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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110716
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230802BHJP
   C05G 5/20 20200101ALI20230802BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C05G5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012320
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(71)【出願人】
【識別番号】522041352
【氏名又は名称】厨子 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】厨子 圭介
【テーマコード(参考)】
4D025
4H061
【Fターム(参考)】
4D025AA10
4D025AB19
4D025BA03
4D025BA08
4D025BA13
4D025BA22
4D025BB09
4D025CA03
4D025CA04
4D025CA10
4H061BB21
4H061CC01
4H061FF01
4H061GG03
4H061GG10
4H061GG12
4H061GG22
4H061GG56
(57)【要約】
【課題】 高効率且つ低コストで難溶性塩固体を安定的に水溶性とすることができる水処理装置を提供する。
【解決手段】 水処理装置は、難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体から構成され、当該イオン交換体に当該構成イオンのいずれかを吸着させて、当該吸着した構成イオンを当該イオン交換体から溶出させる水処理装置であって、前記イオン交換体を収容する収容手段と、前記収容手段に所定の水溶液を供給する供給手段と、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着の際よりも前記溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段と、前記制御手段の制御により前記難溶性塩由来の前記構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段と、を備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体から構成され、当該イオン交換体に当該構成イオンのいずれかを吸着させて、当該吸着した構成イオンを当該イオン交換体から溶出させる水処理装置であって、
前記イオン交換体を収容する収容手段と、
前記収容手段に所定の水溶液を供給する供給手段と、
前記収容手段を流通する水溶液の流路長を、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着の際よりも前記溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段と、
前記制御手段の制御により前記難溶性塩由来の前記構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段と、
を備えることを特徴とする
水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記制御手段が、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着後かつ前記溶出前に、前記供給手段により所定の水溶液を前記収容手段に流通させて前記イオン交換体を浸漬状態に維持することを特徴とする
水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水処理装置において、
前記収容手段が、
複数の収容容器と、
隣接する前記収容容器の下部同士を開閉可能に連結する下部開閉弁と、
少なくとも1つの隣接する前記収容容器の上部同士を開閉可能に連結する上部開閉弁と、から構成され、
前記制御手段が、前記上部開閉弁及び下部開閉弁の各々の開閉状態を制御して前記流路長を可変に制御することを特徴とする
水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置において、
前記収容手段の収容容器が、
収容容器の中間位置に載置された前記イオン交換体が収納されてなるイオン交換体収納部と、
前記イオン交換体収納部の底面より低い空間領域からなる連通部と、
前記イオン交換体収納部の上面より高い空間領域からなる溢流部と、から構成され、
前記下部開閉弁が、前記連通部に配設されると共に、
前記上部開閉弁が、前記溢流部に配設されることを特徴とする
水処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の水処理装置において、
前記制御手段が、前記収容手段に供給された水溶液のpH値及び/又はEC値に基づいて、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を制御することを特徴とする
水処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の水処理装置から構成されることを特徴とする
