IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

特開2023-110879硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法
<>
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図1
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図2
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図3
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図4
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図5
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図6
  • 特開-硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110879
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20230802BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006883
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022012254
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 玲菜
【テーマコード(参考)】
4M109
5F063
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109CA22
4M109EA02
4M109EA12
4M109EA15
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB16
5F063AA04
5F063AA15
5F063AA18
5F063BA20
5F063BA42
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063BB03
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB14
5F063CB22
5F063CB25
5F063CC12
5F063CC21
5F063DD46
5F063DD49
5F063DG23
5F063DG31
5F063DG32
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE22
5F063EE23
5F063EE27
5F063EE30
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、研削及び個片化後の加工品質に優れる硬化性樹脂フィルム、当該硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供する。
【解決手段】バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる硬化性樹脂フィルムであって、
前記硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%以下である、硬化性樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる硬化性樹脂フィルムであって、
前記硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%以下である、硬化性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における、破断伸度及び破断エネルギーの積が1000以下である、請求項1に記載の硬化性樹脂フィルム。
【請求項3】
厚さが30μm以上である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する、複合シート。
【請求項5】
前記剥離シートは、基材と剥離層とを有し、前記剥離層が前記硬化性樹脂フィルムに面する、請求項4に記載の複合シート。
【請求項6】
前記基材と前記剥離層との間に、更に中間層を有する、請求項5に記載の複合シート。
【請求項7】
前記剥離層がエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む組成物から形成されてなる層である、請求項5又は6に記載の複合シート。
【請求項8】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):前記硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法。
工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
【請求項9】
バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法に関する。更に詳述すると、本発明は、硬化性樹脂フィルム及び当該硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、並びにこれらを利用することにより硬化樹脂膜が保護膜として設けられている半導体チップ、及び当該半導体チップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面にバンプを備える半導体チップと、当該半導体チップ搭載用の基板とを、当該半導体チップの回路面と当該基板とが対向するように積層することによって、当該半導体チップを当該基板上に搭載する。
なお、当該半導体チップは、通常、回路面にバンプを備える半導体ウエハを個片化して得られる。
【0003】
バンプを備える半導体ウエハには、バンプと半導体ウエハとの接合部分(以下、「バンプネック」ともいう)を保護する目的で、保護膜が設けられることがある。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、支持基材と、粘着剤層と、熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された積層体を、熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして、バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に押圧して貼付した後、当該熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させることで保護膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-092594号公報
【特許文献2】特開2012-169484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、バンプ付きウエハに保護膜を形成した後、バンプ付きウエハを保護膜と共にダイシングすることで、個片化された半導体チップが得られる。このように、バンプ付きウエハを保護膜と共にダイシングする場合、ダイシングブレードによる保護膜の切断面は、加工品質が良好である。
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜を形成する場合、ダイシングブレードによる保護膜の切断面の加工品質が低下するという問題を見出すに至った。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、研削及び個片化後の加工品質に優れる硬化性樹脂フィルム、当該硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜を形成する場合、ダイシングブレードによりウエハを切断することなく、保護膜のみを切断するため、ダイシングブレードによる保護膜の切断面の加工品質が低下することを見出した。本発明者は、この問題を解消すべく、保護膜を形成するための硬化性樹脂フィルムの物性に着目し、さらに鋭意検討を進めた。その結果、硬化後の70℃における破断伸度が特定の値以下である硬化性樹脂フィルムを半導体チップの保護膜形成に用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる硬化性樹脂フィルムであって、
前記硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%以下である、硬化性樹脂フィルム。
[2] 前記硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における、破断伸度及び破断エネルギーの積が1000以下である、上記[1]に記載の硬化性樹脂フィルム。
[3] 厚さが30μm以上である、上記[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂フィルム。
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する、複合シート。
[5] 前記剥離シートは、基材と剥離層とを有し、前記剥離層が前記硬化性樹脂フィルムに面する、上記[4]に記載の複合シート。
[6] 前記基材と前記剥離層との間に、更に中間層を有する、上記[5]に記載の複合シート。
[7] 前記剥離層がエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む組成物から形成されてなる層である、上記[5]又は[6]に記載の複合シート。
[8] 下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、上記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):前記硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法。
工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
[9] バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に、上記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、研削及び個片化後の加工品質に優れる硬化性樹脂フィルム、当該硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
図2】本発明の他の実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
図3】工程(S1)にて準備する半導体チップ作製用ウエハの一例を示す概略断面図である。
図4】工程(S2)の概略を示す図である。
図5】工程(S3)の概略を示す図である。
図6】工程(S4)の概略を示す図である。
