(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110784
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム及び方法並びにワイヤレス送電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20230802BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230802BHJP
H02J 50/50 20160101ALI20230802BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230802BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
H02J50/50
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012446
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大堀 隼輝
(72)【発明者】
【氏名】土方 亘
(72)【発明者】
【氏名】李 想
(57)【要約】
【課題】負荷側回路のインピーダンスが変動しても、送電効率の低下を軽減するワイヤレス給電システム及び方法並びにワイヤレス送電システムを提供する。
【解決手段】磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システム1であって、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備えている受電装置4と、受電コイル41を介して受電した電力が供給される負荷8と、負荷8における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部95と、測定部95の測定結果に応じて、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、
前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、
前記負荷における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、
を備えていることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられ、前記送電コイルに電力を送電する給電コイルをさらに備え、
前記インピーダンスマッチング機構は、前記送電コイルと前記給電コイルとの磁界結合における結合強さを変更することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記給電コイルは、前記送電コイルとの磁界結合における結合強さが互いに異なるように設定された複数の給電コイル部に分割され、複数の前記給電コイル部の少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、
前記インピーダンスマッチング機構は、前記測定部の測定結果に応じて選択された、複数の前記給電コイル部の少なくとも1つに電力を供給することを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、
前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、
前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、
を備え、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられ、前記送電コイルに電力を送電する給電コイルを備え、
前記給電コイルは、前記送電コイルに対する相対位置が異なる複数の給電コイル部に分割され、複数の前記給電コイル部の少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、
前記インピーダンスマッチング機構は、複数の前記給電コイル部の少なくとも1つに電力を供給することにより、前記送電コイルと前記給電コイルとの磁界結合における結合強さを調整することを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項5】
複数の前記給電コイル部は、互いに略同軸上に配置されたコイル軸をそれぞれ備え、前記送電コイルとの距離がそれぞれ異なるように設定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
複数の前記給電コイル部は、互いに異なる向きに設定されて、前記送電コイルのコイル軸に対する角度がそれぞれ異なるコイル軸をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項7】
複数の前記給電コイル部は、前記送電コイルのコイル軸と略平行で且つ互いに異なる距離だけオフセットされたコイル軸をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項8】
複数の前記給電コイル部は、略同軸上に配置されたコイル軸をそれぞれ備え、
各給電コイル部のコイル径及びコイル高さは、それぞれ異なるように設定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項9】
前記給電コイル部は、前記送電コイルに対して相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項10】
前記給電コイルから前記送電コイルへの電力の供給は、磁界共鳴方式により行われ、
各給電コイル部のインダクタンス値は、略等しく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項11】
前記送電コイルから前記受電コイルへの電力の供給は、磁界共鳴方式により行われることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項12】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、
前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、
前記負荷における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部と、
を備え、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムを用いたワイヤレス給電方法であって、
インピーダンスマッチング機構を用いて、前記測定部の測定結果に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和することを特徴とするワイヤレス給電方法。
【請求項13】
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、
前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、
前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、
を備え、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムを用いたワイヤレス給電方法であって、
前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられ、前記送電コイルに電力を送電する給電コイルを備え、
前記給電コイルは、前記送電コイルに対する相対位置が異なる複数の給電コイル部に分割され、複数の前記給電コイル部の少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、
前記インピーダンスマッチング機構を用いて、複数の前記給電コイル部の少なくとも1つに電力を供給することにより、前記送電コイルと前記給電コイルとの磁界結合における結合強さを調整することを特徴とするワイヤレス給電方法。
【請求項14】
受電装置に磁気を利用して電力を送電するワイヤレス送電システムであって、
送電コイルを含む送電側共振回路を備え、前記受電装置を介して電力を負荷に送電する送電装置と、
前記負荷における負荷電流又は負荷電圧に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、
を備えていることを特徴とするワイヤレス送電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電システム及び方法並びにワイヤレス送電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界を利用したワイヤレス給電システムの研究開発が進められている。このような磁気を利用した給電方式としては、電磁結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式とが知られている。磁界共鳴方式は、送電装置の共振回路に交流電流が流れることにより発生した磁場の振動が、受電装置の共振回路に伝わって共振することで、各共振回路のコイルで生成された磁界が強固に結合した状態(磁界共振結合)を介して電力を送電することをいう。磁界共鳴方式を利用したワイヤレス給電は、電磁結合方式を利用したワイヤレス給電と比較して、給電可能距離が長くなるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。なお、磁界共鳴方式も磁気結合を利用する方式であるものの、本発明では理解を容易にするために、共振を利用する方式を磁界共鳴方式としている。
【0003】
