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特開2023-110767吸湿性食品用の品質改良剤、ならびにそれを用いた吸湿性食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110767
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】吸湿性食品用の品質改良剤、ならびにそれを用いた吸湿性食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20230802BHJP
   A21D 13/00 20170101ALN20230802BHJP
   A21D 13/80 20170101ALN20230802BHJP
   A21D 2/00 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
A23L29/00
A21D13/00
A21D13/80
A21D2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012395
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】平田 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 菜月
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【テーマコード(参考)】
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B032DB13
4B032DB22
4B032DK01
4B032DK14
4B032DK15
4B032DK21
4B032DP40
4B035LC03
4B035LG02
4B035LG15
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG34
4B035LK04
4B035LP02
4B035LP07
(57)【要約】
【課題】 製造後の経時変化による耐性があり、サクサク感が維持され、口溶けが良い吸湿性食品を製造することのできる、吸湿性食品用の品質改良剤、ならびにそれを用いた吸湿性食品を提供すること。
【解決手段】 本発明の吸湿性食品用の品質改良剤は、第2族元素の塩を含む粒子と水分移行抑制成分とを含有し、第2族元素の塩が、マグネシウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、水分移行抑制成分が、多糖類およびペプチド類からなる群から選択される少なくとも1種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2族元素の塩を含む粒子と水分移行抑制成分とを含有し、
該第2族元素の塩が、マグネシウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該水分移行抑制成分が、多糖類およびペプチド類からなる群から選択される少なくとも1種である、吸湿性食品用の品質改良剤。
【請求項2】
前記第2族元素の塩が炭酸塩である、請求項1に記載の吸湿性食品用の品質改良剤。
【請求項3】
前記多糖類が、増粘剤およびデンプン分解物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の吸湿性食品用の品質改良剤。
【請求項4】
前記ペプチド類が穀物由来ペプチドである、請求項1から3のいずれかに記載の吸湿性食品用の品質改良剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の吸湿性食品用の品質改良剤と、食品素材とを含む、調理用吸湿性半加工食品。
【請求項6】
請求項5に記載の調理用吸湿性半加工食品の油調品である、吸湿性食品。
【請求項7】
請求項5に記載の調理用吸湿性半加工食品の焼成品である、吸湿性食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性食品用の品質改良剤、ならびにそれを用いた吸湿性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
パイやクッキー等の焼き菓子、ドーナツ等の揚げ菓子、クロワッサン等のパン類はサクサクとした食感を特徴とする。こうしたサクサクとした食感は、「サクサク感」とも呼ばれ、菓子、パン類などの様々な加工食品の口溶けの良さなどの嗜好性に関係する重要な性質である。
【0003】
しかし、これらの食品は、水分含量が比較的低いため吸湿し易く、時間の経過とともにそれらのサクサク感は失われ易いという問題を有する。
【0004】
例えば、菓子を包装する工場等では、吸湿を抑制するために乾燥剤の封入などの工夫が行われている。ただし、個人が購入した後に、一度開封されてしまうとその後の吸湿抑制は難しい。また、個別包装が行われない販売形式の場合、当該乾燥剤の使用自体が困難である。一方、さらに、クリーム等水分を多く含む素材と複合食品を形成して食する場合には、素材から水分移行が起こるため、サクサク感の食感維持はさらに難しい。
【0005】
例えば、特許文献1は、焼成直後の歯切れのよいサクサク感を得るために、乾熱処理した米粉とタピオカデンプンを用いた焼き菓子用プレミックス粉を記載している。特許文献2は、生地の表面に酢酸エステル化デンプン、糖類、および増粘多糖類を含む被覆剤を塗布することにより、良好なクリスピー感および外観を有する多層揚げ菓子とその製造方法を記載している。