液肥製造装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被水溶液を浄化処理する水処理装置に関し、特に、難溶性塩含有水溶液を処理可能とする水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのアルカリ土類金属塩に代表される難溶性塩を含有する水溶液(難溶性塩含有水溶液)は、そのまま排出すると環境に負荷を与えるため、浄化処理が必要とされている。
【0003】
他方で、このような難溶性塩含有水溶液には、有用な肥料成分が含まれているケースも多い。栄養資源である肥料は、ライフサイクルを考えた場合、遠く海外からエネルギーをかけて輸入されており、国内での安定供給化が必要とされている状況である。さらに近年では、埋蔵資源の枯渇が憂慮されており、肥料の循環利用や効率的利用の必要性が叫ばれている状況である。
【0004】
この点から、農業や生活で利用された栄養源は、排出・流亡により環境水中に流入すると富栄養化により環境悪化を引き起こすことから、気相や固相に除去する処置がなされると共に、その一部は堆肥等の肥料として循環利用が図られている。
【0005】
しかし、水系にある栄養源は難溶性物質として回収されるが、その回収の程度は、溶解性と需要・供給バランスに左右されており、現状ではその低い水溶性から供給速度の遅い緩効性肥料として循環しているという状況である。
【0006】
例えば、石膏ボード等の建築材料として利用された石膏はその安定性のために再利用(Board to Board)できないものは最終処分されており、最終処分場を圧迫している。石膏の主成分であるカルシウムは動植物の準必須元素であるため農業分野への転用が検討されているが、その溶解性の低さからその投与効果は疑問視され普及利用が進んでいない。
【0007】
例えば、石膏を変換する方法としては、硫酸や塩酸を加えた水性硫酸カルシウムスラリーを形成した後に塩化物型陰イオン交換体を低pHで反応させ水溶性硫酸カリウム、またはナトリウムの結晶を得る技術がある(特許文献1)。しかし、この技術では石膏以外に酸を投入する工程が別途必要であり製造コストが高いものとなっている。
【0008】
水系にある栄養源を農業分野に利用する技術としてイオン交換体を利用したリン酸回収技術がある。リン酸回収技術ではイオン交換体を液体クロマトグラフィーの分離担体として用いリン酸を含む混合酸からリン酸、硝酸、酢酸を分離回収する技術が知られている(特許文献2)。また、ゼオライト等のイオン交換体とクエン酸等の有機酸を用いて難溶性リン酸を含む焼却灰から有機酸の効果により不溶性リン酸の一部を土壌溶液中に溶出させる緩効性肥料の製造も知られている(特許文献3)。
【0009】
しかし、土壌中で難溶性塩を形成するリン酸は投与量に占める植物体への吸収率は多くの場合10%を下回り、他の必須元素、カリウムや窒素と比べて著しく低く、その吸収率を上げることは長年の課題である。
【0010】
廃棄物を扱う静脈産業において、環境水中の栄養塩は富栄養化を防ぐ必要性から多くの場合、固相に難溶性塩を生成させ水系から除かれる。また、建築材として利用される難溶性塩はその安定性のため有用であるが、他の産業に資材として転用する場合にはその溶解性や反応性の低さのために実効性・有用性が限定的となる。
【0011】
今後も、栄養塩の投与時期を制御するIOT農業の進行に伴って水溶性塩の需要はさらに高まると考えられ、本発明の難溶性塩の水溶化技術は資源循環、資源確保、効率農業の問題を考える上でカギとなる技術である。
【0012】
このような問題点に対するアプローチとして、イオン交換の処理効率を高めるため、イオン交換樹脂による水溶液処理を、開閉弁による流路制御を用いて制御する水処理装置が開発されている。
【0013】
例えば、従来の水処理装置としては、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する軟水化槽と、軟水化槽と通過した軟水のpHを炭酸カルシウムの徐放により中和する中和槽とを備え、中性の水を生成する軟水化装置であって、前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水を生成する電解槽と、前記電解槽によって生成した酸性電解水によって前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する再生装置を備え、前記再生装置は、再生時に軟水化槽から排出される硬度成分と前記アルカリ性電解水を反応させる処理槽と、前記電解槽から酸性水を引き出し前記軟水化槽の上流側へ送水可能とする第一供給流路と、前記軟水化槽の下流側を前記処理槽の上流側に接続可能とした回収流路と、前記処理槽の下流側を前記電解槽の上流側に接続する供給流路と、前記電解槽からアルカリ性水を引き出して前記処理槽へ送水可能とする第二供給流路と、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生時の水を循環させる循環流路を形成し、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生の初期に、開閉弁の切り替えによって、前記弱酸性陽イオン交換樹脂を通して原水を前記処理槽に蓄える軟水化装置が知られている(特許文献4参照)。
【0014】
