IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海スプリング製作所の特許一覧

<>
  • 特開-ロータリバルブ 図1
  • 特開-ロータリバルブ 図2
  • 特開-ロータリバルブ 図3
  • 特開-ロータリバルブ 図4
  • 特開-ロータリバルブ 図5
  • 特開-ロータリバルブ 図6
  • 特開-ロータリバルブ 図7
  • 特開-ロータリバルブ 図8
  • 特開-ロータリバルブ 図9
  • 特開-ロータリバルブ 図10
  • 特開-ロータリバルブ 図11
  • 特開-ロータリバルブ 図12
  • 特開-ロータリバルブ 図13
  • 特開-ロータリバルブ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110744
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ロータリバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/076 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012356
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和希
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌久
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 勇紀
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA23
3H067CC02
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA05
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】シール性能を確保しつつ、弁体を径方向に小型化する。
【解決手段】ロータリバルブ10のハウジング11は、収容部45を軸方向の両側から挟んで互いに対向するカバー12(特定対向壁部)及び閉塞部23(対向壁部)と、径方向における外方から収容部45を取り囲む環状壁部22とを有する。弁体51の弁本体部52は、環状壁部22に対向する外周面56と複数の可動流路とを有する。可動流路は、1つの特定可動流路61と、一般可動流路67とからなる。特定可動流路61の上流端62aは、カバー12に対向して開口され、下流端63bは外周面56において開口される。一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bは外周面56において開口される。環状壁部22において開口する径方向流入口26及び径方向流出口28の各周縁部と、外周面56との間にはそれぞれ環状の径方向パッキン71,73が配置される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部、及び前記弁本体部を前記ハウジングに回転可能に支持する軸部を有し、前記軸部を中心とする前記弁本体部の回転により、前記可動流路を介して前記流入口に連通される前記流出口を切り替える弁体とを備え、
前記ハウジングは、前記収容部を、前記軸部の軸線に沿う方向である軸方向の両側から挟んで互いに対向し、かつ一方を特定対向壁部とする一対の対向壁部と、前記軸部の径方向における外方から前記収容部を取り囲む環状壁部とを有し、
前記弁本体部は、前記環状壁部に対向する外周面を有し、
前記可動流路は、1つの特定可動流路と、1つ又は複数の一般可動流路とからなり、
前記特定可動流路の上流端は、前記特定対向壁部に対向して開口又は前記外周面において開口され、前記特定可動流路の下流端は前記外周面において開口され、前記一般可動流路の上流端及び下流端は前記外周面において開口され、
前記環状壁部において開口する前記流入口及び前記流出口の各周縁部と、前記外周面との間には環状の径方向パッキンが配置されているロータリバルブ。
【請求項2】
前記可動流路のうち、前記上流端及び前記下流端がともに前記外周面において開口されているのは、前記一般可動流路のみであり、
少なくとも1つの前記一般可動流路の前記上流端及び前記下流端は、前記外周面のうち前記軸方向に互いに異なる箇所に開口されている請求項1に記載のロータリバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を回転させて流体の流路を切り替えるロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図14に示すように、複数の流体FL1,FL2の流路を切り替えるロータリバルブ100として、収容部102を有するハウジング101と、弁体111とを備えるものが記載されている。
【0003】
ハウジング101には、流体FL1の流入口106及び流出口(流出口107等)が収容部102に面して形成されている。ハウジング101には、流体FL2の流入口108及び流出口(図示略)が収容部102に面して形成されている。
【0004】
ここで、弁体111における軸部116の軸線ALに沿う方向を軸方向というものとする。ハウジング101は、収容部102を、軸方向の両側から挟んで互いに対向する特定対向壁部103及び対向壁部104と、軸部116の径方向における外方から収容部102を取り囲む環状壁部105とを有する。
【0005】
弁体111は、収容部102に収容され、かつ複数の可動流路を有する弁本体部112と、弁本体部112をハウジング101に回転可能に支持する軸部116とを有する。
弁本体部112は、環状壁部105に対向する外周面113を有する。可動流路は、1つの特定可動流路114と、1つ又は複数の一般可動流路115とからなる。特定可動流路114の上流端114aは、軸線AL上において特定対向壁部103に対向して開口され、下流端114bは外周面113において開口される。一般可動流路115の上流端115aは、上記軸線ALから径方向外方へ離れた箇所において特定対向壁部103に対向して開口され、下流端(図示略)は外周面113において開口される。
【0006】
さらに、特定対向壁部103における各流入口106,108の周縁部と、弁本体部112との間には軸方向パッキン117が配置される。図14では、流入口106の周縁部及び弁本体部112の間をシールするものと、流入口108の周縁部及び弁本体部112の間をシールするものとが一体となった1つの大型の軸方向パッキン117が用いられる。
