(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110834
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】光導波路のクラッドの作製に用いられる樹脂組成物、光導波路及びプリント基板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230802BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20230802BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20230802BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20230802BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230802BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L15/00
C08L9/06
C08K5/3477
G02B6/12 371
H05K1/03 610H
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146806
(22)【出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022012427
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】松原 由奈
【テーマコード(参考)】
2H147
4J002
【Fターム(参考)】
2H147DA09
2H147EA16B
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA18A
2H147EA18B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147FA15
2H147FA17
2H147FC01
2H147GA12
4J002AC08
4J002AC081
4J002AC111
4J002BG00
4J002BP011
4J002EH106
4J002EK030
4J002EU196
4J002EX016
4J002EX066
4J002FD010
4J002FD020
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4J002FD146
4J002FD156
4J002FD170
4J002FD206
4J002FD310
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】基板上に光導波路を作製する場合において、基板の反りの発生を軽減すること。
【解決手段】光導波路のクラッドの作製に用いる樹脂組成物であって、樹脂と、重合性化合物と、を含み、当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、50℃から150℃の温度における平均線膨張係数[ppm/℃]と、30℃の温度における弾性率[GPa]の積で定義されるストレスインデックスの値が、10.0以上20.0以下である樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路のクラッドの作製に用いる樹脂組成物であって、
樹脂と、
重合性化合物と、
を含み、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、50℃から150℃の温度における平均線膨張係数[ppm/℃]と、30℃の温度における弾性率[GPa]の積で定義されるストレスインデックスの値が、10.0以上20.0以下である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、エラストマーである樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、スチレン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体、
を含む樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、ジエン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体、
を含む樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける全光線透過率[%]が95[%]以上である樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける、拡散透過率の値をa[%]、全光線透過率をb[%]としたときに、以下の式1によって得られるHazeの値が、5以下である樹脂組成物。
[式1]
a×100/b
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化させてなるクラッド層を有する、
光導波路。
【請求項8】
請求項7に記載の光導波路を備えたプリント基板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント基板であって、
当該プリント基板は、フレキシブル基板であるプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路のクラッドの作製に用いられる樹脂組成物、光導波路及びプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の分野における光部品として、光分岐結合器(光カプラ)、光合分波器等が開発されており、これらに用いる光導波路型素子が有望視されている。この光導波路型素子(以下単に「光導波路」とも言う)としては、従来の石英系光導波路の他、製造(パターニング)が容易で汎用性に富むポリマー系光導波路があり、最近では後者の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ビスフェノール型エポキシ化合物(A)と、一般式で示される構造を含み、分子量が350以上であるエポキシ化合物(B)とを含有することを特徴とする光導波路クラッド用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、この光導波路を基板上に作製することが検討されている。しかしながら、従来の光導波路を基板上に作製した場合、基板に反りが発生してしまう場合がある。
