(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110787
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ポリウレア系遮熱性塗料及びその塗装方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/02 20060101AFI20230802BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230802BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230802BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230802BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230802BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230802BHJP
E01C 7/35 20060101ALI20230802BHJP
E01C 11/24 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
C09D175/02
C09D7/61
B05D3/02 A
B05D7/24 302T
B05D7/24 301U
B05D5/00 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
B05D7/24 303B
B05D7/24 303L
B05D7/24 301K
E01C7/35
E01C11/24
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012450
(22)【出願日】2022-01-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(71)【出願人】
【識別番号】514112374
【氏名又は名称】株式会社ミラクール
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】岩間 将彦
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 賢智
(72)【発明者】
【氏名】神尾 学
(72)【発明者】
【氏名】今泉 秀
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 裕文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重宣
(72)【発明者】
【氏名】深江 典之
【テーマコード(参考)】
2D051
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AF07
2D051AG11
2D051AH01
4D075AA04
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4J038DG061
4J038DG261
4J038HA456
4J038KA08
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4J038MA04
4J038NA13
4J038NA19
4J038PB05
4J038PC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、透水性舗装体に塗装しても遮熱効果が落ちにくく、かつ仕上がり等についての問題が少なく塗装できる遮熱性塗料を提供する。
【解決手段】本発明の遮熱性塗料は、ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備する二液型ポリウレア系遮熱性塗料であって、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備する二液型ポリウレア系遮熱性塗料であって、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下である、二液型ポリウレア系遮熱性塗料。
【請求項2】
前記主剤の60℃でのTI値が、1.5以上2.3以下である、請求項1に記載の遮熱性塗料。
【請求項3】
前記遮熱材が、中空セラミック粒子である、請求項1又は2に記載の遮熱性塗料。
【請求項4】
二液型ポリウレア系遮熱性塗料を50℃~70℃の温度に加熱して基体に塗装することを含む塗装方法であって、前記二液型ポリウレア系遮熱性塗料は、請求項1~3のいずれか一項に記載の遮熱性塗料である、塗装方法。
【請求項5】
前記基体は、アスファルト舗装体である、請求項4に記載の塗装方法。
【請求項6】
前記舗装道路は、透水性舗装体である、請求項5に記載の塗装方法。
【請求項7】