このようなワイヤレス給電システムでは、効率良く送電を行うために、送電装置から視て受電装置及び負荷等を含む負荷側回路のインピーダンスと、送電装置から視て電源側のインピーダンスとが等価に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した負荷側回路には、例えば、バッテリやモータなどの駆動部材が接続され、このバッテリやモータが負荷となる。そのため、バッテリやモータなどの駆動状態によって、負荷側回路に流れる電流に変動が生じることがある。ワイヤレス給電システムでは、負荷側回路に流れる電流の変動に応じて負荷側回路のインピーダンスが変動するため、送電装置から視て負荷側回路のインピーダンスと送電装置から視て電源側のインピーダンスとがマッチングしなくなり、送電効率が著しく低下して送電電力が低下し、その結果、システム障害を招く虞があるという問題があった。
【0006】
そこで、負荷側回路のインピーダンスが変動しても、送電効率の低下を軽減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、前記負荷における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部と、前記測定部の測定結果に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、を備えている。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムであって、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、を備え、前記送電装置は、前記送電コイルと磁界結合可能に設けられ、前記送電コイルに電力を送電する給電コイルを備え、前記給電コイルは、前記送電コイルに対する相対位置が異なる複数の給電コイル部に分割され、複数の前記給電コイル部の少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、前記インピーダンスマッチング機構は、複数の前記給電コイル部の少なくとも1つに電力を供給することにより、前記送電コイルと前記給電コイルとの磁界結合における結合強さを調整する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電方法は、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を備えている受電装置と、前記受電コイルを介して受電した電力が供給される負荷と、前記負荷における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部と、備え、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システムを用いたワイヤレス給電方法であって、インピーダンスマッチング機構を用いて、前記測定部の測定結果に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和する。
【0010】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス送電システムは、受電装置に磁気を利用して電力を送電するワイヤレス送電システムであって、送電コイルを含む送電側共振回路を備え、前記受電装置を介して電力を負荷に送電する送電装置と、前記負荷における負荷電流又は負荷電圧に応じて、前記送電装置の入力端から負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと前記送電装置の入力端から電源装置側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、負荷側回路のインピーダンスが変動した場合であっても、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端における反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、それに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示す模式図である。
【
図2】インピーダンスマッチング機構の構成を示す模式図である。
【
図3】ワイヤレス給電システムに対応する回路図である。
【
図4】
図3に示す回路図に対応する等価回路図である。
【
図5】負荷電圧と負荷電流との関係を示すグラフである。
【
図6】負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【
図7】送電コイルと、コイル軸の軸線方向にオフセットして配置された3つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図8】給電コイルから送電コイルまでの距離と負荷抵抗との関係を示すグラフである。
【
図9】コイル移動機構が、給電コイルをコイル軸に対して垂直方向にスライドさせる様子を示す模式図である。
【
図10】コイル移動機構が、給電コイルをコイル軸に平行にスライドさせる様子を示す模式図である。
【
図11】送電コイルと、コイル軸の軸線方向に対して垂直方向にオフセットして配置された3つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図12】送電コイルと、送電コイルに対して傾斜して略球状に配置された8つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図13】送電コイルと、螺旋状に形成された給電コイルを成す3つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【
図14】送電コイルと、同一平面上に配置された3つの給電コイル部との位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システム1及びワイヤレス給電システム1を用いたワイヤレス給電方法について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
<ワイヤレス給電システムの構成>
図1は、ワイヤレス給電システム1の構成を示す模式図である。ワイヤレス給電システム1は、磁界共鳴を利用して非接触で給電対象物2に電力を給電する。給電対象物2は、例えば、車両、ロボット飛翔体、水中ロボット、カプセル内視鏡、心臓ペースメーカー等であり、移動可能な機器又は移動不能な機器の何れであっても構わない。また、給電時に、給電対象物2は移動中又は停止の何れであっても構わない。ワイヤレス給電システム1は、送電装置3と、受電装置4と、を備えている。
【0017】
<送電装置の構成>
送電装置3は、給電コイル31と、送電コイル32と、コンデンサ33、34と、を備えている。
【0018】
給電コイル31及び送電コイル32は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、銅線内を流れる電流は、内部抵抗の影響によって銅線の中心部よりも表面付近を多く流れる。したがって、給電コイル31及び送電コイル32の線材に複数の銅線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合には、同一径の1本の銅線と比べて、リッツ線の表面積が大きくなり、より多くの電流を流すことができ、電流損失を抑制できる。
【0019】
給電コイル31には、交流電源5から交流電力が供給される。交流電力は、例えば、周波数150kHz、電圧10Vに設定されるが、交流電源5の周波数及び電圧は任意に変更可能である。以下、給電コイル31の交流電源5側の接点を「入力端IE」という。なお、本実施形態では、給電コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されている場合を例に説明するが、給電コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されても、交流電源5と入力端IEとの間に設けられた同軸ケーブル等を介して間接的に接続されても構わない。この場合、もし電源のインピーダンスが同軸ケーブル等のインピーダンスと整合している場合は、同軸ケーブル等の電源側端は電力の反射等が生じないため問題にはならず、入力端IEは同軸ケーブル等の負荷側端を意味する。
【0020】
給電コイル31及びコンデンサ33は、直列に接続されて給電側共振回路35を構成している。給電コイル31のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が給電コイル31に流れると、給電コイル31を貫くように振動磁場が生じる。給電コイル31の詳しい構成については、後述する。
【0021】
給電コイル31と送電コイル32とは磁界結合しており、給電コイル31は、磁界共鳴方式により電力を送電コイル32に供給する。すなわち、給電コイル31のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスに応じて設定される共振周波数と、送電コイル32のインダクタンス及びコンデンサ34のキャパシタンスに応じて設定される共振周波数とがほぼ等しく、給電コイル31と送電コイル32とが共振するように設計されている。これにより、給電コイル31に交流電流が流れることにより発生した特定周波数(共振周波数)の磁場の振動が、送電コイル32に伝わり同じ特定周波数で共振することで、送電コイル32に起電力が生じる。なお、給電コイル31から送電コイル32への電力の供給は、各コイルの位置関係による影響が低減される磁界共鳴方式が好適であるが、給電コイル31に交流電流が流れると、給電コイル31をコイル軸方向に貫くように生じる磁束を媒介にして、送電コイル32にも起電力が生じる電磁結合方式であっても構わない。また、磁界共鳴方式と電磁結合方式とを併用しても構わない。
【0022】
送電コイル32及びコンデンサ34は、直列に接続されて送電側共振回路36を構成している。送電コイル32のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル32に流れると、後述する受電コイル41が共振して起電力が生じる。
【0023】
<受電装置の構成>
受電装置4は、給電対象物2内に設けられている。受電装置4は、受電コイル41と、コンデンサ42と、備えている。
【0024】
