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特開2023-110916スチレン系樹脂組成物、押出シート、射出成形体、及び容器
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  • 特開-スチレン系樹脂組成物、押出シート、射出成形体、及び容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110916
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物、押出シート、射出成形体、及び容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20230802BHJP
   C08F 279/00 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 212/02 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20230802BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230802BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230802BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20230802BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230802BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08L25/08
C08F279/00
C08F212/02
C08F220/04
C08F220/10
C08L33/04
C08L51/04
C08L9/06
C08K3/013
C08J5/18 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012208
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022012407
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】小林 松太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩香
(72)【発明者】
【氏名】中川 優
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA22
4F071AA32
4F071AA33
4F071AA81
4F071AA85
4F071AA88
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF23
4F071AH05
4F071AH12
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4J002AC085
4J002BC041
4J002BC063
4J002BG022
4J002BG045
4J002BN144
4J002BN145
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J026AA67
4J026AC10
4J026BA05
4J026BA37
4J026BB01
4J100AB00P
4J100AB02P
4J100AB03P
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4J100AB09P
4J100AJ02Q
4J100AL03P
4J100AL03R
4J100AL04P
4J100AL04R
4J100AM02Q
4J100AS02R
4J100AS03R
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4J100BC04P
4J100BC04R
4J100BC43P
4J100CA03
4J100DA01
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4J100DA23
4J100FA03
4J100FA04
4J100JA58
4J100JA59
(57)【要約】
【課題】本発明が解決する課題は、耐熱性、耐衝撃性を低下させることなく、透明性、耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた押出シート、さらにその押出シートを2次成形してなる容器を提供することである。
【解決手段】本発明は、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を有するスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)40~99質量%と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)1~60質量%と、を含有する、スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を有するスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)40~99質量%と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)1~60質量%と、を含有する、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂組成物は、100万以上の高分子量成分と100万未満の分子量成分とに区分され、かつ前記100万以上の高分子量成分が、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、前記スチレン系単量体単位(a1)、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、前記スチレン系単量体単位(a1)、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を必須成分とし、
前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)全体に対し、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を2~30質量%含み、かつ前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を1~20質量%含む、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物中に含まれる全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して15~50質量%である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体であり、前記共重合体の総量に対してアクリル酸メチル単量体単位を0.5~15質量%含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
スチレン系単量体単位(c1)と共役ジエン系単量体単位(c2)と(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とを含有する(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d1)と共役ジエン系単量体単位(d2)とを含有するコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)、スチレン系単量単位(e1)と共役ジエン系単量体単位(e2)とを含有する耐衝撃性スチレン系樹脂(E)、スチレン系エラストマー(F)及びアクリル系エラストマー(G)からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
スチレン系単量体単位(c1)と共役ジエン系単量体単位(c2)と(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とを含有する(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)およびアクリル系エラストマー(G)をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d1)と共役ジエン系単量体単位(d2)とを含有するコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
無機粒子(H)を前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して0.05~3.0質量%さらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂を成形してなる押出シート。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂を射出成形してなる成形体。
【請求項13】
請求項11に記載の押出シートを2次成形してなる容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スチレン系樹脂組成物、並びに該スチレン系樹脂組成物を用いて成形される押出シート、射出成形体、及び該押出シートを2次成形してなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン-メタクリル酸共重合樹脂等に代表されるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂は、耐熱性、透明性、剛性及び外観に優れ、且つ安価であり、スチレンモノマーへの熱分解による再利用も容易でケミカルリサイクル特性にも優れることから、弁当、惣菜等の食品容器の包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。特に近年のコンビニエンスストアー等の業務用に使用する高出力電子レンジの普及により、高出力電子レンジでの調理時の温度にも耐えられる容器及びその容器を密封又は覆う蓋材に使用する材料として、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂が用いられている。しかし、強度の面で汎用スチレン系樹脂と比べて低いことが課題である。
例えば、特許文献1にはスチレン-メタクリル酸共重合体と耐衝撃性ポリスチレンとメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、MBS樹脂とも称する。)との混合物により、実用的な耐熱性を保ったまま、靭性を向上する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-44086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の技術では、機械強度の向上観が不十分であった。また食品と直接接触することを前提とする容器において、従来のスチレン-不飽和カルボン酸樹脂ではレンジで加熱された食品に由来する高温の油によって樹脂が侵され、容器の割れや強度低下を招くことから、食用油に対する耐性が求められている。
そこで、本発明が解決する課題は、耐熱性、機械強度及び耐熱油性に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することである。また、本発明が解決する別の課題は、耐熱性、機械強度及び耐熱油性に優れた、成形体、スチレン系樹脂組成物を含む押出シート及び当該押出シートを2次成形してなる食品容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とをそれぞれ所定量含有することにより、耐熱性、機械強度、耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた押出シート、射出成形体、並びに前記押出シートを2次成形してなる容器の実現に成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本開示は以下の通りである。
【0006】
