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特開2023-110883光散乱インク組成物、カラーフィルタおよび画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110883
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】光散乱インク組成物、カラーフィルタおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/32 20140101AFI20230802BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20230802BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230802BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C09D11/32
C08F2/44 A
C08F292/00
G02B5/20 101
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007568
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0012845
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0113902
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 賢 正
(72)【発明者】
【氏名】金 亨 柱
(72)【発明者】
【氏名】李 憲 熙
(72)【発明者】
【氏名】李 光 鎬
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
4J011
4J026
4J039
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA20
2H148BA03
2H148BD29
2H148BG01
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA02
4J011CC10
4J011PA04
4J011PB25
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA12
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AC00
4J026BA28
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J026GA07
4J026GA09
4J039BA13
4J039BC20
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE20
4J039CA02
4J039EA05
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】光散乱インク組成物、これを含むカラーフィルタおよび画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明は、平均粒径150~300nmの第1散乱粒子、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子、光重合性化合物および光重合開始剤を含み、前記第1散乱粒子は、酸化チタン(TiO)である光散乱インク組成物、これを用いて製造された光散乱層を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを備える画像表示装置に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径150~300nmの第1散乱粒子、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子、光重合性化合物および光重合開始剤を含み、
前記第1散乱粒子は、酸化チタン(TiO)である、光散乱インク組成物。
【請求項2】
前記第1散乱粒子の平均粒径が180~250nmであり、前記第2散乱粒子の平均粒径が15~70nmであることを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項3】
前記光重合性化合物は、下記化学式1で表される化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
[化学式1]
【化1】

(前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または水酸基であり、
は、直接結合、または炭素数1~4のアルキレン基であり、
mは、1~5の整数である。)
【請求項4】
前記第2散乱粒子は、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化バリウム(BaO)、硫酸バリウム(BaSO)および酸化ジルコニウム(ZrO)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項5】
前記第1散乱粒子および第2散乱粒子は、30:70~70:30の重量比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項6】
前記光重合性化合物は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、10~95重量%含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤は、ホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項8】
前記光重合開始剤は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、0.2~15重量%含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項9】
前記光散乱インク組成物は、添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項10】
前記光散乱インク組成物は、溶剤を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の光散乱インク組成物。