図7】工程(S-BG)の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、水及び有機溶媒等の希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」との双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0012】
[硬化性樹脂フィルム]
本発明の硬化性樹脂フィルムは、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、上記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる硬化性樹脂フィルムであって、上記硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%以下である。
上記硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%を超えると、半導体チップの製造工程において、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記硬化樹脂膜の伸びによる変形、及び切断屑が発生しやすくなる。そのため、半導体チップ作製用ウエハの切断面の変形、及び当該切断面への切断屑の付着が生じ、得られる半導体チップの加工品質が低下するおそれがある。このような観点から、上記破断伸度は、好ましくは65%以下であり、より好ましくは45%以下であり、更に好ましくは40%以下であり、より更に好ましくは30%以下であり、より更に好ましくは20%以下である。また、上記破断伸度の下限は特に限定されないが、1%以上でもよく、3%以上でもよい。
上記破断伸度は、硬化性樹脂フィルムを形成する硬化性樹脂の含有成分の種類及び量のいずれか一方又は両方を調整することにより調整できる。
なお、上記破断伸度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における破断エネルギーが好ましくは10.0MJ/m以下であり、より好ましくは9.0MJ/m以下であり、更に好ましくは7.0MJ/m以下であり、より更に好ましくは6.0MJ/m以下であり、より更に好ましくは3.0MJ/m以下である。上記破断エネルギーが上記値以下であると、半導体チップの製造工程において、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に発生する切断屑が小さくなり、当該切断屑が上記溝部に滞留物として残りにくくなる。そのため、半導体チップ作製用ウエハの切断面に滞留物が付着しにくく、加工品質に優れた半導体チップが得られる。また、上記破断エネルギーの下限は特に限定されないが、好ましくは0.1MJ/m以上である。
上記破断エネルギーは、硬化性樹脂フィルムを形成する硬化性樹脂の含有成分の種類及び量のいずれか一方又は両方を調整することにより調整できる。
なお、上記破断エネルギーは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における破断伸度(T)及び破断エネルギー(E)の積が好ましくは1000以下であり、より好ましくは850以下であり、更に好ましくは650以下であり、より更に好ましくは450以下であり、より更に好ましくは300以下であり、より更に好ましくは200以下である。上記破断伸度(T)及び破断エネルギー(E)の積が上記値以下であると、半導体チップの製造工程において、切断屑及び滞留物が抑制され、得られる半導体チップの加工品質を向上することができる。また、上記破断伸度及び破断エネルギーの積の下限は特に限定されないが、1以上でもよい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して被覆性に優れる保護膜を形成する観点から、下記要件(I)を満たすことが好ましい。
<要件(I)>
温度90℃、周波数1Hzの条件で、直径25mm、厚さ1mmの上記硬化性樹脂フィルムの試験片にひずみを発生させて、上記試験片の貯蔵弾性率を測定し、上記試験片のひずみが1%のときの上記試験片の貯蔵弾性率をGc1とし、上記試験片のひずみが300%のときの上記試験片の貯蔵弾性率をGc300としたときに、下記式(i)により算出されるX値が、10以上10,000未満である。
X=Gc1/Gc300・・・・(i)
【0016】
上記要件(I)において規定されるX値の上限は、被覆性に優れる保護膜を形成する観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下、より更に好ましくは500以下、更になお好ましくは300以下、一層好ましくは100以下、より一層好ましくは70以下である。
また、半導体チップ作製用ウエハの溝部への埋め込み性をより良好なものとする観点から、上記要件(I)において規定されるX値の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。
【0017】
本発明の硬化性樹脂フィルムにおいて、Gc1は、上記要件(I)において規定されるX値が、10以上10,000未満となる限り、特に限定されない。
但し、被覆性に優れる保護膜をより形成しやすくする観点から、Gc1は、1×10~1×10Paであることが好ましく、2×10~7×10Paであることがより好ましく、3×10~5×10Paであることが更に好ましい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂フィルムにおいて、Gc300は、X値が10以上10,000未満となる限り、特に限定されない。
但し、バンプが硬化性樹脂フィルムを貫通後、当該硬化性樹脂フィルムの、バンプ基部への埋め込み性および半導体チップ作製用ウエハの溝部への埋め込み性を良好にする観点から、Gc300は、10~15,000Paであることが好ましく、30~10,000Paであることがより好ましく、60~5,000Paであることが更に好ましい。
【0019】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、加工後のチップの加工品質と滞留物低減の観点から、架橋密度が好ましくは0.20~0.70mol/mlであり、より好ましくは0.40~0.60mol/mlであり、更に好ましくは0.45~0.49mol/mlである。
なお、上記架橋密度は、後述の実施例に記載の方法で算出することができる。
【0020】
本発明の硬化性樹脂フィルムの厚さは、溝部への良好な充填性の観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上であり、更に好ましくは45μm以上である。また、硬化性樹脂フィルムの厚さは、貼付時のしみ出しによる汚染抑制の観点から、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは150μm以下である。
ただし、上記の厚さは、半導体チップ作製用ウエハに設けられる溝の深さや幅により、充填すべき樹脂の体積が変わるため適宜調節ができる。
ここで、「硬化性樹脂フィルムの厚さ」とは、硬化性樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる硬化性樹脂フィルムの厚さとは、硬化性樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0021】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、半導体チップ作製用ウエハのバンプ形成面を被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部を充填するために用いられるフィルムであり、加熱又はエネルギー線照射による硬化により、硬化樹脂膜を形成する。上記硬化性樹脂フィルムは、加熱により硬化する熱硬化性樹脂フィルムであってもよく、エネルギー線照射により硬化するエネルギー線硬化性樹脂フィルムであってもよいが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、熱硬化性樹脂フィルムが好ましい。
以下、熱硬化性樹脂フィルムについて説明する。
【0022】
(熱硬化性樹脂フィルム)
上記熱硬化性樹脂フィルムは、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する。上記熱硬化性樹脂フィルムは、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物から形成される。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、当該硬化(重合)反応には、重縮合反応も含まれる。
なお、本明細書の以下の記載において、「熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量での各成分の含有量」は、「熱硬化性樹脂組成物から形成される熱硬化性樹脂フィルムの各成分の含有量」と同義である。
【0023】
〔重合体成分(A)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、重合体成分(A)を含有する。
重合体成分(A)は、熱硬化性樹脂フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。重合体成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体成分(A)を2種以上組み合わせて用いる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0024】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、及び熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、及びポリビニルアセタールが好ましい。
【0025】
アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~2,000,000であることが好ましく、300,000~1,500,000であることがより好ましく、500,000~1,000,000であることが更に好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、例えば、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハのバンプ形成面の被覆性が良好となり、また、溝部への埋め込み性も向上させやすい。
【0026】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、硬化性樹脂フィルムの貼付性及びハンドリング性の観点から、-60~70℃であることが好ましく、-40~50℃であることがより好ましく、-30℃~30℃であることが更に好ましい。
【0027】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0028】
アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、及び(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本明細書において、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