また、例えば、従来の水処理装置としては、原水を濾過して浄水を生成する浄水システムであって、少なくとも1つ以上の吐水口と、原水を供給する原水供給流路と、第1フィルタと、前記第1フィルタに被濾過水を供給する第1浄水供給流路と、前記第1フィルタを前記吐水口に接続する第1浄水流路と、イオン分離性能を有する第2フィルタと、前記第1浄水路から分岐して、前記第2フィルタに被濾過水を供給する第2浄水供給流路と、前記第2フィルタを前記吐水口に接続する第2浄水流路と、前記第1浄水流路と、前記第2浄水流路とを、前記吐水口に連通させる切替手段とを、備え、前記切替手段が、前記第1浄水流路から供給される第1浄水と、前記第2浄水流路から供給される第2浄水とを、任意の混合比率で混合して、前記吐水口から流出させることができる、浄水システムが知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭59-83929号公報
【特許文献2】特願2014-8411号公報
【特許文献3】特願2014-237339号公報
【特許文献4】特開2021-133268号公報
【特許文献5】特開2015-123389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、従来の水処理装置では、特許文献4及び特許文献5のように、開閉弁による流路制御を用いる結果、多数の開閉弁を用いて複雑に開閉制御することとなって処理が煩雑化し、水処理装置のメンテナンス性が低下すると共に高コスト化を招くという課題がある。
【0017】
このように、従来の水処理装置では、簡素な構成で高効率且つ低コストで難溶性塩固体を安定的に水溶性とすることが依然として困難であり、水溶性の低い塩からなる緩効性肥料として再利用したとしても、植物体への緩効性肥料の吸収効率は依然として高くできないという課題がある。
【0018】
本発明の目的は、如上の課題を解決することであり、高効率且つ低コストで難溶性塩固体を安定的に水溶性とすることができる水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、鋭意研究の結果、加熱処理や酸・アルカリによる分解処理等を必要とせず、最終処分される産業廃棄物等の難溶性塩も簡易に水溶性に変化させる方法を導き出し、あわせて水溶性肥料の製造を含めた廃棄材料再生技術を可能とする水処理装置を導き出した。
【0020】
本願に開示する水処理装置は、難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体から構成され、当該イオン交換体に当該構成イオンのいずれかを吸着させて、当該吸着した構成イオンを当該イオン交換体から溶出させる水処理装置であって、前記イオン交換体を収容する収容手段と、前記収容手段に所定の水溶液を供給する供給手段と、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着の際よりも前記溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段と、前記制御手段の制御により前記難溶性塩由来の前記構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段と、を備えるものである。
【0021】
このように、本願に開示する水処理装置は、難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体から構成され、当該イオン交換体に当該構成イオンのいずれかを吸着させて、当該吸着した構成イオンを当該イオン交換体から溶出させる水処理装置であって、前記イオン交換体を収容する収容手段と、前記収容手段に所定の水溶液を供給する供給手段と、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着の際よりも前記溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段と、前記制御手段の制御により前記難溶性塩由来の前記構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段と、を備えることから、前記制御手段が、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着の際よりも前記溶出の際のほうが長くなるように可変に制御することで、前記構成イオンの前記吸着と前記溶出を同じ装置構成のなかで最適かつシンプルに行えることとなり、簡素な構成で効率的に前記難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0022】
また、本願に開示する水処理装置は、必要に応じて、前記制御手段が、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着後かつ前記溶出前に、前記供給手段により所定の水溶液を前記収容手段に流通させて前記イオン交換体を浸漬状態に維持するものである。このように、本願に開示する水処理装置は、前記制御手段が、前記イオン交換体への前記構成イオンの前記吸着後かつ前記溶出前に、前記供給手段により所定の水溶液を前記収容手段に流通させて前記イオン交換体を浸漬状態に維持することから、前記イオン交換体に対する酸化の進行が浸漬状態によって抑制されることとなり、より高い品質で前記難溶性塩を溶解させることが可能となる。また、収容手段の収容容器の流路長が短流路の状態で一斉排水がなされることによって、前記吸着成分と溶解塩水溶液の分離、および洗浄が短時間、かつ小体積で可能となることから、より高濃度の溶解塩水溶液と不純物の少ない吸着成分とを容易に得ることができる。
【0023】
