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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110842
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20230802BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230802BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/51
A61F13/49 312Z
A61F13/49 315A
A61F13/53 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173647
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2022011901
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹津 嵩礼
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BA16
3B200BB11
3B200BB20
3B200CA05
3B200CA06
3B200DA01
3B200DB14
3B200DD02
3B200DD07
(57)【要約】
【課題】着用時にずれにくい吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体と、カバーシートと、複数の伸縮部と、を備え、複数の伸縮部は、着用者の胴回りを付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第1の伸縮部と、接着部の股下側に配置されて第1の伸縮部と間隔を開けて隣接し、着用者の脚が入る開口部を付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第2の伸縮部と、を含み、接着部の近傍における第1の伸縮部と第2の伸縮部の間隔は、接着部よりも内側に配置されている複数の伸縮部の幅方向端部において、第1の伸縮部を長手方向に4等分した際の長手方向における外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材のうち最も外側に配置されたものと最も内側に配置されたものの間隔を、第1の伸縮部を長手方向に4等分した際の外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材の本数で割ったもの以下である、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、
着用者の前後方向に前記長手方向が沿うように配置される吸収体と、
前記吸収体の非肌面側に配置されて前記吸収性物品の外表面を形成し、長手方向端部領域において幅方向端部を相互に接着した接着部を有するカバーシートと、
前記カバーシートに配置された、伸張状態で配置される複数の伸縮部と、
を備え、
前記複数の伸縮部は、着用者の胴回りを付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第1の伸縮部と、前記接着部の股下側に配置されて前記第1の伸縮部と間隔を開けて隣接し、着用者の脚が入る開口部を付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第2の伸縮部と、を含み、
前記接着部の近傍における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は、前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の前記長手方向における外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材のうち最も長手方向外側に配置されたものと最も長手方向内側に配置されたものの間隔を、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の前記長手方向における外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材の本数で割ったもの以下である、
吸収性物品。
【請求項2】
前記接着部の近傍における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は、前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第2の伸縮部を構成する伸縮部材のうち最も長手方向外側に配置されるものと最も長手方向内側に配置されるものの間隔を、前記第2の伸縮部を構成する伸縮部材の本数で割ったもの以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の最も前記長手方向内側の領域を構成する長手方向外側から4番目の領域を構成する伸縮部材の間隔は、長手方向外側から2番目と3番目の領域を構成する伸縮部材の間隔よりも狭い、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
着用者の腹部側または着用者の背部側の少なくとも一方において、
前記接着部から幅方向所定領域において、前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部は、互いに平行に配置されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
着用者の体格に適合する複数サイズの形態を持つカバーシートを用いる場合でも、少なくとも2つのサイズの形態において、前記接着部における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は同一であるか、またはその差が所定範囲内である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記複数の伸縮部材は、線状伸縮部材である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、股下部から腹部、背部に向けて拡幅する拡幅部を有する略砂時計型の吸収コアと、前記吸収コアを覆う略矩形のコアラップシートと、を有し、
前記第2の伸縮部は、背部側では、前記吸収コアを横断せず、前記吸収コアの前記拡幅部の外側で前記コアラップシートと重畳している、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第2の伸縮部を構成する前記複数の伸縮部材のうちの全てまたはその半分以上が、主に前記拡幅部の股下側で前記コアラップシートと重畳している、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記第2の伸縮部は、前記拡幅部の長手方向全域において、前記吸収コアを幅方向外側に付勢する、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記第2の伸縮部は、前記拡幅部の股下側において、前記吸収コアを幅方向外側に付勢する、
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記第2の伸縮部は、前記コアラップシートに重畳する領域では、幅方向に収縮する、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記第2の伸縮部は、腹部側では、前記吸収コアを前記幅方向に横断するように重畳している、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項13】
腹部側における前記第2の伸縮部の延在領域では、前記カバーシートは、前記吸収体とは接着していない、
