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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110851
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/044 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
F16K11/044 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180419
(22)【出願日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022011595
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA02
3H067AA32
3H067BB03
3H067BB12
3H067CC32
3H067CC45
3H067DD02
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067EA12
3H067ED02
3H067FF17
3H067GG22
(57)【要約】
【課題】弁の開閉に必要となる駆動力を減少させて小型化を図ることができる弁装置を提供すること。
【解決手段】流入通路10および流出通路12,13を備えるハウジング2と、弁軸18と連動して流入通路10と流出通路12との間を開閉する弁体16と、弁軸18と連動して流入通路10と流出通路13との間を開閉する弁体17と、弁軸18を軸方向へ往復運動させて弁体16,17を開閉駆動させる駆動部19と、を備える弁装置1において、
前記弁体16,17には、軸方向に貫通する弁軸18の外径よりも大きな径の貫通孔16a,17aが形成されており、弁軸18は、貫通孔16a,17aに隙間S1,S2をもって挿通されており、流体圧が作用する受圧面積が弁体16,17より小さくて弁体16,17の全閉時に隙間S1,S2を閉塞するプレート部材20,21と、弁体16,17の開弁時に弁体16,17の位置を規制する規制部材22,23とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流入通路および少なくとも1つの流出通路を備えるハウジングと、
弁軸と連動して前記流入通路と前記流出通路との間を開閉する弁体と、
前記弁軸を移動させて前記弁体を開閉駆動させる駆動部と、を備える弁装置において、
前記弁体には、軸方向に貫通する前記弁軸の外径よりも大きな径の貫通孔が形成されており、
前記弁軸は、流体圧が作用する受圧面積が前記弁体より小さくて前記弁体の全閉時に前記貫通孔を閉塞する貫通孔閉塞部と、前記弁体の開弁時に前記弁体に係合して前記弁体を駆動する係合部とを有する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載する弁装置において、
前記弁軸は、前記貫通孔に隙間をもって配置されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動するように構成されており、
前記貫通孔閉塞部は、前記弁体の全閉時に前記隙間を閉塞するプレート部材を備え、
前記係合部は、前記弁体の開弁時に前記弁体の位置を規制する規制部材を備えている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載する弁装置において、
前記ハウジングには、前記弁軸の軸方向にて前記流入通路を挟んで前記流出通路と対向する位置に第2の流出通路が形成されており、
軸方向に貫通する前記弁軸の外径よりも大きな径の第2の貫通孔が形成され、前記弁軸と連動して前記流入通路と前記第2の流出通路との間を開閉する第2の弁体を更に備え、
前記弁軸は、前記第2の貫通孔にも隙間をもって挿通されており、流体圧が作用する受圧面積が前記第2の弁体より小さくて前記第2の弁体の全閉時に前記隙間を閉塞する第2のプレート部材と、前記第2の弁体の開弁時に前記第2の弁体の軸方向の位置を規制する第2の規制部材とを更に有する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する弁装置において、
前記駆動部は、前記弁軸を回転させながら往復運動させるものであり、
前記プレート部材は、前記弁軸とともに回転することにより、前記隙間の閉塞状態と開放状態とを切り換え可能な形状である
ことを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項2に記載する弁装置において、
前記隙間には、前記弁軸又は前記弁体の少なくとも一方に固定され、前記弁体の傾きを規制する傾き規制部が配置されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項6】
請求項5に記載する弁装置において、
前記傾き規制部は、前記貫通孔の上流側と下流側とに分割されて配置されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項1、請求項5、請求項6に記載するいずれか1つの弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、一体的に形成されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項8】
請求項7に記載する弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、それぞれが曲面を備えており、それぞれの曲面が前記弁体と当接することで、前記貫通孔の閉塞及び前記弁体との係合を行う
ことを特徴とする弁装置。
【請求項9】
請求項8に記載する弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、一体的に形成された球状体部である
ことを特徴とする弁装置。
【請求項10】
請求項9に記載する弁装置において、
前記弁軸は、一端側に前記球状体部を備え、前記貫通孔に隙間をもって配置されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動するように構成されており、
前記弁体は、前記弁軸に備わる前記球状体部を弁体内部に隙間をもって包含している
ことを特徴とする弁装置。
【請求項11】
請求項7に記載する弁装置において、
前記駆動部により軸中心に回転駆動する回転軸と、
前記回転軸と前記弁軸とを連結して、前記回転軸の回転駆動に連動して前記弁軸を駆動する連結部と、を更に有し、
前記弁軸は、一端側に前記貫通孔閉塞部及び前記係合部を備え、前記貫通孔に隙間をもって配置されており、
前記弁体は、前記弁軸に備わる前記貫通孔閉塞部及び前記係合部を弁体内部に隙間をもって包含している
ことを特徴とする弁装置。
【請求項12】
請求項7に記載する弁装置において、
前記ハウジングには、前記弁軸の軸方向にて前記流出通路を挟んで第1の流入通路と第2の流入通路とが形成されており、
前記弁体は、前記弁軸と連動して前記第1の流入通路と前記流出通路との間を開閉する第1の弁体部と、前記第2の流入通路と前記流出通路との間を開閉する第2の弁体部とを備え、
前記弁軸は、流体圧が作用する受圧面積が前記第1の弁体部より小さくて前記第1の弁体部の全閉時に前記第1の弁体部の貫通孔を閉塞する第1の連通孔閉塞部と、流体圧が作用する受圧面積が前記第2の弁体部より小さくて前記第2の弁体部の全閉時に前記第2の弁体部の貫通孔を閉塞する第2の連通孔閉塞部とを備え、前記第1の弁体部及び前記第2の弁体部のそれぞれに形成された貫通孔に隙間をもって挿通されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動するように構成されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項13】
請求項7に記載する弁装置において、
前記弁体は、全閉時に前記貫通孔閉塞部又は前記係合部が前記弁体に当接しているときに、前記貫通孔を介して前記流入通路と前記流出通路を連通する連通孔を備える
ことを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の流路を開閉する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流路を開閉する弁装置として、例えば、特許文献1に記載された弁装置がある。この弁装置は、少なくとも1つの流入通路および少なくとも1つの流出通路を備えた弁ケーシング(ハウジング)と、可動子と共に弁シャフト(弁軸)に固定されていて流入通路と流出通路との間を開閉する弁部材(弁体)とを有している。そして、弁シャフトが可動子と一緒に可動子室内に浸漬され、この可動子室は互いに異なる圧力レベルの導管部分に結合されていることで運動隙間を介して少なくとも一時的に液体により通流されており、可動子室が、運動隙間を介して弁部材の可動子室に面した側の1つの導管部分に、かつ弁シャフト内の軸方向の通路を介して弁部材の可動子室とは逆の側の別の1つの導管部分に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001-523194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような弁装置では、流体圧に反するように弁体を駆動して弁の開閉を行うとき、弁体(弁軸)を駆動する駆動部は、流体圧よりも大きな駆動力を発生させる必要がある。そのため、流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等には、駆動部の出力を増幅させる必要があり、駆動部、ひいては弁装置が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、弁の開閉に必要となる駆動力を減少させて小型化を図ることができる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
