(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110754
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20230802BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20230802BHJP
A61B 5/26 20210101ALI20230802BHJP
【FI】
B62D1/06
B60W40/08
A61B5/26 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012369
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 理絵
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
(72)【発明者】
【氏名】長縄 明敏
【テーマコード(参考)】
3D030
3D241
4C127
【Fターム(参考)】
3D030DA26
3D030DA43
3D030DB17
3D241BA49
3D241DD04Z
4C127AA02
4C127LL04
4C127LL15
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】導電部を有する構成であっても、簡便に製造することができて、かつ、意匠性も良好なステアリングホイールを提供すること。
【解決手段】回転操舵時に把持する把持部2を備える構成とされるとともに、少なくとも把持部の外周面側を覆うように、シート状の表皮層14を配設させる構成のステアリングホイール。表皮層の外表面側に、導電性繊維からなる導電糸ETを用いた導電部を、配設させている。導電部が、導電糸を用いて表皮層の外表面側に装飾を施すように形成される装飾部20から、構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操舵時に把持する把持部を備える構成とされるとともに、少なくとも該把持部の外周面側を覆うように、シート状の表皮層を配設させる構成とされ、
該表皮層の外表面側に、導電性繊維からなる導電糸を用いた導電部を、配設させる構成のステアリングホイールであって、
前記導電部が、前記導電糸を用いて前記表皮層の外表面側に装飾を施すように形成される装飾部から、構成されていることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記装飾部が、前記把持部において、前記表皮層に設けられた2本の縫合部位を跨ぐようにして、前記表皮層の外表面側に連続的に施されるかがり縫い部から、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記かがり縫い部が、直進操舵時における前記把持部の左側領域と右側領域とで、分割されていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記装飾部が、前記把持部において、回転操舵時の操舵中心から離れた側となる外周縁側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記装飾部が、前記把持部において、回転操舵時の操舵中心側となる内周縁側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記装飾部が、前記把持部若しくは前記把持部近傍の領域に形成される刺繍部から、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
回転操舵時に把持する把持部を備える構成とされるとともに、少なくとも該把持部の外周面側を覆うように、シート状の表皮層を配設させる構成とされ、
該表皮層の外表面側に、導電性繊維からなる導電糸を用いた導電部を、配設させる構成のステアリングホイールであって、
前記導電部が、前記把持部の裏面側に、配設されていることを特徴とするステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操舵時に把持する把持部を備える構成とされるとともに、少なくとも把持部の外周面側を覆うように、シート状の表皮層を配設させる構成のステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールとしては、把持部の外表面側において操舵時の運転者の掌や指等と接触する領域に、導電体からなる導電部を配置させて、運転者の生体情報等を取得するものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来のステアリングホイールでは、把持部の外周面を構成する表皮層の端末相互を縫着させる縫着部位に、導電糸を用い、この導電糸を用いた縫着部位を導電部として、把持部として円環状のリング部に、全周にわたって、配設させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングホイールでは、表皮層を縫着させる縫着部位に、導電糸を用いることにより、把持部に導電部を形成しているが、導電糸は、通常ステアリングホイールの縫合作業に用いられる縫合糸と比較して、強度が弱く、表皮層の端末相互の縫着には好適ではなかった。そのため、導電糸を用いて製造している従来のステアリングホイールは、別途導電糸の使用部位の構造を強固にする必要があり、簡便に製造する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、導電部を有する構成であっても、簡便に製造することができて、かつ、意匠性も良好なステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングホイールは、回転操舵時に把持する把持部を備える構成とされるとともに、少なくとも把持部の外周面側を覆うように、シート状の表皮層を配設させる構成とされ、
