(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110816
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】貯湯式給湯システム接続用配管
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20220101AFI20230802BHJP
F24H 9/13 20220101ALI20230802BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F24H1/18 H
F24H9/13 Z
F16L1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022086988
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】横山 康晴
(72)【発明者】
【氏名】久家 毅
【テーマコード(参考)】
3L037
3L122
【Fターム(参考)】
3L037DA01
3L037DB01
3L037DB08
3L122AA02
3L122AA23
3L122AB23
(57)【要約】
【課題】配管の寿命を長期化すると共にコストを抑えることができる貯湯式給湯システム接続用配管を提供する。
【解決手段】貯湯式給湯システム接続用配管は、熱源機20と貯湯タンク10とを接続する配管であって、熱源機20からの湯を貯湯タンク10へ供給する高温側配管24、40a、13と、貯湯タンク10からの湯を熱源機20へ供給する低温側配管14、40bとを備える。高温側配管は継手により連結された複数の配管を有し、複数の配管の少なくともいずれか1つの肉厚は、低温側配管の肉厚よりも厚い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯式給湯システムの熱源機と貯湯タンクとを接続する配管であって、該熱源機からの湯を該貯湯タンクへ供給する高温側配管と、該貯湯タンクからの湯を該熱源機へ供給する低温側配管とを備え、
前記高温側配管は継手により連結された複数の配管を有し、該複数の配管の少なくともいずれか1つの肉厚は、前記低温側配管の肉厚よりも厚い、貯湯式給湯システム接続用配管。
【請求項2】
前記複数の配管のうち、前記熱源機に近い配管の肉厚は、該熱源機から遠い配管の肉厚よりも厚い、請求項1に記載の貯湯式給湯システム接続用配管。
【請求項3】
前記複数の配管のうち、隠蔽部に配置された配管の肉厚は、隠蔽部以外に配置された配管の肉厚よりも厚い、請求項1に記載の貯湯式給湯システム接続用配管。
【請求項4】
前記高温側配管及び前記低温側配管は架橋ポリエチレン管である、請求項1乃至3のいずれかに記載の貯湯式給湯システム接続用配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク及び熱源機を有する貯湯式給湯システムの接続用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯システムにあっては、貯湯タンク内に熱源機で加温された湯を貯え、該貯湯タンクから湯の需要箇所、例えば浴室、キッチン、床暖房装置等に給湯が行われる(特許文献1)。
【0003】
貯湯タンクと熱源機との間には、湯が循環するように配管が設けられており、貯湯タンク内の湯の温度が所定の温度に維持される。熱源機としては、ヒートポンプ、ボイラなどが用いられる。
【0004】
上記の配管としては、金属配管のほか、架橋ポリエチレン管などの樹脂配管も用いられている(特許文献2,3)。
【0005】
曲げ加工された架橋ポリエチレン管を製作する方法として、未架橋パイプを加熱して曲げ加工した後、架橋する方法が特許文献4に記載されている。
【0006】
樹脂配管接続用の継手として、挿抜可能な雌カプラ及び雄カプラと、両カプラを挿入(結合)状態に保持するための保持部材とを備えたワンタッチ継手がある(特許文献5及び前記特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-162163号公報
【特許文献2】特開2010-156361号公報
【特許文献3】特開2010-144866号公報
【特許文献4】特開2017-87623号公報
【特許文献5】特許第4973860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貯湯タンクと熱源機との間で湯を循環させる配管として、金属成分が溶出しない樹脂配管を利用することが多い。配管には、熱源機により加熱された高温水を貯湯タンクへ供給する高温側配管と、貯湯タンクで温度低下した低温水を熱源機へ供給する低温側配管とがある。従来の貯湯式給湯システムでは、低温側配管と高温側配管とで同スペックの樹脂配管を使用していたため、低温側配管よりも高温側配管の方が先に劣化してしまうという問題があった。
【0009】
配管は、壁内や床下などの隠蔽部に配置されることがあり、このような隠蔽部の配管は交換が困難なため、配管の長寿命化が求められている。しかし、単に樹脂配管の肉厚を厚くするだけでは、低温側配管が過剰スペックとなりコストがかかっていた。
【0010】
本発明は、配管の寿命を長期化すると共にコストを抑えることができる貯湯式給湯システム接続用配管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の貯湯式給湯システム接続用配管は、貯湯式給湯システムの熱源機と貯湯タンクとを接続する配管であって、該配管は樹脂製の複数の曲成配管を有し、前記複数の曲成配管は、それぞれ、少なくとも1ヶ所において湾曲しており、湾曲部及び該湾曲部に連なる複数の直管部が同一平面上に位置しており、曲成配管同士が異なる平面に位置するように連結されている。