本発明が解決しようとする課題の一例は、基板上に光導波路を作製する場合において、基板の反りの発生を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す光導波路のクラッドの作製に用いられる樹脂組成物、光導波路、及びプリント基板が提供される。
【0007】
[1]
光導波路のクラッドの作製に用いる樹脂組成物であって、
樹脂と、
重合性化合物と、
を含み、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、50℃から150℃の温度における平均線膨張係数[ppm/℃]と、30℃の温度における弾性率[GPa]の積で定義されるストレスインデックスの値が、10.0以上20.0以下である樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、エラストマーである樹脂組成物。
[3]
上記[2]に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、スチレン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体、
を含む樹脂組成物。
[4]
上記[2]または[3]に記載の樹脂組成物であって、
前記樹脂は、ジエン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体、
を含む樹脂組成物。
[5]
上記[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける全光線透過率[%]が95[%]以上である樹脂組成物。
[6]
上記[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける、拡散透過率の値をa[%]、全光線透過率をb[%]としたときに、以下の式1によって得られるHazeの値が、5以下である樹脂組成物。
[式1]
a×100/b
[7]
上記[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化させてなるクラッド層を有する、
光導波路。
[8]
上記[7]に記載の光導波路を備えたプリント基板。
[9]
上記[8]に記載のプリント基板であって、
当該プリント基板は、フレキシブル基板であるプリント基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上に光導波路を作製する場合において、基板の反りの発生を軽減できる樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る樹脂組成物を用いて基板上に作製した光導波路の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。
【0012】
本明細書中、(メタ)アクリルとの表記は、メタアクリルとアクリルの両方を表す。
【0013】
[光導波路のクラッドの作製に用いる樹脂組成物]
本実施形態に係る光導波路のクラッドの作製に用いられる樹脂組成物は、
樹脂と、
重合性化合物と、
を含み、
当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、50℃から150℃の温度における平均線膨張係数[ppm/℃]と、30℃の温度における弾性率[GPa]の積で定義されるストレスインデックス(以下「SI値」とも表記する)の値が、10.0以上20.0以下であることが好ましく、より好ましくは11.0以上19.0以下であり、さらにより好ましくは12.0以上18.0以下である。
SI値が上記の範囲以内であることにより、当該樹脂組成物を用いて、基板上に光導波路を作製した際に、基板の反りが軽減される。本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、プリント基板上に光導波路を作製する際に好適に用いられる。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、プリント基板の中でも、FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)などのフレキシブル基板上に光導波路を作製する際に、特に好適に用いられる。
【0014】
SI値が上記の範囲以内であることにより、基板の反りが軽減される理由は必ずしも明らかではないが、以下のように説明することができる。
【0015】
基板上に、樹脂組成物の硬化体により光導波路を作製する場合において、基板の反りの発生には様々な因子が関係していると考えられる。特に反りとの関係が大きいと推測される因子として、(i)樹脂組成物の硬化体の平均線膨張係数と、(ii)樹脂組成物の硬化体の弾性率とを挙げることができる。
【0016】
(i)樹脂組成物の硬化体の平均線膨張係数が反りに関係していると推測される理由は、以下のように説明することができる。
樹脂組成物の硬化体により光導波路を作製する場合、通常、基板上に形成した未硬化の樹脂組成物を熱硬化させて硬化体とし、その後冷却する、という手順を踏む。このとき、硬化体の平均線膨張係数が大きいと、冷却の際の収縮が大きくなり、結果、反りにつながってしまうと考えられる。
【0017】
(ii)樹脂組成物の硬化体の弾性率が反りに関係していると推測される理由は、以下のように説明することができる。
反りの発生の要因の1つは、基板-光導波路間に応力が発生することによる。弾性体におけるフックの法則にしたがえば、応力の大きさは、弾性率と変形量の積で表されるから、硬化体の弾性率が大きいと反りが発生しやすく、小さいと反りが発生しにくくなると考えられる。
【0018】
本実施形態においては、上記のように、特に反りとの関係が大きいと推測される、樹脂組成物の硬化体の平均線膨張係数[ppm/℃]と、樹脂組成物の硬化体の弾性率[GPa]との「積」をストレスインデックス(SI値)と定義し、このSI値が20.0以下となるように樹脂組成物を設計した。これにより反りの軽減を図ることができた。
【0019】