表皮層の外表面側に、導電性繊維からなる導電糸を用いた導電部を、配設させる構成のステアリングホイールであって、
導電部が、導電糸を用いて表皮層の外表面側に装飾を施すように形成される装飾部から、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のステアリングホイールでは、導電糸を用いて形成される導電部が、把持部における表皮層の外表面側に装飾を施すために形成される装飾部から、構成されており、換言すれば、導電糸を、ステアリングホイールの構成部位を形成する縫合糸として使用しないことから、強度不足となるような支障が生じない。そのため、ステアリングホイールの製造自体には、一般的な高強度の縫合糸を使用することができ、ステアリングホイールを簡便に製造することができる。また、導電糸を用いて形成される導電部が、表皮層の外表面に配置される装飾部を、構成していることから、ステアリングホイールの意匠性を高めることもできる。勿論、本発明のステアリングホイールにおいても、導電部(装飾部)を、把持部の外表面側に配置させることにより、操舵時における操舵者(運転者)の掌や指等と安定して接触させることができ、運転者の生体情報等を安定して取得することができる。
【0008】
したがって、本発明のステアリングホイールでは、導電部を有する構成であっても、簡便に製造することができて、かつ、意匠性も良好とすることができる。
【0009】
具体的には、装飾部として、把持部において、表皮層に設けられた2本の縫合部位を跨ぐようにして、表皮層の外表面側に連続的に施されるかがり縫い部を、例示することができる。
【0010】
装飾部として、かがり縫い部を設ける場合、直進操舵時における把持部の左側領域と右側領域とで、分割させる構成とすれば、かがり縫い部が、操舵者(運転者)による左手で把持する領域と、右手で把持する領域と、で2分割されることとなることから、生体情報として操舵者(運転者)の心電波形を好適に測定することができる。
【0011】
また、装飾部は、把持部において、回転操舵時の操舵中心から離れた側となる外周縁側に設ける構成とすれば、運転者による把持時に、必ず掌を接触させることが可能となり、逆に、把持部において、回転操舵時の操舵中心側となる内周縁側に設ける構成としてもよく、この場合には、運転者による把持時に、親指や人差し指、中指等の指先を接触させることができる。
【0012】
さらに、装飾部を、把持部若しくは把持部近傍の領域に形成される刺繍部から、構成すれば、このような刺繍部を、スイッチや、タッチセンサとして利用することもできる。また、刺繍部を設けることにより、ステアリングホイールの意匠性を一層高めることもできる。
【0013】
また、導電糸を用いた導電部は、強度を必要としないように縫製されるものであれば、把持部の裏面側に配設させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態であるステアリングホイールの平面図である。
【
図2】
図1のステアリングホイールにおいて、把持部としてのリング部の部位を示す概略部分破断斜視図である。
【
図3】
図1のステアリングホイールにおいて、リング部の部位の概略断面図である。
【
図5】
図1のステアリングホイールにおいて、かがり縫い部を施す前と施した状態とを示すリング部を内周側から見た概略図である。
【
図6】
図1のステアリングホイールにおいて、リング部の前側の領域を内周側から見た概略図である。
【
図7】本発明の他の実施形態であるステアリングホイールの概略側面図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態であるステアリングホイールの部分拡大平面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態であるステアリングホイールにおいて、リング部の部位の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のステアリングホイール1は、
図1に示すように、回転操舵時に把持する円環状のリング部2と、リング部2の略中央に配置されるボス部5と、リング部2とボス部5とを連結する複数(実施形態の場合、3本)のスポーク部4と、を有して構成されている。実施形態のステアリングホイール1では、リング部2が、把持部を構成している。また、ステアリングホイール1は、構成部品としては、ボス部5の上部のエアバッグ装置6と、それ以外のステアリングホイール本体10と、を具備して構成されている。