また、本願に開示する水処理装置は、必要に応じて、前記収容手段が、複数の収容容器と、隣接する前記収容容器の下部同士を開閉可能に連結する下部開閉弁と、少なくとも1つの隣接する前記収容容器の上部同士を開閉可能に連結する上部開閉弁と、から構成され、前記制御手段が、前記上部開閉弁及び下部開閉弁の各々の開閉状態を制御して前記流路長を可変に制御するものである。このように、本願に開示する水処理装置は、前記収容手段が、複数の収容容器と、隣接する前記収容容器の下部同士を開閉可能に連結する下部開閉弁と、少なくとも1つの隣接する前記収容容器の上部同士を開閉可能に連結する上部開閉弁と、から構成され、前記制御手段が、前記上部開閉弁及び下部開閉弁の各々の開閉状態を制御して前記流路長を可変に制御することから、前記収容手段の同じ収容容器のままで、前記下部開閉弁と前記上部開閉弁との切替のみで、前記構成イオンの前記吸着及び前記溶出が行われることとなり、前記構成イオンの前記吸着と前記溶出を同じ収容容器で最適かつシンプルに行えることとなり、さらに簡素な構成で効率的に前記難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0024】
また、本願に開示する水処理装置は、必要に応じて、前記収容手段の収容容器が、収容容器の中間位置に載置された前記イオン交換体が収納されてなるイオン交換体収納部と、前記イオン交換体収納部の底面より低い空間領域からなる連通部と、前記イオン交換体収納部の上面より高い空間領域からなる溢流部と、から構成され、前記下部開閉弁が、前記連通部に配設されると共に、前記上部開閉弁が、前記溢流部に配設されるものである。このように、本願に開示する水処理装置は、前記収容手段の収容容器が、収容容器の中間位置に載置された前記イオン交換体が収納されてなるイオン交換体収納部と、前記イオン交換体収納部の底面より低い空間領域からなる連通部と、前記イオン交換体収納部の上面より高い空間領域からなる溢流部と、から構成され、前記下部開閉弁が、前記連通部に配設されると共に、前記上部開閉弁が、前記溢流部に配設されることから、前記構成イオンの前記溶出の際に、前記溢流部から前記収容手段の収容容器に、自然に発生する水流を利用することで、減圧装置を不要として、前記溶出に係る水溶液が溢流の作用によって隣接する収容容器に自動的に流れ出すこととなり、さらに簡素な構成で効率的に前記難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0025】
また、本願に開示する水処理装置は、必要に応じて、前記制御手段が、前記収容手段に供給された水溶液のpH値及び/又はEC値に基づいて、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を制御するものである。このように、本願に開示する水処理装置は、前記制御手段が、前記収容手段に供給された水溶液のpH値及び/又はEC値に基づいて、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を制御することから、前記制御手段が、pH値というシンプルな指標によって、前記収容手段を流通する水溶液の流路長を制御できることとなり、より簡素な構成で効率的に前記難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0026】
また、本願に開示する液肥製造装置は、前記水処理装置から構成されるものである。このように、本願に開示する液肥製造装置は、前記水処理装置から構成されることから、前記水処理装置に生成された前記難溶性塩を溶解させた水溶液が、液肥として製造されることとなり、より簡素な構成で効率的に液肥を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の構成図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の収納容器の構成図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の概要図を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の構成図(A状態)を示す。
図5】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の構成図(B状態)を示す。
図6】本発明の第3の実施形態に係る水処理装置のpH検出器を備える構成図を示す。
図7】本発明の第3の実施形態に係る水処理装置のEC検出器を備える構成図を示す。
図8】本発明の実施例1及び2に係る水処理装置の石膏及びリン酸イオンの溶出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る水処理装置は、図1に示すように、難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体1a、1b、1c、1dから構成され、このイオン交換体にこの構成イオンのいずれかを吸着させて、この吸着した構成イオンをこのイオン交換体から溶出させる水処理装置であって、このイオン交換体を収容する収容手段1と、この収容手段1に所定の水溶液を供給する供給手段2と、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を、このイオン交換体への構成イオンの吸着の際よりも溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段3と、この制御手段3の制御によりこの難溶性塩由来の構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段4と、を備えるものである。
【0029】
