(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110733
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012341
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】592199869
【氏名又は名称】エビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】福山 恵一
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202BA02
3B202CA02
3B202DB01
3B202EA01
3B202EA06
3B202ED08
3B202EE01
3B202EG17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヘッド部の厚さが薄い場合でも十分な毛止め強度を有することができる歯ブラシを提供すること。
【解決手段】平板形状の平線4を立てた状態で植毛穴に打ちこむことにより植毛穴に毛束が植毛されているヘッド部を有する歯ブラシにおいて、平線4の表面401が、多数の凹部41と、凹部41以外の平面部42と、を有しており、多数の凹部41は、直線帯状平面領域が表面401上に生じないように、表面401に配置されており、直線帯状平面領域は、表面401の横方向の端から端まで平面部42が一直線に帯状に連なってなる領域であり、及び、表面401の縦方向の端から端まで平面部42が一直線に帯状に連なってなる領域である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛面の多数の植毛穴のそれぞれに毛束が植毛されているヘッド部を有しており、
前記毛束は、二つ折りの状態で、その折り部分の内側に挟まれた平線と共に、前記植毛穴に打ち込まれることによって、植毛されており、
前記平線は、平板形状を有しており、立てた状態で前記植毛穴に打ち込まれており、横方向の両端部が前記植毛穴の周縁部に食い込むことによって前記植毛穴に固定されている、
歯ブラシにおいて、
前記平線の両表面の少なくとも一方が、多数の凹部と、前記凹部以外の平面部と、を有しており、
前記多数の凹部は、直線帯状平面領域が前記表面上に生じないように、前記表面に配置されており、
前記直線帯状平面領域は、前記表面の横方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域であり、及び、前記表面の縦方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域である、
ことを特徴とする、歯ブラシ。
【請求項2】
前記多数の凹部は、前記凹部を囲む前記平面部が前記表面においてハニカム構造を呈するように、前記表面に配置されている、
請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記多数の凹部は、縦方向から側面視した場合に、縦列に配置された前記凹部が隣接した縦列に配置された前記凹部の一部と重なるように、前記表面に配置されている、
請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記凹部は、前記表面において円環形を呈する形態を、有している、
請求項1~3の何れか一つに記載の歯ブラシ。
【請求項5】
植毛面の多数の植毛穴のそれぞれに毛束が植毛されているヘッド部を有しており、
前記毛束は、二つ折りの状態で、その折り部分の内側に挟まれた平線と共に、前記植毛穴に打ち込まれることによって、植毛されており、
前記平線は、平板形状を有しており、立てた状態で前記植毛穴に打ち込まれており、横方向の両端部が前記植毛穴の周縁部に食い込むことによって前記植毛穴に固定されている、
歯ブラシにおいて、
前記平線の両表面の少なくとも一方が、多数の凸部と、前記凸部以外の平面部と、を有しており、
前記多数の凸部は、直線帯状平面領域が前記表面上に生じないように、前記表面に配置されており、
前記直線帯状平面領域は、前記表面の横方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域であり、及び、前記表面の縦方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域である、
ことを特徴とする、歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関し、特に毛束を植毛するのに用いる平線を改良した歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
所謂「平線」と呼ばれる線材によってヘッド部の植毛穴に毛束が植毛されている歯ブラシは、従来から公知である。平線は、平板形状を有しており、立てた状態で植毛穴に打ち込まれており、横方向の両端部が植毛穴の周縁部に食い込むことによって植毛穴に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5427486号公報
【特許文献2】特開2005-177377号公報