受電コイル41は、送電コイル32とコイル軸方向に間隔を空けて設けられている。受電コイル41は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、受電コイル41も給電コイル31及び送電コイル32と同様に、線材にリッツ線を用いるのが好ましい。
【0025】
受電コイル41とコンデンサ42とは、直列に接続されて受電側共振回路43を構成している。受電コイル41のインダクタンス及びコンデンサ42のキャパシタンスによって設定される共振周波数は、送電コイル32及びコンデンサ33の共振周波数と略一致するように設定されている。これにより、送電コイル32をコイル軸方向に貫くように生じた磁場の振動によって、受電コイル41に誘導電流が流れ、受電コイル41をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。このとき、送電コイル32及び受電コイル41の磁場が共鳴して強固に結合する。
【0026】
受電コイル41が共振受電した交流電力は、整流回路(AC-DCコンバータ)6及びDC-DCコンバータ7を介して負荷8に供給される。負荷8は、給電対象物2を構成するモータやバッテリ等である。
【0027】
整流回路6は、4つのダイオード61がブリッジ上に配置され、受電コイル41が受電した交流電力に対して全波整流を行い、直流電圧を出力する。なお、符号62は、整流回路6が出力した直流電圧を平滑化させるコンデンサである。
【0028】
DC-DCコンバータ7は、整流された直流電圧を予め設定された定電圧(例えば、12V)に変換する。DC-DCコンバータ7から出力された電圧は、負荷8に印加される。なお、DC-DCコンバータ7は、必要な電圧に応じて配置されればよく、適宜省略しても構わない。
【0029】
<インピーダンスマッチング機構の構成>
次に、入力端IEから受電装置4側、即ち送電装置3、受電装置4、整流回路6、DC-DCコンバータ7及び負荷8を含む回路(負荷側回路)のインピーダンス(以下、「負荷側インピーダンス」という。)と入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンス(以下、「入力側インピーダンス」という。)との差分を緩和させるインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9について、
図2に基づいて説明する。なお、送電装置3及びインピーダンスマッチング機構9は、ワイヤレス送電システム11を構成している。
【0030】
インピーダンスマッチング機構9は、スイッチ91a~91dの切替制御により、給電コイル31を構成する3つの給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも1つ以上に電力を供給する。なお、給電コイル部31A、31B、31Cの何れかに電力を選択的に供給可能であれば、スイッチ91a~91dの代わりに他の構成を用いても構わない。
【0031】
給電コイル31は、3つの給電コイル部31A、31B、31Cに分割されている。3つの給電コイル部31A、31B、31Cは、給電コイル31を3つに分割するものであって実質的に直列に接続されており、給電コイル部31A、31Bは配線31ABを介して接続され、給電コイル部31B、31Cは配線31BCを介して接続されている。なお、配線31AB、31BCは必要に応じて省略しても構わない。給電コイル部31A、31B、31Cの各コイル軸31a、31b、31cと送電コイル32のコイル軸32aとは、通常状態において、略同軸上に位置する。なお、以下では、給電コイル31を給電コイル部31A、31B、31Cに3分割した場合を例に説明するが、給電コイル部の数は2つであっても、4つ以上であっても構わない。
【0032】
給電コイル部31A、31B、31Cは、給電コイル部31Aが送電コイル32に最も近く、この順で送電コイル32から離間するように配置されている。したがって、送電コイル32との磁界結合の結合強さは、給電コイル部31Aが最も強く、給電コイル部31Cが最も小さく設定される。給電コイル31と送電コイル32とを磁界共鳴方式で送電する場合、給電コイル部31A、31B、31Cのインダクタンスをそれぞれ等しく設定することにより、効率的に送電を行うことができる。
【0033】
スイッチ91a~91dは、給電コイル部31A、31B、31Cに電流を供給するための3路スイッチである。スイッチ91a、91bは、交流電源5に接続されている。スイッチ91aは、給電コイル部31Cの一方端側とスイッチ91c側とを切替可能に構成されている。スイッチ91cは、給電コイル部31Aの一方端側と給電コイル部31Bの一方端側とを切替可能に構成されている。また、スイッチ91bは、給電コイル部31Cの他方端側とスイッチ91d側とを切替可能に構成されている。スイッチ91dは、給電コイル部31Aの他方端側と給電コイル部31Bの他方端側とを切替可能に構成されている。
【0034】
給電コイル部31Aに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを給電コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを給電コイル部31Aの他方端側に切り替える。また、給電コイル部31Bに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを給電コイル部31Bの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを給電コイル部31Bの他方端側に切り替える。さらに、給電コイル部31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aを給電コイル部31C側に切り替え、スイッチ91bを給電コイル部31C側に切り替える。
【0035】
また、給電コイル部31A、31Bに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを給電コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bをスイッチ91d側に切り替え、スイッチ91dを給電コイル部31Bの他方端側に切り替える。また、給電コイル部31B、31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを給電コイル部31Bの一方端側に切り替え、スイッチ91bを給電コイル部31C側に切り替える。
【0036】
さらに、給電コイル部31A、31B、31Cに電力を供給する場合には、スイッチ91aをスイッチ91c側に切り替え、スイッチ91cを給電コイル部31Aの一方端側に切り替え、スイッチ91bを給電コイル部31B側に切り替える。
【0037】
スイッチ91a~91dの切替制御は、コントローラ92によって制御される。コントローラ92は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ92の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。コントローラ92は、記憶部93と、制御部94と、に機能分割される(
図1参照)。
【0038】
そして、給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに電力を供給することにより、送電コイル32との距離に応じて、送電装置3の入力端IEから負荷側の回路インピーダンスである負荷側インピーダンスを調整することができる。
【0039】
図3、
図4に基づいて具体的に説明する。
図3は、ワイヤレス給電システム1に対応する回路図である。
図3中の「V」は電源5の電圧、「Z
s」は電源5のインピーダンス(入力側インピーダンス)、「R
0」は給電コイル31の寄生抵抗、「L
0」は給電コイル31のインダクタンス、「C
0」はコンデンサ33のキャパシタンス、「I
0」は給電コイル31を流れる電流、「R
1」は送電コイル32の寄生抵抗、「L
1」は送電コイル32のインダクタンス、「C
1」はコンデンサ34のキャパシタンス、「I
1」は送電コイル32を流れる電流、「k
01」は給電コイル31及び送電コイル32の結合係数、「R
2」は受電コイル41の寄生抵抗、「R
L」は負荷8の負荷抵抗、「L
2」は受電コイル41のインダクタンス、「C
2」はコンデンサ42のキャパシタンス、「I
2」は受電コイル41を流れる電流、「k
12」は送電コイル32及び受電コイル41の結合係数である。
【0040】
図4は、
図3に示す回路図に基づく等価回路図である。
図4に示す等価回路図は、給電コイル31と送電コイル32とが共振するとともに送電コイル32と受電コイル41とが共振している状態を示している。給電コイル31と送電コイル32との間の相互インダクタンスL
0は、k
01√(L
0L
1)、送電コイル32と受電コイル41との間の相互インダクタンスL
2は、k
12√(L
1L
2)である。
図4中の「Z
0」は、電源5と給電コイル31の間、すなわち、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンス(負荷側インピーダンス)である。「Z
1」は、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスである。「Z
2」は、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスである。
図4に示す等価回路により、以下の数式1~数式3が得られる。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
そして、本発明におけるインピーダンスマッチングとは、負荷抵抗RLが変化した場合に、送電装置3の入力端IEから負荷8側を観た場合の回路の負荷側インピーダンスZ0を電源5の入力側インピーダンスZsに整合させ、かつ略一定に保つことを意味する。
【0045】