このイオン交換体を収容する収容手段1は、特に限定されないが、図1に示すように、複数の収容容器11と、隣接するこの収容容器11の下部同士を開閉可能に連結する下部開閉弁12と、少なくとも1つの隣接するこの収容容器11の上部同士を開閉可能に連結する上部開閉弁13と、から構成され、この制御手段3が、この上部開閉弁13及び下部開閉弁12の各々の開閉状態を制御してこの流路長を可変に制御することができる。
【0030】
この上部開閉弁13及び下部開閉弁12は、連結コックとして形成される。複数の収容容器11が連結コックで連結されることによって、難溶性固体の共存平衡化が促進される。
【0031】
さらに、この収容手段1の収容容器11は、特に限定されないが、図2に示すように、収容容器11の中間位置に載置されたイオン交換体1aが収納されてなるイオン交換体収納部14aと、このイオン交換体収納部14aの底面より低い空間領域からなる連通部15aと、このイオン交換体収納部14aの上面より高い空間領域からなる溢流部16aと、から構成され、この下部開閉弁12aが、この連通部15aに配設されると共に、この上部開閉弁13aが、この溢流部16aに配設されるものである。
【0032】
所定の水溶液とは、収容容器11に供給される供給溶液100として、このイオン交換体へこの構成イオンの吸着の際には、吸着対象の構成イオンを含む難溶性塩含有水溶液であり、溶出液用容器21に収容される。また、このイオン交換体へこの構成イオンの吸着の際には、所定の水溶液とは、収容容器11に供給される供給溶液100として、このイオン交換体に吸着された構成イオンから水溶性塩を生成可能な水溶性塩水溶液であり、例えば、カルシウムイオンと水溶性塩を形成可能な酢酸水溶液が挙げられ、イオン交換樹脂再生溶液用容器22に収容される。
【0033】
難溶性塩とは、水への溶解度が低い塩を意味する。この難溶性塩含有水溶液としては、アルカリ土類金属塩に代表される難溶性塩を含有する水溶液等を幅広く適用可能であり、難溶性物質として鶏糞灰のような焼却灰についても適用することが可能である。この場合、水溶性リン酸と水溶性の金属塩等を分離することが可能となる。この他にも、難溶性塩と不溶性の紙、プラスティック、金属などが共存している場合でも難溶性塩のみを水溶性化し不溶性成分を、網等を用いて分離回収することも可能である。
【0034】
このイオン交換体1a、1b、1c、1dとは、有機性や無機性の骨格に電荷を持つ官能基とその反対電荷を持つ粒子、対イオンで構成される物質。イオン交換樹脂やゼオライトなどがこの中に含まれる。イオン交換とは、イオン交換体と反対符号を持つ荷電粒子である対イオンが他の種類の対イオンと電気的中性を保ちながら等価交換する可逆的な平衡を指す。この対イオンとは、イオン交換体の全体荷電を中性に保つためにイオン交換体の電荷と逆の符号の荷電がイオン交換体の荷電を持つ部位、官能基付近に存在する粒子を指す。
【0035】
このイオン交換体としては、例えば、陽イオン交換体を用いることができる。陽イオン交換体の種類は、特に限定されないが、ナトリウム型、H型、カリウム型、アンモニウム型等を用いることが可能であり、例えば、ナトリウム型を用いることができる。
【0036】
この他にも、このイオン交換体としては、陽イオン交換体に限定されず、陰イオン交換体を用いることも可能である。陰イオン交換体を用いた場合は分離回収される難溶性成分の回収の順番が陽イオン交換体の場合と逆になるのみであり、所望の用途に応じて適宜選択可能である。
【0037】
イオン交換体を収容する収容容器11や吸引容器42のサイズ、および個数は、所望の用途に応じて適宜選択可能であり、処理する難溶性塩の量やイオン交換体を通過させる流路に応じて変更することができる。
【0038】
この制御手段3は、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を、このイオン交換体への構成イオンの吸着の際よりもこの溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する。図1に示すように、この制御手段3は、各収容容器11の底部とイオン交換体界面上端に配設された連結コックとしての上部開閉弁13及び下部開閉弁12に対して、弁の開閉状態を制御することによって連結通液/遮断状態を変換する。収容容器11の上部は供給溶液100の流入を容易とするために開放が可能な構造を有する。この制御手段3は、溶液の排出、およびイオン交換を促すための長行路確保を各収容容器11の連結部分である連結コックである上部開閉弁13及び下部開閉弁12の切り替えで実現する。
【0039】
各収容容器11には、イオン交換体収納部14にイオン交換体を保持し、イオン交換体収納部14の底部には、イオン交換体の流出を防ぐためのメッシュ構造を有する。このメッシュ構造は、特に限定されないが、例えば、孔径1mm 以下のものを用いることができる。
【0040】
この抽出手段4は、この制御手段3の制御によりこの難溶性塩由来の構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出するものであり、この吸着及び溶出の各々の最終段階で排出される溶液を回収する収容容器11として構成される。このイオン交換体への構成イオンの吸着の際には、吸着溶液回収容器43aとして構成されるが、図1に示すように、イオン交換体の通気乾燥を促進させる目的でドライ真空ポンプ41と、吸引容器42とを備えることが好適である。このイオン交換体への構成イオンの溶出の際には、溶出溶液回収容器43bとして構成される。
【0041】