【特許文献3】特許第6943541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の歯ブラシでは、厚さの薄いヘッド部が好まれるようになっている。しかるに、ヘッド部の厚さが薄い場合には、植毛穴の深さが浅いため、使用できる平線の縦方向長さが短くなり、その結果、植毛穴の周縁部に対する平線の食い込み部分の面積が小さくなる。それ故、ヘッド部を構成している樹脂から平線が受ける抗力が、小さくなり、したがって、所謂「毛止め強度」が低下していた。なお、毛止め強度の低下を防止するために、平線の横方向長さを増大して平線の食い込み部分の面積を大きくすることが考えられるが、その場合は、隣接する植毛穴の平線同士が近くなり、平線間にクラックが発生して、毛止め強度が却って低下したりヘッド部が変形しやすくなったりする恐れがある。それ故、平線の横方向長さを増大することは、好ましくない。
【0005】
本発明は、ヘッド部の厚さが薄い場合でも十分な毛止め強度を有することができる歯ブラシを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
植毛面の多数の植毛穴のそれぞれに毛束が植毛されているヘッド部を有しており、
前記毛束は、二つ折りの状態で、その折り部分の内側に挟まれた平線と共に、前記植毛穴に打ち込まれることによって、植毛されており、
前記平線は、平板形状を有しており、立てた状態で前記植毛穴に打ち込まれており、横方向の両端部が前記植毛穴の周縁部に食い込むことによって前記植毛穴に固定されている、
歯ブラシにおいて、
前記平線の両表面の少なくとも一方が、多数の凹部と、前記凹部以外の平面部と、を有しており、
前記多数の凹部は、直線帯状平面領域が前記表面上に生じないように、前記表面に配置されており、
前記直線帯状平面領域は、前記表面の横方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域であり、及び、前記表面の縦方向の端から端まで前記平面部が一直線に帯状に連なってなる領域である、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平線による毛止め強度を向上できるので、ヘッド部の厚さが薄い場合でも十分な毛止め強度を有することができる。したがって、ヘッド部の厚さが薄い場合の不良品の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の歯ブラシを示す平面図である。
【
図4】植毛穴に打ち込まれた状態の平線を示す縦断面図である。
【
図5】植毛穴に打ち込まれた状態の平線を示す平面図である。
【
図6】ヘッド部の拡大平面図であり、特に平線を示している。
【
図7】平線の元となる薄板状ワイヤーを示す図である。
【
図8】本実施形態の平線の一方の表面に形成された凹部及びその配置(凹部パターン)を示す図である。
【
図10】参考のための凹部パターンの一例を示す図である。
【
図11】参考のための凹部パターンの別例を示す図である。
【
図13】本実施形態のヘッド部の隣接する2個の植毛穴及び平線を示す平面図である。
【
図16】比較例1、2の歯ブラシのヘッド部の平面図である。
【
図17】本発明の別の凹部パターンの第1例を示す図である。
【
図18】本発明の別の凹部パターンの第2例を示す図である。
【
図19】本発明の別の凹部パターンの第3例を示す図である。
【
図20】本発明の別の凹部パターンの第4例を示す図である。
【
図21】本発明の別の凹部パターンの第5例を示す図である。
【
図22】本発明の別の凹部パターンの第6例を示す図である。
【
図23】本発明の別の凹部パターンの第7例を示す図である。
【
図24】本発明の別の凹部パターンの第8例を示す図である。
【0009】
【
図25】本発明の別の凹部パターンの第9例を示す図である。
【
図26】本発明の別の凹部パターンの第10例を示す図である。
【
図27】本発明の別の凹部パターンの第11例を示す図である。
【
図28】本発明の別の凹部パターンの第12例を示す図である。
【
図29】本発明の別の凹部パターンの第13例を示す図である。
【
図30】本発明の別の凹部パターンの第14例を示す図である。
【
図31】本発明の別の凹部パターンの第15例を示す図である。
【
図32】本発明の別の凹部パターンの第16例を示す図である。
【
図33】本発明の別の凹部パターンの第17例を示す図である。
【
図34】本発明の別の凹部パターンの第18例を示す図である。
【
図35】本発明の別の凹部パターンの第19例を示す図である。
【
図36】本発明の別の凹部パターンの第20例を示す図である。
【
図37】本発明の別の凹部パターンの第21例を示す図である。
【
図38】本発明の別の凹部パターンの第22例を示す図である。
【
図39】本発明の別の凹部パターンの第23例を示す図である。
【
図40】本発明の別の凹部パターンの第24例を示す図である。
【
図41】本発明の別の凹部パターンの第25例を示す図である。
【
図42】本発明の別の凹部パターンの第26例を示す図である。
【
図43】本発明の別の凹部パターンの第27例を示す図である。
【
図44】本発明の別の凹部パターンの第28例を示す図である。
【
図45】本発明の凸部パターンの第1例を示す図である。
【
図47】本発明の凸部パターンの第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の歯ブラシを示す平面図である。
図2は、
図1のII矢視図である。この歯ブラシ1は、ヘッド部2とネック部5とハンドル部3とからなっている。ネック部5は、ヘッド部2とハンドル部3との間の細い部分である。ネック部5及びハンドル部3は、ヘッド部2から一方向に延びている。