請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第2の伸縮部と、前記第1の伸縮部を長手方向に4等分した場合に長手方向端部側から2番目から4番目を構成する前記複数の伸縮部材の前記長手方向の間隔は、5mm以上である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記第1の伸縮部は、着用者の腹部、背部を幅方向に付勢する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記第1の伸縮部を構成する前記複数の伸縮部材のうちの一部は、前記吸収体の長手方向端部と重畳し、
前記吸収体の長手方向端部と重畳する前記複数の伸縮部材のうちの一部は、前記吸収体の長手方向端部を越えて、前記カバーシートの幅方向他端にまで延在する、
請求項15に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
成人用の、パンツ型使い捨ておむつが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-29609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の一例であるパンツ型おむつは、着用者の胴回りに設けられたウェストギャザーと、着用者の脚周りに設けられたレグギャザーとを備え、これらのギャザーで胴回りと脚回りを包み込むことにより、着用者の動きに追従する。しかし、これらのギャザーは、それぞれ独立に着用者の胴回りや脚回りを包み込んでおり、位置ずれを起こしやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、着用中にずれが発生しにくい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、ウェストギャザーとレグギャザーが最接近する部位において、その配置領域がウェストギャザーとレグギャザーを構成する弾性部材同士の間隔を狭めた。
【0007】
本発明は、具体的には、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、着用者の前後方向に前記長手方向が沿うように配置される吸収体と、前記吸収体の非肌面側に配置されて前記吸収性物品の外表面を形成し、長手方向端部領域において幅方向端部を相互に接着した接着部を有するカバーシートと、前記カバーシートに配置された、伸張状態で配置される複数の伸縮部と、を備え、前記複数の伸縮部は、着用者の胴回りを付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第1の伸縮部と、前記接着部の股下側に配置されて前記第1の伸縮部と間隔を開けて隣接し、着用者の脚が入る開口部を付勢する、互いに略平行な複数の伸縮部材から形成される第2の伸縮部と、を含み、前記接着部の近傍における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は、前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の前記長手方向における外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材のうち最も長手方向外側に配置されたものと最も長手方向内側に配置されたものの間隔を、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の前記長手方向における外側から2番目から4番目の領域を構成する伸縮部材の本数で割ったもの以下である、吸収性物品である。
【0008】
前記接着部の近傍における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は、前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第2の伸縮部を構成する伸縮部材のうち最も長手方向外側に配置されるものと最も長手方向内側に配置されるものの間隔を、前記第2の伸縮部を構成する伸縮部材の本数で割ったもの以下であってよい。
【0009】
前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第1の伸縮部を前記長手方向に4等分した際の最も前記長手方向内側の領域を構成する長手方向外側から4番目の領域を構成する伸縮部材の間隔は、長手方向外側から2番目と3番目の領域を構成する伸縮部材の間隔よりも狭くてよい。
【0010】
着用者の腹部側または着用者の背部側の少なくとも一方において、前記接着部から幅方向所定領域において、前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部は、互いに平行に配置されていてよい。
【0011】
着用者の体格に適合する複数サイズの形態を持つカバーシートを用いる場合でも、少なくとも2つのサイズの形態において、前記接着部における前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部の間隔は同一であるか、またはその差が所定範囲内であってよい。
【0012】
前記複数の伸縮部材は、線状伸縮部材であってよい。
【0013】
前記吸収体は、股下部から腹部、背部に向けて拡幅する拡幅部を有する略砂時計型の吸収コアと、前記吸収コアを覆う略矩形のコアラップシートと、を有し、前記第2の伸縮部は、背部側では、前記吸収コアを横断せず、前記吸収コアの前記拡幅部の外側で前記コアラップシートと重畳していてよい。
【0014】
前記第2の伸縮部を構成する前記複数の伸縮部材のうちの全てまたはその半分以上が、主に前記拡幅部の股下側で前記コアラップシートと重畳していてよい。
【0015】
前記第2の伸縮部は、前記拡幅部の長手方向全域において、前記吸収コアを幅方向外側に付勢してよい。
【0016】
前記第2の伸縮部は、前記拡幅部の股下側において、前記吸収コアを幅方向外側に付勢してよい。
【0017】
前記第2の伸縮部は、前記コアラップシートに重畳する領域では、幅方向に収縮してよい。
【0018】
前記第2の伸縮部は、腹部側では、前記吸収コアを前記幅方向に横断するように重畳していてよい。
【0019】
腹部側における前記第2の伸縮部の延在領域では、前記カバーシートは、前記吸収体とは接着していなくてよい。
【0020】
前記接着部よりも前記幅方向内側に配置されている前記複数の伸縮部の前記幅方向外側端部において、前記第2の伸縮部と、前記第1の伸縮部を長手方向に4等分した場合に長手方向端部側から2番目から4番目を構成する前記複数の伸縮部材の前記長手方向の間隔は、5mm以上であってよい。
【0021】
前記第1の伸縮部は、着用者の腹部、背部を幅方向に付勢してよい。
【0022】
前記第1の伸縮部を構成する前記複数の伸縮部材のうちの一部は、前記吸収体の長手方向端部と重畳し、前記吸収体の長手方向端部と重畳する前記複数の伸縮部材のうちの一部は、前記吸収体の長手方向端部を越えて、前記カバーシートの幅方向他端にまで延在してよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、着用中にずれが発生しにくい吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係るおむつの外観斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図4図4は、展開及び伸長した状態のおむつの平面図を模式的に示した図である。
図5図5は、展開及び伸長した状態のおむつの長手方向端部における幅方向片端の構造を示した図である。
図6図6は、ウェストギャザーとレグギャザーとの関係を概念的に示した図である。
図7図7は、実験の結果を示す表である。
図8図8は、第2実施形態に係る、展開および伸長した状態のおむつを模式的に示す平面図である。
