(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110843
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ウェブ巻回ロールの欠陥検査装置に用いられる記録媒体、欠陥検査装置、これを用いたウェブ巻回ロールの欠陥検査方法、およびウェブ巻回ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174992
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022012387
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519311259
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム韓国有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 充
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 敦士
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
(72)【発明者】
【氏名】大和 拓馬
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB02
2G051AC15
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA08
2G051ED02
(57)【要約】
【課題】ウェブ巻回部で発生する欠陥を検出可能であり、ウェブ巻回部で混入した異物による欠陥か判定可能なウェブ巻回ロールの欠陥検査装置および記録媒体、ウェブ巻回ロールの欠陥検査方法、ウェブ巻回ロールの製造方法を提供する。
【解決手段】ウェブ巻回ロールの表面の欠陥を検出し、欠陥の発生周期とウェブ巻回ロールの回転周期を演算比較し、2つの周期が一致する場合に異物による周期的な欠陥と判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置に用いられる記録媒体であって、
前記ロールの外径を取得するロール外径取得ステップと、
周方向に回転する前記ロール表面にて検出された欠陥データの位置情報を取得する欠陥位置取得ステップと、
前記欠陥位置取得ステップにて検出された複数の欠陥の位置が前記ロールの幅方向で揃っているとき、それら欠陥の発生周期を演算する欠陥周期演算ステップと、
前記ロール外径取得ステップにて取得された前記ロール外径に基づいて前記ロールの回転周期を演算するロール回転周期演算ステップと、
前記欠陥周期演算ステップにて得られた欠陥の周期と前記ロール回転周期演算ステップにて得られた前記ロールの回転周期とを比較演算する比較演算ステップと、
前記比較演算ステップにて欠陥の発生周期と前記ロールの回転周期が等しいと判定された場合、周期的に検出される複数の欠陥のうちn番目の欠陥を欠陥として抽出し、前記n番目の欠陥に続いて検出される(n+1)番目の欠陥及び当該(n+1)番目の欠陥以降に検出される欠陥については欠陥と見做さないように処理を行う欠陥処理ステップ(nは1以上の自然数)と、
を含む演算アルゴリズムが記録された記録媒体。
【請求項2】
前記ロール外径取得ステップは、前記ロールの最外周の位置に基づいて前記ロールの外径を取得するものである請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記ウェブの搬送速度を取得する搬送速度取得ステップと、
前記ロールの回転速度を検知するロール回転速度取得ステップと、を備え、
前記ロール外径取得ステップは、前記搬送速度取得ステップにより得られたウェブの搬送速度と前記ロール回転速度取得ステップにより得られた前記ロールの回転速度により前記ロールの外径を算出するものである請求項1に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得するコア径取得ステップと、
前記ウェブの膜厚を取得する膜厚取得ステップと、
前記ロールの積算回転数を取得する積算回転数取得ステップと、を備え、
前記ロール外径取得ステップは、前記コア径取得ステップにて取得された巻き芯の外径と前記膜厚取得ステップにて取得されたウェブの膜厚と前記積算回転数取得ステップにて取得されたロールの積算回転数に基づいて算出するものである請求項1に記載の記録媒体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の記録媒体を含む、ウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の記録媒体を含み、
前記ロール表面を撮像する撮像部と、
前記ロールの外径を検知するロール外径検知部と、
を含むウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置。
【請求項7】
請求項3に記載の記録媒体を含み、
前記ロール表面を撮像する撮像部と、
前記ウェブの搬送速度を検知する搬送速度検知部と、
前記ロールの回転速度を検知するロール回転速度検知部と、
を含むウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置。
【請求項8】
請求項4に記載の記録媒体を含み、
前記ロールの表面を撮像する撮像部と、
前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得するコア径取得部と、
前記ウェブの膜厚を取得する膜厚取得部と、
前記ロールの積算回転数を取得する積算回転数取得部と、
