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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110791
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】取付構造及び取付対象物
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20230802BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F16B5/02 U
B62D37/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012458
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晶子
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA02
3J001GA03
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA10
3J001KA21
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】取付対象物を取付先に取り付けた取付構造の耐荷重をより高くする。
【解決手段】取付構造60は、取付対象物(リアスポイラ20)を取付先(車体30)に取り付けるための取付構造である。取付構造60は、リアスポイラ20を車体30に固定部材(締結部材40)により取り付けるための取付部材10を備え、締結部材40は、リアスポイラ20側の第1固定部材(ナット部材41)と、ナット部材41に係合可能である車体30側の第2固定部材(ボルト部材42)と、を備え、取付部材10は、ナット部材41が設けられた基部11を備え、リアスポイラ20は、取付部材10の基部11が固定される固定部基部51と、固定部基部51に基部11より小さく形成され、かつ、ナット部材41が挿通可能である固定部開口部52と、を備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物を取付先に取り付けるための取付構造であって、
前記取付構造は、前記取付対象物を前記取付先に固定部材により取り付けるための取付部材を備え、
前記固定部材は、前記取付対象物側の第1固定部材と、前記第1固定部材に係合可能である前記取付先側の第2固定部材と、を備え、
前記取付部材は、前記第1固定部材が設けられた基部を備え、
前記取付対象物は、前記取付部材の前記基部が固定される固定部基部と、前記固定部基部に前記基部より小さく形成され、かつ、前記第1固定部材が挿通可能である固定部開口部と、を備えたことを特徴とする取付構造。
【請求項2】
前記固定部開口部は、対称な形状であることを特徴とする請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記固定部基部及び前記固定部開口部は、前記取付対象物の長手方向中央部に配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記取付部材は、前記基部に接続して設けられ、前記取付対象物に接触可能であるとともにその接触部にて前記取付部材に加わる力を受ける壁部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の取付構造。
【請求項5】
前記取付対象物は、前記固定部開口部を有する前記固定部基部と、前記壁部を固定可能である固定部壁部と、を備え、かつ、前記取付部材を遊びを持たせて収容可能である取付部材収容部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の取付構造。
【請求項6】
取付先に固定部材により取り付けられる取付対象物であって、
前記取付対象物は、前記取付先に前記固定部材により取り付けるための取付部材を備え、
前記固定部材は、前記取付対象物側の第1固定部材と、前記第1固定部材に係合可能である前記取付先側の第2固定部材と、を備え、
前記取付部材は、前記第1固定部材が設けられた基部を備え、