図9図9は、第2実施形態に係るおむつの外装体と内装体との接着を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明をする。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0026】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0027】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0028】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位で
ある股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0029】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。また、着用者の大腿部を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の大腿部とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0030】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0031】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートである。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5は着用者側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0032】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP
)等が例示できる。以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものを内装体と呼び、これに対応する概念として、糸ゴムが配置されたカバーシート4とインナーカバーシート5とを組み合わせて外装体と表現することがある。また、カバーシート4とインナーカバーシート5を貼り合わせた複合シートについて、インナーカバーシート5を内包する形で単にカバーシートと呼称することがある。
【0033】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5の着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略長方形のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0034】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるあるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。本実施形態では、吸収コア8cは、長手方向中央部が幅方向に括れたくびれ部を有し、長手方向両端部に、一定の長さを有する広幅部を有し、くびれ部と広幅部の間に、長手方向外側に向かって徐々に幅広となる拡幅部を有する略砂時計型である。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収コアの形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状が挙げられる。
【0035】
なお、吸収コア8cを、複数の吸収マットから形成することも可能である。この場合、形の異なる吸収マットを重畳して吸収コア8cとしてもよい。一例としては、吸収コア8cを肌面側の上層吸収マットと非肌面側の下層吸収マットの2枚のマットから構成してよい。上層吸収マットの形状を上述の略砂時計型として、下層吸収マットを、上層吸収マットの広幅部よりも幅狭の矩形状とし、下層吸収マットの幅を、上層吸収マットのくびれ部の幅と略同一としてよい。
【0036】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシートは、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの
幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0037】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0038】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されることにより、図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0039】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4、インナーカバーシート5に重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4とインナーカバーシート5を補強する。また、エンドシート11F,11Rには、それぞれ接着剤が塗布されており、当該接着剤によりインナーカバーシート5と接着している。エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0040】
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。なお、図3(B)では、サイドシート10L,10Rおよびエンドシート11F,11Rの図示は省略する。カバーシート4は、図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F2が接着され、カバーシート4の後身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R2が接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられ
ている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。
【0041】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8と重畳する。
【0042】
糸ゴム4F1,4R1は、図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて平行に設けられている。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。糸ゴム4F1,4F2の延在領域、より具体的には、糸ゴム4F1を構成する糸ゴムのうち最も長手方向端部側に位置する糸ゴムと、糸ゴム4F2を構成する糸ゴムのうち最も長手方向内側に位置する糸ゴムとの距離を長手方向に4等分した場合、糸ゴム4F1の延在範囲は長手方向外側4分の1の範囲を占め、糸ゴム4F2の延在範囲は、長手方向内側4分の3の範囲を占める。後身頃領域における糸ゴム4R1,4R2についても、長手方向における延在範囲の関係は同様である。
【0043】
更に、カバーシート4には糸ゴム4F3と糸ゴム4R3が接着されている。糸ゴム4F3,糸ゴム4R3は、カバーシート4のうち糸ゴム4F2,4R2よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。糸ゴム4F3,4R3は、他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置され、砂時計型の吸収コア8cの括れ部分で、吸収体8と厚み方向に重畳している。このように構成することで、糸ゴム4F3,4R3の配置領域をレグギャザー3LL,3LRとして機能させることができる。なお、糸ゴム4F3は、吸収体8の延在領域を幅方向に横断している。一方、糸ゴム4R3は、吸収体8の延在領域を横断していないものの、吸収コア8cの幅方向外側の一部と重畳している。なお、糸ゴム4R3が吸収コア8cとは重畳せず、吸収コア8cの幅方向外側に延在しているコアラップシート7とのみ重畳する形態も考えられる。
【0044】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域に設けられ糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。