少なくとも1つの流入通路および少なくとも1つの流出通路を備えるハウジングと、
弁軸と連動して前記流入通路と前記流出通路との間を開閉する弁体と、
前記弁軸を移動させて前記弁体を開閉駆動させる駆動部と、を備える弁装置において、
前記弁体には、軸方向に貫通する前記弁軸の外径よりも大きな径の貫通孔が形成されており、
前記弁軸は、流体圧が作用する受圧面積が前記弁体より小さくて前記弁体の全閉時に前記貫通孔を閉塞する貫通孔閉塞部と、前記弁体の開弁時に前記弁体に係合して前記弁体を駆動する係合部と、を有することを特徴とする。
【0007】
この弁装置では、弁体を全閉から開弁する際、弁軸を駆動するには貫通孔閉塞部に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、貫通孔閉塞部の受圧面積は弁体の受圧面積よりも小さいので、弁軸を駆動するために必要な駆動力は、弁体を駆動するために必要な駆動力よりも小さい。そのため、弁体を全閉状態から開弁する際、弁体を駆動するために必要であった駆動力(従来の弁装置で必要とされていた駆動力)よりも小さい駆動力で弁軸を駆動することができる。
【0008】
そして、弁軸が駆動されると、貫通孔閉塞部が動いて貫通孔が開放状態となり、弁体の貫通孔を介して流入通路と流出通路が連通する。これにより、弁体の上下流において弁体に作用する流体圧の差圧が小さくなる。
【0009】
このように、この弁装置によれば、弁体を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部の出力を小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部を小型化することができる。これにより、弁装置の小型化を図ることができる。
【0010】
上記した弁装置において、
前記弁軸は、前記貫通孔に隙間をもって配置されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動(ストローク運動)するように構成されており、
前記貫通孔閉塞部は、前記弁体の全閉時に前記隙間を閉塞するプレート部材を備え、
前記係合部は、前記弁体の開弁時に前記弁体の位置を規制する規制部材を備えていることが好ましい。
【0011】
この弁装置では、弁軸が弁体の貫通孔に隙間をもって挿通されており、弁軸と弁体が一体化されていない。そのため、弁体を全閉状態から開弁する際、先に弁軸が動いてから弁体が動く。詳細には、弁軸が動いた後、弁体は規制部材により弁軸に連動して動き始める。すなわち、弁軸が動き始めるタイミングと弁体が動き始めるタイミングが少しずれている。
【0012】
ここで、弁体を全閉状態から開弁する際、弁体に先立って弁軸を駆動するには、プレート部に作用する流体圧と弁軸の端面に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、プレート部材の受圧面積は弁体の受圧面積よりも小さいので、弁軸を駆動するために必要な駆動力は、弁体を同時に駆動するために必要な駆動力よりも小さい。そのため、弁体を全閉状態から開弁する際、弁体を駆動するために必要であった駆動力(従来の弁装置で必要とされていた駆動力)よりも小さい駆動力で弁軸を駆動することができる。
【0013】
そして、弁軸が駆動されると、弁軸に連動してプレート部材が動くため、弁軸と弁体の貫通孔との隙間が開放状態となり、弁体の貫通孔を介して流入通路と流出通路が連通する。これにより、弁体の上下流において弁体に作用する流体圧の差圧が小さくなる。このとき、流体圧が作用するのは、弁軸の端面のみとなる。
【0014】
このように、この弁装置によれば、弁体を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部の出力を小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部を小型化することができる。これにより、弁装置の小型化を図ることができる。
【0015】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記ハウジングには、前記弁軸の軸方向にて前記流入通路を挟んで前記流出通路と対向する位置に第2の流出通路が形成されており、
軸方向に貫通する前記弁軸の外径よりも大きな径の第2の貫通孔が形成され、前記弁軸と連動して前記流入通路と前記第2の流出通路との間を開閉する第2の弁体を更に備え、
前記弁軸は、前記第2の貫通孔にも隙間をもって挿通されており、流体圧が作用する受圧面積が前記第2の弁体より小さくて前記第2の弁体の全閉時に前記隙間を閉塞する第2のプレート部材と、前記第2の弁体の開弁時に前記第2の弁体の軸方向の位置を規制する第2の規制部材とを更に有していてもよい。
【0016】
この弁装置では、第2の弁体を全閉状態から開弁する際にも、上記の効果を得ることができる。そのため、少なくとも1つの流入通路と少なくとも2つの流出通路とを有する弁装置(例えば三方弁)においても、駆動部に要求される出力を小さくすることができる。これにより、駆動部を小型化することができ、弁装置の小型化を図ることができる。
【0017】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記駆動部は、前記弁軸を回転させながら往復運動させるものであり、
前記プレート部材は、前記弁軸とともに回転することにより、前記隙間の閉塞状態と開放状態とを切り換え可能な形状であることが好ましい。
【0018】
軸方向視におけるプレート部材及び隙間の形状をこのようにすることにより、弁軸の僅かな(少ない)ストロークで、言い換えると弁軸をほとんどストロークさせることなく、弁軸と弁体の貫通孔との隙間を開放状態にして流入通路と流出通路とを連通させることができる。これにより、開弁時の応答性を向上させることができる。
【0019】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記隙間には、前記弁軸又は前記弁体の少なくとも一方に固定され、前記弁体の傾きを規制する傾き規制部が配置されていることが好ましい。
【0020】
このような傾き規制部を設けることにより、弁体の傾きが規制されるため、閉弁時において弁体とプレート部との密着度が高まるので、安定した全閉状態を確保することができる。
【0021】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記傾き規制部は、前記貫通孔の上流側と下流側とに分割されて配置されていることが好ましい。
【0022】
このようにすることにより、傾き規制部が分割配置されていない場合と比べると、隙間容積を大きくすることができる。そのため、弁体を全閉状態から開弁する際、弁体の上下流において弁体に作用する流体圧の差圧を、より速やかに小さく(ほぼゼロに)することができる。これにより、開弁時の応答性をより向上させることができる。
【0023】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、一体的に形成されていることが好ましい。
【0024】
このように弁軸に対して貫通孔閉塞部及び係合部が一体的に形成されているため、弁装置の構造簡素化及び小型化を図ることができる。
【0025】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、それぞれが曲面を備えており、それぞれの曲面が前記弁体と当接することで、前記貫通孔の閉塞及び前記弁体との係合を行うことが好ましい。
【0026】
このように貫通孔閉塞部及び係合部に備わる曲面が、弁体に当接して弁の開閉を行うため、貫通孔閉塞部又は係合部が弁体に当接している状態において、弁軸と弁体との芯ズレを抑制することができるので、安定した全閉状態を確保することができる。なお、曲面形状としては、弁軸と弁体との芯ズレを抑制する調芯機能を奏するような形状であればよく、例えば球状、半球状、円錐(テーパ)形状など、を挙げることができる。
【0027】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記貫通孔閉塞部及び前記係合部は、一体的に形成された球状体部であることが好ましい。
【0028】
このように貫通孔閉塞部及び係合部を、一体的に形成された球状体部にすることにより、弁装置の構造をより簡素化することができ、弁装置の小型化を図ることができる。
【0029】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記弁軸は、一端側に前記球状体部を備え、前記貫通孔に隙間をもって配置されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動するように構成されており、
前記弁体は、前記弁軸に備わる前記球状体部を弁体内部に隙間をもって包含していることが好ましい。
【0030】
このような構成により、スラスト駆動する弁装置において、駆動部に対する要求出力を小さくすることができるともに、構造の簡素化を図ることができる。従って、スラスト駆動する弁装置を小型化することができる。
【0031】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記駆動部により軸中心に回転駆動する回転軸と、
前記回転軸と前記弁軸とを連結して、前記回転軸の回転駆動に連動して前記弁軸を駆動する連結部と、を更に有し、
前記弁軸は、一端側に前記貫通孔閉塞部及び前記係合部を備え、前記貫通孔に隙間をもって配置されており、
前記弁体は、前記弁軸に備わる前記貫通孔閉塞部及び前記係合部を弁体内部に隙間をもって包含していることが好ましい。
