(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110745
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20230802BHJP
B25B 23/10 20060101ALN20230802BHJP
B25B 21/00 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B25B23/10 E
B25B21/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012357
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB01
3C038BC04
3C038EA00
(57)【要約】
【課題】本発明は、ツール交換成しに複数種類のねじを締め付けることが可能なねじ締め機を提供する。
【解決手段】
回転駆動源34の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビット38およびこのドライバビット38と一体に回転可能かつ当該ドライバビット38に対して軸方向に相対移動可能に構成されたボックスビット39を備えることを特徴とするねじ締め機10による。これにより、駆動穴を有するねじN1と駆動部を有するねじN2の両方をツール交換なしで締付け可能となる。また、前記ボックスビット39は、ドライバビット38に吊り下げ支持されており、ドライバビット38の下端を内包可能な所定の深さの嵌合穴391を備えていることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビットおよびこのドライバビットと一体に回転可能かつ当該ドライバビットに対して軸方向に相対移動可能に構成されたボックスビットを備えることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記ボックスビットは、ドライバビットに吊り下げ支持されており、ドライバビットの下端を内包可能な所定の深さの嵌合穴を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記ドライバビットおよびボックスビットを内包するスクリューガイドを備えており、
このスクリューガイドには、吸気手段が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記ボックスビットは、その外径が前記スクリューガイドの内径とほぼ同径に構成されており、
前記嵌合穴の底面には、前記吸気手段側の端面まで貫通する吸気経路が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のねじ締め機。
【請求項5】
前記ボックスビットの吸気手段側端面には、前記駆動穴側に向かうに連れて徐々に小径となるテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のねじ締め機。
【請求項6】
前記スクリューガイドを回転駆動源側に引き上げる引き上げ手段を備えていることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れかに記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに締結するねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および特許文献2に示すように、ねじと嵌合する締結工具としてボックスビットやドライバビットを備えたねじ締め機が知られている。これらねじ締め機の締結工具は、回転駆動源に連結されており、所定のトルクでねじをワークに締め付けることが可能に構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-174351号公報
【特許文献2】特開平10-328946号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め機は、ボックスビットまたはドライバビットどちらか一方しか装着できないため、頭部形状が異なるねじを締め付ける場合、締結工具を取り替えるか、ねじ締め機をもう一台用意する必要がある等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、一台で複数のねじを締付可能なねじ締め機の提供を目的とする。この目的を達成するため、本発明は、回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビットおよびこのドライバビットと一体に回転可能かつ当該ドライバビットに対して軸方向に相対移動可能に構成されたボックスビットを備えることを特徴とする。なお、前記ボックスビットは、ドライバビットに吊り下げ支持されており、ドライバビットの下端を内包可能な所定の深さの嵌合穴を備えていることが好ましい。