具体的には、ワイヤレス給電システム1では、負荷8の電力が大きく負荷8のインピーダンスが小さい場合は、式(1)から分かるように、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ2が小さくなる。またこのとき、式(2)から分かるように、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ1が大きくなり、式(3)から分かるように、負荷側インピーダンスZ0が小さくなる。すなわち、負荷側インピーダンスZ0が小さくなる一方で、入力側インピーダンスZsは変動しない。
【0046】
そこで、スイッチ91a~91dの切替制御により、送電コイル32に最も近い給電コイル部31Aに電力を供給することにより、送電コイル32との磁界結合が密になり、結合係数k01が大きくなる。そして、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ1が大きくなった割合と等しい割合で給電コイル31及び送電コイル32の結合係数k01を大きくすることにより、負荷側インピーダンスZ0を一定に保つことができる。このようにして、負荷側インピーダンスZ0を入力側インピーダンスZsと略等しいインピーダンスに制御し続けることにより、電力反射が抑制され、効率的なシステム駆動状況を実現することができる。
【0047】
また、負荷8の電力が小さく負荷8のインピーダンスが大きい場合は、式(1)から分かるように、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ2が大きくなる。またこのとき、式(2)から分かるように、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ1は小さくなり、式(3)から分かるように、負荷側インピーダンスZ0は大きくなる。すなわち、負荷側インピーダンスZ0が大きくなる一方で、入力側インピーダンスZsは変動しない。
【0048】
そこで、スイッチ91a~91dの切替制御により、給電コイル部31B、31Cの何れかに電力を供給することで、送電コイル32と給電コイル部31B、31Cとの距離に応じて、送電コイル32との磁界結合が疎になり、結合係数k01が小さくなる。そして、給電コイル31と送電コイル32の間から負荷8側の回路のインピーダンスZ1が小さくなった割合と等しい割合で給電コイル31及び送電コイル32の結合係数k01を小さくすることにより、負荷側インピーダンスZ0を一定に保つことができる。このようにして、負荷側インピーダンスZ0を入力側インピーダンスZsと略等しいインピーダンスに制御し続けることにより、電力反射が抑制され、効率的なシステム駆動状況を実現することができる。
【0049】
記憶部93には、DC-DCコンバータ7から出力されて負荷8に供給される負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数、及び負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数がそれぞれ記憶されている。負荷8に供給される負荷電圧及び負荷電流は、DC-DCコンバータ7と負荷8との間に設けられた測定部95により、リアルタイム且つ連続的に測定される。なお、測定部95は、負荷電圧を測定するものに限定されず、負荷電流を測定するもの等、もしくはその両方であっても構わない。なお、本実施形態における負荷電圧および負荷電流は、DC-DCコンバータ7から出力電圧及び出力電流であり、換言すれば、負荷8の入力電圧及び入力電流である。また、測定部95は、コンデンサ62とDC-DCコンバータ7との間に配置可能である。この場合、負荷電圧および負荷電流とは、DC-DCコンバータ7の入力電圧及び入力電流である。またさらに、DC-DCコンバータ7を配置しない場合には、負荷電圧および負荷電流は、負荷8の入力電圧及び入力電流とする。
【0050】
具体的には、
図5に示すように、負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数は、DC-DCコンバータ7への入力電圧(例えば15V)がDC-DCコンバータ7の作動電力(例えば12V)以下であって、DC-DCコンバータ7が作動していないアイドリング状態(コンバータOFF)における負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数と、DC-DCコンバータ7への入力電圧がDC-DCコンバータ7の作動電力を超えてDC-DCコンバータ7が作動している状態(コンバータON)における負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数とを含む。
【0051】
また、
図6に示すように、負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数は、DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態(コンバータOFF)における負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数と、DC-DCコンバータ7が作動していない状態(コンバータON)における負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数とを含む。
【0052】
なお、負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数及び負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数は、予め実験等により算出されるものであっても構わないし、
図5、
図6で例示した一次関数のグラフに限定されるものではない。
【0053】
制御部94は、測定部95の測定値及び記憶部93に記憶された各種関数に基づいて、スイッチ91a~91dの切替を制御する。制御部94によるスイッチ91a~91dの切替制御の詳細は後述する。
【0054】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、測定部95で測定した負荷側インピーダンスの変動に応じて、インピーダンスマッチング機構9により給電コイル31と送電コイル32との位置関係を即座に変えることができ、入力端IEにおける入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分をリアルタイムに緩和することができる。
【0055】
<インピーダンスマッチング処理>
次に、インピーダンスマッチング機構9が実行するインピーダンスマッチング処理について、図面に基づいて説明する。
【0056】
まず、負荷側インピーダンスが、DC-DCコンバータ7のオンオフに応じて変動する理由について説明する。なお、本実施形態では、負荷側インピーダンスが、DC-DCコンバータ7のオンオフに応じて変動する場合を例示して説明するが、負荷側インピーダンスの変動は、DC-DCコンバータ7のオンオフだけではなく、例えば、送電コイル32と受電コイル41との相対位置の変化、負荷8の駆動状況(出力)の変化等によっても生じ得るものであり、これら様々な要因による負荷側インピーダンスの変動の抑制に利用できることは言うまでもない。
【0057】
図5に示すように、DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態(コンバータOFF)では、DC-DCコンバータ7の出力電圧は、例えば作動電力である12V以下であり、負荷電流も非常に小さくなる。測定部95をDC-DCコンバータ7と負荷8との間に配置した場合の負荷電流(DC-DCコンバータ7の出力電流)は、ほぼゼロであり、測定部95をコンデンサ62とDC-DCコンバータ7との間に配置した場合の負荷電流(DC-DCコンバータ7の入力電流)は、作動電圧(例えば12V)に達するまで僅かながら増加する。そして、このときの負荷側インピーダンスは、
図6に示すように、極めて大きくなる。また、測定部95をDC-DCコンバータ7と負荷8との間に配置した場合の負荷側インピーダンスは、ほぼ一定の値(装置の目的とする負荷の電力相当の値)であり、測定部95をコンデンサ62とDC-DCコンバータ7との間に配置した場合の負荷側インピーダンスは、僅かながら低下する。
【0058】
次に、
図5に示すように、DC-DCコンバータ7が作動を開始(コンバータON)して負荷8に電力が供給された際には、DC-DCコンバータ7の出力電圧(負荷電圧)は、例えば12Vまで増加し、DC-DCコンバータ7の出力電流(負荷電流)は急増する。そして、このときの負荷側インピーダンスは、
図6に示すように、急激に小さくなり、時間の経過とともに所定の値に漸近する。負荷8への電力供給が開始された時点から確実に負荷側インピーダンスの変動を抑制するためには、DC-DCコンバータ7が作動を開始する前のアイドリング状態において、負荷側インピーダンスの値を予め調整する。
【0059】
このようにして、負荷側インピーダンスが、DC-DCコンバータ7の作動状態に応じて変動する一方で、入力側インピーダンスは、所定値(例えば50Ω)で固定されているため、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとがマッチングせず、入力端IEにおいて反射波が発生して送電効率が低下したり、送電電力が足りずにシステム障害を招く虞がある。
【0060】
そこで、コントローラ92は、負荷側インピーダンスの変動に応じて、送電装置3内の回路のインピーダンスを増減させる。
【0061】
具体的には、まず、制御部94は、測定部95が測定した負荷電圧及び
図5に示す関数に基づいて負荷電流を算出する。また、制御部94は、算出した負荷電流及び
図6に示す関数に基づいて、負荷側インピーダンスを算出する。
【0062】
次に、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスにマッチングするように、制御部94は、スイッチ91a~91dを切り替えて、給電コイル部31A、31B、31Cの何れに電力を供給するかを判定し、送電装置3内の回路のインピーダンスを調整する。
【0063】