前記塗装が、エアレス塗装機によって行われる、請求項4~6のいずれか一項に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレア系遮熱性塗料及びその塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アスファルト舗装体、コンクリート舗装体等の舗装体面に、遮熱性塗料を塗装して遮熱性塗膜を路面に形成することが多くなっている。このような遮熱性塗料は、通常、赤外線を反射する顔料及び/又は中空粒子を含有しており、これらが太陽光を効果的に反射することによって、路面の温度上昇を抑制する。これにより、道路利用者の暑さによる不快感を軽減させるだけではなく、熱による道路の劣化も防ぐことができるため、遮熱性塗料は、道路を長持ちさせる機能も有している。
【0003】
上記のような遮熱性舗装体には、エマルション系の1液型塗料、及びアクリル系樹脂(例えば、MMA(メチルメタクリレート)系樹脂)、ポリウレア系樹脂等を主剤とする二液型塗料が用いられる。エマルション系の1液型塗料は、歩道又は大型車両が頻繁には通行しない中交通道路のために用いることができ、二液型塗料は、非常に高い塗膜強度を有しているためにトラック等の大型車両が頻繁に通行する重交通車道のためにも用いることができる。このような二液型の遮熱性塗料は、例えば特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4401171号公報
【特許文献2】特開2018-53115号公報
【特許文献3】特開2019-194323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、透水性舗装が非常に多く施工されている。透水性舗装体は、その少なくとも表面で通常のアスファルト道路よりも空隙率が高く、骨材間に隙間があることで透水性を有することができる。透水性舗装体は、水たまりが発生しにくいために歩道等の中交通道路にも用いられ、またスリップ事故が防止できること及び騒音低減機能をも有することから重交通車道にも好適に用いられる。
【0006】
本発明者らは、透水性舗装体において遮熱性塗料を施工した場合には、遮熱効果が想定よりも高くならないことがあることに気づいた。また、その原因が、舗装体表面に付着するべき塗料が骨材間の隙間に入り込んでしまい舗装体表面に付着しなくなることであることを見出した。そして、これにより、塗装された透水性舗装体の透水性についても低下していることが分かった。
【0007】
そこで、本発明は、透水性舗装体に塗装しても遮熱効果が落ちにくく、かつ仕上がり等についての問題が少なく塗装できる遮熱性塗料及びその塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の遮熱性塗料は、ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備する二液型ポリウレア系遮熱性塗料であって、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【0009】
このような本発明の遮熱性塗料では、塗装直後の遮熱性塗料の液垂れが発生しにくく、かつ仕上がり等についての問題が少なく塗装することができる。
【0010】
本発明の一態様では、遮熱性塗料は、前記主剤の60℃でのTI値が、1.5以上2.3以下である。
【0011】
本発明の一態様では、遮熱性塗料の遮熱材は、中空セラミック粒子である。
【0012】
また、本発明の遮熱性塗料の塗装方法は、二液型ポリウレア系遮熱性塗料を50℃~70℃の温度に加熱して基体に塗装することを含む塗装方法であって、前記二液型ポリウレア系遮熱性塗料は、ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備しており、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【0013】
本発明の一態様では、前記基体は、アスファルト舗装体である。
【0014】
本発明の一態様では、前記アスファルト舗装体は、透水性舗装体である。
【0015】
本発明の一態様では、前記塗装が、エアレス塗装機によって行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、透水性舗装体に塗装しても遮熱効果が落ちにくく、かつ仕上がり等についての問題が少なく塗装できる遮熱性塗料及びその塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例で行われた垂れ試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《遮熱性塗料》
本発明の遮熱性塗料は、ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備する二液型ポリウレア系遮熱性塗料であって、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【0019】