また、前記ドライバビットおよびボックスビットを内包するスクリューガイドを備えており、このスクリューガイドには、吸気手段が接続されていることが好ましい。さらに、前記ボックスビットは、その外径が前記スクリューガイドの内径とほぼ同径に構成されており、前記嵌合穴の底面には、前記吸気手段側の端面まで貫通する吸気経路が形成されていることが好ましい。また、前記ボックスビットの吸気手段側端面には、前記駆動穴側に向かうに連れて徐々に小径となるテーパ面が形成されていることが好ましい。さらに、前記スクリューガイドを回転駆動源側に引き上げる引き上げ手段を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のねじ締め機によれば、ドライバビットおよびこのドライバビットと一体に回転可能かつ当該軸方向に相対移動可能なボックスビットの両方を備えているため、頭部に駆動穴が形成されているねじと、頭部外形に駆動部を有するねじの両方を締結することが可能となる。これにより、ねじ締め機の交換作業を減らすことが可能となり、作業効率が向上する。なお、前記ドライバビットの下端がボックスビット内に内包されており、ねじがボックスビットと面接触するため、吸着保持したねじが傾斜し難い等の利点がある。また、前記ドライバビットおよびボックスビットがスクリューガイドに内包されており、当該スクリューガイドが吸着保持可能な頭部形状のねじであれば吸着保持できるため、より多数のねじを締付可能になる等の利点もある。さらに、前記ボックスビットの外径が前記スクリューガイドの内径とほぼ同径に構成されているため、スクリューガイドより小径のねじであっても吸着保持できる等の利点もある。また、前記ボックスビットにテーパ面が形成されているため、ねじ吸着時に吸い込んだ埃等によってボックスビットとスクリューガイドとの摩擦が増大することを防止でき、結果、締付け不良の発生を防止できる等の利点がある。さらに、引き上げ手段を備えていることにより、狭い箇所への締付けが可能になる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るねじ締め機の構造を示す一部断面側面図である。
【
図2】(a)は待機状態のドライバビットの周辺構造を示す要部拡大一部断面側面図であり、(b)はドライバビットがボックスビットに対して軸方向に相対移動した状態のドライバビットの周辺構造を示す要部拡大一部断面側面図である。
【
図3】(a)は
図2のA-A線断面図であり、(b)は
図2のB-B線断面図であり、(c)は
図2の(a)の底面図である。
【
図4】本発明に係るねじ締め機の動作説明図であり、(a)は第1のねじを吸着保持した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(b)は第1のねじをワークWに締結した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図5】本発明に係るねじ締め機の動作説明図であり、(a)は第2のねじを吸着保持した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(b)は第2のねじをワークWに締結した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図6】本発明に係るねじ締め機の動作説明図であり、(a)は第3のねじを吸着保持した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(b)は第4のねじを吸着保持した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図7】本発明に係るねじ締め機の他の実施形態を示す一部切欠き側面図であり、(a)は待機状態を示す一部切欠き側面図であり、(b)は引き上げ手段が駆動した状態を示す一部切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1において10は、ワークW(図示せず)に締結部品の一例であるねじN1を締結するねじ締め機である。このねじ締め機10は、水平多関節ロボット(図示せず)の駆動を受けて水平移動する位置制御機構20と、この位置制御機構20の駆動を受けて昇降するドライバユニット30とから構成されている。
【0009】
前記位置制御機構20は、
図1に示すように鉛直方向に延びるフレーム21を備えており、このフレーム21の上下端部には、水平方向に延びる上板22および下板23が一体に固定されている。この上板22および下板23の間には、フレーム21と平行に延びるガイドロッド24が設けられており、このガイドロッド24には、摺動自在に構成されたドライバ台25が昇降自在に装着されている。また、前記上板22には、昇降駆動源の一例であるACサーボモータ26(以下、昇降モータ26という)が載置されており、この昇降モータ26の出力軸には、ボールねじ27が一体に回転可能に連結されている。このボールねじ27は、前記上板22および下板23の間に設けられており、このボールねじ27には、その回転によって昇降する駆動ナット(図示せず)を介して、前記ドライバ台25が連結されている。このドライバ台25には、前記ドライバユニット30が連結されている。このため、昇降モータ26の回転駆動により、前記ドライバ台25およびこれに連結されるドライバユニット30が昇降する。