[1]本開示は、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を有するスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)40~99質量%と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)1~60質量%と、を含有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0007】
[2]本実施形態において、100万以上の高分子量成分が、スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。
【0008】
[3]本実施形態において、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、前記スチレン系単量体単位(a1)、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を含有することが好ましい。
【0009】
[4]前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の2種を必須成分とし、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)全体に対し、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を2~30質量%含み、かつ前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を1~20質量%含む、[1]~[3]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0010】
[5]前記スチレン系樹脂組成物中に含まれる全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して15~50質量%である、[1]~[4]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0011】
[6]前記(メタ)アクリル系樹脂(B)はメタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体であり、前記共重合体の総量に対してアクリル酸メチル単量体単位を0.5~15質量%含有する、[1]~[5]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0012】
[7]スチレン系単量体単位(c1)と共役ジエン系単量体単位(c2)と(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とを含有する(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)、ブタジエン系単量体単位(d1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)とを含有するコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)、スチレン系単量単位(e1)とブタジエン系単量体単位(e2)とを含有する耐衝撃性スチレン系樹脂(E)、スチレン系エラストマー(F)及びアクリル系エラストマー(G)からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有する、[1]~[6]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0013】
[8]スチレン系単量体単位(c1)と共役ジエン系単量体単位(c2)と(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とを含有する(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)及びアクリル系エラストマー(G)をさらに含有する、[1]~[7]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0014】
[9](メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d1)と共役ジエン系単量体単位(d2)とを含有するコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)をさらに含有する、[1]~[8]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0015】
[10]無機粒子(H)を前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して0.05~3.0質量%さらに含有する、[1]~[9]のいずれか1項である、スチレン系樹脂組成物。
【0016】
[11]本実施形態の一態様は、[1]~[10]のいずれか1項であるスチレン系樹脂組成物を成形してなる押出シートである。
【0017】
[12]本実施形態の一態様は、[1]~[10]のいずれか1項であるスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形体である。
【0018】
[13]本実施形態の一態様は、前記[11]に記載の押出シートを2次成形してなる容器である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、耐熱性、機械強度及び耐熱油性に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することである。
本開示によれば、耐熱性、機械強度及び耐熱油性に優れた発泡押出シート及び電子レンジ調理可能な発泡容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例におけるトレー容器の腰強度の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ということもある。)は、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を有するスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)と、含有し、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の含有量が40~99質量%であり、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量が1~60質量%である。
また、本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、必要により、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)、スチレン系エラストマー(F)、アクリル系エラストマー(G)及び無機粒子(H)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
これにより、耐熱性、機械強度及び耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、100万以上の高分子量成分と100万未満の分子量成分とに区分され、かつ前記100万以上の高分子量成分が前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。当該100万以上の高分子量成分は、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)及び/又は(メタ)アクリル系樹脂(B)を含みうる。また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物中に含まれる100万以上の高分子量成分は、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)及び/又は(メタ)アクリル系樹脂(B)と、必要により配合される、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)、スチレン系エラストマー(F)及びアクリル系エラストマー(G)からなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂とを含みうる。
そのため、スチレン系樹脂組成物には、100万以上の高分子量成分の占める割合が少ない。
【0022】
「スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)」
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位(a1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)とを必須成分としてなる共重合樹脂(以下単に樹脂(A)ともいう)であり、スチレン系樹脂組成物全体の耐熱性向上に寄与する。また、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、必要により、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)である必須成分以外、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)及び/又はその他単量体単位(a3)をさらに有してもよい。スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の含有量は40~99質量%であり、好ましくは45~98質量%、より好ましくは50~97質量%、更に好ましくは55~95質量%である。スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の含有量を40質量%以上にすることで耐熱性の付与効果を十分に得ることができ、99質量%以下にすることにより、後述の(メタ)アクリル系樹脂(B)による耐熱油性向上に必要な耐油性の向上効果を十分に得ることができる。
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、ランダム共重合体あるいは交互共重合体であることが好ましい。
【0023】
<スチレン系単量体(a1)>
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)において、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の総量に対して、スチレン系単量体単位(a1)の含有量は60~98質量%であり、好ましくは70~97質量%、より好ましくは80~96質量%、より更に好ましくは82~95質量%である。スチレン系単量体単位(a1)の含有量が60質量%より少ないと流動性の低下を招き、98質量%よりも多いと後述の(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を所望量含有させにくくなり、特に、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)による耐熱性の向上効果が十分に得られない。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系単量体単位(a1)が、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して45~85質量%含有することが好ましく、好ましくは48~82質量%、より好ましくは52~79質量%、より更に好ましくは56~77質量%である。組成物全体におけるスチレン系単量体(a1)の含有量が上記範囲であると、耐油性の向上効果を十分に得ることができる。
【0024】
本実施形態において、スチレン系単量体(a1)としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、パラメチルスチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。特に工業的観点からスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体(a1)としては、これらを単独又は2種以上混合して使用できる。
なお、本明細書における「スチレン系単量体単位(a1)」とは、スチレン系単量体(a1)が重合された高分子を構成する繰返し単位を意味し、スチレン系単量体(a1)の重合反応又は架橋反応により、当該スチレン系単量体(a1)中の炭素-炭素二重結合が単結合(-C-C-)になった繰返し単位(又は構造単位)である。また、本明細書中のその他の単量体単位も同様の意味である。