図1において、ネック部5及びハンドル部3の延びている方向を長手方向(X方向)とし、X方向に対して平面視において直交する方向を幅方向(W方向)とする。ヘッド部2及びハンドル部3を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレンなどを使用できるが、コスト面を考慮すると、ポリプロピレンを使用するのが好ましい。
【0011】
ヘッド部2は、植毛面21に多数の植毛穴22を有している。全ての植毛穴22の各々には、毛束23が植設されている。
図1のヘッド部2では、毛束23は省略されて植毛穴22が示されている。植毛穴22は、平面視において植毛面21に規則的に配置されている。具体的には、植毛穴22は、W方向に並んで横列を構成するとともにX方向に並んで縦列を構成しており、最前の横列は3個の植毛穴22からなり、前から2番目の横列は4個の植毛穴22からなり、前から3~7番目の植毛穴22は6個の植毛穴22からなり、最後の横列は4個の植毛穴22からなり、前から3番目の横列~最後の横列の植毛穴22は縦列も構成している。よって、ここでは、ヘッド部2は、41個の植毛穴22を有している。
【0012】
図3に示されるように、毛束23は、多数本の毛231が束ねられたものである。毛231を構成する材料としては、天然樹脂、又は、ナイロン、ポリエステル、エラストマー等の合成樹脂を、使用できるが、合成樹脂であるポリブチレンテレフタレートが好ましい。毛束23は、
図3に示されるように、二つ折りの状態で、その折り部分230の内側に挟まれた平線4と共に、植毛穴22に打ち込まれることによって、植毛されている。
【0013】
図4及び
図5は、植毛穴22に打ち込まれた状態の平線4を示す縦断面図及び平面図である。平線4は、平板形状を有しており、立てた状態で植毛穴22に打ち込まれており、横方向(Xa方向)の両端部40が植毛穴22の周縁部220に食い込むことによって植毛穴22に固定されている。周縁部220に食い込んでいる端部40は、「掛かり代部」とも称する。すなわち、平線4の横方向長さLは、「植毛穴22の直径D+端部40の長さE×2」に設定されている。
【0014】
図6は、ヘッド部2の拡大平面図であり、特に平線4を示している。
図5及び
図6に示されるように、平線4は、植毛穴22において、平面視でX方向に対して角度αだけ一方向に傾斜して設けられている。角度αは、10~80度であり、好ましくは15度である。
【0015】
平線4は、
図7に示されるような薄板状ワイヤー400を寸法Lずつ切断して作製されたものである。ワイヤー400すなわち平線4を構成する材料としては、金属、セラミック、プラスチックなどを使用できる。金属としては、真鍮、ニッケル、アルミニウムなどを使用できる。プラスチックとしては、硬質プラスチック、生分解性プラスチックなどを使用できる。なお、セラミック又はプラスチックを使用する場合は、平線を、ワイヤー400からではなく、個別に作製できる。
【0016】
そして、平線4は、
図8に示されるように、表面401に、多数の凹部41と、凹部41以外の平面部42と、を有している。多数の凹部41は、所定の配置で設けられている。以下では、凹部とその配置とを合わせて「凹部パターン」と称する。凹部41は、表面401において円環形を呈する形態を、有している。
図9は、
図8のIX矢視図である。多数の凹部41は、2種類の直線帯状平面領域が表面401上に生じないように、表面401に配置されている。2種類の直線帯状平面領域とは、表面401の横方向(Xa方向)の端から端まで平面部42が一直線に帯状に連なってなる領域(すなわち横方向直線帯状平面領域)と、表面401の縦方向(H方向)の端から端まで平面部42が一直線に帯状に連なってなる領域(すなわち縦方向直線帯状平面領域)と、である。具体的には、
図8の表面401において、横方向に連なる平面部42は、一点鎖線Aで示されるように、蛇行しており、すなわち、一直線ではなく、また、縦方向に連なる平面部42も、一点鎖線Bで示されるように、蛇行しており、すなわち、一直線ではない。ちなみに、参考のための
図10の凹部パターンでは、平面部42が縦方向の端から端まで一直線に連なってなる縦方向直線帯状平面領域421が生じている。また、参考のための
図11の凹部パターンでは、平面部42が横方向の端から端まで一直線に連なってなる横方向直線帯状平面領域422が生じている。すなわち、本実施形態では、凹部41は、
図10及び
図11に示されるような一直線の帯状領域421、422を生じないように、表面401に配置されている。
【0017】
更に、平線4は、表面402にも、表面401と同じ凹部パターンを有している。すなわち、表面401と表面402とは、面対称の凹部パターンを有している。
【0018】
図8に示される凹部パターンは、具体的には、次のとおりである。なお、
図8の凹部パターンは、所謂「千鳥様配置」を採用している。
(a)全ての凹部41は、同じ又は略同じ、円環状の形態及び寸法を有しており、よって、同じ又は略同じ直径dを有している。
(b)複数の凹部41が、縦方向に列を構成するように並んでおり、すなわち、縦列を構成している。
(c)各縦列において、縦方向に隣接する凹部41間の間隔hdは、直径dより小さい。
(d)複数の縦列が、横方向に隙間なく並んでいる。
(e)縦列の上端の凹部41の中心は、隣接する縦列の上端の凹部41の中心に対して、hp/2だけ縦方向にずれている。なお、hpは、縦方向に隣接する凹部41の中心間距離である。