【0010】
前記ドライバユニット30は、前記ドライバ台25に固定される連結プレート31を有しており、この連結プレート31の下面には、中空円筒状のハウジング311が固定されている。このハウジング311には、ガイドホルダ32が上下方向相対移動可能に吊り下げ支持されており、このガイドホルダ32の下端には、略中空円筒形状のスクリューガイド33が固定されている。また、前記ガイドホルダ32には、一端がスクリューガイド33に連続するホース継手321が装着されており、このホース継手321の他端は、外部の真空発生装置等の吸気手段まで連続する吸気ホース(図示せず)が接続されている。このため、前記吸気手段が駆動すると、スクリューガイド33の内部が負圧となり、当該スクリューガイド33の下端開口部にねじN1を吸着保持可能となる。なお、前記ガイドホルダ32は、前記ハウジング311の内部に封入されるガイドばね322により、常時下方に付勢されており、当該ガイドばね322が撓むことにより、ガイドホルダ32およびスクリューガイド33がハウジング311に対して軸方向に相対移動することができる。
【0011】
また、前記連結プレート31上には、モータ台312が載置されており、このモータ台312の上方には、ねじN1を締結する回転駆動源の一例であるACサーボモータ34(以下、締結モータ34という)が設置されている。この締結モータ34は、その出力軸を下方に向けて前記モータ台312に固定されており、この締結モータ34の出力軸には、モータ台312および前記ドライバ台25を回転自在に貫通する接続継手35を介してビット軸37が接続されている。
【0012】
前記接続継手35には、ビット軸37が挿入される有底穴351が形成されており、この有底穴351には、これに直交し、ビット軸37の軸方向に延びる長孔352が形成されている。この長孔352には、これに沿って昇降自在に構成される連結ピン361が挿通しており、この連結ピン361は、有底穴351に挿入されるビット軸37に固定されて、これを支持している。これにより、ビット軸37は、締結モータ34の出力軸と一体に回転可能かつ、締結モータ34に対してビット軸37の軸方向に相対移動可能となる。また、有底穴351には、付勢部材の一例であるクッションばね362が封入されており、このクッションばね362は、ビット軸37を常時下方に付勢している。なお、前記長孔352の寸法は、前記クッションばね362が常時ビット軸37を付勢可能かつ、ビット軸37が接続継手35に対して上昇した際、クッションばね362が圧壊しない範囲で設定されている。
【0013】
前記ビット軸37は、スクリューガイド33内で回転自在かつ軸方向相対移動可能に構成された円柱形状部材であり、その下端には、ドライバビット38が連結されている。このドライバビット38は、
図2の(a)に示すように前記スクリューガイド33内を回転可能かつ軸方向相対移動可能挿通する棒状部材であり、略四角柱形状に構成された係合部381と、この係合部381の下端に連続し、平面視において係合部381より大きい面積を有する吊下部382と、この吊下部382の下面に連続し、六角柱形状に構成された嵌合部383とを有している。なお、前記係合部381は、
図3の(a)に示すようにその角に前記スクリューガイド33の内面と摺動可能な円弧形状に構成されている。このため、スクリューガイド33内でビット軸37およびドライバビット38が揺動することを防止できるとともに、係合部381とスクリューガイド33の内面との間に空気が通過可能な隙間ができ、スクリューガイド33の下端にねじN1を吸着保持可能となる。
【0014】
また、ドライバビット38は、これと一体に回転可能に構成されたボックスビット39が吊下支持されている。このボックスビット39は、
図3の(b)に示すようにその直径が前記スクリューガイド33の穴径とほぼ同径に構成されており、常時スクリューガイド33の内部に収容されている。このボックスビット39の下面には、後述するねじN2の頭部と嵌合可能な嵌合穴391が形成されており、この嵌合穴391の底面には、前記ドライバビット38の係合部381と同形の係合穴392がボックスビット39の上面まで貫通している。上記構成のボックスビット39は、その係合穴392に前記ドライバビット38の係合部381を挿通させ、前記嵌合穴391の底面が吊下部382に当接した状態で吊下支持されるため、ドライバビット38と一体に回転可能かつ、