これらの中でも、硬化性樹脂フィルムの造膜性、及び当該硬化性樹脂フィルムの半導体チップの保護膜形成面への貼付性の観点から、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることが好ましく、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~4の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることがより好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸グリシジル、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルを組み合わせた共重合体であることが更に好ましい。
【0029】
アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0030】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。アクリル系樹脂を構成するモノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
重合体成分(A)における上記ポリアリレート樹脂としては、公知のものが挙げられ、例えば、2価フェノールとフタル酸、カルボン酸などの2塩基酸との重縮合を基本構成とする樹脂が挙げられる。なかでも、ビスフェノールAとフタル酸との重縮合物や、ポリ4,4’-イソプロピリデンジフェニレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、それらの誘導体などが好ましい。
【0032】
重合体成分(A)における上記ポリビニルアセタールとしては、公知のものが挙げられる。
なかでも、好ましいポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するものが挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
【0035】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000であることが好ましく、8,000~100,000であることがより好ましい。ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、例えば、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハのバンプ形成面の被覆性が良好となり、また、溝部への埋め込み性も向上させやすい。
【0036】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、硬化性樹脂フィルムの造膜性及びバンプ頭頂部の頭出し性の観点から、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。
ここで、本明細書において「バンプ頭頂部の頭出し性」とは、バンプ付きウエハに保護膜形成用の熱硬化性樹脂フィルムを貼付する際に、当該熱硬化性樹脂フィルムをバンプが貫通する性能を指し、バンプ頭頂部の貫通性ともいう。
【0037】
ポリビニルアセタールを構成する3種以上のモノマーの比率は任意に選択できる。
【0038】
重合体成分(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、2~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることが更に好ましい。
【0039】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明では、熱硬化性樹脂組成物が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方を含有するとみなす。
【0040】
〔熱硬化性成分(B)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性成分(B)を含有する。
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬質の硬化樹脂膜を形成するための成分である。
熱硬化性成分(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性成分(B)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0041】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性成分(B)がエポキシ系熱硬化性樹脂であると、硬化樹脂膜の保護性及びバンプ頭頂部の頭出し性を高め、また、硬化樹脂膜の反りを抑制することができる。
【0042】
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
エポキシ系熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ系熱硬化性樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0043】
〈エポキシ樹脂(B1)〉
エポキシ樹脂(B1)としては、特に限定されないが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、常温で固形状のエポキシ樹脂(以下、固形状エポキシ樹脂ともいう)と常温で液状のエポキシ樹脂(以下、液状エポキシ樹脂ともいう)を組み合わせて用いることが好ましい。
なお、本明細書において、「常温」とは5~35℃を指し、好ましくは15~25℃である。
【0044】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状のものであれば特に制限されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。液状エポキシ樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0045】
液状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは200~600g/eqであり、より好ましくは250~550g/eqであり、更に好ましくは300~500g/eqである。
【0046】
固形状エポキシ樹脂としては、常温で固形状のものであれば特に制限されず、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂が好ましく、フルオレン骨格型エポキシ樹脂がより好ましい。
固形状エポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。固形状エポキシ樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0047】
固形状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは150~450g/eqであり、より好ましくは150~400g/eqである。
【0048】
液状エポキシ樹脂(x)の含有量と、固形状エポキシ樹脂(y)の含有量との比〔(x)/(y)〕は、質量比で好ましくは0.2~10.0であり、より好ましくは0.3~8.0であり、更に好ましくは0.4~6.0であり、より更に好ましくは0.5~5.0である。上記比〔(x)/(y)〕が上記範囲内であると硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度を上述の値以下に調整しやすくなる。
【0049】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂フィルムの硬化性、並びに硬化後の硬化樹脂膜の強度及び耐熱性の観点から、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
【0050】
〈熱硬化剤(B2)〉
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。上記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及び酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0051】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0052】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0053】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化剤(B2)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~150質量部であることがより好ましく、10~100質量部であることが更に好ましく、15~77質量部であることがより更に好ましい。熱硬化剤(B2)の含有量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の含有量が上記の上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルムの吸湿率が低減されて、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0055】
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性成分(B)の含有量(エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の合計含有量)は、硬化樹脂膜の保護性を高める観点から、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、200~3000質量部であることが好ましく、300~2000質量部であることがより好ましく、400~1000質量部であることが更に好ましく、500~800質量部であることがより更に好ましい。
【0056】
〔硬化促進剤(C)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。
硬化促進剤(C)は、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、イミダゾール類が好ましく、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。
【0057】
硬化促進剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤(C)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0058】