(f)横方向に1つ開けた縦列同士の間隔Ldは、直径dと同じである。
【0019】
平線4をワイヤー400から作製する場合には、上記のような凹部パターンがワイヤー400の両表面全面に形成されているので、ワイヤー400をどの箇所で切断しても、
図8に示されるような平線4を得ることができる。すなわち、1個の縦列の凹部41を必ず切断することになり、それ故、平線4の端面403には、
図9に示されるように、凹部41の一部が必ず露出することとなる。
【0020】
上記構成の歯ブラシ1の好ましい寸法は、以下のとおりである。
・ヘッド部2の長手方向(X方向)寸法…15~33mm
具体的には、この寸法は、ネック部5からヘッド部2に向かう輪郭が、直線から曲線に変わる点又は不連続に折れ曲がっている点から、ヘッド部2の先端までの、距離である。
・ヘッド部2の幅方向(W方向)寸法…13~16mm
具体的には、この寸法は、ヘッド部2の最も広い部分の距離である。
・ヘッド部2の厚さ方向(T方向)寸法…2~4mm
具体的には、この寸法は、ヘッド部2の植毛面21に対して垂直な方向の距離である。
・植毛穴22の直径D…1.0~1.7mm
・植毛穴22の深さS…1.6~2.7mm
・植毛穴22の植毛穴密度…15~30個/cm2
なお、「植毛穴密度=穴数/植毛面積」である。「植毛面積」とは、JIS S3016の規定に基づくものであり、ヘッド部2の植毛面21の外周に並ぶ植毛穴22の外側を直線で結んだ部分の内側の面積である。
・平線4の横方向長さL…D+E=1.3~2.3mm
・平線4の縦方向長さ(「平線幅」とも称する)h…1.0~1.5mm
・平線4の厚さt…0.15~0.25mm
・平線4の掛かり代部の長さE…0.3~0.6mm
・凹部41の直径d…h/4±10%
・凹部41の内径ds…0.07mm以上、且つ、h/8±10%
これより小さい場合には、平面部42の断面形状が細長くなるため、平線4に上向きの力が加わった際に平面部42が撓んでしまい、毛止め強度が低下してしまう恐れがあり、また、加工が困難である。
・凹部41の深さ…0.01~0.08mm
・間隔hd…0.07mm以上、好ましくは0.10mm以上
これより小さい場合には、平面部42の断面形状が細長くなるため、平線4に上向きの力が加わった際に平面部42が撓んでしまい、毛止め強度が低下してしまう恐れがあり、また、加工が困難である。
・間隔hp…縦方向に2個以上の凹部41が存在し得る距離
【0021】
なお、ヘッド部2の長手方向及び幅方向の寸法が上記の範囲内にあると、歯ブラシ1は、良好な口腔内操作性を発揮できる。また、ヘッド部2の厚さが2mm未満になると、ヘッド部2が強度不足となる。一方、ヘッド部2の厚さが4mmを越えると、口腔内操作性が低下する。
【0022】
上記構成の平線4を用いた歯ブラシ1によれば、次のような作用効果を発揮できる。
(1)平線4を植毛穴22に打ち込んだ際、ヘッド部2を構成する樹脂は、平線4の端部40との間に生じる摩擦熱によって軟化する。そして軟化した樹脂は、端部40の表面401、402の凹部41に、表面401、402側から、及び、端面403側から、入り込み、硬化する。樹脂が硬化した状態で、平線4に対して抜ける方向(すなわち上方向)に力が加わっても、端部40の表面401、402には凹部41と平面部42とによって多数の「段差」ができているので、硬化した樹脂が段差に引っ掛かり、その結果、平線4は抜けにくい。したがって、平線4による毛止め強度を向上できる。また、樹脂は靱性を有しているので、平線4を打ち込む時に押し退けられた樹脂は、復元しようとして凹部41に入り込む。それ故、軟化点の高い樹脂であっても、平線4は抜けにくくなる。したがって、この点からも、平線4による毛止め強度を向上できる。
【0023】
特に、凹部41が上記(c)の配置を有しているので、縦方向の凹部41の数を増すことができ、したがって、硬化した樹脂に引っ掛かる段差の数を増すことができる。よって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0024】
更に、凹部41は、円環状を呈する形態を有しているので、内部に平面部42を有している。それ故、平線4の表面401、402における段差の数が、仮に凹部41が円形であった場合(すなわち内部に平面部42を有していない場合)に比して、多くなる。したがって、硬化した樹脂に引っ掛かる段差の数を増すことができる。よって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0025】
そして、平線4の端部40が凹部41を有することによって、平線4による毛止め強度を向上できるので、端部40の表面積を低減しても平線4による所望の毛止め強度を確保できる。したがって、次のような効果を発揮できる。
【0026】
(1-1)縦方向長さhが小さい平線4を用いることができる。よって、ヘッド部2の厚さが薄い場合、すなわち、植毛穴22の深さが浅い場合でも、平線4による所望の毛止め強度を確保できる。
【0027】
(1-2)掛かり代部の長さEが小さい平線4を用いることができる。これによれば、白化の発生や隣接する平線4間でのクラックの発生を、防止でき、ひいては、毛止め強度の低下やヘッド部2の変形を、防止できる。また、隣接する植毛穴22間の距離すなわち穴ピッチを小さくでき、それにより、清掃性、当たり心地などの歯ブラシの性能を、向上できる。
【0028】