を含むウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記撮像部と前記ロール表面との距離を検知する距離検知部と、
前記距離検知部からの信号を受けて、前記距離を一定に保つように前記撮像部の位置を制御する制御部と、
を含む請求項6~8のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
ウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査方法であって、
ロール外径取得手段により前記ロールの外径を取得する手順と、
欠陥位置取得手段により周方向に回転する前記ロール表面にて検出された欠陥データの位置情報を取得する手順と、
欠陥周期演算手段により前記欠陥位置取得手段にて検出された複数の欠陥の位置が前記ロールの幅方向で揃っているとき、それら欠陥の発生周期を演算する手順と、
ロール回転周期演算手段により前記ロール外径取得手段にて取得された前記ロール外径に基づいて前記ロールの回転周期を演算する手順と、
比較演算手段により前記欠陥周期演算手段にて得られた欠陥の周期と前記ロール回転周期演算手段にて得られた前記ロールの回転周期とを比較演算する手順と、
欠陥処理手段により前記比較演算手段にて欠陥の発生周期と前記ロールの回転周期が等しいと判定された場合、周期的に検出される複数の欠陥のうちn番目の欠陥を欠陥として抽出し、前記n番目の欠陥に続いて検出される(n+1)番目の欠陥及び当該(n+1)番目の欠陥以降に検出される欠陥については欠陥と見做さないように処理を行う手順(nは1以上の自然数)と、
を含む欠陥検査方法。
【請求項11】
前記ロール外径取得手段は、前記ロールの最外周の位置に基づいて前記ロールの外径を取得するものである請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項12】
搬送速度取得手段により前記ウェブの搬送速度を取得する手順と、
ロール回転速度取得手段により前記ロールの回転速度を検知する手順と、を備え、
前記ロール外径取得手段は、前記搬送速度取得手段により得られたウェブの搬送速度と前記ロール回転速度取得手段により得られた前記ロールの回転速度とにより前記ロールの外径を算出するものである
請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項13】
コア径取得手段により前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得する手順と、
膜厚取得手段により前記ウェブの膜厚を取得する手順と、
積算回転数取得手段により前記ロールの積算回転数を取得する手順と、を備え、
前記ロール外径取得手段は、前記コア径取得手段にて取得された巻き芯の外径と前記膜厚取得手段にて取得されたウェブの膜厚と前記積算回転数取得手段にて取得されたロールの積算回転数とに基づいて算出するものである
請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項14】
撮像手段により前記ロール表面を撮像する手順と、
ロール外径取得手段により前記ロールの外径を取得する手順と、
を含む請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項15】
撮像手段により前記ロール表面を撮像する手順と、
搬送速度取得手段により前記ウェブの搬送速度を取得する手順と、
ロール回転速度取得手段により前記ロールの回転速度を取得する手順と、
を含む請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項16】
撮像手段により前記ロール表面を撮像する手順と、
コア径取得手段により前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得する手順と、
膜厚取得手段により前記ウェブの膜厚を取得する手順と、
積算回転数取得手段により前記ロールの積算回転数を取得する手順と、
を含む請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項17】
距離取得手段により前記撮像手段と前記ロール表面との距離を取得する手順と、
制御手段により、前記距離取得手段からの信号を受けて、前記距離を一定に保つように前記撮像手段の位置を制御する手順と、
を含む請求項14~16のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
【請求項18】
請求項10~16のいずれか1項に記載の欠陥検査方法を用いて検査を行い、良品と選別されたロールのみを出荷する、ロールの製造方法。
【請求項19】
請求項17に記載の欠陥検査方法を用いて検査を行い、良品と選別されたロールのみを出荷する、ロールの製造方法。
【請求項20】
前記ロールは、微多孔フィルムを巻回したものである、請求項18に記載のロールの製造方法。
【請求項21】
前記ロールは、微多孔フィルムを巻回したものである、請求項19に記載のロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ巻回ロールの欠陥検査装置に用いられる演算アルゴリズムが記録された記録媒体、欠陥検査装置、これを用いたウェブ巻回ロールの欠陥検査方法、およびウェブ巻回ロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブは、ウェブ製造工程の搬送ロールや延伸ロールの傷や付着物がウェブに転写する、またはウェブが巻回ロールに巻き取られる際に異物をかみ込むもしくは、しわが寄ることでウェブ表面に凹凸が発生する場合がある。このような欠陥を検出する技術として、特許文献1のような巻回ロールに光を照射し、明度差で欠陥を判定する技術が知られている。