このような構成の水処理装置の外観の一例を図3に示す。図3に示すように、この供給手段2は、この収容手段1に所定の水溶液を供給するものであり、溶出液用容器21と、イオン交換樹脂再生溶液用容器22と、から構成される。また、吸着溶液回収容器43aを載置する昇降台200aと、溶出溶液回収容器43bを載置する昇降台200bと、を備えることで、昇降台200aと昇降台200bの高さを利用して、重力の作用により、吸着溶液回収容器43aと溶出溶液回収容器43bへの溶液の回収を容易化する。また、台座300を収容容器11の周囲に配置することで装置のメンテナンス等の作業のし易さが向上される。
【0042】
また、図3に示すように、各収容容器11において早期にイオン交換平衡に到達させるために、振動、熱、過電圧等の外的エネルギーを付加することも可能であり、例えば、撹拌機55を用いて振動を付加することも可能である。この他、早期にイオン交換平衡に到達させる手法としては上記に限定されず、連続多段抽出法、流動床法、カラム法等を適宜適用することも可能である。
【0043】
以下、本実施形態に係る水処理装置の動作について説明する。
【0044】
(第一の工程)
先ず、図4に示すように、この制御手段3が、連結された各収容容器11の下部開閉弁12のみを開放した状態(A状態)にする。溶出液用容器21に収容された成分1と成分2の構成イオンを溶液中で形成する難溶性固体溶液が、供給手段2から供給される。例えば難溶性塩である石膏(主成分CaSO)の場合には、カルシウムイオン(成分1の構成イオン)と硫酸イオン(成分2の構成イオン)として例示される。
【0045】
イオン交換体として、ナトリウム型とした陽イオン交換能を持つイオン交換樹脂又はゼオライトを適用した場合には、このイオン交換体にカルシウムイオン(成分1の構成イオン)が保持されると共に、このイオン交換体の外部溶液相には硫酸イオン(成分2の構成イオン)からなる硫酸ナトリウムが含まれた吸着済み溶液100aとなる。
【0046】
この吸着済み溶液100aは、制御手段3により下部開閉弁12のみが開放された状態によって、重力の作用によって下部開閉弁12に向かって排出され、吸着溶液回収容器43aに回収される。供給手段2として溶出液用容器21から水を繰り返し各収容容器11に供給することで、硫酸ナトリウムが含まれた吸着済み溶液100aが吸着溶液回収容器43aに繰り返し排出され、各収容容器11中の溶液が水に置き換えられる。
【0047】
この操作により、難溶性塩である石膏固体が消滅すると共に、溶液相の硫酸濃度が減少し、溶液相内の吸着済み溶液100aに含まれる硫酸ナトリウムの濃度は、溶出液用容器21から水を3-4回繰り返し各収容容器11に供給することで、ほぼゼロとなる。
【0048】
重力による溶液排出に引き続いて、ドライ真空ポンプ41を稼働させることにより、強制排出を促して、吸引容器42に吸着済み溶液100aを排出溶液として回収し、イオン交換体の通気乾燥を行う。吸引容器42が満たされた場合には吸引容器42の下部コックより溶液が吸着溶液回収容器43aに回収される。
【0049】
なお、各収容容器11に対して、例えば、撹拌機55を用いて振動を付加することも可能である。この振動により、各収容容器11において早期に難溶性塩水溶液をイオン交換平衡に到達させることが可能となる。
【0050】
そのため、この第一の工程においては、この収容手段1を構成する複数の収容容器11は、広口径で上部に撹拌機55能を有することが好適であり、これにより、難溶性塩固体の導入とイオン交換体との攪拌によるより速やかな平衡化が可能となる。
【0051】
(第二の工程)
次に、図5に示すように、この制御手段3が、連結された各収容容器11を、上部開閉弁13と下部開閉弁12の各連結コックが交互に開放した状態(B状態)にする。この状態のもとで、イオン交換体に吸着したカルシウムイオン(成分1の構成イオン)と水溶性塩を形成可能な溶液(例えば酢酸水溶液)が、イオン交換樹脂再生溶液用容器22に収容されており、供給手段2から供給される。
【0052】
このB状態が形成されることにより、各収容容器11の溢流部16まで水溶液が満たされる状態となる。イオン交換体に保持された難溶性塩のカルシウムイオン(成分1の構成イオン)と水溶性塩を形成可能な溶液(例えば酢酸水溶液)を、図5に示すように、水溶液が満たされた収容容器11a、11b、11c、11dの順番に通過させて、カルシウム型のイオン交換体がH型のイオン交換体に変換されるとともに酢酸カルシウムを含む溶出溶液100bが溶出溶液回収容器43bに回収できる。
【0053】
なお、上記のB状態では、連結された各収容容器11を、上部開閉弁13と下部開閉弁12の各連結コックが交互に開放した状態としたが、この交互に開放した状態に限定されず、この上部開閉弁13としては、少なくとも1つの隣接するこの収容容器11の上部同士を開閉可能に連結されておく構成で、上記のB状態を形成することも可能である。
【0054】
このように、この第二の工程では制御手段3によるコックの切り替えにより流路長を長く取る収容容器11構造を有することから、第二の工程においてイオン交換体の詰め替えを行わずに完全にイオン交換を達成することが可能となる。
【0055】
すなわち、本水処理装置では、同一装置にて第一の工程と第二の工程の2つの工程でのイオン交換を行うことができ、難溶性固体(例えば石膏)に含まれる成分1の構成イオン(例えばカルシウムイオン)を含む水溶液と、難溶性固体(例えば石膏)に含まれる成分2の構成イオン(例えば硫酸イオン)をイオン交換体に分離し、成分1の構成イオン(例えばカルシウムイオン)を含む水溶液の排出後に、成分2の構成イオン(例えば硫酸イオン)を水溶性塩水溶液として分離回収することが実現でき、コンパクトで低コスト且つ高効率な水処理装置が実現される。
【0056】