(2)平線4は、横方向直線帯状平面領域及び縦方向直線帯状平面領域を有していない。ちなみに、平線4に横方向直線帯状平面領域があると、それが1本の横溝のように働くため、平線4は、縦方向の圧力に弱くなり、また、平線4に縦方向直線帯状平面領域があると、それが1本の縦溝のように働くため、平線4は、横方向の圧力に弱くなる。すなわち、平線4は、耐衝撃性が低下する。しかるに、本実施形態の平線4は、横方向直線帯状平面領域及び縦方向直線帯状平面領域を有していないので、優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0029】
更に、
図8と同じ
図12において一点鎖線Cで示されるように、平線4では、平面部42がハニカム構造を構成するように連なっている。したがって、平線4は、縦方向の圧力に対しても横方向の圧力に対しても、強くなる。よって、平線4は、この点からも、優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0030】
そして、平線4が優れた耐衝撃性を発揮できるので、次のような効果を発揮できる。
【0031】
(2-1)ヘッド部2を構成する材料として高硬度樹脂を用いた場合でも、打ち込む際に平線4が変形するのを防止でき、よって、不良品の発生を防止できる。なお、高硬度樹脂とは、曲げ弾性率(JIS K7203)が500~3000MPaの範囲にある樹脂であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、セルロースプロピオネート、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンなどを挙げることができる。
【0032】
(2-2)植毛穴22の直径Dが小さいほど、打ち込む際に平線4が受ける衝撃が大きくなり、その結果、平線4が変形して不良品が発生する恐れがある。しかるに、本実施形態の平線4は、優れた耐衝撃性を有しているので、小さい直径Dを有する植毛穴22に対して用いることができる。その結果、植毛密度を向上でき、それにより、清掃性、当たり心地などの歯ブラシの性能を、向上できる。
【0033】
(2-3)平線4の厚さtを薄くできる。そして、厚さtの薄い平線4を用いることにより、毛束に含まれる毛の数(毛量)を増大でき、また、毛開きを抑制できる。その結果、歯ブラシの性能を向上できる。また、厚さtの薄い平線4を、小さい直径Dを有する植毛穴22に対して用いることができる。
【0034】
(3)
図13に示されるように、平線4は、植毛穴22において、平面視でX方向に対して角度αだけ一方向に傾斜して設けられている。参考のための
図14は、平線4が傾斜していない場合を示している。
図13における隣接する平線4の端部間の距離Xdは、
図14の距離Xdに比して明らかに大きい。したがって、本実施形態では、隣接する平線4間でのクラックの発生を防止できる。
【0035】
[実施例1]
図15に示される凹部パターンを有する平線4を用い、その他は上記実施形態と同様にして、下記に示す仕様を有する歯ブラシを、作製した。
【0036】
(
図15の凹部パターン)
次の点のみが
図8及び
図12の凹部パターンと異なっている。
・横方向における1つ置きの縦列が端部に直線状凹部41Aを有している。
・表面401の凹部パターンと表面402の凹部パターンとは上下逆となっている。すなわち、凹部41Aは、平線4の上下方向の位置関係を示すためのマークとしても機能している。
【0037】
(仕様)
・ヘッド部2の長手方向(X方向)寸法…27.8mm
・ヘッド部2の幅方向(W方向)寸法…14.7mm
・ヘッド部2の厚さ方向(T方向)寸法…3.4mm
・植毛穴22の直径D…1.5mm
・植毛穴22の深さS…2.5mm
・植毛穴22の個数…41個
・ヘッド部2及びハンドル部3を構成する樹脂材料…ポリプロピレン
・平線4の横方向長さL…2.0mm
・平線4の縦方向長さh…1.4mm
・平線4の厚さt…0.25mm
・平線4の掛かり代部の長さE…0.5mm
・平線4を構成する材料…真鍮
・平線4の凹部パターンの寸法
・直径d…0.36mm
・内径ds…0.18mm
・間隔hd…0.10mm
・間隔hds…0.14mm
・間隔Ld…0.36mm
・中心間距離hp…0.46mm
・深さtd(
図9)…0.02mm
【0038】
[比較例1]
凹部を有していない従来の平線を用い、その他は上記実施形態と同様にして、下記に示す仕様を有する歯ブラシを、作製した。
【0039】
(仕様)
・ヘッド部2の長手方向(X方向)寸法…30.0mm
・ヘッド部2の幅方向(W方向)寸法…14.7mm
・ヘッド部2の厚さ方向(T方向)寸法…3.4mm
・植毛穴22の直径D…1.5mm
・植毛穴22の深さS…2.5mm
・植毛穴22の個数…48個
・なお、植毛穴22の配置は、
図16に示されるとおりである。すなわち、最前の横列は3個の植毛穴22からなり、前から2番目の横列は5個の植毛穴22からなり、前から3~8番目の植毛穴22は6個の植毛穴22からなり、最後の横列は4個の植毛穴22からなり、前から3番目の横列~最後の横列の植毛穴22は縦列も構成している。
・ヘッド部2及びハンドル部3を構成する樹脂材料…ポリプロピレン
・平線4の横方向長さL…2.0mm
・平線4の縦方向長さh…1.5mm
・平線4の厚さt…0.25mm
・平線4の掛かり代部の長さE…0.5mm
・平線4を構成する材料…真鍮
【0040】
[比較例2]