前記取付対象物は、前記取付部材の前記基部が固定される固定部基部と、前記固定部基部に前記基部より小さく形成され、かつ、前記第1固定部材が挿通可能である固定部開口部と、を備えたことを特徴とする取付対象物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付構造及び取付対象物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取付構造として、特許文献1には、車体11の後部14に設けられ、車幅方向に延びる車両用スポイラー20が開示されている。車両用スポイラー20は、外観部品である樹脂性の外表部材22と、外表部材22を補強する金属性の補強部材23とを備えている。補強部材23は、車体11の後部14から車体後方向に延出した補強体31を備えている。外表部材22は、補強体31の上方で車幅方向に延びるアッパ部材32と、補強体31の下方で車幅方向に延びるロア部材33とを備えている。アッパ部材32及びロア部材33は、中空状の閉断面34内で補強体31に結合される。補強部材23、アッパ部材32及びロア部材33は、左右の連結部52,52の間に、互いに結合される結合部64を備えている。結合部64は、補強体31にロア部材33を直接結合する第1の結合部65と、補強体31を挟んでアッパ部材32とロア部材33とを結合する第2の結合部66とから構成されている。
【0003】
第2の結合部66は、アッパ部材32にナット保持部84が形成され、補強部材23の補強体31に補強体側孔85が形成され、ロア部材33にロア部材側孔86が形成されている。ナット保持部84(樹脂製)は、アッパ部材32の下面32aに設けられる台座部91と、この台座部91に設けられ、車幅方向に開口した嵌合溝(U字溝)92とからなる。嵌め込みナット87は、金属で形成され、ナット保持部84の嵌合溝(U字溝)92に嵌め込む嵌合部93と、締結ねじ89をねじ込むねじ孔94が形成されている。そして、ナット保持部84に嵌め込みナット87を嵌め込み、この嵌め込みナット87に補強部材23、ロア部材33をこの順で当て、ロア部材33側からロア部材側孔86及び補強体側孔85に締結ねじ89をねじ込むことにより、アッパ部材32、補強部材23及びロア部材33を締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/039242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されている取付構造において、車両用スポイラー20の取付剛性を高めることができるものの、ナット保持部84にはナット87を挿通するための開口部が設けられており、耐荷重が比較的低くなっているので、車両用スポイラー20に比較的大きな力が作用した場合には、前記開口部に応力が集中しその周辺ひいてはナット保持部84が変形するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、取付対象物を取付先に取り付けた取付構造の耐荷重をより高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る取付構造は、取付対象物を取付先に取り付けるための取付構造であって、前記取付構造は、前記取付対象物を前記取付先に固定部材により取り付けるための取付部材を備え、前記固定部材は、前記取付対象物側の第1固定部材と、前記第1固定部材に係合可能である前記取付先側の第2固定部材と、を備え、前記取付部材は、前記第1固定部材が設けられた基部を備え、前記取付対象物は、前記取付部材の前記基部が固定される固定部基部と、前記固定部基部に前記基部より小さく形成され、かつ、前記第1固定部材が挿通可能である固定部開口部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明に係る取付構造によれば、第1固定部材が設けられた取付部材の基部を固定部基部に固定した取付対象物を、固定部基部の固定部開口部を挿通した第1固定部材に第2固定部材を締結することによって、取付先に取り付けることが可能となる。このとき、基部は、固定部開口部より大きいので、取付対象物の固定部基部の固定部開口部周縁部を覆うように強固に固定される。よって、取付対象物の固定用の固定部開口部周縁部の剛性を高めることが可能となる。その結果、取付対象物を取付先に取り付けた取付構造の耐荷重をより高くすることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る取付構造においては、前記固定部開口部は、対称な形状であることが好ましい。これによれば、取付対象物に力が作用した場合に、固定部開口部は対称な形状であるため、固定部開口部周縁全体に均一に応力をかけることとなり、一部に応力が集中するのを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る取付構造においては、前記固定部基部及び前記固定部開口部は、前記取付対象物の長手方向中央部に配置されることが好ましい。これによれば、取付対象物が細長い形状であっても、取付箇所の耐荷重は比較的高いため、取付箇所をできるだけ少なく抑制することが可能となり、その結果、取付構造の低コスト化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る取付構造においては、前記取付部材は、前記基部に接続して設けられ、前記取付対象物に接触可能であるとともにその接触部にて前記取付部材に加わる力を受ける壁部をさらに備えることが好ましい。