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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110825
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230802BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230802BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20230802BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20230802BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20230802BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20230802BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/461 Z
B01J39/07
B01J41/07
B01J49/53
B01J49/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120072
(22)【出願日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022011395
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】ル ユジュン
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 ゆうこ
【テーマコード(参考)】
4D025
4D061
【Fターム(参考)】
4D025AA02
4D025AA10
4D025AB02
4D025AB19
4D025BA10
4D025BA15
4D025BB09
4D025CA04
4D025CA10
4D025DA05
4D025DA06
4D025DA10
4D061DA02
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB04
4D061EB12
4D061EB19
4D061EB30
4D061FA08
(57)【要約】
【課題】軟水の電気伝導度から硬度成分の濃度をより正確に算出することが可能な軟水化装置を提供する。
【解決手段】軟水化装置1は、軟水化槽4と、中和槽5と、軟水検知部6と、取得部17と、校正部18と、算出部19とを備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを中和する。軟水検知部は、軟水化槽および中和槽を通過した軟水の電気伝導度を検知する。取得部は、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を取得する。校正部は、取得部で取得した、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部で得られた電気伝導度を校正し、第二電気伝導度を出力する。算出部は、校正部で出力された第二電気伝導度に基づいて軟水の硬度を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化処理する軟水化槽と、
前記軟水化槽の通過により生成された酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
前記中和槽の通過により生成された中和軟水の電気伝導度を検知する軟水検知部と、
前記原水中の前記硬度成分以外のイオンに対応する第一電気伝導度を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第一電気伝導度に基づいて前記軟水の電気伝導度を校正して第二電気伝導度を出力する校正部と、
前記第二電気伝導度に基づいて硬度成分情報を算出する算出部と、を備える軟水化装置。
【請求項2】
前記校正部は、
前記軟水の電気伝導度が、前記第一電気伝導度以上の場合には、前記軟水の電気伝導度と前記第一電気伝導度との差分に基づいて前記第二電気伝導度とする、請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記硬度成分情報は前記中和軟水の硬度成分濃度を含み、
前記算出部は、
前記軟水の電気伝導度が、前記第一電気伝導度未満の場合には、前記硬度成分濃度を0とする請求項1または請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記硬度成分情報を表示する表示部をさらに備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【請求項5】
酸性電解水とアルカリ性電解水を生成する電解槽と、
前記電解槽の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記算出部から出力される前記硬度成分情報に基づいて、前記硬度成分情報が基準値を超えた場合に、前記電解槽を稼働させる請求項1から4のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【請求項6】
前記原水の原水電気伝導度を測定する原水検知部をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【請求項7】
前記第一電気伝導度は、前記原水の水質によって予め定められた値である請求項1から5のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【請求項8】
硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化処理する軟水化槽と、
前記軟水化槽を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
前記中和槽の通過により生成された中和軟水の電気伝導度を検知する軟水検知部と、
軟水の電気伝導度が第一所定値に達するまでの第一期と軟水の電気伝導度が第一所定値に達した以降の第二期とを判定する判定部と、
前記軟水の電気伝導度に基づいて硬度成分情報を算出する算出部と、を備え、
前記判定部は、前記第二期の初期における軟水の電気伝導度を基準電気伝導度として記憶する記憶部を備える軟水化装置。
【請求項9】
前記硬度成分情報は前記中和軟水の硬度成分濃度を含み、
前記算出部は、
前記第一期には、前記硬度成分濃度を0とする請求項8に記載の軟水化装置。
【請求項10】
前記算出部は、
前記第二期には、前記軟水の電気伝導度と前記基準電気伝導度との差分に基づいて前記硬度成分濃度を算出する請求項8または請求項9に記載の軟水化装置。
【請求項11】
前記記憶部は、
前記中和軟水の硬度に対応する電気伝導度と前記中和軟水の前記軟水の電気伝導度と前記中和軟水中の硬度成分以外のイオン濃度である軟水対象イオン濃度を記憶し、
前記算出部は、
前記第一期における前記中和軟水中の硬度成分以外のイオンの濃度と電気伝導度の比率に対応する第一係数を算出する第一係数算出部と、
前記原水の通水量に応じた前記中和軟水中の前記軟水対象イオン濃度の変化速度に対応する第二係数を算出する第二係数算出部と、
前記原水中の前記硬度成分以外のイオンに対応する第三電気伝導度を算出する第三電気伝導度算出部と、を備える請求項8に記載の軟水化装置。
【請求項12】
前記第三電気伝導度算出部は、
前記第一係数と前記第二係数とに基づいて前記第三電気伝導度を算出し、
前記算出部は、
前記第一期には、前記軟水の電気伝導度と前記第三電気伝導度との差分に基づいて前記硬度成分濃度を算出する請求項11に記載の軟水化装置。
【請求項13】
前記算出部は、
前記第二期には、前記軟水の電気伝導度と前記基準電気伝導度との差分に基づいて前記硬度成分濃度を算出する請求項11または請求項12に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた軟水化装置では、食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端に水素イオンを有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-30973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような軟水化装置では、軟水化が適切に進行しているかを把握するために、軟水の硬度を検知することが求められる。硬度を検知するために、水の電気伝導度を測定することが考えられるが、従来の軟水化装置では、取り出される軟水中に硬度成分のほか、原水由来のナトリウムイオンや塩化物イオン等の硬度成分以外のイオンが含まれている。また、軟水化処理時に、硬度成分と硬度成分以外のイオンは、濃度変化の挙動が異なるため、同じ電気伝導度を示す軟水であっても、イオン濃度比が異なる場合がある。そのため、取り出される軟水の電気伝導度から軟水中の硬度を精度よく算出することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、軟水の電気伝導度から軟水の硬度をより正確に算出することが可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽と、軟水検知部と、取得部と、校正部と、算出部とを備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽の通過により生成された酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。軟水検知部は、中和槽の通過により生成された中和軟水の電気伝導度を検知する。取得部は、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を取得する。校正部は、取得部が取得した電気伝導度に基づいて、軟水の電気伝導度を校正し、第二電気伝導度を出力する。算出部は、第二電気伝導度に基づいて硬度成分情報を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軟水の電気伝導度から硬度成分の濃度をより正確に算出することが可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1及び2に係る軟水化装置の循環流路を示す構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1及び2に係る軟水化装置の動作時の状態を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置による軟水化時の電気伝導度変化を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置を示す概念図である。
図7図7は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置の樹脂再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置の動作時の状態を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置の制御部の各構成を示す機能ブロック図である。
図10図10は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置による軟水の電気伝導度変化を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置による軟水のイオン濃度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽と、原水検知部と、軟水検知部と、取得部と、校正部と、算出部と、表示部とを備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。原水検知部は、原水の電気伝導度を検知する。軟水検知部は、軟水化槽および中和槽を通過した軟水の電気伝導度を検知する。取得部は、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を取得する。校正部は、取得部が取得した、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部で得られた電気伝導度を校正し、第二電気伝導度を出力する。算出部は、校正部で出力された第二電気伝導度に基づいて軟水の硬度を算出する。表示部は、算出部により算出された軟水の硬度を通知する。そして、軟水化装置は、原水が、原水検知部、軟水化槽、中和槽、及び軟水検知部の順に流通するように構成されている。
【0010】
こうした構成によれば、原水検知部において原水の電気伝導度を取得し、取得部において原水の電気伝導度に一定の補正(所定値の乗算など)を行うことで、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得し、校正部において、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部で検知される軟水の電気伝導度を校正した電気伝導度(第二電気伝導度)を取得し、算出部において第二電気伝導度から軟水中の硬度成分を算出することができる。したがって、従来の軟水化装置と比較して、硬度成分とその他イオン成分が混在する硬水を流通する場合においても、硬水および硬水を流通することで得られる軟水の電気伝導度から、軟水中の硬度成分を算出することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る軟水化装置では、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する電解槽と、軟水化槽を流通した酸性電解水と中和槽を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽に供給する処理槽とをさらに備える構成としてもよい。こうした構成によれば、電解槽で生成される酸性電解水によって弱酸性陽イオン交換樹脂を再生することが可能となり、アルカリ性電解水によって弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生することが可能となる。そのため、軟水化装置のメンテナンス頻度を低減でき、長期にわたって使用可能な軟水化装置とすることができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0014】
<全体構成>
軟水化装置1は、外部から供給される硬度成分を含む原水から中性の軟水を生成する装置である。なお、原水とは、流入口2から装置内に導入された水(処理対象水)であり、例えば市水や井戸水である。原水は、硬度成分(例えばカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含む。
【0015】
具体的には、図1に示すように、軟水化装置1は、流入口2と、原水検知部3と、軟水化槽4と、中和槽5と、軟水検知部6と、取水口7と、再生装置8と、取得部17と、校正部18と、算出部19と、制御部20と、表示部21とを備えている。また、軟水化装置1は、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72)を備えており、詳細は後述する。
【0016】
流入口2は、原水の供給元及び流路30に接続されている。流入口2は、原水を装置内に導入する開口である。
【0017】
取水口7は、軟水化槽4及び中和槽5により処理された中性の軟水を装置外へ排出する開口である。軟水化装置1では、流入口2から流入する原水の圧力により、取水口7から軟水化処理後の軟水を取り出すことができる。
【0018】
流入口2から取水口7までは、流路30、流路31、流路32、流路33、及び流路34によって接続されている。
【0019】
流路30は、流入口2から第一軟水化槽4aまでを接続する流路である。つまり、流路30は、硬度成分を含む原水を流入口2から第一軟水化槽4aへ導く流路である。
【0020】
流路31は、第一軟水化槽4aから第一中和槽5aまでを接続する流路である。つまり、流路31は、第一軟水化槽4aで軟水化処理を行った水を第一中和槽5aに導く流路である。
【0021】
流路32は、第一中和槽5aから第二軟水化槽4bまでを接続する流路である。つまり、流路32は、第一中和槽5aで中和を行った水を第二軟水化槽4bに導く流路である。
【0022】
流路33は、第二軟水化槽4bから第二中和槽5bまでを接続する流路である。つまり、流路33は、第二軟水化槽4bで軟水化処理を行った水を第二中和槽5bに導く流路である。
【0023】
流路34は、第二中和槽5bから取水口7までを接続する流路である。つまり、流路34は、第二中和槽5bにより中和された軟水を取水口7へ導く流路である。
【0024】
まとめると、軟水化装置1では、軟水化処理において、外部から供給される原水が、流入口2、流路30、第一軟水化槽4a、流路31、第一中和槽5a、流路32、第二軟水化槽4b、流路33、第二中和槽5b、流路34、取水口7の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0025】
<軟水化槽>