【0006】
しかし、上記特許文献に記載の技術を用いたとしても、十分に満足できるサクサク感を有する食品が得られるようになったとは言い難い。そのため、吸湿しにくく、サクサクとした食感を維持でき、かつ口溶けの良い食品を製造するためのさらなる改良が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-65509号公報
【特許文献2】特許第5773798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、製造後の経時変化による耐性があり、サクサク感が維持され、口溶けが良い吸湿性食品を製造することのできる、吸湿性食品用の品質改良剤、ならびにそれを用いた吸湿性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第2族元素の塩を含む粒子と水分移行抑制成分とを含有し、
該第2族元素の塩が、マグネシウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該水分移行抑制成分が、多糖類およびペプチド類からなる群から選択される少なくとも1種である、吸湿性食品用の品質改良剤である。
【0010】
1つの実施形態では、上記第2族元素の塩は炭酸塩である。
【0011】
1つの実施形態では、上記多糖類は、増粘剤およびデンプン分解物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0012】
1つの実施形態では、上記ペプチド類は穀物由来ペプチドである。
【0013】
本発明はまた、上記吸湿性食品用の品質改良剤と、食品素材とを含む、調理用吸湿性半加工食品である。
【0014】
本発明はまた、上記調理用吸湿性半加工食品の油調品である、吸湿性食品である。
【0015】
本発明はまた、上記調理用吸湿性半加工食品の焼成品である、吸湿性食品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、密閉下または開放下のいずれの保管状態に関わらず、油調および/または焼成後に長期間に亘る吸湿を低減または抑制し、サクサク感などの良好な食感を吸湿性食品に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(吸湿性食品用の品質改良剤)
本発明の吸湿性食品用の品質改良剤は、第2族元素の塩を含む粒子と水分移行抑制成分とを含有する。
【0018】
ここで、本明細書中に用いられる用語「吸湿性食品」とは、時間の経過に伴って空気中または包装体中に存在する水分を吸収および/または吸着して、食品本来の食感を変化させる性質を有する加工食品を指していう。すなわち、「吸湿性食品」は、湿気により食感が変動し得る加工食品であり、例えば「湿気易い加工食品」である。一方、用語「吸湿性食品用の品質改良剤」は、こうした吸湿性食品の品質(例えば、長時間保管時の食感(例えばサクサク感))を向上、延長、および/または持続することができる性質を有する製剤(組成物)を指していう。なお、以下本明細書において「吸湿性食品用の品質改良剤」を単に「品質改良剤」ということがある。
【0019】
第2族元素の塩は、食品分野において使用可能な化合物であり、例えば、マグネシウム塩およびカルシウム塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。塩の種類としては、食品分野において使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、炭酸塩、塩酸塩、酢酸塩、乳酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、リン酸塩、ソルビン酸塩、ポリリン酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、イソシン酸塩、およびグルコン酸塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。食品分野において汎用性に富み、かつ安全性にも優れるという理由から、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウム、ならびにそれらの組み合わせ)が好ましく、油調および/または焼成後に得られる吸湿性食品の食感が時間の経過に伴って大きく変化し難いという理由から、炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
【0020】
本発明の品質改良剤において、第2族元素の塩は、後述する水分移行抑制成分とより均一に混合することができるという点から、粒子の形態を有することが好ましい。第2族元素の塩は、好ましくは0.5μm以上250μm以下、より好ましくは2.0μm以上100μm以下の平均粒子径を有する。第2族元素の塩の平均粒子径が0.5μmを下回ると、得られる製剤が飛散し易いかまたはダマになり易く、食品素材へ添加する際の作業効率が悪くなるおそれがある。第2族元素の塩の平均粒子径が250μmを上回ると、得られる製剤は全体として大粒のものとなり、これを用いて得られた吸湿性食品の表面が粗くざらついた食感を生じ、消費者のニーズに合致しないおそれがある。
【0021】