【0032】
このような構成により、回転駆動するバタフライ弁において、駆動部に対する要求出力を小さくすることができるため、駆動部の小型化を図ることができる。従って、回転駆動するベタフライ弁装置を小型化することができる。
【0033】
また、上記したいずれかの弁装置において、
前記ハウジングには、前記弁軸の軸方向にて前記流出通路を挟んで第1の流入通路と第2の流入通路とが形成されており、
前記弁体は、前記弁軸と連動して前記第1の流入通路と前記流出通路との間を開閉する第1の弁体部と、前記第2の流入通路と前記流出通路との間を開閉する第2の弁体部とを備え、
前記弁軸は、流体圧が作用する受圧面積が前記第1の弁体部より小さくて前記第1の弁体部の全閉時に前記第1の弁体部の貫通孔を閉塞する第1の連通孔閉塞部と、流体圧が作用する受圧面積が前記第2の弁体部より小さくて前記第2の弁体部の全閉時に前記第2の弁体部の貫通孔を閉塞する第2の連通孔閉塞部とを備え、前記第1の弁体部及び前記第2の弁体部のそれぞれに形成された貫通孔に隙間をもって挿通されて前記駆動部により前記弁軸の軸方向に往復運動するように構成されていてもよい。
【0034】
このような構成により、弁軸が複数の連通孔閉塞部を備える形態の弁装置において、駆動部に対する要求出力を小さくすることができるため、駆動部の小型化ひいては弁装置の小型化を図ることができる。そして、この弁装置では、第1の弁体部を全閉状態から開弁する際、及び第2の弁体部を全閉状態から開弁する際の両方において、上記の効果を得ることができる。これにより、少なくとも1つの流出通路と少なくとも2つの流入通路とを有する弁装置(例えば三方弁)においても、駆動部に対する要求出力を小さくすることができるため、弁装置の小型化を図ることができる。
【0035】
ここで、上記の弁装置において、駆動部としてソレノイドを用いるソレノイドバルブのように、弁体の開弁時において、弁軸が瞬時に移動して貫通孔閉塞部又は係合部が弁体(弁体部)に当接する場合、弁体(弁体部)の上流側と下流側との圧力差が小さくなる前に貫通孔が閉塞されるため、弁体(弁体部)の上流側と下流側との圧力差を小さくすることができなくなる。そうすると、弁体(弁体部)を全閉状態から開弁する際、弁体を駆動するために要求される駆動力を小さくすることができなくなってしまう。
【0036】
そこで、上記したいずれかの弁装置において、
前記弁体は、全閉時に前記貫通孔閉塞部又は前記係合部が前記弁体に当接しているときに、前記貫通孔を介して前記流入通路と前記流出通路を連通する連通孔を備えることが好ましい。なお、流入通路には、第1の流入通路及び第2の流入通路も含まれ、流出通路には、第2の流出通路も含まれる。
【0037】
これにより、弁体の開弁時において、弁軸が瞬時に移動して貫通孔閉塞部又は係合部が弁体に当接して連通孔が閉塞される場合でも、連通孔及び貫通孔により流入通路と流出通路(つまり、弁体の上流側と下流側)が連通する。そのため、弁体の上下流において弁体に作用する流体圧の差圧を確実に小さくすることができる。従って、弁体を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部の出力を小さくすることができるので、弁装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本開示によれば、弁の開閉に必要となる駆動力を減少させて小型化を図ることができる弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図2】弁体の平面図である。
図3】傾き規制部の形状を示す断面図である。
図4】通路切り替え前における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図5】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図6】通路切り替え後における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図7】傾き規制部の変形例を示す図である。
図8】第2実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図9】プレート部材の平面図である。
図10】弁体の全閉状態における切り欠き部と回転規制部の状態を示す図である。
図11】第3実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図12】第4実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図13】通路切り替え前における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図14】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図15】通路切り替え後における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図16】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図17】第5実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図18】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図19】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図20】第6実施形態のバタフライ弁の概略構成を示す断面図である。
図21】通路切り替え前における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図22】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図23】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態を示す図である。
図24】第7実施形態の弁装置の概略構成を示す断面図である。
図25】通路切り替え前における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図26】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図27】通路切り替え後における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図28】通路切り替え途中における弁体と弁軸の状態、及び流体圧が作用する箇所を示す図である。
図29】第7実施形態の弁装置の変形例における一方の弁体部と球状体部の位置関係を示す図である。
図30】第7実施形態の弁装置の変形例における他方の弁体部と球状体部の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[第1実施形態]
本開示に係る実施形態である弁装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。第1実施形態では、1つの流入通路と2つの流出通路を備える三方弁に対して本開示を適用した場合について説明する。
【0041】
<弁装置の構成>
そこで、第1実施形態の弁装置1の構成について、図1図3を参照しながら説明する。本実施形態の弁装置1は、図1に示すように、流入通路10と流出通路12,13とが形成されたハウジング2と、流入通路10と流出通路12の途中に設けられた弁座14と、流入通路10と流出通路13の途中に設けられた弁座15と、弁座14,15に着座可能に設けられた弁体16,17と、弁体16,17を弁座14,15に対して移動させる弁軸18と、弁軸18を軸方向へ往復運動(ストローク運動)させる駆動部19とを有する。
【0042】
ハウジング2に形成されている流出通路12,13は、弁軸18の軸方向(図1中上下方向)にて、流入通路10を挟んで互いに対向する位置に配置されている。すなわち、弁軸18の軸方向(図1中上下方向)において、流出通路12は流入通路10より上側に配置され、流出通路13は流入通路10より下側に配置されている。
【0043】
弁座14には弁孔14aが形成されており、弁孔14aを介して流入通路10と流出通路12とが連通している。また、弁座15には弁孔15aが形成されており、弁孔15aを介して流入通路10と流出通路13とが連通している。
【0044】
弁体16は、弁座14に対し離間/当接して弁孔14aを開閉することにより、流入通路10と流出通路12とを連通/遮断する。弁体16には、軸方向に貫通する貫通孔16aが形成されている。この貫通孔16aの直径は、弁軸18の外経より大きい。そして、貫通孔16aに弁軸18が隙間S1をもって挿通されている。
【0045】
一方、弁体17は、弁座15に対し離間/当接して弁孔15aを開閉することにより、流入通路10と流出通路13とを連通/遮断する。弁体17には、軸方向に貫通する貫通孔17aが形成されている。この貫通孔17aの直径は、弁軸18の外経より大きい。そして、貫通孔17aに弁軸18が隙間S2をもって挿通されている。
【0046】
これらの弁体16,17は、弁軸18に対して、弁体16が弁座14に当接している状態(弁体16が全閉状態)では、弁体17が弁座15から離間している状態(弁体17が全開状態)となり、弁体16が弁座14から離間している状態(弁体16が全開状態)では、弁体17が弁座15に当接している状態(弁体17が全閉状態)となるような位置に配置されている。そのため、弁装置1において、弁体16,17を、このような配置にするために、弁軸18には、プレート部材20,21(連通孔閉塞部)と、規制部材22,23(係合部)とが設けられている。
【0047】