熱硬化性樹脂組成物において、硬化促進剤(C)を用いる場合の、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の含有量が上記の下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られやすい。また、硬化促進剤(C)の含有量が上記の上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温、高湿度条件下で、熱硬化性樹脂フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0059】
〔充填材(D)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、充填材(D)を含有していてもよい。
充填材(D)を含有することにより、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた硬化樹脂膜の熱膨張係数を適切な範囲に調整しやすくなり、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性樹脂フィルムが充填材(D)を含有することにより、硬化樹脂膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0060】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0061】
充填材(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填材(D)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0062】
充填材(D)を用いる場合の充填材(D)の含有量は、熱膨張及び熱収縮による硬化樹脂膜のチップからの剥離を抑制する観点から、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、5~50質量%であることが好ましく、7~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0063】
充填材(D)の平均粒子径は、5nm~1000nmであることが好ましく、5nm~500nmであることがより好ましく、10nm~300nmであることが更に好ましい。上記の平均粒子径は、1個の粒子における外径を数カ所で測定し、その平均値を求めたものである。
【0064】
〔エネルギー線硬化性樹脂(E)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有していてもよい。
熱硬化性樹脂フィルムが、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0065】
エネルギー線硬化性樹脂(E)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0066】
アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;上記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0067】
エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30,000であることが好ましく、300~10,000であることがより好ましい。
【0068】
重合に用いるエネルギー線硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合に用いるエネルギー線硬化性化合物が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
エネルギー線硬化性樹脂(E)を用いる場合の、エネルギー線硬化性樹脂(E)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが更に好ましい。
【0070】
〔光重合開始剤(F)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物が、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(E)の重合反応を効率よく進めるために、熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(F)を含有していてもよい。
【0071】
光重合開始剤(F)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2-ジフェニルメタン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及び2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
【0072】
光重合開始剤(F)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤(F)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
熱硬化性樹脂組成物において、光重合開始剤(F)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(E)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが更に好ましい。
【0074】
〔添加剤(G)〕
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、添加剤(G)を含有していてもよい。添加剤(G)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
好ましい添加剤(G)としては、例えば、カップリング剤、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、及びゲッタリング剤等が挙げられる。
【0075】
添加剤(G)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用添加剤(G)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
添加剤(G)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0076】
〔溶媒〕
熱硬化性樹脂組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。
溶媒を含有する熱硬化性樹脂組成物は、取り扱い性が良好となる。
溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒は、熱硬化性樹脂組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0077】
(熱硬化性樹脂組成物の調製方法)
熱硬化性樹脂組成物は、これを構成するための各成分を配合して調製される。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒を、この溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0078】
[複合シート]
本発明の一態様の硬化性樹脂フィルムは、当該硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する複合シートとしてもよい。複合シートとすることで、製品パッケージとして硬化性樹脂フィルムを運搬したり、半導体チップの製造工程内において硬化性樹脂フィルムを搬送したりする際に、硬化性樹脂フィルムが安定的に支持され、保護される。
図1は、本発明の一実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図であり、図2は、本発明の他の実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
図1の複合シート10は、剥離シート1と、当該剥離シート1上に設けた硬化性樹脂フィルム2とを有する。上記剥離シート1は、基材3と、剥離層4とを有し、当該剥離層4が、上記硬化性樹脂フィルム2に面するように設けられている。
図2の複合シート20は、剥離シート11と、当該剥離シート11上に設けた硬化性樹脂フィルム12とを有する。上記剥離シート11は、基材13と、剥離層14との間に、中間層15が設けられていてもよい。
なお、基材13と、中間層15と、剥離層14とがこの順で積層された積層体は、バックグラインドシートとしての使用に好適である。
以下、本発明の複合シートに用いられる剥離シートを構成する各層について説明する。
【0079】
(基材)
基材は、シート状又はフィルム状のものであり、その構成材料としては、例えば、以下の各種樹脂が挙げられる。
基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の上記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、上記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。上記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、ここまでに例示した上記樹脂のうちの1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した上記樹脂のうちの1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0080】
基材を構成する樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。基材を構成する樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0081】
基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。基材が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0082】
基材の厚さは、5μm~1,000μmであることが好ましく、10μm~500μmであることがより好ましく、15μm~300μmであることが更に好ましく、20μm~150μmであることがより更に好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0083】
基材は、厚さの精度が高いもの、即ち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような、基材を構成するのに使用可能な厚さの精度が高い材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0084】
基材は、上記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0085】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、あるいは、他の層が蒸着されていてもよい。