例えば、DC-DCコンバータ7がアイドリングしており、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して大きい状態では、
図7(a)に示すように給電コイル部31Aに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合が密になり、結合係数が増大する。その結果、前述したように入力端IEにおける負荷側インピーダンスが小さくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0064】
一方、DC-DCコンバータ7が作動して、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して低下した状態では、
図7(b)に示すように、給電コイル部31Aと比べて、送電コイル32から遠い給電コイル部31Bに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合が疎になり、結合係数が減少する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0065】
また、負荷側インピーダンスがさらに低下すると、
図7(c)に示すように、送電コイル32から最も遠い給電コイル部31Cに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合がさらに疎になり、結合係数が減少する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスがさらに大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0066】
なお、給電コイル部31A、31B、31Cと送電コイル32の距離と結合係数の変化量との関数は、予め実験等により得たものを用いる。
【0067】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システム1であって、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備えている受電装置4と、受電コイル41を介して受電した電力が供給される負荷8と、負荷8における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部95と、測定部95の測定結果に応じて、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9と、を備えている。
【0068】
この構成により、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとが一致しない場合に、インピーダンスマッチング機構9が、測定部95の測定結果に応じて、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分を緩和するため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、送電装置3が、送電コイル32と磁界結合可能に設けられ、送電コイル32に電力を送電する給電コイル31をさらに備え、インピーダンスマッチング機構9は、送電コイル32と給電コイル31との磁界結合における結合強さを変更する構成とした。
【0070】
この構成により、給電コイル31及び送電コイル32の磁界結合の結合強さの強弱(磁界結合の疎密)を変更することにより、送電装置3内の回路のインピーダンスが増減して、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、給電コイル31は、送電コイル32との磁界結合の結合強さが互いに異なる複数の給電コイル部31A、31B、31Cに分割され、複数の給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、インピーダンスマッチング機構9は、測定部95の測定結果に応じて、複数の給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも1つに電力を供給する構成とした。
【0072】
この構成により、測定部95の測定結果に応じて、送電コイル32との磁界結合の結合強さが異なる給電コイル部31A、31B、31Cの何れかに電力を供給することにより、送電装置3内の回路のインピーダンスが増減して、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0073】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、複数の給電コイル部31A、31B、31Cが、互いに略同軸上に配置されたコイル軸31a、31b、31cをそれぞれ備え、送電コイル32との距離がそれぞれ異なるように設定されている構成とした。
【0074】
この構成により、給電コイル部31A、31B、31Cと送電コイル32との磁界結合の結合強さが、給電コイル部31A、31B、31Cの送電コイル32からの距離に反比例して弱くなるため、送電コイル32との磁界結合の結合強さが異なる給電コイル部31A、31B、31Cの何れかに電力を供給することにより、送電装置3内の回路のインピーダンスを増減することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、給電コイル31から送電コイル32への電力の供給は、磁界共鳴方式により行われ、給電コイル部31A、31B、31Cの各インダクタンス値は、略等しく設定されている構成とした。
【0076】
この構成により、送電コイル32に対する相対位置が異なる給電コイル部31A、31B、31Cから送電コイル32への磁界共鳴方式による電力供給を効率的に行うことができる。
【0077】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、送電コイル32から受電コイル41への電力の供給は、磁界共鳴方式により行われる構成とした。
【0078】
この構成により、送電コイル32から受電コイル41への電力供給を効率的に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1を用いたワイヤレス給電方法は、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備えている受電装置4と、受電コイル41を介して受電した電力が供給される負荷8と、負荷8における負荷電流又は負荷電圧を測定する測定部95と、を備え、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システム1を用いたワイヤレス給電方法であって、インピーダンスマッチング機構9を用いて、測定部95の測定結果に応じて、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和する構成とした。
【0080】
この構成により、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとが一致しない場合に、インピーダンスマッチング機構9が、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分を緩和するため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0081】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、磁気を利用して電力を送受電するワイヤレス給電システム1であって、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備えている受電装置4と、受電コイル41を介して受電した電力が供給される負荷8と、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9と、を備え、送電装置3は、送電コイル32と磁界結合可能に設けられ、送電コイル32に電力を送電する給電コイル31を備え、給電コイル31は、送電コイル32に対する相対位置が異なる複数の給電コイル部31A、31B、31Cに分割され、複数の給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに電力を供給可能に構成され、インピーダンスマッチング機構9は、複数の給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも1つに電力を供給することにより、送電コイル32と給電コイル31との磁界結合における結合強さを調整する構成とした。
【0082】
この構成により、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとが一致しない場合に、測定部95の測定結果に応じて、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0083】
また、本実施形態に係るワイヤレス送電システム11は、受電装置4に磁気を利用して電力を送電するワイヤレス送電システム11であって、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備え、受電装置4を介して電力を負荷8に送電する送電装置3と、負荷8における負荷電流又は負荷電圧に応じて、送電装置3の入力端IEから負荷8側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスと送電装置3の入力端IEから交流電源5側の回路のインピーダンスである入力側インピーダンスとの差分を緩和するインピーダンスマッチング処理を行うインピーダンスマッチング機構9と、を備えている構成とした。
【0084】
この構成により、負荷側インピーダンスと入力側インピーダンスとが一致しない場合に、インピーダンスマッチング機構9が、測定部95の測定結果に応じて、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとの差分を緩和するため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0085】