第2族元素の塩の含有量は、品質改良剤の全体質量100質量部を基準として、好ましくは65質量部~90質量部、より好ましくは70質量部~85質量部である。品質改良剤に含まれる第2族元素の塩の含有量が65質量部を下回ると、油調および/または焼成後の経時変化によるサクサク感の維持や口溶け向上の効果が弱くなることがある。品質改良剤に含まれる第2族元素の塩の含有量が90質量部を上回ると、第2族元素の塩特有の苦味や渋味などにより、得られる吸湿性食品の風味の低下に影響を及ぼすことがある。
【0022】
水分移行抑制成分は、吸湿性食品において、外界およびクリーム等の水分を多く含む素材から接触面への水分移行を抑制および/または低減し得る機能を果たす物質であり、例えば多糖類およびペプチド類、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
水分移行抑制成分を構成し得る多糖類としては、例えば増粘剤およびデンプン分解物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
増粘剤の具体的な例としては、必ずしも限定されないが、アラビアガム、プルラン、およびタマリンドシードガム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粘度発現が少なく、かつ吸湿性食品の外界および/またはクリーム等の水分を多く含む素材から接触面への水分移行抑制効果が高いという理由から、アラビアガム、プルランおよびそれらの組み合わせが好ましい。
【0025】
デンプン分解物は、好ましくは500以上150,000以下、より好ましくは600以上9,000以下の平均分子量を有し、および/または40以下、より好ましくは2以上30以下のデキストロース当量(DE)を有するものが使用される。デンプン分解物がこのような平均分子量および/またはデキストロース当量を有することにより、長時間保管による吸湿性食品の食感を向上、または持続することができる。
【0026】
多糖類の含有量は、品質改良剤の全体質量100質量部を基準として、好ましくは5質量部~10質量部、より好ましくは7質量部~9質量部である。品質改良剤に含まれる多糖類の含有量が5質量部を下回ると、吸湿性食品における外界および/またはクリーム等の水分を多く含む素材からの水分移行を抑制および/または低減する効果が弱くなることがある。品質改良剤に含まれる多糖類の含有量が10質量部を上回ると、生地が硬くなって加熱時の水抜けが悪くなり、サクサク感が低下することがある。
【0027】
水分移行抑制成分を構成し得るペプチド類としては、例えば穀物由来ペプチド(穀物由来たん白加水分解物)が挙げられる。
【0028】
穀物由来ペプチドの具体的な例としては、必ずしも限定されないが、小麦たん白加水分解物、米たん白加水分解物、エンドウたん白加水分解物、および大豆たん白加水分解物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらの穀物由来ペプチドは当該分野において周知の材料である。界面活性能が高い穀物由来ペプチドであるとの理由から、小麦たん白加水分解物が好ましい。
【0029】
ペプチド類の含有量は、品質改良剤の全体質量100質量部を基準として、好ましくは6質量部~40質量部、より好ましくは8質量部~18質量部である。品質改良剤に含まれるペプチド類の含有量が6質量部を下回ると、吸湿性食品にポーラス構造を構築する効果が弱くなり、加熱時の水抜けが悪くなることや製造後の時間経過に伴うクリーム等の水分を多く含む素材からの水分移行を抑制および/または低減する効果が弱くなることがある。品質改良剤に含まれるペプチド類の含有量が20質量部を上回ると、吸湿性食品がべちゃついた食感になり、口溶けが悪くなることがある。
【0030】
本発明の吸湿性食品用の品質改良剤において、得られる吸湿性食品の経時的変化に対する耐性に優れ、かつ喫食の際、吸湿性食品から感じ取ることができるサクサク感を一層高めることができるという理由から、水分移行抑制成分には多糖類およびペプチド類の組み合わせが採用されることが好ましい。このような組み合わせを採用する際の多糖類およびペプチド類の含有量もまた、それぞれ上記範囲から選択されることが好ましい。
【0031】
本発明の品質改良剤は、上記第2族元素の塩を含む粒子と水分移行抑制成分とを混合することにより得ることができる。
【0032】
本発明の吸湿性食品用の品質改良剤はまた、その他の材料と一緒に混合することにより、例えば、吸湿性食品の素材に対して使用されるミックス粉(例えば、ケーキミックスおよびプレミックス)として提供することができる。
【0033】
ミックス粉を製造する際の本発明の品質改良剤の含有量は必ずしも限定されないが、当該ミックス粉中の穀粉(薄力粉、コーンスターチなど)の質量を基準として、好ましくは0.01質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の割合で含有される。ミックス粉に含まれる本発明の品質改良剤の含有量が0.01質量%を下回ると、得られる吸湿性食品について経時的変化による耐性が不十分となり、長時間経過後の当該吸湿性食品のサクサク感が十分に保持されないことがある。ミックス粉に含まれる本発明の品質改良剤の含有量が2質量%を上回ると、吸湿性食品が硬くなりすぎるなどの食感不良を起こすことがある。
【0034】