この遮熱性塗料は、上記の限られた粘度範囲であれば、60℃付近の温度まで加熱して塗装したときに、仕上がり等についての問題が少なく塗装できる。また、遮熱性塗料は、太陽光が照射される基体表面に付着していないと遮熱性の機能が発揮されないのに対して、この限られた粘度範囲の遮熱性塗料であれば、透水性舗装体のような多孔質の基体に対しても、基体の表面に集中的に付着させることができる。そのため、この遮熱性塗料をそのような基体に対して塗装したとしても、遮熱性を十分に発揮させることができる。特に、舗装体に対して二液型ポリウレア系遮熱性塗料を塗布する場合、この塗料は、塗装の作業性のために比較的高めの粘度で用いられてきたが、この塗料は、地面に対して塗装されるために、塗料の垂れ下がりについて課題があると考えられてこなかったのに対して、本発明者らは、塗料の垂れ下がりが発生することで、遮熱性に影響が発生しうることを見出した。
【0020】
この遮熱性塗料は一回の塗装だけで遮熱構造体を形成することができる。また、塗料が二回以上塗装されて遮熱構造体が形成されてもよいが、二回以上塗装を行う場合には、本発明の遮熱性塗料は、そのいずれか一回で用いられればよく、二回以上の塗装で用いられてもよい。塗装される基体が舗装体である場合には、下塗りと上塗りとを含む少なくとも二回の塗装が行われ、そのどちらにもこの遮熱性塗料を用いることができる。
【0021】
この遮熱性塗料によって塗装される基体は、遮熱性塗料を使用できる基体であれば特に限定されないが、多孔質の基体に対して特に有利に用いることができる。例えば、基体がアスファルト舗装体の場合は、その表層材用のアスファルト混合物の例としては、細粒度アスファルト混合物、密粒度ギャップアスファルト混合物、開粒度アスファルト混合物等を挙げることができ、機能的に表現したアスファルト舗装体の例としては、明色舗装、着色舗装体、凍結抑制舗装体、透水性舗装体、半たわみ性舗装体、砕石マスチック舗装体等を挙げることができる。この遮熱性塗料は、開粒度アスファルト混合物等による多孔性の高い基体に最も有利となるものの、細粒度アスファルト混合物等による多孔性の低い基体に対しても、透水性を低下させない等の観点から有利である。
【0022】
この遮熱性塗料の主剤は、60℃で英弘精機株式会社から入手可能なブルックフィールドB型粘度計RV/DVEを用いて、スピンドルNo.5(RV-5)を6rpmの条件で測定した粘度が、300mPa・s以上、400mPa・s以上、500mPa・s以上、600mPa・s以上、又は700mPa・s以上であってもよく、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、又は500mPa・s以下であってもよい。この粘度は、例えば、350mPa・s以上1000mPa・s以下、450mPa・s以上800mPa・s以下、又は500mPa・s以上650mPa・s以下であってもよい。なお、本明細書において、測定値にバラツキが出やすい場合には、10回以上の測定を行って、その平均値を測定値として採用することができる。
【0023】
この遮熱性塗料の主剤は、60℃で英弘精機株式会社から入手可能なブルックフィールドB型粘度計RV/DVEを用いて、スピンドルNo.5(RV-5)を60rpmの条件で測定した粘度が、170mPa・s以上、200mPa・s以上、250mPa・s以上、300mPa・s以上、又は350mPa・s以上であってもよく、800mPa・s以下、650mPa・s以下、600mPa・s以下、550mPa・s以下、500mPa・s以下、450mPa・s以下、400mPa・s以下、又は350mPa・s以下であってもよい。この粘度は、例えば、170mPa・s以上650mPa・s以下、200mPa・s以上500mPa・s以下、又は280mPa・s以上400mPa・s以下であってもよい。
【0024】
ポリウレア系塗料は、アミンとイソシアネートとの反応が早く比較的早く硬化するため、例えばスプレー塗装を行う場合には、主剤と硬化剤とを塗装直前に混合するか、又は別々に塗装を行う。したがって、この遮熱性塗料では、硬化剤の粘度も重要であり、この遮熱性塗料の硬化剤は、60℃で英弘精機株式会社から入手可能なブルックフィールドB型粘度計RV/DVEを用いて、スピンドルNo.5(RV-5)を6rpmの条件で測定した粘度が、300mPa・s以上、400mPa・s以上、又は500mPa・s以上であってもよく、1500mPa・s以下、1200mPa・s以下、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、又は550mPa・s以下であってもよい。この粘度は、例えば、350mPa・s以上1200mPa・s以下、500mPa・s以上900mPa・s以下、又は600mPa・s以上750mPa・s以下であってもよい。
【0025】
この遮熱性塗料の硬化剤は、60℃で英弘精機株式会社から入手可能なブルックフィールドB型粘度計RV/DVEを用いて、スピンドルNo.5(RV-5)を60rpmの条件で測定した粘度が、200mPa・s以上、250mPa・s以上、300mPa・s以上、350mPa・s以上、400mPa・s以上、又は450mPa・s以上であってもよく、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下、又は400mPa・s以下であってもよい。この粘度は、例えば、250mPa・s以上1000mPa・s以下、350mPa・s以上700mPa・s以下、又は450mPa・s以上550mPa・s以下であってもよい。
