IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コーセーの特許一覧 ▶ 丸善製薬株式会社の特許一覧

特開2023-110910タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料
<>
  • 特開-タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料 図1
  • 特開-タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料 図2
  • 特開-タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110910
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/57 20060101AFI20230802BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230802BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20230802BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230802BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K36/57
A61K8/9789
A61K8/60
A61K31/7028
A61Q19/00
A61Q1/02
A61P17/00
A61P43/00 105
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011933
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022012073
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】小田 洋絵
(72)【発明者】
【氏名】厚木 徹
(72)【発明者】
【氏名】畑 友紀
(72)【発明者】
【氏名】橋井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】周 艶陽
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 善仁
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB242
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD622
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083DD12
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB21
4C088AB65
4C088AC03
4C088BA10
4C088CA08
4C088MA16
4C088MA22
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA52
4C088MA63
4C088ZA89
4C088ZB21
(57)【要約】
【課題】タイトジャンクションの形成を促進するための新規な技術を提供すること。
【解決手段】キンコウボク(Magnolia champaca (Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする、タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤を提供する。本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、医薬品、皮膚外用剤、食品、医薬部外品および化粧料に用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする、タイトジャンクション形成促進剤。
【請求項2】
キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする、上皮バリア機能改善剤。
【請求項3】
請求項1に記載のタイトジャンクション形成促進剤、または、請求項2に記載の上皮バリア機能改善剤を含有する医薬品、医薬部外品または飲食品。
【請求項4】
請求項1に記載のタイトジャンクション形成促進剤、または、請求項2に記載の上皮バリア機能改善剤を含有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、タイトジャンクション形成促進剤に関する。より詳細には、タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤、並びに、前記タイトジャンクション形成促進剤、または前記上皮バリア機能改善剤を含有する医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
タイトジャンクションは、細胞同士を接着させる細胞間結合のことで、隣り合う上皮細胞をつなぎ、さまざまな分子が細胞間を通過するのを防いでいる。気管、腸管、血管などの細胞ではタイトジャンクションが発達し、管の内外に存在するイオン・水などが細胞間隙を介して透過するのを防ぐためのバリアとして働いている。皮膚の上皮細胞にもタイトジャンクションが存在し、皮膚のバリア機能を担っている。
【0003】
皮膚のタイトジャンクションは、物理的な皮膚バリアとして働くことのみならず、表皮の分化等についても影響することが明らかになっており、炎症や紫外線などの環境因子によってその構造が損傷を受けることからも、タイトジャンクションの状態を良好に保つことは、健やかな肌状態を保つために重要である。
【0004】
近年、タイトジャンクションの形成を促進するための技術が開発されつつある。例えば、特許文献1には、ユーカリ葉抽出物からなる組成物が、優れたタイトジャンクション形成促進剤として利用することができる技術が開示されている。また、特許文献2には、フェニルエチルアミン誘導体又はシネフリンを有効成分とするタイトジャンクション形成促進剤、タイトジャンクションタンパク質1発現誘導剤、タイトジャンクションタンパク質1細胞膜局在誘導剤及び該物質を含む医薬品、飲食品、皮膚外用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-197217号公報