【0007】
環状壁部105における流出口(流出口107等)の周縁部と、弁本体部112の外周面113との間には径方向パッキン118が配置される。
上記構成のロータリバルブ100によると、弁体111は軸部116を中心として回転される。下流端114bが流出口107に対向すると、流体FL1が、特定可動流路114を流れた後に流出口107から流出される。また、上記弁体111の回転に伴い、一般可動流路115の上流端115aが流入口108に対向し、かつ下流端が流出口に対向すると、流体FL2が、一般可動流路115を流れた後に流出口から流出される。
【0008】
さらに、径方向パッキン118が軸部116の径方向に圧縮されることに伴い圧縮反力が生ずる。この圧縮反力により、流出口(流出口107等)の周縁部と、弁本体部112の外周面113との間がシールされる。また、軸方向パッキン117が軸方向に圧縮されることに伴い圧縮反力が生ずる。この圧縮反力により、各流入口106,108の周縁部と、弁本体部112との間がシールされる。
【0009】
従って、上記ロータリバルブ100によると、弁体111を回転させることで、複数の流体FL1,FL2の流路を切り替えることができ、しかも流体FL1,FL2が混ざり合う現象を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-143743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、軸方向パッキン117が用いられる従来のロータリバルブ100では、軸部116の径方向における弁本体部112の寸法が軸方向パッキン117から大きく影響を受ける。そのため、弁本体部112ひいてはロータリバルブ100が径方向に大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するロータリバルブは、収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部、及び前記弁本体部を前記ハウジングに回転可能に支持する軸部を有し、前記軸部を中心とする前記弁本体部の回転により、前記可動流路を介して前記流入口に連通される前記流出口を切り替える弁体とを備え、前記ハウジングは、前記収容部を、前記軸部の軸線に沿う方向である軸方向の両側から挟んで互いに対向し、かつ一方を特定対向壁部とする一対の対向壁部と、前記軸部の径方向における外方から前記収容部を取り囲む環状壁部とを有し、前記弁本体部は、前記環状壁部に対向する外周面を有し、前記可動流路は、1つの特定可動流路と、1つ又は複数の一般可動流路とからなり、前記特定可動流路の上流端は、前記特定対向壁部に対向して開口又は前記外周面において開口され、前記特定可動流路の下流端は前記外周面において開口され、前記一般可動流路の上流端及び下流端は前記外周面において開口され、前記環状壁部において開口する前記流入口及び前記流出口の各周縁部と、前記外周面との間には環状の径方向パッキンが配置されている。
【0013】
上記の構成によれば、環状をなす径方向パッキンは、その径方向パッキンの径方向における内側の領域と外側の領域との間で流体が行き来することを規制する。この規制により、上記内側の領域を流れる流体と、外側の領域を流れる流体とが混ざり合う現象が抑制される。
【0014】
ここで、径方向パッキンは、流入口及び流出口のうち、ハウジングの環状壁部において開口するものを対象とし、それらの周縁部と弁本体部の外周面との間に位置する。全ての流出口が上記対象に含まれる。特定可動流路の上流端が弁本体部の外周面において開口される場合には、その上流端に対応する流入口も上記対象に含まれる。
【0015】
そのため、環状壁部に流入口及び流出口が開口されている場合には、流入口と流出口との間で、又は流出口間で流体が混ざり合う現象が径方向パッキンによって抑制される。環状壁部に流出口のみが開口されている場合には、流出口間で流体が混ざり合う現象が径方向パッキンによって抑制される。
【0016】
また、特定対向壁部に流入口が開口されている場合、その流入口の数は1つである。しかも、上述したように、環状壁部において開口する流入口及び流出口の各周縁部と、弁本体部の外周面との間には環状の径方向パッキンが配置されている。そのため、特定対向壁部における流入口の周縁部と弁本体部との間に軸方向パッキンが配置されなくても、同特定対向壁部における流入口と、環状壁部に開口された流入口及び流出口との間で流体が混ざり合う現象が抑制される。
【0017】
従って、軸方向パッキンを廃止しても、従来のロータリバルブと同程度のシール性能を確保することが可能となる。軸方向パッキン配置のために、弁本体部を径方向に大きくしなくてもすむ。
【0018】
上記ロータリバルブにおいて、前記可動流路のうち、前記上流端及び前記下流端がともに前記外周面において開口されているのは、前記一般可動流路のみであり、少なくとも1つの前記一般可動流路の前記上流端及び前記下流端は、前記外周面のうち前記軸方向に互いに異なる箇所に開口されていることが好ましい。
【0019】
ここで、特定可動流路及び一般可動流路の数が多くなるに従い、それらが弁本体部に占める割合が増大する。仮に、特定可動流路の下流端と、一般可動流路の上流端及び下流端とが全て軸方向の同一の箇所に位置すると、可動流路が密集する。特定可動流路及び一般可動流路を互いに離間させた状態で、弁本体部に形成することが難しい。
【0020】
弁本体部を径方向に大きくすれば、上記問題を解消することが可能となる反面、弁本体部の径方向の小型化に反する。
この点、上記構成によれば、少なくとも1つの一般可動流路の上流端及び下流端が、外周面のうち軸方向に互いに異なる箇所に開口される。
【0021】
従って、特定可動流路の下流端と、全ての一般可動流路の上流端及び下流端とが軸方向の同一の箇所に位置する場合に比べ、一般可動流路の設計の自由度が増す。その結果、弁本体部を径方向に大きくすることなく、特定可動流路及び一般可動流路を互いに離間させた状態で弁本体部に形成することが容易となる。
【発明の効果】
【0022】
上記ロータリバルブによれば、シール性能を確保しつつ、弁体を径方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態におけるロータリバルブの斜視図である。
図2図1のロータリバルブをボディ側から見た平面図である。
図3図1のロータリバルブをボディ側から見た分解斜視図である。