【0026】
遮熱性塗料は、チキソ性を有することができ、それにより塗装の際に応力が掛かった状態では流動性が高くなって塗装が容易になる。すなわち、この遮熱性塗料は、従来の遮熱性塗料と比較して高い範囲の粘度を有しているものの、高圧のエアレス塗装機等によって塗料自体に圧力をかけて塗装することで、高い流動性が付与されるために従来と同様の塗装が可能となる一方で、塗装されて基体に付着した後は流動性が低くなり、多孔質基体に塗装したとしても表面に集中して塗膜を形成することができる。
【0027】
チキソ性は、上記の測定条件によって測定した粘度を使用し、6rpmで測定した粘度の、60rpmで測定した粘度に対する比(TI値)から評価することができる。
【0028】
遮熱性塗料の主剤のTI値(6rpmで測定した粘度/60rpmで測定した粘度)は、1.2以上、1.5以上、1.8以上、又は2.0以上であってもよく、3.0以下、2.5以下、2.3以下、又は2.0以下であってもよい。このTI値は、例えば、1.5以上2.3以下、又は1.6以上2.1以下であってもよい。
【0029】
また、遮熱性塗料の硬化剤のTI値は、1.0以上、1.2以上、又は1.3以上であってもよく、1.6以下、1.5以下、1.4以下、又は1.3以下であってもよい。このTI値は、例えば、1.0以上1.5以下、又は1.2以上1.4以下であってもよい。
【0030】
主剤と硬化剤の混合比率は、ポリアミンのアミノ基とポリイソシアネートのイソシアネート基が約1:1となるように、決定することができる。例えば、主剤に対する硬化剤の混合比率(主剤/硬化剤)は、その質量比で、0.2以上、0.3以上、0.5以上、0.8以上、1.0以上又は1.5以上であってもよく、5.0以下、3.0以下、2.0以下、1.5以下、1.2以下、又は1.0以下であってもよい。例えば、この混合比率は、0.2以上5.0以下、又は0.5以上1.5以下であってもよい。
【0031】
〈主剤-ポリアミン〉
本発明の遮熱性塗料の主剤は、ポリアミンを含む。ポリアミンは、ポリイソシアネートと反応して硬化し、塗膜を形成する。
【0032】
ポリアミンとしては、通常のポリウレア塗料で用いられるポリアミンを使用することができるが、その分子量等を調整して、上記の粘度範囲に主剤が含まれるように選択する必要がある。本明細書において、ポリアミンとは、イソシアネート基と反応できるアミノ基を少なくとも2つ有している化合物であればよく、低分子化合物であってもよく、いわゆるプレポリマー等であってもよい。
【0033】
具体的には、ポリアミンとしては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、ポリエーテルアミン、ピペラジン系アミン、ノルボルナン系ポリアミン等を挙げることができる。
【0034】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジクロロジフェニルメタン、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾエート)等の低分子芳香族ポリアミンを挙げることができ、またポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリ(テトラメチレン/3-メチルテトラメチレンエーテル)グリコールビス(4-アミノベンゾエート)等の高分子芳香族ポリアミンを挙げることができ、脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等を挙げることができ、脂環式ポリアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等を挙げることができ、ピペラジン系アミンとしては、N-アミノエチルピペラジンを挙げることができ、ポリエーテルアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンジアミン、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリエチレングリコール等を挙げることができ、ノルボルナン系ポリアミンとしては、例えば、ノルボルナンジアミン等を挙げることができる。
【0035】
主剤に含まれるポリアミンの含有量は、例えば、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってもよく、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってもよい。例えば、主剤に含まれるポリアミンの含有量は、50質量%以上90質量%以下、又は65質量%以上85質量%以下であってもよい。
【0036】
〈主剤-遮熱材〉