ミックス粉を構成するその他の材料は、従来のミックス粉を構成するものであれば特に限定されず、例えば、薄力粉、米粉、コーンスターチなどの穀粉、またはデンプンに酵素的、物理的または化学的な処理を施すことにより特性が改質または改善されたか、あるいは機能性が付与または増強された種々の加工を施した加工デンプン、単一膨張剤(例えば、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸水素アンモニウム)や合成膨張剤(例えば、ベーキングパウダーおよび/またはイーストパウダー)などの膨張剤、デキストリン、砂糖、ブドウ糖、食塩、香辛料、(粉末)醤油、卵黄粉、卵白粉、脱脂粉乳、粉末油脂、乳化剤および着色料(例えばビタミンB2)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。ミックス粉を構成し得るその他の材料の含有量は特に限定されず、対象となる吸湿性食品やその種類および/または量に応じて、当業者によって適切に選択され得る。
【0035】
ミックス粉を作製するにあたり、本発明の吸湿性食品用の品質改良剤は、上記その他の材料と使用直前に混合されてもよく、あるいは予め混合して所定の条件で保存等がなされたものであってもよい。
【0036】
(調理用吸湿性半加工食品)
本発明の調理用吸湿性半加工食品は、上記吸湿性食品用の品質改良剤と、食品素材とを含む。
【0037】
ここで、本明細書中に用いられる用語「調理用吸湿性半加工食品」は、家庭内、食品工場内、飲食店内、食品販売店舗(例えば、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店、小売店)内などの任意の場所内において、油調、焼成、および加熱の少なくとも1つを含む調理を施すことにより吸湿性食品を作製することができる食品であって、冷凍食品、冷蔵食品、その他半製品に分類されるものが挙げられる。なお、調理用吸湿性半加工食品が加熱のみの調理を必要とする場合、当該半加工食品は、予め油調および/または焼成を行ったものである。
【0038】
食品素材の種類は、特に限定されないが、例えば、上記ミックス粉(例えばプレミックス);穀粉(例えば、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、強力末粉、全粒粉などを包含する)、米粉、大麦粉、はったい粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、きな粉(大豆粉)、そば粉、片栗粉、くず粉、タピオカ粉、ジャガイモ粉、粟粉、およびココナツ粉、ならびにそれらの組み合わせを包含する);食肉(例えば、豚肉、牛肉、および鶏肉、ならびにそれらの組み合わせを包含する)およびその粉末またはエキス;鶏卵(例えば、卵黄および卵白、ならびにそれらの組み合わせを包含する)およびその粉末またはエキス;魚介類(例えば、イワシ、アジ、サバ、マグロ、タイ、カレイ、ヒラメ、エビ、カニ、ホタテ、アサリ、ハマグリ、サザエ、アワビおよびシジミ、ならびにそれらの組み合わせを包含する)およびその粉末またはエキス、野菜(例えば、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、ニンジン、大根、ゴボウ、タマネギ、ニンニク、ネギ、キャベツ、白菜、レタス、ホウレンソウ、小松菜、およびチンゲンサイ、ならびにそれらの組み合わせを包含する)およびその粉末またはエキス;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。食品素材はそれ自体が例えば、予め加熱や下茹で、味付け、混合、練り合わせ、切断等がなされていてもよい。さらに、調理用吸湿性半加工食品は、上記食品素材とともに当該分野において公知の調味料、香料、食品添加物等を含有していてもよい。
【0039】
上記吸湿性食品用の品質改良剤は、例えばこうした食品素材の表面に適量をまぶす、または当該食品素材と一緒に混合する等によって付与される。必要に応じて最終的な調理(例えば油調および/または焼成)から独立して、予め加熱、焼成、油調等の前処理が行われてもよい。
【0040】
これにより調理用吸湿性半加工食品を得ることができる。調理用吸湿性半加工食品は、例えば密閉容器内に収容され、例えば、スーパーマーケットや百貨店の食品売り場、コンビニエンスストア、または小売店でそのまま販売されてもよく、当業者に公知の手段を用いて冷凍または冷蔵され、飲食店や個々の家庭に配送されてもよい。あるいは、調理用吸湿性半加工食品は、食品工場や、スーパーマーケット、百貨店、コンビニエンスストア、または小売店のバックヤードで作製された後、後述の吸湿性食品を製造するためにそのまま使用されてもよい。
【0041】
(吸湿性食品)
本発明の吸湿性食品は、例えば調理用吸湿性半加工食品の油調品および/または焼成品である。
【0042】
油調のために使用される油は食用油であり、例えばサラダ油(キャノーラ油を包含する)、オリーブ油、パーム油、ゴマ油、エゴマ油、アマニ油、MCT油、米油、マカダミアナッツオイル、ココナッツオイル、ピーナッツオイル、および動物脂(例えば、牛脂、豚脂、鶏脂、馬脂、骨脂、および乳酪脂)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
調理用吸湿性半加工食品の油調または焼成のために設定される調理温度および調理時間は特に限定されず、使用する調理用吸湿性半加工食品の種類または当該調理用吸湿性半加工食品を構成する食品素材の種類や大きさ、量に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0044】
なお、調理用吸湿性半加工食品を油調または焼成した後、表面状態を損なわない限りにおいて、必要に応じて味付け等の追加の調理が行われてもよい。
【0045】
このようにして、吸湿性食品を得ることができる。
【0046】