【特許文献2】特開2016-222557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、タイトジャンクションの形成を促進するための技術の開発が進められているが、更なる技術が期待されているのが実情である。そこで、本技術では、タイトジャンクションの形成を促進するための新規な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、タイトジャンクションの形成に効果を有する物質の鋭意探求を行ったところ、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物にタイトジャンクション形成を促進させ、上皮バリア機能を改善する効果があることを見出した。また、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物の成分にも着目し、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物にアクテオシド、およびイソアクテオシドが含まれること、および、これらにタイトジャンクション形成を促進させ、上皮バリア機能を改善する効果があることを見出し、本技術を完成させた。
【0008】
すなわち、本技術では、まず、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする、タイトジャンクション形成促進剤を提供する。
また、本技術では、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする、上皮バリア機能改善剤を提供する。
【0009】
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料に用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、タイトジャンクションの形成を促進するための新規な技術を提供することができる。なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実験例1における経上皮電気抵抗の測定結果を示すグラフである。
図2】実験例2における顕微鏡画像である。
図3】実験例3におけるオクルディンの遺伝子発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0013】
1.タイトジャンクション形成促進剤、上皮バリア機能改善剤
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を有効成分とする。
【0014】
(1)キンコウボクの抽出物
キンコウボク(金厚朴)は、モクレン科モクレン属(オガタマノキ属)に属する植物であり、学名はMagnolia champaca(Michelia champaca)である。キンコウボクの抽出物とは、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の根、幹、葉、枝、樹皮、花、実などを、適当な溶媒で抽出して得られる抽出物のことであり、通常、抽出した溶媒の濃縮液を使用する。また、当該濃縮液を凍結乾燥させたものも、本技術に用いることが可能である。
【0015】
キンコウボクの具体的な抽出部位は、本技術の目的を損なわなければ特に限定されないが、葉または花を選択することが好ましく、花を選択することがより好ましい。また、前記抽出部位は採取直後でもよいし、乾燥させた後に、抽出に用いてもよい。必要に応じて、粉砕、切断、細切、成形等の加工を行ってから抽出に用いることもできる。
【0016】
抽出に用いる溶媒も特に限定されず、通常、植物抽出に用いることができる溶媒を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類、超臨界溶媒(二酸化炭素など)、亜臨界溶媒などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノール及びプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独或いは水溶液として用いてもよく、任意の2種又は3種以上の混合溶媒として用いてもよい。本技術においては、この中でも特に、水‐アルコール類混合液を用いることが好ましい。
【0017】
本技術において、含水エタノールを抽出溶媒として用いる場合、そのエタノール濃度も特に限定されないが、5~95質量%が好ましく、15~70質量%以下がより好ましく、25~60質量%が特に好ましい。
【0018】
抽出方法も特に限定されず、通常、植物抽出で行う抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、前記溶媒にキンコウボクの任意の部位を24時間浸漬した後に濾過する方法、溶媒の沸点以下の温度で加温、攪拌等しながら抽出した後に濾過する方法などが挙げられる。
【0019】
キンコウボクの抽出物は、そのままでも本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を、さらに、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマト法、逆相若しくは順相の高速液体クロマト法など)により活性の高い画分を分画して用いることも可能である。
【0020】
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤に用いるキンコウボクの抽出物の乾燥固形分濃度は、本技術の効果を損なわなければ、用いる抽出溶媒の種類、抽出方法などに応じて自由に設定することが可能である。本技術においては、特に、乾燥固形分濃度の下限値は、例えば、0.05質量%以上とすることができ、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。0.2質量%以上とすることで、より高いタイトジャンクション形成促進効果および/または上皮バリア機能改善効果を発揮することができる。また、乾燥固形分濃度の上限値は、例えば、10質量%以下とすることができ、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。2質量%以下とすることで、植物に由来する匂いの発生や沈殿の発生を防止することができる。
【0021】
(2)アクテオシド、イソアクテオシド
アクテオシド(Acteoside)は、別名ベルバコシド(verbascoside)、クサギニン(Kusaginin)で、分子式:C293615、下記の化学式(1)で表される物質である。
【0022】
【化1】
【0023】
イソアクテオシド(Isoacteoside)は、別名イソベルバコシド(isoverbascoside)で、分子式:C293615、下記の化学式(2)で表される物質である。
【0024】
【化2】
【0025】
本願発明者らは、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物に、アクテオシド、およびイソアクテオシドが含有されることを見出した。そして、これらの物質に、タイトジャンクション形成を促進させ、上皮バリア機能を改善する効果があることも確認した。即ち、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物には、複数の物質が含まれていると考えられるが、その中でも、アクテオシド、およびイソアクテオシドは、確実にタイトジャンクション形成促進作用および/または上皮バリア機能改善作用を有することを見出した。
【0026】