【0025】
<(メタ)アクリル酸単量体(a2-1)>
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)において、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)などの不飽和カルボン酸系単量体単位は、耐油性、及び後述の(メタ)アクリル系樹脂(B)との相溶性を向上させる役割を果たす。前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の総量に対して、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は2~40質量%が好ましく、さらに好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%、より更に好ましくは8~25質量%、最も好ましくは10~20質量%の範囲である。また別の態様では、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は、好ましくは3~20質量%、より好ましくは4~17質量%、より更に好ましくは8~14質量%である。(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量が2質量%未満では耐熱性向上の効果が不十分である。また、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量が40質量%を超える場合は、樹脂粘度の増加による加工性の低下、吸水率上昇による成形時の気泡発生、製造時に粘度が高くなりすぎるため好ましくない。そして、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量を2質量%以上とすることで耐熱性の向上効果を得ることができ、当該含有量を40質量%以下にすることで粘度が上昇しすぎることを抑えることができる。特に(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量を8~25質量%とすることで(メタ)アクリル系樹脂(B)と良好な相溶性を得ることでき、(メタ)アクリル系樹脂(B)との混練時の強度向上効果を効率的に得ることができる。
【0026】
本実施形態において、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)は耐油性及び耐熱性向上させる役割を果たす。(メタ)アクリル酸単量体(a2-1)としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。特に工業的観点から(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)としては、これらを単独又は2種以上混合して使用してもよい。(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)は、耐熱性向上効果の大きいメタクリル酸が特に好ましい。
【0027】
-(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)-
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、さらに(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)を含有してもよい。当該(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)は耐油性と強度を向上させる役割を果たす。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)としては、以下の一般式(1):
【化1】
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、Rはエステル置換基を表し、具体的には、炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)で表されることが好ましい。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)のエステル置換基(上記一般式(1)中のR)の炭素原子数としては、10以下が好ましく、より好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下である。エステル置換基の炭素原子数が10を上回ると耐熱性低下の効果が大きく、好ましくない。
【0028】
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)としては、工業的に入手し易い点から(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく、耐熱性低下を抑えられる点からメタクリル酸メチルが特に好ましい。
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量の範囲は、例えば、2~40質量%であることが好ましく、より好ましくは3~32質量%、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは3~17質量%、より更に好ましくは3~12質量%、更により好ましくは4~10質量%である。
【0029】
<スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の好ましい形態>
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を含有する多元重合体であってもよい。すなわち、本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の二元共重合体の他に、スチレン系単量体(a1)と(メタ)アクリル酸単量体(a2-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2)とが共重合された三元共重合体あるいはスチレン系単量体単位(a1)と2種の(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)とを含有する三元共重合体であってもよい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂(B)との相溶性、表面硬度の向上、又は機械強度の向上の効果がさらに得られる。
特に、耐熱性及び表面硬度の向上を重視する場合、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)を含有することが好ましい。また、特に、外観及び機械強度の向上を重視する場合、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を含有することが好ましい。さらには、(メタ)アクリル系樹脂(B)との相溶性向上及び当該樹脂(B)との混合物に対して高い透明性を重視する場合、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位(a1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)とが共重合された三元共重合体であることが好ましい。
また、ポリマー連鎖中で(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)等の不飽和カルボン酸エステル単量体単位が(メタ)アクリル酸単位(a2-1)等の不飽和カルボン酸単量体単位と隣り合わせに配置されると、不飽和カルボン酸同士の架橋反応を抑制するなどの効果が得られる。
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)が、スチレン系単量体単位(a1)、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を有する場合、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は2~30質量%であることが好ましく、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量は0~20質量%であることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は2~30質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量は1~20質量%であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は2~25質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量は1.5~15質量%であり、より更に好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)の含有量は2~20質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量は2~13質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)の含有量を20質量%以下に抑えることで、成形加工時の流動性に優れた組成物を得ることができる。
【0030】
<その他単量体(a3)>
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)は、上述した、スチレン系単量体単位(a1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)を含む。)以外のその他単量体単位(a3)をさらに有してもよい。
すなわち、本実施形態において、当該その他単量体単位(a3)は、スチレン系単量体単位(a1)、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)と共重合可能であれば発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、上記に示した2つの単量体以外の単量体と共重合してよい。
例えば上記に示した3つの単量体以外のその他単量体(a3)としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)がその他単量体(a3)を有する場合、前記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の総量に対して、その他単量体(a3)の含有量は、0~12質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
<スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の特性>
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)中の、スチレン系単量体単位(a1)、(メタ)アクリル酸単量体単位(a2-1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2-2)及びその他単量体単位(a3)の含有量は、熱分解GC/MSを用いて各単量体単位が既知の樹脂により作成した検量線により定量することができる。
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.3~3.0、より好ましくは0.4~2.5、更に好ましくは0.4~2.0であることができる。上記メルトフローレートが0.3以上である場合、流動性の観点で好ましく、3.0以下である場合、樹脂の機械的強度の観点で好ましい。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0032】
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~40万であることが好ましく、更に好ましくは12万~32万である。重量平均分子量が10万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
一方、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、4万~15万であることが好ましく、更に好ましくは5万~12万、より更に好ましくは6~11万の範囲である。重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0033】