軟水化槽4は、弱酸性陽イオン交換樹脂9の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。具体的には、軟水化槽4は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化する。軟水化槽4は、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂9を備えている。
【0026】
軟水化槽4は、例えば円筒状の容器に弱酸性陽イオン交換樹脂9が充填されて構成されている。
【0027】
軟水化槽4は、第一軟水化槽4aと第二軟水化槽4bとを含んで構成される。
【0028】
第一軟水化槽4aは、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aが充填されて構成されている。第二軟水化槽4bは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bが充填されて構成されている。また、第一軟水化槽4aと第二軟水化槽4bとは、略同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱酸性陽イオン交換樹脂9を有していることが望ましい。なお、以下では、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱酸性陽イオン交換樹脂9として説明する。
【0029】
弱酸性陽イオン交換樹脂9は、官能基の末端に水素イオンを有するイオン交換樹脂である。弱酸性陽イオン交換樹脂9は、通水される原水に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着し、水素イオンを放出する。弱酸性陽イオン交換樹脂9の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生処理において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂9からは、軟水化処理の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0030】
弱酸性陽イオン交換樹脂9としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシ基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、カルボキシ基の水素イオン(H+)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)等の陽イオンとなっているものでもよい。
【0031】
<中和槽>
中和槽5は、弱塩基性陰イオン交換樹脂10の作用により、軟水化槽4から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpH(水素イオン濃度指数)を中和し、中性の軟水とする。具体的には、中和槽5は、軟水化槽4からの軟水に含まれる水素イオンをアニオン(陰イオン)とともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂10は、後述する再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生を行うことができる。中和槽5は、弱塩基性陰イオン交換樹脂10を備えている。
【0032】
中和槽5は、例えば円筒状の容器に弱塩基性陰イオン交換樹脂10が充填されて構成されている。
【0033】
中和槽5は、第一中和槽5aと第二中和槽5bとを含んで構成される。
【0034】
第一中和槽5aは、例えば円筒状の容器に第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10aが充填されて構成されている。第二中和槽5bは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bが充填されて構成されている。また、第一中和槽5aと第二中和槽5bとは、略同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱塩基性陰イオン交換樹脂10を有していることが望ましい。なお、以下では、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱塩基性陰イオン交換樹脂10として説明する。
【0035】
弱塩基性陰イオン交換樹脂10は、通水される水に含まれる水素イオンを中和し、中性の水を生成する。弱塩基性陰イオン交換樹脂10としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型となっているものが挙げられる。
【0036】
<原水検知部>
原水検知部3は流路30に設けられ、流入口2から供給され流路30を流通する硬度成分を含む原水の電気伝導度(原水電気伝導度)を検知する。原水検知部3は、後述する取得部17および制御部20と無線又は有線により通信可能に接続される。検知した原水電気伝導度に関する情報は、取得部17および制御部20の入力信号として用いられる。原水検知部3として、液体の電気伝導度を測定する検出器であれば汎用的なものを使用することができる。
【0037】
ここで、水は、純水であればほぼ電気を通さない絶縁体であるが、種々の物質が溶解(イオン化)することで通電しやすくなる。つまり、液体の電気伝導度は、液体中に含まれるイオン化した物質量の指標となる。一般的な原水においては、原水の水源となる河川水あるいは地下水に多く含まれるイオンの含有量に比例し、含有されるイオンとしては、陽イオンではカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、陰イオンでは、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
【0038】
<軟水検知部>
軟水検知部6は流路34に設けられ、第二中和槽5bから流出した中性の軟水の電気伝導度(軟水の電気伝導度)を検知する。軟水検知部6は、後述する取得部17および制御部20と無線又は有線により通信可能に接続される。検知した軟水の電気伝導度に関する情報は、取得部17および制御部20の入力信号として用いられる。軟水検知部6として、液体の電気伝導度を測定する検出器であれば汎用的なものを使用することができる。例えば、交流2電極方式、交流4電極方式および電磁誘導方式を用いる形態が挙げられる。
【0039】
<再生装置>
再生装置8は、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生させ、且つ、中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生させる機器である。具体的には、再生装置8は、電解槽11と、処理槽13と、送水ポンプ14とを含んで構成される。そして、再生装置8は、流入口2から取水口7までの流路33、流路30、流路34、及び流路31に対して、第一供給流路41、第一回収流路45、第二供給流路42、及び第二回収流路46がそれぞれ接続されている。また、第一バイパス流路43によって、流路31及び流路32が接続されている。また、第二バイパス流路44によって、流路32及び流路33が接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路40(第一循環流路40a、第二循環流路40b)を構成している。
【0040】
ここで、第一供給流路41は、電解槽11から第二軟水化槽4bへ酸性電解水を供給する流路である。
【0041】
第一バイパス流路43は、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水を、第一中和槽5aをバイパスして第一軟水化槽4aに供給する流路である。
【0042】
第一回収流路45は、第一軟水化槽4aを通過した硬度成分を含む酸性電解水を処理槽13へ回収する流路である。
【0043】
第二供給流路42は、電解槽11から第二中和槽5bへアルカリ性電解水を供給する流路である。
【0044】
第二バイパス流路44は、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水を、第二軟水化槽4bをバイパスして第一中和槽5aに供給する流路である。
【0045】
第二回収流路46は、第一中和槽5aを通過したアルカリ性電解水を処理槽13へ回収する流路である。
【0046】
<電解槽>
電解槽11は、内部に設けた電極12(電極12a及び電極12b)を用いて、流入した水(処理槽13から供給される水)を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成して排出する。より詳細には、電気分解の際に陽極となる電極12aでは、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水が生成する。また、電気分解の際に陰極となる電極12bでは、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽11は、酸性電解水を、第一供給流路41を介して第二軟水化槽4bに供給する。また、電解槽11は、アルカリ性電解水を、第二供給流路42を介して第二中和槽5bに供給する。詳細は後述するが、電解槽11によって生成された酸性電解水は、第一軟水化槽4aの第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二軟水化槽4bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bの再生に使用される。また、電解槽11によって生成されたアルカリ性電解水は、第一中和槽5aの第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二中和槽5bの第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bの再生に使用される。なお、電解槽11は、後述する制御部20によって、電極12への通電状態を制御できるように構成されている。
【0047】
<処理槽>
処理槽13は、空気抜き弁16を備えたタンクまたは容器である。処理槽13は、弱酸性陽イオン交換樹脂9及び弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生する際に循環流路40(図2参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。また、処理槽13は、軟水化槽4を流通した硬度成分を含む酸性電解水と、中和槽5を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合し、電解槽11に供給するものである。
【0048】
処理槽13では、混合された硬度成分とアルカリ性電解水とが反応することにより反応生成物(原水に含まれる硬度成分に起因した反応生成物)が生成される。より詳細には、処理槽13には、軟水化槽4内の弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生した後における、硬度成分が含まれる酸性電解水が第一回収流路45を介して通水される。また、処理槽13には、中和槽5内の弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生した後における、陰イオン(例えば塩化物イオン及び水酸化物イオン)を含有するアルカリ性電解水が第二回収流路46を介して通水される。そして、処理槽13において、硬度成分を含む酸性電解水と、陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合し、硬度成分がアルカリ性電解水と反応する。例えば、酸性電解水中の硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じたり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、反応した硬度成分は、後述するろ過部15により反応生成物として分離することが可能となり、処理水を得ることができる。
【0049】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、処理槽13に反応しない成分もしくは溶解度積を超えない濃度の成分が含まれている状態も含むものとする。
【0050】
そして、処理槽13により硬度成分が反応して得られた処理水は、電解槽11に通水され、電解槽11において電気分解され、酸性電解水及びアルカリ性電解水となって軟水化槽4及び中和槽5にそれぞれ供給される。そして、酸性電解水及びアルカリ性電解水は、それぞれ、軟水化槽4及び中和槽5において再利用された後、再び処理槽13へ通水される。従って、弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生及び弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生に使用した酸性電解水及びアルカリ性電解水を再利用することができる。しかも、硬度成分が反応した水を再利用するため、弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生する際の再生効率の低減を抑えることができる。
【0051】
<送水ポンプ>
送水ポンプ14は、再生装置8による再生処理の際に、循環流路40(図2参照)に水を流通させる機器である。送水ポンプ14は、処理槽13と電解槽11との間を連通接続する送水流路50に設けられている。なお、送水ポンプ14は、電解槽11の上流側、且つ、処理槽13の下流側に配置することが好ましい。このような配置とするのは、一つの送水ポンプ14で、後述する第一循環流路40a及び第二循環流路40bに水を循環させやすくなるからである。また、送水ポンプ14は、後述する制御部20と無線又は有線により通信可能に接続されている。送水ポンプ14とは、例えば、再生処理中に後述する循環流路40の所要流量を供給できる遠心ポンプなどが挙げられる。
【0052】
<ろ過部>
ろ過部15は、処理槽13から電解槽11へ繋がる送水流路50の前段に設けられている。そして、ろ過部15は、処理槽13を流通した水に含まれる析出物を分離する。析出物とは、軟水化槽4を流通した硬度成分を含む酸性電解水と中和槽5を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水とが反応することにより生成する反応生成物である。
【0053】
ろ過部15で析出物の分離を行うことにより、送水流路50を流通する処理水には、析出物が含まれなくなるため、電解槽11への析出物の流入、電極12や電解槽11内の膜への析出物の付着による性能劣化、および軟水化槽4、中和槽5への析出物の流入を防ぐことができる。
【0054】
ろ過部15は、処理槽13における硬度成分との反応生成物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0055】
<開閉弁>
複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」された状態と、「閉止」された状態とに切り替えられる。また、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72)はそれぞれ、後述する制御部20と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0056】
<取得部>
取得部17は、後述する制御部20と接続され、原水検知部3で検知した原水の電気伝導度に対して、補正を行い、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得する。補正の方法として、原水の電気伝導度に対する所定値の乗算などが挙げられる。ここで、所定値とは、例えば、原水の電気伝導度のうち、硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度が占める割合である。この、原水の電気伝導度のうち、硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度が占める割合は国や地域によって異なってくる。これは国や地域によって原水中に含まれるイオン成分の比率が異なるためである。しかしながら、同一の国や地域であれば、原水中のイオン成分の比率の時間的変化は少ない。そのため、軟水化装置1を使用する国や地域に対応した所定値をあらかじめ設定し、この所定値を用いて原水の電気伝導度を補正することで、本来であればイオン成分種の区別が不可能な手法である電気伝導度測定においても、硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を取得することができる。
【0057】
<校正部>
校正部18は、後述する制御部20と接続され、取得部17で取得した、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度(第一電気伝導度)に基づいて、軟水検知部6で得られた軟水の電気伝導度を校正し、第二電気伝導度として出力する。
【0058】
校正方法として、例えば、軟水の電気伝導度の値から第一電気伝導度の値を減算する方法が挙げられる。このように校正したとき、第二電気伝導度に対応するイオン成分としては主に、硬度成分であるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびこれら陽イオンの対イオンである塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンが挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の一価の陽イオン成分は除かれる。そのため、第二電気伝導度を用いることで、後述の算出部19において軟水中の硬度成分を算出することができる。