より詳細には、後述する実施例に示すように、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドは、タイトジャンクションの構成因子であるオクルディンの発現遺伝子(オクルディン(OCLN)mRNA)、タイトジャンクションの構成因子であるクローディンの発現遺伝子(クローディン-1(CLDN1)mRNA、クローディン-4(CLDN4)mRNA)の発現促進作用を有する。
【0027】
また、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドは、上皮バリア機能に関わるヒアルロン酸の産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、表皮角化細胞の増殖促進作用、角層タンパク質であるフィラグリンの発現遺伝子(フィラグリン(FLG)mRNA)の発現促進作用、セラミド等のスフィンゴ脂質の生合成に関わるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用、および皮膚角化細胞の構成因子であるカスパーゼ14の発現遺伝子(Caspase-14 mRNA)の発現促進作用を有する。
【0028】
なお、本技術に用いることができるアクテオシド、およびイソアクテオシドは、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物から精製されたものに限らず、他の植物や生物から精製されたものでもよい。また、化学合成されたものを用いることも可能である。
【0029】
(3)その他
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤には、本技術の効果を損なわない限り、その他の成分として、化粧料、飲食品、医薬品及び医薬部外品分野において用いることができるその他の成分を1種又は2種以上、自由に選択して含有させることもできる。例えば、保存剤、乳化剤、pH調整剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤等の成分を用いることができる。
【0030】
2.医薬品、医薬部外品および飲食品
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、その優れたタイトジャンクション形成促進効果および/または上皮バリア機能改善効果を利用して、医薬品や医薬部外品および飲食品に好適に用いることができる。医薬品および医薬部外品は、経口投与や非経口投与などの投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができ、その剤形は特に限定されない。医薬品における経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、皮膚外用剤、座剤、膣錠、吸入剤、点鼻剤、注射剤等に製剤化することができる。医薬部外品においては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、皮膚外用剤、軟膏剤、エアゾール剤等に製剤化することができる。医薬品および医薬部外品について、本技術では、この中でも特に、皮膚外用剤の剤形に製剤化することが好ましい。皮膚外用剤としては、例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤、貼付剤等が挙げられる。飲食品としては、冷凍飲食品、粉末食品、シート状食品、瓶詰飲食品、缶詰飲食品、レトルト飲食品、カプセル状食品、タブレット状食品等の形態の他、例えば蛋白質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等が配合された自然流動食、半消化栄養食および成分栄養食、ドリンク剤等の加工形態等、いずれの形態でもよい。また、飲食品の種類は特に限定するものではなく、例えば、飴、チューインガム、飲料等が挙げられる。
【0031】
本技術に係る医薬品、医薬部外品および飲食品には、薬理学的に許容される添加剤を1種または2種以上自由に選択して含有させることができる。例えば、本技術に係る医薬品および医薬部外品を皮膚外用剤に適用させる場合、基剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、着色剤、矯臭剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、潤沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤等の、医薬製剤および医薬部外品製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0032】
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、他剤との併用を注意する必要性が低い。そのため、既存のあらゆる薬剤を1種または2種以上自由に選択して、合剤とすることもできる。例えば、抗菌剤、消炎鎮痛剤、ステロイド剤、抗真菌剤、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン剤、抗腫瘍剤など、あらゆる薬剤を配合することができる。更に、従来公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、改善及び/又は治療の効果を有する成分を、本技術の効果を損なわない限り、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0033】
本技術に係る医薬品、医薬部外品および飲食品、において、タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。本技術では、医薬品、医薬部外品および飲食品中におけるキンコウボク抽出物の乾燥固形分、アクテオシド及びイソアクテオシドの含有量は、例えば下限としては0.0000001質量%以上が好ましく、0.000001質量%以上がより好ましく、0.00001質量%以上が特に好ましい。また、上限としては1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。
【0034】
以上説明した本技術に係る医薬品、医薬部外品および飲食品は、その有効成分が天然由来成分であるため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる可能性も高い。また、長期間、連続的に投与しても副作用が生じる可能性も低い。
【0035】
3.化粧料
本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、その優れたタイトジャンクション形成促進効果および/または上皮バリア機能改善効果を利用して、あらゆる形態の化粧料に好適に用いることができる。例えば、ローション、乳液、クリーム、美容液、パック化粧料などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料、などに適用することができる。化粧料の剤型として、水系、油系、可溶系、乳化系(O/W型、W/O型、W/O/W型、O/W/O型)等が挙げられる。
【0036】