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)のビカット軟化温度は、好ましくは105~140℃、より好ましくは107~135℃、更に好ましくは108~130℃、より更に好ましくは115℃~125℃である。スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)のビカット軟化温度を105℃以上にすることで、組成物の耐熱性向上効果を得ることができ、140℃以下にすることにより(メタ)アクリル系樹脂(B)と混練しやすくなる。本明細書中におけるビカット軟化温度の測定方法はISO 306に準拠して測定したものである。
【0034】
<スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の製造方法>
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の製造法について以下説明する。
本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の製造法は、スチレン系単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸単量体(a2-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2-2))と、溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を重合して反応生成物を生成する重合工程と、前記反応生成物を回収する工程とを含むことが好ましい。
スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の重合方法としては、特に制限はないが、例えばラジカル重合法、その中でも、塊状重合法又は溶液重合法を好ましく採用できる。
具体的には、重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応の単量体、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程と、を備える。
【0035】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0036】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の例としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0037】
上記スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の重合方法としては、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。重合溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族溶媒が好ましく、必要に応じてアルコール類又はケトン類などの極性溶媒を組み合わせてスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の溶解性を調整した溶媒系を用いてもよい。
本実施形態において、重合溶媒は、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)を構成する全単量体100質量部に対して、3~35質量部の範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは5~30質量部の範囲である。前記全単量体100質量部に対して重合溶媒35質量部を超えると、重合速度が低下し、且つ得られる樹脂分子量も低下するので、樹脂の機械的強度が低下する傾向がある。また、重合溶媒が3質量部未満では重合時に除熱の制御が難しくなる恐れがある。全単量体100質量部に対して3~35質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物の任意成分である炭素原子数10以上の1価アルコールを重合系から添加する場合は、全重合溶媒100質量%に対して、炭素原子数10以上の1価アルコールを1~10質量%の割合で添加することが好ましい。
【0038】
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、一般的なスチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、分解抑制の観点から190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0039】
「(メタ)アクリル系樹脂(B)」
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、当該スチレン系樹脂組成物の総量に対して、(メタ)アクリル系樹脂(B)(単に樹脂(B)ともいう)を2~50質量%含有する。そして(メタ)アクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を有する。(メタ)アクリル系樹脂(B)を所定量含有することにより、スチレン系樹脂組成物全体の透明性と機械強度の向上に寄与する。
なお、本明細書における(メタ)アクリル系樹脂(B)とは(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の含有量が40質量%超である合成樹脂の総称である。
また、本発明において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、及び、スチレン系樹脂組成物中の100万以上の高分子量成分の割合は、後述の実施例の欄に記載の通り、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される値である。
【0040】
スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量は、1~60質量%であり、6~46質量%がより好ましく、10~42質量%がさらに好ましく、より更に好ましくは14~38質量%、最も好ましくは16~35質量%である。(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量を10質量%以上40質量%以下とすることにより、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)によって向上した耐熱性の低下を抑えることができる。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する不飽和カルボン酸系単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を含有し、好ましくは(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を含有する繰返し単位、又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を2種以上含有する繰返し単位であり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を2種以上含有することがさらに好ましい。
本実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)の合計含有量の上限は、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、80質量%以下、75質量%以下及び65質量%以下の順で好ましい。また当該含有量の下限は、0質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上及び10質量%以上の順で好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)の合計含有量は、上記上限と上記下限とを任意に組み合わせすることができる。
以下、本実施形態の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)について説明する。
【0041】
-(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)-
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)は、メタクリル酸エステル単量体単位及びアクリル酸エステル単量体単位を包含する。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n-ブチル)、アクリル酸(2-エチルヘキシル)、アクリル酸(n-オクチル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(n-オクチル)、メタクリル酸ベンジル等が挙げられ、工業的に入手しやすく安価な点から、アクリル酸メチル、アクリル酸(n-ブチル)、メタクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)は単独で又は混合して使用することができ、2種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を組み合わせることが好ましい。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する不飽和カルボン酸系単量体単位の好ましい態様としては耐熱性と熱分解性を両立する観点から、上記に挙げられている単量体単位のうち、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)を2種含むことが好ましく、メタクリル酸エステル種及びアクリル酸エステル種を共重合した組み合わせがより好ましく、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体が更に好ましい。
本実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の含有量の上限は、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、80質量%以下、75質量%以下及び65質量%以下の順で好ましい。また当該含有量の下限は、0質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上及び10質量%以上の順で好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の含有量は、上記上限と上記下限とを任意に組み合わせすることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の含有量の範囲は、例えば、0~100質量%であることが好ましく、より好ましくは2~99質量%、さらに好ましくは3~98質量%、より更に好ましくは4~98質量%、更により好ましくは5~98質量%、特に好ましくは6~98質量%である。
【0042】
-(メタ)アクリル酸単量体(b2)-
本実施形態において、(メタ)アクリル酸単量体(b2)としては、アクリル酸、又はメタクリル酸が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して、(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)の含有量の上限は、60質量%未満、58質量%以下、45質量%以下、35質量%以下及び25質量%以下の順で好ましい。また当該含有量の下限は、0質量%以上、0質量%超、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上及び10質量%以上の順で好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)の含有量は、上記上限と上記下限とを任意に組み合わせすることができる。
【0043】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態>