【0003】
ウェブ表面に発生する欠陥は周期的に発生する場合があり、例えば、搬送ロールや延伸ロールの傷や付着物がウェブに転写する場合、欠陥は同じ幅方向位置に発生し、欠陥の発生周期は搬送ロールや延伸ロールの周長と一致する。
【0004】
このようなウェブ表面に周期的に発生する欠陥を判定する従来技術として、想定される周期的な欠陥の発生間隔を予め設定し、設定した発生間隔と一致する位置に欠陥が発生した場合に周期的な欠陥と判定する方法と、欠陥群の発生間隔を演算し、複数の発生間隔が一致もしくは整数倍である場合に周期的な欠陥と判定する方法、とが知られており、このような技術を用いることで欠陥の発生源を特定できる場合がある(特許文献2および特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-132605号公報
【特許文献2】特開2014-126360号公報
【特許文献3】特開平10-132536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェブが巻回ロールに巻き取られる際に異物をかみ込んでロール表面に凹凸が発生した場合、異物によるロール表面の凹凸は巻回ロールが1回転するごとに転写される。この場合、凹凸の発生間隔はロールの巻き太りに応じて増加するため、上記特許文献1および上記特許文献2では、周期的な欠陥として検出することができず、異物の混入を検出することができないか、もしくは実際より多く検出してしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ウェブを巻き取ったウェブ巻回ロールにおいて、ロール表面に発生する欠陥を検出し、発生周期を演算することで異物による欠陥か判定可能なウェブ巻回ロールの欠陥検査装置および記録媒体と、ウェブ巻回ロールの欠陥検査方法と、これを用いたウェブ巻回ロールの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置は、ウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査装置であって、前記ロールの外径を取得するロール外径取得ステップと、周方向に回転する前記ロール表面にて検出された欠陥データの位置情報を取得する欠陥位置取得ステップと、前記欠陥位置取得ステップにて検出された複数の欠陥の位置が前記ロールの幅方向で揃っているとき、それら欠陥の発生周期を演算する欠陥周期演算ステップと、前記ロール外径取得ステップにて取得された前記ロール外径に基づいて前記ロールの回転周期を演算するロール回転周期演算ステップと、前記欠陥周期演算ステップにて得られた欠陥の周期と前記ロール回転周期演算ステップにて得られた前記ロールの回転周期とを比較演算する比較演算ステップと、前記比較演算ステップにて欠陥の発生周期と前記ロールの回転周期が等しいと判定された場合、周期的に検出される複数の欠陥のうちn番目の欠陥を欠陥として抽出し、前記n番目の欠陥に続いて検出される(n+1)番目の欠陥及び当該(n+1)番目の欠陥以降に検出される欠陥については欠陥と見做さないように処理を行う欠陥処理ステップと、を含む演算アルゴリズムが記録されている記録媒体を用いる。ただし、「n」は、1以上の自然数である。以下も同様である。
【0009】
このような本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置によれば、欠陥の周期と巻回ロールの回転周期を比較するので、巻回ロールの回転周期で発生するような発生周期が増加していく欠陥でも周期的な欠陥として検出することが可能である。
【0010】
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置において、前記ロール外径取得ステップは、前記ロールの最外周の位置に基づいて前記ロールの外径を取得するものであることが好ましい。また、前記ウェブの搬送速度を取得する搬送速度取得ステップと、前記ロールの回転速度を検知するロール回転速度取得ステップと、を備え、前記ロール外径取得ステップは、前記搬送速度取得ステップにより得られたウェブの搬送速度と前記ロール回転速度取得ステップにより得られた前記ロールの回転速度により前記ロールの外径を算出してもよい。この場合、前記ロールの半径r(mm)はウェブの搬送速度V(mm/s)と前記ロールの回転速度ω(rad/s)を用いることで、r=V/ωから得られる。また、前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得するコア径取得ステップと、前記ウェブの膜厚を取得する膜厚取得ステップと、前記ロールの積算回転数を取得する積算回転数取得ステップと、を備え、前記ロール外径取得ステップは、前記コア径取得ステップにて取得された巻き芯の外径と前記膜厚取得ステップにて取得されたウェブの膜厚と前記積算回転数取得ステップにて取得されたロールの積算回転数に基づいて算出してもよい。この場合、前記ロールの外径D(mm)はウェブの膜厚t(mm)とロールの積算回転数N(回)と巻芯の外径C(mm)を用いることで、D=2tN+Cから得られる。ただし、ウェブの層間にエアを噛み込むとウェブ1層あたりの前記ロールの外径Dの増加量は2tより大きくなるため、エア噛みを考慮して前記ロールの外径Dを計算してもよい。前記ロールの外径Dは前記ロールの直径であり、前記ロールの半径rを用いてD=2rで表すことができる。
【0011】
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置は、前記演算アルゴリズムが記録された記録媒体を含む装置からなる。
【0012】