【0086】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、上記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0087】
(剥離層)
剥離層は、剥離シートに剥離性を付与する機能を有する。剥離層は、例えば、離型剤を含む剥離層形成用組成物の硬化物で形成される。
離型剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、バンプ頭頂部の頭出し性を高める観点、及び硬化樹脂膜との剥離性の観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0088】
剥離層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。剥離層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0089】
剥離層の厚さは、剥離性及びハンドリング性の観点から、好ましくは3~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。ここで、「剥離層の厚さ」とは、剥離層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる剥離層の厚さとは、剥離層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0090】
(中間層)
中間層は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料は目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、半導体表面を覆う保護膜に、半導体表面に存在するバンプの形状が反映されることによって、硬化樹脂膜が変形してしまうのを抑制することを目的とする場合、中間層の好ましい構成材料としては、凹凸追従性が高く、中間層の貼付性がより向上する点から、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
中間層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。中間層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0092】
中間層の厚さは、保護対象となる半導体表面のバンプの高さに応じて適宜調節できるが、比較的高さが高いバンプの影響も容易に吸収できる点から、50μm~600μmであることが好ましく、70μm~500μmであることがより好ましく、80μm~400μmであることが更に好ましい。ここで、「中間層の厚さ」とは、中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層の厚さとは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0093】
(複合シートの製造方法)
複合シートは、上記の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造することができる。
例えば、複合シートを製造する際に、基材上に剥離層又は中間層を積層する場合には、基材上に剥離層形成用組成物又は中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、剥離層又は中間層を積層できる。
塗工方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0094】
一方、例えば、基材上に積層済みの剥離層の上に、さらに硬化性樹脂フィルムを積層する場合には、剥離層上に熱硬化性樹脂組成物を塗工して、硬化性樹脂フィルムを直接形成することが可能である。
同様に、基材上に積層済みの中間層の上に、さらに剥離層を積層する場合には、中間層上に剥離層形成用組成物を塗工して、剥離層を直接形成することが可能である。
【0095】
このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、上記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に上記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の上記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、上記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0096】
[半導体チップの製造方法]
本発明の半導体チップの製造方法は、大まかには、半導体チップ作製用ウエハを準備する工程(S1)、硬化性樹脂フィルムを貼付する工程(S2)、硬化性樹脂フィルムを硬化する工程(S3)、及び個片化する工程(S4)を含み、さらに半導体チップ作製用ウエハの裏面を研削する工程(S-BG)を含む。
【0097】
詳細には、本発明の半導体チップの製造方法は、下記工程(S1)~(S4)をこの順で含む。
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの上記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):上記半導体チップ作製用ウエハの上記バンプ形成面に、上述の硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、上記半導体チップ作製用ウエハの上記バンプ形成面を上記硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、上記半導体チップ作製用ウエハに形成されている上記溝部に上記硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):上記硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):上記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを上記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも上記バンプ形成面及び側面が上記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
さらに、上記工程(S2)の後で且つ上記工程(S3)の前、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前、又は上記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む。
工程(S-BG):上記半導体チップ作製用ウエハの上記裏面を研削する工程
【0098】
本発明の半導体チップの製造方法では、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記硬化樹脂膜の伸びによる変形、及び切断屑の発生を抑制することができる。そのため、半導体ウエハの切断面の変形、及び当該切断面への切断屑の付着が生じにくく、加工品質に優れた半導体チップを得ることができる。
本発明の半導体チップの製造方法のように、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する場合、ダイシングブレードによる切断時に半導体チップ作製用ウエハを切断することなく、硬化樹脂膜のみを切断することになる。そのため、硬化樹脂膜と共に半導体チップ作製用ウエハを切断する場合のように、半導体チップ作製用ウエハの切削屑に随伴して硬化樹脂膜の切削屑が除去される効果や、ダイシングブレードによって半導体チップ作製用ウエハを切断する際の砥粒の目出し効果が生じず、ダイシングブレードによる硬化樹脂膜の切断面の加工品質が低下しやすい。しかしながら、本発明では、硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度を85%以下に調整しているため、ダイシングブレードによる硬化樹脂膜の切断面の加工品質を低下させることなく、加工品質に優れた半導体チップを得ることができる。
また、上記工程を含む製造方法により、バンプ形成面だけでなく、側面も硬化樹脂膜で被覆された、強度に優れると共に、保護膜としての硬化樹脂膜の剥がれも起こりにくい半導体チップが得られる。
なお、ここでいう「被覆された」とは、1つの半導体チップの少なくともバンプ形成面と側面とに、半導体チップの形状に沿って硬化樹脂膜を形成したことを意味する。
【0099】
以下、本発明の半導体チップの製造方法について、工程毎に詳述する。
なお、以降の説明では、「半導体チップ」を単に「チップ」ともいい、「半導体ウエハ」を単に「ウエハ」ともいう。
また、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して、保護膜としての硬化樹脂膜を形成するための硬化性樹脂フィルム(本発明の硬化性樹脂フィルム)を、「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」ともいう。そして、「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」を硬化して形成される硬化樹脂膜を、「第一硬化樹脂膜(r1)」ともいう。また、半導体チップのバンプ形成面とは反対側の面(裏面)に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するための硬化性樹脂フィルムを、「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」ともいう。そして、「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」を硬化して形成される硬化樹脂膜を、「第二硬化樹脂膜(r2)」ともいう。
また、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)を形成するための複合シートを、「第一複合シート(α1)」ともいう。「第一複合シート(α1)」は、「第一剥離シート(Y1)」と「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」とが積層された積層構造を有する。
また、半導体チップの裏面に保護膜としての第二硬化樹脂膜(r2)を形成するための複合シートを、「第二複合シート(α2)」ともいう。「第二複合シート(α2)」は、「第二剥離シート(Y2)」と「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」とが積層された積層構造を有する。
【0100】
〔工程(S1)〕
工程(S1)で準備する半導体ウエハの一例について、概略断面図を図3に示す。
工程(S1)では、バンプ22を備えるバンプ形成面21aを有する半導体ウエハ21のバンプ形成面21aに、分割予定ラインとしての溝部23が裏面21bに到達することなく形成されている、半導体チップ作製用ウエハ30を準備する。
【0101】