【0059】
上記のように、第二電気伝導度に対応するイオン成分として、一価の陽イオンが含まれないように校正する理由を、ナトリウムイオンを例にして説明する。校正を行う理由として、電気伝導度に対するナトリウムイオンの影響の大きさが挙げられる。軟水検知部6を流通する軟水は、ナトリウムイオンを含む。これは、原水が軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を流通することで軟水化される際に、ナトリウムイオンと、硬度成分であるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンとで、弱酸性陽イオン交換樹脂9とのイオン交換反応のされやすさが異なることに起因する。2価の陽イオンであるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンに比べ、1価の陽イオンであるナトリウムイオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂9とのイオン交換反応が起こりにくい。そのため、これらのイオンが含まれる水を弱酸性陽イオン交換樹脂9に流通させた場合、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンが優先的にイオン交換される。特に、生活用水として使用される市水を原水とする場合については、一般的なイオン成分比率を考えると、軟水化処理に使用されていない(官能基の末端が全て水素イオンである)弱酸性陽イオン交換樹脂9に対して原水を流通させた場合のみ、ナトリウムイオンの一部がイオン交換される程度であり、多くの場合において、ナトリウムイオンは軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9ではイオン交換されず、軟水に含まれたまま取り出される。
【0060】
したがって、校正部18による構成を行わない場合では、ナトリウムイオンを含んだ電気伝導度を基に、硬度を算出することになってしまうため、軟水の正確な硬度を算出することが困難である。そのため、校正部18による校正を行うことにより、ナトリウムイオン等の1価の陽イオンによる影響を低減した電気伝導度である第二電気伝導度を基にして軟水の硬度を正確に算出することができる。
【0061】
<算出部>
算出部19は、後述する制御部20と接続され、校正部18で出力された第二電気伝導度に対して補正を行い、軟水中の硬度成分を算出し、硬度成分情報を出力する。硬度成分情報は、中和軟水の硬度成分濃度を含む。補正の方法として、例えば、第二電気伝導度に対する所定値の乗算などが挙げられる。ここで所定値とは、例えば、第二電気伝導度と軟水中の硬度成分との間の比例定数である。一般的に水の電気伝導度は、水中のイオン成分の濃度に比例し、水中のイオン成分の濃度が高くなるほど、電気伝導度も大きくなる。イオン濃度と電気伝導度の比例定数は、イオン種によってそれぞれ異なる。第二電気伝導度中には、硬度成分による電気伝導度の他に、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどの陰イオンによる電気伝導度も含まれるが、軟水化装置1を使用する国や地域に対応した陰イオン組成をあらかじめ考慮し、所定値として用いる比例定数の設定を調整することで、より正確に軟水中の硬度成分情報の算出を行うことができる。
【0062】
なお、第二電気伝導度が0以下の場合には、軟水中の硬度成分濃度を0として算出する。この場合、軟水の硬度は0と判断される。第二電気伝導度が0以下となる場合とは、軟水の電気伝導度が第一電気伝導度と同等になる場合、あるいは軟水の電気伝導度が第一電気伝導度以下になる場合である。この場合の具体的な例として、原水検知部3を流通した原水中の硬度成分の略全量が弱酸性陽イオン交換樹脂9に吸着され軟水検知部6を流通する軟水に含まれない場合や、原水検知部3を流通した原水中の硬度成分の略全量及びナトリウムイオン等の硬度成分以外のイオンの一部が弱酸性陽イオン交換樹脂9あるいは弱塩基性陰イオン交換樹脂10に吸着され軟水検知部を流通する軟水に含まれない場合が挙げられる。
【0063】
<制御部>
制御部20は、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部20は、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9及び中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生処理を制御する。さらに、制御部20は、軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを制御する。この際、制御部20は、電極12、送水ポンプ14、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72の動作を制御し、軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを行い、それぞれの処理を実行させる。
【0064】
制御部20は、取得部17、校正部18、算出部19、表示部21と接続され、それぞれ原水電気伝導度、軟水の電気伝導度、第一電気伝導度、第二電気伝導度、軟水中の硬度成分の入出力を制御する。
【0065】
なお、制御部20は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、光ディスク、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0066】
<表示部>
表示部21は、制御部20と無線または有線により接続され、算出部19により算出された軟水中の硬度成分に関する情報(硬度成分情報)を表示する。表示部21は、軟水化装置1の筐体に設置される液晶モニターであってもよいし、軟水化装置1の利用者が所持するスマートフォンの画面であってもよい。ここで、表示部21に表示される軟水中の硬度成分に関する情報は、例えば、軟水の硬度を数値とした情報、あるいは軟水の硬度の数値を基に、独自の硬度レベルのうち、どのレベルに属するかを図示した情報などが挙げられる。これにより、軟水化装置1の利用者は、軟水化装置1から取り出される軟水の硬度を視覚的に知ることができる。
【0067】
<流路>
次に、図2を参照して、軟水化装置1の再生処理の際に形成される循環流路40について説明する。図2は、軟水化装置1の循環流路40を示す構成図である。
【0068】
説明が重複するが、図2に示すように、軟水化装置1において、再生装置8を構成する電解槽11及び処理槽13は、送水流路50によって連通接続される。また、電解槽11及び処理槽13は、流入口2から取水口7までの流路33、流路30、流路34、及び流路31に対して、第一供給流路41、第一回収流路45、第二供給流路42、及び第二回収流路46がそれぞれ接続されている。また、第一バイパス流路43によって、流路31及び流路32がバイパス接続されている。また、第二バイパス流路44によって、流路32及び流路33がバイパス接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路40(第一循環流路40a、第二循環流路40b)を構成している。
【0069】
第一供給流路41は、電解槽11から第二軟水化槽4bへ酸性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁63が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、電解槽11から酸性電解水を引き出して第二軟水化槽4bの下流側へ送水可能とする第一供給流路41を備える。
【0070】
また、第一バイパス流路43は、第二軟水化槽4bから第一軟水化槽4aへ酸性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁65が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水を第一軟水化槽4aの下流側へ送水可能とする第一バイパス流路43を備える。なお、第一バイパス流路43を設けることにより、第一軟水化槽4aと第二軟水化槽4bとの間に存在する第一中和槽5aに酸性電解水を流通させることなく再生処理を進行させることができる。
【0071】
そして、第一回収流路45は、第一軟水化槽4aを通過した硬度成分を含む酸性電解水を処理槽13へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁61が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、処理槽13の上流側を第一軟水化槽4aの上流側に接続可能とする第一回収流路45を備える。
【0072】
第二供給流路42は、電解槽11から第二中和槽5bへアルカリ性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁64が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、電解槽11からアルカリ性電解水を引き出して第二中和槽5bの下流側へ送水可能とする第二供給流路42を備える。
【0073】
また、第二バイパス流路44は、第二中和槽5bから第一中和槽5aへアルカリ性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁66が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水を第一中和槽5aの下流側へ送水可能とする第二バイパス流路44を備える。
【0074】
そして、第二回収流路46は、第一中和槽5aを通過したアルカリ性電解水を処理槽13へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁62が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、処理槽13の上流側を第一中和槽5aの上流側に接続可能とする第二回収流路46を備える。
【0075】
循環流路40は、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、第二軟水化槽4b及び第一軟水化槽4aを流通する第一循環流路40aと、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、第二中和槽5b及び第一中和槽5aを流通する第二循環流路40bとを含む。
【0076】
第一循環流路40aは、図2(白矢印)に示すように、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、電解槽11、第二軟水化槽4b、及び第一軟水化槽4aを流通し、処理槽13に戻って循環する流路である。より詳細には、第一循環流路40aは、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、送水流路50、電解槽11、第一供給流路41、開閉弁63、第二軟水化槽4b、第一バイパス流路43、開閉弁65、第一軟水化槽4a、第一回収流路45、開閉弁61、処理槽13の順に流通して循環する流路である。
【0077】
第二循環流路40bは、図2(黒矢印)に示すように、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、電解槽11、第二中和槽5b、及び第一中和槽5aを流通し、処理槽13に戻って循環する流路である。より詳細には、第二循環流路40bは、送水ポンプ14によって処理槽13から送出された水が、送水流路50、電解槽11、第二供給流路42、開閉弁64、第二中和槽5b、第二バイパス流路44、開閉弁66、第一中和槽5a、第二回収流路46、開閉弁62、処理槽13の順に流通して循環する流路である。
【0078】
ここで、循環流路40において水を循環させるための各流路の状態を説明する。
【0079】
流路33には、第一供給流路41の下流側、且つ、第二バイパス流路44の上流側に開閉弁54が設置されている。そして、開閉弁54を閉止して、開閉弁63を開放することで、第二軟水化槽4bの下流側に第一供給流路41が連通接続された状態となる。これにより、電解槽11からの酸性電解水を第二軟水化槽4bに供給できるようになる。
【0080】
流路31には、第一バイパス流路43の下流側、且つ、第二回収流路46の上流側に開閉弁52が設置されている。また、流路32には、第二バイパス流路44の下流側、且つ、第一バイパス流路43の上流側に開閉弁53が設置されている。そして、開閉弁52及び開閉弁53を閉止して、開閉弁65を開放することで、第二軟水化槽4bの上流側、且つ、第一軟水化槽4aの下流側に、第一バイパス流路43が連通接続された状態となる。これにより、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水を第一軟水化槽4aに供給できるようになる。
【0081】
また、流路30には、流入口2の下流側、且つ、第一回収流路45の上流側に開閉弁51が設置されている。そして、開閉弁51及び開閉弁52を閉止して、開閉弁61を開放することで、第一軟水化槽4aの上流側に第一回収流路45が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bを流通した水(硬度成分を含む酸性電解水)を処理槽13へ回収することができるようになる。
【0082】
また、開閉弁52を閉止して、開閉弁62を開放することで、第一中和槽5aの上流側に第二回収流路46が連通接続された状態となる。これにより、第一中和槽5a及び第二中和槽5bを流通した水(陰イオンを含むアルカリ性電解水)を処理槽13へ回収することができるようになる。
【0083】
また、開閉弁52、開閉弁53及び開閉弁54を閉止して、開閉弁66を開放することで、第一中和槽5aの下流側、且つ、第二中和槽5bの上流側に、第二バイパス流路44が連通接続された状態となる。これにより、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水を第一中和槽5aに供給できるようになる。
【0084】
また、開閉弁54及び開閉弁55を閉止して、開閉弁64を開放することで、第二中和槽5bの下流側に第二供給流路42が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、電解槽11からのアルカリ性電解水を第二中和槽5bに供給できるようになる。
【0085】
また、送水流路50には、処理槽13の下流側(処理槽13と送水ポンプ14との間の位置)に開閉弁71が設置されている。開閉弁71を閉止することにより、処理槽13に水を貯留することができる。一方、開閉弁71を開放することにより、送水流路50へ水を供給することができる。
【0086】
また、開閉弁51及び開閉弁55を閉止することによって、循環流路40への水を供給することができる一方、開閉弁51及び開閉弁55を開放することによって、循環流路40への水の供給を停止することができる。
【0087】
以上が軟水化装置1の構成である。
【0088】
続いて、軟水化装置1の動作時について説明する。
【0089】
<軟水化処理、再生処理、及び排水処理>
次に、図3を参照して、再生処理を起点とした軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理について説明する。図3は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0090】
軟水化処理、再生処理、及び排水処理では、制御部20は、図3に示すように、原水検知部3、軟水検知部6、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、電解槽11の電極12、及び送水ポンプ14を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。
【0091】
ここで、図3中の「ON」は、原水検知部3及び軟水検知部6が通電している状態、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極12が通電している状態、及び送水ポンプ14が動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、原水検知部3及び軟水検知部6が通電していない状態、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極12が通電していない状態、送水ポンプ14が停止している状態をそれぞれ示す。
【0092】
<<再生処理>>
まず、軟水化装置1の再生装置8による再生処理時の動作について、図3の「水注入時」及び「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0093】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂9を充填した軟水化槽4は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置8による軟水化槽4及び中和槽5の再生処理を行う必要が生じる。
【0094】
そこで、軟水化装置1では、所定の期間(例えば24時間)に1回、制御部20によって再生処理が可能な時間帯を特定して、再生処理を実行する。
【0095】