なお、SI値は小さければ小さいほどよいが、現実的な材料設計の観点などから、本実施形態においてはSI値の下限を10.0以上としている。
【0020】
SI値は、前記硬化体の、JIS K 6911に従って測定された弾性率と、JIS K 7197に従って測定された平均線膨張係数の積から算出できる。
【0021】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける全光線透過率が95[%]以上であることがより好ましい。
これにより、樹脂組成物から得られる光導波路を通過する光の損失を十分軽減できる。
全光線透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)V-700)を用いて、JIS K 7361に従って測定することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、当該樹脂組成物を160℃で1時間加熱して得られる硬化体の、厚さ0.05mmの試験片の波長850nmにおける、Hazeの値が、5以下であることが好ましい。Hazeの値は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)V-700)を用いて、JIS K 7136に従って測定することができ、拡散透過率の値をa[%]、全光線透過率をb[%]としたときに、以下の式1によって得られる値である。
[式1]
a×100/b
これにより、樹脂組成物から得られる光導波路を通過する光の損失を十分軽減できる。
【0023】
以下、樹脂組成物の各成分について具体的に説明する。
【0024】
〈樹脂〉
樹脂は、特に限定されない。例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いてもよい。
【0025】
この中でも、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、環状オレフィン系樹脂などを用いることができる。
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、または尿素アクリレートからなる群から選択される一種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格などを有していてもよい。
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含むものが挙げられる。
【0026】
また、樹脂は、必要に応じて熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、エポキシ樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0027】
また、樹脂は、樹脂組成物の硬化体の弾性率がより適当になる観点から、エラストマーであることが好ましい。また、エラストマーは、樹脂組成物の硬化体の透明性が優れる観点から、スチレン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体を含むことがより好ましい。また、エラストマーは、樹脂組成物の硬化体の弾性率がさらにより適当になる観点から、ジエン系モノマー由来の構造単位を含むことがより好ましい。また、エラストマーは、スチレン系モノマー由来の構造単位と、ジエン系モノマー由来の構造単位とを含む共重合体であることがより好ましい。具体的には、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SEPS)及びスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体(SEEPS)ならびにこれらの水添物が挙げられる。
【0028】
上記スチレン系モノマー由来の構造単位と、ジエン系モノマー由来の構造単位とを含む共重合体において、スチレン系モノマー由来の構造単位の含有量は、当該共重合体中の全構造単位に対して、好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは15モル%以上85モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上80モル%以下、ことさらに好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは35モル%以上80モル%以下、特に好ましくは40モル%以上80モル%以下である。
【0029】
また、ジエン系モノマー由来の構造単位の含有量は、当該共重合体中の全構造単位に対して、好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは15モル%以上85モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上80モル%以下、ことさらに好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは35モル%以上80モル%以下、特に好ましくは40モル%以上80モル%以下である。
【0030】
また、ジエン系モノマー由来の構造単位は、基板の反りをより軽減できる観点から、ブタジエン及びイソプレンからなる群から選ばれる、少なくとも一つのモノマーを含むことが好ましい。また、樹脂組成物から得られる光導波路のクラッド層が着色しにくくなる観点からは、ジエン系モノマー由来の構造単位は、水素添加されていることがさらにより好ましい。
【0031】
上記スチレン系モノマー由来の構造単位と、ジエン系モノマー由来の構造単位とを含む共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、株式会社クラレ製の「SEPTON(登録商標)、株式会社旭化成社製の「タフテック(登録商標)」等が挙げられる。
【0032】
また、樹脂は、アルカリ性水溶液に対して可溶性であってもよく、不溶性であってもよい。光導波路の作製において、アルカリ性水溶液を用いたパターニング処理が含まれない場合には、余計な官能基を含まないことにより樹脂組成物から得られる光導波路のクラッド層が劣化したり着色したりしにくい観点などから、アルカリ性水溶液に対して不溶性の樹脂、換言すると、カルボキシ基やフェノール性ヒドロキシ基などのアルカリ可溶性基を有しない樹脂が好適に用いられる。
【0033】
樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、99質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。これにより、耐熱性、機械的特性、透明性、誘電特性、耐溶剤性、成形性および寸法安定性等のバランスをより良好にすることができる。
【0034】
〈重合性化合物〉
本実施形態に係る樹脂組成物は、重合性基を含む重合性化合物を含んでもよい。この場合、樹脂組成物から得られる光導波路のクラッド層の耐熱性が向上する。
【0035】
重合性基は、例えば、エポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリル基、及びアリル基などである。
【0036】
エポキシ基を含む重合性化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ-GPS)、シリコーンエポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0037】
(メタ)アクリル基を含む重合性化合物としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラントリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が好適に用いられる。
【0038】
アルコキシシリル基を含む重合性化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランのようなシランカップリング剤等が好適に用いられる。
【0039】
アリル基を含む重合性化合物としては、例えば、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類が好適に用いられる。
また、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、および2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、および1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H‐1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。
【0040】
また、重合性化合物は、重合性基を2つ以上含むことが好ましく、重合性基を3つ以上含むことがより好ましい。
【0041】
また、重合性化合物は、複素環を含むことが好ましく、少なくとも2つのヘテロ原子を含む複素環を含むことがより好ましく、少なくとも2つのヘテロ原子を含み、少なくとも2つのヘテロ原子が重合性基を有する官能基と共有結合している複素環を含むことがさらにより好ましく、以下一般式(a)で表されることが最もより好ましい。
【化1】
【0042】
一般式(a)において、R1,R2及びR3の少なくとも2つは、それぞれ独立に、重合性基を有する官能基である。また、上述の共重合体との相溶性が優れている観点から、R1,R2及びR3全てがアリル基であることがより好ましい。
【0043】
また、上述のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子およびホウ素原子などが挙げられる。また、ヘテロ原子としては、硬化体の耐熱性が向上する観点から、窒素原子が特に好ましい。
【0044】
樹脂組成物が、重合性化合物を含む場合、重合性化合物の含有量の下限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。また、重合性化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、60質量%以下であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、樹脂組成物は、耐熱性が向上する。
【0045】
〈ラジカル重合開始剤〉
本実施形態に係る樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含んでもよい。ラジカル重合開始剤としては、具体的には、アゾ化合物、過酸化物、パーオキシエステルなどを用いることができる。過酸化物としては、ビス(1-フェニル-1-メチルエチル)ペルオキシド、及び1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサンなどが挙げられる。また、パーオキシエステルとしては、日本油脂株式会社製のパーブチルPなどが挙げられる。
【0046】
樹脂組成物が、ラジカル重合開始剤を含む場合、ラジカル重合開始剤の含有量の下限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上である。また、ラジカル重合開始剤の含有量の上限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0047】
〈硬化促進剤〉
本実施形態に係る樹脂組成物は、共重合体の硬化反応を促進する、硬化促進剤を含んでもよい。
【0048】
硬化促進剤は、共重合体の硬化反応を促進させるものである限りは特に限定されない。硬化促進剤として具体的には、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0049】
樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、硬化促進剤の含有量の下限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、硬化促進剤の含有量の上限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0050】
〈酸化防止剤〉
本実施形態に係る樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、フェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエ-テル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。酸化防止剤は、樹脂組成物から得られる光導波路のクラッド層の酸化を抑制できる。