【0045】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向におけ
る一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0046】
おむつ1を成人用とする場合、着用者の体格は乳幼児と比べて大きく異なる。このため、おむつ1は、着用者の体格に適合する複数のサイズで提供され得る。サイズ違いのおむつ1は、主に外装体の前身頃領域1F,後身頃領域1Rのサイズを変更することで実現される。人間の股下部分の構造、また排泄孔の位置関係は、着用者の体格によっては大きく変化しない。また、成人用おむつの主要な需要者である高齢者の排泄量は、体格とは相関しないことが知られている。このため、外装体の構造を下記のように調整することで、実質的に同一の吸収体8を備える複数サイズのおむつ1を提供できる。
【0047】
例えば、胴回りの長い成人用のおむつのパッケージ(第1のサイズを有する第1の吸収性物品を含む第1のパッケージ)と、胴回りの短い成人用のおむつのパッケージ(第2のサイズを有する第2の吸収性物品を含む第2のパッケージ)とに同一のブランドロゴを付して、複数の吸収性物品パッケージとして併売することが行われる。なお、着用者の体格に合わせてパッケージの種類を更に増やしてよく、3種類以上の体格に適合するサイズのパッケージが併売されてよい。この場合でも実質的に同一の吸収体8を用いることができるので、コストの上昇を抑えながらも着用者の体格に合ったおむつ1を提供でき、着用者や介助者の満足度を上げることができる。
【0048】
このような複数の吸収性物品パッケージは、外装体の長手方向長を変更するとともに、前身頃領域1F,後身頃領域1Rにおいて外装体の幅を変更することで実現できる。更に、糸ゴムの長さも外装体の幅に合わせて変更すれば、複数のウエストサイズの外装体において、単位面積あたりの収縮力を共通とするか、または所定範囲内(一例としては、差が±10%以内)に収めることができ、着用感が共通する複数サイズのおむつを提供できる。
【0049】
外装体の長手方向長を変更する際には、糸ゴム4F2,4R2の間隔を統一して同一間隔とし、外装体の長手方向長に応じて本数を変更してよい。糸ゴム4F2,4R2の間隔が統一されていることで、複数サイズのおむつにおいて、吸収体8と重畳する、また吸収体8近傍の糸ゴムの単位面積当たりの収縮力が共通するか、または所定範囲内(一例としては、差が±10%以内)に収まる。このため、着用感が共通する複数サイズのおむつを提供できる。また、図3(B)において破線で囲った部分であって、糸ゴム4F2,4R2が吸収体8と重畳する部分である重畳領域SRF,SRRについては、その面積を複数サイズで共通またはその差を所定範囲内(一例としては、±10%以内)に収まるようにすることで、吸収体8に与える収縮力を概ね共通させることができる。また、長手方向端部における幅方向端部付近では、糸ゴム4F3,4R3の間隔を、4F2,4R2の間隔と同一または所定範囲内(一例としては、±10%以内)としてよい。このようにすれば、複数サイズの外装体を有するおむつ1において、着用感を変えずに同サイズの吸収体8を用いることができる。
【0050】
なお、複数サイズの外装体において、糸ゴム4F2,4R2の長手方向股下側の端部と、着用者の脚が通るレグホールである右下肢開口部2R,左下肢開口部2Lまでの距離は共通して良い。また、股下領域1Bにおける最も幅狭の位置において、外装体の幅方向端部と吸収体8の幅方向端部との距離は、外装体のサイズに関わらず共通とすることができる。人間の大腿部と股下部分の構造は、体格に影響されないことが知られている。このため、ウェストギャザー3Rを構成する糸ゴム4F2,4R2と、脚開口部までの距離を、
複数サイズのおむつ1において概ね共通とすることで、複数サイズにおいて着用感が共通するおむつ1を提供できる。
【0051】
なお、同時に提供される吸収性物品パッケージのうち全てが上述の要件を満たしている必要はなく、同時に提供されるうち、複数の吸収性物品パッケージが上述の要件を満たしていればよい。例えば、同時に提供される吸収性物品パッケージがS、M、L、XLの4サイズである場合に、Sサイズについては、他のサイズよりも重畳領域SRF、SRRの面積を小さくすると共に、糸ゴム4F2、4R2の長手方向股下側の端部と、右下肢開口部2R、左下肢開口部2Lまでの距離を縮小し、M、L、XLサイズについてはそれらの構成が相互に共通、または差が所定範囲(具体的には、±10%以内)に収まるようにしてよい。
【0052】
図4は、展開及び伸長した状態のおむつの平面図を模式的に示した図である。図4は、おむつ1を肌面側から見ており、インナーカバーシート5、バックシート6及びトップシート9等の図示を省略している。吸収体8は、吸収コア8cと、吸収コア8cを覆うコアラップシート7と、を有する。吸収体8は、着用者の前後方向に長手方向が沿うように配置されている。吸収コア8cは、腹部81、長手方向に直交する幅方向において腹部81よりも狭い第1拡幅部82、幅方向において第1拡幅部82よりも狭い股下部83、幅方向において股下部83よりも広い第2拡幅部84、及び、幅方向において第2拡幅部84よりも広い背部85を長手方向にこの順に有する。コアラップシート7は、幅方向において吸収コア8cよりも広い。図4では、長手方向をD1で示し、幅方向をD2で示している。なお、カバーシート4は、吸収体8の非肌面側に配置されている。
【0053】
腹部81及び背部85は、例えば、矩形状であり、図4では、腹部81及び背部85は、吸収コア8cの各部位のうち幅方向に最も広い。腹部81が、背部85よりも幅方向に広くてもよいし、背部85が、腹部81よりも幅方向に広くてもよい。腹部81は、長手方向において腹部81と第1拡幅部82との境界の反対側に位置する端部を有する。腹部81の長手方向の長さは、略50mmである。例えば、吸収コア8cにおける腹部81の端部から吸収コア8cの中央側に向かって略50mmまでの範囲が腹部81であってもよい。背部85は、長手方向において背部85と第2拡幅部84との境界の反対側に位置する端部を有する。背部85の長手方向の長さは、略50mmである。例えば、吸収コア8cにおける背部85の端部から吸収コア8cの中央部分に向かって略50mmまでの範囲が背部85であってもよい。
【0054】
股下部83は、例えば、矩形状であり、吸収コア8cの各部位のうち幅方向に最も狭い。股下部83の長手方向の長さは、略50mmである。例えば、吸収コア8cにおける幅方向の最も狭小の部位から腹部81側に向かって略25mmまでの範囲と、吸収コア8cにおける幅方向の最も狭小の部位から背部85側に向かって略25mmまでの範囲と、が股下部83であってもよい。第1拡幅部82は、股下部83から腹部81に向けて拡幅している。第2拡幅部84は、股下部83から背部85に向けて拡幅している。第1拡幅部82及び第2拡幅部84は、幅方向の長さが徐々に長くなるテーパー形状であってもよいし、幅方向の長さが段階的に長くなる形状であってもよい。
【0055】
着用者の陰部は、どのような体格の着用者であってもおおよそ同じ幅であるため、着用者の陰部の幅に基づいて、股下部83の幅を設計することができる。おむつ1が着用された際、腹部81及び背部85は、あまり湾曲せずに略平面の状態であるため、変形しにくい。一方、着用者の腹部と陰部との間の部分や着用者の背部と陰部との間の部分は、着用者の体格や性別等によって大きく異なるため、第1拡幅部82及び第2拡幅部84は、おむつ1の着用時に変形しやいため、型崩れしやすい。
【0056】