本技術に係る化粧料には、本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤に加え、通常化粧料に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、基材、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、水などの、化粧料分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0037】
また、本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、他の有効成分との併用を注意する必要性が低い。そのため、本技術に係る化粧料には、本技術に係るタイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤に加え、他の有効成分を必要に応じて自由に配合することができる。
【0038】
本技術に係る化粧料において、タイトジャンクション形成促進剤、および上皮バリア機能改善剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。本技術では、化粧料中におけるキンコウボク抽出物の乾燥固形分、アクテオシド及びイソアクテオシドの含有量は、例えば下限としては0.0000001質量%以上が好ましく、0.000001質量%以上がより好ましく、0.00001質量%以上が特に好ましい。また、上限としては1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。
【0039】
以上説明した本技術に係る化粧料を用いた化粧料は、その有効成分が天然由来成分であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用が可能である。
【0040】
4.タイトジャンクション形成促進方法、上皮バリア機能改善方法
本技術に係るタイトジャンクション形成促進方法、および上皮バリア機能改善方法は、キンコウボク(Magnolia champaca(Michelia champaca))の抽出物、アクテオシド、およびイソアクテオシドから選択される1以上の物質を投与する工程を含む方法である。
【0041】
投与方法は、特に限定されず、経口投与や非経口投与のいずれを選択することもできる。非経口投与としては、例えば、経皮投与、経腸投与、経膣投与、舌下投与、口腔投与、吸入投与、経鼻投与、経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与等が挙げられる。
【実施例0042】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0043】
<キンコウボク抽出物の調製>
乾燥粉砕したキンコウボクの花を抽出溶媒に入れ、花の成分を抽出した後に濾過で不溶分を取り除き、溶媒で固形分量を調製し、キンコウボク抽出物を得た。なお抽出溶媒としては、含水エタノール(エタノール濃度:50質量%)を用いた。
【0044】
<実験例1>
実験例1では、キンコウボク抽出物のタイトジャンクション形成促進効果を、経上皮電気抵抗を測定することで確認した。
【0045】
(1)経上皮電気抵抗の測定
ヒト表皮角化細胞を用いて作製した3次元培養表皮モデルの経上皮電気抵抗(TEER(Trans Epithelial Electrical Resistance))を測定することにより、タイトジャンクション形成促進効果を調べた。表皮モデルの作製過程で、培養液に、前記で調製したキンコウボク抽出物(0, 1, 10μg/mL)を添加し、培養を続けた。キンコウボク抽出物の添加後6日目に、表皮モデルの上下を培地で満たし、Millicell ERS-2(Millipore社製)の電極を用いて、電気抵抗を測定した。
【0046】
(2)結果
経上皮電気抵抗の測定結果を図1に示す。図1に示す通り、キンコウボク抽出物を添加することにより、タイトジャンクション形成が促進されることが確認できた。特に、キンコウボク抽出物を10μg/mLを添加した表皮モデルのTEERは、未添加の表皮モデルのTEERに対して、有意差をもって高い数値を示した。
【0047】
<実験例2>
実験例2では、キンコウボク抽出物のタイトジャンクション形成促進効果を、タイトジャンクションの構造を観察することで確認した。
【0048】
(1)タイトジャンクションの観察
ヒト表皮角化細胞を用いて作製した3次元培養表皮モデルに対し、タイトジャンクションの構成因子であるオクルディンを抗体染色することによって、タイトジャンクションを観察した。表皮モデルの作製過程で、培養液に、前記で調製したキンコウボク抽出物(0,1, 10μg/mL)を添加し、培養を続けた。キンコウボク抽出物の添加後6日目に、表皮モデルを固定し、固定した試料を1次抗体の抗オクルディン抗体と反応させ、さらに蛍光標識2次抗体と反応させた。抗体染色した試料の観察像は、共焦点レーザースキャン顕微鏡(ZEISS社製)を用いて得た。
【0049】
(2)結果
顕微鏡画像を図2に示す。図2に示す通り、キンコウボク抽出物未添加の表皮モデルではオクルディン集積が不十分な箇所が多く存在するが、キンコウボク抽出物添加群では、オクルディンがほとんどの細胞-細胞境界に集積していることが確認された。この結果から、キンコウボク抽出物によって、タイトジャンクション形成が促進されたことが確認された。
【0050】
<実験例3>
実験例3では、キンコウボク抽出物に含有される物質(アクテオシド、イソアクテオシド)のタイトジャンクション形成促進作用を調べた。
【0051】
(1)定量的PCR
ヒト表皮角化細胞を、コラーゲンコートプレート(Corning社製、#356400)に播種し、サブコンフルエントとなった時点で、キンコウボク抽出物(0, 12.5, 25, 50μg/mL)、アクテオシド(0, 5, 25μg/mL)、イソアクテオシド(0, 25μg/mL)を培地に添加し、培養を行った。薬剤添加24時間後に、細胞からtotal RNAをTRIzol Reagent(Invitrogen社製)を用いて抽出し、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher社製)を用いて逆転写を行った。合成したcDNAを鋳型とし、オクルディン遺伝子を増幅させるプライマーを用いて定量的PCRを行った。各試料の遺伝子発現量はハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素の発現量で標準化した。
【0052】
(2)結果
結果を図3に示す。図3に示す通り、キンコウボク抽出物、アクテオシド、イソアクテオシドは、濃度依存的にオクルディンの遺伝子発現を亢進することが確認された。これらの結果から、キンコウボク抽出物に含有される少なくともアクテオシド、イソアクテオシドは、タイトジャンクション形成促進作用をもたらす活性成分であることが確認された。
【0053】
<実験例4>
実験例4では、タイトジャンクションの構成因子であるオクルディンの発現遺伝子(オクルディン(OCLN)mRNA)の発現促進作用について、検証した。
【0054】