【請求項11】
前記光散乱インク組成物は、常温30日保管時、平均粒度変化率が5%以下であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の光散乱インク組成物。
【請求項12】
前記光散乱インク組成物の粒度分布(SPAN)が1.5以下であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の光散乱インク組成物。
【請求項13】
前記光散乱インク組成物を24時間タービスキャン(Turbiscan)に放置時、トップ部のバックスキャッタリング変化率が-5%~0%であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の光散乱インク組成物。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光散乱インク組成物で製造された光散乱層を含む、カラーフィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載のカラーフィルタを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱インク組成物、これを含むカラーフィルタおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタを実現する方法の一つとして、顔料分散型の感光性樹脂を用いた顔料分散法が適用されている。しかし、光源から照射された光がカラーフィルタを透過する過程で光の一部がカラーフィルタに吸収されて光効率が低下し、また、カラーフィルタに含まれている顔料の特性によって色再現性が低下する問題点が発生している。
【0003】
このような問題を解決できる方策として、量子ドットを用いたカラーフィルタが提示された。例えば、韓国公開特許第10-2009-0036373号公報は、既存のカラーフィルタを量子ドット蛍光体からなる発光層に代替することにより、発光効率を向上させて表示装置の表示品質を改善できると開示している。
【0004】
しかし、量子ドットを含むカラーフィルタの場合、量子ドットの効率、特に、青色量子ドットの効率が低下することにより、カラーフィルタの性能がやや低下することがあり、青色量子ドットの場合、高価なため、全体的な製造費用が上昇する問題点がある。
【0005】
これによって、青色光を放出する光源を用い、赤量子ドット粒子を含有した赤色パターン層および緑量子ドット粒子を含有した緑色パターン層を備え、青色パターン層に対応する位置には量子ドット粒子を含有しない透明パターン層を備えて、赤量子ドット粒子は赤色光を、緑量子ドット粒子は緑色光を放出し、透明パターン層は青色光がそのまま透過して青色を示すカラーフィルタが提示された。
【0006】
このような透明パターン層は、透過光の均一性を確保するために散乱粒子を含む。しかし、散乱粒子の含有量が増加する場合、透過率の低下が発生する問題点がある。これに対する代案として散乱粒子の含有量を低減する場合には、十分な散乱(Haze)特性が得られない問題点がある。
【0007】
また、透明パターン層をインクジェット方法で作製すれば、製造工程、時間および費用が大きく節減できる。しかし、既存のインク組成物は、溶剤を含有する溶剤タイプであるので、隣接する画素との混色が発生し、塗膜形成後に塗膜の平坦度が低下する問題点がある。これに対する代案として溶剤を含まない無溶剤型インク組成物で製造する場合には、粘度が高くなってジェッティング性が不良なだけでなく、長時間保管時に粒度分布が不規則に変化して信頼性関連の問題点がある。
【0008】
したがって、本発明は、上記の問題を解決するために考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2009-0036373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、優れたジェッティング性を示し、塗膜の透過率を向上させることができながらも、光散乱(Haze)特性も優れた光散乱層の製造が可能な光散乱インク組成物、これから製造された光散乱層、カラーフィルタおよび画像表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、長期間保管の場合にも、粒度変化や粒度分布の変化が少なくて保存安定性および沈降安定性が向上した光散乱インク組成物、これから製造された光散乱層、カラーフィルタおよび画像表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、平均粒径150~300nmの第1散乱粒子、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子、光重合性化合物および光重合開始剤を含み、前記第1散乱粒子は、酸化チタン(TiO)である光散乱インク組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、上述した光散乱インク組成物で製造された光散乱層を含むカラーフィルタを提供する。
【0015】
さらに、本発明は、上述したカラーフィルタを含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光散乱インク組成物は、第1散乱粒子として平均粒径150~300nmの酸化チタン(TiO)を含み、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子を同時に含むことにより、塗膜の透過率を向上させながらも、光散乱(Haze)特性も向上させることができる効果を有する。
【0017】
また、前記光散乱インク組成物は、優れたジェッティング性を示して、インクジェット印刷方式でカラーフィルタを効果的に製造することができる。
【0018】
さらに、本発明の光散乱インク組成物は、長期間保管の場合にも、粒度変化や粒度分布の変化が少なくて保存安定性および沈降安定性が大きく向上した効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、平均粒径150~300nmの第1散乱粒子、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子、光重合性化合物および光重合開始剤を含み、前記第1散乱粒子は、酸化チタン(TiO)である光散乱インク組成物に関する。
【0020】