図4図1のロータリバルブをカバー側から見た分解斜視図である。
図5】上記実施形態において、ボディにカバーが取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
図6】上記実施形態において、径方向パッキンの装着されたボディに弁体が組み付けられる前の状態を示す斜視図である。
図7】上記実施形態における弁体の斜視図である。
図8図2のロータリバルブの部分平断面図である。
図9図8の9-9線断面図である。
図10図8の10-10線断面図である。
図11】上記実施形態におけるロータリバルブの内部構造を示す図であり、ボディ及びカバーのそれぞれの一部を破断して示す部分断面斜視図である。
図12図8における弁体が回転されて第2回転位相にされたロータリバルブの部分平断面図である。
図13図12における弁体が回転されて第3回転位相にされたロータリバルブの部分平断面図である。
図14】従来のロータリバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、複数の流体の流路の途中に設けられて、流路を切り替えるロータリバルブの一実施形態について、図1図13を参照して説明する。
ここで、流体には、液体及び気体のいずれか一方又は両者が含まれる。また、複数の流体には、成分の異なる複数種類の流体が含まれるほか、同一種類の複数の流体も含まれる。同一種類の複数の流体には、同一の複数の流体が含まれるほか、成分は同一であるが、温度又はその他の要素、例えば粘度等の異なる複数の流体が含まれる。本実施形態では、成分が同一であるが、互いに温度の異なる2種類の冷却水を、流体としている。なお、流体として、冷却水とは異なる種類の液体が用いられてもよい。
【0025】
図1図4に示すように、ロータリバルブ10は、ハウジング11、弁体51、径方向パッキン71~74及び軸シール部材77を備えている。ここで、弁体51は、後述するように、軸線ALを有する軸部58及び特定軸部57を中心として回転可能である。そのため、この軸線ALを基準として、各部材について説明する。また、軸線ALに沿う方向を「軸方向」という。また、軸線ALを中心として放射状に延びる方向を「径方向」というものとする。
【0026】
[ハウジング11]
図1及び図2に示すように、ハウジング11は、互いに軸方向に並べられた状態で配置されたカバー12及びボディ21を備えている。
【0027】
<カバー12>
図9及び図10に示すように、カバー12は、特定軸受部13を径方向における中心部に有している。特定軸受部13は、カバー12の上記中心部において開口し、かつ軸方向のうち、ボディ21から遠ざかる側(図9及び図10の下側)へ凹む凹部によって構成されている。
【0028】
特定軸受部13の底部には、円形の軸方向流入口14が形成されている。特定軸受部13における軸方向流入口14の周縁部には、ボディ21から遠ざかる側へ向けて突出する接続管部15が形成されている。接続管部15には、図示しない配管が接続され、ロータリバルブ10の外部から配管を通って送られてくる流体FL1が、接続管部15を通って軸方向流入口14に導かれる。
【0029】
<ボディ21>
ボディ21は、軸方向へ延びる環状壁部22を備えている。軸方向における環状壁部22のカバー12とは反対側(図9及び図10の上側)の端部には、同端部を塞いだ状態で閉塞部23が形成されている。軸方向における環状壁部22の閉塞部23とは反対側の端部は、ボディ21に取り付けられた上記カバー12によって塞がれている。
【0030】
上記径方向における閉塞部23の中心部には軸受部24が形成されている。軸受部24は、閉塞部23を軸方向へ貫通する孔からなる。
図8図10に示すように、環状壁部22の1箇所には、円形の径方向流入口26が形成されている。また、環状壁部22の複数箇所(3箇所)には、それぞれ円形の径方向流出口27,28,29が形成されている。本実施形態では、径方向流入口26及び3つの径方向流出口27~29が、環状壁部22の周方向に等角度(90°)毎に形成されている。2つの径方向流出口27,28は、径方向流入口26に対し軸方向に同一の箇所に形成されている。これに対し、1つの径方向流出口29は、径方向流入口26から軸方向へ離れた箇所、本実施形態では、カバー12から遠ざかった箇所に形成されている。
【0031】
なお、上記軸方向流入口14及び径方向流入口26は、特許請求の範囲における流入口に該当し、径方向流出口27~29は流出口に該当する。
環状壁部22における径方向流入口26の周縁部には、同環状壁部22の径方向外方へ突出する接続管部31が設けられている。接続管部31には、図示しない配管が接続され、ロータリバルブ10の外部から配管を通って送られてくる流体FL2が、接続管部31を通って径方向流入口26に導かれる。環状壁部22内であって、径方向流入口26の周縁部に対し、同環状壁部22の径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部33が形成されている。
【0032】
環状壁部22における径方向流出口27の周縁部には、上記径方向外方であって、接続管部31の突出方向とは異なる方向へ突出する接続管部34が設けられている。接続管部34には、図示しない配管が接続され、流体FL1,FL2が径方向流出口27及び接続管部34を通って配管に流出される。環状壁部22内であって、径方向流出口27の周縁部に対し、上記径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部36が形成されている。
【0033】
環状壁部22における径方向流出口28の周縁部には、上記径方向外方であって、接続管部31,34の突出方向とは異なる方向へ突出する接続管部37が設けられている。接続管部37には、図示しない配管が接続され、流体FL1が径方向流出口28及び接続管部37を通って配管に流出される。環状壁部22内であって、径方向流出口28の周縁部に対し、上記径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部39が形成されている。
【0034】
環状壁部22における径方向流出口29の周縁部には、上記径方向外方であって、接続管部31,34,37の突出方向とは異なる方向へ突出する接続管部41が設けられている。接続管部41には、図示しない配管が接続され、流体FL2が径方向流出口29及び接続管部41を通って配管に流出される。環状壁部22内であって、径方向流出口29の周縁部に対し、上記径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部43が形成されている。