【0012】
本発明の第一態様では、前記複数の配管のうち、前記熱源機に近い配管の肉厚は、該熱源機から遠い配管の肉厚よりも厚い(第二態様)。
【0013】
本発明の第一態様では、前記複数の配管のうち、隠蔽部に配置された配管の肉厚は、隠蔽部以外に配置された配管の肉厚よりも厚い(第三態様)。
【0014】
本発明の第一乃至第三態様では、前記高温側配管及び前記低温側配管は架橋ポリエチレン管である(第四態様)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管の寿命を長期化すると共にコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る貯湯式給湯システムの概略図である。
【
図3】実施の形態に係る貯湯式給湯システムの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る貯湯式給湯システムの概略図である。この貯湯式給湯システムは、貯湯タンク10と、熱源機(この実施の形態ではヒートポンプ装置)20とを備えている。貯湯タンク10は、熱源機20からの湯の受入口11と、熱源機への湯の送出口12とを有する。
【0019】
受入口11及び送出口12には、それぞれ所定形状に曲げ加工された曲成配管13,14の一端が接続されている。曲成配管13,14は、樹脂配管、好ましくは架橋ポリエチレン管よりなる。
【0020】
曲成配管13,14の他端には、ワンタッチ継手の一半側を構成する雌型カプラ15,16が設けられている。
【0021】
熱源機20は、貯湯タンク10からの湯の受入口21と、貯湯タンク10への湯の送出口22とを有する。
【0022】
受入口21及び送出口22には、それぞれ所定形状に曲げ加工された曲成配管13,14の一端が接続されている。曲成配管23,24は、樹脂配管、好ましくは架橋ポリエチレン管よりなる。
【0023】
曲成配管23,24の他端には、ワンタッチ継手の一半側を構成する雌型カプラ25,26が設けられている。
【0024】
なお、曲成配管13,14,23,24の前記一端側は、ユニオンナット付き接続継手等の継手30を介して、受入口11,21又は送出口12,22に接続されている。
【0025】
曲成配管13,14,23,24は、予め工場にて所定形状に曲げ加工されている。この曲げ加工方法は、前記特許文献4に記載の方法が好適である。
【0026】
曲成配管13,14は、受入口11,21から下方に向い、次いで水平方向に向い、その後、上方に向い、さらにその後、水平方向に向かうように3ヶ所の湾曲箇所を有している。曲成配管23,24も同様に3ヶ所の湾曲箇所を有している。ただし、曲成配管13,14,23,24の形状は、現場の状況に応じて適宜決定される。
【0027】
曲成配管13,24同士及び曲成配管14,23同士が、曲げ加工されていない樹脂配管40によって接続されている。樹脂配管40は、好ましくは架橋ポリエチレン管よりなる。
【0028】
樹脂配管40の長さは、貯湯タンク10と熱源機20との距離に合わせて決定される。この距離が小さいときには、
図2(a)のように直管形状の荷姿にて現場に搬入される。距離が大きいときには、長尺の直管状のものが
図2(b)のように1重又は2重以上に巻かれた荷姿にて現場に搬入される。
【0029】
樹脂配管40の両端には、それぞれワンタッチ継手の他半側を構成する雄型カプラ41,42が取り付けられている。雄型カプラ41を雌型カプラ15又は16に差し込み、雄型カプラ42を雌型カプラ26又は25に差し込み、抜け防止用クリップ(図示略)等で雄型カプラと雌型カプラ同士を係合することにより、樹脂配管13、曲成配管24同士、及び樹脂配管14、曲成配管23同士が接続される。
【0030】
貯湯タンク10内の湯の温度が低下したときには、送出口12、曲成配管14、樹脂配管40(40b)、曲成配管23、受入口21を介して熱源機20へ湯が送られ、熱源機20で加熱された湯が送出口22、曲成配管24、樹脂配管40(40a)及び曲成配管13を介して貯湯タンク10へ送られ、湯が循環する。
【0031】
貯湯タンク10内の湯が浴槽等の湯の需要箇所に供給される。貯湯タンク10内の水位が低下したときには、水道水等が給水ライン(図示略)を介して供給される。
【0032】
水道水等の導入によって、湯の温度が低下した場合、上記のように熱源機20によって加温が行われる。
【0033】
図1では、曲成配管13,14,23,24は3ヶ所で曲げ加工されているが、1ヶ所、2ヶ所又は4ヶ所以上で曲げ加工されてもよい。
図3は1ヶ所で曲げ加工された曲成配管50の配置例を示している。この曲成配管50の一端は、接続継手51によって熱源機20の受入口21又は送出口22に接続されている。曲成配管50の他端には、雌型カプラ52が取り付けられている。この雌型カプラ52はフランジ部52fを備えている。
【0034】
曲成配管50の湾曲部50Rよりも接続継手51側は熱源機20に沿って略水平に後方へ向って延在している。曲成配管50の湾曲部50Rよりも雌型カプラ52側は、建物の壁Wに沿って略水平に延在している。
【0035】
上記実施の形態では、樹脂配管40に雄型カプラ41,42が設けられ、曲成配管13,14,23,24に雌型カプラ15,16,25,26が設けられているが、樹脂配管40に雌型カプラを設け、曲成配管13,14,23,24に雄型カプラを設けてもよい。
【0036】