本実施形態の好ましい(メタ)アクリル系樹脂(B)としては、2元又は3元共重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル種(メタクリル酸エステル単量体単位)とアクリル酸エステル種(アクリル酸エステル単量体単位)とを共重合したメタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体であり、かつ前記メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体の総量に対してアクリル酸エステル種を0.5~20質量%含有する共重合体が好ましく、アクリル酸エステル種を1.0~15質量%含有する共重合体がより好ましく、アクリル酸エステル種を1.5~14質量%含有する共重合体が更に好ましい。また、本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体であり、かつ前記共重合体の総量に対してアクリル酸メチルを0.5~14質量%含有する共重合体がさらに好ましい。これにより、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)によって向上した耐熱性の低下をより効果的に抑制ができる。
【0044】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)において、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して40.0~100質量%であることが好ましく、より好ましくは50.0~99.5質量%、さらに好ましくは60.0~98.5質量%、より更に好ましくは70~98.0質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)の含有量を40.0~100質量%の範囲にすることにより、300℃以下での他樹脂との混練押出や成形加工に耐えられるようになる。そのため、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを混合した際の大幅な耐熱低下を抑えることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)の種類としては、耐熱性と工業的に入手し易く安価なことから、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルが好ましい。
【0045】
<その他単量体(b3)>
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)は、上述した(メタ)アクリル酸単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)以外のその他単量体単位(b3)をさらに有してもよい。すなわち、当該その他単量体(b3)は、(メタ)アクリル酸単量体(b2)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)と共重合可能であれば発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、上記に示した単量体以外の単量体と共重合してよい。例えば上記に示した単量体以外のその他単量体(b3)としては、スチレン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
本実施形態において、その他単量体単位(b3)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して、0~60質量%であることが好ましく、0~50質量%であることがより好ましく、0~40質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)としては5~100万が好ましく、より好ましくは6~90万、さらに好ましくは7~30万、より更に好ましくは8~20万である。(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)を5万以上にすることにより、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と混練した時に強度付与することができ、重量平均分子量(Mw)を100万以下とすることでスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)との粘度差を抑え、スチレン系樹脂組成物中に(メタ)アクリル系樹脂(B)が良好に分散することができ、かつ(メタ)アクリル系樹脂(B)に由来する未溶融物の発生を抑制し、該組成物を用いて外観に良好な発泡押出シートをはじめとする成形体を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、100万以上の高分子量成分を含有してもよい。100万以上の高分子量成分を含有する場合、耐熱性及び剛性の低減をより抑制し、耐熱油性をより向上させる。スチレン系樹脂組成物中に含有される100万以上の高分子量成分の占める割合は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。
なお、100万以上の高分子量成分を1.0質量%以下に制御する方法としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)をラジカル重合する際に、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)の種類及びその配合量、連鎖移動剤の種類及びその配合量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及びその配合量、重合溶媒の種類及びその配合量などによって制御することができる。
また、上述したように、100万以上の高分子量成分を、スチレン系樹脂組成物の総量に対して0.0質量%以上1.0質量%以下含有することがより好ましい。
【0048】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造方法>
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造方法は特に制限されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)と必要に応じてその他単量体を重合する塊状重合、溶媒を加えた溶液重合、あるいは水中に懸濁剤により有機層を分散させた懸濁重合などのプロセスにより製造することができる。
【0049】
<(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)>
本実施形態の好ましい態様として、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)と共役ジエン系単量体単位(c2)とスチレン系単量体単位(c1)とを含有する(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)(単に樹脂(C)とも称する。)をさらに含有することが好ましい。
スチレン系樹脂組成物は(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)を適量含有することで、強度に優れた成形体を成形できるスチレン系樹脂組成物が得られる。
本実施形態の(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)は、(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とスチレン系単量体(c1)と必要に応じてその他単量体成分とを重合してなる共重合体、及び必要に応じて配合されるその他樹脂を含有するポリマーマトリックス(C-1)中に、共役ジエン系単量体単位(c2)を主成分とするゴム状重合体の粒子(=ゴム状重合体粒子(C-2))を分散して得られる樹脂をいい、例えば、いわゆるABS樹脂でありうる。
換言すると、本実施形態の(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)は、ポリマーマトリックス(C-1)とゴム状重合体粒子(C-2)とを含有する。そして、前記ポリマーマトリックス(C-1)は、(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)、スチレン系単量体(c1)、及び必要に応じて配合されるその他単量体成分を重合してなる共重合体と、必要に応じて配合されるその他樹脂を含有する。また、前記ゴム状重合体粒子(C-2)は、共役ジエン系単量体単位(c2)を主成分とするゴム状重合体の粒子である。
なお、本明細書における「主成分とする」とは、全体に対して50質量%以上占有することをいう。したがって例えば、共役ジエン系単量体単位(c2)(例えば、ブタジエン系単量体単位)を主成分とするゴム状重合体の粒子とは、ゴム状重合体粒子(C-2)全体に対して共役ジエン系単量体単位(c2)(例えば、ブタジエン系単量体単位)を50質量%以上占有することをいう。
【0050】
スチレン系単量体(c1)としては例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、及びビニルナフタレンが挙げられる。このなかでも、汎用性の観点からスチレンが好ましい。スチレン系単量体(c1)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
本実施形態の共役ジエン系単量体単位(c2)としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられるが、工業的観点から1,3-ブタジエンが好ましい。共役ジエン系単量体単位(c2)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)としては例えば、アクリロニトリル単位、メタクリロニトリル単位等が挙げられる。このなかでも、工業的観点からアクリロニトリル単位が好ましい。(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)を構成するポリマーマトリックス(C-1)中の(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とスチレン系単量体単位(c1)との質量比は、(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)/スチレン系単量体単位(c1)=5/95~40/60が好ましく、さらに好ましくは10/90~35/65、より好ましくは15/85~30/70、最も好ましくは20/80~25/75の範囲である。特に前記質量比を20/80~30/70の範囲とすることで、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)と相溶性に優れ、スチレン系樹脂組成物に添加した時の機械強度向上効果が高くなる。
【0054】
(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)を構成する共役ジエン系単量体単位(c2)を主成分とするゴム状重合体粒子(C-2)の含有量としては、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の総量に対し、5~40質量%が好ましく、より好ましくは10~35質量%、さらに好ましくは15~30質量%の範囲である。ゴム状重合体粒子(C-2)の含有量を5~40質量%の範囲とすることで、スチレン系樹脂組成物に添加したときの剛性と衝撃性のバランスに優れる。
【0055】
(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)のゴム状重合体粒子(C-2)の平均粒子径としては、0.10~1.00μmが好ましく、より好ましくは0.13~0.90μm、更に好ましくは0.16~0.70μm、より更に好ましくは0.20~0.50μmの範囲である。特に前記平均粒子径を0.20~0.50μmの範囲とすることで、スチレン系樹脂組成物に衝撃性の向上効果に優れる。
本開示において、平均粒子径の測定方法は、後述の実施例の欄に示す通り、透過型電子顕微鏡による断面観察画像から計測される値である。
また、ゴム状重合体粒子(C-2)の好ましい形態としては、共役ジエン系単量体単位(c2)を構成成分とする中実のゴム状粒子をコアとし、当該コアを被覆するようスチレン系単量体単位(c1)及び(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)を含む重合体に被覆されている構造でありうる。
【0056】