(1)試験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0055】
24時間後に被験試料を各 well に添加し、37℃、5%CO2 下で24時間培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE)にて total RNA を調製した。
【0056】
この total RNA を鋳型とし、OCLNおよび内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa)を用いて、リアルタイム RT-PCR 反応により行った。
【0057】
OCLNの発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。OCLN mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
OCLN mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0058】
(2)結果
結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0059】
(3)考察
表1に示すように、キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なOCLN mRNA 発現促進作用が認められた。
【0060】
<実験例5>
実験例5では、タイトジャンクションの構成因子であるクローディンの発現遺伝子(クローディン-1(CLDN1)mRNA)の発現促進作用について、検証した。
【0061】
(1)試験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0062】
24時間後に被験試料を各 well に添加し、37℃、5%CO2 下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE)にて total RNA を調製した。
【0063】
このtotal RNA を鋳型とし、CLDN1 および内部標準であるGAPDHのmRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa) を用いて、リアルタイム RT-PCR 反応により行った。
【0064】
CLDN1 の発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。CLDN1 mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
CLDN1 mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0065】
(2)結果
結果を下記の表2に示す。
【表2】
【0066】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なCLDN1 mRNA 発現促進作用が認められた。
【0067】
<実験例6>
実験例6では、タイトジャンクションの構成因子であるクローディンの発現遺伝子(クローディン-4(CLDN4)mRNA)の発現促進作用について、検証した。
【0068】
(1)試験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0069】
24時間後に被験試料を各well に添加し、37℃、5%CO2 下で 24 時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II (NIPPON GENE)にてtotal RNA を調製した。
【0070】
この total RNA を鋳型とし、CLDN4および内部標準であるGAPDH のmRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR 装置 Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time SystemIII(TaKaRa)を用いて、リアルタイム RT-PCR 反応により行った。
【0071】
CLDN4 の発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。CLDN4 mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
CLDN4 mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0072】
(2)結果
結果を下記の表3に示す。
【表3】
【0073】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なCLDN4 mRNA 発現促進作用が認められた。
【0074】
<実験例7>
実験例7では、ヒアルロン酸産生促進率について、検討した。
【0075】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を96 well プレートに被験試料を添加し培養した。培養後、各well の培地中のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。
【0076】
ヒアルロン酸産生促進率の計算方法は以下のとおりである。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時のヒアルロン酸量
B:被験試料無添加時のヒアルロン酸量
【0077】
(2)結果
【表4】
【0078】
(3)考察
キンコウボク抽出液、およびイソアクテオサイドにおいて、有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【0079】
<実験例8>
実験例8では、ヒアルロン酸の発現遺伝子であるヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用について、検討した。
【0080】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地 (KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0081】
24時間後に被験試料を各well に添加し、37℃、5%CO2 下で24 時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II (NIPPON GENE)にてtotal RNA を調製した。
【0082】
このtotal RNA を鋳型とし、HAS3 および内部標準である GAPDH のmRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイム PCR 装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa) を用いて、リアルタイム RT-PCR 反応により行った。
【0083】
HAS3の発現量は、GAPDH mRNAの発現量で補正し算出した。HAS3 mRNA発現促進率の計算方法は以下の通りである。