本発明による光散乱インク組成物は、第1散乱粒子として平均粒径150~300nmの酸化チタン(TiO)を含み、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子を同時に含むことにより、塗膜の透過率を向上させることができながらも、光散乱(Haze)特性も併せて向上させることができ、ジェッティング性に優れてインクジェット印刷方式に適した効果を有する。
【0021】
また、本発明の光散乱インク組成物は、長期間保管の場合にも、粒度変化や粒度分布の変化が少なくて保存安定性および沈降安定性が大きく向上した効果を示す。
【0022】
具体的には、本発明の光散乱インク組成物は、粒度分布(SPAN)が、1.5以下、好ましくは1.3以下であってもよい。
【0023】
また、本発明の光散乱インク組成物は、非常に優れた沈降安定性を示す。具体的には、本発明の光散乱インク組成物を24時間タービスキャン(Turbiscan)に放置時、上部(TOP部)のバックスキャッタリング変化率が-5%~0%であってもよい。
【0024】
本発明の光散乱インク組成物は、前記光散乱インク組成物を24時間タービスキャン(Turbiscan)に放置時、中間部(Middle部)のバックスキャッタリング変化率が-0.3%~0.3%であってもよい。本発明において、上部(TOP部)および中間部(Middle部)は、タービスキャンテストで当業者がそれぞれ上部(TOP部)および中間部(Middle部)と認識する部分であってもよい。
【0025】
また、本発明は、上述した光散乱インク組成物で製造された光散乱層を含むカラーフィルタを提供する。
【0026】
さらに、本発明は、上述したカラーフィルタを含む画像表示装置を提供する。
【0027】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
<光散乱インク組成物>
本発明の光散乱インク組成物は、塗膜の透過率および光散乱(Haze)特性を同時に向上させることができ、優れたジェッティング性を示して、インクジェット印刷方式でカラーフィルタを効果的に製造することができる。
【0028】
前記光散乱インク組成物は、散乱粒子、光重合性化合物および光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0029】
また、本願の光散乱インク組成物は、溶剤を含まないことを特徴とする。
【0030】
散乱粒子
本発明において、散乱粒子は、青色光源から放出された光の経路を増加させて全体的な光効率を高める役割を果たす。
【0031】
本発明において、前記散乱粒子は、平均粒径150~300nmの第1散乱粒子と、平均粒径10~90nmの第2散乱粒子とを含む。さらに好ましくは、前記第1散乱粒子の平均粒径が180~250nmであり、前記第2散乱粒子の平均粒径が15~70nmであってもよい。このように互いに異なる平均粒径を有する2種の散乱粒子を混合して使用することにより、塗膜の透過率を向上させることができながらも、光散乱(Haze)特性も併せて向上させることができる。
【0032】
前記第1散乱粒子は、酸化チタン(TiO)であることを特徴とし、青色光源から放出された光を散乱させることにより、透過光の均一性を向上させる役割を果たす。
【0033】
前記第2散乱粒子は、通常の無機材料を使用することができ、平均粒径が10~90nmの金属酸化物を含むことを特徴とする。第2散乱粒子の平均粒径が10nm未満の場合、塗膜の光散乱(Haze)特性が低くなる問題点があり、平均粒径が90nmを超える場合、塗膜の透過率を向上させることができない問題点がある。
【0034】
前記第2散乱粒子としての金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の金属を含む酸化物であってもよいが、これに限定されない。
【0035】
具体的には、第2散乱粒子として、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化バリウム(BaO)、硫酸バリウム(BaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、またはこれらの組み合わせを含むことができ、塗膜の透過率を向上させることができながらも、光散乱(Haze)特性も併せて向上させることができるという面から、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、硫酸バリウム(BaSO)および酸化ジルコニウム(ZrO)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0036】
前記第1散乱粒子および第2散乱粒子は、30:70~70:30の重量比で含まれ、好ましくは40:60~60:40の重量比で含まれる。前記第1散乱粒子および第2散乱粒子が前記重量比範囲を満足する場合、塗膜の透過率を向上させることができながらも、光散乱(Haze)特性も併せて向上させることができるので、好ましい。
【0037】
前記散乱粒子は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、1~50重量%含まれ、好ましくは2~40重量%含まれ、さらに好ましくは3~25重量%含まれる。散乱粒子が前記含有量範囲を満足する場合、塗膜の透過率およびHaze特性に優れた光散乱インク組成物を提供することができるので、好ましい。
【0038】
光重合性化合物
本発明において、光重合性化合物は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0039】
[化学式1]
【化1】
【0040】
(前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または水酸基であり;
は、直接結合、または炭素数1~4のアルキレン基であり;
mは、1~5の整数である。)
【0041】
前記化学式1で表される化合物は、ジメチレンジアクリレート、トリメチレンジアクリレート、テトラメチレンジアクリレート、ペンタメチレンジアクリレート、ヘキサメチレンジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、ジブチレングリコールジアクリレート、トリブチレングリコールジアクリレート、テトラブチレングリコールジアクリレート、ペンタブチレングリコールジアクリレート、ジメチレンジメタアクリレート、トリメチレンジメタアクリレート、テトラメチレンジメタアクリレート、ペンタメチレンジメタアクリレート、ヘキサメチレンジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタアクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタエチレングリコールジメタアクリレート、ジブチレングリコールジメタアクリレート、トリブチレングリコールジメタアクリレート、テトラブチレングリコールジメタアクリレート、ペンタブチレングリコールジメタアクリレート、アクリロイルオキシヒドロキシプロピルアクリレートおよびグリセロールジメタアクリレートの中から選択される1種以上を含むことができ、これに限定されない。