また、上述した実施形態では、負荷側インピーダンスが変動する要因として、DC-DCコンバータ7のオンオフに伴う負荷電流の変動を例に説明したが、負荷側インピーダンスが変動する要因はこれに限定されるものではない。
【0086】
例えば、給電対象物2の移動に伴って、負荷側インピーダンスが変動することも考えられる。これは、受電コイル41が送電コイル32に接近すると、送電コイル32と受電コイル41との磁気結合の結合強さが大きくなり、受電コイル41が送電コイル32から離れると、送電コイル32と受電コイル41との磁気結合の結合強さが小さくなり、送電コイル32と受電コイル41と磁気結合の結合状態が変動するためである。したがって、このような場合には、送電コイル32と受電コイル41との距離をモニタリングし、送電コイル32と受電コイル41との距離の変化に応じて入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとがマッチングするように、給電コイル部31A、31B、31Cの何れに電力を供給するかを判定しても構わない。
【0087】
また、本実施形態では、DC-DCコンバータ7がアイドリングしているときに、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとが予め整合されている構成を例示したが、例えば、DC-DCコンバータ7がアイドリングからオンに移行したとき、又はDC-DCコンバータ7がオンになった後に負荷側インピーダンスが安定したときに、入力側インピーダンスと負荷側インピーダンスとが予め整合されているように構成しても構わない。
【0088】
<実験例>
次に、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1の効果と実現性を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。本シミュレーションは、給電コイル31及び送電コイル32の直径をそれぞれ700mmに設定し、給電コイル31と送電コイル32とが共振状態を維持し、送電コイル32と受電コイル41とが共振状態を維持しているものとして、負荷8の負荷抵抗RLを変化させた場合に、インピーダンスが整合された状態となる給電コイル31と送電コイル32とのコイル軸31a(31b、31c)の軸方向の中心間距離Lを算出した。なお、負荷抵抗RLの数値は、整流回路6およびDC-DCコンバータ7の負荷抵抗の値を含むものとした。また、DC-DCコンバータ7の出力電圧を48Vとした場合の整流回路6およびDC-DCコンバータ7の負荷抵抗を考慮した負荷8の実負荷抵抗を併せて算出した。それらの結果を表1及び
図8に示す。
図8は、横軸に負荷抵抗RL、縦軸にインピーダンスが整合されたときの給電コイル31と送電コイル32との中心間距離Lを設定したグラフである。なお、表1及び
図8において、負荷8がOFFのときは、便宜的に負荷抵抗RLを1000Ω以上(負荷8の実負荷抵抗1000Ω以上)とし、このときの中心間距離Lを500mmとしている。
【0089】
【0090】
図8によれば、給電コイル部31Aを送電コイル32から300mm、給電コイル部31Bを送電コイル32から400mm、給電コイル部31Cを送電コイル32から500mmの位置にそれぞれ配置した場合、測定部95で負荷電流を測定して負荷8の駆動電力の値を算出し、算出した負荷8の駆動電力に応じて、スイッチ91a~91dを切り替えることにより、給電コイル部31A、31B、31Cを切り替える。具体的には、給電コイル部31Aは、負荷8の駆動電力が200W以上のとき、給電コイル部31Bは、負荷8の駆動電力が20W以上200W未満のとき、給電コイル部31Cは、負荷8がOFF又は負荷8の駆動電力が20W未満のときに作動させる。
【0091】
なお、給電コイル31の数を増やすことで、より精度の高いインピーダンスマッチング処理を実現できる。例えば、給電コイル31の数を6個に増やし、各給電コイル31の設置位置を送電コイル32からの中心間距離Lで250mm、300mm、350mm、400mm、450mm、500mmに設定する。この場合、中心間距離Lが250mmの給電コイルは負荷8の駆動電力が700W以上のとき、中心間距離Lが300mmの給電コイルは負荷8の駆動電力が350W以上700W未満のとき、中心間距離Lが350mmの給電コイルは負荷8の駆動電力が200W以上350W未満のとき、中心間距離Lが400mmの給電コイルは負荷8の駆動電力が50W以上200W未満のとき、中心間距離Lが450mmの給電コイルは負荷8の駆動電力が10W以上50W未満のとき、中心間距離Lが500mmの給電コイルは負荷8がOFF又は負荷8の駆動電力が10W未満のときに作動させる。
【0092】
また、複数の給電コイル31は必ずしも等間隔に配置する必要はなく、必要に応じて配置する給電コイル31の間隔を変更しても構わない。例えば、負荷8を起動して駆動電力が急激に増大する駆動電力が小さい領域に設置する給電コイル31の個数を、負荷8の駆動電力が大きくある程度安定した駆動電力が大きい領域に設置する給電コイル31の数より増やしても構わない。具体的には、給電コイル31を6個設ける場合、各給電コイル31の設置位置を送電コイル32からの中心間距離Lで300mm、400mm、440mm、470mm、490mm、500mmの位置に配置する。この場合、中心間距離Lが300mmに配置された給電コイル31は、負荷8の駆動電力が500W以上のとき、中心間距離Lが400mmに配置された給電コイル31は、負荷8の駆動電力が60W以上500W未満のとき、中心間距離Lが440mmの給電コイル31は、負荷8の駆動電力が30W以上60W未満のとき、中心間距離Lが470mmの給電コイル31は、負荷8の駆動電力が15W以上30W未満のとき、中心間距離Lが490mmの給電コイル31は、負荷8の駆動電力が5W以上15W未満のとき、中心間距離Lが500mmの給電コイル31は、負荷8がOFF又は負荷8の駆動電力が5W未満のときにそれぞれ作動する。
【0093】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、変形例は、以下に説明する構成を除いた他の構成は上述した実施形態の構成と同様である。
【0094】
インピーダンスマッチング機構9は、
図9(a)、(b)に示すように、給電コイル31を送電コイル32に対して相対的に移動させるコイル移動機構96を備えていても構わない。
【0095】
コイル移動機構96は、プランジャー96aと、ケース96bと、を備えているソレノイドである。プランジャー96aの先端には、給電コイル31が接続されている。プランジャー96aが、コイル軸31a、31b、31cに対して垂直方向に進退出することにより、コイル軸31a、31b、31cと送電コイル32のコイル軸32aとが略平行状態を維持したまま、各コイル軸31a、31b、31cがコイル軸32aに対して相対的に離間又は近接(一致)するように給電コイル31をスライドさせる。
【0096】
具体的には、
図2(a)~(c)に示すように、コイル軸31a、31b、31cが送電コイル32のコイル軸32aと同軸上に位置するときの給電コイル31の位置を原位置とすると、
図9(a)に示すように、プランジャー96aが退出して、給電コイル31が原位置からコイル軸31a、31b、31cに直交する方向に離れるように移動し、
図9(b)に示すように、プランジャー96aが進出して、給電コイル31が原位置からコイル軸31a、31b、31cに直交する方向に離れるように移動する。
【0097】
ここで、コイル軸31a、31b、31cと送電コイル32のコイル軸32aとが同軸上に位置する場合には、送電コイル32との磁界結合が密になる(結合強さ(結合係数)が大きくなる)。一方、コイル軸31a、31b、31cが、送電コイル32のコイル軸32aに対してコイル軸31aに直行する方向にオフセットしている場合には、送電コイル32との磁界結合が疎となる(結合強さ(結合係数)が小さくなる)。
【0098】
給電コイル31のコイル軸31a及び送電コイル32のコイル軸32aのオフセット量(プランジャー96aのストローク量)と送電装置3内の回路のインピーダンスの変化量との関数は、予め実験等により得たものを用いる。
【0099】
なお、プランジャー96aのストローク範囲(片側)は、例えば、給電コイル31の半径以下に設定されている。これにより、給電コイル31がコイル軸31a、31b、31cに直交する何れかの方向に最大限移動した場合であっても、コイル軸31a、31b、31cの軸線方向から視て、給電コイル31の少なくとも一部が送電コイル32の少なくとも一部と重なる状態を保つことができる。
【0100】
このようなコイル移動機構96によって給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させる機構は、スイッチ91a~91dを電気的に切り替える構成と比べて応答性が劣るため、例えば、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを大まかに調整した上で、給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスをスムーズに最適化することができる。なお、給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを大まかに調整した上で、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスを最適化しても構わない。
【0101】
<変形例2>
上述した変形例1では、給電コイル31のコイル軸31aが送電コイル32のコイル軸32aに直交する方向にオフセットするように、コイル移動機構96が給電コイル31を移動させる構成を例示したが、コイル移動機構96は、給電コイル31をコイル軸31a、31b、31c及びコイル軸32aの軸方向と平行に移動させる構成であっても構わない。
【0102】
例えば、
図2(a)~(c)に示すように、コイル軸31a、31b、31cが送電コイル32のコイル軸32aと同軸上に位置するときの給電コイル31の位置を原位置とすると、