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置は、前記ロール表面を撮像する撮像部と、前記ロールの外径を検知するロール外径検知部と、を含む装置が好ましい。
また、前記ロール表面を撮像する撮像部と、前記ウェブの搬送速度を検知する搬送速度検知部と、前記ロールの回転速度を検知するロール回転速度検知部と、を含む装置であってもよい。
【0013】
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置は、前記撮像部と前記ロール最表面との距離を検知する距離検知部と、前記距離検知部からの信号を受けて、前記距離を一定に保つように前記撮像部の位置を制御する制御部と、を含む装置が好ましい。このような制御部を有することにより、前記ロールが巻き太って前記撮像部と前記ロール最表面の距離が変化しないため、前記撮像部のフォーカスを常に合わせることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査方法は、ウェブを巻回中のロール表面の欠陥検査方法であって、ロール外径取得手段により前記ロールの外径を取得する手順と、欠陥位置取得手段により周方向に回転する前記ロール表面にて検出された欠陥データの位置情報を取得する手順と、欠陥周期演算手段により前記欠陥位置取得手段にて検出された複数の欠陥の位置が前記ロールの幅方向で揃っているとき、それら欠陥の発生周期を演算する手順と、ロール回転周期演算手段により前記ロール外径取得手段にて取得された前記ロール外径に基づいて前記ロールの回転周期を演算する手順と、比較演算手段により前記欠陥周期演算手段にて得られた欠陥の周期と前記ロール回転周期演算手段にて得られた前記ロールの回転周期とを比較演算する手順と、欠陥処理手段により前記比較演算手段にて欠陥の発生周期と前記ロールの回転周期が等しいと判定された場合、周期的に検出される複数の欠陥のうちn番目の欠陥を欠陥として抽出し、前記n番目の欠陥に続いて検出される(n+1)番目の欠陥及び当該(n+1)番目の欠陥以降に検出される欠陥については欠陥と見做さないように処理を行う手順と、を含む方法からなる。
【0015】
このような本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査方法によれば、欠陥の周期と巻回ロールの回転周期を比較するので、巻回ロールの回転周期で発生するため発生周期が増加していくような欠陥でも周期欠陥として検出することが可能である。
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査方法において、前記ロール外径取得手段は、前記ロールの最外周の位置に基づいて前記ロールの外径を取得する方法が好ましい。また、前記ウェブの搬送速度を取得する搬送速度取得手段と、前記ロールの回転速度を検知するロール回転速度取得手段と、を備え、前記ロール外径取得手段は、前記搬送速度取得手段により得られたウェブの搬送速度と前記ロール速度取得手段により得られた前記ロールの回転速度とにより前記ロールの外径を算出する方法であってもよい。この場合、前記ロールの半径r(mm)はウェブの搬送速度V(mm/s)と前記ロールの回転速度ω(rad/s)を用いることで、r=V/ωから得られる。また、前記ウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得するコア径取得手段と、前記ウェブの膜厚を取得する膜厚取得手段と、前記ロールの積算回転数を取得する積算回転数取得手段と、を備え、前記ロール外径取得手段は、前記コア径取得手段にて取得された巻き芯の外径と前記膜厚取得手段にて取得されたウェブの膜厚と前記積算回転数取得手段にて取得されたロールの積算回転数とに基づいて算出する方法であってもよい。この場合、前記ロールの外径D(mm)はウェブの膜厚t(mm)とロールの積算回転数N(回)と巻芯の外径C(mm)を用いることで、D=2tN+Cから得られる。ただし、ウェブの層間にエアを噛み込むとウェブ1層あたりの前記ロールの外径Dの増加量は2tより大きくなるため、エア噛みを考慮して前記ロールの外径Dを計算してもよい。
【0016】
また、前記ロール表面を撮像する撮像手段と、前記ロールの外径を取得するロール外径取得手段と、を含む方法であってもよい。
また、前記ロール表面を撮像する撮像手段と、前記ウェブの搬送速度を取得する搬送速度取得手段と、前記ロールの回転速度を取得するロール回転速度取得手段と、を含む方法であってもよい。
【0017】
本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査方法は、前記撮像手段と前記ロール最表面との距離を取得する距離取得手段と、前記距離取得手段からの信号を受けて、前記距離を一定に保つように前記撮像手段の位置を制御する制御手段と、を含む方法が好ましい。このような制御手段を有することにより、前記ロールが巻き太って最表面の位置が移動しても、前記撮像手段のピントを調節する必要がなく、常に前記撮像手段のピントを前記ロール最表面に合わせることができる。
【0018】
本発明に係るウェブ巻回ロールの製造方法は、前記欠陥検査方法を用いて検査を行い、良品と選別されたロールのみを出荷する方法からなる。このような本発明に係るウェブ巻回ロールの製造方法によれば、特にウェブ巻回ロールが微多孔フィルムを巻回したものであり、中でもウェブ巻回ロールがリチウムイオン2次電池の正極と負極との間に挿入されるバッテリーセパレータフィルムとして用いられる場合、異物の混入を確実に検出することが求められるため、上記の欠陥検査方法を用いて良品と選別されたロールのみを出荷する製造方法として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウェブ巻回ロールの表面の凹凸を検出し、欠陥の発生周期と巻回ロールの回転周期とを比較演算することにより、異物の噛み込みによる欠陥を判定可能となり、異物の噛み込み位置を特定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置の構成を示す図である。