これによれば、取付部材に加わる力を基部だけでなく壁部でも受けること、すなわち加わる力を複数の場所(受ける面積を増大して)で分散して受けることが可能となり、耐荷重をさらに高くすることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る取付構造においては、前記取付対象物は、前記固定部開口部を有する前記固定部基部と、前記壁部を固定可能である固定部壁部と、を備え、かつ、前記取付部材を遊びを持たせて収容可能である取付部材収容部を備えることが好ましい。これによれば、取付対象物と取付先との熱収縮差が異なる場合であっても、その熱収縮差を吸収しつつ耐荷重を高く維持することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る取付対象物は、取付先に固定部材により取り付けられる取付対象物であって、前記取付対象物は、前記取付先に前記固定部材により取り付けるための取付部材を備え、前記固定部材は、前記取付対象物側の第1固定部材と、前記第1固定部材に係合可能である前記取付先側の第2固定部材と、を備え、前記取付部材は、前記第1固定部材が設けられた基部を備え、前記取付対象物は、前記取付部材の前記基部が固定される固定部基部と、前記固定部基部に前記基部より小さく形成され、かつ、前記第1固定部材が挿通可能である固定部開口部と、を備えたことを特徴とする。この発明に係る取付対象物によっても、上述した取付構造と同様な作用・効果を得ることが可能となる。
【0014】
この発明によれば、取付対象物を取付先に取り付けた取付構造の耐荷重をより高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による取付構造60が適用された車体30の一実施形態を示す後方斜視図である。
図2図1にて細い実線で囲んだリアスポイラ20の一部分を示す部分拡大斜視図である。
図3A図1に示す3A-3A線に沿ったリアスポイラ20を示す断面図である。
図3B図3Aに示す断面図の一部分(取付部材10、ナット部材41及び取付部材固定部23を含む)を示す部分拡大断面図である。
図4図3A及び図3Bに示す取付部材10を示す外観斜視図である。
図5図3A及び図3Bに示す取付部材固定部23及び取付部材10の取付箇所を示すロア部材22の平面図である。
図6A】変形例に係る締結部材140が適用されたリアスポイラ20を示す断面図である。
図6B図6Aに示す断面図の一部分(取付部材10、締結部材140及び取付部材固定部23を含む)を示す部分拡大断面図である。
図7A】変形例に係る取付部材収容部24及び取付部材10の取付箇所を示すロア部材22の平面図である。
図7B図7に示す取付部材収容部24及び取付部材10を示すロア部材22の部分拡大下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による取付構造及び取付対象物の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0017】
取付構造60は、取付対象物であるリアスポイラ20を取付先である車体30に取り付けるための取付構造である。取付構造60は、リアスポイラ20(取付対象物)、車体30(取付先)、締結部材40(固定部材)、及び、取付部材10を備えている。
【0018】
取付部材10は、取付対象物であるリアスポイラ20を取付先である車体30に固定部材である締結部材40により取り付けるための部材である。図1に示すように、リアスポイラ20は、車体30のルーフ部31に連なるバックドア32の上部に取り付けられ、ルーフ部31の後方に位置するとともにバックドア32から後方へ延びるように設けられている。リアスポイラ20は、バックドア32の上部の左右幅と略同サイズの横長形状に形成され、車両前後方向の幅が左右幅と比べて短い細長い形状に形成されている。
【0019】
尚、取付対象物は、リアスポイラ20に限定されず、フロントスポイラなど自動車用外装部材や、自動車用内装部材などの自動車用部材であることが好ましい。取付対象物は、合成樹脂材に限定されず、炭素繊維強化プラスチックなどの複合材を採用してもよい。また、取付先は、取付対象物が自動車用部材である場合には、車体であるが、これに限定されず、プリンタ、パソコン、テレビなどの電化製品の本体を採用してもよい。また、取付部材10は、自動車用部材を車体30に取り付けるための自動車用取付部材であることが好ましい。また、固定部材は、締結部材40に限定されず、リベットや、互いに係合する凹凸を有する係合部材を採用してもよい。
【0020】
リアスポイラ20は、図3図4に示すように、合成樹脂製のアッパ部材21と合成樹脂製のロア部材22とを備えている。アッパ部材21とロア部材22とは、例えば振動溶着により固定されている。ロア部材22には、取付部材10が固定される取付部材固定部23が一体的に形成されている。取付部材固定部23は、ロア部材22の外側に向けて突出して設けられている。取付部材固定部23の内側に取付部材10が載置され、取付部材10に固定されたナット部材41の筒状本体41aが固定部開口部52に挿通されており、ナット部材41にバックドア32側(車体30側)からボルト部材42が締結されることにより、リアスポイラ20がバックドア32に取り付けられている。尚、アッパ部材21とロア部材22とは、振動溶着以外の固定方法、例えば接着剤やねじ止めにより固定されるようにしてもよい。