まず、図3に示すように、水注入時において、開閉弁51及び開閉弁61を開放する。これにより、軟水化装置1は、市水の圧力によって、流入口2から第一回収流路45を介して原水を処理槽13へ導入する。この時、開閉弁52~開閉弁55、開閉弁62~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72は閉止している。処理槽13に、軟水化装置1の容量に応じた所定の量の水を貯留することで、再生装置8は、再生時の水量を確保することができる。
【0096】
次に、再生時において、開閉弁51~開閉弁55、及び開閉弁72を閉止して、開閉弁61~開閉弁66、及び開閉弁71を開放すると、図2に示すように、第一循環流路40a及び第二循環流路40bがそれぞれ形成される。
【0097】
そして、電解槽11の電極12及び送水ポンプ14を動作させると、処理槽13に貯留した水が第一循環流路40a及び第二循環流路40bのそれぞれを循環する。
【0098】
この際、電解槽11で生成した酸性電解水は、第一供給流路41を流通し第二軟水化槽4b内に送水され、内部の第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを流通する。そして、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水は、第一バイパス流路43を流通し、第一軟水化槽4a内に送水され、内部の第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを流通する。すなわち、酸性電解水を第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに通水することで、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bが再生される。その後、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路45へ流入する。すなわち、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一バイパス流路43及び第一回収流路45を介して処理槽13内に回収される。
【0099】
このように、第一循環流路40aは、酸性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置し、硬度成分の吸着量が少ない第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを有する第二軟水化槽4bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに比べて硬度成分がより多く吸着している第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを有する第一軟水化槽4aの下流側へと流入させる。つまり、第一循環流路40aは、電解槽11から送出された酸性電解水を、第二軟水化槽4bに流通させた後、第一バイパス流路43によって第一軟水化槽4aへと送出し、第一軟水化槽4aを流通させ、処理槽13に回収した後、電解槽11へ流入させる。また、第一循環流路40aは、電解槽11から送出された酸性電解水を、第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bの下流側から第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bに導入し、各軟水化槽の下流側に比べて硬度成分の吸着量が多い上流側から流出させる。
【0100】
一方、電解槽11で生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路42を通って第二中和槽5b内に送水され、内部の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通する。そして、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水は、第二バイパス流路44を流通し、第一中和槽5a内に送水され、内部の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10aを流通する。すなわち、アルカリ性電解水を第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bに通水させることで、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bに吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bが再生される。その後、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路46へ流入する。すなわち、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二バイパス流路44及び第二回収流路46を介して処理槽13内に回収される。
【0101】
そして、処理槽13内では、第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bから回収された陽イオンを含む酸性電解水と、第一中和槽5a及び第二中和槽5bから回収された陰イオンを含むアルカリ性電解水とが混合されて中和される。
【0102】
この時、陽イオン(硬度成分)を含む酸性電解水と、陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合することにより、硬度成分がアルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンと反応し、析出物が生じる。例えば、酸性電解水中の硬度成分がカルシウムイオンである場合、アルカリ性電解水により水酸化カルシウムが生じたり、水中に常在する炭酸イオンと結合して炭酸カルシウムが生じたりする。
【0103】
その後、処理槽13中で処理された処理水は、ろ過部15を流通する際に反応生成物が除去され、送水流路50を介して電解槽11に再び通水される。そして、通水された水は、電解槽11において再び電解される。電解槽11にて再び電解された電解水(酸性電解水、アルカリ性電解水)は、それぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生と弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生に供される。
【0104】
そして、軟水化装置1では、再生処理が終了すると電極12及び送水ポンプ14の動作を停止させる。また、開閉弁72を開放することで排水処理へ移行する。なお、再生処理の終了は、再生処理開始(電極12の動作開始時)から一定時間とすればよい。
【0105】
<<排水処理>>
軟水化装置1では、再生処理が終了すると排水処理へ移行する。ここで、排水処理とは、循環流路40内に残存している酸性電解水及びアルカリ性電解水の排水を行う処理である。
【0106】
次に、軟水化装置1による排水処理時の動作について、図3の「排水時」の欄を参照して説明する。
【0107】
軟水化装置1では、図3に示すように、排水処理(排水時)において、開閉弁51~開閉弁55を閉止して、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72を開放する。
【0108】
これにより、第一循環流路40aに残存している酸性電解水及び第二循環流路40bに残存しているアルカリ性電解水を処理槽13に流入させることができる。
【0109】
次に、開閉弁72を開放すると空気抜き弁16の作用により、処理槽13内の電解水を装置外に排出することができる。
【0110】
排水処理を行うことにより、軟水化処理を再開した際に、循環流路40内に残存する酸性電解水及びアルカリ性電解水が、流入口2から流入する原水と混在し、取水口7から排出されることを防ぐことができる。
【0111】
そして、軟水化装置1では、排水処理が終了すると、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72を閉止させ、開閉弁51~開閉弁55を開放することで軟水化処理へ移行する。なお、排水処理の終了は、排水処理開始から一定時間経過時とすればよい。
【0112】
<<軟水化処理>>
軟水化装置1は、排水処理が終了すると軟水化処理に移行する。
【0113】
次に、軟水化装置1による軟水化処理時の動作について、図3の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0114】
軟水化装置1では、図3に示すように、軟水化処理(軟水化時)において、開閉弁51~開閉弁54を開放した状態で、取水口7に設けた開閉弁55を開放する。これにより、外部から市水(硬度成分を含む原水)が軟水化槽4と中和槽5とを流通するので、軟水化装置1は、取水口7から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽11の電極12及び送水ポンプ14の動作も停止した状態である。
【0115】
具体的には、図1に示すように、軟水化処理では、供給される原水は、流入口2から流路30を通って、第一軟水化槽4aに供給される。そして、第一軟水化槽4aに供給された原水は、第一軟水化槽4a内に備えられた第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aの作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。但し、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aにより軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含むため、酸性化してpHが低い酸性水となっている。pHが低下した状態では軟水化が進行しにくくなるため、第一軟水化槽4aを流通した水を、第一中和槽5aへ通水させ、中和を行う。
軟水化された水は、さらに流路31を流通し、第一中和槽5aへ流入する。第一中和槽5aでは、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10aの作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第一軟水化槽4aにより軟水化された水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇して中和される。
そのため、第一軟水化槽4aにおいて軟水化した水をそのまま第二軟水化槽4bで軟水化する場合と比較して、第二軟水化槽4bでの軟水化処理が進行しやすくなる。第一中和槽5aにより中和された水は、さらに流路32を流通し、第二軟水化槽4bに流入する。
【0116】
第二軟水化槽4bでは、流路32から中和された中性水が通水され、内部に充填された第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを通過する。これにより、第二軟水化槽4bでは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bの作用により、硬度成分である陽イオンが吸着され、水素イオンが放出される。つまり第二軟水化槽4bでは、第一軟水化槽4aで除去できなかった硬度成分が、第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bの有する水素イオンと交換され、軟水化が行われる。但し、第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bで軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを含むため、酸性水となっている。水素イオンを含む軟水は、流路33を流通し、第二中和槽5bに流入する。第二中和槽5bでは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bの作用により、流入した軟水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、軟水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇し、生活用水として使用可能な軟水化した中性水となる。言い換えると、第二中和槽5bでは、第二軟水化槽4bから流出した酸性水であり、第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bから放出された水素イオンを含む酸性水の中和が行われる。中和軟水は、流路34を流通して取水口7から取り出すことができる。
【0117】
そして、軟水化装置1では、制御部20で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行する。
【0118】
<<軟水の硬度の算出>>
軟水化装置1では、原水検知部3によって、流路30を流通する原水の電気伝導度を検知し、軟水検知部6によって、流路34を流通する軟水の電気伝導度を検知する。また、取得部17において、原水検知部3から出力された原水の電気伝導度に対して、一定の補正(原水の電気伝導度に対する所定値の乗算など)を行い、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得し、第一電気伝導度を出力する。出力された第一電気伝導度を用いて、校正部18において軟水の電気伝導度を校正(軟水の電気伝導度の値から、第一電気伝導度の値を減算)し、第二電気伝導度として出力する。出力された第二電気伝導度を用いて、算出部19において軟水の硬度を算出(第二電気伝導度に対する所定値の乗算など)し、軟水の硬度を数値として出力する。
【0119】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化処理、再生処理、及び排水処理が繰り返し実行される。
【0120】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0121】
(1)軟水化装置1は、軟水化槽4と、中和槽5と、原水検知部3と、軟水検知部6と、取得部17と、校正部18と、算出部19と、表示部21とを備える。軟水化槽4は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂9により軟水化する。中和槽5は、軟水化槽4を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂10により中和する。原水検知部3は、原水の電気伝導度を検知する。軟水検知部6は、軟水化槽4および中和槽5を通過した軟水の電気伝導度を検知する。取得部17は、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得する。校正部18は、取得部17で取得した、原水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部6で得られた電気伝導度を校正し、第二電気伝導度を出力する。算出部19は、校正部18で出力された第二電気伝導度に基づいて軟水の硬度を算出する。表示部21は、算出部19により算出された軟水の硬度を通知する。そして、軟水化装置1は、原水が、原水検知部3、軟水化槽4、中和槽5、及び軟水検知部6の順に流通するように構成されている。
【0122】
こうした構成によれば、原水検知部3において原水の電気伝導度を取得し、取得部17において原水の電気伝導度に一定の補正(所定値の乗算など)を行うことで、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得し、校正部18において、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部6で検知される軟水の電気伝導度を校正した電気伝導度(第二電気伝導度)を取得し、算出部19において第二電気伝導度から軟水中の硬度成分を算出することができる。したがって、硬度成分とその他イオン成分が混在する硬水を流通する場合においても、硬水および硬水を流通することで得られる軟水の電気伝導度から、軟水中の硬度成分を算出することが可能となる。また、表示部21を備えることにより、算出部19から出力された軟水中の硬度成分に関する情報が表示部21に表示されるため。軟水化装置1の利用者は、軟水化装置1から取り出される軟水の硬度を視覚的に知ることができる。
【0123】
(2)軟水化装置1は、軟水化槽4と、中和槽5とを備える。軟水化槽4は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂9により軟水化する。中和槽5は、軟水化槽4を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂10により中和する。また、軟水化槽4は、第一軟水化槽4aと第二軟水化槽4bとを有する。中和槽5は、第一中和槽5aと第二中和槽5bとを有する。軟水化装置1は、原水が、第一軟水化槽4a、第一中和槽5a、第二軟水化槽4b、及び第二中和槽5bの順に流通するように構成されるようにした。
【0124】
こうした構成によれば、硬度成分を含む原水は、第一軟水化槽4aでの軟水化処理によって原水のpHの低下が進行する前に第一軟水化槽4aを流出し、第一中和槽5aにおいて中和され、第二軟水化槽4bで軟水化されるようになる。そのため、軟水化槽4内に流通する水のpHの低下及び酸性化を抑制できるので、硬度成分と第二軟水化槽4bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bが保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、軟水化装置1は、軟水化槽4及び中和槽5を分割しない場合と比較して、軟水化性能を向上させることが可能となる。