そして、弁体16は、プレート部材20と規制部材22とに挟まれるように両部材の間に配置されている。また、弁体17は、プレート部材21と規制部材23とに挟まれるように両部材の間に配置されている。なお、プレート部材20,21及び規制部材22,23は、弁軸18に圧入などで固定されており、弁軸18とともに移動する。これにより、弁体16,17は、プレート部材20,21又は規制部材22,23が当接した後に動き出すため、弁体16又は弁体17の開弁時(開弁初期)には、弁軸18は、弁体16,17と連動せずに単体で移動可能になっている。
【0048】
また、弁体16,17には、図2に示すように、貫通孔16a,17aの内周面から内側(中心)に向かって突出する凸状の傾き規制部26,27が設けられている。この傾き規制部26,27は、等間隔に3つ以上設けることが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、貫通孔16a,17aの軸方向に連続的に形成された凸状の傾き規制部26,27が、約90°間隔で4つ設けられている。このような傾き規制部26,27により、弁体16,17の弁軸18に対する傾きが規制される。これにより、弁体16,17は、弁軸18に対して傾くことなく軸方向へ移動することができるようになっている。
【0049】
ここで、プレート部材20は、弁軸18に対する弁体16の位置を規制するとともに、弁体16の全閉時(弁体16が弁座14に当接している時)に、弁体16に密着して隙間S1を閉塞するものである。プレート部材20は、円板状の部材であり、その外径は貫通孔16aの直径より大きく、かつ弁体16の外径(流体圧が作用する面の外径)より小さくなっている。そのため、流体圧が作用する受圧面積は、プレート部材20の方が弁体16よりも小さい。
【0050】
同様に、プレート部材21は、弁軸18に対する弁体17の位置を規制するとともに、弁体17の全閉時(弁体17が弁座15に当接している時)に、弁体17に密着して隙間S2を閉塞するものである。プレート部材21は、円板状の部材であり、その外径は貫通孔17aの直径より大きく、かつ弁体17の外径(流体圧が作用する面の外径)より小さくなっている。そのため、流体圧が作用する受圧面積は、プレート部材21の方が弁体17よりも小さい。
【0051】
一方、規制部材22は、弁体16に対してプレート部材20が当接する面とは反対側の面(流出通路12側の面)に当接することにより、弁体16の開弁時(弁体16が弁座14から離間している時)に、弁体16の位置を規制するものである。この規制部材22が弁体16に当接した後、弁体16が弁軸18と連動して軸方向へ移動するようになっている。規制部材22の形状は、貫通孔16aを閉塞することなく弁体16に当接可能な形状であれば特に限定されることはないが、弁体16の開弁直後に貫通孔16aを流れる流体の流れを阻害しにくい形状であることが好ましい。なお、本実施形態では、弁体16の開弁直後に貫通孔16aを流れる流体の流れが、規制部材22に阻害されないように、貫通孔16aの直径を下流側では大きくしている。
【0052】
同様に、規制部材23は、弁体17に対してプレート部材21が当接する面とは反対側の面(流出通路13側の面)に当接することにより、弁体17の開弁時(弁体17が弁座15から離間している時)に、弁体17の位置を規制するものである。この規制部材23が弁体17に当接した後、弁体17が弁軸18と連動して軸方向へ移動するようになっている。規制部材23の形状は、貫通孔17aを閉塞することなく弁体17に当接可能な形状であれば特に限定されることはないが、弁体17の開弁直後に貫通孔17aを流れる流体の流れを阻害しにくい形状であることが好ましい。なお、本実施形態では、弁体17の開弁直後に貫通孔17aを流れる流体の流れが、規制部材23に阻害されないように、貫通孔17aの直径を下流側では大きくしている。
【0053】
駆動部19は、弁軸18を往復運動(ストローク運動)させることにより、弁体16,17を弁座14,15に対して当接/離間させて、弁孔14a,15aを閉塞/開放して、流入通路10を流出通路12,13のいずれか一方に連通させて通路を切り替える。駆動部19としては、例えば、ソレノイドやステッピングモータ等を使用することができる。なお、駆動部19として、ソレノイドを使用する場合には、ソレノイドにより弁軸18を移動させる方向とは逆の方向へ弁軸18を付勢するスプリングが備わっている。また、駆動部19としてステッピングモータを使用する場合には、弁軸18を回転させながらストローク運動させるためのネジ機構が備わっている。
【0054】
<弁装置の動作>
続いて、上記の構成を有する弁装置1において、流体の流路を切り換える際の動作について、図4図6を参照しながら説明する。まず、図4に示すように、弁装置1において、流入通路10と流出通路12とが遮断され、流入通路10と流出通路13とが連通している状態(通路切り替え前)について説明する。
【0055】
この状態では、弁体16が弁座14に当接するとともに、プレート部材20が弁体16に密着して隙間S1を閉塞しており、弁体16が全閉状態になっている。一方、弁体17は、弁座15から離間して全開状態になっている。これにより、流入通路10は流出通路13に連通し、流入通路10から弁装置1に流れ込んだ流体は、流出通路13から排出される。このとき、図4に矢印で示すように、弁体16、プレート部材20、及び弁軸18の端面に対して、流体の圧力が弁体16の閉弁方向へ作用する。
【0056】
ここで、弁装置1では、弁軸18が弁体16,17の貫通孔16a,17aに隙間S1,S2をもって挿通されており、弁軸18と弁体16,17は一体化されていない。そのため、駆動部19により弁軸18を移動させて通路を切り替える場合、つまり弁体16を開弁する際、図5に示すように弁軸18だけが先に図中下方向へ移動してから、その後に図6に示すように弁体16,17が図中下方向へ移動する。具体的には、弁軸18が図中下方向へ動いた後、弁軸18に固定されている規制部材22が弁体16に当接する。その後、弁体16は規制部材22によって弁軸18と連動して図中下方向へ動き始める。なお、弁体17はプレート部材21によって弁軸18と連動して図中下方向へ動き始める。このように弁装置1では、弁軸18が動き始めるタイミングと弁体16,17が動き始めるタイミングとが少しずれる。
【0057】
弁体16を全閉状態から開弁する際、弁体16に先立って弁軸18を駆動するには、プレート部材20に作用する流体圧と、弁軸18の端面に作用する流体圧とに打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、プレート部材20及び弁軸18の端面の総受圧面積は弁体16の受圧面積よりも小さい。そのため、弁装置1において、弁軸18を駆動するために必要となる駆動力は、従来の弁装置で要求されていた、弁体16を駆動するために必要な駆動力よりも小さくなる。従って、弁装置1では、弁体16を全閉状態から開弁する際、弁体16を駆動するために必要であった駆動力(従来の弁装置で必要とされていた駆動力)よりも小さい駆動力で弁軸18を駆動することができる。
【0058】
そして、駆動部19により弁軸18が駆動されて図中下方向へ移動すると、弁軸18に連動してプレート部材20も図中下方向へ移動する。そうすると、プレート部材20が弁体16から離れるため隙間S1が開放状態となり、弁体16の貫通孔16aを介して流入通路10と流出通路12が連通する(図5参照)。これにより、弁体16の上下流において、弁体16へ作用する流体圧の差圧が小さくなる。このとき、流体圧が作用するのは、弁軸18の端面のみとなる。これにより、弁装置1によれば、弁体16を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができる。
【0059】
その後、弁軸18がさらに図中下方向へ移動していくと、規制部材22が弁体16に当接するとともに、プレート部材21が弁体17に当接する。そのため、弁体16,17は弁軸18に連動して図中下方向へ移動し、弁体16は弁座14から離れていき、弁体は弁座15に近づいていく。このとき、流体圧が作用するのは、弁軸18の端面のみであるため、弁体16,17は弁軸18に連動してスムーズに移動する。また、弁体16,17の貫通孔16a,17aには傾き規制部26,27が形成されているため、弁体16,17は、弁軸18に連動して移動する際、弁軸18に対して傾くことなく移動する。
【0060】
そして、図6に示すように、弁体17が弁座15に当接して、弁体17が全閉状態となる一方、弁体16が弁座14から離間して、弁体16が全開状態となる。このとき、プレート部材21が弁体17に密着して隙間S2を閉塞状態にするが、弁体17が弁軸18に対して傾かないため、弁体17とプレート部材21との密着度が高まるので、安定した全閉状態を確保することができる。かくして、流入通路10と流出通路13とが遮断され、流入通路10と流出通路12とが連通して、通路の切り替えが終了する。
【0061】
再度、弁装置1において通路の切り替えを行う場合には、駆動部19により弁軸18を図中上方向へ移動させる。弁軸18が図中上方向へ移動すると、弁軸18に連動してプレート部材21も図中上方向へ移動する。そうすると、プレート部材21が弁体17から離れるため隙間S2が開放状態となり、弁体17の貫通孔17aを介して流入通路10と流出通路13が連通する。これにより、弁体17の上下流において、弁体17へ作用する流体圧の差圧が小さくなる。
【0062】
その後、弁軸18がさらに図中上方向へ移動していくと、規制部材23が弁体17に当接するとともに、プレート部材20が弁体16に当接する。そのため、弁体16,17は弁軸18に連動して図中上方向へ移動し、弁体17は弁座15から離れていき、弁体16は弁座14に近づいていく。
【0063】