【0021】
取付部材10は、図3図4に示すように、基部11、開口部12、保持部13、及び壁部15を備えている。取付部材10は、金属材(鉄材、アルミ材など)で平坦な頂上部を有するドーム状(以下、台座状と称する場合がある。)に形成されている。基部11は、取付部材10の平坦な頂上部を形成しており、壁部15が側面部を形成している。
【0022】
基部11は、方形状かつ板状に形成されており、対称な形状である円形状の開口部12を有する。開口部12は、前後方向(基部11の厚み方向)に沿って貫通している。開口部12の開口周縁部12aには、ナット部材41(固定部材)の被保持部41c(後述する。図3B参照)を保持する保持部13が形成されている。開口部12の開口周縁部12a(保持部13)の後端面にナット部材41の被保持部41cの前端面が接触して固定されることにより、ナット部材41は基部11すなわち取付部材10に固定される。尚、ナット部材41は、溶接などにより基部11に結合されている。また、開口部12は、円形状に限定されず、対称な形状であれば他の形状(例えば楕円形状)であってもよい。
【0023】
基部11は、ロア部材22の取付部材固定部23の固定部基部51に接触して固定される。このとき、基部11すなわち取付部材10は、ボルト部材42をナット部材41(固定部材)に締結することにより、ロア部材22(リアスポイラ20(取付対象物))に固定される。
【0024】
壁部15は、基部11に接続して設けられ、リアスポイラ20の取付部材固定部23内側に接触可能であるとともにその接触部にて取付部材10に加わる力を受ける。壁部15は、図4に示すように、上壁15a、下壁15b、右壁15c、及び左壁15dを備えている。上壁15aは、基部11の上辺部に接続されている。下壁15bは、基部11の下辺部に接続されている。右壁15cは、基部11の右辺部に接続され、かつ、上辺部が上壁15aの右辺部に接続されるとともに下辺部が下壁15bの右辺部に接続されている。左壁15dは、基部11の左辺部に接続され、かつ、上辺部が上壁15aの左辺部に接続されるとともに下辺部が下壁15bの左辺部に接続されている。
【0025】
下壁15b、右壁15c及び左壁15dは、基部11に対して第1所定角度(例えば90度)をなすように設けられている。尚、第1所定角度は、90度以上であり180度より小さい角度であって、取付部材10の平面視に係る輪郭ができるだけ基部11の外郭と同サイズとなる角度に設定されている。これによれば、取付部材10の小型化を図ることが可能となる。また、取付部材10の高剛性化を図ることも可能となる。
【0026】
上壁15aは、基部11に対して第2所定角度(例えば90度より大きく180度より小さい角度)をなすように設けられている。第2所定角度は、取付部材固定部23の形状がバックドア32の形状に応じた最適な形状となるように設定されるのが好ましい。例えば、取付部材固定部23の固定部壁部55の上壁55aは、バックドア32の形状に沿ってほぼ平坦であるので、基部11の水平方向(第2所定角度が180度)に沿って延長するように形成されている。これによれば、取付部材固定部23の設置場所、ロア部材22の形状に応じた最適な形状となる取付部材10を提供することが可能となる。尚、上壁15aは、段付き板状に形成されており、段部15a1の内壁面にフランジ部41bの外側端部(角部)が接触することにより、ナット部材41の回転を規制することが可能となる。
【0027】
尚、上壁15a、下壁15b、右壁15c及び左壁15dの形状は、本実施形態の形状に限定されず、取付部材固定部23の設置場所、ロア部材22の形状に応じた最適な形状となるように自由に設定することができる。
【0028】
取付部材固定部23は、図3図4に示すように、その内部に取付部材10を収容し固定するためにリアスポイラ20の所定箇所に形成されている。所定箇所は、リアスポイラ20を車体30に固定するために必要な場所に1または複数設けられている。本実施形態では、図5に示すように、取付部材固定部23は、ロア部材22に複数(3個)設けられている。取付部材固定部23(すなわち、固定部基部51及び固定部開口部52)のうち少なくとも一つは、ロア部材22の長手方向中央部に配置されるのが好ましい。他の取付部材固定部23は、ロア部材22の長手方向左右両端部に配置されている。尚、左側または右側に設けられた他の取付部材固定部23は、等間隔に配置されるのが好ましい。
【0029】