凹部を有していない従来の平線を用い、その他は上記実施形態と同様にして、下記に示す仕様を有する歯ブラシを、作製した。
【0041】
(仕様)
・ヘッド部2の長手方向(X方向)寸法…30.0mm
・ヘッド部2の幅方向(W方向)寸法…14.7mm
・ヘッド部2の厚さ方向(T方向)寸法…5.0mm
・植毛穴22の直径D…1.5mm
・植毛穴22の深さS…3.5mm
・植毛穴22の個数…48個
なお、植毛穴22の配置は、比較例1の場合(
図16)と同じである。
・ヘッド部2及びハンドル部3を構成する樹脂材料…ポリプロピレン
・平線4の横方向長さL…2.0mm
・平線4の縦方向長さh…1.5mm
・平線4の厚さt…0.25mm
・平線4の掛かり代部の長さE…0.5mm
・平線4を構成する材料…真鍮
【0042】
[毛止め強度評価試験]
実施例1及び比較例1、2において1個の植毛穴に植設されている毛束を、専用器具によって掴み、引張試験機によって植毛穴から抜けるまで引張り、最大引張力(N)を測定した。引張条件は、20mm/分の引張速度とした。そして、最大引張力(N)の値に応じて、毛止め強度を評価した。具体的には、最大引張力が20N以上の場合は「◎」、8N以上20N未満の場合は「○」、8N未満の場合は「×」とした。その結果は表1のとおりであった。
【0043】
【0044】
(評価)
実施例1及び比較例1によれば、平線4の凹部パターンが毛止め強度の向上に寄与していることがわかる。なお、比較例2では、平線4に凹部パターンが無くても良好な毛止め強度が得られている。このことから、平線4の凹部パターンは、厚さの薄いヘッド部における毛止め強度の向上に有効であることがわかる。
【0045】
[変形構成]
本発明は、次のような変形構成を採用できる。
【0046】
(1)平線4において、凹部パターンは、表面401及び表面402の一方のみに設けられてもよい。
【0047】
(2)平線4において、表面401の凹部パターンと表面402の凹部パターンとは、面対称でなくてもよい。
【0048】
(3)平線4において、表面401の凹部パターンと表面402の凹部パターンとは、異なってもよい。
【0049】
(4)
図15の凹部パターンでは、一点鎖線で示されるように、斜め方向直線帯状平面領域423ができているが、間隔hdを更に小さくすることによって、斜め方向直線帯状平面領域423も生じないようにするのが、好ましい。これによれば、凹部41がより密に配置されることとなり、端部40における段差の数を増すことができるので、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0050】
(5)凹部41の形態は、
図8及び
図15の凹部パターンでは円環形であるが、円形でもよく、更には、三角形、四角形、六角形などでもよい。但し、三角形などに比べれば、円形が好ましい。その理由は、次のとおりである。
【0051】
(5-1)凹部41が円形の場合は、四角形の場合よりも、凹部41を密に配置でき、また、隣接した縦列の凹部41同士の縦方向側面視における重なり部分(後述する)を大きくできるので、平線4の端部40における段差の数を増すことができ、これにより、毛止め強度を向上できる。
【0052】
(5-2)凹部41が直径dを有する円形の場合は、直径dと同じ高さを有する正三角形の場合よりも、切断後の端面403における凹部41の露出面積が大きくなるので、軟化した樹脂が凹部41内に入り込みやすく、それにより、毛止め強度の向上を図ることができる。
【0053】
(6)平線4は、上述した凹部パターン以外の、例えば
図17~
図44に示される凹部パターンを採用してもよい。
【0054】
なお、
図17、
図28、
図32、
図34~44の凹部パターンを有する平線4は、横方向直線帯状平面領域及び縦方向直線帯状平面領域だけでなく、斜め方向直線帯状平面領域も、有していないので、より優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0055】
(6-1)
図17の凹部パターンは、間隔hdのみが
図15の凹部パターンとは異なっている。すなわち、間隔hdは、
図15の場合より、更に小さく、具体的には0.06mmである。その結果、斜め方向直線帯状平面領域も生じていない。これによれば、
図15の場合に比して、縦方向の凹部41を密に配置できるので、硬化した樹脂に引っ掛かる段差の数を増すことができる。よって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0056】
(6-2)
図18の凹部パターンでは、凹部41は円形を呈する形態を有しており、間隔hdは直径dと同じである。これによれば、
図8の場合と同様の理由により、毛止め強度及び耐衝撃性の向上を図ることができる。また、凹部41の形成が容易である。
(6-3)
図19の凹部パターンでは、
図18の場合に比して、間隔hdを小さく設定している。これによれば、
図18の場合に比して、端部40における段差の数を増すことができるので、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0057】
(6-4)
図20の凹部パターンでは、多数の凹部41は、縦方向から側面視した場合に、縦列に配置された凹部41が隣接した縦列に配置された凹部41の一部と重なるように、表面401(及び/又は表面402)に配置されている。「縦方向から側面視」とは、平線4をZ方向から見ることを意味する。「重なる」部分は、一点鎖線の領域431に在る部分である。なお、一点鎖線の領域431は、多数存在しているが、ここでは2個示している。これによれば、ワイヤー400をどこで切断しても必ず縦列の凹部を切断することになり、端面403に凹部41を露出させることができる。よって、軟化した樹脂が端面403から凹部41に確実に入り込むこととなる。