【0035】
ボディ21における環状壁部22及び閉塞部23と、カバー12とによって囲まれた空間は、収容部45を構成している。収容部45は、パッキン装着部33,36,39,43に繋がっている。
【0036】
ハウジング11は、収容部45を、軸方向の両側から挟んで互いに対向する一対の対向壁部を有している。ここでは、一対の対向壁部を区別するために、一方の対向壁部を単に「対向壁部」といい、他方の対向壁部を「特定対向壁部」というものとする。本実施形態では、特定対向壁部がカバー12によって構成され、対向壁部が閉塞部23によって構成されている。
【0037】
[弁体51]
図3及び図4に示すように、弁体51は、弁本体部52及び一対の軸部を備えている。
<弁本体部52>
弁本体部52は、軸方向に延びる円柱状をなしており、収容部45に収容されている(図8図10参照)。弁本体部52は、カバー12(特定対向壁部)に対向する特定端面53と、閉塞部23(対向壁部)に対向する端面54とを有している。弁本体部52は、環状壁部22に対向する外周面56を有している。外周面56は、軸線ALを中心とする円筒面によって構成されている。
【0038】
<軸部>
図9及び図10に示すように、軸部は、特定軸部57及び軸部58からなる。特定軸部57は、上記径方向における特定端面53の中心部からカバー12(特定対向壁部)側へ突出している。軸部58は、径方向における端面54の中心部から閉塞部23(対向壁部)側へ突出している。弁体51は、特定軸部57において特定軸受部13に対し回転可能に支持され、軸部58において軸受部24に対し回転可能に支持されている。
【0039】
図8図10に示すように、弁本体部52には、複数の可動流路が形成されている。複数の可動流路は、流体FL1が流れる1つの特定可動流路61と、流体FL2が流れる2つの一般可動流路65,67とからなる。
【0040】
<特定可動流路61>
流体FL1の流れ方向における特定可動流路61の上流部62は、軸線AL上において軸方向に延びている。上流部62は、特定軸部57を貫通している。流体FL1の流れ方向における上流部62の上流端62aは、特定軸部57の突出端面57aにおいて開口されている(図5図6参照)。上流端62aは、上記軸方向流入口14に対向しており、弁体51の回転位相に拘わらず常に軸方向流入口14に連通している。
【0041】
流体FL1の流れ方向における特定可動流路61の下流部63は、上流部62を起点として上記径方向外方へ直線状に延びている。流体FL1の流れ方向における下流部63の下流端63bは、上記外周面56において開口されている。
【0042】
特定可動流路61は、弁体51の回転に伴い、下流部63が移動(旋回)することで、特定可動流路61を介した軸方向流入口14と径方向流出口27,28との連通状態を変更する。
【0043】
<一般可動流路65>
一般可動流路65は、弁本体部52のうち、軸線ALから径方向外方へ離間した箇所において、直線状に延びている。流体FL2の流れ方向における一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bは、外周面56のうち、周方向に互いに離間した箇所において開口されている。上流端65a及び下流端65bは、軸方向において、上記下流端63bと同一の箇所に位置している。
【0044】
一般可動流路65は、弁体51の回転に伴い、軸線ALの周りを移動(旋回)することで、同一般可動流路65を介した径方向流入口26と径方向流出口27との連通状態を変更する(図12参照)。
【0045】
<一般可動流路67>
図7図10に示すように、一般可動流路67は、弁本体部52のうち、軸線ALから径方向外方へ離間した箇所において、直線状に延びている。流体FL2の流れ方向における一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bは、外周面56のうち、周方向に互いに離間した箇所において開口されている。上流端67aは、軸方向において、特定可動流路61の下流端63bと、一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bと同一の箇所に位置している。下流端67b(図9及び図10参照)は、軸方向において、上記上流端67a(図9参照)とは異なる箇所、本実施形態では、カバー12から遠ざかる側の箇所に位置している。
【0046】
一般可動流路67は、弁体51の回転に伴い、軸線ALの周りを移動(旋回)することで、同一般可動流路67を介した径方向流入口26と径方向流出口29との連通状態を変更する(図8図11参照)。
【0047】
[径方向パッキン71~74]
図3図6及び図8に示すように、径方向パッキンとして、径方向流入口26及び径方向流出口27~29と同数(4つ)の径方向パッキン71,72,73,74が用いられている。径方向パッキン71~74は、ゴム等の弾性材料によって、互いに同一の形状に形成されている。径方向パッキン71~74の外形形状は矩形をなしている。上記径方向における径方向パッキン71~74の内側面は、弁本体部52の外周面56に沿って凹状に湾曲している。また、各径方向パッキン71~74は、径方向流入口26及び径方向流出口27~29と同程度の内径を有する円形の孔75を有しており、環状をなしている。
【0048】
また、各径方向パッキン71~74は、図示しないシール部を備えている。シール部は、孔75の周縁部から上記径方向内方へ突出しており、環状をなしている。シール部は、上記外周面56に沿って凹状に湾曲しており、同外周面56に密着可能である。
【0049】
図5図6及び図8に示すように、径方向パッキン71は上記パッキン装着部33に装着されており、環状壁部22における径方向流入口26の周縁部と上記外周面56との間に位置している。
【0050】
径方向パッキン72は上記パッキン装着部36に装着されており、環状壁部22における径方向流出口27の周縁部と上記外周面56との間に位置している。
径方向パッキン73は上記パッキン装着部39に装着されており、環状壁部22における径方向流出口28の周縁部と上記外周面56との間に位置している。
【0051】
上記3つの径方向パッキン71~73は、軸方向における互いに同一の箇所であって、周方向に互いに離間した箇所に位置している。
図6及び図10に示すように、径方向パッキン74は上記パッキン装着部43に装着されており、環状壁部22における径方向流出口29の周縁部と上記外周面56との間に位置している。