【
図2】異物をかみ込んだ巻回ロールの断面を示す図である。
【
図3】異物による周期的な欠点のウェブ上の発生位置を示す図である。
【
図4】欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートである。
【
図5】本発明の他の構成(実施の形態2)に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置を示す図である。
【
図6】実施の形態2記載の欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートである。
【
図7】本発明の他の構成(実施の形態3)に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置を示す図である。
【
図8】実施の形態3記載の欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態に係る実施例において検出された異物による周期欠陥を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る実施例における周期的欠陥の検出結果を示す欠陥マップである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置および欠陥検査方法を説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の実施の形態を例示するものであり、本発明は、以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施の形態は改変することができる。また、本発明のウェブの用語は、フィルム(膜)、不織布及び紙などを含むものである。
【0022】
(実施の形態1)
図1に実施の形態1に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置の構成を示す。欠陥検査装置1は、ウェブ巻回ロール製造装置30と共に用いられる。ウェブ巻回ロール製造装置30は、溶融したウェブ材料をウェブ状に押し出しながら巻き取る若しくは、すでに巻き取ったウェブ上に他の層を形成しながら巻き取る、または、さらに幅方向に裁断しながら巻き取る。
【0023】
したがって、ウェブ巻回ロール製造装置30は、
図1に示すように、ウェブを巻き取る巻回装置20を有する。巻回装置20は、巻回ロール21と搬送ロール22を含む。また、巻回装置20は、タッチロール23を含んでいてもよい。巻回装置20は、フィルム(ウェブ)走行速度を制御している。巻回装置20は、巻回されるウェブの張力を制御してもよい。巻回ロール21は、ウェブを巻き取るにしたがって、巻取径が大きくなる。したがって、等速でウェブを走行させるためには、巻回ロール21の回転速度は巻取径が大きくなるに従い遅くなる。
【0024】
欠陥検査装置1は、巻回ロール21のウェブ表面に光を照射する光源10と、ウェブの反射光を検出する撮像装置11と、巻回ロール21の最外周の位置を取得するロール外径検知装置12と、撮像装置11と巻回ロール21の最表面との間の距離を検知する距離検知装置13と、距離検知装置13からの信号を受けて撮像装置11と巻回ロール21の最表面との間の距離を一定に保つように撮像装置11の位置を制御する制御装置14と、を有する。光源10と、撮像装置11と、距離検知装置13は、制御装置14に配設されていてもよい。
【0025】
光源10は、巻回ロール21の最表面に光を照射する。光源10から照射される光の照射角度および強さは、巻回ロール21の最表面に出現した凹凸が強調されるように決定される。
【0026】
撮像装置11は、ラインカメラ(ラインセンサカメラ)が好適に用いられる。撮像装置11は、エリアカメラ(エリアセンサカメラ)を用いてもよいが、巻回ロール21の表面は曲面であるため、焦点の合う領域は限られる。また、この場合、ロール外径検知装置12や距離検知装置13に光学系の測定器を用いると、撮像範囲に照射された測定器の光が外乱となる可能性がある。したがって、撮像装置11は、巻回ロール21上の数百μmの大きさを識別できるだけの解像度を有することが望ましい。
【0027】
ロール外径検知装置12は、レーザーもしくは超音波などの非接触型センサであるのが望ましい。巻回ロール21に巻き取られたウェブに傷をつけないためである。ロール外径検知装置12が検知した巻回ロール21の最表面の位置と、ウェブを巻き回す前の巻き芯の最表面の位置と、巻き太りに伴う巻き芯の移動距離から巻回ロール21の外径を計算する。ロール外径検知装置12は省略してもよい。この場合、巻回ロール21の外径は、距離検知装置13が検知した撮像装置11と巻回ロール21の最表面との間の距離と、制御装置14によって移動した撮像装置11の移動距離と、を用いて計算する。また、ロール外径検知装置12および距離検知装置13に光学系の測定器を用いる場合、測定器の照射光がラインカメラの撮像範囲に入らないようにする。
【0028】
距離検知装置13は、レーザーもしくは超音波などの非接触型センサであるのが望ましい。巻回ロール21に巻き取られたウェブに傷をつけないためである。距離検知装置13は、撮像装置11と巻回ロール21の最表面との間の距離を検知し、検知した距離を信号として制御装置14に送信する。
【0029】