このように、原料として導入された難溶性塩は、難溶性塩のカチオン(またはアニオン)をイオン交換体に保持し水溶性のアニオン(またはカチオン)と分離する第一の工程と、イオン交換体に保持されたカチオン(またはアニオン)を溶液中に溶出させ難溶性塩のカチオン(またはアニオン)を含む水溶性塩を得る第二の工程の2つの工程で処理される。これにより、原料として導入された難溶性塩がイオン交換体を用いて最適にイオン交換され、難溶性塩のカチオンを含む水溶性塩とアニオンを含む水溶性塩の二つの水溶液に効率的に分離される。
【0057】
つまり、難溶性塩が保持していたカチオン/アニオンをイオン交換体の対イオン(カチオン/アニオン)とイオン交換することにより、イオン交換体が保持していた対イオン(カチオン/アニオン)と難溶性塩のイオン交換体と同電荷の難溶性塩構成イオン(アニオン/カチオン)とで構成される水溶液を生じさせる。溶液部分を水と変換することによりさらに難溶性塩成分の水溶化とイオン交換体への保持が進行し、イオン交換容量を超えずに全ての難溶性塩が水溶化した状態でイオン交換体と共存する水溶液を水に置換したのに続いて、イオン交換体に保持された難溶性塩のカチオン/アニオンと可溶性塩を形成するアニオン/カチオンを含む塩の溶液とを共存させることにより難溶性塩のカチオン/アニオンを含む水溶液を得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る水処理装置は、上述のように、難溶性塩含有水溶液の構成イオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体から構成され、このイオン交換体にこの構成イオンのいずれかを吸着させて、この吸着した構成イオンをこのイオン交換体から溶出させる水処理装置であって、このイオン交換体を収容する収容手段1と、この収容手段1に所定の水溶液を供給する供給手段2と、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を、このイオン交換体への構成イオンの吸着の際よりも溶出の際のほうが長くなるように可変に制御する制御手段3と、この制御手段3の制御によりこの難溶性塩由来の構成イオンのいずれかが溶解した水溶液を選択的に抽出する抽出手段4と、を備えることから、この制御手段3が、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を、このイオン交換体への構成イオンの吸着の際よりも溶出の際のほうが長くなるように可変に制御することで、この構成イオンの吸着と溶出を同じ装置構成のなかで最適かつシンプルに行えることとなり、簡素な構成で効率的にこの難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0059】
すなわち、難溶性塩のカチオン/アニオンのいずれかをイオン交換するイオン交換体を共存させる平衡システムであって、同じ装置内でA状態とB状態の2段階で流路長を可変として難溶性塩の構成成分を別々に可溶化させることが可能となる。このように、難溶な有用成分を2段階で可溶性塩に分割できることで、難溶性塩を再活用する農工業分野における実効性、利便性を向上させることが可能となる。これにより、加熱処理や酸・アルカリによる分解処理を伴わず、混合平衡化により分離を実現させ、低エネルギーコストにより難溶性の産業廃棄物を水溶性に変換し、廃棄物を減らすとともに有用な資材を生み出すことが可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る水処理装置は、上述のように、この収容手段1が、複数の収容容器11と、隣接するこの収容容器11の下部同士を開閉可能に連結する下部開閉弁12と、少なくとも1つの隣接するこの収容容器11の上部同士を開閉可能に連結する上部開閉弁13と、から構成され、この制御手段3が、この上部開閉弁13及び下部開閉弁12の各々の開閉状態を制御してこの流路長を可変に制御することから、この収容手段1の同じ収容容器11のままで、この下部開閉弁12とこの上部開閉弁13との切替のみで、この構成イオンの吸着及びこの溶出が行われることとなり、この構成イオンの吸着とこの溶出を同じ収容容器11で最適かつシンプルに行えることとなり、さらに簡素な構成で効率的にこの難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る水処理装置は、上述のように、この収容手段1の収容容器11が、収容容器11の中間位置に載置されたこのイオン交換体が収納されてなるイオン交換体収納部14と、このイオン交換体収納部14の底面より低い空間領域からなる連通部15と、このイオン交換体収納部14の上面より高い空間領域からなる溢流部16と、から構成され、この下部開閉弁12が、この連通部15に配設されると共に、この上部開閉弁13が、この溢流部16に配設されることから、この構成イオンの溶出の際に、この溢流部16からこの収容手段1の収容容器11に、この溶出に係る水溶液が溢流で流れ出すこととなり、より自然な水流を利用して、簡素な構成で効率的にこの難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る水処理装置は、第1の実施形態と同様に、この収容手段1と、この供給手段2と、この制御手段3と、この抽出手段4と、を備え、さらに、この制御手段3が、このイオン交換体への構成イオンの吸着後かつこの溶出前に、この供給手段2により所定の水溶液をこの収容手段1に流通させてこのイオン交換体を浸漬状態に維持するものである。
【0063】