バンプ22の形状は、特に限定されず、チップ搭載用の基板上の電極等に接触させて固定させることが可能であれば、いかなる形状であってもよい。例えば、図3では、バンプ22を球状としているが、バンプ22は回転楕円体であってもよい。当該回転楕円体は、例えば、ウエハ21のバンプ形成面21aに対して垂直方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよいし、ウエハ21のバンプ形成面21aに対して水平方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよい。また、バンプ22はピラー(柱)形状であってもよい。
【0102】
バンプ22の高さは、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
例示すると、30μm~300μmであり、好ましくは60μm~250μm、より好ましくは80μm~200μmである。
なお、「バンプ22の高さ」とは、1つのバンプに着目したときに、バンプ形成面21aから最も高い位置に存在する部位での高さを意味する。
【0103】
バンプ22の個数についても、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
【0104】
ウエハ21は、例えば、配線、キャパシタ、ダイオード、及びトランジスタ等の回路が表面に形成された半導体ウエハである。当該ウエハの材質は特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラスウエハ、及びサファイアウエハ等が挙げられる。
【0105】
ウエハ21のサイズは、特に限定されないが、バッチ処理効率を高める観点から、通常8インチ(直径200mm)以上であり、好ましくは12インチ(直径300mm)以上である。なお、ウエハ21の形状は、円形には限定されず、例えば正方形や長方形等の角型であってもよい。角型のウエハの場合、ウエハ21のサイズは、バッチ処理効率を高める観点から、最も長い辺の長さが、上記サイズ(直径)以上であることが好ましい。
【0106】
ウエハ21の厚みは、特に限定されないが、硬化性樹脂フィルムを硬化する際の収縮に伴う反りを抑制しやすくする観点、後の工程においてウエハ21の裏面21bの研削量を抑えて裏面研削に要する時間を短くする観点から、好ましくは100μm~1,000μm、より好ましくは200μm~900μm、更に好ましくは300μm~800μmである。
【0107】
工程(S1)で準備する半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aには、半導体チップ作製用ウエハ30を個片化する際の分割予定ラインとして、複数の溝部23が格子状に形成されている。複数の溝部23は、ブレード先ダイシング法(Dicing Before Grinding)を適用する際に形成される切り込み溝であり、ウエハ21の厚さよりも浅い深さで形成され、溝部23の最深部がウエハ21の裏面21bに到達しないようにしている。複数の溝部23は、従来公知の、ダイシングブレードを備えるウエハダイシング装置等を用いたダイシングによって形成することができる。
なお、複数の溝部23は、製造する半導体チップが所望のサイズ及び形状になるように形成すればよい。また、半導体チップのサイズは、通常、0.5mm×0.5mm~1.0mm×1.0mm程度であるが、このサイズには限定されない。
【0108】
溝部23の幅は、硬化性樹脂フィルムの埋め込み性を良好にする観点から、好ましくは10μm~2,000μmであり、より好ましくは30μm~1,000μm、更に好ましくは40μm~500μm、より更に好ましくは50μm~300μmである。
【0109】
溝部23の深さは、使用するウエハの厚さと要求されるチップ厚さとに応じて調整され、好ましくは30μm~700μm、より好ましくは60μm~600μm、更に好ましくは100μm~500μmである。
【0110】
工程(S1)で準備した半導体チップ作製用ウエハ30は、工程(S2)に供される。
【0111】
〔工程(S2)〕
工程(S2)の概略を図4に示す。
工程(S2)では、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aに、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を押圧して貼付する。
ここで、上記第一硬化性樹脂フィルム(X1)は、取扱性の観点から、第一剥離シート(Y1)と、第一硬化性樹脂フィルム(X1)とが積層された積層構造を有する第一複合シート(α1)として用いてもよい。上記第一複合シート(α1)を用いる場合、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aに、第一複合シート(α1)の第一硬化性樹脂フィルム(X1)を貼付面として押圧して貼付する。
【0112】
工程(S2)により、図4に示すように、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aを第一硬化性樹脂フィルム(X1)で被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハ30に形成されている溝部23に第一硬化性樹脂フィルム(X1)が埋め込まれる。
【0113】
第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際の押圧力は、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性を良好なものとする観点から、好ましくは1kPa~200kPa、より好ましくは5kPa~150kPa、更に好ましくは10kPa~100kPaである。
なお、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際の押圧力は、貼付初期から終期にかけて適宜変動させてもよい。例えば、溝部23への第一硬化性樹脂フィルム(X1)の埋め込み性をより良好なものとする観点から、押圧力を、貼付初期には低くし、徐々に押圧力を高めることが好ましい。
【0114】
また、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際、第一硬化性樹脂フィル(X1)が熱硬化性樹脂フィルムである場合には、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性をより良好なものとする観点から、加熱を行うことが好ましい。
具体的な加熱温度(貼付温度)としては、好ましくは50℃~150℃、より好ましくは60℃~130℃、更に好ましくは70℃~110℃である。
なお、第一硬化性樹脂フィルム(X1)に対して行う当該加熱処理は、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の硬化処理には含まれない。
【0115】
さらに、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際、減圧環境下で行うことが好ましい。これにより、溝部23が負圧となり、第一硬化性樹脂フィルム(X1)が溝部23全体に行き渡りやすくなる。その結果、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性がより良好なものとなる。減圧環境の具体的な圧力としては、好ましくは0.001kPa~50kPa、より好ましくは0.01kPa~5kPa、更に好ましいくは0.05kPa~1kPaである。
【0116】
〔工程(S3)〕
工程(S3)の概略を図5に示す。
工程(S3)では、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ30を得る。
第一硬化性樹脂フィルム(X1)を硬化することにより形成される第一硬化樹脂膜(r1)は、常温において、第一硬化性樹脂フィルム(X1)よりも強固になる。そのため、第一硬化樹脂膜(r1)を形成することによって、バンプネックが良好に保護される。
【0117】
第一硬化性樹脂フィルム(X1)の硬化は、第一硬化性樹脂フィルム(X1)に含まれている硬化性成分の種類に応じて、熱硬化及びエネルギー線の照射による硬化のいずれかにより行うことができる。
なお、本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
熱硬化を行う場合の条件としては、硬化温度が好ましくは90℃~200℃であり、硬化時間が好ましくは1時間~3時間である。
エネルギー線照射による硬化を行う場合の条件としては、使用するエネルギー線の種類により適宜設定される。例えば、紫外線を用いる場合、照度は好ましくは170mw/cm~250mw/cmであり、光量は好ましくは300mJ/cm~3,000mJ/cmである。
ここで、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を硬化させて第一硬化樹脂膜(r1)を形成する過程において、工程(S2)において第一硬化性樹脂フィルム(X1)で溝部23を埋め込む際に入り込むことのある気泡等を除去する観点から、第一硬化性樹脂フィルム(X1)は、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0118】
〔工程(S4)〕
工程(S4)の概略を図6に示す。
工程(S4)では、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ30の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部23に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する。
上記第一硬化樹脂膜(r1)は、本発明の硬化性樹脂フィルムを硬化することで形成されるため、当該第一硬化樹脂膜(r1)の70℃における破断伸度は85%以下を満たす。そのため、工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部23に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記第一硬化樹脂膜(r1)の伸びによる変形、及び切断屑の発生を抑制することができる。したがって、ウエハの切断面の変形、及び当該切断面への切断屑の付着が生じにくく、加工品質に優れた半導体チップが得られる。
【0119】
切断は、ブレードダイシングにより行う。これにより、少なくともバンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
半導体チップ40は、バンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。また、バンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で切れ目なく連続して被覆されているため、バンプ形成面21aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)が、半導体チップ40の側面において露出していない。バンプ形成面21aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)のうち、半導体チップ40の側面において露出している露出部は、膜剥がれの起点となりやすい。本発明の半導体チップ40は、当該露出部が存在しないため、当該露出部からの膜剥がれが、半導体チップ作製用ウエハ30を切断して半導体チップ40を製造する過程や、製造後において生じにくい。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれが抑制された、半導体チップ40が得られる。