制御装置14は、距離検知装置13が検知した距離を信号として受信し、撮像装置11と巻回ロール21の最表面との間の距離を一定に保つように撮像装置11の位置を制御する。光源10と、ロール外径検知装置12と、距離検知装置13の位置を同様に制御してもよい。このようにすることで巻回ロール21の外径が太くなっても撮像装置11のレンズのフォーカスを巻回ロール21の最表面に合わせることができる。撮像装置11のフォーカス調整は、たとえばオートフォーカスなどカメラ位置一定のままフォーカス調整する機構でも良いが、この場合、フォーカス調整に伴って、視野幅の変化により分解能が変化し、検査感度も変化するので、レンズとカメラの相対位置は一定のまま撮像装置11の位置を制御することが好ましい。また、光源10と撮像装置11の位置を合わせて制御することで、光源10と撮像装置11と巻回ロール21の位置関係が一定となり、撮像装置11が撮像した巻回ロール21の表面画像の検査感度を一定に保つことができる。
【0030】
(異物による欠陥の説明)
次に異物をかみ込んだ場合に、ウェブ巻回ロールの表面に出現する周期的な欠陥について、
図2と
図3を用いて説明する。
図2は異物をかみ込んだロールの断面を見た図である。層41と層42の間で異物40をかみ込むと、層42に異物による凹凸が発生する。そこに層43が巻き取られると層42の凹凸を転写して層43にも凹凸が発生する。この凹凸の転写は数層から数十層にわたって繰り返されるが、転写されるごとに凹凸は小さくなっていき、やがてロール表面は平滑になる。
【0031】
図3は、
図2で発生した凹凸の発生マップのイメージ図である。欠陥50~53はそれぞれ層42~45で発生した凹凸を表す。欠陥50~53の発生位置は巻回ロール21の幅方向(TD)で揃っている。層42で欠陥50が発生してから層43に欠陥51が転写されるまでにウェブ巻回ロールはちょうど1周回転するため、欠陥50が発生したときのウェブ巻回ロールの半径をrとすると、欠陥50と欠陥51のウェブ進行方向位置(MD位置)の差分値はウェブ巻回ロールの周長2πrと等しくなる。次に層44に欠陥52が転写されるまでに、同様にウェブ巻回ロールはちょうど1周回転するが、半径は欠陥50が発生した時より層43の厚みtだけ厚くなっているため、欠陥51と欠陥52のMD位置の差分値は2π(r+t)となる。さらに次の層45に転写した場合、欠陥52と欠陥53のMD位置の差分値は2π(r+2t)となる。つまり、異物による欠陥の発生周期は転写されるごとに2πtだけ増加する。ただし、エアの噛み込みはないものとする。このように、異物による欠陥の発生周期は巻回ロールの周長、つまり回転周期と等しくなるため、これら2つの周期が一致した場合、その欠陥は異物によるものと判定することができる。
【0032】
例えば、ウェブ巻回ロールの製品合否基準が異物個数である場合、転写した凹凸まですべて欠陥として検出してしまうと、実際は合格品であるのに不合格品となり収率が悪化してしまう。本実施形態に係る欠陥検出方法を利用すれば、欠陥の発生周期が巻回ロールの回転周期と一致する場合、異物は1個と検出され、合格品とできるため、収率が改善される。
【0033】
(アルゴリズムの説明)
図4に、欠陥検査装置1において、欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートを示す。まず、欠陥検査装置1は、ロール外径検知装置12が検知した巻回ロール21の最外周の位置に基づいて巻回ロール21の外径D(mm)を取得する(ステップS1)。
【0034】
次に、欠陥検査装置1は、撮像装置11が検出した欠陥データのフィルム進行方向(MD)および幅方向(TD)の位置情報を取得する。MD位置は巻回ロール21にウェブを巻き回し始めた位置を0点とする(ステップS2)。
【0035】
欠陥検査装置1は、発生位置がTD方向で揃っている欠陥について、欠陥の発生周期T1(mm)を演算する。欠陥の発生位置がTD方向で揃っているか判定するとき、許容誤差を設定してもよい。発生位置がTD方向で揃っている欠陥をMD位置が小さい順に1から番号をつけ、n番目の欠陥と(n+1)番目の欠陥のMD位置の差分値を計算することで欠陥の発生周期T1を演算する(ステップS3)。ステップS1で取得した巻回ロール21の外径D(mm)に基づいて巻回ロール21の周長L=πDを計算することで、巻回ロール21の回転周期T2=L(mm)を演算する(ステップS4)。ただし、「n」は自然数である。
【0036】
次に、欠陥検査装置1は、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2を比較し(ステップS5)、周期が一致しない場合、欠陥は異物によるものではないと判定し(ステップS6)、周期性判定処理を終了する。周期が一致する場合、異物による周期的な欠陥と判定し(ステップS7)、ステップS8を行う。なお、ステップS5において、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2が一致するか判定するとき、許容誤差を設定してもよい。
【0037】
欠陥検査装置1は、異物による周期的な欠陥であると判定された欠陥について、1番目のみ欠陥として抽出し、2番目以降の欠陥については欠陥とみなさない。(ステップS8)。欠陥の周期性判定処理はウェブを巻回しながら撮像と並行してリアルタイムで実行してもよいし、ウェブを巻回中に取得した欠陥の位置情報と巻回ロール21の外径データから別途オフラインで実行してもよい。
【0038】
(実施の形態2)
図5に、実施の形態2に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置2の構成を示す。実施の形態2では、
図1と比較して、ロール外径検知装置12の代わりに、ウェブの搬送速度を検知する搬送速度検知装置15と、巻回ロール21の回転速度を検知するロール回転速度検知装置16と、を有する。また、