所定の水溶液とは、収容容器11に供給される供給溶液100として、このイオン交換体に吸着された構成イオンから水溶性塩を生成可能な水溶性塩水溶液、例えば、カルシウムと水溶性塩を形成する酢酸水溶液や、水が挙げられる。
【0064】
このイオン交換体を浸漬状態に維持するとは、イオンの吸着後かつこの溶出前に、を、この所定の水溶液が収容されたイオン交換樹脂再生溶液用容器22から、この所定の水溶液を各収容容器11に供給すると共に、上部開閉弁13と下部開閉弁12の開閉制御によって各収容容器11をこの水溶性塩水溶液でこの溢流部16まで十分に満たして、このイオン交換体を浸漬状態に維持することを意味する。
【0065】
このように、第2の実施形態に係る水処理装置は、この制御手段3が、このイオン交換体への構成イオンの吸着後かつこの溶出前に、この供給手段2により所定の水溶液をこの収容手段1に流通させてこのイオン交換体を浸漬状態に維持することから、このイオン交換体に対する酸化の進行が浸漬状態によって抑制されることとなり、より高い品質でこの難溶性塩を溶解させることが可能となる。また、この収容手段1の収容容器11の流路長が短流路の状態を形成し且つ一斉排水可能な構造を有することで、前記吸着成分と溶解塩水溶液の分離、および洗浄が短時間、かつ小体積で可能となることから、より高濃度の溶解塩水溶液と不純物の少ない吸着成分とを容易に得ることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る水処理装置は、この制御手段3が、この収容手段1に供給された水溶液のpH値に基づいて、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を制御するものであり、図6に示すように、この吸着済み溶液100aのpH値を検出するpH検出器31を備えるものである。
【0067】
pH検出器31の変動によって、例えば、リン酸イオンの濃度検出が可能となり、イオン交換処理の進行度合いが容易に判断可能となり、水溶液を流通させる処理の継続/停止の的確な判断が可能となる。この他にも、pH検出器31に替えて、図7に示すように、この吸着済み溶液100aに対してEC検出器32を備えることも可能であり、石膏に対するイオン交換処理の進行度合いがEC値により容易に判断可能となり、水溶液を流通させる処理の継続/停止の的確な判断が容易に可能となる。
【0068】
このように、本実施形態に係る水処理装置は、この制御手段3が、この収容手段1に供給された水溶液のpH値に基づいて、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を制御することから、この制御手段3が、pH値というシンプルな指標によって、この収容手段1を流通する水溶液の流路長を制御できることとなり、より簡素な構成で効率的にこの難溶性塩を溶解させることが可能となる。
【0069】
また、上記各実施形態に係る水処理装置から液肥製造装置を構成することが可能である。この液肥製造装置は前記水処理装置から構成されることから、前記水処理装置により生成された難溶性塩を溶解させた水溶液が、液肥として製造されることとなり、より簡素な構成で効率的に液肥を製造することが可能となる。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る水処理装置により難溶性塩を水溶性塩に変換することにより農工業において再利用する際の実効性・利便性を上げることができ、結果として廃棄物の最終処分量や資材輸入量の低減に寄与し循環型社会の構築に貢献することが可能となる。
【0071】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0072】
(実施例1)
石膏からの塩溶出
上記の第1の実施形態に係る水処理装置を用いて、石膏からの塩溶出処理を行った。石膏に蒸留水のみを加えたケースと、石膏に蒸留水とイオン交換樹脂を用いて実施したケースにおける、溶出液のEC値(S/m)の結果を図8(a)に示す。得られた結果から、水処理装置を用いることによって、石膏から高濃度で水溶性塩が溶出されたこと、溶出イオンの95%がNaであり石膏のカルシウムがイオン交換体に吸着するとともに硫酸ナトリウムとして溶解することが確認された。
【0073】
(実施例2)
鶏糞灰からのリン酸溶出
上記の第1の実施形態に係る水処理装置を用いて、50ml 遠沈管に鶏糞灰2g にイオン交換樹脂と各々(A)蒸留水15ml, (B) 蒸留水15ml(pH4),(C) 蒸留水15mlを加え、振盪10 分、遠心分離(3000rpm,20 分)で上澄み回収、0.45μmフィルター処理を繰り返し、溶液中の総リン酸濃度をヘテロポリモリブドリン酸法により決定した。得られた鶏糞灰から得られたリン酸溶出量の結果を図8(b)に示す。得られた結果から、水処理装置を用いることによって、難溶性リン酸が水溶化されたことが確認された。
【符号の説明】
【0074】
1 収容手段
1a イオン交換体
1b イオン交換体
1c イオン交換体
1d イオン交換体
11 収容容器
12 下部開閉弁
13 上部開閉弁
14 イオン交換体収納部
15 連通部
16 溢流部
2 供給手段
21 溶出液用容器
22 イオン交換樹脂再生溶液用容器
3 制御手段
31 pH検出器
32 EC検出器
4 抽出手段
41 ドライ真空ポンプ
42 吸引容器
43a 吸着溶液回収容器
43b 溶出溶液回収容器
5 撹拌機
100 供給溶液
100a 吸着済み溶液
100b 溶出溶液
200a 昇降台
200b 昇降台
300 台座

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8