【0016】
なお、本明細書では、前後,上下,左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載させた状態のステアリングホイール1の直進操舵状態を基準として、リング部2の回転中心軸に沿った方向を上下方向とし、リング部2の回転中心軸と直交して車両の前後方向に略沿う方向を前後方向とし、リング部2の回転中心軸と直交して車両の左右方向に略沿う方向を左右方向としている。
【0017】
ボス部5の上部に配置されるエアバッグ装置6は、折り畳まれて収納される図示しないエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給する図示しないインフレーターと、折り畳まれたエアバッグの上面側を覆うパッド7と、を備えている。パッド7は、
図1に示すように、ボス部5の上面側を全面にわたって覆うように、配置されている。
【0018】
ステアリングホイール本体10は、
図1~3に示すように、リング部2,ボス部5,スポーク部4を相互に連結するように配置される芯金11と、芯金11におけるリング部2とスポーク部4との部位の周囲を覆う被覆層13と、被覆層13の外周面側を覆う表皮層14と、ボス部5の下面側を覆う図示しないロアカバーと、を備えている。また、実施形態のステアリングホイール1では、ステアリングホイール本体10は、表皮層14の外表面14d側に、装飾部DP(導電部)を、配設させている(
図2,3参照)。把持部としてのリング部2は、断面略円形状(詳細には、断面略楕円形状)とされて、中央側に配置されるリング部芯金12と、リング部芯金12の周囲を覆う被覆層13と、被覆層13の外周面側(すなわちリング部2の外周面側)を覆う表皮層14と、を備える構成とされている。
【0019】
芯金11は、アルミニウム合金等からなる金属製とされている。芯金11において、リング部2の部位に配置されるリング部芯金12は、断面を、略逆U字形状とされている(
図2,3参照)。
【0020】
被覆層13は、クッション性を有した軟質合成樹脂から形成されるもので、実施形態の場合、発泡ポリウレタン等の軟質発泡材から形成されている。この被覆層13は、リング部2の部位においては、リング部芯金12の外周側を覆うように構成されるもので、断面形状を略楕円形状とされている。
【0021】
表皮層14は、被覆層13の外周面側を覆うように配設されるもので、実施形態の場合、天然皮革、合成皮革、人工皮革等の皮革から、形成されている。実施形態のステアリングホイール1では、表皮層14は、端末14a,14b相互を、回転操舵時の操舵中心側(ボス部5側)となる内周縁2a側で突き合わせるようにして、リング部2の外表面側を覆うように配設されている(
図2,3参照)。具体的には、表皮層14の端末14a,14bは、リング部2の内周縁2a側における上下の略中央となる位置において、端面相互を当接させるように、突き合わせられている。実施形態の場合、表皮層14は、内表面側に形成される接着剤層15を介して、被覆層13に貼着されており、表皮層14における各端末14a,14b近傍の部位には、端末処理用として、それぞれ、縫合糸STを用いて縫合部位18A,18Bが、端面に略沿うように、連続的に、全長にわたって形成されている。詳細には、表皮層14は、端末14a,14bの端面相互を当接させる当接面14cを、リング部2の上下の略中央において、リング部2の周方向(リング面)に略沿わせるように配置させるようにして、被覆層13の外周面側を略隙間なく覆うように、接着剤層15を介して被覆層13に貼着されており、各端末14a,14b側に配設される2本の縫合部位18A,18Bは、それぞれ、当接面14c(各端面)と略平行として(
図5のA参照)、表皮層14の全長にわたって形成されている。なお、実施形態のステアリングホイール1では、表皮層14は、リング部2を前後左右で略4分割した領域をそれぞれ覆うように、4枚設けられている。
【0022】
実施形態のステアリングホイール1では、上述の2本の縫合部位18A,18Bを跨ぐようにして、装飾部DPとしてのかがり縫い部20が、形成されている。かがり縫い部20は、縫合部位18A,18Bを構成する各縫い目18aに糸(実施形態の場合、導電糸ET)を引っ掛けるようにして、縫合部位18A,18Bをつなぎ、かつ、縫合部位18A,18Bに対して傾斜するようにジグザグ状にして、連続的に形成されるもので(
図2,5のB参照)、実施形態の場合、表皮層14の外表面14d側において、縫合部位18A,18Bの略全長(表皮層14の端末14a,14bの端面を当接させている当接面14cの略全長)にわたって、連続的に形成されている。かがり縫い部20は、導電性繊維からなる導電糸ETを用いて形成されており、導電部を構成している。かがり縫い部20は、運転者の生体情報等を取得するために、導電糸ETから形成されて導電部を構成するもので、実施形態の場合、具体的には、把持時において図示しない操舵者(運転者)の指を接触させることにより運転者の心電波形を計測可能な接触式心電センサとして、使用される。実施形態の場合、かがり縫い部20は、縫合部位18A,18Bの略全長、すなわち、各スポーク部4の縁部も含めたリング部2の内周縁2a側の略全域にわたって、形成されている(
図1参照)。
【0023】