【0120】
なお、工程(S4)において、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ30の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部23に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する場合、第一硬化樹脂膜(r1)が透明であることが好ましい。第一硬化樹脂膜(r1)が透明であることにより、半導体ウエハ21が透けて見えるため、分割予定ラインの視認性が確保される。そのため、分割予定ラインに沿って切断しやすくなる。
【0121】
〔工程(S-BG)〕
工程(S-BG)の概略を図7に示す。
工程(S-BG)では、図7の(1-a)に示すように、まず、第一複合シート(α1)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bを研削する。図7中の「BG」は、バックグラインドを意味する。次いで、図7の(1-b)に示すように、第一複合シート(α1)から第一剥離シート(Y1)を剥離する。
半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ30の溝部23の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ30と共に、溝部23に埋め込まれた第一硬化性樹脂フィルム(X1)又は第一硬化樹脂膜(r1)も研削するようにしてもよい。
【0122】
上記工程(S-BG)は、上記工程(S2)の後で且つ上記工程(S3)の前に行ってもよく、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前に行ってもよく、上記工程(S4)において行ってもよい。中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前、又は上記工程(S4)において行うことが好ましい。
【0123】
〔工程(T)〕
本発明の半導体チップの製造方法の一態様では、さらに、下記工程(T)を含むことが好ましい。
工程(T):上記半導体チップ作製用ウエハの上記裏面に、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
【0124】
上記実施形態にかかる製造方法によれば、少なくともバンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。しかし、半導体チップ40の裏面は剥き出しである。そこで、半導体チップ40の裏面を保護して半導体チップ40の強度をより向上させる観点から、上記工程(T)を実施することが好ましい。
【0125】
上記工程(T)は、より詳細には、下記工程(T1)及び下記工程(T2)をこの順で含むことが好ましい。
・工程(T1):半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二硬化性樹脂フィルム(X2)を貼付する工程
・工程(T2):第二硬化性樹脂フィルム(X2)を硬化させて第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
また、工程(T1)では、第二剥離シート(Y2)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とが積層された積層構造を有する第二複合シート(α2)を用いてもよい。詳細には、工程(T1)は、半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二剥離シート(Y2)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とが積層された積層構造を有する第二複合シート(α2)を、上記第二硬化性樹脂フィルム(X2)を貼付面として貼付する工程とすることが好ましい。
この場合、第二複合シート(α2)から第二剥離シート(Y2)を剥離するタイミングは、工程(T1)と工程(T2)の間であってもよく、工程(T2)の後であってもよい。
【0126】
ここで、工程(T1)において第二複合シート(α2)を用いる場合、第二複合シート(α2)が有する剥離シート(Y2)は、第二硬化性樹脂フィルム(X2)を支持すると共に、ダイシングシートとしての機能を兼ね備えていることが好ましい。
また、工程(S4)において第二複合シート(α2)が第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bに貼付されていることで、ダイシングによる個片化を行う際に、第二剥離シート(Y2)がダイシングシートとして機能し、ダイシングを実施しやすくなる。
【0127】
ここで、工程(S-BG)後に、工程(S3)を実施する場合、工程(S3)を実施する前に、上記工程(T1)を実施し、次いで、工程(S3)と工程(T2)を同時に行うようにしてもよい。すなわち、第一硬化性樹脂フィルム(X1)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とを一括して同時に硬化するようにしてもよい。これにより、硬化処理の回数を削減することができる。
【0128】
〔工程(U)〕
本発明の半導体チップの製造方法の一態様では、さらに、下記工程(U)を含んでいてもよい。
工程(U):上記バンプの頂部を覆う上記第一硬化樹脂膜(r1)、又は上記バンプの頂部の一部に付着した上記第一硬化樹脂膜(r1)を除去して、上記バンプの頂部を露出させる工程
バンプの頂部を露出させる露出処理としては、例えばウェットエッチング処理やドライエッチング処理等のエッチング処理が挙げられる。
ここで、ドライエッチング処理としては、例えばプラズマエッチング処理等が挙げられる。
なお、露出処理は、保護膜の表面にバンプの頂部が露出していない場合、バンプの頂部が露出するまで保護膜を後退させる目的で実施してもよい。
【0129】
工程(U)を実施するタイミングについては、第一硬化樹脂膜(r1)が露出している状態であれば特に限定されず、工程(S3)の後で且つ工程(S4)の前であり、剥離シート(Y1)及びバックグラインドシートが貼付されていない状態であることが好ましい。
【0130】
[半導体チップ]
本発明の半導体チップは、バンプを備えるバンプ形成面を有し、上記バンプ形成面及び側面の双方に、本発明の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する。
本発明の半導体チップは、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に埋め込まれた硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断し、個片化することで得られる。上記硬化樹脂膜は、上述の硬化性樹脂フィルムの硬化物であるため、当該硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記硬化樹脂膜の伸びによる変形、及び切断屑の発生を抑制することができる。そのため、本発明の半導体チップは、変形及び切断屑の付着が生じにくく加工品質に優れる。
【実施例0131】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
1.硬化性樹脂フィルム形成用組成物の製造原料
硬化性樹脂フィルム形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
(1) 重合体成分(A)
・(A)-1:下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製「エスレックBL-10」、重量平均分子量25000、ガラス転移温度59℃)
・(A)-2:ポリアリレート(ユニチカ(株)製「ユニファイナー(登録商標)M-2040」)
【0133】
【化2】
【0134】
(式中、lは約28であり、mは1~3であり、nは68~74の整数である。)
【0135】
(熱硬化性成分(B))
(2) エポキシ樹脂(B1)
〔液状エポキシ樹脂〕
・(B1)-1:液状変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンEXA-4850-150」、数平均分子量900、エポキシ当量450g/eq)
〔固形状エポキシ樹脂〕
・(B1)-2:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンHP-4710」、エポキシ当量170g/eq)
・(B1)-3:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンHP-5000」、エポキシ当量252g/eq)
・(B1)-4:フルオレン骨格型エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル(株)製「OGSOL CG500」、エポキシ当量300g/eq)
【0136】
(3) 熱硬化剤(B2)
・(B2)-1:O-クレゾール型ノボラック樹脂(DIC(株)製「フェノライトKA-1160」、水酸基当量117g/eq)
【0137】
(4) 硬化促進剤(C)
・(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「キュアゾール2PHZ-PW」)
【0138】
(5) 充填材(D)
・(D)-1:エポキシ基で修飾された球状シリカ((株)アドマテックス製「アドマナノ YA050C-MKK」、平均粒子径50nm)
【0139】
(6) 添加剤(G)
・(G)-1:界面活性剤(アクリル重合体、BYK社製「BYK-361N」)
・(G)-2:シリコーンオイル(アラルキル変性シリコーンオイル、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「XF42-334」)
【0140】
2.実施例1~5、及び比較例1、2
2-1.実施例1
(1)熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物(1)の製造
重合体成分(A)-2(100質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(295質量部)、エポキシ樹脂(B1)-4(210質量部)、熱硬化剤(B2)-1(162質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填材(D)-1(199質量部)、添加剤(G)-1(22質量部)、及び添加剤(G)-2(2質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が60質量%である熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物(1)を得た。なお、ここに示す溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0141】