複数の糸ゴム4F1、複数の糸ゴム4F2及び複数の糸ゴム4F3を含む複数の糸ゴム(本願の「伸縮部材」の一例である線状伸縮部材)が、伸張状態で配置されている。糸ゴム4F1,4F2,4F3の本数は任意に設定することが可能であり、各図面に示す本数に限定されない。複数の糸ゴム4F3は、両端部を有し、複数の糸ゴム4F3のうちの少なくとも一つの糸ゴム4F3の両端部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第1拡幅部82の幅方向の外側でコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳している。例えば、複数の糸ゴム4F3のうちの全数又は半数以上の糸ゴム4F3の両端部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第1拡幅部82の幅方向の外側でコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳してもよい。複数の糸ゴム4F3におけるコアラップシート7と重畳している部位は、カバーシート4とインナーカバーシート5、及びコアラップシート7の少なくとも一方と接着されている。なお、以下において、糸ゴム4F3がコアラップシート7と重畳していることを説明する場合については、糸ゴム4F3がコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳していることを意味する。
【0057】
複数の糸ゴム4F2,4R2は、幅方向に延在している。糸ゴム4F2は、着用者の腹部を幅方向に付勢する。糸ゴム4R2は、着用者の背部を幅方向に付勢する。糸ゴム4F2,4R2は、幅方向両端部においてカバーシート4と共に相互に接着され、着用者の胴回りに沿う筒状の構造を形成する。
【0058】
糸ゴム4F2,4R2を構成する複数の伸縮部材のうちの一部は、吸収コア8cの腹部81,背部85の長手方向端部と吸収体8の厚み方向で重畳するように配置されている。吸収コア8cの長手方向端部と重畳した糸ゴム4F2,4R2は、吸収体8を越えて、カバーシート4の幅方向他端にまで延在している。
【0059】
腹部81,背部85の端部に糸ゴム4F2,4R2が重畳することにより、腹部81,背部85の端部は幅方向外側に付勢される。第1拡幅部82を糸ゴム4F3が第1拡幅部82の幅方向外側に引っ張ることにより、腹部81から第1拡幅部82に至る領域は、幅方向外側に付勢される。同様に、第2拡幅部84を糸ゴム4R3が第2拡幅部84の幅方向外側に引っ張ることにより、背部85から第2拡幅部84に至る領域は、幅方向外側に付勢される。これらの糸ゴムによって幅方向に引き延ばされることにより、吸収コア8cの変形は抑止され、かつ、吸収コア8cの型崩れも防止できる。なお、腹部81,背部85の端部と吸収体8の厚み方向で重畳するように配置された糸ゴム4F2,4R2が、吸収コア8cを収縮させてしまい、全体として吸収コア8cを幅方向外側に付勢する力が弱まる可能性がある。このため、吸収体8と重畳する糸ゴムは、糸ゴム4F2,4R2のうちの股下側の一部であることが望ましい。或いは、糸ゴム4F2,4F3のうちの一部を吸収体8の幅方向端部で切断し、吸収体8と重畳する糸ゴムの本数を限定してもよい。
【0060】
複数の糸ゴム4F3が伸張状態で配置され、少なくとも一つの糸ゴム4F3の両端部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第1拡幅部82の幅方向の外側でコアラップシート7と重畳している。少なくとも一つの糸ゴム4F3が、第1拡幅部82を幅方向の外側に引っ張ることで、第1拡幅部82が幅方向に必要以上に縮まってしまうことを抑止でき、吸収コア8cの型崩れを防止できる。
【0061】
複数の糸ゴム4R1、複数の糸ゴム4R2及び複数の糸ゴム4R3を含む複数の糸ゴム(本願の「伸縮部材」の一例)が、伸張状態で配置されている。糸ゴム4R1,4R2,4R3の本数は任意に設定することが可能であり、各図面に示す本数に限定されない。複数の糸ゴム4R3(本願の「第2伸縮部材」の一例)は、両端部を有し、複数の糸ゴム4R3のうちの少なくとも一つの複数の糸ゴム4R3の両端部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第2拡幅部84の幅方向の外側でコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳している。例えば、複数の糸ゴム4R3のうちの全数又は半数以上の糸ゴム4R3の両端
部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第2拡幅部84の幅方向の外側でコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳してもよい。複数の糸ゴム4R3におけるコアラップシート7と重畳している部位は、カバーシート4とインナーカバーシート5、及びコアラップシート7の少なくとも一方に接着されている。なお、以下において、糸ゴム4R3がコアラップシート7と重畳していることを説明する場合については、糸ゴム4R3がコアラップシート7と吸収体8の厚み方向で重畳していることを意味する。
【0062】
複数の糸ゴム4R3が伸張状態で配置され、少なくとも一つの糸ゴム4R3の両端部の一方が、幅方向に延在し、かつ、第2拡幅部84の幅方向の外側でコアラップシート7と重畳している。少なくとも一つの糸ゴム4R3が、第2拡幅部84を幅方向の外側に引っ張ることで、第2拡幅部84が幅方向に必要以上に縮まってしまうことを抑止でき、吸収コア8cの型崩れを防止できる。
【0063】
複数の糸ゴム4R3は、吸収コア8cの幅方向外側と厚み方向に重畳しているが、吸収コア8cを横断していない。糸ゴム4R3の幅方向内側の端部は、吸収コア8cの幅方向外側と厚み方向に重畳しているか、或いは、吸収コア8cの幅方向端部の更に幅方向外側で、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7のみと重畳している。複数の糸ゴム4R3が、吸収コア8cと吸収体8の幅方向中央部と厚み方向で重畳しないようにすることで、着用前の状態において、複数の糸ゴム4R3が、吸収コア8cを幅方向内側に過度に収縮させることがなくなる。これにより、着用前の吸収コア8cの型崩れを防止できる。かつ、複数の糸ゴム4R3の幅方向端部が吸収体8と重畳していることで、おむつ1の着用中には、糸ゴム4R3の付勢力は吸収体8に伝わり、吸収コア8cをより確実に幅方向に広げることが可能となる。
【0064】
コアラップシート7は、パルプ繊維などで構成された透水性のシートであり、吸収コア8c全体を覆った状態では略矩形である。コアラップシート7は、1枚のシートで構成されていてもよいし、吸収コア8cの肌面側を覆う幅狭の上層コアラップシート7fと、吸収コア8cの非肌面側と側面を覆い、吸収コア8cの肌面側幅方向端部にまで延在する幅広の下層コアラップシート7bとに分かれていてよい。この構成を取る場合、上層コアラップシート7fと下層コアラップシート7bは、吸収コア8c肌面側幅方向端部において相互に接着される。
【0065】
各糸ゴム4F3,4R3がコアラップシート7と重畳している部位は、幅方向に延在している。各糸ゴム4F3,4R3は、伸張状態で配置されているため、各糸ゴム4F3,4R3がコアラップシート7と重畳している部位は、幅方向に収縮することになる。
【0066】
第1拡幅部82,第2拡幅部84の幅方向におけるコアラップシート7の外側は、各糸ゴム4F3,4R3を延伸させるための領域が小さい。各糸ゴム4F3,4R3におけるコアラップシート7と重畳していない部位を、腹部81,背部85側に向かって斜めに配置することで、幅広な領域に向かって各糸ゴム4F3,4R3を延伸させることができる。これにより、各糸ゴム4F3,4R3が吸収コア8cを引っ張る力がより大きくなり、吸収コア8cをより確実に幅方向に広げることが可能となる。
【0067】
また、各糸ゴム4F3,4R3におけるコアラップシート7と重畳していない部位は、幅方向に対する角度が±45度の範囲内で延在してもよい。各糸ゴム4F3,4R3の幅方向の伸縮力を各糸ゴム4F3,4R3の長手方向の伸縮力よりも大きくすることで、各糸ゴム4F3,4R3が吸収コア8cを幅方向に引っ張る力がより大きくなり、吸収コア8cをより確実に幅方向に広げることが可能となる。
【0068】
糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴムは、吸収コア8cの第1拡幅部82の長手方向全