本発明の吸湿性食品は必ずしも限定されないが、例えば、油調および/または焼成によって完成する菓子類、パン類、ペイストリー、各種惣菜が挙げられる。また、吸湿性食品の具体的な例としては、スナック菓子(例えば、ポテトチップス、ポテトスナック、野菜チップス、コーンスナック);油菓子(例えば、かりんとう、いもけんぴ、イカ天);ペイストリー(例えば、クロワッサン、デニッシュ、パイ、タルト、キッシュ);ドーナツ類;クッキー・ビスケット・クラッカー類;煎餅・かき餅類;メロンパンなどのパン類;が挙げられる。
【0047】
本発明の吸湿性食品は、従来の吸湿性食品と比較して、完成後の時間経過に伴って、当該吸湿性食品の外界および/またはクリーム等の水分を多く含む素材から接触面への水分移行が抑制または低減することができ、いわゆる「サクサク感」が維持された、湿気難い加工食品である。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1:パイ生地の作製)
吸湿性食品用の品質改良剤を得るために、炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)0.5質量部と、小麦たん白分解物0.05質量部とを混合した。その後、これに強力粉50.0質量部、薄力粉50.0質量部、食塩2.0質量部、冷水48.0質量部、無塩マーガリン16.0質量部、および折込マーガリン80.0質量部、を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0050】
(実施例2:パイ生地の作製)
小麦たん白分解物の代わりにアラビアガム0.05質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして吸湿性食品用の品質改良剤を得、これに実施例1と同様にしてその他の成分を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0051】
(実施例3:パイ生地の作製)
さらにアラビアガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして吸湿性食品用の品質改良剤を得、これに実施例1と同様にしてその他の成分を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0052】
(実施例4:パイ生地の作製)
さらにプルラン0.05質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして吸湿性食品用の品質改良剤を得、これに実施例1と同様にしてその他の成分を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0053】
(実施例5:パイ生地の作製)
さらにタマリンドシードガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして吸湿性食品用の品質改良剤を得、これに実施例1と同様にしてその他の成分を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0054】
(実施例6:パイ生地の作製)
さらにデンプン分解物(平均分子量8,500;デキストロース当量(DE)4)0.05質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして吸湿性食品用の品質改良剤を得、これに実施例1と同様にしてその他の成分を添加し、さらに混合することによりパイ生地を得た。得られたパイ生地の成分を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(比較例1~9:パイ生地の作製)
炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)、炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm)、アラビアガム、プルラン、タマリンドシードガム、デンプン分解物、および小麦たん白分解物、ならびにその他の成分の各含有量を表2および表3に記載の通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして各成分を混合することによりパイ生地を得た。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
(パイの品質維持効果確認試験)
(1)パイの作製方法
実施例1~6および比較例1~9で得られたパイ生地をミキシング(フック2分間、かき落とし後さらに1分間)し、その後丸めて十字に切り目を入れ、袋に入れて1時間冷蔵庫で冷蔵した。
【0060】
冷蔵庫から取り出した生地を伸展し、さらに折込マーガリン(表1~表3の各成分に対して80質量部に相当)を包んだその後、3つ折りを2回行った後で45分間冷蔵庫で静置する操作を(繰り返して3回(合計6回の3つ折り))行い、さらに冷蔵庫にて1時間冷蔵した。冷蔵庫から取り出した生地を1/4にカットし、そのうち1切れを3mmの厚みにまで伸展し、適切にピケおよびカットを行って、得られた生地片をさらに冷蔵庫で30分間冷蔵した。
【0061】
冷蔵庫から取り出した生地片を200℃で15分間焼成し、これに重石を載せて200℃でさらに15分間焼成することによりパイを作製した。
【0062】
(2)パイの官能評価方法