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール、などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネートなどが挙げられる。
【0051】
樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量の下限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、酸化防止剤の含有量の上限値は、樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0052】
〈その他の成分〉
本実施形態に係る光導波路のクラッドの作製に用いられる樹脂組成物は、例えば、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、表面調整剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。後述の実施例では、表面調整剤として、BYK-Chemie社製のBYK-361N(アクリルポリマー)を用いている。
【0053】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、当該樹脂組成物の硬化体の30℃における弾性率が、0.05GPa以上0.10GPa以下であることが好ましく、0.06GPa以上0.09GPa以下であることがより好ましく、0.07GPa以上0.08GPa以下であることがさらにより好ましい。また、当該樹脂組成物の50℃~150℃における平均線膨張係数が、130ppm/℃以上200ppm/℃以下であることが好ましく、140ppm/℃以上190ppm/℃以下であることがより好ましく、150ppm/℃以上180ppm/℃以下であることがさらにより好ましい。
【0054】
〈ワニス状の本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法〉
ワニス状の本実施形態に係る樹脂組成物は、上記の成分を混合することにより製造することができる。
【0055】
〈ドライフィルム状の本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法〉
ドライフィルム状の本実施形態に係る樹脂組成物は、上記のワニス上の樹脂組成物を、例えば易剥離性の基材表面に塗布した後に、乾燥させることで得られる。塗布する方法としては、例えば、ピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーター装置を用いて直接塗布する方法、スクリーン印刷などの印刷方法が用いられる。
【0056】
〈光導波路の製造方法〉
次に、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、光導波路を基板上に製造する方法について説明する。
【0057】
図1は、光導波路搭載基板100の構造を示す図である。光導波路搭載基板100は、基板140、下部クラッド層130、パターン化されたコア部112、及び上部クラッド層120を含む。
【0058】
例えば、以下の工程により、
図1に示す光導波路搭載基板100を製造できる。
工程1:基板140の上面側に下部クラッド層130を形成する。
工程2:下部クラッド層130上にコア部112を形成する。
工程3:コア部112を覆うように、上部クラッド層120を形成する。
以下、各工程について説明する。
【0059】
(工程1)
基板140上に、下部クラッド層130を形成する手法としては、基板上に本実施形態に係るワニス状の樹脂組成物を塗布して得られる塗布膜を乾燥させる方法や、基板上に樹脂組成物から形成される樹脂膜を積層する方法などが用いられる。
【0060】
基板140は、例えば、プリント基板である。また、プリント基板は、FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)などのフレキシブル基板を含む。
【0061】
基板上にワニス状の樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーター装置を用いて直接塗布する方法、スクリーン印刷などの印刷方法が用いられる。
また、上記の樹脂膜を形成する方法としては、例えば、ワニス状の樹脂組成物を基材上に塗布した後、得られた塗布膜を乾燥する方法を用いることができる。
また、上記の樹脂膜を積層する方法としては、例えば、フィルム状の樹脂膜を、ロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法を用いることができる。
【0062】
(工程2)
本実施形態において、上記のパターン形状を有するコア部112の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、露光法、エッチング法または複製法等の各種の光導波路加工方法を用いることができる。
【0063】
コア部112を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、ポリマーAを含むことができる。
【0064】
上記ポリマーAとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いることができる。
【0065】
(工程3)
コア部112上に、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、上部クラッド層120を形成する。上部クラッド層120を形成する手法は、工程1において、基板140の上面側に下部クラッド層130を形成する手法と同様である。
【0066】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0067】
本発明の実施態様を、実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例のみに限定されない。
【0068】
まず、各実施例、及び比較例で用いた材料を以下に示す。また、これら材料の配合比率(固形分)を表1に示す。
〈水添スチレンブタジエン系ゴム〉
(A)SEPTON 2002(株式会社クラレ製)
(B)SEPTONQ 1250(株式会社クラレ製)
〈シリカ〉
(C)シクロヘキサンを溶剤として、YA050C(株式会社アドマテックス製)の比率が40wt%になるように混錬した材料 ※比較例用材料