図4と比較して、巻回ロール21の外径を取得するステップS1の代わりに、ウェブの搬送速度を取得するステップS11と、巻回ロール21の回転速度を検知するステップS12と、ウェブの搬送速度および巻回ロール21の回転速度から巻回ロール21の外径を演算するステップS13が追加されている。
【0039】
搬送速度検知装置15は、ロータリーエンコーダが好適に用いられる。搬送ロール22に接続したエンコーダを接続することで、搬送ロール22の外径とエンコーダが取得した回転数からウェブの搬送速度Vが求まる。搬送中のウェブの走行速度を直接測定してもよい。この場合、非接触型のレーザー速度計が好ましい。搬送中のウェブに傷をつけないためである。ロール回転速度検知装置16は、ロータリーエンコーダが好適に用いられる。巻回ロール21の回転速度は巻き太りに伴い徐々に遅くなる。
【0040】
図6に、欠陥検査装置2において、欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートを示す。搬送速度検知装置15がウェブの搬送速度Vを検知する(ステップS11)。次にロール回転速度検知装置16が巻回ロール21の回転速度ωを検知する(ステップS12)。
【0041】
欠陥検査装置2は、ステップS11で取得したウェブの搬送速度VとステップS12で取得した巻回ロール21の回転速度ωから巻回ロールの外径D=2r=2(V/ω)(mm)を演算する(ステップS13)。
【0042】
次に撮像装置11が検出した欠陥データのフィルム進行方向(MD)および幅方向(TD)の位置情報を取得する。MD位置は巻回ロール21にウェブを巻き回し始めた位置を0点とする(ステップS2)。
【0043】
欠陥検査装置2は、発生位置がTD方向で揃っている欠陥について、欠陥の発生周期T1(mm)を演算する。欠陥の発生位置がTD方向で揃っているか判定するとき、許容誤差を設定してもよい。発生位置がTD方向で揃っている欠陥をMD位置が小さい順に1から番号をつけ、n番目の欠陥と(n+1)番目の欠陥のMD位置の差分値を計算することで欠陥の発生周期T1を演算する(ステップS3)。
【0044】
ステップS13で取得した巻回ロール21の外径D(mm)に基づいて巻回ロール21の周長L=πDを計算することで、巻回ロール21の回転周期T2=L(mm)を演算する(ステップS4)。
【0045】
次に、欠陥検査装置2は、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2を比較し(ステップS5)、周期が一致しない場合、欠陥は異物によるものではないと判定し(ステップS6)、周期性判定処理を終了する。周期が一致する場合、異物による周期的な欠陥と判定し(ステップS7)、ステップS8を行う。なお、ステップS5において、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2が一致するか判定するとき、許容値誤差を設定してもよい。
【0046】
欠陥検査装置2は、異物による周期的な欠陥であると判定された欠陥について、1番目のみ欠陥として抽出し、2番目以降の欠陥については欠陥とみなさない。(ステップS8)。欠陥の周期性判定処理はウェブを巻回しながら撮像と並行してリアルタイムで実行してもよいし、ウェブを巻回中に取得した欠陥の位置情報と巻回ロール21の外径データから別途オフラインで実行してもよい。
【0047】
(実施の形態3)
図7に、実施の形態3に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置3の構成を示す。実施の形態3では、
図1と比較して、ロール外径検知装置12の代わりに、ウェブの膜厚を検知する膜厚検知装置17と、巻回ロール21の積算回転数を検知する積算回転数検知装置18を有する。また、
図4と比較して、巻回ロールの外径を取得するステップS1の代わりに、ウェブの搬送速度を取得するウェブが巻かれる巻き芯の外径を取得するコア径取得ステップS21と、ウェブの膜厚を取得する膜厚取得ステップS22と、巻回ロール21の積算回転数を取得する積算回転数取得ステップS23と、巻き芯の外径とウェブの膜厚と巻回ロール21の積算回転数から巻回ロールの外径を演算するステップ24が追加されている。
【0048】
膜厚検知装置17は、非接触式のレーザー変位計が好ましい。巻回中もしくは走行中のウェブに傷をつけないためである。ふつう、ウェブ巻回ロールを製造するとき、ウェブの膜厚は制御され、膜厚が異なるウェブを巻き取ることは少ないため、ウェブの膜厚は一定とみなしてもよい。この場合、膜厚検知装置17は設置しなくてもよい。積算回転数検知装置18は、ロータリーエンコーダが好適に用いられる。
【0049】
図8に、欠陥検査装置3において、欠陥の周期性判定処理を行う演算アルゴリズムのフローチャートを示す。欠陥検査装置3は、ウェブが巻かれる巻き芯の外径Cを取得する(ステップS21)。次に、欠陥検査装置3は、膜厚検知装置17がウェブの膜厚tを取得する(ステップS22)。
【0050】
次に、積算回転数検知装置18が巻回ロール21の積算回転数Nを取得する(S23)。欠陥検査装置3は、ステップS21で取得した巻き芯の外径Cと、ステップS22で取得したウェブの膜厚tと、ステップS23で取得した巻回ロール21の積算回転数Nから巻回ロールの外径D=2Nt+C(mm)を演算する(ステップS24)。欠陥検査装置3は、巻回ロールの外径Dを計算するとき、エア噛みを考慮してもよい。
【0051】
次に、欠陥検査装置3は、撮像装置11が検出した欠陥データのフィルム進行方向(MD)および幅方向(TD)の位置情報を取得する。MD位置は巻回ロール21にウェブを巻き回し始めた位置を0点とする(ステップS2)。
【0052】