また、取付部材固定部23をロア部材22の長手方向中央部に配置する場合には、ロア部材22の長手方向左右両端部に配置される他の取付部材固定部は、従来のような(特許文献1に開示されている)ナット保持部84にナット87を挿通するための車幅方向に開口した嵌合溝(U字溝)92を有する開口部(樹脂と金属の熱収縮差を吸収できる遊びを持たせた構造である)を備えるようにしてもよい。このように、中央部の取付部材固定部23が比較的大きい荷重を受けることができ、他の取付部材固定部は従来通りの構造にて荷重(比較的小さい荷重)を受けることが可能となるので、取付対象物を取付先に締結するための締結点数(締結箇所)を低減することが可能となり、また、簡便な取付構造にて確実に取り付けることが可能となる。
【0030】
取付部材固定部23は、取付部材10の形状に応じて形成されるのが好ましく、本実施形態では、台座状の凹部となるように形成されている。取付部材固定部23は、主として図2に示すように、基部11に対応して形成され基部11に接触して保持する固定部基部51、及び、壁部15に対応して形成され壁部15に接触して保持する固定部壁部55を備えている。取付部材固定部23は、固定部開口部52をさらに備えている。
【0031】
固定部基部51は、基部11と同様に、方形状かつ板状に形成されており、楕円形状の固定部開口部52を有する。固定部開口部52は、固定部基部51に基部11より小さく形成され、かつ、ナット部材41の筒状本体41aを挿通可能に形成されている。固定部開口部52は、対称な形状であることが好ましい。固定部基部51には、固定部開口部52に開口部12を合わせて基部11が重ねて設置される。尚、固定部開口部52は、楕円形状に限定されず、筒状本体41aの外径より大きい形状であれば円形状でもよく、対称な形状であれば他の形状(例えば円形状)であってもよい。
【0032】
固定部壁部55は、上壁55a、下壁55b、右壁55c、及び左壁55dを備えている。上壁55aは、固定部基部51の上辺部に接続されている。下壁55bは、固定部基部51の下辺部に接続されている。右壁55cは、固定部基部51の右辺部に接続され、かつ、上辺部が上壁55aの右辺部に接続されるとともに下辺部が下壁55bの右辺部に接続されている。左壁55dは、固定部基部51の左辺部に接続され、かつ、上辺部が上壁55aの左辺部に接続されるとともに下辺部が下壁55bの左辺部に接続されている。
【0033】
固定部壁部55の上壁55a、下壁55b、右壁55c、及び左壁55dは、壁部15の上壁15a、下壁15b、右壁15c、及び左壁15dにそれぞれ対応して設けられている。上壁55aの内壁面には、上壁15aが接触して固定され、下壁55bの内壁面には、下壁15bが接触して固定され、右壁55cの内壁面には、右壁15cが接触して固定され、左壁55dの内壁面には、左壁15dが接触して固定されている。
【0034】
締結部材40は、取付対象物を取付先に取り付けるための固定部材である。締結部材40は、図3A及び図3Bに示すように、第1固定部材であるナット部材41と、第2固定部材であるボルト部材42と、を備えている。ナット部材41は、取付対象物であるロア部材22側に設けられ、ボルト部材42は、ナット部材41に係合可能でありかつ取付先であるバックドア32側に設けられている。
【0035】
ナット部材41は、筒状本体41a、筒状本体41aの一端部(後端部)に同軸に設けられた方形状のフランジ部41b、及び、フランジ部41bの他端面(前端面)に形成された被保持部41c、を備えている。
【0036】
筒状本体41aの内周面には、ボルト部材42の雄ねじが螺合する雌ねじが形成されている。筒状本体41aの他端面(前端面)は、固定部基部51の前端面とほぼ同一面となるように設定されるのが好ましい。尚、筒状本体41aの他端面(前端面)は、固定部基部51の前端面より高くなるように設定されるようにしてもよい。また、ナット部材41は、筒状本体41aとフランジ部41bとを一体的に形成してもよく、筒状本体41aとフランジ部41bとをそれぞれ別部材で形成し、溶接等により結合して形成するようにしてもよい。
【0037】
フランジ部41bは、ナット部材41の回転を規制するために、取付部材10の壁部15のいずれかの内壁面(好ましくは、上壁15aの段部15a1または下壁15b)に接触可能な方形状に形成されている。具体的には、方形状のフランジ部41bの短辺(正方形の場合には一辺)の長さは、壁部15の上壁15aと下壁15bとの間隔より小さく、開口部12の上下方向幅より大きい値に設定されている。方形状のフランジ部41bの長辺(正方形の場合には対角線)の長さは、壁部15の上壁15aと下壁15bとの間隔より大きい値に設定されている。
【0038】
(取付対象物を取付先に取り付ける取付方法)
最初に、リアスポイラ20を組み立てる。まず、取付部材10をロア部材22(リアスポイラ20)の取付部材固定部23内に装着する。このとき、取付部材10の基部11は、開口部12を固定部開口部52に合わせるとともに、ナット部材41の筒状本体41aを固定部開口部52に挿入させて、ロア部材22の取付部材固定部23の固定部基部51に接触して載置される。尚、このとき、取付部材10は、両面テープなどにより取付部材固定部23に仮止めするとよい。