〈ベンゾオキサジン樹脂〉
(D)P-d型ベンゾオキサジン樹脂(四国化成工業株式会社製) ※比較例用材料
〈トリスメタン型エポキシ樹脂〉
(E)JER 1032H60(三菱ケミカル株式会社製) ※比較例用材料
〈Bis-F型エポキシ樹脂〉
(F)EPICLON-830S(DIC株式会社製) ※比較例用材料
〈変性エポキシ樹脂〉
(G)EXA-4850-150(DIC株式会社製) ※比較例用材料
〈イソシアヌル型エポキシ樹脂〉
(H)TEPIC-SP(日産化学工業株式会社製) ※比較例用材料
〈ノボラック型フェノール樹脂〉
(I)PR-HF-3(住友ベークライト株式会社製) ※比較例用材料
〈脂肪族酸無水物〉
(J)MH-700(新日本理化株式会社製) ※比較例用材料
〈変性ビスフェノール型エポキシ樹脂〉
(K)jER YX6900(三菱ケミカル株式会社製) ※比較例用材料
〈エポキシシランカップリング剤〉
(L)SILQUEST A-187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製) ※比較例用材料
〈アクリルポリマー〉
(M)BYK-361N(BYK-Chemie社製)
〈重合性化合物〉
(N)TAIC(三菱ケミカル株式会社製)
〈ラジカル重合開始剤〉
(O)パーブチルP(日本油脂株式会社製)
〈硬化促進剤〉
(P)2PHZ-PW(四国化成工業株式会社製) ※比較例用材料
(Q)PX-4ET(日本化学工業株式会社製) ※比較例用材料
〈スチレンブタジエン系ゴム〉
(R)「RICON100」(クレイバレー社製):未水添スチレンブタジエン系ゴム
【0069】
〈実施例、及び比較例の樹脂組成物の作製〉
表1に記載の成分をトルエンに十分に溶解または分散させて樹脂組成物を作製した。なお、トルエンの量は、不揮発性分の比率が30wt%になるようにした。
【0070】
〈SI値の評価〉
各実施例、及び比較例の樹脂組成物から得られる硬化体について、弾性率をJIS K 6911に準じて以下の方法で測定した。まず、それぞれの樹脂組成物を160℃で1時間加熱して4mm×20mm×0.3mmの試験片を作製した。そして、試験片毎に、DMA測定装置(TAインスツルメント社製、Q800)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲30℃~300℃,5℃/minで昇温測定し、30℃での硬化体の弾性率を測定した。
次に、各実施例、及び比較例の樹脂組成物について、平均線膨張係数をJIS K 7197に準じて以下の方法で測定した。まず、それぞれの樹脂組成物を160℃で1時間加熱して4mm×20mm×0.3mmの試験片を作製した。そして、熱機械分析(TMA)装置((TAインスツルメント社製、Q400))を用いて測定試料を引張測定治具にセットし、開始温度30℃、測定温度範囲30~300℃、昇温速度10℃/minの条件下において、荷重5gの負荷をかけ、等速で昇温し、2サイクル目の50℃~150℃における平均線膨張係数を測定した。
上記の方法により測定した、弾性率[GPa]と平均線膨張係数[ppm/℃]の積から、SI値を算出した。弾性率、平均線膨張係数、及びSI値の結果を表1に記載する。
【0071】
〈透明性の評価〉
各実施例、及び比較例の樹脂組成物から得られる硬化体について、JIS K 7361に従って全光線透過率を、JIS K 7163に従ってHazeを、以下の方法で測定した。これにより、光導波路を作製した場合のクラッド層の透明性について評価した。結果を表1に示す。
手順1:
ワニス状の樹脂組成物をPETフィルム上にコンマコーターにて塗布し100℃で1分乾燥させた後に、130℃で1分さらに乾燥させ、その後に、150℃で1分さらに乾燥させることによって溶媒を除去し厚さ50μmのPET付き樹脂膜を得た。
手順2:
得られたPET付き樹脂膜を、真空ラミネーター(株式会社名機製作所製)を用いて、スライドガラス上に140℃、0.6MPa、210秒でラミネートし、その後PET剥離し、160℃で60分間加熱して、樹脂膜を硬化させ、厚さ0.05mmの試験片を作製した。
手順3:
そして、試験片毎に、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)V-700)を用いて、波長850nmにおける全光線透過率を測定した。
手順4:
次に、試験片毎に、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)V-700)を用いて、波長850nmにおける拡散透過率の値を測定した。そして、拡散透過率をa[%]、全光線透過率をb[%]として、以下の式1によってHazeの値を算出した。
[式1]
a×100/b
【0072】
〈反りの軽減の評価〉
以下の手順により、各実施例、及び比較例の樹脂組成物を用いて基板上に膜形成した場合に基板に発生する反りの軽減について評価した。これにより、光導波路を作製した場合の反りについて評価した。結果を表1に示す。
手順1:
ワニス状の樹脂組成物をPETフィルム上にコンマコーターにて塗布し100℃で1分乾燥させた後に、130℃で1分さらに乾燥させ、その後に、150℃で1分さらに乾燥させることによって溶媒を除去し厚さ50μmのPET付き樹脂膜を得た。
手順2:
得られたPET付き樹脂膜を、真空ラミネーター(株式会社名機製作所製)を用いて、250mm×300mm×0.049mm寸法の、FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)上に140℃、0.6MPa、210秒でラミネートし、その後PET剥離し、160℃で60分間加熱して、樹脂膜を硬化させた。
手順3:
各実施例、及び比較例の樹脂組成物の樹脂膜をラミネートしたFCCLの、反りによる端部の浮き上がった高さを測定した。表1において、「◎」は、測定した高さが10mm未満であり、目視ではわからない程に反りが小さいことを示し、「△」は、高さが10mm以上30mm未満であり、若干の反りはあるが、光導波路の作製はできる程度の反りであることを示し、「×」は、高さが30mm以上であり、光導波路の作製ができない程に反りが大きいことを示している。
【0073】
【0074】
以上、硬化体のSI値が所定範囲内である樹脂組成物を用いて、クラッド層を基板上に作製した場合には、基板の反りが軽減されることが確認できた。また、全光線透過率とHazeの値が良好であり、光導波路として使用できることが確認できた。