【0125】
(3)軟水化装置1では、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生するための酸性電解水と、中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する電解槽11と、軟水化槽4を流通した酸性電解水と中和槽5を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽11に供給する処理槽13とをさらに備えるようにした。こうした構成によれば、電解槽11で生成される酸性電解水によって弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生することが可能となり、アルカリ性電解水によって弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生することが可能となる。そのため、軟水化装置1のメンテナンス頻度を低減でき、長期にわたって使用可能な軟水化装置1とすることができる。
【0126】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aは、原水検知部3を備えない点と、の電気伝導度が第一所定値に達するまでの第一期との軟水の電気伝導度が第一所定値に達した以降の第二期とを判定する判定部22を備える点と、第二期の初期における軟水の電気伝導度を基準電気伝導度として記憶する記憶部23を備える点と、算出部19aにおいて、基準電気伝導度と軟水の電気伝導度に基づいて硬度成分情報を算出する点で実施の形態1と異なる。これ以外の軟水化装置1aの構成は、実施の形態1に係る軟水化装置1と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0127】
本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aについて、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aを示す概念図である。なお、図4では、軟水化装置1aの各要素を概念的に示している。
【0128】
<全体構成>
軟水化装置1aは、外部から供給される硬度成分を含む原水から中性の軟水を生成する装置である。
【0129】
具体的には、図3に示すように、軟水化装置1aは、軟水化槽4(第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4b)と、中和槽5(第一中和槽5a及び第二中和槽5b)と、処理後の軟水の電気伝導度を検知する軟水検知部6aと、処理後の軟水の取水口7と、再生装置8を備えている。また、再生装置8は、電解槽11と、処理槽13と、送水ポンプ14とを含んで構成される。また、軟水化装置1は、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72)と、算出部19a、制御部20、表示部21、判定部22及び記憶部23とを含んで構成される。
【0130】
<軟水検知部>
軟水検知部6aは、流路34に設けられ、第二中和槽5bから流出した中性の軟水の電気伝導度(軟水の電気伝導度)を検知する。軟水検知部6は、後述する制御部20、判定部22、及び記憶部23と無線又は有線により通信可能に接続され、検知した軟水の電気伝導度に関する情報は、制御部20、判定部22、及び記憶部23の入力信号として用いられる。軟水検知部6aとしては、液体の電気伝導度を測定する検出器であれば汎用的なものを使用することができる。
【0131】
<判定部>
判定部22は、後述する制御部20と接続され、また内部に後述する記憶部23を備える。判定部22は、軟水検知部6で検知された軟水の電気伝導度と後述する基準電気伝導度を比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。判定結果は、算出部19aでの軟水中の硬度成分の算出時に用いられる。
【0132】
第一期及び第二期の具体的な判定方法について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置による軟水化時の電気伝導度変化を示す図である。
【0133】
具体的には、再生処理後の軟水化装置1aの軟水化処理時を例とすると、図5に示すように、軟水の電気伝導度の挙動から、軟水化処理は、3つの区間A、区間B、及び区間Cに分けられる。区間Aは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度を下回る区間である。区間Bは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度と同程度(例えば、基準電気伝導度から±5%程度)となる区間である。区間Cは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度を上回る区間である。判定部22は、区間Aに相当する部分を第一期、区間B及び区間Cに相当する部分を第二期と判定する。なお、軟水の電気伝導度が図5のような挙動を示すのは、実施の形態1において説明した、原水が軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を流通することで軟水化される際に、硬度成分であるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンと、ナトリウムイオン等の一価の陽イオンとで、弱酸性陽イオン交換樹脂9とのイオン交換反応のされやすさが異なることが影響している。具体的には、一価の陽イオンよりも硬度成分であるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの方が、弱酸性陽イオン交換樹脂9とのイオン交換反応が起こりやすい。以降は、一価の陽イオンについてはナトリウムイオンを例として説明する。区間Aでは、硬度成分はほぼ全てがイオン交換され、ナトリウムイオンはその一部がイオン交換される。しかし、ナトリウムイオンは、原水の総通水量が増加するにつれてイオン交換されづらくなる。したがって、区間Aでは、ナトリウムイオンの電気伝導度に由来する軟水の電気伝導度の上昇がみられる。区間Bでは、硬度成分は略全量がイオン交換される一方、ナトリウムイオンは略全量がイオン交換されず、水中に含まれる。区間Bでは、軟水中のイオン成分量及びイオン成分組成に大きな変化がないため、軟水の電気伝導度は同程度の値を保ち続ける。区間Cでは、弱酸性陽イオン交換樹脂9の末端の官能基が持つ水素イオンと、硬度成分とのイオン交換が進んだ結果、徐々にイオン交換反応自体が起こりにくくなり、水中の硬度成分の濃度増加による軟水の電気伝導度の上昇が起こる。
【0134】
すなわち区間Aは、ナトリウムイオンなど硬度成分以外のイオンによる軟水の電気伝導度上昇が起きている区間であり、区間Cは硬度成分のイオンによる軟水の電気伝導度上昇が起きている区間である。なお、上記イオン交換反応のされやすさの違いにより、基本的には、ナトリウムイオンがイオン交換されなくなるより以前に硬度成分の濃度増加は起きない。そのため、区間Aおよび区間Bでは、軟水中の硬度成分濃度は0とみなすことができる。
【0135】
<<記憶部>>
記憶部23は、図5中の区間Bに相当する軟水の電気伝導度の値を基準電気伝導度として記憶する。記憶された基準電気伝導度は判定部22へ出力され、区間A、B及びC、並びに第一期及び第二期を判定するために使用される。なお、どのタイミングの電気伝導度を基準電気伝導度とするかについては、原水総通水量及び原水総通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量(グラフで言うところの傾き)を考慮する。原水総通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量が一定以下(例えば、0.1μS/cm・L以下)、もしくは電気伝導度の変化量全体の中で一番小さいときの軟水の電気伝導度を基準電気伝導度とするのが好ましい。また基準電気伝導度は、一定の間隔(例えば1ヶ月)で更新して記憶することで、原水のイオン成分組成に変化が起きた場合に関しても変化に対応した基準電気伝導度度とすることができる。
【0136】
記憶部23は、判定部22と接続可能であれば、判定部22の内部に備えられてもよいし、外部に備えられてもよい。
【0137】
<算出部>
算出部19aは、後述する制御部20と接続され、軟水検知部6で検知された軟水の電気伝導度と判定部22及び記憶部23から出力された基準電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。算出の方法は、判定部22による判定が第一期か第二期かで異なる。第一期の場合、軟水の電気伝導度によらず軟水中の硬度成分を0と算出する。第二期の場合、例えば軟水の電気伝導度から基準電気伝導度を減算し、減算して算出された値に所定値を乗算する方法などが挙げられる。ここでいう所定値とは、「軟水の電気伝導度と基準電気伝導度の差分」と「軟水中の硬度成分」との間の比例定数である。一般的に水の電気伝導度は、水中のイオン成分の濃度に比例し、水中のイオン成分の濃度が高くなるほど、電気伝導度も大きくなる。イオン濃度と電気伝導度の比例定数は、イオン種によってそれぞれ異なる。「軟水の電気伝導度と基準電気伝導度の差分」中には、硬度成分による電気伝導度の他に、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどの陰イオンによる電気伝導度も含まれるが、軟水化装置1aを使用する国や地域に対応した陰イオン組成をあらかじめ考慮し、所定値の設定を調整することで、より正確に軟水中の硬度成分の算出を行うことができる。
【0138】
<制御部>
制御部20は、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部20は、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9及び中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生処理を制御する。さらに、制御部20は、軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを制御する。この際、制御部20は、電極12、送水ポンプ14、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び開閉弁72の動作を制御し、軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを行い、それぞれの処理を実行させる。
【0139】
また、制御部20は、判定部22、記憶部23、算出部19a、表示部21とそれぞれ接続され、それぞれ軟水の電気伝導度、基準電気伝導度、軟水中の硬度成分の入出力を制御する。
【0140】
<軟水の硬度の算出>
軟水化装置1aでは、判定部22において、軟水検知部6aから出力された軟水の電気伝導度に対して基準電気伝導度と比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。基準電気伝導度は、記憶部23において、図5中の区間Bに相当する軟水の電気伝導度の値を用いる。そして算出部19aにおいて、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度と判定部22及び記憶部23から出力された基準電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。算出は、判定部22による判定が第一期か第二期かで異なり、第一期の場合、軟水の電気伝導度によらず軟水中の硬度成分を0と算出し、第二期の場合、軟水の電気伝導度から基準電気伝導度を減算し、減算して算出された値に所定値を乗算する。
【0141】
以上、本実施の形態2に係る軟水化装置1aによれば、以下の効果を享受することができる。
【0142】
軟水化装置1aは、軟水化槽4と、中和槽5と、軟水検知部6aと、判定部22と、記憶部23と、算出部19aと、表示部21とを備える。軟水化槽4は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂9により軟水化する。中和槽5は、軟水化槽4を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂10により中和する。軟水検知部6aは、軟水化槽4および中和槽5を通過した軟水の電気伝導度を検知する。判定部22は、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度と基準電気伝導度を比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。記憶部23は、原水通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量が小さいときの軟水の電気伝導度を基準電気伝導度として記憶する。
【0143】
算出部19aは、軟水検知部6aで出力された軟水の電気伝導度と、判定部22及び記憶部23から出力された基準電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。表示部21は、算出部19aにより算出された軟水の硬度を通知する。そして、軟水化装置1aは、原水が、軟水化槽4、中和槽5、及び軟水検知部6aの順に流通するように構成されている。
【0144】
こうした構成によれば、原水検知部3において原水の電気伝導度を取得し、取得部17において原水の電気伝導度に一定の補正(所定値の乗算など)を行うことで、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度(第一電気伝導度)を取得し、校正部18において、硬度成分以外のイオン成分に対応する電気伝導度に基づいて、軟水検知部6aで検知される軟水の電気伝導度を校正した電気伝導度(第二電気伝導度)を取得し、算出部19aにおいて第二電気伝導度から軟水中の硬度成分を算出することができる。したがって、実施の形態1とは異なり、原水検知部および取得部を備えなくとも、実施の形態1における第一電気伝導度を、軟水の電気伝導度の変化挙動から予測し、基準電気伝導度として設定することができる。また実施の形態1と同様に、硬度成分とその他イオン成分が混在する硬水を流通する場合においても、硬水および硬水を流通することで得られる軟水の電気伝導度から、軟水中の硬度成分を算出することが可能となる。
【0145】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの第一期において軟水の電気伝導度と第三電気伝導度との差分に基づいて硬度成分を算出する点と、電解槽11b後の取水口を酸側とアルカリ側に分けて2箇所にすることで酸側とアルカリ側の再生水を混合しないように流通させる再生装置8bを備える点で実施の形態1及び2と異なる。これ以外の軟水化装置1bの構成は、実施の形態2に係る軟水化装置1aと同様である。以下、実施の形態2で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態2と異なる点を主に説明する。
【0146】
本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bについて、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bを示す概念図である。なお、図6では、軟水化装置1bの各要素を概念的に示している。
【0147】
<全体構成>
軟水化装置1bは、外部から供給される硬度成分を含む原水から中性の軟水を生成する装置である。
【0148】
具体的には、図6に示すように、軟水化装置1bは、軟水化槽4(第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4b)と、中和槽5(第一中和槽5a及び第二中和槽5b)と、処理後の軟水の電気伝導度を検知する軟水検知部6aと、処理後の軟水の取水口7と、再生装置8bを備えている。また、軟水化装置1bは、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66および開閉弁73~開閉弁76)と、制御部20bと、表示部21とを含んで構成される。
【0149】
<再生装置>
再生装置8bは、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生させ、且つ、中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生させる機器である。具体的には、再生装置8bは、電解槽11bと、酸性電解水貯水槽26と、アルカリ性電解水貯水槽28と、酸性電解水循環ポンプ24と、アルカリ性電解水循環ポンプ25と、ろ過部15とを含んで構成される。そして、再生装置8bは、流入口2から取水口7までの流路33、流路30、流路34、及び流路31に対して、第一供給流路41、第一回収流路45、第二供給流路42、及び第二回収流路46がそれぞれ接続されている。また、第一バイパス流路43によって、流路31及び流路32が接続されている。また、第二バイパス流路44によって、流路32及び流路33が接続されている。また、第一送水流路47によって、第一供給流路41および第一回収流路45が接続されている。また、第二送水流路48によって、第二供給流路42及び第二回収流路46が接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路40(第一循環流路40c、第二循環流路40d)を構成している。