また、実施形態の場合、かがり縫い部20は、直進操舵時におけるリング部2の左側領域と右側領域とで分割されており、左側部位20Lと右側部位20Rとを有している。具体的には、実施形態のステアリングホイール1は、3本のスポーク部4L,4R,4Bを備える構成であることから、リング部2における内周縁2a側の領域は、3つのスポーク部4L,4R,4Bによって3分割されるような態様となる。すなわち、かがり縫い部20は、スポーク部4L,4R間の前側の領域に配置される部位(前左側部位20FL,前右側部位20FR)と、スポーク部4L,4B間の後左側の領域に配置される部位(後左側部位20BL)と、スポーク部4R,4Bの後右側の領域に配置される部位(後右側部位20BR)と、を備えている。そして、かがり縫い部20において、スポーク部4L,4R間の前側の領域に配置される部位は、間に、非導電素材である一般の縫合糸STから構成される一般部22を介在させることにより、前左側部位20FLと前右側部位20FRとに左右で2分割される構成である(
図6参照)。そして、実施形態のかがり縫い部20では、前左側部位20FLと後左側部位20BLとが、左側部位20Lを構成し、前右側部位20FRと後右側部位20BRとが、右側部位20Rを構成している。左側部位20L(前左側部位20FLと後左側部位20BL)は、操舵時に、主に操舵者(運転者)の左手によって把持される領域に配置されており、右側部位20R(前右側部位20FRと後右側部位20BR)は、主に操舵者(運転者)の右手によって把持される領域に配置されている。これらの前左側部位20FL,後左側部位20BL,前右側部位20FR,後右側部位20BRを構成している各導電糸ETは、詳細な図示を省略するが、それぞれ、表皮層14の裏面側において被覆層13に形成される凹溝を通るように配設される構成として、この凹溝を経て、図示しない制御回路と電気的に接続されている。
【0024】
実施形態のステアリングホイール1では、導電糸ETを用いて形成される導電部が、把持部としてのリング部2における表皮層14の外表面側に装飾を施すために形成される装飾部DP(実施形態の場合、かがり縫い部20)から、構成されており、換言すれば、導電糸を、ステアリングホイールの構成部位を形成する縫合糸として使用しないことから、強度不足となるような支障が生じない。そのため、ステアリングホイール1の製造自体には、一般的な高強度の縫合糸を使用することができ、ステアリングホイール1を簡便に製造することができる。また、導電糸ETを用いて形成される導電部が、表皮層14の外表面に配置される装飾部DP(かがり縫い部20)を、構成していることから、ステアリングホイール1の意匠性を高めることもできる。勿論、実施形態のステアリングホイール1においても、導電部(装飾部DP,かがり縫い部20)を、把持部としてのリング部2の外表面側に配置させることにより、操舵時における操舵者(運転者)の掌や指等と安定して接触させることができ、運転者の生体情報等(実施形態の場合、心電波形)を安定して取得することができる。
【0025】
したがって、実施形態のステアリングホイール1では、導電部を有する構成であっても、簡便に製造することができて、かつ、意匠性も良好とすることができる。
【0026】
また、実施形態のステアリングホイール1では、装飾部DPとしてのかがり縫い部20が、直進操舵時におけるリング部2の左側領域と右側領域とで、分割される構成であり、すなわち、かがり縫い部20が、操舵者(運転者)による左手で把持する領域に配置される左側部位20Lと、右手で把持する領域に配置される右側部位20Rと、に分割されることとなることから、生体情報として操舵者(運転者)の心電波形を好適に測定することができる。
【0027】
また、実施形態のステアリングホイール1では、装飾部DPとしてのかがり縫い部20が、リング部2において、回転操舵時の操舵中心側(ボス部5側)となる内周縁2a側に設けられる構成であることから、運転者(操舵者)によるリング部2の把持時に、親指や人差し指、中指等の指先を接触させることができる。装飾部DPとしてのかがり縫い部20Aは、
図7に示すステアリングホイール1Aのごとく、リング部2Aにおいて、回転操舵時の操舵中心から離れた側(ボス部5から離れた側)となる外周縁2b側に設ける構成としてもよい。このステアリングホイール1Aにおいても、詳細な説明を省略するが、かがり縫い部20Aは、左右で2分割されている。このような構成とすれば、運転者によるリング部2Aの把持時に、かがり縫い部20A(導電部)に、必ず掌を接触させることが可能となり、内周縁側に設ける場合と比較して、接触状態を安定させることができ、運転者の生体情報等を、一層安定して取得することができる。
【0028】
なお、実施形態のステアリングホイール1,1Aでは、かがり縫い部20,20A(装飾部DP,導電部)を接触式心電センサとして、リング部2,2Aを把持する運転者の心電波形を取得するように構成されているが、かがり縫い部を、運転者(操舵者)によるリング部の把持状態を検知するタッチセンサに利用してもよい。そして、タッチセンサとして使用する場合には、かがり縫い部は、左右で2分割しなくともよい。なお、実施形態では、かがり縫い部20は、表皮層14の端末14a,14b近傍において、それぞれ、端末処理のために設けられる2本の縫合部位18A,18Bを跨ぐようにして、形成されているが、かがり縫い部を設けるための縫合部位は、表皮層の端末処理用に設けられるものに限定されるものではなく、リング部における任意の箇所に、2本設ける構成としてもよい。