【0084】
HAS3 mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0085】
(2)結果
結果を下記の表5に示す。
【表5】
【0086】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なHAS3発現促進作用が認められた。
【0087】
<実験例9>
実験例9では、表皮角化細胞増殖促進作用について検証した。
【0088】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞をコラーゲンコートした96 well プレートに播種し、一晩培養した。培養終了後、被験試料を添加し、培養した。表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。
【0089】
表皮角化細胞増殖促進率の計算方法は以下のとおりである。
表皮角化細胞増殖促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料を添加した細胞でのブルーホルマザン生成量
B:被験試料を添加しない細胞でのブルーホルマザン生成量
【0090】
(2)結果
結果を下記の表6に示す。
【表6】
【0091】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、表皮角化細胞増殖促進作用が認められた。
【0092】
<実験例10>
実験例10では、角層タンパク質であるフィラグリンの発現遺伝子(フィラグリン(FLG)mRNA)の発現促進作用について、検証した。
【0093】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0094】
24時間後に被験試料を各well に添加し、37℃、5%CO2 下で 24 時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II (NIPPON GENE)にてtotal RNA を調製した。
【0095】
この total RNA を鋳型とし、FLGおよび内部標準であるGAPDH のmRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR 装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa) を用いて、リアルタイムRT-PCR 反応により行った。
【0096】
FLGの発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。FLG mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
FLG mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0097】
(2)結果
結果を下記の表7に示す。
【表7】
【0098】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なFLG mRNA発現促進作用が認められた。
【0099】
<実験例11>
実験例11では、セラミド等のスフィンゴ脂質の生合成に関わるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用について、検証した。
【0100】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0101】
24時間後に培養液を捨て、被験試料を各well に 2 mL ずつ添加し、37℃、5%CO2 下で24 時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II (NIPPON GENE)にてtotal RNA を調製した。
【0102】
このtotal RNA を鋳型とし、SPTおよび内部標準である GAPDH の mRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR 装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa) を用いて、リアルタイム RT-PCR 反応により行った。
【0103】
SPTの発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。SPT mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
SPT mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0104】
(2)結果
結果を下記の表8に示す。
【表8】
【0105】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なSPT mRNA発現促進作用が認められた。
【0106】
<実験例12>
実験例12では、皮膚角化細胞の構成因子であるカスパーゼ14の発現遺伝子(Caspase-14 mRNA)の発現促進作用について、検証した。
【0107】
(1)実験方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を6 well プレートに播種し、37℃、5%CO2 下で一晩培養した。
【0108】
24時間後に培養液を捨て、被験試料を各well に添加し、37℃、5%CO2 下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II (NIPPON GENE)にてtotal RNA を調製した。
【0109】
このtotal RNA を鋳型とし、Caspase-14および内部標準であるGAPDH のmRNA の発現量を測定した。検出はリアルタイム PCR 装置 Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa) を用いて、リアルタイムRT-PCR 反応により行った。
【0110】
Caspase-14の発現量は、GAPDH mRNA の発現量で補正し算出した。Caspase-14 mRNA 発現促進率の計算方法は以下の通りである。
Caspase-14 mRNA 発現促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0111】
(2)結果
結果を下記の表9に示す。
【表9】
【0112】
(3)考察
キンコウボク抽出液、アクテオサイド、およびイソアクテオサイドの全てにおいて、有意なCaspase14 mRNA発現促進作用が認められた。Caspase-14 は表皮細胞を脱核させて正常な表皮分化を誘導し肌を健康に保つ他、フィラグリンからNMFへの分解やセラミドの合成系に関与することも報告されており、NMFの供給や細胞間脂質の調節においても重要な役割を担うと考えられている。すなわち Caspase-14 の発現を高めることは肌荒れの予防や保湿効果の増強につながると考えられる。
【0113】
<実施例1~11>
