる。つまり、インバータinvのスイッチング周波数がfであるときの医療用X線電源装置301の等価回路は図4のようになる。インバータinvからトランスTrへのインピーダンスが増大した状態となるので、インバータinvはX線管球EDTに対して小さな電力を供給することができる。
【0022】
一方、インバータinvのスイッチング周波数をfとしてインバータinvが出力する交流の周波数をfとし、スイッチSWで第2の経路P2を選択(SW1をオフ、SW2をオン)すると、第2の経路P2が直列共振し、図3(A2)のように短絡状態となる。つまり、インバータinvのスイッチング周波数がfであるときの医療用X線電源装置301の等価回路は図5のようになる。インバータinvからトランスTrへのインピーダンスが低下した状態となるので、インバータinvはX線管球EDTに対して大きな電力を供給することができる。
【0023】
すなわち、透視モードでは、スイッチSWが第1の経路P1を選択し、インバータinvがコンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが共振状態となるような周波数fでスイッチングし、撮影モードでは、スイッチSWが第2の経路P2を選択し、インバータinvがコンデンサC2と第3インダクタンス手段L3とが共振状態となるような周波数fでスイッチングする。このように、医療用X線電源装置301は、インバータinvのスイッチング周波数(出力する交流の周波数f/f)と経路(P1/P2)を切り替えることで、トランスTrの二次側の定格出力を切り替える。
【0024】
医療用X線電源装置301は、このように、インバータinvのスイッチング周波数とスイッチSWを切り替えることで、共振回路RCのインピーダンスを変化させ、出力電力を大きく違えることができる。
【0025】
[実施形態2]
図2は、本実施形態の医療用X線電源装置302を説明する図である。医療用X線電源装置302は、図1の医療用X線電源装置301に対し、共振回路RCの回路構成が異なる。すなわち、医療用X線電源装置302の共振回路RCは、第1の経路P1と第2の経路P2とが共有する第1インダクタンス手段L1を有している。
第1の経路P1は、第1コンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが並列する並列回路PCを有し、第1インダクタンス手段L1と並列回路PCとが直列に接続されるように構成され、透視モードの周波数fで第1コンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが並列共振することを特徴とする。
第2の経路P2は、第2コンデンサC2を有し、第1インダクタンス手段L1と第2コンデンサとが直列に接続されるように構成され、撮影モードの周波数fで第1インダクタンス手段L1と第2コンデンサC2とが直列共振することを特徴とする。
【0026】
医療用X線電源装置302は、第1の経路P1と第2の経路P2とで第1インダクタンス手段L1を共有するため、図1の医療用X線電源装置301に対し、インダクタンス手段の数を減らして小型化することができる。
【0027】
なお、実施形態1と同様にスイッチSWは、第1の経路P1と第2の経路P2を排他的に選択する1つのスイッチであってもよい。
【0028】
医療用X線電源装置302の共振回路RCも、図3で説明したような直列共振と並列共振の動作を利用している。第1の経路P1の共振周波数はfである。第2の経路P2の共振周波数はfである。ここで、f≠fである。
【0029】
インバータinvのスイッチング周波数をfとしてインバータinvが出力する交流の周波数をfとし、スイッチSWで第1の経路P1を選択(SW1をオン、SW2をオフ)すると、第1の経路P1が並列共振し、図3(B2)のように解放状態となる。つまり、インバータinvのスイッチング周波数がfであるときの医療用X線電源装置302の等価回路は図6のようになる。インバータinvからトランスTrへのインピーダンスが増大した状態となるので、インバータinvはX線管球EDTに対して小さな電力を供給することができる。
【0030】
一方、インバータinvのスイッチング周波数をfとしてインバータinvが出力する交流の周波数をfとし、スイッチSWで第2の経路P2を選択(SW1をオフ、SW2をオン)すると、第2の経路P2が直列共振し、図3(A2)のように短絡状態となる。つまり、インバータinvのスイッチング周波数がfであるときの医療用X線電源装置302の等価回路は図7のようになる。インバータinvからトランスTrへのインピーダンスが低下した状態となるので、インバータinvはX線管球EDTに対して大きな電力を供給することができる。