【0052】
なお、カバー12と弁本体部52の特定端面53との間には、従来のロータリバルブ100とは異なり、軸方向パッキンが配置されていない。
<軸シール部材77>
図3図4図9及び図10に示すように、軸シール部材77は、ゴム等の弾性材料によって円環状に形成されている。軸シール部材77は、軸部58の周囲であって、同軸部58と、軸受部24の内壁面との間に配置されている。軸シール部材77は、収容部45内の流体FL1,FL2が軸部58と上記軸受部24の内壁面との間を通って、ロータリバルブ10の外部へ漏れ出るのを規制する。
【0053】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
[(1)ロータリバルブ10による流路の切り替えについて]
図8図10に示すように、ロータリバルブ10の外部から送られてくる流体FL1は、接続管部15によって軸方向流入口14に導かれる。また、ロータリバルブ10の外部から送られてくる流体FL2は、接続管部31によって径方向流入口26に導かれる。
【0054】
このような状況のもと、図示しないモータ、手動操作等によって弁体51が回転されて、回転位相が変化することで、特定可動流路61による軸方向流入口14と径方向流出口27,28との連通状態が変化する。また、上記回転位相の変化により、径方向流入口26と径方向流出口27,29との連通状態が変化する。変化の対象となる回転位相は、第1回転位相、第2回転位相及び第3回転位相である。
【0055】
なお、特定可動流路61の上流端62aは、回転位相に拘わらず常に軸方向流入口14に対向する。そのため、流体FL1は、回転位相に拘わらず、上流端62aから特定可動流路61に流入可能である。
【0056】
また、径方向パッキン71~74のシール部は、その径方向パッキン71~74の径方向における内側の領域と外側の領域との間で流体FL1,FL2が行き来することを規制する。この規制により、上記内側の領域を流れる流体FL1,FL2と、外側の領域を流れる流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が抑制される。
【0057】
<第1回転位相>
図8図11に示すように、第1回転位相では、特定可動流路61の下流端63bが径方向パッキン73を介して径方向流出口28に対向する。特定可動流路61は、軸方向流入口14と径方向流出口28とを連通状態にする。また、一般可動流路67の上流端67aは、径方向パッキン71を介して径方向流入口26に対向する。一般可動流路67の下流端67bは、径方向パッキン74を介して径方向流出口29に対向する。一般可動流路67は、径方向流入口26と径方向流出口29とを連通状態にする。
【0058】
一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bは、径方向流入口26及び径方向流出口27~29のいずれに対しても対向しない。
そのため、接続管部15に送られてきた流体FL1は、特定可動流路61によって径方向流出口28に導かれる。この流体FL1は、径方向流出口28から接続管部37を通って配管に流出される。
【0059】
ここで、径方向パッキン73は、外周面56における下流端63bの周縁部と、環状壁部22における径方向流出口28の周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン73の径方向における内側の領域の流体FL1と、外側の領域の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン73によって抑制される。
【0060】
また、接続管部31に送られてきた流体FL2は、径方向流入口26から一般可動流路67に流入し、同一般可動流路67によって径方向流出口29に導かれる。この流体FL2は、径方向流出口29から接続管部41を通って配管に流出される。
【0061】
ここで、径方向パッキン71は、環状壁部22における径方向流入口26の周縁部と、外周面56における上流端67aの周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン71の径方向における内側の領域の流体FL2と、外側の領域の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン71によって抑制される。
【0062】
また、径方向パッキン74は、外周面56における下流端67bの周縁部と、環状壁部22における径方向流出口29の周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン74の径方向における内側の領域の流体FL2と、外側の領域の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン74によって抑制される。
【0063】
なお、径方向流出口27は、径方向パッキン72を介して外周面56に対向する。径方向パッキン72は、環状壁部22における径方向流出口27の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン72の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、径方向流出口27から流出する現象が抑制される。
【0064】
ロータリバルブ10は、流体FL1を軸方向流入口14から流入させて径方向流出口28から流出させるとともに、流体FL2を径方向流入口26から流入させて径方向流出口29から流出させるモードになる。
【0065】
<第2回転位相>
図12に示すように、第2回転位相では、一般可動流路65の上流端65aが径方向パッキン71を介して径方向流入口26に対向する。一般可動流路65の下流端65bは、径方向パッキン72を介して径方向流出口27に対向する。一般可動流路65は、径方向流入口26と径方向流出口27とを連通状態にする。
【0066】
特定可動流路61の下流端63bと、一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bとは、径方向流入口26及び径方向流出口27~29のいずれに対しても対向しない。
そのため、接続管部31に送られてきた流体FL2は、径方向流入口26から一般可動流路65に流入し、同一般可動流路65によって径方向流出口27に導かれる。この流体FL2は、径方向流出口27から接続管部34を通って配管に流出される。
【0067】