図2の(b)に示すように軸方向に相対移動可能となる。なお、前記嵌合穴391は、前記ドライバビット38の吊下部382および嵌合部383の軸方向寸法より、深く構成されており、常時、その嵌合穴391内に吊下部382および嵌合部383を収容可能に構成されている。さらに嵌合穴391には、ボックスビット39の上面まで貫通する複数個の通気穴393が形成されている。さらに、ボックスビット39は、ドライバビット38に装着された付勢ばね384により、常時可能に付勢されている。しかも、
図2に示すようにボックスビット39の上面には、下方に向かうにつれ徐々に縮径するテーパ面394が形成されている。
【0015】
また、前記嵌合穴391は、
図3の(c)に示すように当該ボックスビット39の軸芯を中心とする円弧形状の嵌合凹部3911と、この嵌合凹部3911に連続し、径方向内側に突き出す嵌合凸部3912とが6個ずつ周方向交互に形成された略花弁形状に構成されている。さらに、ボックスビット39の一端には、に示すよう呼び込み面3913が形成されている。この呼び込み面3913は、嵌合穴391の開口縁部から奥方へ向かうに連れて縮径しながら傾斜するよう構成されており、その最大径部が前記嵌合凹部3911の円弧形状と同径に設定されている。なお、前記通気穴393は、嵌合凹部3911毎に周方向等間隔6個形成されている。
【0016】
なお、前記ねじN1は、頭部および軸部が一体形成された締結部品であり、それぞれ異なる形状の頭部を有している。このねじN1は、頭部に平面視六角形状の駆動穴(図示せず)が形成されており、その頭部座面には、外周方向に突き出す拡径部が形成されている。この拡径部は、前記スクリューガイド33の穴径とほぼ同径に構成されており、
図4の(a)に示すように頭部上面を前記ボックスビット39の下面に当接させた状態にて吸着保持されるように設計されている。
【0017】
次に、上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。
外部の搬送手段(図示せず)によってワークWが所定のねじ締め地点まで搬送されると、制御部がねじ締め機10に駆動信号を出力する。この駆動信号を受信したねじ締め機10は、前記水平多関節ロボットを駆動させて前記ドライバユニット30を外部の供給装置(図示せず)上まで移動させる。その後、ドライバビット38が供給装置上に待機するねじN1の軸線上に達すると、前記前記位置制御機構20が駆動してドライバユニット30をねじN1に向けて下降させる。
【0018】
上述のようにねじN1に向かい下降するドライバユニット30のスクリューガイド33がねじN3の座面あるいは部品供給装置に当接すると前記吸気手段が駆動し、ねじN1を
図4の(a)に示すように吸着保持する。ねじN1を吸着保持すると、前記位置制御機構20および前記水平多関節ロボットを駆動させてドライバビット38およびねじN1をワークWに形成された下穴W1の軸線上まで移動させる。ねじN1が下穴W1の軸線上に達すると前記位置制御機構20が再駆動してドライバユニット30を下穴W1に向けて下降させるとともに前記締結モータ34を駆動させてドライバビット38およびボックスビット39を回転させる。
【0019】
このようなねじ締め工程において、ねじN1がワークWに当接するとねじN1およびこれに当接するボックスビット39の下降が停止する。しかしながら、ドライバビット38は、前記位置制御機構20の下向き推力を受けており、前記付勢ばね384を撓ませながら下降するため、
図4の(b)に示すようにドライバビット38の嵌合部383がボックスビット39から突出してねじN1の駆動穴に嵌合する。その後、ねじ締め機10は、締結モータ34が所定の締付トルクを出力すると、ねじ締め工程を終了し、当初位置に復帰する。なお、当該ねじ締め工程において、スクリューガイド33の下端がワークWに当接した際も同様に前記ガイドばね322が撓ませながら、ドライバビット38がスクリューガイド33に対して相対移動することで、ねじN1とドライバビット38とが嵌合する。
【0020】
また、上述のねじ締め工程が終了すると、前記吸引手段が停止する。これにより、スクリューガイド33内に吸引された空気中の埃等の不純物がボックスビット39上に落下する。この時、ボックスビット39の上面に前記テーパ面394が形成されており、ボックスビット39上に落下した不純物はテーパ面394に沿って底側つまり径方向内側に落下するため、不純物がボックスビット39とスクリューガイド33との間に入り込むことを防止する。これにより、ボックスビット39とスクリューガイド33との間に生じる摩擦が増大することが防止され、当該摩擦によってトルクロスが発生し、ねじN1に適正な締付けトルクが伝達されないこと等を防止する。結果、ねじ締め不良等が発生し難くなる。
【0021】
次に、第2のねじN2を締結する場合について説明する。このねじN2は、頭部に六角柱形状に構成された駆動部を有する締結部品であり、その頭部座面には、外周方向に突き出す拡径部が形成されている。このねじN2の拡径部は、スクリューガイド33の穴径とほぼ同径に構成されており、
図5の(a)に示すように当該頭部を前記嵌合穴391に嵌合させた状態にて吸着保持されるように設計されている。