そして、弁体16が弁座14に当接して、弁体16が全閉状態となる一方、弁体17が弁座15から離間して、弁体17が全開状態となる(図4参照)。このとき、プレート部材20が弁体16に密着して隙間S1を閉塞状態にするが、弁体16が弁軸18に対して傾かないため、閉弁時において弁体16とプレート部材20との密着度が高まるので、安定した全閉状態を確保することができる。かくして、流入通路10と流出通路12とが遮断される一方、流入通路10と流出通路13とが連通して、通路の切り替えが終了する。
【0064】
このように、弁体17を全閉状態から開弁する際には、弁軸18を図中上方向へ移動させればよい。つまり、弁軸18を図中上方向へ移動させるためには、プレート部材21に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、プレート部材21の受圧面積は弁体17の受圧面積よりも小さい。そのため、弁装置1において、弁軸18を図中上方向へ移動させるために必要となる駆動力は、従来の弁装置で要求されていた、弁体17を同時に駆動するために必要な駆動力よりも小さくなる。従って、弁装置1では、弁体17を全閉状態から開弁するために必要な駆動力を、従来の弁装置(三方弁)で必要とされていた駆動力よりも小さくすることができる。
【0065】
そして、駆動部19により弁軸18が駆動されて図中上方向へ移動すると、弁軸18に連動してプレート部材21も図中上方向へ移動する。そうすると、プレート部材21が弁体17から離れるため隙間S2が開放状態となり、弁体17の貫通孔17aを介して流入通路10と流出通路13が連通するため、弁体17の上下流において、弁体17へ作用する流体圧の差圧が小さくなる。これにより、弁体17を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力も小さくすることができる。
【0066】
以上のように、本実施形態の弁装置1によれば、弁体16を全閉状態から開弁する際、及び弁体17を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を、従来の弁装置よりも小さくすることができる。そのため、使用する流体の流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができる。これにより、弁装置1の小型化を図ることができる。
【0067】
<変形例>
上記の実施形態では、傾き規制部26,27として、貫通孔16a,17aの軸方向に連続的に形成されるもの(連続形成体:図3参照)を例示したが、傾き規制部26,27は、図7に示すように、貫通孔16a,17aのそれぞれの上流側と下流側とに分割されて配置されるもの(分割形成体)であってもよい。このような分割配置(分割形成体)にすることにより、上記実施形態のような連続形成体と比べて、隙間S1,S2の容積を大きくすることができる。その結果、弁体16,17を全閉状態から開弁する際、弁体16,17の上下流において弁体16,17に作用する流体圧の差圧を、より速やかに小さく(ほぼゼロに)することができる。従って、弁体16,17の開弁時(通路切り替え時)の応答性をより向上させることができる。
【0068】
なお、図7には、分割形成体としての傾き規制部26,27を同じ位相で配置(軸方向視でオーバーラップするように配置)しているが、位相を変えて配置(軸方向視でオーバーラップしないようにずらして配置)してもよい。
【0069】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、図8図10を参照しながら説明する。第2実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、プレート部材の形状、及び全閉時において弁体が回転しないようにする回転防止部材を備える点が第1実施形態と異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の弁装置1aでは、駆動部19としてステッピングモータを使用しており、図8に示すように、弁軸18を回転させながらストローク運動させるようになっている。そして、弁装置1aは、図9に示すような平面視(軸方向視)で、略十字形をなすプレート部材120,121を備えている。このプレート部材120,121は、隙間S1,S2の面積(平面視での面積)よりも大きい。そのため、プレート部材120,121と隙間S1,S2とが一致するように、プレート部材120,121を弁体16,17に密着させることにより、隙間S1,S2を閉塞状態にすることができる。また、プレート部材120,121は、平面視で略十字形であるため、弁軸18とともに回転すると、隙間S1,S2とプレート部材120,121との位置がずれて、隙間S1,S2が開放状態になるようになっている。
【0071】
このように、本実施形態におけるプレート部材120,121は、弁軸18とともに回転することにより、隙間S1,S2の閉塞状態と開放状態とを切り換えることができる。そのため、弁軸18の僅かな(少ない)ストローク運動で、言い換えると弁軸18をほとんどストローク運動させることなく、弁軸18と弁体16,17の貫通孔16a,17aとの隙間S1,S2を開放状態にして流入通路10と流出通路12又は流出通路13を連通させることができる。
【0072】
すなわち、弁体16を全閉状態から開弁する際、弁軸18をほとんどストローク運動させることなく回転させるだけで、プレート部材120と隙間S1との位置がずれて、隙間S1が開放状態となる。これにより、弁体16の開弁時に、弁体16の上下流において、弁体16へ作用する流体圧の差圧を迅速になくすことができる。同様に、弁体17を全閉状態から開弁する際も、弁軸18をほとんどストローク運動させることなく回転させるだけで、プレート部材121と隙間S2との位置がずれて、隙間S2が開放状態となる。そのため、弁体17の開弁時に、弁体17の上下流において、弁体17へ作用する流体圧の差圧を迅速になくすことができる。従って、弁体16又は弁体17の開弁時(通路切り替え時)の応答性を向上させることができる。なお、通路の切り替え時におけるその後の弁装置1aでの動作は、第1実施形態と基本的に同様である。
【0073】
ここで、弁体16を全閉状態から開弁した後に弁体17を全閉にする際、あるいは弁体17を全閉状態から開弁した後に弁体16を全閉にする際(つまり、通路の切り替えが終了する際)、弁体16,17が回転してしまうと、隙間S1,S2とプレート部材120,121との位置がずれた状態でプレート部材120,121が弁体16,17に密着するおそれがある。そうすると、隙間S1,S2が開放状態のままになるため、弁体16,17を完全な全閉状態にすることができなくなる。
【0074】
そこで、本実施形態の弁装置1aでは、図8及び図10に示すように、弁体16,17の外周面に切り欠き部30,31を設けるとともに、弁孔14a,15aに回転規制部材32,33を設けている。回転規制部材32,33は、弁孔14a,15aから内側へ突出した形状をなしており、弁体16,17の閉弁時に、切り欠き部30,31へ入り込んで弁体16,17が回転することを防止するものである。これにより、弁装置1aでは、弁体16が全閉にされるときには、切り欠き部30に回転規制部材32が入り込んで弁体16が回転しないようになっている。同様に、弁体17が全閉にされるときには、切り欠き部31に回転規制部材33が入り込んで弁体17が回転しないようになっている。そのため、弁体16,17を全閉にする際、隙間S1,S2とプレート部材120,121との位置を一致させた状態で、プレート部材120,121を弁体16,17に密着させることができる。従って、弁体16,17の全閉時において、確実に隙間S1,S2を閉塞状態にすることができるため、安定した全閉状態を確保することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態の弁装置1aによれば、第1実施形態と同様に、使用する流体の流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができるとともに、弁体16又は弁体17の開弁時(通路切り替え時)の応答性を向上させることができる。
【0076】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、図11を参照しながら説明する。第3実施形態では、第1実施形態のような三方弁ではなく、1つの流入通路と1つの流出通路を備える開閉弁に対して本開示を適用した場合について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略する。
【0077】
本実施形態の弁装置1bは、図11に示すように、流入通路10と流出通路12が形成されたハウジング2b内に、弁座14と、弁体16と、弁軸18とが配置され、弁軸18を往復運動(ストローク運動)させる駆動部19を備えている。そして、弁軸18が弁体16の貫通孔16aに隙間S1をもって挿通され、その弁軸18には、弁体16を挟み込むように、プレート部材20と規制部材22とが固定されている。すなわち、弁装置1bは、第1実施形態の弁装置1から、流出通路13、弁座15、弁体17、プレート部材21、及び規制部材23を省いたような形態となっている。
【0078】
そして、このような弁装置1bにおいて、弁体16を開弁する際には、弁軸18を図中下方向へ移動させればよい。このとき、弁軸18を図中下方向へ移動させるためには、プレート部材21に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよく、プレート部材20の受圧面積は弁体16の受圧面積よりも小さい。そのため、弁軸18を図中下方向へ移動させるために必要となる駆動力は、従来の開閉弁で要求されていた、弁体16を駆動するために必要な駆動力よりも小さくなる。従って、弁装置1bでは、弁体16を全閉状態から開弁するために必要な駆動力を、従来の開閉弁で必要とされていた駆動力よりも小さくすることができる。