【0150】
ここで、第一供給流路41は、後述する電解槽11bの第一吐出口36から第二軟水化槽4bへ酸性電解水を供給する流路である。
【0151】
第一バイパス流路43は、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水を、第一中和槽5aをバイパスして第一軟水化槽4aに供給する流路である。
【0152】
第一回収流路45は、第一軟水化槽4aを通過した硬度成分を含む酸性電解水を酸性電解水貯水槽26へ回収する流路である。
【0153】
第一送水流路47は、酸性電解水貯水槽26が回収する酸性電解水を酸性電解水循環ポンプ24によって、後述する電解槽11bの第一取水口35へ送水する流路である。
【0154】
第二供給流路42は、後述する電解槽11bの第二吐出口38から第二中和槽5bへアルカリ性電解水を供給する流路である。
【0155】
第二バイパス流路44は、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水を、第二軟水化槽4bをバイパスして第一中和槽5aに供給する流路である。
【0156】
第二回収流路46は、第一中和槽5aを通過したアルカリ性電解水をアルカリ性電解水貯水槽28へ回収する流路である。
【0157】
第二送水流路48は、アルカリ性電解水貯水槽28が回収するアルカリ性電解水をアルカリ性電解水循環ポンプ25によって、後述する電解槽11bの第二取水口37へ送水する流路である。
【0158】
<<電解槽>>
電解槽11bは、弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生する酸性電解水と、弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生するアルカリ性電解水とを、水の電気分解により生成する。電解槽11bは、電極12a、電極12b、隔膜80、陽極室81、陰極室82を備える。
【0159】
ここでは、図6を参照して、電極12bに対して電極12aが高電位となるように通電した場合について説明する。電解槽11bは、内部に設けられた隔膜80により、陽極室81と陰極室82とに隔てられている。
【0160】
隔膜80は、再生処理時に、陽極室81で生成する酸性電解水と陰極室82で生成するアルカリ性電解水との混合を抑制する。これにより、酸性電解水中の水素イオン及びアルカリ性電解水中の水酸化物イオンが中和反応により消費されることが抑制できる。したがって、隔膜80により、弱酸性陽イオン交換樹脂9及び弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生効率低下を抑制できる。隔膜80として、例えばフッ素系の多孔質膜を用いることができる。なお、隔膜80に用いる多孔質膜として、フッ素系の他に、炭化水素系の多孔質膜等、一般的に用いられる多孔質膜を用いてもよいが、フッ素系の多孔質膜は耐久性に優れるため、軟水化装置1bでは、フッ素系の多孔質膜を用いている。
【0161】
陽極室81は、水の電気分解時に、酸性電解水が生成する部位である。陽極室81は、電極12a、第一取水口35、及び第一吐出口36を備える。
【0162】
電極12aは、陽極として、水を電気分解することにより水素イオンを生成する。したがって、電極12aを備える陽極室81では、水の水素イオン濃度が高まり、酸性電解水となる。電極12aとして、例えば白金電極を用いることができる。
【0163】
第一取水口35は、酸性電解水貯水槽26に貯められた酸性電解水を、第一送水流路47を通して陽極室81に導入する開口である。第一取水口35は、第一送水流路47に接続される。
【0164】
第一吐出口36は、電極12aで生成された水素イオンを含む酸性電解水を、第一供給流路41を通して軟水化槽4へ供給する開口である。第一吐出口36は、第一供給流路41と接続される。
【0165】
陰極室82は、水の電気分解時に、アルカリ性電解水が生成する部位である。陰極室82は、電極12b、第二取水口37、及び第二吐出口38を備える。
【0166】
電極12bは、陰極として、水を電気分解することにより水酸化物イオンを生成する。したがって、電極12bを備える陰極室82では、水の水酸化物イオン濃度が高まり、アルカリ性電解水となる。電極12bとして、例えば白金電極を用いることができる。
【0167】
第二取水口37は、アルカリ性電解水貯水槽28に貯められたアルカリ性電解水を、第二送水流路48を通して陰極室82に導入する開口である。第二取水口37は、第二送水流路48に接続される。
【0168】
第二吐出口38は、電極12bで生成された水酸化物イオンを含むアルカリ性電解水を、第二供給流路42を通して中和槽5へ供給する開口である。第二吐出口38は、第二供給流路42と接続される。
【0169】
つまり、電解槽11bは、電極12aを用いて、第一取水口35から流入した水(酸性電解水貯水槽26から供給される水)を電気分解することによって、陽極室81で酸性電解水を生成し、第一吐出口36から排出する。また、電解槽11bは、電極12bを用いて、第二取水口37から流入した水(アルカリ性電解水貯水槽28から供給される水)を電気分解することによって、陰極室82でアルカリ性電解水を生成し、第二吐出口38から排出する。
【0170】
<<酸性電解水貯水槽及びアルカリ性電解水貯水槽>>
酸性電解水貯水槽26は、空気抜き弁27を備えたタンクまたは容器である。酸性電解水貯水槽26は、弱酸性陽イオン交換樹脂9を再生する際に第一循環流路40c内を流通させる水を確保し、貯留するものである。また、酸性電解水貯水槽26は、軟水化槽4を流通した硬度成分を含む酸性電解水を電解槽11bに供給するものである。
【0171】
そして、軟水化槽4を流通した酸性電解水は電解槽11bに通水され、電解槽11bにおいて電気分解される。酸性電解水は、電気分解により生成する水素イオンによって水素イオン濃度が高まり、軟水化槽4を流通した再び酸性電解水貯水槽26へ通水される。したがって、弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生に使用した酸性電解水を再利用することができる。さらに、酸性電解水を排水することなく循環させるため、水素イオン濃度が高まった状態で再生を行うことができ、弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生効率を向上させることができる。
【0172】
アルカリ性電解水貯水槽28は、空気抜き弁29を備えたタンクまたは容器である。アルカリ性電解水貯水槽28は、弱塩基性陰イオン交換樹脂10を再生する際に第二循環流路40d(図7参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。また、アルカリ性電解水貯水槽28は中和槽5を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水を電解槽11bに供給するものである。
【0173】
そして、中和槽5を流通したアルカリ性電解水が電解槽11bに通水され、電解槽11bにおいて電気分解される。アルカリ性電解水は、電気分解により生成する水酸化物イオンによって水酸化物イオン濃度が高まり、中和槽5を流通した後、再びアルカリ性電解水貯水槽28へ通水される。したがって、弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生に使用したアルカリ性電解水を再利用することができる。さらに、アルカリ性電解水を排水することなく循環させるため、水酸化物イオン濃度が高まった状態で再生を行うことができ、弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生効率を向上させることができる。
【0174】
<酸性電解水循環ポンプ及びアルカリ性電解水循環ポンプ>
酸性電解水循環ポンプ24は、再生装置8bによる再生処理の際に、第一循環流路40cに酸性電解水を流通させる機器である。酸性電解水循環ポンプ24は、酸性電解水貯水槽26と電解槽11bの第一取水口35との間を連通接続する第一送水流路47に設けられている。
【0175】
アルカリ性電解水循環ポンプ25は、再生装置8bによる再生処理の際に、第二循環流路40dにアルカリ性電解水を流通させる機器である。アルカリ性電解水循環ポンプ25は、アルカリ性電解水貯水槽28と電解槽11bの第二取水口37との間を連通接続する第二送水流路48に設けられている。
【0176】
酸性電解水循環ポンプ24及びアルカリ性電解水循環ポンプ25を一つのポンプとせず、それぞれ独立して設けることにより、酸性電解水とアルカリ性電解水を混合せずに、それぞれ第一循環流路40cと第二循環流路40dを通水させることができる。つまり、酸性電解水中の水素イオンとアルカリ性電解水中の水酸化物イオンとが反応し、互いに消費されることを抑制できる。そのため、酸性電解水とアルカリ性電解水とが混合して送水される場合と比較して、より水素イオン濃度が高い酸性電解水を軟水化槽4へ送水可能であり、より水酸化物イオン濃度が高いアルカリ性電解水を中和槽5へ送水可能である。したがって、軟水化槽4と中和槽5の再生効率が向上する。また、酸性電解水循環ポンプ24及びアルカリ性電解水循環ポンプ25は、後述する制御部20bと無線又は有線により通信可能に接続されている。酸性電解水循環ポンプ24とアルカリ性電解水循環ポンプ25とは、例えば、再生処理中に後述する第一循環流路40cと第二循環流路40dに対してそれぞれの所要流量を供給できる遠心ポンプなどが挙げられる。
【0177】
<<ろ過部>>
ろ過部15は、第二供給流路42において、電解槽11bの後段、且つ、第二中和槽5bの前段に設けられている。
【0178】
ろ過部15は、電解槽11bの第二吐出口38から供給されるアルカリ性電解水に含まれる固体を分離する。固体とは、電解槽11bを流通するアルカリ性電解水中の硬度成分と電極12bにより生成される水酸化物イオンが関与して析出する反応生成物である。例えば、アルカリ性電解水に含まれる硬度成分がマグネシウムイオンの場合、固体として水酸化マグネシウムが生じる。再生処理時に析出する固体は、除去しなければ中和槽5に溜まり、固体から硬度成分が溶出することで、軟水化処理時の軟水硬度を高くしてしまう、すなわち軟水化性能を低下させる。そのため、ろ過部15で析出物の分離を行うことにより、第二中和槽5bへの析出物の流入及び堆積を抑制し、軟水化処理時の軟水化性能の低下を抑制できる。
【0179】
ろ過部15は、電解槽11bから供給されるアルカリ性電解水に含まれる硬度成分との反応生成物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、又は中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0180】
<流路>
次に、図7を参照して、軟水化装置1bの再生処理の際に形成される第一循環流路40cと第二循環流路40dについて説明する。図7は、軟水化装置1bの樹脂再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
【0181】
第一循環流路40cは、図7(白矢印)に示すように、酸性電解水循環ポンプ24によって酸性電解水貯水槽26から送出された酸性電解水が、電解槽11bの第一取水口35、第一吐出口36、第二軟水化槽4b、及び第一軟水化槽4aを流通し、酸性電解水貯水槽26に戻って循環する流路である。より詳細には、第一循環流路40cは、酸性電解水循環ポンプ24によって酸性電解水貯水槽26から送出された水が、第一送水流路47、第一取水口35、第一吐出口36、第一供給流路41、開閉弁63、第二軟水化槽4b、第一バイパス流路43、開閉弁65、第一軟水化槽4a、第一回収流路45、開閉弁61、酸性電解水貯水槽26の順に流通して循環する流路である。
【0182】
第二循環流路40dは、図7(黒矢印)に示すように、アルカリ性電解水循環ポンプ25によってアルカリ性電解水貯水槽28から送出されたアルカリ性電解水が、電解槽11bの第二取水口37、第二吐出口38、第二中和槽5b、及び第一中和槽5aを流通し、アルカリ性電解水貯水槽28に戻って循環する流路である。より詳細には、第二循環流路40dは、アルカリ性電解水循環ポンプ25によってアルカリ性電解水貯水槽28から送出された水が、第二送水流路48、第二取水口37、第二吐出口38、ろ過部15、第二供給流路42、開閉弁64、第二中和槽5b、第二バイパス流路44、開閉弁66、第一中和槽5a、第二回収流路46、開閉弁62、アルカリ性電解水貯水槽28の順に流通して循環する流路である。
【0183】
<制御部>
次に、図9を参照して、制御部20bの構成の一例について説明する。図9は、軟水化装置1bの制御部20bの各構成を示す機能ブロック図である。制御部20bは、判定部22、記憶部23b、第一係数算出部19c、第二係数算出部19d、第三電気伝導度算出部19e、算出部19bを備える。
【0184】
制御部20bは、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部20bは、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9及び中和槽5の弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生処理を制御する。さらに、制御部20bは、軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを制御する。この際、制御部20bは、電解槽11b、酸性電解水循環ポンプ24、アルカリ性電解水循環ポンプ25、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73~開閉弁76の動作を制御し、軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを行い、それぞれの処理を実行させる。
【0185】
また、制御部20bは、判定部22、記憶部23b、第一係数算出部19c、第二係数算出部19d、第三電気伝導度算出部19e、算出部19b、表示部21と接続され、軟水の電気伝導度、基準電気伝導度、第一係数、第二係数、第三電気伝導度及び算出された軟水中の硬度などの入出力を制御する。
【0186】
なお、制御部20bは、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、光ディスク、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0187】
<<判定部>>
判定部22は、軟水検知部6a、後述する記憶部23b、及び算出部19bと接続される。判定部22は、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度及び記憶部23bに記憶された基準電気伝導度を受け付ける。判定部22は、入力された軟水の電気伝導度と基準電気伝導度とを比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期と判定し、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。判定結果によって、算出部19bでの軟水中の硬度成分の算出方法を変更する。
【0188】
第一期及び第二期の具体的な判定方法について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置による軟水の電気伝導度変化を示す図である。図11は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置による軟水のイオン濃度変化を示す図である。図11の(a)は硬度成分以外のイオン、例えばナトリウムイオンの濃度変化を示す図であり、図11の(b)は硬度成分の濃度変化を示す図である。なお、図10及び図11に記載の「原水総通水量」とは、再生処理終了後からの原水の累計通水量である。
【0189】
具体的には、軟水化装置1bの軟水化処理時を例とすると、図10に示すように、軟水の電気伝導度の挙動から、軟水化処理は、3つの区間D、区間E、及び区間Fに分けられる。区間Dは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度を下回る区間である。区間Eは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度と同程度(例えば、基準電気伝導度から±5%程度)となる区間である。区間Fは、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度を上回る区間である。判定部22は、区間Dに相当する部分を第一期、区間E及び区間Fに相当する部分を第二期と判定する。
【0190】
判定部22が、第一期及び第二期をこのように判定する理由を説明する。
【0191】
原水が軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9を流通することで軟水化される際に、弱酸性陽イオン交換樹脂9の選択性の強弱によって、原水中の硬度成分であるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンと、硬度成分以外のナトリウムイオン等の一価の陽イオンとは、弱酸性陽イオン交換樹脂9への吸着能が異なる。つまり、原水からの取り除かれやすさが異なる。具体的には、硬度成分の方が、硬度成分以外の陽イオンよりも弱酸性陽イオン交換樹脂9とのイオン交換反応が起こりやすく、原水中から除去されやすい。