ここで、径方向パッキン71は、環状壁部22における径方向流入口26の周縁部と、外周面56における上流端65aの周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン71の径方向における内側の領域の流体FL2と、外側の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン71によって抑制される。
【0068】
また、径方向パッキン72は、外周面56における下流端65bの周縁部と、環状壁部22における径方向流出口27の周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン72の径方向における内側の領域の流体FL2と、外側の領域の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン72によって抑制される。
【0069】
なお、径方向流出口28は、径方向パッキン73を介して外周面56に対向する。径方向パッキン73は、環状壁部22における径方向流出口28の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン73の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、径方向流出口28から流出する現象が抑制される。
【0070】
また、径方向流出口29は、径方向パッキン74を介して外周面56に対向する。径方向パッキン74は、環状壁部22における径方向流出口29の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン74の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、径方向流出口29から流出する現象が抑制される。
【0071】
ロータリバルブ10は、流体FL2を径方向流入口26から流入させて径方向流出口27から流出させるモードになる。また、ロータリバルブ10は、流体FL1が軸方向流入口14から特定可動流路61に流入するが、流出口から流出するのを遮断するモードになる。
【0072】
<第3回転位相>
図13に示すように、第3回転位相では、特定可動流路61の下流端63bが径方向パッキン72を介して径方向流出口27に対向する。特定可動流路61は、軸方向流入口14と径方向流出口27とを連通状態にする。
【0073】
一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bと、一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bとは、径方向流入口26及び径方向流出口27~29のいずれに対しても対向しない。
【0074】
そのため、接続管部15に送られてきた流体FL1は、特定可動流路61によって径方向流出口27に導かれる。この流体FL1は、径方向流出口27から接続管部34を通って配管に流出される。
【0075】
ここで、径方向パッキン72は、外周面56における下流端63bの周縁部と、環状壁部22における径方向流出口27の周縁部とに対し接触している。そのため、径方向パッキン72の径方向における内側の領域の流体FL1と、外側の領域の流体FL1,FL2とが混ざり合う現象が径方向パッキン72によって抑制される。
【0076】
なお、径方向流入口26は、径方向パッキン71を介して外周面56に対向する。径方向パッキン71は、環状壁部22における径方向流入口26の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン71の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、接続管部31を介して送られてきた流体FL2と混ざり合う現象が抑制される。
【0077】
また、径方向流出口28は、径方向パッキン73を介して外周面56に対向する。径方向パッキン73は、環状壁部22における径方向流出口28の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン73の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、径方向流出口28から流出する現象が抑制される。
【0078】
さらに、径方向流出口29は、径方向パッキン74を介して外周面56に対向する。径方向パッキン74は、環状壁部22における径方向流出口29の周縁部と外周面56とに対し接触している。そのため、径方向パッキン74の径方向における外側の領域の流体FL1,FL2が、内側の領域に入り込んで、径方向流出口29から流出する現象が抑制される。
【0079】
ロータリバルブ10は、流体FL2を一般可動流路65,67のいずれにも流入させず、流体FL1を軸方向流入口14から流入させて径方向流出口27から流出させるモードになる。
【0080】
このように、本実施形態によると、1つのロータリバルブ10でありながら、弁体51を回転させて回転位相を変えることで、2種類の流体FL1,FL2のそれぞれについて、流れに関するモードを切り替えることができる。
【0081】
[(2)軸方向パッキンの廃止について]
本実施形態では、径方向パッキン71~74が、環状壁部22において開口する径方向流入口26及び径方向流出口27~29を対象とし、それらの周縁部と弁本体部52の外周面56との間に位置する。従って、径方向流入口26及び径方向流出口27~29について、径方向パッキン71~74の径方向における内側の領域を流れる流体FL1,FL2と、外側の領域を流れる流体FL1,FL2とが混ざり合う現象を抑制できる。径方向流入口26と径方向流出口27~29との間で、又は径方向流出口27~29間で流体FL1,FL2が混ざり合う現象を径方向パッキン71~74によって抑制できる。
【0082】
なお、カバー12(特定対向壁部)に軸方向流入口14が設けられている。しかし、軸方向流入口14は、カバー12の1箇所にのみ設けられている。しかも、上述したように、径方向流入口26及び径方向流出口27~29のそれぞれの周縁部と、弁本体部52の外周面56との間には、環状の径方向パッキン71~74が配置されている。そのため、軸方向流入口14の周縁部と特定端面53との間に軸方向パッキンが配置されなくても、同軸方向流入口14と、径方向流入口26及び径方向流出口27~29との間で流体FL1,FL2が混ざり合う現象を抑制できる。
【0083】