本発明の遮熱性塗料は、遮熱材を含む。遮熱材は、遮熱性塗膜を形成した時に、遮熱舗装体が少なくとも近赤外線の吸収を防止することができれば、特に限定されない。
【0037】
遮熱材としては、従来から遮熱性塗料で用いられてきた遮熱材を用いることができ、例えば中空粒子を用いることができる。
【0038】
遮熱性塗料の遮熱材として用いることができる中空粒子としては、透明又は半透明のセラミック中空粒子を挙げることができる。このようなセラミック中空粒子としては、ジルコニア・チタニア複合物、ホウ化ケイ素系セラミック、シラスバルーン、ガラスバルーン等の中空粒子を挙げることができる。中空粒子の粒子径としては5μm以上150μm以下、又は30μm以上100μm以下の範囲とすることができ、中空内は空気、空気以外の気体、真空のいずれでもよいが、真空であるものが断熱性の点等からより効果的である。
【0039】
主剤に含まれる遮熱材の含有量は、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、20質量%以下、10質量%以下、5.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってもよい。例えば、主剤に含まれる遮熱材の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下、又は0.5質量%以上5.0質量%以下であってもよい。
【0040】
〈主剤-充填材〉
本発明の遮熱性塗料は、充填材を含む。充填材は、遮熱性塗料の粘度の範囲を上記の範囲に調整することができれば、特に限定されない。充填材は、塗料に用いられる通常の充填材を用いることができ、体質顔料、着色顔料、熱反射性顔料等であってもよい。
【0041】
充填材としては、通常のポリウレア系塗料で用いられる充填材を使用することができるが、その粒径、配合量等を調整して、上記の粘度範囲に主剤が含まれるように選択する必要がある。具体的には、充填材としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、カーボン、酸化クロム、酸化チタン等の無機粒子、アゾメチンアゾ系顔料、モノアゾ系の黄色系顔料、酸化鉄、キナクリドンレッド等の赤色系顔料、フタロシアニンブルー等の青色系顔料、フタロシアニングリーン等の緑色系顔料などの有機粒子等を挙げることができる。
【0042】
主剤に含まれる充填材の含有量は、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよく、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。例えば、主剤に含まれる充填材の含有量は、10質量%以上45質量%以下、15質量%以上35質量%以下、又は20質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0043】
主剤に含まれる遮熱材と充填材の合計の含有量は、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。例えば、主剤に含まれる充填材の含有量は、10質量%以上50質量%以下、15質量%以上35質量%以下、又は20質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0044】
〈主剤-その他〉
本発明の遮熱性塗料は、その有利な効果を失わない範囲内で、さらに溶剤、増粘剤、希釈剤、硬化触媒、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を含むことができる。
【0045】
主剤に含まれる他の添加剤の含有量は、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよく、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってもよい。
【0046】
〈硬化剤-ポリイソシアネート〉
本発明の遮熱性塗料の硬化剤は、ポリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートは、ポリアミンと反応して硬化し、塗膜を形成する。本明細書において、ポリイソシアネートとは、アミノ基と反応できるイソシアネート基を少なくとも2つ有している化合物であればよく、低分子化合物であってもよく、いわゆるプレポリマー等であってもよい。
【0047】
ポリイソシアネートとしては、通常のポリウレア系塗料で用いられるポリイソシアネートを使用することができるが、その分子量等を調整して、上記の粘度範囲に硬化剤の粘度が含まれるように選択することが好ましい。
【0048】
具体的には、ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0049】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート等の周知の芳香族ポリイソシアネートを挙げることができ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の周知の脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができ、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の周知の脂環式ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0050】