【0042】
前記光重合性化合物が前記化学式1で表される化合物を含む場合、ジェッティング性に優れた光散乱インク組成物を提供することができるので、好ましい。
【0043】
本発明の、前記光重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用で重合可能な光重合性化合物であって、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどをさらに含むことができる。
【0044】
単官能モノマーの具体例としては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0045】
二官能モノマーは、前記化学式1で表される化合物を含まないもので、その具体例としては、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、3-メチルペンタンジオールジアクリレート、3-メチルペンタンジオールジメタアクリレート、ビスフェノール-Aエトキシレートジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メト)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、下記化学式2で表される化合物が挙げられる。
【0047】
[化学式2]
【化2】
【0048】
(前記化学式2において、
11は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、または下記化学式3で表される官能基であり、
12は、水素原子またはメチル基であり、
13は、炭素数1~20のアルキレン基であり、
p、qおよびrは、それぞれ独立して、0~5の整数であり、
tは、0または1である。)
【0049】
[化学式3]
【化3】
【0050】
(前記化学式3において、
14は、水素原子またはメチル基であり、
15は、炭素数1~20のアルキレン基、フェニレン基、または炭素数3~10のシクロアルキレン基であり、
Lは、直接結合、または炭素数1~6のアルキレン基であり、
nは、0~5の整数である。)
【0051】
前記光重合性化合物は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、10~95重量%、好ましくは10~90重量%含まれる。前記光重合性化合物が前記含有量範囲内に含まれる場合、ジェッティング性に優れた光散乱インク組成物を提供することができるので、好ましい。
【0052】
光重合開始剤
本発明の光散乱インク組成物は、光重合開始剤を含む。
【0053】
本発明の光散乱インク組成物に含まれる光重合開始剤は、前記光重合性化合物を重合させることができるものであればその種類を特に制限なく使用可能である。前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、チオキサントン系化合物およびホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことができ、ホスフィンオキシド化合物を含むのが、塗膜の透過率向上の面で好ましい。
【0054】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0055】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどがある。
【0056】
前記トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0057】
前記ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-メトキシフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールなどが挙げられ、市販品としては、Tronly社のHABI-107などが挙げられる。
【0058】
前記オキシム系化合物としては、例えば、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられ、市販品としては、BASF社のIrgacure(登録商標) OXE-01、OXE-02、OXE-03などが挙げられる。
【0059】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0060】
前記ホスフィンオキシド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられ、市販品としては、BASF社のDarocur TPO、IRGACURE-819などが挙げられる。
【0061】
本発明の光散乱インク組成物に含まれる光重合開始剤は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、0.2~15重量%、好ましくは0.5~7重量%含まれる。前記光重合開始剤が前記含有量範囲を満足する場合、前記光散乱インク組成物を用いて形成した画素部の強度や、この画素部の表面での平滑性が良好になるという利点を有する。
【0062】
添加剤
その他にも、本発明による光散乱インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、性能向上のために、散乱粒子分散剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、高分子化合物、消泡剤、界面活性剤、熱架橋剤、接着力増進剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0063】
前記添加剤は、前記光散乱インク組成物の固形分総重量に対して、前記添加剤を0.001~10重量%含むことができ、好ましくは、前記酸化防止剤を0.01~5重量%含むことができる。
【0064】
<カラーフィルタおよび画像表示装置>
本発明は、上述した光散乱インク組成物を含むか、これから製造された光散乱層を含むカラーフィルタおよびこれを含む画像表示装置を本発明の範囲とする。
【0065】