【0079】
このように、本実施形態の弁装置1bによれば、弁体16を開弁する際に必要となる駆動部19の出力を、従来の開閉弁よりも小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合やバルブサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができるため、弁装置1bの小型化を図ることができる。
【0080】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について、図12を参照しながら説明する。第4実施形態では、連通孔閉塞部(上記実施形態のプレート部材に相当)と係合部(上記実施形態の規制部材に相当)を一体的に形成するとともに弁体を1つにした場合について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略する。
【0081】
本実施形態の弁装置1cは、図12に示すように、第1実施形態と同じ形状のハウジング2と、弁座14,15に着座可能に設けられた弁体216と、弁体216を弁座14,15に対して移動させる弁軸218と、弁軸218を軸方向へ往復運動(ストローク運動)させる駆動部19とを有する。なお、本実施形態では、駆動部19として、ステッピングモータを使用している。
【0082】
弁体216は、弁座14に対し流入通路10側で離間/当接して弁孔14aを開閉することにより、流入通路10と流出通路12とを連通/遮断するとともに、弁座15に対し流入通路10側で離間/当接して弁孔15aを開閉することにより、流入通路10と流出通路13とを連通/遮断する。つまり、弁体216は、弁座14に当接している状態では弁座15から離間しており、流入通路10が流出通路13と連通して、流出通路12は全閉状態となっている。一方、弁体216は、弁座15に当接している状態では弁座14から離間しており、流入通路10が流出通路12と連通して、流出通路13は全閉状態となっている。
【0083】
この弁体216は、ほぼ球状(図12において上端及び下端を平坦面にした形状)をなしている。弁体216には、軸方向に貫通する貫通孔216aが形成されている。貫通孔216aの途中(中央付近)には、貫通孔216aよりも径が大きい球状の空間216bが形成されている。
【0084】
弁体216を駆動する弁軸218は、その端部に球状体部220を備えている。この球状体部220の径は、貫通孔216aの径よりも大きい。そして、球状体部220は、弁体216内に形成された空間216bに隙間をもって配置されている。これにより、球状体部220は、弁体216(詳細には、空間216bと貫通孔216aとの境界部217a,217b)に当接することにより、貫通孔216aの閉塞及び弁体216との係合を行うことができるようになっている。つまり、球状体部220は、本開示の「貫通孔閉塞部」及び「係合部」の両方に相当する。本実施形態では、本開示の貫通孔閉塞部及び前記係合部の一例である球状体部220において、弁体216に対向する面が球面になっているが、球体である必要はなく貫通孔216aに対して調芯機能を奏する曲面(例えば、円錐面など)になっていればよい。
【0085】
そして、弁体216は、分割構造になっており、分割状態にて球状体部220を空間216bに配置した後、接合(溶着やネジ接合など)することにより球状体部220を内包している。これにより、弁体216は、球状体部220が境界部217a又は217bに当接した後に動き出すため、弁体216の開弁時(開弁初期)には、弁軸218(球状体部220)は、弁体216と連動せずに単体で移動可能になっている。そして、球状体部220の径は、弁体216の径(流体圧が作用する面の外径)より小さい。そのため、流体圧が作用する受圧面積は、球状体部220の方が弁体216よりも小さい。
【0086】
続いて、弁装置1cにおいて、流体の流路を切り換える際の動作について、図13図16を参照しながら説明する。まず、図13に示すように、弁装置1cにおいて、流入通路10と流出通路12とが遮断され、流入通路10と流出通路13とが連通している状態(通路切り替え前)について説明する。
【0087】
この状態では、弁体216が弁座14に当接するとともに、球状体部220が弁体216(境界部217a)に当接して貫通孔216aを閉塞しており、弁体216が全閉状態になっている。これにより、流入通路10は流出通路13に連通し、流入通路10から弁装置1cに流れ込んだ流体は、流出通路13から排出される。このとき、図13に小さい矢印で示すように、弁体216及び球状体部220に対して、流体の圧力が弁体216を弁座14に押しつける方向へ作用する。
【0088】
ここで、弁装置1cでは、弁軸218と弁体216は一体化されていないため、駆動部19により弁軸218を移動させて通路を切り替える場合、つまり弁体216を開弁する際、図14に示すように弁軸218だけが先に図中下方向へ移動する。このとき、弁体216に先立って弁軸218を駆動するには、球状体部220に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、球状体部220の受圧面積は、弁体216の受圧面積よりも小さい。そのため、弁装置1cにおいて、弁軸218を駆動するために必要となる駆動力(従来の弁装置で必要とされていた駆動力)よりも小さい駆動力で弁軸218を駆動することができる。
【0089】
そして、駆動部19により弁軸218が駆動されて図中下方向へ移動すると、弁軸218とともに球状体部220が図中下方向へ移動する。そうすると、球状体部220が境界部217aから離れる。このとき、球状体部220は、境界部217bには当接することなく空間216b内に位置している。これにより、貫通孔216aが開放状態となり、弁体216の貫通孔216aを介して流入通路10と流出通路12が連通する(図14参照)。ここで、本実施形態では、駆動部19にステッピングモータを使用しているため、球状体部220が境界部217bに当接するまでの時間を調整することができる。そのため、貫通孔216aを介した流入通路10と流出通路12との連通状態を一定時間確保することができるので、弁体216の上下流において、弁体216へ作用する流体圧の差圧を小さくすることができる。これにより、弁装置1cにおいて、弁体216を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができる。
【0090】
その後、弁軸218がさらに図中下方向へ移動していくと、球状体部220が境界部217bに当接する。これで、球状体部220が弁体216に係合した状態となる(図15参照)。そのため、弁体216は弁軸218に連動して図中下方向へ移動し、弁体16は弁座14から離れていき、弁体は弁座15に近づいていく。このとき、弁体216の上下流において流体の圧力差はほとんどないため、弁体216は弁軸218に連動してスムーズに移動する。また、弁軸218は、弁体216に対して球状体部220で当接するため、弁軸218と弁体216との芯ズレを抑制することができるので、弁体216は、弁軸218に連動して移動する際、弁軸218に対して傾くことなく移動する。
【0091】
そして、図15に示すように、弁体216が弁座15に当接して、流入通路10と流出通路13とが遮断され、流入通路10と流出通路12とが連通して、通路の切り替えが終了する。このとき、弁体216がほぼ球状であるため、弁孔15aの中心に対して弁体216の軸芯がほとんどずれることなく、弁体216が弁座15に着座する。また、弁軸218と弁体216とが芯ズレすることなく球状体部220が境界部217bに当接して貫通孔216aを閉塞している。さらに、弁体216及び球状体部220に対して、流体の圧力が弁体216を弁座15に押しつける方向へ作用する。そのため、安定して流出通路13を全閉状態にすることができる。
【0092】
再度、弁装置1cにおいて通路の切り替えを行う場合には、図16に示すように、駆動部19により弁軸218を図中上方向へ移動させる。弁軸218が図中上方向へ移動すると、弁軸218ともに球状体部220も図中上方向へ移動する。そうすると、球状体部220が境界部217bから離れるため貫通孔216aが開放状態となり、貫通孔216aを介して流入通路10と流出通路13が連通する。これにより、弁体216の上下流において、弁体216へ作用する流体圧の差圧が小さくなる。
【0093】
その後、弁軸218がさらに図中上方向へ移動していくと、球状体部220が境界部217aに当接する。そのため、球状体部220が弁体216に係合した状態になり、弁体216は弁軸218に連動して図中上方向へ移動し、弁体216は弁座15から離れて、弁座14に近づいていく。そして、弁体216が弁座14に当接して、流入通路10と流出通路12とが遮断される一方、流入通路10と流出通路13とが連通して、通路の切り替えが終了する(図13参照)。このときも、上記と同様に、安定して流出通路12を全閉状態にすることができる。
【0094】
このように、本実施形態の弁装置1cによれば、弁体216を開弁する際に必要となる駆動部19の出力を、従来の開閉弁よりも小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合や弁体216のサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができるため、弁装置1cの小型化を図ることができる。
【0095】
また、本実施形態の弁装置1cでは、弁体216を1つにするとともに、貫通孔閉塞部及び係合部を兼用する球状体部220を弁軸218に設けているため、構造の簡素化及び更なる小型化を図ることができる。