【0029】
また、実施形態のステアリングホイール1,1Aでは、導電糸ETから形成されるかがり縫い部20,20Aが、リング部2,2Aの略全周にわたって配設される構成であるが、導電糸から形成されるかがり縫い部は、操舵時に主に把持する領域のみ(例えば、4分割されている表皮層において、左側と右側とに配置される表皮層の領域のみ)に、部分的に、配設させるような構成としてもよい。なお、このような構成とする場合、残りの領域には、導電糸ではない一般の縫合糸からなるかがり縫い部を配設させる構成とすれば、見かけ上は、縫合部位の略全長(リング部の略全周)にわたってかがり縫いによる装飾が施されることとなり、意匠性も良好となる。
【0030】
さらに、導電糸ETを用いて表皮層の外表面に形成される装飾部DPとしては、
図8に示すステアリングホイール1Bのごとく、リング部2Bにおける左右のフィンガーレスト部3(3R)の外表面側(詳細にはフィンガーレスト部3Rの上面側)に配設される刺繍部25も、例示することができる。
図8には、ステアリングホイール1Bの右半分の領域のみを示しており、左半分の領域は図示していないが、左側のフィンガーレスト部にも、同様に、刺繍部は、形成されている。刺繍部25は、実施形態の場合、外形形状を、略楕円状として、この楕円状の領域における表皮層14Bの外表面14d側を、導電糸ETで略全面にわたって覆うように形成されている。刺繍部25を構成している導電糸ETは、前述のステアリングホイールにおけるかがり縫い部を構成している導電糸と同様に、表皮層の裏面側において図示しない被覆層に形成される凹溝を経て、図示しない制御回路と電気的に接続されている。この刺繍部25は、リング部2Bを把持する運転者Dの親指を接触させることができ、上述したステアリングホイール1,1Aと同様に、接触式心電センサやタッチセンサとして、使用することができ、また、機器操作用のスイッチとしても使用することができる。また、このような刺繍部は、リング部のみならず、スポーク部4Rにおけるリング部2B近傍の領域(表面側に、リング部から連なるように表皮層を配設させている領域)に配設させることもできる(
図8の二点鎖線参照)。このような位置に刺繍部を配設させる場合、刺繍部を、機器操作用のスイッチとして、好適に利用することができる。刺繍部を形成することにより、例えば、車両のエンブレムや幾何学模様等、様々な意匠の刺繍をステアリングホイールの外表面側に配置させることが可能となり、ステアリングホイールの意匠性を一層高めることもできる。このような導電部としての刺繍部25は、導電性繊維からなる導電糸ETを用いて、表皮層14Bの外表面側を覆うように形成されることから、リング部2Bの外表面に沿いやすく、また、通常のステアリングホイールに用いられているスイッチや通電センサと比較して、例えば、設置用の凹部を被覆層に設けなくともよいことから、ステアリングホイール側の設計変更が不要となる。そのため、簡便かつ安価に、導電体を搭載させることも可能となる。さらに、導電糸を用いた刺繍部からなる導電部は、シート状の導電体を使用して導電部を構成する場合と比較して、表面積が大きく、運転者の皮膚との接触面積も大きく確保することができる。
【0031】
さらにまた、ステアリングホイール1Cとしては、
図9に示すように、導電糸ETを用いた導電部を、リング部2Cの裏面2c側に配置させる構成のものを使用してもよい。このステアリングホイール1Cでは、リング部2Cの外表面側を覆う表皮層14Cの端末側に配置される縫合部位とは別に、単に、表皮層14Cを縫うように配置される縫合部位28A,28Bが、二重線状に連続的に、導電糸ETを用いて形成されて、導電部を構成している。すなわち、縫合部位28A,28Bは、強度を必要としないように縫製される構成である。この縫合部位28A,28Bは、運転者によるリング部の把持時に、運転者の手において、親指を除いた4本の指の中間部位付近と接触することとなる。このように、導電部として、リング部2Cの裏面2c側に連続的な縫合部位28A,28Bを設ける構成とする場合にも、縫合部位28A,28Bは、上述したステアリングホイール1,1Aと同様に、接触式心電センサやタッチセンサとして、使用することができる。
【0032】
実施形態のステアリングホイール1,1A,1B,1Cは、把持部としての円環状のリング部2,2A,2B,2Cを備える構成であるが、本発明を適用可能なステアリングホイールは、円環状のリング部を備える構成に限定されるものではなく、例えば、把持部として四角環状のリング部を備えるものや、リング部ではなく、ボス部から部分的に突出する棒状の把持部を備えるタイプのステアリングホイールにも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,1A,1B,1C…ステアリングホイール、2,2A,2B,2C…リング部(把持部)、13…被覆層、14…表皮層、14a,14b…端末、14d…外表面、18A,18B…縫合部位、20,20A…かがり縫い部、25…刺繍部、28…縫合部位、DP…装飾部、ET…導電糸。