(2)熱硬化性樹脂フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック(株)製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その上記剥離処理面に、上記で得られた組成物(1)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを形成した。
【0142】
2-2.実施例2~5、及び比較例1、2
熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物(1)の含有成分の種類及び含有量が、後述する表1に示すとおりとなるように、熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物(1)の製造時における、配合成分の種類及び配合量のいずれか一方又は両方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを形成した。
なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物がその成分を含有していないことを意味する。
【0143】
【表1】
【0144】
3.評価
上記で得られた熱硬化性樹脂フィルムを用いて下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0145】
3-1.架橋密度の算出
架橋密度は、下記式より算出した。
【0146】
【数1】
【0147】
3-2.破断伸度(T)、破断エネルギー(E)の測定、T×Eの算出
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを60℃で5枚積層し、厚さ225μmの積層フィルムを用意した。この積層フィルムを温度130℃、圧力0.5MPaの条件で240分間加熱硬化した後、ダイシングテープ(リンテック(株)製「D-676H」)に配置し、次いで、ダイシング装置((株)ディスコ製「DFD6362」)を用いて、回転数30000rpm、送り速度10mm/秒、切り込み量20μmの条件で研削し、幅3mm、長さ100mmの試験片を作製した。
恒温槽付きテンシロン(テンシロン万能材料試験機((株)オリエンテック製「RTG-1210」)、試験機用恒温槽((株)オリエンテック製「TKC-R3T-G-S」))に、チャック間長さが50mmとなるように上記試験片を設置し、温度70℃、速度200mm/分の条件で、破断伸度(T)、及び破断エネルギー(E)を測定した。得られた破断伸度(T)、及び破断エネルギー(E)の値から、T×Eを算出した。
【0148】
3-3.硬化性樹脂フィルムのGc1及びGc300の測定、X値の算出
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを20枚作製した。次いで、これら熱硬化性樹脂フィルムを積層し、得られた積層フィルムを直径25mmの円板状に裁断することにより、厚さ900μmの熱硬化性樹脂フィルムの試験片を作製した。
粘弾性測定装置(アントンパール社製「MCR301」)における、試験片の設置箇所を、あらかじめ80℃で保温しておき、この設置箇所へ、上記で得られた熱硬化性樹脂フィルムの試験片を載置し、この試験片の上面に測定治具を押し当てることで、試験片を上記設置箇所に固定した。
次いで、温度90℃、測定周波数1Hzの条件で、試験片に発生させるひずみを0.01%~1000%の範囲で段階的に上昇させ、試験片の貯蔵弾性率Gcを測定した。そして、Gc1及びGc300の測定値から、X値を算出した。
【0149】
3-4.溝部への埋め込み性、ウエハ端部からの染み出し性の評価
(1)半導体チップ作成用ウエハの準備
半導体チップ作製用ウエハとして、分割予定ラインをハーフカットした12インチのシリコンウエハ(ウエハ厚さ750μm)を用いた。当該シリコンウエハのハーフカット部の幅(溝部の幅)は60μmであり、溝の深さは230μmである。
【0150】
(2)評価方法
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムの片面を、半導体チップ作製用ウエハの表面側(ハーフカット形成面)に、以下の条件で押圧しながら貼付した。
・貼付装置:BGテープラミネータ(リンテック(株)製「RAD-3510F/8」)
・貼付圧力:0.5MPa
・貼付時間:43秒
・貼付速度:7mm/秒
・貼付温度:80℃
・ローラー貼付高さ:-200mm
次いで、熱硬化性樹脂フィルムを貼り付けた半導体チップ作製用ウエハを、温度130℃、圧力0.5MPaの条件で4時間加熱して硬化させて硬化樹脂膜を形成した。そして、半導体チップ作製用ウエハをハーフカット形成面から裏面に向けて切断し、ハーフカット部の溝部への硬化樹脂膜の埋め込み性を、光学顕微鏡((株)キーエンス製「VHX-100」)で観察した。また、ウエハ端部からの硬化樹脂膜の染み出しの有無を目視により観察した。
埋め込み性の評価基準は以下のとおりとした。
S:硬化樹脂膜の形状に歪みが見られず、埋め込み性が最良である。
A:溝部入り口近傍にて硬化樹脂膜の形状に若干の歪みが見られるものの、埋め込み性は良好である。
B:埋め込み性は不良である。
【0151】
3-5.加工品質の評価、滞留物の有無の確認
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを60℃で5枚積層し、次いで、縦5cm、横5cmの大きさに切り出し、厚さ225μmの積層フィルムを用意した。この積層フィルムを温度130℃、圧力0.5MPaの条件で240分間加熱硬化した後、ダイシングテープ(リンテック(株)製「D-676H」)に貼付した。次いで、ダイシング装置((株)ディスコ製「DFD6362」、ブレード:ZH05-SD1500-N1-50-27HECC、ブレード幅0.03mm)を用いて、上記積層フィルムのダイシングテープ貼付面とは反対側の面を、回転数30000rpm、送り速度30mm/秒、切り込み量20μmの条件で研削し、縦2mm、横2mmの四角形の樹脂のみのチップ(以下、単にチップともいう)に個片化した。
ダイシングラインを形成した積層フィルムの表面(ダイシングテープ貼付面とは反対側の面)をデジタル顕微鏡((株)キーエンス製「VHX-7000」)で観察し、ダイシングラインの滞留物の有無を確認した。なお、結果を表2の「滞留物 表面側」に示す。
【0152】
次に、上記積層フィルムの裏面(ダイシングテープ貼付面)からUV照射装置(リンテック(株)製「RAD-2000F/12」)を用いて、照度230mW/cm、光量190mJ/cmの条件で紫外線を照射した後、上記積層フィルムの表面(ダイシングテープ貼付面とは反対側の面)を半導体加工用テープ(リンテック(株)製「D-210」)に向けて、転写した。半導体加工用テープに転写した積層フィルムの裏面(ダイシングテープ貼付面)から、ダイシングラインに囲まれたチップをデジタル顕微鏡((株)キーエンス製「VHX-7000」)で観察し、当該チップの滞留物による歪みの有無を下記基準により評価した。なお、チップの歪みの割合は、下記式より算出した。結果を表2の「滞留物 裏面側」に示す。
【0153】
【数2】
【0154】
上記式中、Haはダイシングに用いたブレードのブレード幅(mm)であり、本評価では0.03mmである。Hbは下記手順により測定したダイシングラインのカーフ幅(mm)である。
ダイシング装置により個片化したチップと、当該チップの一辺に隣接するチップとのチップ間距離(カーフ幅という)をデジタル顕微鏡で観察し、もっとも狭い箇所の距離を計測した。これをチップ4個分繰り返し、平均値(mm)を算出した。
【0155】
〔積層フィルムの裏面の評価基準〕
0:チップのダイシングラインに歪みが見られない。
1:チップのダイシングラインに1%以上20%未満の歪みが見られた。
2:チップのダイシングラインに20%以上50%未満の歪みが見られた。
3:チップのダイシングラインに50%以上の歪みが見られた。
【0156】
次に、上記積層フィルムの半導体加工用テープ側からUV照射装置(リンテック(株)製「RAD-2000F/12」)を用いて、照度230mW/cm、光量190mJ/cmの条件で紫外線を照射した後、ダイシングラインに囲まれたチップをピックアップした。上記チップの側面を走査型電子顕微鏡(SEM、(株)キーエンス製「VE-9700」)を用いて、上記チップの上面に対して垂直方向から45°の角度をなす方向から観察し、下記基準により加工品質を評価した。なお、チップ角の汚染の割合及びチップ側面の汚染の割合は下記式より算出した。
【0157】
【数3】
【0158】
上記式中、Taは個片化後のチップの厚さ(μm)であり、本評価では225μmである。Tbは個片化後のチップの角において、切断屑又は滞留物が付着した領域の幅(但し、チップ面に垂直)をチップ4個分測定した平均値(μm)である。
【0159】
【数4】
【0160】
上記式中、Taは個片化後のチップの厚さ(μm)であり、本評価では225μmである。Tcは個片化後のチップの側面において、切断屑又は滞留物が付着した領域の幅(但し、チップ面に垂直)をチップ4個分測定した平均値(μm)である。
【0161】
〔チップ角及び側面の評価〕
評価(1):チップの側面を観察し、切断屑又は滞留物の付着による出っ張りの有無を確認した。
【0162】
評価(2):チップ角の汚染
0:チップの角に切断屑又は滞留物による出っ張りが見られない。
1:チップの角に切断屑又は滞留物による出っ張りが見られ、当該出っ張りが当該チップの角を1%以上20%未満汚染している。
2:チップの角に切断屑又は滞留物による出っ張りが見られ、当該出っ張りが当該チップの角を20%以上50%未満汚染している。
3:チップの角に切断屑又は滞留物による出っ張りが見られ、当該出っ張りが当該チップの角を50%以上汚染している。
【0163】
評価(3):チップ側面の汚染
0:チップ側面に切断屑又は滞留物が見られない。
1:チップ側面において、切断屑又は滞留物が見られ、当該切断屑又は滞留物が当該チップ側面を1%以上20%未満汚染している。
2:チップ側面において、切断屑又は滞留物が見られ、当該切断屑又は滞留物が当該チップ側面を20%以上50%未満汚染している。
3:チップ側面において、切断屑又は滞留物が見られ、当該切断屑又は滞留物が当該チップ側面を50%以上汚染している。
【0164】
【表2】
【0165】
実施例1~5より、硬化後の70℃における破断伸度が85%以下である硬化性樹脂フィルムを半導体チップの保護膜形成に用いることで、切断面の変形、並びに切断屑及び滞留物の付着が少なく、加工品質に優れた半導体チップが得られることがわかる。
【符号の説明】
【0166】
10,20 複合シート
30 半導体チップ作製用ウエハ
40 半導体チップ
1,11 剥離シート
2,12 硬化性樹脂フィルム
3,13 基材
4,14 剥離層
15 中間層
21 半導体ウエハ
21a バンプ形成面
21b 裏面
22 バンプ
23 溝部
X1 第一硬化性樹脂フィルム
Y1 第一剥離シート
r1 第一硬化樹脂膜
α1 第一複合シート
X2 第二硬化性樹脂フィルム
Y2 第二剥離シート
r2 第二硬化樹脂膜
α2 第二複合シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7