【0096】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について、図17を参照しながら説明する。第5実施形態は、第4実施形態と基本的な構成は同じであるが、弁体216に連通孔216cを設けている点が異なる。そこで、第4実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、相違点を中心に説明する。
【0097】
ここで、例えば駆動部19にソレノイドを使用するソレノイドバルブのように、弁体の開弁時において、弁軸218が瞬時に移動して球状体部220(貫通孔閉塞部又は係合部)が弁体216に当接する場合(弁体216の貫通孔216aが閉塞される場合)、弁体216の上流側と下流側との圧力差を小さくすることができなくなる。そうすると、弁体216を全閉状態から開弁する際、弁体216を駆動するために要求される駆動力を小さくすることができなくなってしまう。
【0098】
そこで、本実施形態の弁装置1dは、図17に示すように、弁体216に、貫通孔216aの開口部以外で貫通孔216a(空間216b)を弁体外部に連通させる連通孔216cを形成している。本実施形態において、連通孔216cは、境界部217a,217bの間(つまり空間216b)に開口するように設けられている。
【0099】
このような連通孔216cにより、弁体216の全閉時(弁体216が弁座14又は15に当接している状態)、球状体部220が弁体216(境界部217a又は217b)に当接しているときに、流入通路10を貫通孔216aを介して、流出通路12又は流出通路13に連通させることができる。
【0100】
具体的には、図18に示すように、弁体216が弁座14に当接している状態(全閉状態)から、弁体216を弁座14から離間させる(開弁する)場合、弁軸218を駆動したときに弁軸218が瞬時に下方へ移動して球状体部220が境界部217b(弁体216)に当接しても、流入通路10と流出通路12は、連通孔216c及び貫通孔216aを介して連通する。同様に、図19に示すように、弁体216が弁座15に当接している状態(全閉状態)から、弁体216を弁座15から離間させる(開弁する)場合、弁軸218を駆動したときに弁軸218が瞬時に上方へ移動して球状体部220が境界部217a(弁体216)に当接して貫通孔216aが閉塞されても、流入通路10と流出通路13は、連通孔216c及び貫通孔216aを介して連通する。
【0101】
従って、弁体216の開弁時において、弁軸218が瞬時に移動して弁体216(境界部217a又は217b)に当接する場合でも、弁体216の上下流において弁体216に作用する流体圧の差圧を確実に小さくすることができる。そのため、駆動部19としてソレノイドを使用しても、弁体216を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができるので、小型化を図ることができる。
【0102】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について、図20を参照しながら説明する。第6実施形態では、上記実施形態で例示したスラスト駆動の弁装置ではなく、回転駆動するバタフライ弁に本開示を適用した場合について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略する。
【0103】
本実施形態のバタフライ弁1eは、図20に示すように、流入通路10と2つの流出通路12,13が形成されたハウジング302内に、流出通路12,13を開閉する弁体316,317と、弁体316,317を駆動する弁軸318,319とを備えている。弁軸318、319は、連結部306により回転軸304に連結されている。これにより、駆動部19(紙面奥側に配置されている)によって回転軸304を軸中心(紙面前後方向)に回転駆動すると、その回転軸304の回転駆動に連動して弁軸318,319が移動し、弁軸318,319の移動に伴って弁体316,317が流出通路12,13を開閉するようになっている。
【0104】
弁体316,317には、弁座14,15に密着して流出通路12,13を密閉するためのシール部材316s,317sが設けられている。また、弁体316,317には、第5実施形態の弁体216と同様に、貫通孔316a,317a、空間316b,317b、及び連通孔316c,317cが形成されている。そして、貫通孔316a,317aに弁軸318,319が隙間をもって配置され、空間316b,317bに弁軸318,319の一端に備わる球状体部320,321が隙間をもって配置されている。すなわち、弁体316,317は、弁軸318,319に備わる球状体部320,321をそれぞれ弁体内部に隙間をもって包含している。このように、弁体316,317は、図20に示すように弁体自体の形状は第5実施形態の弁体216とは異なるが、基本的な構造は同じになっている。
【0105】
そして、このバタフライ弁1eでは、例えば、流入通路10と流出通路12とが遮断され、流入通路10と流出通路13とが連通している状態では、図21に示すように、弁体316(シール部材316s)が弁座14に当接するとともに、球状体部320が弁体316に当接して貫通孔316aを閉塞しており、弁体316が全閉状態になっている。一方、弁体317は弁座15から離間している。これにより、流入通路10は流出通路13に連通し、流入通路10からバタフライ弁1eに流れ込んだ流体は、流出通路13から排出される。このとき、図中に小さい矢印で示すように、弁体316及び球状体部320に対して、流体の圧力が弁体316を弁座14に押しつける方向へ作用する。
【0106】
この状態から通路を切り替えるために、弁体316を弁座14から離間させる際、図22に示すように、駆動部19により回転軸304を図中反時計回りに回転させると、連結部306を介して弁軸318が移動して貫通孔316aが開放状態となる。そのため、弁体316の貫通孔316a及び連通孔316cを介して流入通路10と流出通路12が連通する。これにより、弁体316の上下流において、弁体316へ作用する流体圧の差圧を小さくすることができる。従って、バタフライ弁1eにおいて、弁体316を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができる。
【0107】
その後、回転軸304が図中反時計回りに回転していくと、弁軸318がさらに移動して、図23に示すように、球状体部320が空間316b内で弁体316に係合した状態となって、弁体316は弁軸318に連動しながら円弧軌道で移動して弁座14から離れていく一方、弁体317が円弧軌道で移動して弁座15に近づいていく。そして最終的に、弁体317(シール部材317s)が弁座15に当接して、流入通路10と流出通路13とが遮断され、流入通路10と流出通路12とが連通して、通路の切り替えが終了する。なお、再度、流路の切替を行う場合には、駆動部19により回転軸304を逆方向(時計回り)に回転駆動すればよく、このとき弁体317を全閉状態から開弁する(弁座15から離間させる)際にも、弁体317を開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができる。
【0108】
このように、本実施形態のバタフライ弁1eによれば、弁体316又は317を開弁する際に必要となる駆動部19の出力を、従来の開閉弁よりも小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合や弁体316,317のサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができるため、バタフライ弁1eでも小型化を図ることができる。
【0109】
[第7実施形態]
最後に、第7実施形態について、図24を参照しながら説明する。第7実施形態では、上記の実施形態とは異なり、流入通路を2つ、流出通路を1つ備える弁装置に本開示を適用した場合について説明する。例えば、本実施形態の弁装置は、流入通路の一方に高温流体を供給し、他方に低温流体を供給して、流出通路に流す流体の温度を制御する温調システムに設けることができる。
【0110】
本実施形態の弁装置1fは、図24に示すように、流入通路10,11と流出通路12が形成されたハウジング402内に、2つの弁体部436,437を備える弁体416と、2つの球状体部420,421を備える弁軸418とを備えている。この弁装置1fでは、球状体部420,421が弁体316に内包されずに弁体316の外側に配置されている。
【0111】
弁体316は、弁座14に流入通路10側で着座可能に設けられた弁体部436と、弁座15に流入通路11側で着座可能に設けられた弁体部437と、弁体部436と弁体部437を連結する円環状の筒部438とを備えている。弁体部436,437は、弁座14,15に対向する面が球面状であり、その反対側が平面状になっている。そして、弁体部436,437には、それぞれ貫通孔436a,437aが形成されている。貫通孔436a,437aの径は同じであり、筒部438の内径と同じになっている。これにより、弁体416には、貫通孔436a,437a及び筒部438により、貫通孔416aが形成されている。そして、貫通孔416aに弁軸418が隙間をもって配置されている。なお、筒部438には、貫通孔416aの開口部以外で貫通孔416aを弁体外部に連通させる連通孔416cが形成されている。
【0112】
弁軸418には、弁体416を挟み込むように配置された球状体部420,421が設けられている。球状体部420,421の径は同じであり、貫通孔416a(貫通孔436a,437a)の径より大きい。そして、球状体部420は、弁軸418の駆動部19側に配置され、弁体部436(貫通孔436aの開口部)に当接/離間して貫通孔436a(貫通孔416a)を閉塞/開放するようになっている。一方、球状体部421は、弁軸418の端部に配置され、弁体部437(貫通孔437aの開口部)に当接/離間して貫通孔437a(貫通孔416a)を閉塞/開放するようになっている。