(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の製造方法としては、あらかじめラジカル塊状重合又は溶液重合にて調製したポリマーマトリックス(C-1)の主成分となる樹脂と、ゴムラテックスにグラフト重合して調整したABSゴム状重合体粒子(C-2)を重合コンパウンドして調製する方法や後述の耐衝撃性スチレン系樹脂(E)のように、ゴム状重合粒子(C-2)の調製とポリマーマトリックス(C-1)とを同時に調製する方法があるが、必要に応じて最適な方法を選択することができる。
【0057】
(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)のポリマーマトリックス(C-1)中には(メタ)アクリロニトリル系単量体単位(c3)とスチレン系単量体(c1)と主成分とする共重合体以外に、その他のポリマーを(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の総量に対して25質量%以下の範囲で含んでもよい。例えば、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体などを添加することで、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の耐熱性を向上してもよい。
【0058】
本実施形態において、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.2~7.0g/10分、より好ましくは0.3~6.0g/10分、更に好ましくは0.4~5.0g/10分である。上記メルトフローレートが0.2~7.0g/10分の範囲であれば、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)及び(メタ)アクリル系樹脂(B)との混合性が良く、また機械的強度も良好である。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0059】
<コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)>
本実施形態の好ましい態様として、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、共役ジエン系単量体単位(d1)を含むゴム状粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)を主成分とする共重合体がグラフトしてなるコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)(単にコアシェル粒子(D)ともいう)をさらに含有することが好ましい。
本実施形態のコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)は、共役ジエン系単量体単位(d1)を含むゴム状粒子をコアとし、当該コアを少なくとも一部被覆するよう(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)を主成分とする共重合体が被覆された構造を有する。
【0060】
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の含有量としてはスチレン系樹脂組成物の総量に対して、1~45質量%であることが好ましく、より好ましくは2~40質量%、更に好ましくは3~35質量%、より更に好ましくは4~30質量%、最も好ましくは5~25質量%である。1質量%以上とすることで、機械強度及び低温衝撃耐性を向上することができ、25質量%以下とすることで耐熱性及び剛性低下を防ぐことができる。
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)を構成する共役ジエン系単量体(d1)は、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)は、メタクリル酸エステル単量体単位及びアクリル酸エステル単量体単位を包含する。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n-ブチル)、アクリル酸(2-エチルヘキシル)、アクリル酸(n-オクチル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(n-オクチル)、メタクリル酸ベンジル等が挙げられ、工業的に入手しやすく安価な点から、アクリル酸メチル、アクリル酸(n-ブチル)、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0061】
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)における共役ジエン系単量体単位(d1)の含有量は、好ましくは30~90質量%、より好ましくは40~85質量%、更に好ましくは50~80質量%、より更に好ましくは55~75質量%である。共役ジエン系単量体単位(d1)の含有量が高いほど、少ない添加量で機械的強度の向上が大きく好ましい。一方、共役ジエン系単量体単位(d1)の含有量が高すぎると、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)を主成分とするグラフト共重合体の含有量が少なくなり、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)との相溶性低下により、機械強度の向上効果が低下する原因となる。
【0062】
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d2)の含有量は、好ましくは10~40質量%、より好ましくは12~35質量%、更に好ましくは15~25質量%である。(メタ)アクリル酸メチル単量体(d1)の含有量を20~70質量%の範囲とすることで、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を構成するマトリックスポリマー部分との相溶性を確保することができ、機械強度の向上効果を効率的に得ることができる。なお、前記マトリックスポリマー部分とは、樹脂(A)及び樹脂(B)を必須に含有し、かつ任意成分であるポリマーマトリックス(C-1)、ポリマーマトリックス(E-1)、スチレン系エラストマー(F)、アクリル系エラストマー(G)、炭素原子数10以上の1価アルコール及び任意添加成分からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。換言すると、前記マトリックスポリマー部分とは、スチレン系樹脂組成物中に含まれる各種ゴム状重合体粒子及び無機粒子(H)以外の成分をいう。
また、前記各種ゴム状重合体粒子としては、ゴム状重合体粒子(C-2)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)及びゴム状重合体粒子(E-2)が挙げられる。
【0063】
<コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の粒子径>
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の平均粒子径としては0.05~0.35μmが好ましく、より好ましくは0.080~0.30μm、さらに好ましくは0.10~0.25μm、より更に好ましくは0.15~0.23μmである。特に粒子径を0.15~23μmの範囲とすることで、スチレン系樹脂組成物の強度付与効果に優れる。
本開示において、平均粒子径の測定方法は、後述の実施例の欄に示す通り、透過型電子顕微鏡による断面観察画像から計測される値である。
【0064】
<コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の製造方法>
コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の製造方法としては、共役ジエンゴムラテックス(例えば、ブタジエンゴムラテックス)粒子を製造してから、(メタ)アクリル酸エステル単量体(d2)を共重合させる乳化重合法が好ましい。
【0065】
<耐衝撃性スチレン系樹脂(E)>
本実施形態の好ましい態様として、スチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)(単に樹脂(E)とも称する。)を含有することが好ましい。スチレン系樹脂組成物はゴム変性スチレン系樹脂(E)を適量含有することで、強度に優れた成形体を作製できるスチレン系樹脂組成物が得られる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(E)は、スチレン系単量体(e1)と必要に応じてその他単量体(e3)からなる樹脂のポリマーマトリックス(E-1)中に、ゴム状重合体(E-2)の粒子(=ゴム状重合体粒子(E-2))を分散して、当該ゴム状重合体(E-2)の存在下でスチレン系単量体(e1)を重合することにより得られるいわゆるハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)でありうる。換言すると、本実施形態の耐衝撃性スチレン系樹脂(E)は、ポリマーマトリックス(E-1)とゴム状重合体粒子(E-2)とを含有する。そして、前記ポリマーマトリックス(E-1)は、スチレン系単量体(e1)及び必要に応じて配合されるその他単量体(e3)を重合してなる重合体を含有する。また、前記ゴム状重合体粒子(E-2)は、共役ジエン系単量体単位(e2)を主成分とするゴム状重合体(E-2)の粒子であり、必要によりスチレン系単量体単位(e1)を含む重合体により前記粒子の表面がグラフト化されていてもよい。
【0066】
本実施形態のスチレン系組成物中における耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは2~20質量%、より更に好ましくは3~15質量%である。耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の含有量を3~15質量%の範囲とすることにより、より強度に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0067】
-ゴム状重合体粒子(E-2)-
本実施形態において、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中のゴム状重合体粒子(E-2)を構成するゴム状重合体(E-2)としては、共役ジエン系単量体(e2)から形成されることが好ましく、共役ジエン系単量体単位(e2)を有する重合体であることがより好ましい。当該ゴム状重合体(E-2)の具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン、シス含有率の低いローシスポリブタジエン、又はこれらの両方を用いることができる。スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよく、これらの組合せであってもよい。これらのゴム状重合体は、一種を単独で用いてもよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
本願明細書において「共役ジエン系単量体」は、先述の共役ジエン系単量体(c2)、共役ジエン系単量体(d1)、共役ジエン系単量体(e2)及び共役ジエン系単量体(f2)の総称である。また、本明細書において「ゴム状重合体粒子」は、ゴム状重合体粒子(C-2)、ゴム状重合体粒子(D)及びゴム状重合体粒子(E-2)の総称である。
そして、当該共役ジエン系単量体は、ゴム状重合体粒子を構成する単量体単位のうち、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。
本実施形態におけるゴム状重合体粒子(E-2)は、当該ゴム状重合体(E-2)の分散粒子中に、スチレン系単量体単位(e1)を含む重合体又は当該スチレン系単量体単位(e1)及びその他単量体(e3)を含む重合体を内包していることが好ましい。当該内包の形態としては、スチレン系単量体単位(e1)を有する重合体のドメイン相を複数ゴム状重合体(E-2)が内包した、いわゆるサラミ構造型の分散粒子が好ましい。さらには、ゴム状重合体粒子(E-2)の表面には、スチレン系単量体単位(e1)を含む重合体又は当該スチレン系単量体単位(e1)及びその他単量体(e3)を含む重合体がグラフトされていてもよい。
【0068】
-その他単量体(e3)-