その結果、上記実施形態のように、軸方向パッキンを廃止しても、従来のロータリバルブ100と同程度のシール性能を確保することができる。
[(3)軸方向パッキンの廃止による弁本体部52の小径化について]
また、上記のように、軸方向パッキンが廃止されることから、軸方向パッキン配置のために、弁本体部52を径方向に大きくしなくてもすむ。弁本体部52の径が、軸方向パッキンから受ける制約が無くなる。弁本体部52を径方向に小型化することが可能となる。これに伴い、径方向におけるハウジング11の小型化を図ることが可能となる。
【0084】
[(4)一般可動流路67による弁本体部52の小径化について]
ここで、特定可動流路61及び一般可動流路65,67の数が多くなるに従い、それらが弁本体部52に占める割合が増大する。仮に、特定可動流路61の下流端63bと、一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bと、一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bとが全て軸方向の同一の箇所に位置すると、可動流路が密集する。特定可動流路61及び一般可動流路65,67を互いに離間させた状態で、表現を変えると、互いに干渉させないで、弁本体部52に形成することが難しい。
【0085】
弁本体部52を径方向に大きくすれば、特定可動流路61及び一般可動流路65,67を、互いに離間させた状態で弁本体部52に形成することが容易になる。反面、弁本体部52の径方向の小型化に反する。
【0086】
この点、本実施形態では、一般可動流路67の下流端67bが、上流端67aに対し軸方向に離れた箇所において開口されている。一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bと、一般可動流路67の上流端67aとは、軸方向における特定可動流路61の下流端63bと同一の箇所に開口されている。
【0087】
従って、特定可動流路61の下流端63bと、一般可動流路65の上流端65a及び下流端65bと、一般可動流路67の上流端67a及び下流端67bとの全てが軸方向の同一の箇所に位置する場合に比べ、一般可動流路67の設計の自由度が増す。その結果、弁本体部52を径方向に大きくすることなく、特定可動流路61及び一般可動流路65,67を互いに離間させた状態で弁本体部52に形成することが容易となる。
【0088】
[(5)その他の効果について]
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(5-1)従来のロータリバルブ100のように、軸方向パッキン117を用いる技術では、同軸方向パッキン117を軸方向に圧縮させることで発生する圧縮反力によって、特定対向壁部103と弁本体部112との間をシールする。
【0089】
ここで、ロータリバルブ100を構成する部品の寸法がばらついていると、軸方向パッキン117が弾性変形することで、ばらつきをある程度吸収する。しかし、上記ばらつきが、軸方向パッキン117がばらつきを吸収できる大きさよりも大きいと、弁本体部112と軸方向パッキン117との間に隙間が生じ、シール性能を確保できないおそれがある。この問題は、軸方向パッキン117を多く圧縮させて、圧縮反力を増大させることで解消できる。反面、軸方向パッキン117の圧縮反力が大きくなるに従い、弁体111の回転に伴い、弁本体部112と軸方向パッキン117との間で生ずる摺動抵抗が増加する。その結果、弁体111を回転させるのに必要な回転トルクが増加してしまう。
【0090】
この点、本実施形態では、上述したように軸方向パッキン117を用いていない。そのため、従来、軸方向パッキン117と弁本体部112との間で発生した摺動抵抗が、本実施形態では発生しなくなる。従って、本実施形態によると、弁体51を回転させるのに必要な回転トルクを小さくすることができる。
【0091】
(5-2)本実施形態のロータリバルブ10では、径方向パッキン71~74を、弁本体部52の径方向に圧縮させることで発生する圧縮反力によって、弁本体部52の外周面56と環状壁部22との間をシールする。弁体51を回転させるために必要な回転トルクは、この圧縮反力からも影響を受ける。
【0092】
本実施形態では、上述したように軸方向パッキン117を廃止することで、弁本体部52を径方向に小型化している。この小型化に伴い、1つ当りの径方向パッキン71~74の圧縮反力から弁体51の回転トルクが受ける影響が小さくなる。従って、全部の径方向パッキン71~74から受ける影響を小さくし、上記回転トルクを小さくすることが可能となる。
【0093】
(5-3)従来のロータリバルブ100において、シール性能を確保しつつ、弁体111の回転トルクの増加を抑制する別の対策として、次のようなものが考えられる。
軸部116を弁本体部112とは別の部品により構成する。軸部116を弁本体部112に対し、軸方向へ移動可能、かつ一体回転可能に連結する。軸部116及び弁本体部112の間に、軸部116及び弁本体部112を軸方向の両側へ付勢する弾性部材を配置する。
【0094】
弾性部材及び軸方向パッキン117は、それぞれ弾性変形することで、ロータリバルブ100を構成する部品の寸法のばらつきを吸収する。ばらつきを吸収する性能が、軸方向パッキン117のみの場合よりも高まる。ばらつきを吸収するために、軸方向パッキン117を多く圧縮させて圧縮反力を増大させなくてもすむ。弁体111の回転に伴い、弁本体部112と軸方向パッキン117との間に生ずる摺動抵抗が過大にならず、弁体111を回転させるのに必要な回転トルクの増加を抑制できる。
【0095】
反面、上記対策では、部品点数が増加し、ロータリバルブ100のコストが増加する、部品の組み立てに要する時間が増加する等の新たな問題が生ずる。
この点、本実施形態では、上述したように軸方向パッキン117を用いていない。そのため、上記のような部品点数が多くなる構成を採用する必要がない。従って、部品のコストを削減するとともに、組み立て工数を削減することができる。
【0096】
(5-4)従来のロータリバルブ100では、単一の大型の軸方向パッキン117が用いられる。この軸方向パッキン117は、通常、高額な材質が用いられて形成される。そのため、軸方向パッキン117のコストが高くなる。
【0097】
この点、本実施形態では、大型の軸方向パッキン117を用いず、小型の径方向パッキン71~74でシールするようにしている。そのため、シールのために用いるパッキンのコストを低くすることができる。
【0098】
[変更例]