域を幅方向外側に付勢していてよい。具体的には、糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴムが、第1拡幅部82付近で幅方向に延在し、かつ、第1拡幅部82の長手方向全域でコアラップシート7と重畳することで、吸収コア8cを潰す方向の力に効果的(直接的)に対抗することができる。糸ゴム4F3が第1拡幅部82の長手方向全域を幅方向の外側に引っ張ることで、第1拡幅部82が幅方向に必要以上に縮まってしまうことを抑止でき、吸収コア8cの型崩れを防止することができる。背部85側の第2拡幅部84と糸ゴム4R3との関係についても同様である。
【0069】
好ましくは、糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴムのうちの全てまたは半分以上が、吸収コア8cの第1拡幅部82の長手方向中央から股下側を、幅方向外側に付勢していてよい。着用者の大腿部からの収縮圧力により、吸収コア8cの股下部83は潰れやすく、腹部81は潰れづらい。このため、第1拡幅部82は、股下部83に近いほど潰れやすくなっている。そこで、糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴムを股下部83に近い領域に配置することができる。具体的には、糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴムのうちの全てまたはその半分以上の糸ゴムが、第1拡幅部82付近で幅方向に延在し、かつ、第1拡幅部82の長手方向中央から股下側の幅方向外側でコアラップシート7と重畳することで、吸収コア8cを潰す方向の力に効果的(直接的)に対抗することができる。これにより、吸収コア8cの変形を抑止でき、かつ、吸収コア8cの型崩れを防止できる。背部85側の第2拡幅部84と糸ゴム4R3との関係についても同様である。
【0070】
図5は、展開及び伸長した状態のおむつの前身頃領域における長手方向端部における幅方向片端の構造を示した図である。具体的には、おむつ1の前身頃領域の、観察者から見て右端を拡大した図である。なお、本実施形態に係るおむつ1は、左右対称構造である。このため、本図で示した構造は、おむつ1の幅方向両端部に当てはまる。
【0071】
前述の通り、カバーシート4、インナーカバーシート5は、長手方向端部領域が幅広となる略砂時計型の構造を有しており、その幅広部分の幅方向端部には、縁4F4が設けられている。縁4F4は、熱溶着等により後身頃領域の幅方向端部にある縁4R4と接着して筒状の構造を形成する。サイドシール12は、縁4F4と縁4R4とを相互に接着する接着部である。すなわち、おむつ1の胴回り部は、外装シートの前身頃領域と後身頃領域との幅方向の端部同士を、サイドシール12により接合することにより形成される。カバーシート4、インナーカバーシート5に配置される複数の伸縮部である糸ゴム4F1,4F2,4F3は、サイドシール12部分には延在しない。このように構成することで、サイドシール部を柔らかくし、肌当たりのよいおむつを提供できる。
【0072】
糸ゴム4F1と糸ゴム4F2は、それぞれが略平行に等間隔で配置された複数の糸ゴム(複数の伸縮部材)から構成されており、カバーシート4の左右両端のサイドシール12の近傍まで途切れることなく接着されている。糸ゴム4F1,4F2の配置領域は、おむつ1の胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる、ウェストギャザー3Rとしての機能を有している。特に、糸ゴム4F2の配置領域を、タミーギャザーと呼ぶことがある。糸ゴム4F1と糸ゴム4F2は、本開示における「第1の伸縮部」の一例である。サイドシール12近傍における糸ゴム4F1と糸ゴム4F2の幅方向両端部において、糸ゴム4F1と4F2の延在領域を長手方向に4等分し、長手方向端部から第1領域4FL1,第2領域4FL2,第3領域4FL3,第4領域4FL4に仮想的に分割した場合、ウェストギャザー3Rとしての機能を有する糸ゴム4F1の延在範囲は、第1領域4FL1に収まる。換言すると、糸ゴム4F1の延在範囲は、第1の伸縮部を4等分した場合、長手方向端部から1番目の領域となる。一方、糸ゴム4F2の延在範囲は、第2領域4FL2,第3領域4FL3,第4領域4FL4にまで延在している。換言すれば、タミーギャザーとしての機能を有している糸ゴム4F2の延在範囲は、第1の伸縮部を4等分した場合、長手方向端部から2番目から4番目の領域となる。
【0073】
糸ゴム4F3も、略平行に等間隔で配置された複数の糸ゴム(複数の伸縮部材)から構成されており、縁4F4付近では、第1の伸縮部を構成する他の糸ゴム(4F1,4F2)と平行に、第1の伸縮部に隣接して配置されている。すなわち、接着部であるサイドシール12から幅方向所定領域において、糸ゴム4F2と糸ゴム4F3は、互いに平行に、かつ隣接して配置されている。しかし、糸ゴム4F3は、縁4F4から離れた位置で股下領域1B側に湾曲し、カバーシート4およびインナーカバーシート5の拡幅部に沿って配置される。糸ゴム4F3は、吸収コア8cの拡幅部に達すると再び湾曲して幅方向と略平行に配置され、その幅方向中央側では、吸収コア8cおよび、吸収コア8cを覆うコアラップシート7と厚み方向に重畳している。この構成により、糸ゴム4F3の配置領域は、左下肢開口部2LLに沿うようにおむつ1を付勢するレグギャザー3LLとしての機能を有している。糸ゴム4F3の幅方向両端部は、幅方向に平行である。糸ゴム4F3は、本開示における「第2の伸縮部」の一例である。そして、サイドシール12部分において、第2の伸縮部は、第1の伸縮部の股下側に隣接している。
【0074】
糸ゴム4F1を構成する複数の糸ゴム同士の間隔は概ね5mm以下であり、長手方向に緻密である。このため、糸ゴム4F1の配置領域は、おむつ1の長手方向端部においておむつ1を強く付勢して着用者の胴回りに密着させる。サイドシール12の近傍における糸ゴム4F2を構成する複数の糸ゴム同士の間隔L1は5mm以上20mm以下であって糸ゴム4F1と比較すると長手方向に広く、糸ゴム4F2を着用者の肌面に沿わせる機能を有している。また、糸ゴム4F2の一部は吸収体8の長手方向端部と重畳しているが、付勢力が弱いため、吸収体8の型崩れを誘発することがない。サイドシール12の近傍における糸ゴム4F3を構成する複数の糸ゴム同士の間隔L2も、5mm以上20mm以下であり、L1と同様である。このため、レグギャザー3LLは着用者の肌面に沿い、糸ゴム4F3の幅方向中央側端部において、吸収体8に過剰な力がかかることがない。
【0075】
ここで、長手方向にタミーギャザーが延在する範囲を含む糸ゴム4F2、すなわち、サイドシール12の近傍における各糸ゴムの幅方向端部において、第1の伸縮部を構成する部分を長手方向に4等分し、長手方向外側から4FL1,4FL2,4FL3,4FL4とする。そして、長手方向外側から2番目から4番目の領域である4FL2,4FL3,4FL4に延在し、タミーギャザーを構成している伸縮部材である糸ゴム4F2のうち、最も長手方向外側に配置されたものと最も長手方向内側に配置されたものの間隔を算出する。さらに、タミーギャザーに含まれる糸ゴムの本数、すなわち、第1の伸縮部を長手方向に4等分した際の長手方向外側から2番目から4番目の領域である4FL2,4FL3,4FL4に配置された伸縮部材の本数で割ることで算出した長さをL1とする。換言すれば、L1は、タミーギャザーを構成する糸ゴム4F2の、サイドシール12の近傍における平均間隔である。
【0076】
更に、サイドシール12の近傍における各糸ゴムの幅方向端部において、レグギャザー、すなわち第2の伸縮部を形成する糸ゴム4F3のうち、最も長手方向外側に配置されたものと最も長手方向内側に配置されたものとの間隔を算出する。さらに、レグギャザーに含まれる糸ゴムの本数、すなわち第2の伸縮部に配置された伸縮部材の本数で割ることで算出した長さをL2とする。換言すれば、L2は、レグギャザーを構成する糸ゴム4F3の、サイドシール部における平均間隔である。
【0077】