【0113】
このように、弁軸418のうち球状体部420,421間が、弁体416の貫通孔416a内に配置されているため、弁軸418は、球状体部420が弁体部436に当接、又は球状体部421が弁体部437に当接するまで、弁体416と連動せずに単体で移動可能になっている。そして、球状体部420の径は、弁体部436の径(流体圧が作用する面の外径)より小さい。そのため、流体圧が作用する受圧面積は、球状体部420の方が弁体部436よりも小さい。同様に、球状体部421の径は、弁体部437の径(流体圧が作用する面の外径)より小さい。そのため、流体圧が作用する受圧面積は、球状体部421の方が弁体部437よりも小さい。
【0114】
続いて、弁装置1fにおいて、流体の流路を切り換える際の動作について、図25図28を参照しながら説明する。まず、図25に示すように、弁装置1fにおいて、流入通路10と流出通路12とが遮断され、流入通路10と流出通路13とが連通している状態(通路切り替え前)について説明する。
【0115】
この状態では、弁体416のうち弁体部436が弁座14に当接するとともに、球状体部420が弁体部436に当接して貫通孔436a(貫通孔416a)を閉塞しており、弁体部436が全閉状態になっている。これにより、流入通路11が流出通路12に連通し、流入通路11から弁装置1fに供給される流体が、流出通路12から排出される。このとき、流入通路10から弁装置1fに供給される流体により、図25に小さい矢印で示すように、弁体部436及び球状体部420に対して、流体圧が弁体部436を弁座14に押しつける方向へ作用する。
【0116】
ここで、弁装置1fでは、弁軸418と弁体416(弁体部436)は一体化されていないため、駆動部19により弁軸418を移動させて通路を切り替える場合、つまり弁体416を開弁する際、図26に示すように弁軸418だけが先に図中上方向へ移動する。このとき、弁体416に先立って弁軸418を駆動するには、球状体部420に作用する流体圧に打ち勝つだけの駆動力があればよい。そして、球状体部420の受圧面積は、弁体部436の受圧面積よりも小さい。そのため、弁装置1fにおいて、弁軸418を駆動するために必要となる駆動力(従来の弁装置で必要とされていた駆動力)よりも小さい駆動力で弁軸418を駆動することができる。
【0117】
そして、駆動部19により弁軸418が駆動されて図中上方向へ移動すると、弁軸418とともに球状体部420,421が図中上方向へ移動する。そうすると、球状体部420が弁体部436から離れる。これにより、貫通孔436aが開放状態となり、弁体416の貫通孔416a及び連通孔416cを介して流入通路10と流出通路12が連通する。そのため、弁体部436の上下流において、弁体部436へ作用する流体圧の差圧を小さくすることができる。これにより、弁装置1fにおいて、弁体416を全閉状態から開弁する際に必要となる駆動部19の出力を小さくすることができる。また、球状体部421が弁体部437に当接して、球状体部421が弁体部437の貫通孔437aを閉塞する。これにより、球状体部421が弁体部437に係合した状態となる。
【0118】
その後、弁軸418がさらに図中上方向へ移動していくと、弁体416は弁軸418に連動して図中上方向へ移動し、弁体部436が弁座14から離れていき、弁体部437が弁座15に近づいていく。そして、図27に示すように、弁体部437が弁座15に当接して、流入通路11と流出通路12とが遮断され、流入通路10と流出通路12とが連通して、通路の切り替えが終了する。このとき、弁体部437の弁座側の面が球面状になっているため、弁孔15aの中心に対して弁体部437の軸芯がほとんどずれることなく、弁体部437が弁座15に着座する。また、弁軸418と弁体部437とが芯ズレすることなく球状体部421が弁体部437に当接して貫通孔437aを閉塞している。そのため、安定して流入通路11を遮断して全閉状態にすることができる。
【0119】
再度、弁装置1fにおいて通路の切り替えを行う場合には、図28に示すように、駆動部19により弁軸418を図中下方向へ移動させる。弁軸418が図中下方向へ移動すると、弁軸418ともに球状体部420,421も図中下方向へ移動する。そうすると、球状体部421が弁体部437から離れるため貫通孔437aが開放状態となり、貫通孔416a及び連通孔416cを介して流入通路11と流出通路12が連通する。これにより、弁体部437の上下流において、弁体部437へ作用する流体圧の差圧が小さくなる。また、球状体部420が弁体部436に当接する。そのため、球状体部420が弁体部436(弁体416)に係合した状態になり、弁体416は弁軸418に連動して図中下方向へ移動し、弁体部437は弁座15から離れ、弁体部436は弁座14に近づいていく。
【0120】
そして、弁体部436が弁座14に当接して、流入通路10と流出通路12とが遮断される一方、流入通路11と流出通路12とが連通して、通路の切り替えが終了する(図25参照)。このときも、上記と同様に、安定して流入通路10を遮断して全閉状態にすることができる。
【0121】
このように、本実施形態の弁装置1fによれば、弁体部436,437(弁体416)を開弁する際に必要となる駆動部19の出力を、従来の開閉弁よりも小さくすることができる。従って、使用する流体の流体圧が高くなる場合や弁体部436,437のサイズ(バルブ径)を大きくする場合等であっても、駆動部19を小型化することができるため、弁装置1fの小型化を図ることができる。
【0122】
<変形例>
上記の第7実施形態では、弁体部436と弁体部437を筒部438で連結し、弁体416の貫通孔416aに弁軸418を挿通しているため、筒部438の外径が大きくなってしまい、弁装置1fにおいて弁孔14a,15aの実開口面積が減少してしまう。また、弁体部436と弁体部437が筒部438で連結されているため、弁体416において、弁体部436(437)が弁座14(15)に当接した状態では弁体部437(436)が球状体部421(420)に当接するまで移動することができない。これにより、弁体416の実ストローク量が減少してしまう。これらのことから、弁装置1fでは、圧力損失が増加するとともに最大流量が小さくなってしまう。
【0123】
そこで、図29図30に示すように、変形例の弁装置1gでは、弁体516において、筒部438の代わりにスプリング538を用いて、弁体部436と弁体部437を連結している。このスプリング538により、弁体部436と弁体部437は互いに離れる方向へ付勢されている。そして、スプリング538の付勢力は、弁軸418の駆動力、及び流入通路10,11に供給される流体の圧力より小さく設定されている。これにより、弁体部436(437)を開弁する(弁座14(15)から離間させる)際、弁軸418を駆動したときには、第7実施形態と同様に、球状体部420(421)が弁体部436(437)から離れるため、弁体部436(437)の上下流において、弁体部436(437)へ作用する流体圧の差圧を小さくすることができる。
【0124】
そして、弁装置1gでは、スプリング538により弁体部436と弁体部437を連結しているため、弁体516(弁体部436,437)の実開口面積の減少を抑制することができる。また、図29に示すように、弁体部436が弁座14に当接した状態、つまり流入通路10が遮断されて流入通路11と流出通路12が連通している状態(弁体部436が全閉で弁体部437が全開の状態)では、スプリング538により弁体部437が球状体部421に当接するまで移動する。同様に、図30に示すように、弁体部437が弁座15に当接した状態、つまり流入通路11が遮断されて流入通路10と流出通路12が連通している状態(弁体部437が全閉で弁体部436が全開の状態)では、スプリング538により弁体部436が球状体部420に当接するまで移動する。このように弁装置1gでは、弁体516の実ストロークを増加させることができる。
【0125】
このように弁装置1gによれば、弁孔14a,15aの実開口面積の減少を抑制するとともに、弁体516の実ストローク量を増加させることができるため、圧力損失の増加、及び最大流量の低下を抑制することができる。
【0126】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、傾き規制部26,27を弁体16,17に設けているが、傾き規制部26,27を弁軸18に設けることもできる。
【0127】
また、上記の第1実施形態おいて、傾き規制部材の変形例を例示したが、この変形例の適用は第1実施形態に限られることはなく、第2、第3実施形態にも適用することができる。さらに、傾き規制部材、及びその変形例は、第4~第7実施形態にも適用することができる。
【0128】
また、上記の第5,6,7実施形態において、球状体部320,321,420,421は球形状であるが、球形状に限られることはなく、貫通孔316a,317a,436a,437aに対して調芯機能を奏する曲面形状(例えば、半球形状や円錐形状など)を備えていればよい。
【符号の説明】
【0129】
1 弁装置
2 ハウジング
10 流入通路
12 流出通路
13 流出通路
14 弁座
15 弁座
16 弁体
16a 貫通孔
17 弁体
17a 貫通孔
18 弁軸
19 駆動部
20 プレート部材
21 プレート部材
22 規制部材
23 規制部材
26 傾き規制部
27 傾き規制部
216 弁体
216c 連通孔
218 弁軸
220 球状体部
304 回転軸
306 連結部
316 弁体
317 弁体
318 弁軸
319 弁軸
320 球状体部
321 球状体部
416 弁体
418 弁軸
420 球状体部
421 球状体部
436 弁体部
437 弁体部
S1 隙間
S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図26
図27
図28
図29
図30