樹脂配管40の一端側に雄型カプラ、他端側に雌型カプラを設け、曲成配管13,14に雌型カプラを設け、曲成配管23,24に雄型カプラを設けてもよい。曲成配管13,14に雄型カプラを設け、曲成配管23,24に雌型カプラを設けてもよい。
【0037】
雄型カプラ及び雌型カプラよりなる着脱(挿抜)可能なワンタッチ継手としては、各種のものを用いることができる。雄型カプラの一例を
図4に示す。
【0038】
この雄型カプラ60は、先端側が雌型カプラへの挿入部61となっており、該挿入部61の外周面にOリング62,63が設けられている。
【0039】
挿入部61に続いて、第1フランジ64、円筒部65、第2フランジ66、円筒部67、第3フランジ68が設けられている。第3フランジ68よりも後端側が樹脂配管40又は50が嵌め込まれるノズル部69となっている。ノズル部69の外周面はタケノコ状の段差部が設けられており、樹脂配管40又は50を嵌め込み易く、且つ樹脂配管40又は50が抜け出しにくいものとなっている。
【0040】
第2フランジ64からは先端側に向ってラッチ片70が延設されている。ラッチ片70は、第2フランジ64の周方向2ヶ所から挿入部61の軸心線と平行方向に延設されている。ラッチ片70の先端に爪部70aが設けられているが3ヶ所以上に設けられてもよい。
【0041】
挿入部61を雌型カプラ52に挿入すると、ラッチ片70の先端側が雌型カプラ52のフランジ部52fを乗り越え、爪部70aがフランジ部52fの外周縁に係合する。これにより、雄型カプラ60と雌型カプラ52とが不抜状態に保持される。
【0042】
雄型カプラ60を雌型カプラ52から外すときには、ラッチ片70aを起こすように変形させ、爪部70aをフランジ部52fから離脱させ、雄型カプラ60を雌型カプラ52から抜き出す。
【0043】
ワンタッチ継手としても上記以外のものを用いることができる。例えば、特許文献3の
図4に示されるクリップ金具を用いてもよい。
【0044】
上述したように、熱源機20からは加熱された高温の湯が送出される。そのため、本実施形態では、高温の湯が流れる高温側配管(曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管)の肉厚を、低温の湯が流れる低温側配管(曲成配管14、樹脂配管40b及び曲成配管23)の肉厚(以下、「通常肉厚」ともいう。)よりも厚くする。これにより、曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管13にかかる円周応力が小さくなり、寿命を長期化することができる。
【0045】
また、低温の湯が流れる曲成配管14、樹脂配管40b及び曲成配管23は厚肉化せず通常肉厚とすることで、コストを抑えることができる。
【0046】
曲成配管14、樹脂配管40b及び曲成配管23は、肉厚(通常肉厚)が10mm以下、外径が35mm以下であることが好ましい。曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管13の肉厚は、通常肉厚の1.2倍以上が好ましい。
【0047】
上述したように、配管同士をワンタッチ継手で接続した場合、劣化した配管の交換は容易であるが、設置場所によっては交換作業が困難になる。例えば、樹脂配管40は、壁内、床下、天井内部などの隠蔽部に配置されることがある。従って、高温の湯が流れる曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管13のうち、交換作業が困難な隠蔽部に配置される樹脂配管40aのみ肉厚を通常肉厚より厚くして長寿命化し、交換作業が容易な場所に配置されている曲成配管24及び曲成配管13は通常肉厚としてもよい。
【0048】
曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管13のうち、熱源機20に近い曲成配管24を流れる湯の温度が最も高い。また、曲成配管24は、熱源機20内の銅管等の金属管から溶出される金属成分の吸収により、樹脂配管40a及び曲成配管13よりも劣化しやすい。そのため、曲成配管24のみ肉厚を通常肉厚より厚くし、樹脂配管40a及び曲成配管13は通常肉厚としてもよい。あるいはまた、樹脂配管40a及び曲成配管13の肉厚T1を通常肉厚T0よりも厚くし、曲成配管24の肉厚T2を樹脂配管40a及び曲成配管13の肉厚T1よりも厚くしてもよい(T2>T1>T0)。
【0049】
曲成配管24、樹脂配管40a及び曲成配管13のうち、熱源機20に最も近い曲成配管24及び隠蔽部に配置されて交換が困難な樹脂配管40aの肉厚を通常肉厚より厚くし、熱源機20から遠く交換が容易な曲成配管13は通常肉厚としてもよい。
【0050】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、熱源機はボイラであってもよい。また、曲成配管と受入口又は送出口との接続は、特許文献3などのように挿し込み式としてもよい。樹脂配管や継手部に断熱材が装着されていてもよい。
【0051】
曲げ加工されていない樹脂配管40を省略し、貯湯タンク10と熱源機20との間を、曲げ加工された複数の曲成配管のみで接続してもよい。あるいはまた、貯湯タンク10と熱源機20との間を、曲げ加工されていない樹脂配管のみで接続してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 貯湯タンク
20 熱源機
11,21 受入口
12,22 送出口
15,16,25,26 雌型カプラ
30 接続継手
40,50 樹脂配管
41,42 雄型カプラ
60 雄型カプラ
61 挿入部
62,63 Oリング
70 ラッチ片
70a 爪部