作製後、30℃かつ70%RHの環境下で評価時間0時間、1時間、2時間、および3時間保管したパイについて、「サクサク感」および「口溶け」を評価した。このうち、評価時間0時間での比較例1の結果を5点とし、以下の表4の評価基準にてパネリスト10名で評価の採点を行い、それらの平均点を算出した。
【0063】
【表4】
【0064】
結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に示すように、実施例1~6で作製されたパイ生地を用いて得られたパイはいずれも、比較例1~9で作製されたパイ生地を用いたものと比較して、高湿気下での評価であったにも関わらず、評価時間(0時間、1時間、2時間および3時間)のいずれにおいても高い値を示しており、パイの作製後のサクサク感および口溶けの両方が比較的長時間に亘って維持できたことがわかる。
【0067】
(実施例7:ラングドシャの作製)
吸湿性食品用の品質改良剤を得るために、炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)0.5質量部と、小麦たん白分解物0.05質量部とを混合した。その後、これに薄力粉100質量部を添加した(以下、「品質改良剤を含む薄力粉」という)。
【0068】
無塩マーガリン85質量部を常温に戻し、これに粉糖85質量部を合わせ、ビーターで全体が白っぽくなるまで撹拌し、卵白65質量部を添加してさらに撹拌した。次いで、これに上記で得られた品質改良剤を含む薄力粉を加え、低速で2分間撹拌して生地を作製した。得られた生地をラングドシャプレートに刷り込んで成形し、これを180℃で10分間焼成することによりラングドシャを作製した。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0069】
(実施例8:ラングドシャの作製)
小麦たん白分解物の代わりにアラビアガム0.05質量部を用いたこと以外は実施例7と同様にして品質改良剤を含む薄力粉を得、これに実施例7と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりラングドシャを作製した。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0070】
(実施例9:ラングドシャの作製)
さらにアラビアガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例7と同様にして品質改良剤を含む薄力粉を得、これに実施例7と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりラングドシャを得た。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0071】
(実施例10:ラングドシャの作製)
さらにプルラン0.05質量部を添加したこと以外は実施例7と同様にして品質改良剤を含む薄力粉を得、これに実施例7と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりラングドシャを得た。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0072】
(実施例11:ラングドシャの作製)
さらにタマリンドシードガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例7と同様にして品質改良剤を含む薄力粉を得、これに実施例7と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりラングドシャを得た。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0073】
(実施例12:ラングドシャの作製)
さらにデンプン分解物(平均分子量8,500;デキストロース当量(DE)4)0.05質量部を添加したこと以外は実施例7と同様にして品質改良剤を含む薄力粉を得、これに実施例7と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりラングドシャを得た。得られたラングドシャの成分を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
(比較例10~18:ラングドシャの作製)
炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)、炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm)、アラビアガム、プルラン、タマリンドシードガム、デンプン分解物(平均分子量8,500;デキストロース当量(DE)4)、および小麦たん白分解物、ならびにその他の成分の各含有量を表7および表8に記載の通りとしたこと以外は、実施例7と同様にして各成分を混合し、その後焼成することによりラングドシャを得た。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
(ラングドシャの品質維持効果確認試験)
(ラングドシャの官能評価方法)
作製後、30℃かつ70%RHの環境下で評価時間0時間、1時間、2時間、および3時間保管したラングドシャについて、「サクサク感」および「口溶け」を評価した。このうち、評価時間0時間での比較例10の結果を5点とし、上記表4の評価基準にてパネリスト10名で評価の採点を行い、それらの平均点を算出した。
【0079】
結果を表9に示す。
【0080】
【表9】
【0081】