図10(a)に示すように、プランジャー96aが退出して、給電コイル31を原位置からコイル軸31a、31b、31cと平行な方向で且つ送電コイル32から離れるように移動し、
図10(b)に示すように、プランジャー96aが進出して、給電コイル31が原位置からコイル軸31a、31b、31cと平行な方向で且つ送電コイル32に接近するように移動するコイル移動機構96の構成が考えられる。
【0103】
前述したように、給電コイル部31A、31B、31Cは、送電コイル32に接近するほど送電コイル32との磁界結合が密になり(結合係数が大きくなり)、給電コイル部31A、31B、31Cは、送電コイル32から離れるほど送電コイル32との磁界結合が疎になる(結合係数が小さくなる)。
【0104】
コイル移動機構96が給電コイル31を移動させる量(プランジャー96aのストローク量)と送電装置3内の回路のインピーダンスの変化量との関数は、予め実験等により得たものを用いる。
【0105】
このようなコイル移動機構96によって給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させる機構は、スイッチ91a~91dを電気的に切り替える構成と比べて応答性が劣るため、例えば、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを大まかに調整した上で、給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスの値が大きく変化した場合でもスムーズに最適化することができる。
【0106】
具体的には、まず、給電コイル部31Aを送電コイル32からの中心間距離Lで300mmの位置に配置し、給電コイル部31Bを送電コイル32からの中心間距離Lで400mmの位置に配置し、給電コイル部31Cを送電コイル32から中心間距離Lで500mmの位置に配置し、給電コイル部31A、31B、31Cを1つのユニットに構成し、コイル移動機構96が、給電コイル部31A、31B、31Cをコイル軸31a、31b、31cと平行に±50mmの範囲で移動可能に構成される。すなわち、給電コイル部31Aは、中心間距離Lが250~350mmの範囲内で移動可能であり、給電コイル部31Bは、中心間距離Lが350~450mmの範囲内で移動可能であり、給電コイル部31Cは、中心間距離Lが450~550mmの範囲内で移動可能である。
【0107】
そして、例えば、負荷8の駆動電力が300W以上1000W未満の場合には、給電コイル部31Aを使用し、負荷8の駆動電力が30W以上300W未満の場合には、給電コイル部31Bを使用し、負荷8がOFF又は負荷8の駆動電力が50W未満のときは給電コイル部31Cを使用し、その後、給電コイル部31A、31B、31Cを送電コイル32に対して相対的に移動させることによってインピーダンスの最適化を図る。
【0108】
また、コイル移動機構96によって給電コイル31を送電コイル32に対して相対的移動させてインピーダンスを大まかに調整した上で、スイッチ91a~91dの切替制御によってインピーダンスを微調整することにより、インピーダンスを最適化しても構わない。この場合、インピーダンスの微調整を高速に行うことができるため、インピーダンスの急激な変化した場合でもスムーズに最適化することができる。
【0109】
具体的には、給電コイル部31A、31B、31Cを互いに50mm離間して配置して成る給電コイル31を一つのユニットとし、コイル移動機構96が、給電コイル部31A、31B、31Cをコイル軸31a、31b、31cと平行に且つ送電コイル32から離れる向きに100mm又は200mmだけ移動可能に構成される。
【0110】
そして、例えば、給電コイル部31Aは中心間距離Lが200mmの位置に配置され、給電コイル部31Bは中心間距離Lが250mmの位置に配置され、給電コイル部31Cは中心間距離Lが300mmの位置に配置された状態で、負荷8の駆動電力が700W以上の場合には、給電コイル部31Bを使用し、負荷8の駆動電力が350W以上700W未満の場合は給電コイル部31Cを使用することによってインピーダンスの最適化を図る。
【0111】
また、コイル移動機構96が、給電コイル部31A、31B、31Cを送電コイル32から離れる向きに100mmそれぞれ移動させることにより、給電コイル部31Aは中心間距離Lが300mmの位置に配置され、給電コイル部31Bは中心間距離Lが350mmの位置に配置され、給電コイル部31Cは中心間距離Lが400mmの位置に配置された状態で、負荷8の駆動電力が350W以上700W未満の場合は給電コイル部31A、負荷8の駆動電力が200W以上350W未満の場合は給電コイル部31B、負荷8の駆動電力が50W以上200W未満の場合は給電コイル部31Cを使用することによってインピーダンスの最適化を図る。
【0112】
さらに、コイル移動機構96が、給電コイル部31A、31B、31Cを送電コイル32から離れる向きに200mmそれぞれ移動させることにより、給電コイル部31Aは中心間距離Lが400mmの位置に配置され、給電コイル部31Bは中心間距離Lが450mmの位置に配置され、給電コイル部31Cは中心間距離Lが500mmの位置に配置された状態で、負荷8の駆動電力が50W以上200W未満の場合は給電コイル部31A、負荷8の駆動電力が10W以上50W未満の場合は給電コイル部31B、負荷8がOFF又は負荷8の駆動電力が10W未満の場合は給電コイル部31Cを使用することによってインピーダンスの最適化を図る。
【0113】
<変形例3>
上述した実施形態では、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置された給電コイル部31A、31B、31Cから成る給電コイル31を例示したが、給電コイル31の構成はこれに限定されるものではない。
【0114】
例えば、給電コイル31は、
図11(a)~(c)に示すように、コイル軸31a、31b、31cが略平行で互いに離間するようにオフセットして配置された給電コイル部31A、31B、31Cを備えたものであっても構わない。
【0115】
このとき、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合は、対向する面積が大きいほど密となる。したがって、
図11(a)に示すように、給電コイル部31Aは、コイル軸31aとコイル軸32aとが同軸上に位置するため、送電コイル32との磁界結合が最も密になる。また、
図11(b)に示すように、給電コイル部31Bは、コイル軸31bがコイル軸32aから離れるため、送電コイル32との磁界結合が疎となり、さらに、
図11(c)に示すように、給電コイル部31Cは、コイル軸31cがコイル軸32aから最も離れるため、送電コイル32との磁界結合が最も疎となる。このような構成により、スイッチ91a~91dの切替制御により、給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、給電コイル31と送電コイル32との結合強さ(結合係数)を調整することができる。
【0116】
<変形例4>
給電コイル31は、例えば、
図12(a)~(c)に示すように、球状に配置された8つの給電コイル部31A~31Hを備えたものであっても構わない。
【0117】
給電コイル31は、中心が一致した状態で互いに傾斜する給電コイル部31A~31Hから成る。給電コイル部31A~31Hは、1つのコイルを8つに分割したものであり、実質的に直列に接続されている。給電コイル部31A~31H間の接続関係の詳細は省略するが、
図2と同様に図示しないスイッチ等によって、交流電源5からの電力を給電コイル部31A~31Hの少なくとも何れか1つに供給可能に接続されている。
【0118】
図12(a)に示すように、給電コイル部31Aは、コイル軸31aと送電コイル32のコイル軸32aとが略一致した状態で、すなわち送電コイル32に対して傾斜することなく送電コイル32内に収容されている。また、
図12(b)に示すように、給電コイル部31Cは、送電コイル32に対して約45度傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。そして、
図12(c)に示すように、給電コイル部31Eは、送電コイル32に対して約90度傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。さらに、給電コイル部31B、31D、31F~31Hは、送電コイル32に対して約22.5度、約67.5度、約112.5度、約135度、約157.5度だけそれぞれ傾いた状態で、その一部が送電コイル32内に収容されている。
【0119】
このとき、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合は、対向する面積が大きいほど密となる。すなわち、給電コイル部31Aは、コイル軸31aとコイル軸32aとが同軸上に位置するため、送電コイル32との磁界結合が最も密になる。給電コイル部31Eは、送電コイル32との磁界結合が最も疎になる。
【0120】
このような構成により、例えば、給電コイル部31A、31C、31Eの3つを適宜切り替えて、インピーダンスマッチング処理を実行することができる。すなわち、DC-DCコンバータ7がアイドリングしており、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して大きい状態では、
図12(a)に示すように給電コイル部31Aに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合が密になり、送電装置3内の回路のインピーダンスが減少する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが小さくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0121】
一方、DC-DCコンバータ7が作動して、負荷側インピーダンスが入力側インピーダンスに対して低下した状態では、