【0058】
(6-5)
図21の凹部パターンでは、凹部41が横長の楕円形を呈する形態を有している。間隔hdは、凹部41の短径dhより小さい。間隔Ldは、凹部41の長径dxと同じである。これによっても、平線4の毛止め強度及び耐衝撃性を向上できる。
(6-6)
図22の凹部パターンでは、
図21の縦列が斜めに配置されており、その結果、「重なる」部分が存在する一点鎖線の領域431を、複数有している。ここでは、一点鎖線の領域431を1個図示している。これによれば、
図21の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
【0059】
(6-7)
図23の凹部パターンは、凹部41が円環形を呈する形態を有している点が
図22の場合とは異なるだけである。これによれば、凹部41内にも平面部42があるので、
図22の場合に比して、端部40における段差の数を増すことができ、したがって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0060】
(6-8)
図24の凹部パターンでは、凹部41が菱形を呈する形態を有している点が
図20の場合とは異なるだけである。これによっても、
図20の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-9)
図25の凹部パターンでは、凹部41が横長の菱形を呈する形態を有している点が
図21の場合と異なるだけである。間隔hdは、凹部41の短径dhより小さい。間隔Ldは、凹部41の長径dxと同じである。これによっても、
図21の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-10)
図26の凹部パターンでは、凹部41が横長の菱形を呈する形態を有している点が
図22の場合と異なるだけである。これによっても、
図22の場合と同様の効果を発揮できる。
【0061】
(6-11)
図27の凹部パターンは、凹部41が下向きの三角形を呈する形態を有している点が
図24の場合とは異なるだけである。これによっても、
図24の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-12)
図28の凹部パターンは、凹部41が横向きの三角形を呈する形態を有している点のみが
図27とは異なるだけである。これによっても、
図27の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-13)
図29の凹部パターンでは、凹部41が横向きの三角形を呈する形態を有しており、右方向を向いた縦列と左方向を向いた縦列とが横方向に交互に配置されており、且つ、各縦列が一方向に傾斜している。これによれば、平面部42が、一点鎖線Dで示されるように、三角形構造を呈しているので、平線4は、
図8のハニカム構造の場合と同様に、優れた耐衝撃性を有している。また、複数の一点鎖線の領域431(ここでは1個のみ図示)に重なる部分を有している。
【0062】
(6-14)
図30の凹部パターンでは、
図27の場合よりも大きい三角形の凹部41を、採用している。これによっても、
図27の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-15)
図31の凹部パターンでは、直角三角形を呈する形態を有し且つ
図29の場合よりも大きな凹部41を採用している。これによっても、
図29の場合と同様の効果を発揮できる。
【0063】
(6-16)
図32の凹部パターンは、凹部41内に平面部42を有している点のみが
図28の場合とは異なっている。これによっても、
図28の場合と同様の効果を発揮できる。更に、内部に平面部42を有しているので、表面401(又は表面402)における段差の数が、
図28の場合に比して、多くなる。したがって、硬化した樹脂に引っ掛かる段差の数を増すことができる。よって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【0064】
(6-17)
図33の凹部パターンは、凹部41が正六角形を呈する形態を有している点のみが、
図18の場合とは異なっている。これによっても、
図18の場合と同様の効果を発揮できる。特に、一点鎖線Cで示されるように、平面部42が明確なハニカム構造を構成するように連なっているので、
図12の場合よりも、縦方向の圧力に対しても横方向の圧力に対しても、より強くなり、よって、この点からも、優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0065】
(6-18)
図34の凹部パターンは、凹部41が正六角形を呈する形態を有している点のみが、
図19の場合とは異なっている。これによっても、
図19及び
図33の場合と同様の効果を発揮できる。
(6-19)
図35の凹部パターンは、凹部41の数が増えている点のみが、
図34の場合とは異なっている。よって、
図34の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
(6-20)