本実施形態の耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の任意成分であるその他単量体(単位)(e3)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸(n-ブチル)、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸(n-ブチル)、メタクリル酸イソプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられるが、工業的に入手し易い点から、アクリル酸(n-ブチル)、メタクリル酸メチルが好ましい。
本実施形態において、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中のその他単量体(単位)(e3)の含有量は、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の総量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
<共役ジエン系単量体単位(e2)の含有量>
本実施形態において、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中の共役ジエン系単量体単位(e2)の含有量は、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の総量に対して、好ましくは0.5~15.0質量%、より好ましくは1.0~13.0質量%、より更に好ましくは2.0~12.0質量%である。耐衝撃性スチレン系樹脂(E)及びスチレン系樹脂組成物中の共役ジエン系単量体単位(e2)の含有量は、後述の実施例の項に記載する手順、又はこれと等価な方法で測定することができる。
【0070】
<ゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径>
本実施形態における耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中のゴム成分であるゴム状重合体(E-2)は、スチレン系樹脂組成物中にゴム状重合体(E-2)の粒子(=ゴム状重合体粒子(E-2))として存在している。この場合のゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径は好ましくは0.3~5.0μm、より好ましくは0.5~4.0μm、更に好ましくは0.7~3.0μmである。耐衝撃性スチレン系樹脂(E)はゴム状重合体粒子(E-2)の存在下で撹拌機付きの反応器内でスチレン系単量体(e1)を重合させて得られるが、ゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径は、撹拌機の回転数、用いるゴム状重合体(E-2)の分子量などで調整することができる。本開示で、ゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径は、後述の実施例の欄で示す通り、透過型電子顕微鏡による断面観察画像から計測される値である。なお、上記ゴム状重合体粒子(E-2)は後述の二発泡シート中では発泡時に引き延ばされ、粒子径は150~400%程度大きくなる。
【0071】
本実施形態において、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.5~10.0g/10分、より好ましくは0.7~8.0g/10分、更に好ましくは1.0~7.0g/10分である。上記メルトフローレートが0.5~10.0g/10分の範囲であれば、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)及び(メタ)アクリル系樹脂(B)との混合性が良く、また機械的強度も良好である。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0072】
<耐衝撃性スチレン系樹脂(E)製造方法>
耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の製造方法は特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(E-2)の存在下、スチレン系単量体(e1)と必要に応じてその他単量体(e3)、及び溶媒を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、あるいはゴム状重合体(E-2)であるラテックス粒子の存在下、スチレン系単量体(e1)を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(E-2)、スチレン系単量体(e1)、並びに必要に応じてその他単量体(e3)や有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と、複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0073】
<スチレン系エラストマー(F)>
本実施形態の好ましい態様として、スチレン系樹脂組成物はスチレン系エラストマー(F)(単にエラストマー(F)とも称する。)をさらに含有することが好ましい。本発明のスチレン系樹脂組成物に使用するスチレン系エラストマー(F)は、ハードブロックをスチレン系単量体(単位)(f1)、ソフトブロックを共役ジエン系単量体(単位)(f2)のブロック共重合体のことである。エラストマー(F)としては、スチレン系単量体(単位)(f1)のハードブロックと、ブタジエン単量体単位のソフトブロックとを有するブロック共重合体がより好ましい。
当該スチレン系単量体(f1)としては、上記スチレン系単量体(a1)と同様の単量体が挙げられる。また、当該共役ジエン系単量体(f2)としては、上記共役ジエン系単量体(c2)と同様の単量体が挙げられる。
【0074】
スチレン系エラストマー(F)のブロック共重合の連鎖構造としては、スチレン系単量体(f1)-ブタジエンジブロック型、スチレン系単量体(f1)-ブタジエン-スチレン系単量体(f1)トリブロック型、ブタジエン-スチレン系単量体(f1)-ブタジエントリブロック型などが挙げられるが、機械強度向上観点からスチレン系単量体(f1)-ブタジエン-スチレン系単量体(f1)のトリブロック型のものが好ましい。
【0075】
スチレン系エラストマー(F)を構成するスチレン系単量体単位(f1)と共役ジエン系単量体単位(f2)の含有量としては、スチレン系単量体単位(f1)の含有量が30~70質量%であることが好ましく、より好ましくはスチレン系単量体単位(f1)の含有量が35~65質量%であり、共役ジエン系単量体単位(f2)の含有量は100質量%の残余である。スチレン系単量体単位(f1)の含有量が35~65%であれば、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)への分散性が適度に良くなり、機械的強度及び外観に優れたものが得られる。
スチレン-ブタジエンエラストマー等のスチレン系エラストマー(F)の製造法としてはラジカル重合法、アニオン重合法、高分子反応法が挙げられるが、工業的観点からアニオン重合法が好ましい。
【0076】
スチレン系エラストマー(F)中の共役ジエン系単量体(f2)の含有量が50質量%を超える場合、本実施形態のスチレン系組成物中におけるスチレン系エラストマー(F)の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して0.5~15質量%が好ましく、より好ましくは1~12質量%、より更に好ましくは2~7質量%でありうる。一方、スチレン系エラストマー(F)中の共役ジエン系単量体単位(f2)の含有量が50質量%以下の場合、スチレン系組成物中におけるスチレン系エラストマー(F)の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して3~30質量%が好ましく、より好ましくは5~20質量%より好ましくは7~15質量%である。上記範囲とすることで、スチレン系樹脂組成物へ添加した際に耐熱性の低下を抑えて機械強度を向上することができる。
【0077】
<アクリル系エラストマー(G)>
本実施形態の好ましい態様として、スチレン系樹脂組成物はアクリル系エラストマー(G)(単にエラストマー(G)とも称する。)を含有することが好ましい。本発明の樹脂組成物に使用するアクリル系エラストマー(G)はハードブロックをメタクリル酸メチル単量体単位(g1)、ソフトブロックをアクリル酸エステル単量体単位(g2)とするブロック共重合体のことである。アクリル系エラストマー(G)としては、メタクリル酸メチル単量体(単位)のハードブロックと、アクリル酸エステル単量体単位(g2)のソフトブロックとを有するブロック共重合体がより好ましい。
したがって、アクリル系エラストマー(G)はブロック共重合体であるが、(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ランダム重合体又は交互重合体である点で両者は相違する。
当該アクリル酸エステル単量体(g2)としては、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)のうちアクリル酸エステル単量体単位と同様の単量体が挙げられる。
【0078】
アクリル系エラストマー(G)のブロック共重合の連鎖構造としてはメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル(g2)ブロック型、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル(g2)-メタクリル酸メチルトリブロック型、アクリル酸エステル(g2)-メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル(g2)トリブロック型などが挙げられるが、機械強度向上観点からメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル(g2)-メタクリル酸メチルのトリブロック型のものが好ましい。
【0079】
アクリル系エラストマー(G)を構成するメタクリル酸メチル単量体(g1)とアクリル酸エステル単量体(g2)との含有量としては、メタクリル酸メチル単量体(g1)の含有量が20~65質量%が好ましく、より好ましくは30~55質量%である。一方、アクリル酸エステル単量体(g2)の含有量は100質量%の残余である。メタクリル酸メチル単量体(g1)の含有量が20~65%であれば、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)への分散性が適度に良くなり、機械的強度及び外観に優れたものが得られる。
【0080】
本実施形態のスチレン系組成物中におけるアクリル系エラストマー(G)の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.5~20質量%が好ましく、より好ましくは1~17質量%、より更に好ましくは2~15質量%であり、0.5~20質量%の範囲とすることで、スチレン系樹脂組成物へ添加した際に耐熱性の低下を抑えて機械強度を向上することができる。
【0081】
<無機粒子(H)>
本実施形態の好ましい態様として、スチレン系樹脂組成物は無機粒子(H)を含有することが好ましい。無機粒子(H)をスチレン系樹脂組成物中に添加することで、発泡成形時の発泡核剤としての役割を果たすとともに、組成物及び発泡シートを含む成形体の剛性向上に寄与する。
【0082】
無機粒子(H)としては例えば、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、タルク、ケイソウ土等のなどを用いることができる。なかでも食品包装用途への適用実績が豊富で安全性が担保されているタルクが好ましい。
【0083】
無機粒子(H)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量を100質量%としたときに、0.1~7.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~6.0質量部、より更に好ましくは0.3~4.0質量部である。0.1~7.0質量部の範囲とすることで、食品包装向け発泡シートに好適な発泡倍率のシートが得ることができる。
【0084】
無機粒子(H)のスチレン系樹脂組成物への添加法について特に制限はないが、スチレン系樹脂組成物を押出混練する際に直接ブレンドしても良いし、工業的な生産し易さからあらかじめ無機微粒(H)を既知の高濃度で含有した樹脂マスターバッチを作成して添加してもよい。
【0085】
「炭素原子数10以上の1価アルコール」