サイドシール12の近傍における糸ゴム4F2と、糸ゴム4F3との間隔であるL3は、本開示における第1伸縮部におけるタミーギャザーと、第2伸縮部を構成する伸縮部材同士の平均間隔であるL1,L2よりも狭い。例えば、両者の比は0.85以下である。一例を挙げれば、L1とL2が10mmである場合、L3は7.5mmである。或いは、糸ゴム4F2の長手方向股下側と、糸ゴム4F3の長手方向端部側とが接触していてもよ
い。着用者の体格に応じておむつ1の外装体を複数サイズとする場合でも、L3は外装体のサイズに関わらず同間隔またはその間隔を所定範囲内(一例としては、±10%以内)とすることができる。このように構成すれば、外装体のサイズに関わらず後述の効果を得ることができる。
【0078】
なお、第1の伸縮部を長手方向に4等分した際の長手方向外側から4番目の領域である4FL4に配置された伸縮部材同士を長手方向から見た場合の間隔は、2番目と3番目の領域である4FL2,4FL3に配置された伸縮部材同士を長手方向から見た場合の間隔よりも狭い。4FL4部分は、装着時、着用者の脚の折れ曲がり線に対応している。このため、当該部分の伸縮部材の間隔を狭めることで、おむつ1は着用者の大腿部の動きに追従しやすくなり、ずれにくくなる。
【0079】
前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは、概ね同様の構造を有しているが、糸ゴム4R3は吸収体8を横断していない。糸ゴム4R3は、吸収コア8cの幅方向外側において吸収コア8cが延在していない部分でコアラップシート7のみと重畳しているか、または、吸収コア8cの幅方向外側で吸収コア8cおよびコアラップシート7と厚み方向に重畳している。糸ゴム4R3が吸収コア8cを横断していないため、おむつ1の着用前においても、吸収体8が圧縮されて型崩れしにくくなっている。おむつ1の着用時には、糸ゴム4R3は吸収体8を幅方向外側に付勢する。糸ゴム4R3と吸収体8との重畳範囲を調整することで、付勢力を適切に調整することができる。例えば、糸ゴム4R3を吸収コア8cの幅方向外側まで延在させれば、着用時に吸収体8は比較的強く付勢される。また、糸ゴム4R3を吸収コア8cと厚み方向に重畳させず、コアラップシート7のみと重畳するように配置した場合には、吸収体8に伝わる付勢力は低下する。しかし、糸ゴム4R3が吸収体8と重畳していることは変わりないため、おむつ1の着用中、吸収体8は、糸ゴム4R3により幅方向外側に付勢される。糸ゴム4R3により、着用者の大腿部や臀部から加わる圧力に抗して吸収体8の型崩れを抑制することができる。サイドシール12の近傍における糸ゴム4R2との位置関係等の糸ゴム4R3のその他の構成については4F3と同様であり、前身頃領域1Fと同様に、後身頃領域1Rにおいてもおむつ1はずれにくい。
【0080】
図6は、ウェストギャザーとレグギャザーとの関係を概念的に示した図である。図5に示したように、本実施形態では、サイドシール12において、ウェストギャザー3Rの股下側(タミーギャザー部分)とレグギャザー3LL,3LRの長手方向端部側の間隔を十分に短くするか、両者を接触させる。この結果、レグギャザー3LL,3LRは、ウェストギャザー3Rのサイドシール12部分を基点BP、更に具体的には、第1の伸縮部を長手方向に4等分した場合の長手方向外側から4番目の領域である4FL4に配置された、2番目の領域である4FL2、および3番目の領域である4FL3よりも幅狭な伸縮部材が近傍に設けられたサイドシール12を基点BPとして回動することになる。着用者が歩行するなどしてレグギャザー3LL,3LR部分が回動しても、力は基点BP付近に継続してかかるため、レグギャザー3LL,3LRが個別にずれてしまうことがない。
【0081】
仮にサイドシール12においてウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRが大きく離れていると、サイドシール12において基点は一転に定まらず、レグギャザー3LL,3LRはウェストギャザー3Rとは無関係に回動する。この結果、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRの位置が別々に移動し、着用位置が崩れておむつ1の機能が正しく発揮しなくなる虞がある。このため、図5に示すように、サイドシール12において、レグギャザー3LL,3LRとウェストギャザー3Rとを接触させるか、レグギャザー3LL,3LRの長手方向端部側とウェストギャザー3Rの股下側において双方の糸ゴムの間隔を十分に接近させ、ウェストギャザー3R近傍に基点BPができるように構成するのが好適である。
【0082】
図7は、実験の結果を示す表である。上述の説明を確認するため、実験を行った。サイドシール12において、L1,L2は共に10mmとし、L3の値を変えた複数のおむつ1を用意した。間隔の比は、L1,L2とL3の長さの比である(L3が0の場合には、密着と記載)。実験者はおむつ1を装着して室内を10分間歩行し、位置ずれが起こったかどうかを記録した。実験中に位置ずれが起らなかった場合には〇を、位置ずれが起こったものの、実験時間中におむつ1の機能に影響がなかった場合には△を、実験中におむつがその機能を果たせなくなる程の位置ずれが起った場合にはその時点で実験を終了し、×を記載した。この結果、サイドシール12において、ウェストギャザー3Rの股下側であるタミーギャザー部分とレグギャザー3LL,3LRの間隔が近いほど位置ずれは起こりにくいことが判明した。
【0083】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る、展開および伸長した状態のおむつを模式的に示す平面図である。本実施形態では、第1実施形態と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。第2実施形態では、糸ゴム4F3および4R3(本開示の第2の伸縮部を構成する)は、カバーシート4とインナーカバーシート5に伸張状態で接着されている。糸ゴム4F3は、前身頃側の股下領域1Bにおいて、吸収体8を左右方向に横切るように設けられる。このため、おむつ1の厚み方向において糸ゴム4F3と吸収体8とは重畳しており、重畳部位となっている。重畳部位の幅方向中央部は、おむつ1が着用された場合に、着用者の尿道口に対応する。
【0084】
一方、糸ゴム4R3は、右下肢開口部2Rおよび左下肢開口部2Lの後身頃領域1R側の縁に沿うように設けられる。糸ゴム4R3は、着用者の背側において、左右の下肢開口部2R,2Lに沿って吸収体8よりもおむつ1の幅方向外側に延在している。糸ゴム4R3は、カバーシート4とインナーカバーシート5に伸張状態で接着されている。そして、後身頃側の股下領域1Bにおいて、糸ゴム4R3の先端部は幅方向を向いている。また、糸ゴム4R3は、吸収体8と厚み方向に重畳する幅方向中央部において切断されており、左側の糸ゴム4R3と右側の糸ゴム4R3とは繋がっていない。このため、吸収体8の幅方向中央部は、糸ゴム4R3とは厚み方向に重畳していない。
【0085】
インナーカバーシート5と吸収体8は、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけてバックシート6を介してホットメルト接着剤等の接着剤で適宜接着されている。しかしながら、図8に示されるように前身頃領域1Fにおいて糸ゴム4F3が吸収体8を横断する領域では、インナーカバーシート5と吸収体8とは非接着とされる(非接着領域15とする)。実際には、非接着領域15においては、インナーカバーシート5とバックシート6が非接着とされている。本実施形態では、糸ゴム4F3と吸収体8とが重なる股下領域1Bの重なり領域の全域に非接着領域15が設けられている。
【0086】
おむつ1では、糸ゴム4F3が吸収体8と厚み方向に重畳している。着用前の状態では、糸ゴム4F3は、吸収体8を幅方向内側に付勢する。当該糸ゴム4F3の付勢力により、吸収体8が幅方向内側に屈曲して型崩れの原因となることがある。糸ゴム4F3が吸収体8を横断する領域を非接着領域15とすることで、着用前の状態において、吸収体8に伝わる糸ゴム4F3の付勢力を軽減することができる。このように、非接着領域15を設けることで、着用前の状態において、吸収体8の型崩れを抑制できる。一方、着用状態では、糸ゴム4F3は、吸収体8を的確に着用者の肌面側に付勢しつつ、幅方向にも適切に広がるように付勢できるため、着用中の吸収体8の型崩れをも抑制可能である。