図12(b)に示すように、給電コイル部31Aと比べて、送電コイル32に対して傾斜する給電コイル部31Cに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合が疎になり、送電装置3内の回路のインピーダンスが増大する。その結果、入力端IEにおける負荷側インピーダンスが大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0122】
また、負荷側インピーダンスがさらに低下すると、
図12(c)に示すように、送電コイル32に対して直交する給電コイル部31Eに電力を供給することにより、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合がさらに疎になり、送電装置3内の回路のインピーダンスがさらに増大し、その結果、入力端IEにおける負ンピーダンスが大きくなり、入力側インピーダンスとの差分が緩和される。
【0123】
このような構成により、給電コイル部31A~31Hの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、給電コイル31と送電コイル32との結合強さを調整することができる。
【0124】
また、本変形例に係る球状の給電コイル31を構成する給電コイル部の個数は、8つに限定されず、2つ以上であればいくつであっても構わない。また、本変形例に係る給電コイル部31A~31Hの送電コイル32に対する傾きは、0度~180度の範囲で設定しているが、コイルの位相を考慮して、-90度~+90度の範囲で設定しても構わない。
【0125】
また、給電コイル31は、送電コイル32内に収容されたものに限定されず、送電コイル32外に配置されても構わない。また、給電コイル部31A~31Hの一部が送電コイル32内に配置され、その他の給電コイル部31A~31Hが送電コイル32外に配置されても構わない。なお、給電コイル31の送電コイル32に対する傾きが、結合係数k01が等比級数になるように切り替え可能に構成されることにより、各給電コイル31の角度でのインピーダンス調整範囲が略一定になり、インピーダンス整合をさらに安定して行うことができる。
【0126】
<変形例5>
上述した実施形態では、略同形に形成された給電コイル部31A、31B、31Cから成る給電コイル31を例示したが、給電コイル部31A、31B、31Cは、互いに異なる形状であっても構わない。
【0127】
例えば、
図13(a)~(c)に示すように、給電コイル31は、略同一平面上でコイル径が拡縮する螺旋状に構成されても構わない。このとき、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置されるとともに、給電コイル部31A、31B、31Cがこの順でコイル径が徐々に小径に設定され、且つコイル高さが高くなるように形成されている。具体的には、給電コイル部31Aは、送電コイル32と略同一のコイル径に設定されており、給電コイル部31Aの内周に給電コイル部31B、31Cが配置され、給電コイル部31Bの内周に給電コイル部31Cが配置されている。また、給電コイル31と送電コイル32とを磁界共鳴方式で送電する場合、異なるコイル径の給電コイル部31A、31B、31Cのインダクタンスがそれぞれ等しくなるようにコイルの巻数を、給電コイル部31A、31B、31Cがこの順で徐々に増やすのが好ましい。
【0128】
このとき、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合は、コイル径の差が少ないほど密となる。したがって、
図13(a)に示すように、給電コイル部31Aは、送電コイル32と略同じコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が最も密になる。また、
図13(b)に示すように、給電コイル部31Bは、送電コイル32より小径のコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が疎となり、さらに、
図13(c)に示すように、給電コイル部31Cは、送電コイル32よりさらに小径のコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が最も疎となる。このような構成により、スイッチ91a~91dの切替制御により、給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、給電コイル31と送電コイル32との結合強さを調整することができる。
【0129】
<変形例6>
例えば、
図14(a)~(c)に示すように、給電コイル31は、同一平面上で外周から中心に向かって徐々にコイル径が小さくなるように構成されても構わない。このとき、コイル軸31a、31b、31cが略同軸上に配置されるとともに、給電コイル部31A、31B、31Cが略同一平面上に配置され、さらに、給電コイル部31A、31B、31Cがこの順でコイル径が徐々に小径に設定されている。具体的には、給電コイル部31Aは、送電コイル32と略同一のコイル径に設定されており、給電コイル部31Aの内周に給電コイル部31B、31Cが配置され、給電コイル部31Bの内周に給電コイル部31Cが配置されている。また、給電コイル31と送電コイル32とを磁界共鳴方式で送電する場合、異なるコイル径の給電コイル部31A、31B、31Cのインダクタンスがそれぞれ等しくなるようにコイルの巻数を、給電コイル部31A、31B、31Cがこの順で徐々に増やすのが好ましい。
【0130】
このとき、給電コイル31と送電コイル32との磁界結合は、コイル径の差が少ないほど密となる。したがって、
図14(a)に示すように、給電コイル部31Aは、送電コイル32と略同じコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が最も密になる。また、
図14(b)に示すように、給電コイル部31Bは、送電コイル32より小径のコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が疎となり、さらに、
図14(c)に示すように、給電コイル部31Cは、送電コイル32よりさらに小径のコイル径であるため、送電コイル32との磁界結合が最も疎となる。このような構成により、スイッチ91a~91dの切替制御により、給電コイル部31A、31B、31Cの少なくとも何れか1つに選択的に電力が供給されるため、給電コイル31と送電コイル32との結合強さ(結合係数)を調整することができる。
【0131】
また、上述した実施形態では、インピーダンスの虚部をゼロにして無効電力の発生を抑制するために、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41を全て共振状態とした場合を例に説明した。しかしながら、例えば、給電コイル31にコンデンサ33を接続させない場合であっても、入力インピーダンスに無効電力が生じるものの、送電自体は可能であるから、送電コイル32及び受電コイル41のみを共振状態としても構わない。
【0132】
また、上述した実施形態では、ワイヤレス給電システム1を、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41を備えている3コイルシステムの構成を例に説明したが、給電コイル31を設けず、送電コイル32及び受電コイル41のみを有する2コイルシステムのワイヤレス給電システムとしてもよい。この場合には、送電コイル32を複数の送電コイル部に分割し、各送電コイル部と受電コイル41との相対位置を変える構成とすることで、負荷側インピーダンスを制御することができる。
【0133】
なお、送電コイル32及び受電コイル41から成る2コイルシステムは、負荷側インピーダンスを変動させるために、送電コイル32の位置を移動させると、送電コイル32のコイル軸32aと受電コイル41のコイル軸とが同軸に位置せずに送電効率が低下する虞があるのに対し、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41から成る3コイルシステムは、給電コイル31を介して送電コイル32に送電することにより、送電コイル32と受電コイル41との位置関係を変えることなく、給電コイル31と送電コイル32との磁気結合の結合強さを調整することで、負荷側インピーダンスを制御することができ、良好な送電効率を維持することができる。
【0134】
また、上述した実施形態では、ワイヤレス給電システム1を、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41を備えている3コイルシステムの構成を例に説明したが、受電コイル41に加えて第2受電コイルを備えた4コイルシステムを採用したワイヤレス給電システムの構成としても良い。この場合には、受電コイル41は、送電コイル32とほぼ等しい共振周波数に設定され、磁界共鳴方式により電力が伝送される。受電コイル41と第2受電コイルは非接触に配置され、電磁結合(電磁誘導)方式又は磁界共鳴方式により電力が伝送される。なお、4コイルシステムは、送電コイル32及び受電コイル41が、他の電気回路と独立した共振用のコイルであるため、駆動中に共振周波数が変化することがないため設計が容易であり、また電力の伝送距離を長くすることができる。
【0135】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0136】
1 :ワイヤレス給電システム
11 :ワイヤレス送電システム
2 :給電対象物
3 :送電装置
31 :給電コイル
31A~31H:給電コイル部
31a~31c:(給電コイルの)コイル軸
32 :送電コイル
32a:(送電コイルの)コイル軸
33、34:コンデンサ
35 :給電側共振回路
36 :送電側共振回路
4 :受電装置
41 :受電コイル
42 :コンデンサ
43 :受電側共振回路
5 :交流電源(電源装置)
6 :整流回路
61 :ダイオード
62 :コンデンサ
7 :DC-DCコンバータ
8 :負荷
9 :インピーダンスマッチング機構
91a~91d:スイッチ
92 :コントローラ
93 :記憶部
94 :制御部
95 :測定部
96 :直動機構
96a:プランジャー
96b:ケース
IE :入力端