【0031】
すなわち、透視モードでは、スイッチSWが第1の経路P1を選択し、インバータinvがコンデンサC1と第2インダクタンス手段L2とが共振状態となるような周波数fでスイッチングし、撮影モードでは、スイッチSWが第2の経路P2を選択し、インバータinvがコンデンサC2と第1インダクタンス手段L1とが共振状態となるような周波数fでスイッチングする。このように、医療用X線電源装置302は、インバータinvのスイッチング周波数(出力する交流の周波数f/f)と経路(P1/P2)を切り替えることで、トランスTrの二次側の定格出力を切り替える。
【0032】
医療用X線電源装置302は、このように、インバータinvのスイッチング周波数とスイッチSWを切り替えることで、共振回路RCのインピーダンスを変化させ、出力電力を大きく違えることができる。
【0033】
(実施例)
本実施例は、図2の医療用X線電源装置302の具体例である。前述のように、X線を利用する医療装置は、小さな定格出力(例えば25Wから1kW)の透視モードと、大きな定格出力(例えば80kWから100kW)の撮影モードがある。
【0034】
第1インダクタンス手段L1はl[H]、
第2インダクタンス手段L2はl[H]、
コンデンサC1はc[F]
コンデンサC2はc[F]
とする。このときの医療用X線電源装置の定格出力とスイッチング周波数との関係を図8(A)に示す。
【0035】
図8(B)は、スイッチSWで第1の経路P1を選択し、インバータinvのスイッチング周波数を第1の経路P1の共振周波数fkHzとしたときの医療用X線電源装置302の等価回路である。なお、fは次式を満たしており、15kHzから50kHz程度である。
【数1】
で第1の経路P1のインピーダンス計算を行うと誘導性回路(例えば、インダクタンスl[H])で高インピーダンスとなり、医療用X線電源装置302はX線管球EDTに供給する出力を絞ることができる。このため、医療装置を透視モードで動作させることができる。
【0036】
図8(C)は、スイッチSWで第2の経路P2を選択し、インバータinvのスイッチング周波数を第2の経路P2の共振周波数fkHzとしたときの医療用X線電源装置302の等価回路である。なお、fは次式を満たしており、50kHzから120kHz程度である。
【数2】
で第2の経路P2のインピーダンス計算を行うと容量性回路(例えば、容量c[F])で低インピーダンスとなり、医療用X線電源装置302は高出力をX線管球EDTに供給できる。このため、医療装置を撮影モードで動作させることができる。
【0037】
共振周波数が異なる2つの経路を有する共振回路RCを使用し、スイッチSWで一方の経路を選択し、インバータinvのスイッチング周波数を撮影モードと透視モードの各々適切に選定することで、出力制御することが可能となる。すなわち、本発明に係る医療用X線電源装置は、定格出力が4000倍も異なるような動作モードにも対応できる。
【0038】
なお、「共振周波数」とは次を意味する。
実際の医療用X線電源装置では、コンデンサ及びインダクタンス手段の設計値に基づいて共振周波数を計算してインバータinvのスイッチング周波数を制御する。しかし、コンデンサの実際のキャパシタンスとインダクタンス手段の実際のインダクタンスは製造誤差などにより設計値からずれていることがある。例えば、その誤差はコンデンサの場合0~±20%、インダクタンス手段の場合0~±15%である。さらに、共振回路RC自体やトランスTrにもキャパシタンスやインダクタンスの成分が存在する。このため、設計値から計算した共振周波数が必ずしも第1の経路P1や第2の経路P2の共振点(共振周波数fやf)に一致しているわけではない。このため、「共振周波数」とは「共振周波数の近傍周波数」を含む。
なお、事前に医療用X線電源装置を動作させて第1の経路P1や第2の経路P2の共振点を測定し、その周波数でインバータinvのスイッチング周波数を制御するように設定してもよい。
【符号の説明】
【0039】
E:直流電源
inv:インバータ
SW、SW1、SW2:スイッチ
Tr:トランス
RF:整流回路
EDT:X線管球
RC:共振回路
P1:第1の経路
P2:第2の経路
C1:第1コンデンサ
C2:第2コンデンサ
L1:第1インダクタンス手段
L2:第2インダクタンス手段
L3:第3インダクタンス手段
PC:並列回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8