【0039】
次に、取付部材10を組み付けた(仮止めした)ロア部材22をアッパ部材21に、振動溶着により接着することにより、リアスポイラ20を組み立てる。尚、振動溶着は、ナット部材41の取付後に行うようにしたが、ナット部材41の取付前であっても取付部材10をロア部材22に仮に固定した後であれば行うことは可能である。
【0040】
そして、リアスポイラ20をバックドア32に取り付ける。リアスポイラ20を取付位置に位置し、ボルト部材42をナット部材41に締め付けて、リアスポイラ20をバックドア32に取り付ける。
【0041】
(変形例)
尚、上述した実施形態においては、ナット部材41を取付部材10に保持(固定)するようにしたが、図6A,6Bに示すように、ボルト部材142を取付部材10に保持(固定)するようにしてもよい。この場合、締結部材140は、ナット部材141(第2固定部材)とボルト部材142(第1固定部材)とを備えている。ボルト部材142は、筒状本体142a、筒状本体142aの一端部(後端部)に同軸に設けられた方形状のフランジ部142b、フランジ部142bの他端面(前端面)に形成された被保持部142c、及び、筒状本体142aの他端面(前端部)に同軸に設けられかつナット部材141に螺合する雄ねじ部142d、を備えている。筒状本体142aの他端面(前端面)は、固定部基部51の前端面とほぼ同一面となるように設定されている。フランジ部142bは、上述したフランジ部41bと同様に形成されており、被保持部142cは、上述した被保持部41cと同様に形成されている。
【0042】
また、上述した取付部材10に固定用爪、取付用孔を設けてもよい。この場合、固定用爪は、ロア部材22に形成された凹部に係合され、取付部材10のロア部材22への位置決めを容易にするとともに、簡便に取り付けることを可能とする。取付用孔は、リベットなどを挿通可能であり、リベットをロア部材22に装着することにより、取付部材10をロア部材22へ簡便に取り付けることが可能となる。尚、固定用爪の代わりに固定用孔を設けてもよい。固定用孔は、ロア部材22に形成された凸部に係合され、取付部材10のロア部材22への位置決めを容易にするとともに、簡便に取り付けることを可能とする。
【0043】
また、上述した取付部材10においては、上壁15aを基部11に対して基部水平方向に沿って延ばして設け、下壁15bを基部11に対して垂直に設けるようにしたが、取付部材10の下壁15bを基部11に対して基部水平方向に沿って延ばして設けるようにしてもよい。この取付部材10は、ロア部材22の裏面が平坦である場合に有効である。
【0044】
また、上述した取付構造60においては、取付部材固定部23に代えて、取付部材10を遊びを持たせて収容可能である取付部材収容部24を備えるようにしてもよい。取付部材収容部24は、図7Aに示すように、ロア部材22に設けられ、固定部開口部152を有する固定部基部151と、壁部15を固定可能である固定部壁部155と、を備えている。図7Bに示すように、固定部基部151の左右幅は、基部11の左右幅より長くなるように設定されている。固定部開口部152は、ナット部材41の筒状本体41aが挿通可能、かつ、左右幅方向に沿って細長い長孔形状に形成されている。
【0045】
固定部壁部155は、図7Bに示すように、壁部15を常時固定(保持)する壁部である第1壁部56aと、当初、壁部15とは所定の距離をおいて配置される壁部である第2壁部56bを有している。固定部壁部155は、上述した固定部壁部55と同様に、上壁155a、下壁155b、右壁155c、及び左壁155dを備えている。上壁155a及び下壁155bは、それぞれ上壁15a及び下壁15bを常時保持する第1壁部56aである。右壁155c及び左壁155dは、当初、右壁15c及び左壁15dとは所定の距離をおいてそれぞれ配置される第2壁部56bである。
【0046】
第1壁部56aは、上壁15a及び下壁15bに常時保持(接触)されているので、取付部材10のリアスポイラ20に作用する比較的大きな力(特に上下方向に作用する力)を受けることが可能となり取付構造の耐荷重を高めることが可能となる。さらに、第2壁部56bが取付部材10を遊びを持たせて収納するように設定されるとともに固定部開口部152がナット部材41を長手方向に沿って移動するように設定されているので、取付部材10を取付部材収容部24内に取り付けた後に、取付部材10は取付部材収容部24内で移動可能である。よって、リアスポイラ20をバックドア32に取り付けた後に、両者の熱収縮差によって両者の車両幅方向の長さが異なったとしても、取付部材10に対してロア部材22が相対移動することが可能となる。その結果、リアスポイラ20(取付対象物)とバックドア32(取付先)との熱収縮が異なる場合であっても、その熱収縮差を吸収しつつ耐荷重を高く維持することが可能となる。
【0047】
(実施形態の作用・効果)