実施例1~11では、キンコウボク抽出物、アクテオシドまたはイソアクテオシドを含有する医薬品、医薬部外品、飲食品および化粧料を調製した。
【0114】
[実施例1:外用液剤]
以下の製法により、外用液剤を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(7)を混合溶解した。
B.下記成分(8)~(11)を混合溶解した。
C.AにBを加え混合し、実施例1に係る外用液剤を得た。
【0115】
(1)クエン酸:0.05質量%
(2)クエン酸ナトリウム:0.2質量%
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液:0.5質量%
(4)グリセリン:3.0質量%
(5)1,3-ブチレングリコール:8.0質量%
(6)キンコウボク抽出物:0.5質量%
(7)精製水:残量
(8)エタノール:10.0質量%
(9)香料:0.1質量%
(10)フェノキシエタノール:0.1質量%
(11)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン:0.5質量%
【0116】
[実施例2:乳液]
下記の製法により、乳液を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(10)を加熱溶解し、70℃に保った。
B.下記成分(11)~(17)を加熱溶解し、70℃に保った。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(18)を加え混合した。
D.Cを冷却し、下記成分(19)を加え混合し、実施例2に係る乳液を得た。
【0117】
(1)ステアリン酸:1.0質量%
(2)セタノール:0.5質量%
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン:0.5質量%
(4)流動パラフィン:2.0質量%
(5)スクワラン:3.0質量%
(6)ホホバ油:3.0質量%
(7)パルミチン酸セチル:0.2質量%
(8)パラオキシ安息香酸メチル:0.1質量%
(9)モノステアリン酸ソルビタン:0.3質量%
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン:0.5質量%(11)トリエタノールアミン:0.5質量%
(12)1,3-ブチレングリコール:15.0質量%
(13)グリセリン:3.0質量%
(14)ポリエチレングリコール6000:0.5質量%
(15)キンコウボク抽出物:0.1質量%
(16)アスコルビン酸リン酸マグネシウム:0.5質量%
(17)精製水:残量
(18)カルボキシルビニルポリマー1%溶液:8.0質量%
(19)香料:0.1質量%
【0118】
[実施例3:軟膏]
以下の製法により軟膏を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(13)を加熱溶解し、70℃に保った。
B.下記成分(14)~(19)を加熱溶解し、70℃に保った。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(20)を加え混合した。
D.Cを冷却し、下記成分(21)を加え混合し、実施例3に係るクリームを得た。
【0119】
(1)ステアリン酸:2.5質量%
(2)セタノール:2.5質量%
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン:2.0質量%
(4)ワセリン:2.0質量%
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル:2.0質量%
(6)ミリスチン酸イソトリデシル:5.0質量%
(7)流動パラフィン:8.0質量%
(8)スクワラン:5.0質量%
(9)ミツロウ:1.0質量%
(10)パルミチン酸セチル:2.0質量%
(11)セスキオレイン酸ソルビタン:0.5質量%
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン:1.5質量%(13)フェノキシエタノール:0.2質量%
(14)トリエタノールアミン:1.2質量%
(15)1,3-ブチレングリコール:8.0質量%
(16)グリセリン:2.0質量%
(17)ポリエチレングリコール20000:0.5質量%
(18)キンコウボク抽出物:1.0質量%
(19)精製水:残量
(20)カルボキシルビニルポリマー1%溶液:10.0質量%
(21)香料:0.05質量%
【0120】
[実施例4:美容液]
下記の製法により、美容液を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(8)を混合溶解した。
B.下記成分(9)~(18)を混合溶解した。
C.BにAを加え混合し、実施例4に係る美容液を得た。
【0121】
(1)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル:0.1質量%
(2)メドウホーム油:0.05質量%
(3)ホホバ油:0.05質量%
(4)パラオキシ安息香酸メチル:0.05質量%
(5)香料:0.05質量%
(6)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン:0.5質量%
(7)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.):1.5質量%
(8)エタノール:5.0質量%
(9)グリセリン:4.0質量%
(10)ジプロピレングリコール:8.0質量%
(11)1,3-ブチレングリコール:8.0質量%
(12)乳酸ナトリウム:0.5質量%
(13)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液:0.5質量%
(14)キンコウボク抽出物:10.0質量%
(15)アルブチン:0.2質量%
(16)ヒドロキシエチルセルロース:0.08質量%
(17)アルギン酸ナトリウム:0.05質量%
(18)精製水:残量
【0122】
[実施例5:パック]
以下の製法により、パックを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(6)を加熱溶解した。
B.下記成分(7)~(11)を混合溶解した。
C.Aを冷却後、Bを加え混合し、実施例5に係るパックを得た。
【0123】
(1)ポリビニルアルコール:12.0質量%
(2)メチルセルロース:0.1質量%
(3)グリセリン:3.0質量%
(4)1,3-ブチレングリコール:5.0質量%
(5)キンコウボク抽出物:5.0質量%
(6)精製水:残量
(7)香料:0.02質量%
(8)パラオキシ安息香酸メチル:0.05質量%
(9)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル:0.1質量%
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン:1.0質量%(11)エタノール:13.0質量%
【0124】
[実施例6:リキッドファンデーション(O/W型)]