【0192】
そのため、図11(b)に示すように、第一期である区間Dにおいて、原水中の硬度成分の大部分が原水から除去され、原水総通水量が増加しても、硬度成分濃度は大幅には上昇せずに徐々に上昇する。一方、第一期である区間Dにおいて、図11(a)に示すように、軟水中のナトリウム等の一価の陽イオンは、原水から除去されにくくなり、原水中のナトリウム濃度と同等まで上昇する。これは、一価の陽イオンが硬度成分と比較し弱酸性陽イオン交換樹脂9に吸着しづらいことに加え、原水総通水量の増加による弱酸性陽イオン交換樹脂9のイオン吸着性能が低下するためである。その後、軟水中のナトリウム等の一価の陽イオン濃度が、一時的に原水中の一価の陽イオンの濃度を上回る。これは、一価の陽イオンよりも硬度成分の方が弱酸性陽イオン交換樹脂9への吸着能が高いため、一度弱酸性陽イオン交換樹脂9に吸着した一価の陽イオンと原水中の硬度成分との交換反応が生じるためである。
【0193】
したがって、区間Dでは、軟水の電気伝導度の上昇は、主に硬度成分以外のナトリウムイオン等の一価の陽イオンの電気伝導度に由来する。
【0194】
また、区間Eにおいて、弱酸性陽イオン交換樹脂9への陽イオンの吸着により、弱酸性陽イオン交換樹脂9の性能が徐々に低下し、硬度成分は略全量がイオン交換される一方、ナトリウムイオン等は略全量がイオン交換されずに原水中に残存する。具体的には、図11(a)に示すように、軟水中のナトリウム濃度が原水中のナトリウム濃度より上回った値から原水中のナトリウム濃度に近づくことになる。すなわち、原水中のナトリウム等の一価の陽イオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂9へ吸着されない状態となる。一方、図11(b)に示すように、区間Eでは、弱酸性陽イオン交換樹脂9の性能低下により、原水中の硬度成分が弱酸性陽イオン交換樹脂9へ吸着しづらくなるため、軟水中の硬度成分濃度の上昇速度が区間Dの場合よりも増大する。したがって、区間Eでは、軟水中の硬度成分イオンの濃度上昇と硬度成分以外のイオンの濃度低下が同時に発生するため、軟水の電気伝導度は同程度の値を保ち続ける。
【0195】
また、区間Fにおいては、弱酸性陽イオン交換樹脂9の末端の官能基が持つ水素イオンはほとんど原水中の陽イオンと交換された状態となっているため、原水中の一価の陽イオン及び硬度成分とのイオン交換反応はほとんど発生しない。したがって、軟水中の硬度成分濃度は、区間Eと同等の速度で上昇し続ける。したがって、区間Fでは、軟水の電気伝導度の上昇のほとんどが硬度成分の濃度増加に起因する。
【0196】
すなわち、第一期である区間Dは、軟水中の硬度成分濃度が徐々に上昇する区間であり、第二期である区間Eと区間Fは、軟水中の硬度成分濃度が比較的に速く上昇する区間である。第一期においては、後述する第一係数と第二係数とに基づいて、後述する第三電気伝導度算出部19eで後述する第三電気伝導度を算出し、算出部19bに入力する。第二期においては、後述する記憶部23bが記憶された基準伝導度を算出部19bに入力する。第三電気伝導度は、第一期における硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を示す値であり、基準電気伝導度は、第二期における硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を示す値である。すなわち、判定部22の判定結果によって、算出部19bは第三電気伝導度または基準電気伝導度のいずれかを硬度成分の算出に使用する。
【0197】
<<記憶部>>
記憶部23bは、図9中の区間Dに相当する軟水の電気伝導度の値を基準電気伝導度として記憶する。記憶された基準電気伝導度は判定部22へ出力され、区間D、区間E、及び区間F、並びに第一期及び第二期を判定するために使用される。
【0198】
記憶部23bは、軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度、硬度成分以外のイオン濃度、及び軟水の電気伝導度を記憶する。
【0199】
記憶部23bは、第一係数算出部19cと接続され、記憶部23bが記憶した軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度、硬度成分以外のイオン濃度、及び軟水の電気伝導度を第一係数算出部19cに送信する。
【0200】
また、記憶部23bは、第二係数算出部19dと接続され、記憶部23bが記憶した硬度成分以外のイオン濃度を第二係数算出部19dに送信する。
【0201】
なお、軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度、硬度成分以外のイオン濃度、及び軟水の電気伝導度については、それぞれ軟水化装置1bが設置された時の試運転のデータを固定値として用いるようにしてもよいし、各地域の水質に沿った値を予め推測して設定しておいてもよい。また、どのタイミングの電気伝導度を基準電気伝導度とするかについては、原水総通水量及び原水総通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量(グラフで言うところの傾き)を考慮する。原水総通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量が一定以下(例えば、0.1μS/cm・L以下)、もしくは電気伝導度の変化量全体の中で一番小さいときの軟水の電気伝導度を基準電気伝導度とするのが好ましい。また基準電気伝導度は、一定の間隔(例えば1ヶ月)で更新して記憶することで、原水のイオン成分組成に変化が起きた場合に関しても変化に対応した基準電気伝導度度とすることができる。
【0202】
<<第一係数算出部及び第二係数算出部>>
第一係数算出部19cは、判定部22の判定結果が第一期である場合、第三電気伝導度を計算する際に算出部19bの入力データとして用いられる第一係数を算出する。
【0203】
第一係数算出部19cは、記憶部23bが記憶した軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度C、硬度成分以外のイオン濃度[E]、及び軟水の電気伝導度C(H+E)を用いて、第一係数kを算出する。第一係数は、軟水中の硬度成分以外のイオン濃度と電気伝導度の比率に対応する値である。
【0204】
具体的には、軟水の電気伝導度は、軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度と、軟水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度の和で表される。また、硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度は、軟水中の硬度成分以外のイオン濃度と第一係数との乗算で表示できる。すなわち、軟水中の硬度成分に対応する電気伝導度をC、硬度成分以外のイオン濃度を[E]、軟水の電気伝導度をC(H+E)とすると、第一係数kは以下の式(1)で表される。
【0205】
(H+E)-C =k×[E]…………(1)
第二係数算出部19dは、判定部22の判定結果が第一期である場合、第三電気伝導度を計算する際に算出部19bの入力データとして用いられる第二係数kを算出する。
【0206】
第二係数算出部19dは、記憶部23bが記憶した硬度成分以外のイオン濃度[E]を用いて、第二係数を算出する。第二係数は、原水の通水量に応じた軟水中の硬度成分以外のイオン濃度の変化速度に対応する値である。
【0207】
具体的には、軟水中の硬度成分以外のイオン濃度は、軟水化開始時における軟水中の硬度成分以外のイオン濃度と、原水の通水量及び第二係数の乗算と、の和により算出される。軟水化開始以降の軟水中の硬度成分以外のイオン濃度は、軟水化開始時における軟水中の硬度成分以外のイオン濃度に、原水の通水量に応じた軟水中の硬度成分以外のイオン濃度の上昇量を加えることにより算出できる。すなわち、軟水化開始時から現時点までの通水量をQ、通水量が0Lの時の軟水中の硬度成分以外のイオン濃度を[E](Q=0)とすると、第二係数kは以下の式(2)で表される。
【0208】
[E]=k×Q+[E](Q=0)…………(2)
そして、第一係数kと第二係数k2が以下の式(3)及び式(4)により算出できる。
【0209】
=(C(H+E)-C)/[E]…………(3)
=[E]-[E](Q=0)/Q…………(4)
<<第三電気伝導度算出部>>
第三電気伝導度算出部19eは、第一係数算出部19c及び第二係数算出部19dと接続され、第一係数と第二係数と現時点の通水量とを基に、第三電気伝導度を算出する。第三電気伝導度は、硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度である。算出された第三電気伝導度は、算出部19bへ送信される。また、式(3)及び式(4)により、第三電気伝導度Cが以下の式(5)で表示できる。
【0210】
=k×(k×Q+[E](Q=0))…………(5)
<<算出部>>
算出部19bは、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。算出の方法は、判定部22による判定が第一期か第二期かで異なる。
【0211】
第一期の場合、例えば記憶部23bから入力された第一係数と第二係数を用いて、中和軟水の硬度以外のイオンに対応する第三電気伝導度を計算し、軟水の電気伝導度から第三電気伝導度を減算して算出された値に所定値を乗算する。
【0212】
第二期の場合、例えば軟水の電気伝導度から基準電気伝導度を減算し、減算して算出された値に所定値を乗算する。
【0213】
なお、所定値として、第一期では「軟水の電気伝導度と第三電気伝導度との差分」と「軟水中の硬度成分」との間の比例定数を用いる。また、第二期では、所定値として、「軟水の電気伝導度と基準電気伝導度との差分」と「軟水中の硬度成分」との間の比例定数を用いる。一般的に水の電気伝導度は、水中のイオン成分の濃度に比例し、水中のイオン成分の濃度が高くなるほど、電気伝導度も大きくなる。イオン濃度と電気伝導度の比例定数は、イオン種によってそれぞれ異なる。第一期における「軟水の電気伝導度と第三電気伝導度との差分」または第二期における「軟水の電気伝導度と基準電気伝導度との差分」中では、主として硬度成分による電気伝導度が含まれるため、軟水化装置1bを使用する国や地域に対応した陽イオンの濃度によって、所定値の設定を調整することで、より正確に軟水中の硬度成分の算出を行うことができる。
【0214】
以上が軟水化装置1bの構成である。
【0215】
続いて、軟水化装置1bの動作について説明する。
【0216】
<軟水化処理、再生処理、及び排水処理>
次に、図8を参照して、軟水化装置1bの軟水化処理、再生処理、及び排水処理について説明する。図8は、軟水化装置1bの動作時の状態を示す図である。軟水化処理、再生処理、及び排水処理では、制御部20bは、図8に示すように、軟水検知部6、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73~開閉弁76、電解槽11bの電極12、及び酸性電解水循環ポンプ24、アルカリ性電解水循環ポンプ25を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。
【0217】
ここで、図8中の「ON」は、軟水検知部6aが通電している状態、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極12が通電している状態、及び酸性電解水循環ポンプ24、アルカリ性電解水循環ポンプ25が動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、軟水検知部6aが通電していない状態、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極12が通電していない状態、酸性電解水循環ポンプ24、アルカリ性電解水循環ポンプ25が停止している状態をそれぞれ示す。
【0218】
<<軟水化処理>>
まず、軟水化装置1bによる軟水化処理時の動作について、図8の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0219】
軟水化装置1bでは、図8に示すように、軟水化処理(軟水化時)において、開閉弁51~開閉弁54を開放した状態で、取水口7に設けた開閉弁55を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が軟水化槽4と中和槽5とを流通するので、軟水化装置1bは、取水口7から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73~開閉弁76は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽11bの電極12、酸性電解水循環ポンプ24及びアルカリ性電解水循環ポンプ25の動作も停止した状態である。
【0220】
図6に示すように、軟水化装置1bの軟水化処理では、軟水化装置1と同じ流路で、供給される原水は、流入口2から流路30、第一軟水化槽4a、流路31、第一中和槽5a、流路32、第二軟水化槽4b、流路33、第二中和槽5bの順に供給される。そして、原水は、原水中の硬度成分が軟水化槽4に吸着され、酸性軟水となって中和槽5に流入する。酸性軟水は、中和槽5で水素イオンを吸着され、中和軟水となる。そして、原水と比較し硬度成分が低減した中和軟水は、流路34を流通して取水口7から軟水化装置1b外に取り出される。
【0221】
そして、軟水化装置1bでは、制御部20bで特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行する。
【0222】
<<再生処理>>
軟水化装置1bの再生装置8bによる再生処理時の動作について、図8の「水注入時」及び「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0223】
まず、図8に示すように、水注入時において、開閉弁51及び開閉弁61を開放する。これにより、軟水化装置1bは、原水の圧力によって、流入口2から第一回収流路45を介して原水を酸性電解水貯水槽26へ導入する。また、開閉弁52及び開閉弁62を開放する。それにより、流入口2から流入された原水が、第一軟水化槽4aを通過後に、第二回収流路46を介してアルカリ性電解水貯水槽28に導入される。この時、開閉弁53~開閉弁55、開閉弁63~開閉弁66、及び開閉弁73~76は閉止している。酸性電解水貯水槽26とアルカリ性電解水貯水槽28に、第一循環流路40cと第二循環流路40dそれぞれの流量に応じて所定の量の水を貯留することで、再生装置8bは、再生時の水量を確保することができる。
【0224】
次に、再生時において、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁75及び開閉弁76を閉止して、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73及び開閉弁74を開放すると、図7に示すように、第一循環流路40c及び第二循環流路40dがそれぞれ形成される。
【0225】
そして、第一循環流路40cにおいて、電解槽11bの電極12a及び酸性電解水循環ポンプ24を動作させると、電極12aで生成した酸性電解水は、第一供給流路41を流通し第二軟水化槽4b内に送水され、内部の第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを流通する。そして、第二軟水化槽4bを流通した酸性電解水は、第一バイパス流路43を流通し、第一軟水化槽4a内に送水され、内部の第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを流通する。すなわち、酸性電解水を第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに通水することで、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bに吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bが再生される。その後、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aを流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路45へ流入する。すなわち、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bを流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一バイパス流路43及び第一回収流路45を介して酸性電解水貯水槽26内に回収される。
【0226】