表9に示すように、実施例7~12で作製されたラングドシャはいずれも、比較例10~18で作製されたラングドシャと比較して、高湿気下での評価であったにも関わらず、評価時間(0時間、1時間、2時間および3時間)のいずれにおいても高い値を示しており、ラングドシャの作製後のサクサク感および口溶けの両方が比較的長時間に亘って維持できたことがわかる。
【0082】
(実施例13:アイスサンドクッキーの作製)
吸湿性食品用の品質改良剤を得るために、炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)0.5質量部と、小麦たん白分解物0.05質量部とを混合した(以下、「品質改良剤」という)。
【0083】
無塩バター42.0質量部を常温に戻し、これにグラニュー糖47.0質量部を合わせ、ビーターで全体が白っぽくなるまで撹拌し、全卵18.0質量部を少量ずつ添加してさらに撹拌した。次いで、これに上記で得られた品質改良剤とともに残りの成分を加え、低速で2分間撹拌して生地を作製し、これを冷蔵庫で1時間冷蔵した。冷蔵庫から取り出した生地を、5mm厚に延ばし、4cm角にカットして、180℃で14分間焼成し、放冷することによりクッキーを作製した。
【0084】
得られたクッキー2枚を用いて市販のバニラアイスクリーム15gを挟むことによりアイスサンドクッキーを得た。得られたアイスサンドクッキーを直ちに-25℃で冷凍保管した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0085】
(実施例14:アイスサンドクッキーの作製)
小麦たん白分解物の代わりにアラビアガム0.05質量部を用いたこと以外は実施例13と同様にして品質改良剤を得、これに実施例13と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0086】
(実施例15:アイスサンドクッキーの作製)
さらにアラビアガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例13と同様にして品質改良剤を得、これに実施例13と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0087】
(実施例16:アイスサンドクッキーの作製)
さらにプルラン0.05質量部を添加したこと以外は実施例13と同様にして品質改良剤を得、これに実施例13と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0088】
(実施例17:アイスサンドクッキーの作製)
さらにタマリンドシードガム0.05質量部を添加したこと以外は実施例13と同様にして品質改良剤を得、これに実施例13と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0089】
(実施例18:アイスサンドクッキーの作製)
さらにデンプン分解物(平均分子量8,500;デキストロース当量(DE)4)0.05質量部を添加したこと以外は実施例13と同様にして品質改良剤を得、これに実施例13と同様にしてその他の成分を添加し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。得られたアイスサンドクッキーの成分を表10に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
(比較例19~27:アイスサンドクッキーの作製)
炭酸マグネシウム(平均粒子径7.5μm)、炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm)、アラビアガム、プルラン、タマリンドシードガム、デンプン分解物(平均分子量8,500;デキストロース当量(DE)4)、および小麦たん白分解物、ならびにその他の成分の各含有量を表11および表12に記載の通りとしたこと以外は、実施例13と同様にして各成分を混合し、その後焼成することによりクッキーを作製した。こうして得られたクッキー2枚を用いたこと以外は実施例13と同様にしてアイスサンドクッキーを作製した。
【0092】
【表11】
【0093】
【表12】
【0094】
(アイスサンドクッキーの品質維持効果確認試験)
(1)保管条件
各実施例および比較例で作製したアイスサンドクッキーに関して、保管条件として(a)25℃かつ50%RH下で20分間静置し、(b)その後-25℃で一晩冷凍した。これら(a)および(b)をアイスサンドクッキーの保管条件の1サイクルとした。
【0095】
(2)アイスサンドクッキーの官能評価方法
上記アイスサンドクッキーの保管条件を用い、評価期間0サイクル(上記(a)および(b)を一度も行わなかった)、3サイクル、および5サイクルをかけて保管したアイスサンドクッキーについて、「サクサク感」および「口溶け」を評価した。このうち、評価期間0サイクルでの比較例19の結果を5点とし、上記表4の評価基準にてパネリスト10名で評価の採点を行い、それらの平均点を算出した。
【0096】
結果を表13に示す。
【0097】
【表13】
【0098】
表13に示すように、実施例13~18で作製されたアイスサンドクッキーはいずれも、比較例19~27で作製されたアイスサンドクッキーと比較して、評価期間(0サイクル、3サイクルおよび5サイクル)のいずれにおいても高い値を示しており、アイスサンドクッキーの作製後のサクサク感および口溶けの両方が比較的長時間に亘って維持できたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、例えば加工食品の製造分野において有用である。