【0022】
上述のように吸着保持されたねじN2は、上述のようにねじ締め工程において、ボックスビット39が回転することにより、
図5の(b)に示されるように所定のワークWに締結される。なお、ねじ締め工程において、ボックスビット39は、ねじN2の頭部上面に前記ドライバビット38の下端が当接する状態まで後退し、ねじN2は、ドライバビット38からねじ締め推力を受けることとなる。このようにドライバビット38および当該ドライバビット38と一体に回転可能かつ軸方向に相対移動可能に構成されたボックスビット39を備えることにより、本件ねじ締め機10は、頭部に駆動穴(図示せず)が形成されているねじN1と頭部の外形に駆動部が形成されているねじN2の両方を締め付けることが可能となる。結果、異なるねじを締め付ける際にビットの交換作業等が不要となり、作業効率が向上する。
【0023】
次に第3のねじN3を締結する場合について説明する。このねじN3は、頭部にN1と同形の駆動穴(図示せず)が形成された締結部品であり、頭部座面に外周方向に突き出す拡径部が形成されている。このねじN3の拡径部は、前記スクリューガイド33の穴径より小さい径に構成されており、
図6の(a)に示すように頭部の上側縁部を前記ボックスビット39の下面に形成された呼び込み面3913に当接させた状態にて吸着保持される。この時、ボックスビット39の外径が前記スクリューガイド33の穴径とほぼ同径に構成されており、ボックスビット39の外周面とスクリューガイド33の内周面の微少な隙間を通過可能な空気が少なく、吸引された空気のほとんどがボックスビット39の嵌合穴391を通過する構造のため、ねじN3とスクリューガイド33との間に隙間があってもねじN3は、前記ねじN1とほぼ同じ吸引力にてスクリューガイド33内に吸引保持される。
【0024】
次に、第4のねじN4を締結する場合について説明する。このねじN4も頭部に平面視六角形状の駆動穴(図示せず)が形成された締結部品であり、頭部座面に外周方向に突き出す拡径部が形成されている。ねじN4は、拡径部が前記スクリューガイド33の穴径より大きい径に構成されており、
図6の(b)に示すように拡径部を前記スクリューガイド33の下面に当接させた状態にて吸着保持されるように設計されている。
【0025】
上述のように吸着保持されたねじN3およびN4は、前記ねじN1と同様にボックスビット39から突出したドライバビット38の嵌合部383と頭部に形成された駆動穴とが嵌合して所定のワークWに締め付けられる。このようにドライバビット38およびボックスビット39を内包するスクリューガイド33を備え、当該スクリューガイド33内にねじを吸引する構造により、スクリューガイド33にて吸着保持可能なねじであれば、吸着保持および締付け可能となる。結果、より多数のねじを締め付けることが可能となり、作業効率がさらに向上する。
【0026】
また、第2の実施形態として、前記ガイドホルダ32を上方に引き上げる引き上げ手段40を備えていてもよい。この引き上げ手段40は、
図7の(a)に示すように引き上げ駆動源の一例である引き上げシリンダ41と、この引き上げシリンダ41の駆動部に連結され、前記ガイドホルダ32の下面と当接する引き上げプレート42とを備えており、引き上げプレート42には、スクリューガイド33を避けるように構成されたU字状の溝43が形成されている。このように構成された引き上げ手段40が駆動すると
図7の(b)に示すように引き上げプレート42に引き上げられた前記ガイドホルダ32およびスクリューガイド33が前記ドライバビット38およびボックスビット39に対して上昇するため、スクリューガイド33の下端からボックスビット39が突出する。これにより、ねじ締め工程において、スクリューガイド33がワークWに当接しなくなる。結果、ドライバユニット30の先端部の外径が小さくなり、比較的狭い箇所に締付可能になるとともに、スクリューガイド33を下方に付勢する前記ガイドばね322の反発力がワークWに付与されないため、ワークWに働く下向き推力が減少する等の利点がある。
【0027】
なお、本発明に係るねじ締め機10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記ドライバビット38の嵌合部383およびボックスビット39の嵌合穴391の形状は、使用するねじの頭部形状に合わせて適宜変更されることが好ましく、非円形形状であれば六角形状であっても何ら問題ない。また、前記係合部381と係合穴392の断面形状も略四角柱形状に限定されることなく他の形状であっても何ら問題ない。さらに、本件ねじ締め機10を高速低トルクにてねじを仮締めする仮締め機として使用しても良く、特に低速高トルクにてねじを締結する増し締め機の上流工程に適用されても何ら問題ない。
【符号の説明】
【0028】
10 … ねじ締め機
33 … スクリューガイド
38 … ドライバビット
39 … ボックスビット
391 … 嵌合穴
393 … 吸気経路
394 … テーパ面
40 … 引き上げ手段