一方、第二循環流路40dにおいて、電解槽11bの電極12b及びアルカリ性電解水循環ポンプ25を動作させると、電極12bで生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路42を通って第二中和槽5b内に送水され、内部の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通する。そして、第二中和槽5bを流通したアルカリ性電解水は、第二バイパス流路44を流通し、第一中和槽5a内に送水され、内部の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10aを流通する。すなわち、アルカリ性電解水を第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bに通水させることで、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bに吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bが再生される。その後、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路46へ流入する。すなわち、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10bを流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二バイパス流路44及び第二回収流路46を介してアルカリ性電解水貯水槽28内に回収される。
【0227】
このように、第一循環流路40cは、酸性電解水の水素イオンを第二弱酸性陽イオン交換樹脂9b及び第一弱酸性陽イオン交換樹脂9aの硬度成分イオンと置き換える。置き換えた硬度成分イオンは酸性電解水貯水槽26に回収される。また、第二循環流路40dは、アルカリ性電解水の水酸化物イオンを第二弱塩基性陰イオン交換樹脂10b及び第一弱塩基性陰イオン交換樹脂10aの陰イオンと置き換える。置き換えた陰イオンはアルカリ性電解水貯水槽28に回収される。
【0228】
そして、酸性電解水貯水槽26に回収された硬度成分イオンを含む酸性電解水は、酸性電解水循環ポンプ24によって、電解槽11bの電極12a側に送水される。また、アルカリ性電解水貯水槽28に回収された陰イオンを含むアルカリ性電解水は、アルカリ性電解水循環ポンプ25によって、電解槽11bの電極12b側に送水される。酸性電解水とアルカリ性電解水が、電解槽11bにおいて再び電解され、それぞれ水素イオンと水酸化物イオンを生成する。電解槽11bにて再び電解された電解水(酸性電解水、アルカリ性電解水)は、それぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂9の再生と弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生に供される。この時、電極12a側の一部の硬度成分イオンが電極12bに引き寄せられ、一方、電極12b側の一部の陰イオンが電極12aに引き寄せられる。したがって、電極12b側において、引き寄せられた硬度成分イオンがアルカリ性電解水中の水酸化物イオンなどと反応し、固体として析出される。例えば、酸性電解水中の硬度成分がカルシウムイオンである場合、アルカリ性電解水により水酸化カルシウムが生じたり、水中に常在する炭酸イオンと結合して炭酸カルシウムが生じたりする。そのため、軟水化装置1bは、水素イオンを多く含み、硬度成分イオンを少量含む酸性電解水が軟水化槽4に流入し、硬度成分が軟水化槽4において、弱酸性陽イオン交換樹脂9に再吸着するのを抑制することができる。また、軟水化装置1bは、水酸化物イオンを多く含み、原水に含まれる他の陰イオンを少量含むアルカリ性電解水が中和槽5に流入し、原水に含まれる他の陰イオンが中和槽5において弱塩基性陰イオン交換樹脂10に再吸着するのを抑制することができる。したがって、軟水化槽4と中和槽5の再生効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0229】
その後、アルカリ性電解水が第二吐出口38から、ろ過部15へ流通する際に反応生成した固体を除去され、第二供給流路42を介して第二中和槽5bに再び通水される。また、酸性電解水が第一吐出口36から、第一供給流路41を介して、第二軟水化槽4bに再び通水される。
【0230】
そして、軟水化装置1bでは、再生処理が終了すると電極12、酸性電解水循環ポンプ24及びアルカリ性電解水循環ポンプ25の動作を停止させる。また、開閉弁75、開閉弁76を開放することで排水処理へ移行する。なお、再生処理の終了は、再生処理開始(電極12の動作開始時)から一定時間とすればよい。
【0231】
<<排水処理>>
軟水化装置1bでは、再生処理が終了すると排水処理へ移行する。ここで、排水処理とは、循環流路40内に残存している酸性電解水及びアルカリ性電解水の排水を行う処理である。
【0232】
次に、軟水化装置1bによる排水処理時の動作について、図8の「排水時」の欄を参照して説明する。
【0233】
軟水化装置1bでは、図8に示すように、排水処理(排水時)において、開閉弁51~開閉弁55を閉止して、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73~開閉弁76を開放する。
【0234】
これにより、第一循環流路40cに残存している酸性電解水を酸性電解水貯水槽26に流入させることができる。また、第二循環流路40dに残存しているアルカリ性電解水をアルカリ性電解水貯水槽28に流入させることができる。
【0235】
次に、開閉弁75を開放すると空気抜き弁27の作用により、酸性電解水貯水槽26内の酸性電解水を装置外に排出することができる。また、開閉弁76を開放すると空気抜き弁29の作用により、アルカリ性電解水貯水槽28内のアルカリ性電解水を装置外に排出することができる。
【0236】
排水処理を行うことにより、軟水化処理を再開した際に、循環流路40内に残存する酸性電解水及びアルカリ性電解水が、流入口2から流入する原水と混在し、取水口7から排出されることを防ぐことができる。
【0237】
そして、軟水化装置1bでは、排水処理が終了すると、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁73~開閉弁76を閉止させ、開閉弁51~開閉弁55を開放することで軟水化処理へ移行する。なお、排水処理の終了は、排水処理開始から一定時間経過時とすればよい。
【0238】
このようにして、軟水化装置1bでは、軟水化処理、再生処理、及び排水処理が繰り返し実行される。
【0239】
<<軟水の硬度の算出>>
軟水化装置1bにおける、軟水の硬度算出方法について説明する。
【0240】
軟水化装置1bでは、軟水化処理中に、軟水の硬度を算出する。まず、軟水検知部6aは、流路34を流通する軟水の電気伝導度を検知する。検知された軟水の電気伝導度は、判定部22に送信される。また、記憶部23bは、基準電気伝導度を記憶しており、基準電気伝導度を判定部22に送信する。
【0241】
判定部22は、軟水検知部6aから入力された軟水の電気伝導度と記憶部23bから入力された基準電気伝導度とを比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。
【0242】
第一期と判定した場合には、第三電気伝導度算出部19eが、現時点の通水量と第一係数算出部19cから入力された第一係数と第二係数算出部19dから入力された第二係数とを基に、第三電気伝導度を算出し、算出部19へ出力する。
【0243】
次に、算出部19bは、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度と第三電気伝導度を基に、減算して算出された値に所定値を乗算して硬度を算出する。算出部19bが算出した硬度は、表示部21へ送信され、表示部21において表示される。
【0244】
第二期と判定した場合には、算出部19bは、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度と判定部22または記憶部23から出力された基準電気伝導度を基に、減算して算出された値に所定値を乗算して硬度を算出する。算出部19bが算出した硬度は、表示部21へ送信され、表示部21において表示される。
【0245】
以上、本実施の形態3に係る軟水化装置1bによれば、以下の効果を享受することができる。
【0246】
軟水化装置1bは、軟水化槽4と、中和槽5と、軟水検知部6aと、判定部22と、記憶部23bと、第一係数算出部19cと、第二係数算出部19dと、第三電気伝導度算出部19eと、算出部19bと、表示部21とを備える。軟水化槽4は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂9により軟水化する。中和槽5は、軟水化槽4を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂10により中和する。軟水検知部6aは、軟水化槽4および中和槽5を通過した軟水の電気伝導度を検知する。判定部22は、軟水検知部6aで検知された軟水の電気伝導度と基準電気伝導度を比較し、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの期間を第一期、基準電気伝導度に達した以降の期間を第二期と判定する。記憶部23bは、原水通水量に対する軟水の電気伝導度の変化量が小さいときの軟水の電気伝導度を基準電気伝導度として記憶する。また、記憶部23bは、中和軟水の硬度に対応する電気伝導度と軟水の電気伝導度と軟水中の硬度成分以外のイオン濃度である軟水対象イオン濃度を記憶する。第一係数算出部19cと第二係数算出部19dは記憶部23bから出力された中和軟水の硬度に対応する電気伝導度と軟水の電気伝導度及び軟水中の硬度成分以外のイオン濃度である軟水対象イオン濃度を基に、第一係数と第二係数を算出する。第三電気伝導度算出部19eは第一係数算出部19cから算出された第一係数と第二係数算出部19dから算出された第二係数を基に、第三電気伝導度を算出する。算出部19aは、判定部22の判定結果によって、軟水中の硬度成分を算出する。判定結果が第一期である場合、軟水検知部6aで出力された軟水の電気伝導度と、第三電気伝導度算出部19eから出力された第三電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。判定結果が第二期である場合、軟水検知部6aで出力された軟水の電気伝導度と、記憶部23bから出力された基準電気伝導度を基に、軟水中の硬度成分を算出し、出力する。表示部21は、算出部19aにより算出された軟水の硬度を通知する。そして、軟水化装置1aは、原水が、軟水化槽4、中和槽5、及び軟水検知部6aの順に流通するように構成されている。
【0247】
こうした構成によれば、第一期における軟水中の硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度の上昇速度を予測することで、軟水中の硬度成分に対応する硬度値を計算できる。具体的には、実施の形態2では、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの第一期の場合、軟水中の硬度を0とみなしていたが、軟水化装置1bでは実施の形態2とは異なり、軟水の電気伝導度が基準電気伝導度に達するまでの第一期の場合、第一係数及び第二係数に基づいて、軟水中の硬度成分以外のイオンに対応する第三電気伝導度の変化挙動を予測し、軟水の電気伝導度から予測された第三電気伝導度を引くことにより、軟水の硬度成分を算出できる。したがって、軟水化処理の第一期と第二期を含む全体的な硬度成分の濃度変化を算出部19bで算出し、表示部21で表示できる。つまり、第一期においても、取水口7から得られる軟水の硬度変化を算出することができるため、軟水の硬度をより正確に知ることができる。
【0248】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0249】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、原水検知部3における電気伝導度測定及び取得部17における原水中の硬度成分以外のイオンに対応する第一電気伝導度の取得の代わりに、その他の手段を用いて、硬度成分以外のイオン成分量を測定し、それから求められる硬度成分以外のイオンに対応する電気伝導度を第一電気伝導度として取得しても良い。その他の手段として、イオンクロマトグラフィーなどの装置による測定やパックテストなどが挙げられるが、電気伝導度測定と比較してイオン成分量の測定の精度が良い測定手段であれば、軟水中の硬度成分をより正確に算出することができる。
【0250】
また、本実施の形態1、2、及び3に係る軟水化装置1、軟水化装置1a、及び軟水化装置1bでは、軟水化槽4及び中和槽5は、それぞれ2個ずつであるとしたが、これに限られない。例えば、それぞれ1個ずつであってもよいし、3個以上ずつであってもよい。基本的には、軟水化装置1、および軟水化装置1a、1b中で使用する弱酸性陽イオン交換樹脂9及び弱塩基性陰イオン交換樹脂10の総量が一定である場合、軟水化槽4及び中和槽5の分割数を多くするほど、軟水化処理時に、軟水化と中和を交互に行う回数が増加し、軟水化性能をさらに向上させることができる。
【0251】
また、本実施の形態1、2、及び3に係る軟水化装置1、軟水化装置1a、及び軟水化装置1bでは、第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bの流路長及び流路断面積はそれぞれ等しいものとしたが、この限りではない。例えば、流路長もしくは流路断面積が異なっていてもよいし、流路長及び流路断面積の双方が異なっていてもよい。このようにしても、実施の形態1と同様の効果が得られる。なお、第一中和槽5a及び第二中和槽5bについても同様である。
【0252】
また、本実施の形態1、2、及び3に係る軟水化装置1、軟水化装置1a、及び軟水化装置1bでは、第一軟水化槽4aに充填されている第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二軟水化槽4bに充填されている第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bの体積を等しいものとしたが、この限りではない。例えば、第一弱酸性陽イオン交換樹脂9a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂9bの体積がそれぞれ異なっていてもよいし、異なる種類の弱酸性陽イオン交換樹脂9を用いてもよい。これにより、軟水化性能を調整することができ、目的に応じた軟水化性能をもつ軟水化装置1が得られる。なお、第一中和槽5a及び第二中和槽5bについても同様である。
【0253】
また、本実施の形態1、2、及び3に係る軟水化装置1、軟水化装置1a、及び軟水化装置1bでは、酸性電解水を第二軟水化槽4b、第一軟水化槽4aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、酸性電解水を第一軟水化槽4a及び第二軟水化槽4bの順に流通させるようにしてもよい。さらには、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を軟水化槽4の下流側から流通させたが、上流側から流通させてもよい。このようにしても、軟水化槽4の再生処理を行うことができる。
【0254】
また、本実施の形態1、2、及び3に係る軟水化装置1、軟水化装置1a、及び軟水化装置1bでは、制御部20または制御部20bで特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行するようにしたが、これに限られない。例えば、算出部19で算出された軟水中の硬度成分量が予め設定された基準値を超えた場合に、制御部20または制御部20bが電解槽11または電解槽11bを稼働させ、再生処理を実行するようにしてもよい。これにより、軟水中の硬度成分量に基づいて、再生処理の実行を判断することができる。そのため、軟水化槽4の弱酸性陽イオン交換樹脂9の状態をより正確に判断することができ、より適切なタイミングでの弱酸性陽イオン交換樹脂9及び弱塩基性陰イオン交換樹脂10の再生を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0255】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0256】
1 軟水化装置
1a 軟水化装置
1b 軟水化装置
2 流入口
3 原水検知部
4 軟水化槽
4a 第一軟水化槽
4b 第二軟水化槽
5 中和槽
5a 第一中和槽
5b 第二中和槽
6、6a 軟水検知部
7 取水口
8、8b 再生装置
9 弱酸性陽イオン交換樹脂
9a 第一弱酸性陽イオン交換樹脂
9b 第二弱酸性陽イオン交換樹脂
10 弱塩基性陰イオン交換樹脂
10a 第一弱塩基性陰イオン交換樹脂
10b 第二弱塩基性陰イオン交換樹脂
11、11b 電解槽
12 電極
12a 電極
12b 電極
13 処理槽
14 送水ポンプ
15 ろ過部
16 空気抜き弁
17 取得部
18 校正部
19、19a、19b 算出部
19c 第一係数算出部
19d 第二係数算出部
19e 第三電気伝導度算出部
20、20b 制御部
21 表示部
22 判定部
23、23b 記憶部
24 酸性電解水循環ポンプ
25 アルカリ性電解水循環ポンプ
26 酸性電解水貯水槽
27 空気抜き弁
28 アルカリ性電解水貯水槽
29 空気抜き弁
30、31、32、33、34 流路
35 第一取水口
36 第一吐出口
37 第二取水口
38 第二吐出口
40 循環流路
40a、40c 第一循環流路
40b、40d 第二循環流路
41 第一供給流路
42 第二供給流路
43 第一バイパス流路
44 第二バイパス流路
45 第一回収流路
46 第二回収流路
47 第一送水流路
48 第二送水流路
50 送水流路
51、52、53、54、55 開閉弁
61、62、63、64、65、66 開閉弁
71、72、73、74、75、76 開閉弁
80 隔膜
81 陽極室
82 陰極室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11