【0087】
図9は、第2実施形態に係るおむつの外装体と内装体との接着を示す平面図である。図9では、本図における説明と関係のない糸ゴム4F1,4R1等の一部構造を省略している。他の図面では省略しているが、インナーカバーシート5とバックシート6との間、す
なわち内装体と外装体との間には、接着剤HMが、幅方向に延在するように、より具体的には、幅方向を長辺とする細長の略直長方形状で塗布されている。接着剤HMは、一例としては、ホットメルト接着剤である。接着剤HMは、バックシート6の延在範囲において、長手方向に所定の間隔を空けて幅方向に平行に複数配置され、後述する糸ゴム4F3との重畳部位を除き、内装体の延在範囲に渡って塗布されている。接着剤HMにより、内装体と外装体は、接着されている。長手方向における接着剤HMの塗布間隔は、同じであってよい。
【0088】
接着剤HMは、内装体の延在範囲における長手方向の広範囲に配置されており、内装体よりも幅狭な横幅で配置されている。股下領域1B近傍では内装体は幅狭であるため、接着剤HMの塗布領域も幅狭である。接着剤HMが配置されている領域では、内装体は、固化した接着剤HMの剛性により補強されている。なお、接着剤HMは、内装体が糸ゴム4F2,4R2と重畳する範囲において、他の部位よりも広面積で塗布されていてもよい。接着剤HMが広面積で塗布されることにより内装体は更に補強され、糸ゴム4F2,4R2の付勢力によって変形しにくくなる。
【0089】
上述の通り、第2実施形態では、糸ゴム4F3は、吸収体8の延在領域を幅方向に横断するように厚み方向に重畳し、重畳部位を形成している。上述の通り、当該重畳部位は、着用者の恥骨付近に対応している。そして、当該重畳部位において、接着剤HMは配置されておらず、非接着領域15となっている。
【0090】
着用者の尿道口は、非接着領域15の股下側端部の更に股下側の接着剤HM配置領域に対応している。当該領域では、接着剤HMにより、内装体と外装体とが接着されて内装体が補強されている。また、恥骨対応部分に配置された糸ゴム4F3により、内装体が肌面側に適切に当接するように付勢されている。このため、本実施形態に係るおむつ1は、尿道口から発生した排泄液を適切に受け止めることができる。
【0091】
重畳部位において、内装体と外装体との間に接着剤HMが配置されていると、糸ゴム4F3による付勢力は内装体に伝わりやすくなる。おむつ1使用前の状態では、糸ゴム4F3は、おむつ1が幅方向に収縮するように付勢する。内装体に糸ゴム4F3に起因する付勢力が強く伝わると、糸ゴム4F3と内装体が厚み方向に重畳している部分で、内装体が収縮して幅方向内側に屈曲してしまう虞がある。内装体が屈曲した状態でおむつ1を装着すると、吸収体8の機能が損なわれる虞がある他、着用感が悪化する虞もある。
【0092】
そこで、本実施形態では、重畳部位を、内装体と外装体との間に接着剤HMを配置しない非接着領域15とし、おむつ1使用前の状態において、糸ゴム4F3による付勢力が内装体に直接伝わるのを抑制している。この構成により、重畳部位において、既に内装体が幅方向内側に屈曲してしまっている状態を防ぐことができる。
【0093】
ここで、本実施形態に係るおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつである。パンツ型のおむつ1は、交換を行う際、胴側ではなく、大腿部側からサイドシール12部分を引き裂いて、カバーシートの前身頃領域1F側と後身頃領域1R側を剥離させることが想定されている。成人用のおむつ1の着用者として想定される高齢者は、手を後ろに回すことが困難である。このため、着用者自身がおむつ1を脱ぐ場合、サイドシール12の大腿部側が腹側に配置されていると手が届きやすく、交換が容易である。
【0094】
第2実施形態に係る糸ゴム4F3は、外装体を幅方向中央側に収縮させる。糸ゴム4F3の延在領域では、接着剤HMが配置されていない無配置領域となっており、当該領域は外装体と内装体が接着されていない非接着領域15となっている。しかし、糸ゴム4F3の延在領域の股下側には接着剤HMが配置されており、外装体と内装体は接着されている
。非接着領域15において、外装体は、股下側に設けられた内装体との接着部分から伝わる内装体の剛性によって、糸ゴム4F3の付勢力を受けて収縮せずに非肌側に屈曲する。このように、糸ゴム4F3と内装体との重畳領域において、外装体は非肌側に屈曲する。当該屈曲により、外装体における更に外側に位置するサイドシール12も左右方向内側に屈曲し、結果的に糸ゴム4F3と対応する領域において、サイドシール12部分が幅方向内側である腹側に屈曲する。
【0095】
一方、おむつ1の背側では、糸ゴム4R3は吸収体8を横断していない。具体的には、コアラップシート7部分とは重畳するものの、吸収コア8cとは厚み方向に重畳しないか、または、吸収コア8cの幅方向外側においてのみ、吸収コア8cおよびコアラップシート7と、厚み方向に重畳している。また、背側には、非接着領域15は設けられていない。この構成により、糸ゴム4R3がサイドシール12近傍に与える付勢力は、糸ゴム4F3がサイドシール12近傍に与える付勢力よりも弱くなる。このため、着用者の大腿部側において、サイドシール12は腹側に屈曲する。この結果、着用者は、大腿部側が腹側に屈曲しているサイドシール12を容易に把持可能であり、これを引き裂いて容易に交換可能となる。
【0096】
更に、第2実施形態に係るおむつ1は、装着も容易である。糸ゴム4F3と糸ゴム4R3がサイドシール12近傍に与える付勢力の差によりサイドシール12の大腿部側が腹側に屈曲していれば、おむつ1を装着する際にもサイドシール12を把持しやすく、高齢者が自ら装着する場合にも正しく装着できる。そして正しく装着されたおむつは、排出液の漏れを適切に防ぐことができる。このように、第2実施形態では、着用時にずれにくい上に、着脱が容易なおむつ1を提供可能である。
【0097】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、おむつ1に付勢力を与えて着用者の肌面に密着させるために糸ゴムを用いているが、伸縮性を備えた樹脂繊維を用いてもよい。
【0098】
また、カバーシート4に配置される複数の伸縮部である糸ゴム4F1,4F2,4F3、糸ゴム4R1,4R2,4R3は、サイドシール12まで延在し、その端部がサイドシール12によっても固定されていてよい。このように構成することで、仮に糸ゴム4F1,4F2,4F3、糸ゴム4R1,4R2,4R3がカバーシート4から剥離した場合でも、各糸ゴムが付勢力を失うのを防ぐことができる。
【0099】
以上で開示した実施形態やその応用例は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0100】
1・・おむつ
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
2R・・右下肢開口部
2L・・左下肢開口部
3BR,3BL・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
3LR,3LL・・レグギャザー
4・・カバーシート
4F1,4F2,4F3,4R1,4R2,4R3・・糸ゴム
4F4,4R4,4F5,4R5・・縁
4FF,4RF・・折り返し線
5・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8・・吸収体
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
11F,11R・・エンドシート
15・・非接着領域
81・・腹部
82・・第1拡幅部
83・・股下部
84・・第2拡幅部
85・・背部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9