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0099】
[ハウジング11に関する事項]
・軸線ALに沿う方向における閉塞部23及びカバー12の位置が、上記実施形態とは逆の関係となるように変更されてもよい。例えば、図9及び図10では、カバー12が環状壁部22の上側に配置され、閉塞部23が同環状壁部22の下部に形成されてもよい。この場合、流体FL1の軸方向流入口14は、閉塞部23に形成されてもよい。
【0100】
・収容部45を有することを条件に、ハウジング11がボディ21及びカバー12とは異なる部材によって構成されてもよい。この変更例には、ボディ21及びカバー12に対し、別の部材が加わることも含まれる。
【0101】
[弁体51に関する事項]
・弁本体部52は、円柱状に代えて球状に形成されてもよい。
・弁体51における軸部が、軸部58及び特定軸部57の一方によって構成されてもよい。
【0102】
・特定可動流路61の上流端62aは、上記径方向におけるカバー12(特定対向壁部)の中心部とは異なる箇所に対向して開口されてもよい。この場合、カバー12における軸方向流入口14の位置も、上流端62aに対向する位置に変更される。
【0103】
この変更例でも、軸方向流入口14の周縁部と特定端面53との間に軸方向パッキンが配置されなくても、同軸方向流入口14と、径方向流入口26及び径方向流出口27~29との間で流体FL1,FL2が混ざり合う現象を抑制できる。
【0104】
これは、上述したように、径方向流入口26及び径方向流出口27~29の各周縁部と弁本体部52の外周面56との間に環状の径方向パッキン71~74が配置されているからである。
【0105】
・特定可動流路61の上流端62aが、カバー12(特定対向壁部)に対向する箇所(特定端面53)に代えて、弁本体部52の外周面56において開口されてもよい。この場合、上記上流端62aが対向する流入口として、カバー12の軸方向流入口14に代えて、環状壁部22に径方向流入口が形成される。
【0106】
・一般可動流路65,67の数が、1又は3以上に変更されてもよい。
・特定可動流路61が流体FL1の流れ方向における途中で複数に分岐されてもよい。例えば、下流部63が複数設定される。複数の下流部63は、上流部62を起点として上記径方向外方へ延びる。この場合、軸方向における複数の下流部63の位置は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0107】
前者の場合、複数の下流部63が、互いに異なる方向へ延びてもよい。後者の場合、複数の下流部63は、互いに異なる方向へ延びてもよいし、同一方向へ延びてもよい。
一般可動流路65,67についても、上記特定可動流路61と同様、流体FL2の流れ方向における途中で複数に分岐されてもよい。この場合、一般可動流路65,67は、周方向に分岐されてもよいし、軸方向に分岐されてもよい。
【0108】
・上記実施形態において、一般可動流路67の下流端67bの軸方向における位置が変更されてもよい。
下流端67bは、例えば、軸方向における上流端67aと同一の箇所に形成されてもよい。また、下流端67bは、軸方向における上流端67aよりもカバー12側に形成されてもよい。
【0109】
・一般可動流路65についても、一般可動流路67と同様に、上流端65a及び下流端65bが軸方向に互いに異なる箇所に位置してもよい。
・特定可動流路61の下流端63bと、一般可動流路65,67の上流端65a,67a及び下流端65b,67bとが、軸方向に互いに異なる3箇所以上の箇所に形成されてもよい。
【0110】
・上流端67a及び下流端67bが軸方向の異なる箇所に位置する一般可動流路67は、上記実施形態のように直線状に形成されてもよいし、屈曲した形状に形成されてもよい。後者の場合、一般可動流路67は、例えば軸方向に延びる部分と、同部分を中心として径方向に延びる部分とによって構成されてもよい。
【0111】
[径方向パッキン71~74に関する事項]
・径方向パッキン71~74の外形形状が、矩形とは異なる形状に変更されてもよい。
・径方向パッキン71~74における孔75の形状が円形とは異なる形状に変更されてもよい。
【0112】
・径方向パッキン71~74は、弾性材料に代えて硬質の材料によって形成されてもよい。
・径方向パッキン71~74に複数種類の形状が設定されてもよい。そして、複数の径方向パッキン71~74のそれぞれは、いずれかの種類の形状に形成されてもよい。
【0113】
[その他]
・上記実施形態では、特定可動流路61は、弁体51の回転に伴い、下流部63が移動することで、軸方向流入口14と径方向流出口27,28との連通状態を変更する。
【0114】
上記連通状態の変更には、弁体51の回転量を調整することで、特定可動流路61の下流端63b及び径方向流出口27,28の間における流路面積を連続的に変化させ、同径方向流出口27,28から流出される流体FL1の量を調整することも含まれる。
【0115】
・上記実施形態では、一般可動流路65,67は、弁体51の回転に伴い移動することで、径方向流入口26と径方向流出口27,29との連通状態を変更する。
上記連通状態の変更には、弁体51の回転量を調整することで、一般可動流路65,67の上流端65a,67a及び径方向流入口26の間における流路面積を連続的に変化させ、径方向流出口27,29から流出される流体FL2の量を調整することも含まれる。
【0116】
また、上記連通状態の変更には、弁体51の回転量を調整することで、下流端65b,67b及び径方向流出口27,29の間における流路面積を連続的に変化させ、同径方向流出口27,29から流出される流体FL2の量を調整することも含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10…ロータリバルブ
11…ハウジング
12…カバー(特定対向壁部)
14…軸方向流入口(流入口)
22…環状壁部
23…閉塞部(対向壁部)
26…径方向流入口(流入口)
27,28,29…径方向流出口(流出口)
45…収容部
51…弁体
52…弁本体部
56…外周面
57…特定軸部(軸部)
58…軸部
61…特定可動流路(可動流路)
62a,65a,67a…上流端
63b,65b,67b…下流端
65,67…一般可動流路(可動流路)
71,72,73,74…径方向パッキン
AL…軸線
FL1,FL2…流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14