また、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート等も挙げることができる。
【0051】
硬化剤に含まれるポリイソシアネートの含有量は、例えば、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、100質量%以下、95質量%以下、80質量%以下、又は80質量%以下であってもよい。例えば、硬化剤に含まれるポリイソシアネートの含有量は、50質量%以上100質量%以下であってもよい。
【0052】
〈硬化剤-その他〉
本発明の遮熱性塗料は、その有利な効果を失わない範囲内で、さらに溶剤、増粘剤、希釈剤、硬化触媒、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を含むことができる。
【0053】
硬化剤に含まれる他の添加剤の含有量は、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよく、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5.0質量%以下、又は3.0質量%以下であってもよい。
【0054】
《遮熱性塗料の塗装方法》
本発明の遮熱性塗料の塗装方法は、二液型ポリウレア系遮熱性塗料を基体に塗装することを含む塗装方法であって、前記二液型ポリウレア系遮熱性塗料が上記のような二液型ポリウレア系遮熱性塗料である。
【0055】
本発明の遮熱性塗料の塗装方法は、基体に下塗り塗装をする方法であってもよく、上塗り塗装をする方法であってもよい。また、この塗装方法で塗装する基体が舗装体である場合には、舗装体に下塗り塗装をして下塗り層を形成する工程、下塗り層の上に骨材を散布して骨材層を形成する工程、及び骨材層の上に上塗り層を形成する工程を含んでいてもよい。骨材としては、滑り止め用の骨材として周知のものを使用することができ、例えば骨材の種類としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂等の砂系骨材、アルミナ骨材、ガラス骨材、セラミック骨材、着色骨材、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。
【0056】
この方法において、塗布は、好ましくはスプレー装置によって行われ、特に好ましくは二液を直前で混合する、エアレス塗装機を用いることができる。このようなスプレー装置は、塗料自体に高いせん断を掛けることで、チキソ性を有する塗料の施工性を高めることができる。
【0057】
ここで、エアレス塗装機は、塗料をポンプにより加圧し、耐圧ホースにてエアレスガンに接続し、液圧で塗料を噴霧微粒化して被塗面に塗装する装置である。補助エアを用いて、この噴霧微粒化した塗料の微粒化をコントロールすることもできる。ポンプとしてエア駆動式、油圧駆動式又は電動式などが例示される。前2者のエア駆動式又は液圧駆動式では、プランジャー形ポンプを用いて圧縮空気又は油圧で駆動させる。この駆動圧に対して数倍~数十倍に液圧を上げるポンプが使用できる。後者の電動式では、油圧を介したポンプを直接モータで動かすものが挙げられる。
【0058】
このエアレス塗装機の塗装時における塗料の吐出圧力は、例えば0.1MPa以上、0.5MPa以上、1.0MPa以上、2.0MPa以上、5.0MPa以上、又は10MPa以上であってもよく、30MPa以下、25MPa以下、20MPa以下、15MPa以下であって5MPa以上、10MPa以下が望ましい。10MPa以下、又は5MPa以下であってもよい。塗料の吐出圧力は、例えば0.1MPa以上30MPa以下であってもよく、1.0MPa以上20MPa以下であってもよい。
【0059】
このエアレス塗装機の塗装時における塗料の吐出量は、例えば0.1L/分以上、0.5L/分以上、1.0L/分以上、2.0L/分以上、又は5.0L/分以上であってもよく、20L/分以下、15L/分以下、10L/分以下、又は5L/分以下であってもよい。塗料の吐出圧力は、例えば0.1L/分以上20L/分以下であってもよく、1.0L/分以上10L/分以下であってもよい。2.0L/分以上5.0L/分以下が望ましい。
【0060】
この方法では、二液型ポリウレア系遮熱性塗料を加熱して塗布することが好ましい。これにより、塗料を適切な粘度範囲にすることで、適切な施工性を確保することができ、また上記のような遮熱性塗膜の有利な効果を得やすくなる。
【0061】
塗料が加熱される温度としては、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であってもよく、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、又は60℃以下であってもよい。この加熱温度は、例えば30℃以上80℃以下、又は50℃以上70℃以下であってよい。