次に、欠陥検査装置3は、発生位置がTD方向で揃っている欠陥について、欠陥の発生周期T1(mm)を演算する。欠陥の発生位置がTD方向で揃っているか判定するとき、許容誤差を設定してもよい。発生位置がTD方向で揃っている欠陥をMD位置が小さい順に1から番号をつけ、n番目の欠陥と(n+1)番目の欠陥のMD位置の差分値を計算することで欠陥の発生周期T1を演算する(ステップS3)。
【0053】
次に、欠陥検査装置3は、ステップS24で取得した巻回ロール21の外径D(mm)に基づいて巻回ロール21の周長L=πDを計算することで、巻回ロール21の回転周期T2=L(mm)を演算する(ステップS4)。
【0054】
次に、欠陥検査装置3は、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2を比較し(ステップS5)、周期が一致しない場合、欠陥は異物によるものではないと判定し(ステップS6)、周期性判定処理を終了する。周期が一致する場合、異物による周期的な欠陥と判定し(ステップS7)、ステップS8を行う。ステップS5において、欠陥の発生周期T1と巻回ロール21の回転周期T2が一致するか判定するとき、許容誤差を設定してもよい。
【0055】
欠陥検査装置3は、異物による周期的な欠陥であると判定された欠陥について、1番目のみ欠陥として抽出し、2番目以降の欠陥については欠陥とみなさない。(ステップS8)。欠陥の周期性判定処理はウェブを巻回しながら撮像と並行してリアルタイムで実行してもよいし、ウェブを巻回中に取得した欠陥の位置情報と巻回ロール21の外径データから別途オフラインで実行してもよい。
【0056】
以上で具体的形態の説明を終えるが、本発明の実施形態は上記形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【0057】
例えば、実施の形態においては、異物による周期的な欠陥であると判定された欠陥について、1番目の欠陥のみ欠陥として検出し、2番目以降の欠陥を欠陥として見做さないとしたが、2番目の欠陥を欠陥として許容してもよい。この場合、3番目以降の欠陥を欠陥として見做さない。
【0058】
(実施例)
本発明の効果を検証するため試験を行った。本試験では、検査対象の被検ウェブとして、厚さが約9μm、幅が350mmのポリオレフィン微多孔フィルムを用いた。被検ウェブを搬送速度10m/minの一定速度で巻回させて検査を行った。巻回ロールの回転速度と被検ウェブの搬送速度から巻回ロールの外径および回転周期を演算した。巻回ロール表面の撮影は反射光と散乱光を用い、撮像装置と巻回ロール法線のなす角は0度、光源と巻回ロールのなす角は30度とした。2,000,000Lxの光源を使用し、巻回ロールからの光源の距離は150mmとした。
本試験で得られた異物による周期的な欠陥の画像を
図9に示す。画像の中心にある輝度の低い領域が異物による凹凸であり、1層目のウェブで検出された凹凸がその上に巻回された2層目、3層目のウェブまで転写していることが確認できる。
図10に周期的欠陥の判定結果をプロットした欠陥発生マップを示す。検出されたすべての欠陥を丸(●)でプロットし、単独で発生した欠陥と演算アルゴリズムにより周期的欠陥であると判定された欠陥群の1つ目の欠陥にバツ(×)を重ねてプロットした。すなわちバツプロットが重なっていない丸プロットは、演算アルゴリズムにより周期的欠陥と判定され欠陥とみなさなくなっていることを示す。本実施例において周期的欠陥と判定する最低の欠陥個数は2個とした。つまり、任意の幅方向(TD)の位置で発生した欠陥の中で、MD方向の距離が巻回ロールの周期と一致する欠陥が2個だけでも、これらの欠陥は周期的欠陥とみなされる。
図10の周期的欠陥では2~6個程度の欠陥が発生しているが、演算アルゴリズムはいずれの個数でも周期的欠陥として良好に検出できていることがわかる。
また、本試験で用いた巻回装置はタッチロールが固定されているため巻太りに伴い巻回ロールの芯が移動するが、撮像装置と巻回ロール表面の距離一定に保つ制御装置により撮像装置のフォーカスを巻回ロールの表面に合わせ続けることが可能なことを確認した。
上記の検証により、巻回ロールの回転速度と被検ウェブの搬送速度から演算した巻回ロールの回転周期により周期的欠陥が異物によるものか判定が可能であり、さらに異物の噛み込み位置の特定が可能であるとともに、本発明の有効性が実証された。
【0059】
ウェブ巻回ロールに巻き取るウェブが微多孔フィルムである場合、微多孔フィルムは白色かつ柔らかい素材であるため、欠陥によるウェブ表面の明暗差を検出しやすく、異物による欠陥を転写しやすいため、上記各実施の形態に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置を好適に用いることができる。
【0060】
ウェブ巻回ロールに異物の噛み込みが検出された場合、異物の個数が製品合否基準内であればそのまま出荷し、合否基準以上であればそのウェブ巻回ロールを破棄するか、異物をかみ込んだ位置までウェブを巻き出し、異物を取り除いた上で巻き取る、もしくは異物をかみ込んだ位置より内側までウェブを巻き出して切断することで、異物の個数を製品合否基準内に収めて出荷するか、のいずれの態様を採っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本実施形態に係るウェブ巻回ロールの欠陥検査装置および検査方法は、ウェブを製造する際に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3 欠陥検査装置
10 光源
11 撮像装置
12 ロール外径検知装置
13 距離検知装置
14 制御装置
15 搬送速度検知装置
16 ロール回転速度検知装置
17 膜厚検知装置
18 積算回転数検知装置
20 巻回装置
21 巻回ロール
22 搬送ロール
23 タッチロール
30 ウェブ巻回ロール製造装置
31 原反ロール
40 異物
41、42、43、44、45 ウェブの層
50、51、52、53 欠陥