上述した実施形態に係る取付構造60は、取付対象物(リアスポイラ20)を取付先(車体30)に取り付けるための取付構造である。取付構造60は、リアスポイラ20を車体30に固定部材(締結部材40)により取り付けるための取付部材10を備え、締結部材40は、リアスポイラ20側の第1固定部材(ナット部材41)と、ナット部材41に係合可能である車体30側の第2固定部材(ボルト部材42)と、を備え、取付部材10は、ナット部材41が設けられた基部11を備え、リアスポイラ20は、取付部材10の基部11が固定される固定部基部51と、固定部基部51に基部11より小さく形成され、かつ、ナット部材41が挿通可能である固定部開口部52と、を備えている。
【0048】
本実施形態に係る取付構造60によれば、ナット部材41が設けられた取付部材10の基部11を固定部基部51に固定したリアスポイラ20を、固定部基部51の固定部開口部52を挿通したナット部材41にボルト部材42を締結することによって、車体30に取り付けることが可能となる。このとき、基部11は、固定部開口部52より大きいので、リアスポイラ20の固定部基部51の固定部開口部周縁部を覆うように強固に固定される。さらには、固定部開口部52を比較的小さく形成することが可能となり、固定部開口部52の一部に応力が集中するのを抑制することが可能となる。よって、リアスポイラ20の固定用の固定部開口部52周縁部の剛性を高めることが可能となる。その結果、リアスポイラ20を車体30に取り付けた取付構造60の耐荷重をより高くすることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る取付構造60においては、固定部開口部52は、対称な形状であることが好ましい。これによれば、リアスポイラ20に力が作用した場合に、固定部開口部52は対称な形状であるため、固定部開口部52周縁全体に均一に応力をかけることとなり、一部に応力が集中するのを抑制することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る取付構造60においては、固定部基部51及び固定部開口部52は、リアスポイラ20の長手方向中央部に配置されることが好ましい。これによれば、リアスポイラ20が細長い形状であっても、取付箇所の耐荷重は比較的高いため、取付箇所をできるだけ少なく抑制することが可能となり、その結果、取付構造60の低コスト化を図ることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る取付構造60においては、取付部材10は、基部11に接続して設けられ、リアスポイラ20に接触可能であるとともにその接触部にて取付部材10に加わる力を受ける壁部15をさらに備えることが好ましい。これによれば、取付部材10に加わる力を基部11だけでなく壁部15でも受けること、すなわち加わる力を複数の場所(受ける面積を増大して)で分散して受けることが可能となり、耐荷重をさらに高くすることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る取付構造60においては、リアスポイラ20は、固定部開口部152を有する固定部基部151と、壁部15を固定可能である固定部壁部155と、を備え、かつ、取付部材10を遊びを持たせて収容可能である取付部材収容部24を備えることが好ましい。これによれば、リアスポイラ20と車体30との熱収縮差が異なる場合であっても、その熱収縮差を吸収しつつ耐荷重を高く維持することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係るリアスポイラ20は、車体30に締結部材40により取り付けられるリアスポイラ20であって、リアスポイラ20は、車体30に締結部材40により取り付けるための取付部材10を備え、締結部材40は、リアスポイラ20側のナット部材41と、ナット部材41に係合可能である車体30側のボルト部材42と、を備え、取付部材10は、ナット部材41が設けられた基部11を備え、リアスポイラ20は、取付部材10の基部11が固定される固定部基部51と、固定部基部51に基部11より小さく形成され、かつ、ナット部材41が挿通可能である固定部開口部52と、を備えたことを特徴とする。この発明に係るリアスポイラ20によっても、上述した取付構造60と同様な作用・効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10…取付部材、11…基部、12…開口部、13…保持部、15…壁部、20…リアスポイラ(取付対象物)、23…取付部材固定部、24…取付部材収容部、30…車体(取付先)、40…締結部材(固定部材)、41…ナット部材(第1固定部材)、141…ナット部材(第2固定部材)、42…ボルト部材(第2固定部材)、142…ボルト部材(第1固定部材)、51,151…固定部基部、52,152…固定部開口部、55,155…固定部壁部、60…取付構造。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B