本発明のカラーフィルタおよび画像表示装置において、上述した光散乱インク組成物に関連する一切の事項が適用され、その他のカラーフィルタおよび画像表示装置に関連する事項は、公知の内容が制限なく適用可能である。
【実施例0066】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0067】
<実施例>
製造例:散乱粒子分散液の製造
散乱粒子45重量部、分散剤としてDISPERBYK-2001(BYK社製)5重量部、光重合性化合物として1,4-ブタンジオールジアクリレートまたは1,6-ヘキサンジオールジアクリレート50重量部を、ビーズミルによって12時間混合および分散して散乱粒子分散液を製造した。散乱粒子として下記表1の第1散乱粒子および表1~表5による第2散乱粒子を用いて散乱粒子分散液A1~A16を製造した。
【0068】
下記表1~表5中、散乱粒子の粒径は、散乱粒子の平均直径と定義する。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
実施例1~12および比較例1~6:光散乱インク組成物の製造
下記表6および表7に開示された組成、含有量によって混合して光散乱インク組成物を製造した(単位:重量%)。
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
A1~A16:前記製造例による散乱粒子分散液A1~A16
B1:1,4-ブタンジオールジアクリレート(シグマアルドリッチ社)
B2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(シグマアルドリッチ社)
C:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(シグマアルドリッチ社)
【0078】
実験例
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物を用いて、下記の物性を以下の方法で評価し、その結果を下記表8に示した。
【0079】
1.ジェッティング性評価
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物のジェッティング性を、インクジェット滴(drop)分析装置を用いて下記の評価基準により評価した。
<ジェッティング性評価基準>
○:インクジェットノズルの詰まりがなく、噴射されたインク滴が直線に噴射される
×:インクジェットノズルの詰まりが現れたり、インク滴が直線に噴射されない
【0080】
2.塗膜透過率評価
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物を5cm×5cmのガラス基板上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をすべて含む1kW高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmで照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して光散乱層を製造した。製造された光散乱層に対して、QE-2100(大塚電子社)を用いて塗膜透過率を下記の評価基準により評価した。
<透過率評価基準>
○:比較例1対比の透過率101%以上
×:比較例1対比の透過率101%未満
【0081】
3.塗膜のHaze評価
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物を5cm×5cmのガラス基板上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をすべて含む1kW高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmで照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して光散乱層を製造した。製造された光散乱層に対して、HM-150(Murakami Color Research Laboratory社)を用いて塗膜のHazeを下記の評価基準により評価した。
<Haze評価基準>
○:比較例1対比のHaze99%以上
×:比較例1対比のHaze99%未満
【0082】
4.粒度変化率および粒度分布評価
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物を、ELSZ-2000ZS(大塚社製)を用いて、初期平均粒度、常温で30日保管後の平均粒度をそれぞれ測定した。これによって計算された粒度変化率から下記の評価基準により平均粒度変化安定性を評価し、その結果を下記表に示した。そして、初期粒度分布(SPAN)に対して、下記の数式1を用いて粒度分布を評価して、その結果を下記表に示した。
<粒度変化安定性評価基準>
○:粒度変化率5%以下
△:粒度変化率5%超過10%以下
×:粒度変化率10%超過
【0083】
【数1】
【0084】
5.沈降安定性の確認(タービスキャン)
前記実施例および比較例で製造された光散乱インク組成物を、TURBISCAN LAB装置を用いて、沈降安定性を評価した。タービスキャン用の40ml vialに光散乱インク30gを入れて、常温24時間放置後の上部(TOP部)と中間部(Middle部)のバックスキャッタリング変化率(ΔBack scattering;ΔBS)を確認して、その結果を下記表に示した。
【0085】
実験結果
【表8】
【0086】
前記表8の実験結果を参照すれば、第1散乱粒子、第2散乱粒子および化学式1で表される化合物を含む実施例1~13による光散乱インク組成物は、優れたジェッティング性を示し、同時に塗膜の透過率およびHaze特性がすべて優れている。また、実施例の光散乱インク組成物の場合、粒度変化率が5%以下と非常に低く、初期粒度分布(SPAN)も0.3以下と小さい値を示して保存安定性にも優れていることを確認し、常温24時間放置後の上部(TOP部)と中間部(Middle部)のバックスキャッタリング変化率(ΔBack scattering;ΔBS)が非常に小さくて優れた沈降安定性を確認した。
【0087】
これに対し、第2散乱粒子を含まない比較例1の場合、透過率特性および沈降安定性が著しく低下し、第1散乱粒子を含まない比較例2の場合、Haze特性および沈降安定性が著しく低下することを確認することができた。また、平均粒径が10nm~90nmの範囲を外れる第2散乱粒子を含む比較例3~比較例6の場合、ジェッティング性、透過率および/またはHaze特性と、保存安定性が著しく低下することを確認することができた。