以下の製法により、リキッドファンデーションを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(7)を加熱溶解した。
B.Aに下記成分(8)~(11)を加え、均一に混合し、70℃に保った。
C.下記成分(12)~(16)を加熱溶解し、70℃に保った。
D.CにBを加えて乳化した。
E.Dを冷却後、下記成分(17)を加え混合し、実施例6に係るリキッドファンデーション(O/W型)を得た。
【0125】
(1)ステアリン酸:2.0質量%
(2)セタノール:0.5質量%
(3)ベヘニルアルコール:1.0質量%
(4)ワセリン:2.5質量%
(5)流動パラフィン:5.0質量%
(6)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン:1.0質量%
(7)パラオキシ安息香酸メチル:0.15質量%
(8)酸化チタン:6.0質量%
(9)着色顔料:4.0質量%
(10)マイカ:2.0質量%
(11)タルク:4.0質量%
(12)カルボキシメチルセルロース:0.2質量%
(13)ベントナイト:0.4質量%
(14)キンコウボク抽出物:0.01質量%
(15)1,3-ブチレングリコール:8.0質量%
(16)精製水:残量
(17)香料:0.2質量%
【0126】
[実施例7:乳液(O/W型)]
以下の製法により、乳液を調製した。
(製法)
A:下記成分(1)~(2)を70℃で均一に溶解混合した。
B:下記成分(3)~(11)を80℃で均一に溶解混合した
C:AにBを添加し70℃で乳化した。
D:Cに下記成分(12)~(17)を添加混合した後、40℃まで冷却して、
E:Dにあらかじめ混合した下記成分(18)~(24)を混合し、乳液(O/W型)を得た。
【0127】
(1)1,3-ブチレングリコール:12.0質量%
(2)精製水:残量
(3)モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.):0.5質量%
(4)セスキオレイン酸ソルビタン:0.1質量%
(5)水添レシチン:0.1
(6)ヒドロキシステアリン酸コレステリル (注1):3.0質量%
(7)ワセリン:2.0質量%
(8)α-オレフィンオリゴマー:5.0質量%
(9)シアバター:2.0質量%
(10)ジメチルポリシロキサン(10CS):1.0質量%
(11)セラミド3:0.1質量%
(12)セトステアリルアルコール:2.0質量%
(13)ベヘニルアルコール:1.0質量%
(14)パラオキシ安息香酸メチル:0.1質量%
(15)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 (注2):0.1質量%
(16)キサンタンガム:0.1質量%
(17)水酸化ナトリウム:0.03質量%
(18)ヒアルロン酸ナトリウム:0.0005質量%
(19)ポリメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン液:0.0025質量%
(20)アクテオシド:0.0001質量%
(21)エタノール:5%
(22)アスタキサンチン:0.1質量%
(23)トコフェロール:0.01質量%
(24)香料:0.2質量%
注1)サラコスHS(日清オイリオ社製)
注2)CARCOPOAL ULTREZ21(LUBRIZOL社製)
【0128】
[実施例8:美容液(O/W型)]
以下の製法により、美容液を調製した。
(製法)
A:下記成分(1)~(3)を70℃で均一に溶解混合した。
B:下記成分(4)~(11)を80℃で均一に溶解混合した。
C:AにBを添加し70℃で乳化した。
D:Cに下記成分(12)~(18)を添加混合した後、40℃まで冷却して、
E:Dにあらかじめ混合した下記成分(19)~(21)を添加し水中油型乳化美容液を得た。
【0129】
(1)1,3-ブチレングリコール:5.0質量%
(2)トリプロピレングリコール:3.0質量%
(3)精製水:残量
(4)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.):0.1質量%
(5)モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.):0.25質量%
(6)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル (注3):2.0質量%
(7)軽質流動イソパラフィン (注4):3.0質量%
(8)ジメチルポリシロキサン(6CS):3.0質量%
(9)コレステロール:0.1質量%
(10)トコフェロール:0.01質量%
(11)セトステアリルアルコール:0.5質量%
(12)パラオキシ安息香酸メチル:0.1質量%
(13)カルボマー (注5):0.15質量%
(14)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー (注6):0.1質量%
(15)水酸化ナトリウム:0.05質量%
(16)コラーゲン:0.1質量%
(17)エラスチン:0.1質量%
(18)ヒアルロン酸:0.1質量%
(19)エタノール:5.0質量%
(20)アクテオシド:0.005質量%
(21)香料:0.05質量%
注3)PLANDOOL-MAS(日本精化社製)
注4)クロラータムLES(クローダ社製)
注5)CARCOPOAL 980(LUBRIZOL社製)
注6)SIMULGEL EG(SEPIC社製)
【0130】
[実施例9:軟膏]
以下の製法により、軟膏を調製した。
(製法)
A.下記成分(5)~(11)を75℃で均一に溶解した。
B.下記成分(1)~(4)を75℃で均一に溶解した。
C.AにBを徐々に加え、75℃で乳化し、室温に冷却して軟膏を得た。
【0131】
(1)トリエタノールアミン:2.0質量%
(2)グリセリン:8.0質量%
(3)精製水:残量
(4)ヒアルロン酸ナトリウム:0.003質量%
(5)イソアクテオシド:0.000005質量
(6)ポリクオタニウム-64:0.004質量%
(7)セタノール:4.0質量%
(8)ワセリン:30.0質量%
(9)トコフェロール:0.01質量%
(10)ステアリン酸:18.0質量%
(11)セスキオレイン酸ソルビタン:1.5質量%
【0132】
[実施例10:タブレット]
以下の製法により、タブレットを調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(7)を均一に混合し、常法に従ってタブレットを得た。
【0133】
(1)乳糖:24.0質量%
(2)結晶セルロース:20.0質量%
(3)コーンスターチ:15.0質量%
(4)キンコウボク抽出物:0.1質量%
(5)グリセリン脂肪酸エステル:5.0質量%
(6)二酸化ケイ素:1.0質量%
(7)デキストリン:残量
【0134】
[実施例11:清涼飲料]
以下の製法により、清涼飲料を調製した。
(製法)
A.下記成分(1)~(5)を均一に混合し、常法に従って清涼飲料を得た。
【0135】
(1)果糖ブドウ糖液:30.0質量%
(2)乳化剤:0.5質量%
(3)キンコウボク抽出物:0.01質量%
(4)香料:0.01質量%
(5)精製水:残量
図1
図2
図3