図36の凹部パターンでは、「重なる」部分を有する一点鎖線の領域431を多数有している点のみが、
図34の場合とは異なっている。ここでは、一点鎖線の領域431を2個示している。よって、
図34の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
【0066】
(6-21)
図37の凹部パターンは、凹部41の数が増えている点のみが、
図36の場合とは異なっている。よって、
図36の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
(6-22)
図38の凹部パターンでは、間隔hdが小さい点のみが、
図36の場合とは異なっている。よって、
図36の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
(6-23)
図39の凹部パターンでは、間隔hdが小さい点のみが、
図34の場合とは異なっている。よって、
図34の場合と同様の効果を発揮できるとともに、毛止め強度を更に向上できる。
【0067】
(6-24)
図40の凹部パターンでは、凹部41が内部に平面部42を有している点のみが、
図35の場合とは異なっている。これによれば、
図35の場合と同様の効果を発揮できるとともに、
図35の場合よりも段差が増えるので、毛止め強度を更に向上できる。
(6-25)
図41の凹部パターンでは、凹部41が内部に平面部42を有している点のみが、
図36の場合とは異なっている。これによれば、
図36の場合と同様の効果を発揮できるとともに、
図36の場合よりも段差が増えるので、毛止め強度を更に向上できる。
(6-26)
図42の凹部パターンでは、凹部41の向きが
図40の場合とは異なっているだけである。これによっても、
図40の場合と同様の効果を発揮できる。
【0068】
(6-27)
図43の凹部パターンでは、凹部41の数が
図42の場合に比して、少ない。これによっても、
図42の場合と同様の効果を発揮できる。
【0069】
(6-28)
図44の凹部パターンでは、凹部41が十字形を呈する形態を有している。そして、多数の凹部41は、縦方向から側面視した場合に、縦列に配置された凹部41が隣接した縦列に配置された凹部41の一部と重なるように、すなわち、一点鎖線の領域431に重なる部分を有するように、表面401(及び/又は表面402)に配置されている。これによっても、平線4の毛止め強度及び耐衝撃性を向上できる。
【0070】
(7)平線4は、凹部パターンに代えて凸部パターンを有してもよい。すなわち、上述した全ての凹部パターンにおいて全ての凹部41を凸部45に変えた平線4を、用いてもよい。凸部の高さは、凹部の深さと同じであるのが、好ましい。なお、平線4は、横方向直線帯状平面領域及び縦方向直線帯状平面領域を有していない。
【0071】
この場合でも、平線4を植毛穴22に打ち込んだ際、ヘッド部2を構成する樹脂は、平線4の端部40との間に生じる摩擦熱によって軟化する。そして軟化した樹脂は、端部40の表面401、402の平面部42に、表面401、402側から、及び、端面403側から、入り込み、硬化する。樹脂が硬化した状態で、平線4に対して抜ける方向(すなわち上方向)に力が加わっても、端部40の表面401、402には凸部45と平面部42とによって多数の段差ができているので、硬化した樹脂が段差に引っ掛かり、その結果、平線4は抜けにくい。したがって、平線4による毛止め強度を向上できる。また、平線4は、横方向直線帯状平面領域及び縦方向直線帯状平面領域を有していないので、優れた耐衝撃性を発揮できる。なお、その他の作用効果は、対応する凹部パターンの場合と同じである。
【0072】
(7-1)
図45は、凸部パターンの一例を示している。この凸部パターンでは、
図15の凹部パターンにおける全ての凹部41、41Aを凸部45、45Aに変えている。なお、
図45においては、凸部45をグレーで表示している。
図46は、
図45のXXXXVI矢視図である。この凸部パターンにおいては、軟化した樹脂は平面部42に入り込む。
【0073】
(7-2)
図47は、凸部パターンの別例を示している。この凸部パターンでは、
図27の凹部パターンにおける全ての凹部41を凸部45に変えている。なお、
図47においては、凸部45をグレーで表示している。
図48は、
図47のXXXXVIII矢視図である。この場合においては、軟化した樹脂は平面部42に入り込む。また、多数の凸部45は、縦方向から側面視した場合に、縦列に配置された凸部45が隣接した縦列に配置された凸部45の一部と重なるように、すなわち、一点鎖線の領域431aに重なる部分を有するように、表面401及び/又は表面402に配置されている。なお、一点鎖線の領域431aは、多数存在しているが、ここでは2個示している。よって、端部40における段差の数を増すことができ、したがって、平線4による毛止め強度を更に向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の歯ブラシは、ヘッド部の厚さが薄い場合でも十分な毛止め強度を有することができるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0075】
1 歯ブラシ
2 ヘッド部
21 植毛面
22 植毛穴
220 周縁部
23 毛束
230 毛
4 平線
41 凹部
42 平面部
401、402 表面
421 縦方向直線帯状平面領域
422 横方向直線帯状平面領域
45 凸部