【0062】
《遮熱性舗装体》
本発明の遮熱舗装体は、基体及びその表面上の遮熱性塗膜を含む。遮熱性塗膜としては、上記の遮熱性塗料による塗膜を挙げることができる。基体としては、遮熱性塗料によって塗装される上記のような基体を挙げることができる。
【0063】
本発明の遮熱舗装体は、舗装体に、上記の塗装方法によって形成された下塗り層、骨材層、及び上塗り層をこの順で含むことができる。
【0064】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例0065】
《製造例》
充填材として着色顔料(クロモファインブラックA―1103、大日精化工業株式会社製やJR1000、テイカ株式会社製)が24質量%、ポリアミンとして変性アミン樹脂(エラスマー1000P、クミアイ化学工業株式会社製)が74質量%、及び遮熱材として中空セラミック粒子(3MグラスバブルスS60HS、スリーエムジャパン株式会社製)が2質量%となるように、実施例1のポリウレア系遮熱性塗料の主剤を調製した。
【0066】
また、充填材として着色顔料(クロモファインブラックA―1103、大日精化工業株式会社製やJR1000、テイカ株式会社製)が14質量%及び体質顔料(バリエースB-34、堺化学工業株式会社製)が8質量%、ポリアミンとして変性アミン樹脂(エラスマー1000P、クミアイ化学工業株式会社製)が76質量%、及び遮熱材として中空セラミック粒子(3MグラスバブルスS60HS、スリーエムジャパン株式会社製)が2質量%となるように、実施例2のポリウレア系遮熱性塗料の主剤を調製した。
【0067】
また、ポリイソシアネート(ミリオネートMTL、東ソー株式会社製)100質量%からなるポリウレア系遮熱性塗料の硬化剤を調製した。
【0068】
なお、以下の試験では、60℃で様々な粘度となる遮熱塗料を調製する代わりに、上記で得られた遮熱塗料の温度を変えることで粘度を変えた遮熱塗料を試験した。
【0069】
《試験》
〈粘度試験〉
上記の遮熱性塗料の主剤及び硬化剤について、加熱をしながら粘度の測定を行った。測定は、英弘精機株式会社から入手可能なブルックフィールドB型粘度計RV/DVEを用いて、スピンドルNo.5(RV-5)を6rpm及び60rpmの各条件で行った。その結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
〈スプレー塗装試験〉
上記のように得られた実施例2の遮熱性塗料の主剤及び硬化剤を1:1の重量比で、電気駆動式2液混合型エアレス塗装機(Graco社製、リアクターE-XP2)を使用して各温度に加熱しながら、スプレー塗装した。ここで、この塗装機の吐出圧力を5~10MPaとし、吐出量を3~4L/分とした。施工性及び仕上りの評価は、5人の職人がそれぞれ評価を行って、その総意に基づいて、従来品と同様であった場合には◎、従来品よりわずかに劣っていたが使用可能である範囲である場合を○、従来品より劣っており使用に適さない場合を×とした。評価結果を表2に示す。なお、施工性とは、スプレーによるミストの拡散度、ノズルから出た塗料が塗装面に拡がる面積等から評価しており、仕上がりについては、均質に塗装できたかを評価した。
【0072】
〈垂れ試験〉
上記のように得られた実施例2の遮熱性塗料の主剤及び硬化剤をサグテスターの試験板に加熱しながら塗装をした。そして、隙間250μmから475μmのサグテスターを使用して、試験板の角度を45°にして、各温度で塗装した遮熱性塗料の垂れ具合を観察した。その結果の一部を、
図1に示す。垂れ具合が大きい場合を×、垂れ具合が小さい場合を○、垂れ具合がない場合を◎として評価した。評価結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
上記の結果からも分かるように、スプレー塗装試験については粘度が低いほど(すなわち、温度が高いほど)施工性及び仕上がりについて良好な結果が得られる傾向にあったものの、粘度が低ければ垂れ試験において結果が悪化した。これは、従来技術のポリウレア系塗料では、塗料の垂れ下がりが問題となっていたことを示唆している。垂れ試験については、粘度が高いと垂れないが、約350mPa・sより高いと垂れが発生しにくく、約450mPa・sより高いと垂れが発生しないことが分かった。
ポリアミン、遮熱材、及び充填材を含む主剤、並びにポリイソシアネートを含む硬化剤を具備する二液型ポリウレア系遮熱性塗料であって、60℃でB型粘度計を用いて6rpmで測定した前記主剤の粘度が、350mPa・s以上1000mPa・s以下であり、かつ前記主剤に含まれる前記遮熱材と前記充填材の合計の含有量が、35質量%以下である、二液型ポリウレア系遮熱性塗料。
二液型ポリウレア系遮熱性塗料を50℃~70℃の温度に加熱して基体に塗装することを含む塗装方法であって、前記二液型ポリウレア系遮熱性塗料は、請求項1~3のいずれか一項に記載の遮熱性塗料である、塗装方法。