本実施形態における炭素原子数10以上の1価アルコール(以下単にアルコールともいう。)は任意成分であり、成形時のスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)のゲル化を抑制し、良好な外観のスチレン系樹脂組成物及びスチレン系樹脂組成物からなる成形体の外観向上に寄与する。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.03~0.8質量%、より好ましくは0.05~0.6質量%、より更に好ましくは0.07~0.5質量%である。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量を0.01質量%以上にすることで、成形加工時におけるスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)のゲル化を抑制することができ、1.0質量%以下にすることで耐熱性低下と臭気の発生を抑えることができる。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量を0.07~0.5質量%にすることで特に耐熱性を低下させることなく、十分なゲル抑制効果を得られる。
【0086】
炭素原子数10以上の1価アルコールとしては、水酸基を1つ含む炭素原子数10以上のアルコール類であり、アルコールを構成する炭素鎖中に酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよく、当該炭素鎖中に2重結合、3重結合、エステル結合、アミド結合など、単結合以外の結合を含んでもよい。炭素原子数としては16以上が好ましく、より好ましくは17以上、より更に好ましくは18以上50以下である。上記炭素原子数10以上の1価アルコールは、スチレン系樹脂組成物又はスチレン系樹脂組成物からなる成形体に含有されていればよい。したがって、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)又は(メタ)アクリル系樹脂(B)を重合する際に使用する重合溶液中に炭素原子数10以上の1価アルコールを存在(又は添加)させることにより、最終生成物である樹脂組成物中に1価アルコールを残留させてもよく、あるいはスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)を混錬する際に添加し押出機中で混合させることで含有させてもよい。
【0087】
本実施形態において、炭素原子数10以上の一価アルコールの沸点は、260℃以上が好ましく、更に好ましくは270℃以上、よりさらに好ましくは290℃以上である。アルコール類の沸点が260℃未満であると、揮発性が高くなり、成形時等に異臭が発生する傾向がある。
【0088】
上記炭素原子数10以上の1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、1-ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、1-オクタデカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、イソオクタデカノール、1-イソイソエイコサノール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0089】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は以下の一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、Rは炭素原子数12~20のアルキル基であり、Xはエチレンオキサイドの平均付加数を表し、1~15の整数である。)
好ましいアルコールの具体的な製品名としては日産化学社製「ファインオキソコール180」や花王社製「エマルゲン109P」等が挙げられる。
【0090】
「流動パラフィン」
本実施形態の好ましい態様としては、スチレン系樹脂組成物は、流動パラフィンをさらに含有することが好ましい。流動パラフィンを含有したスチレン系樹脂組成物は、流動性向上効果と樹脂組成物及びシート成形物の強度を向上させ、巻き取り時の割れを低減する効果を示す。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物中の流動パラフィンの含有量としては、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)を100質量部としたときに、好ましくは0.05~1.5質量部、より好ましくは0.10~1.0質量部、更に好ましくは0.30~0.7質量部である。0.05質量以下では流動性向上効果が得られず、1.5質量部以上にすると耐熱性の低下を招来する。
【0091】
本実施形態で用いられる流動パラフィンは、精製度や商習慣により流動パラフィンのほかに白色鉱油、ミネラルオイル、MO、ホワイトミネラルオイルなどと称される場合がある。
本実施形態で用いられる流動パラフィンは、好ましくは、n-d-M環分析法によるナフテン成分比率が20%以上、さらに好ましくは30%以上のものがスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)との相溶性に優れるため好ましい。n-d-M環分析法とは、高沸点石油留分の組成試験方法であり、屈折率(n)、密度(d)及び分子量(M)を求めることにより、オイル中の芳香環比率(%Ca)、ナフテン環比率(%Cn)、パラフィン鎖比率(%Cp)を求める方法(ASTM D3238)である。製品の色の観点から、白色鉱油中の多環式芳香族成分が3%以下である必要があり、好ましくは0.5%以下である。流動パラフィンでは通常芳香環は0%である。
【0092】
流動パラフィンの低沸点成分は少ないことが押出成形時の揮発分の問題を回避するために有効である。JIS K2254の減圧蒸留法又はガスクロマトグラフ法から常圧換算した値で5%溜出温度が400℃以上であることが好ましい。
流動パラフィンの動粘度は、上記低沸点成分が少なく、かつ、効果的にビカット軟化温度を下げ、ハンドリングも容易な粘度範囲が好適である。40℃で40mm2/s~120mm/sの範囲が好ましく、より好ましくは60~80mm2/sである。
【0093】
流動パラフィンを添加する方法は、特に制限は無く、流動パラフィン(E)を重合工程で添加する方法、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて混練する方法などがある。特に分散性が良くなることからスチレン共重体(A)製造時に添加することが好ましい。
本実施形態における流動パラフィンの定量及び同定は、当業者にとって一般的な方法により容易に確認できる。
例えば、スチレン系樹脂組成物又は当該組成物の成形体の断片を、テトラヒドロフランなどマトリックス樹脂を溶解する溶媒に溶解させて溶液を調製する。そして、この溶液をスターラーで攪拌させながら、n-ヘキサンを少量ずつ滴下してマトリックス樹脂及びゴム状重合体を沈殿させる。その後、ガラスフィルターで濾過した濾液を蒸発乾固させた後、n-ヘキサンにて定容し、ポリテトラフルオロエチレン製のメンブランフィルターに通した後、液体クロマトグラフィーにて分離して、組成物又は成形体中の流動パラフィンの含有量を算出する。また、流動パラフィンの分析については、熱分解GC-MS、H-NMR又は13C-NMRなどの各種分析装置によって同定、定量及び分子量の測定を行うことができる。
【0094】
「任意添加成分」
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記(A)~(H)成分及び炭素原子数10以上の1価アルコール以外に、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種の任意添加成分を、公知の作用効果を達成するために配合し、スチレン系樹脂組成物とすることもできる。本実施形態の任意添加成分としては、例えば、安定剤、高級脂肪酸系界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、又は鉱油等があげられる。配合の方法については特に規定はないが、例えば、重合時に添加して重合する方法、又は重合後溶融混練する前に、ブレンダーであらかじめ添加剤を混合し、その後、押出機又はバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0095】
上記酸化防止剤として、例えばオクタデシル-3-(3,5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(製品としてはイルガノックス1076)などのヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト(製品としてはイルガフォス176)などのリン系酸化防止剤等を挙げることができる。これらの安定剤をそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機やバンバリーミキサー等機械的装置で製品に安定剤を混合することもできる。
【0096】
本実施形態の好ましい態様として、スチレン系樹脂組成物は、高級脂肪酸系界面活性剤を含有することが好ましい。高級脂肪酸系界面活性剤の添加により、発泡シートのブロッキング防止効果が得られるほか、適度に添加することにより、樹脂組成物の混練時にペレット同士のトルク低減や、計量安定に寄与する。そのため、高級脂肪酸系界面活性剤の含有量としては、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.002~0.1質量部の範囲とすることが好ましい。上記効果が得られ、0.1質量部以下にすることでスチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)のゲル化剤として寄与してしまうことを防ぐことができる。
高級脂肪酸系界面活性剤の添加方法としては各樹脂の重合時に添加しても、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の混練時に追加で練り込んでも良い。
【0097】
高級脂肪酸系界面活性剤としては特に限定されるものではないが、例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられるが、中でもエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0098】
[100万以上の高分子量成分]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記樹脂(A)と上記樹脂(B)とを有し、必要により配合される、(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)、耐衝撃性スチレン系樹脂(E)、スチレン系エラストマー(F)、アクリル系エラストマー(G)、無機粒子(H)、炭素原子数10以上の1価アルコール及び任意添加成分からなる群から選択される1種又は2種以上を含みうる。そして、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)及び樹脂(B)を必須に含有し、かつ任意成分であるマトリックスポリマー部分と、各種ゴム状重合体粒子とを有する。そして、前記マトリックスポリマー部分は、ポリマーマトリックス(C-1)、ポリマーマトリックス(E-1)、スチレン系エラストマー(F)、アクリル系エラストマー(G)、炭素原子数10以上の1価アルコール及び任意添加成分からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。また、各種ゴム状重合体粒子は、ゴム状重合体粒子(C-2)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)及びゴム状重合体粒子(E-2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。
本実施形態のマトリックスポリマー部分において、前記マトリックスポリマー部分を100万以上の高分子量成分と、100万未満の分子量成分とに分けた場合、当該100万以上の高分子量成分が、スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.9質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下、より更に好ましくは0.7質量%以下、最も好ましくは0.6質量%以下の範囲である。
当該100万以上の高分子量成分を1.0質量%以下とすることにより、未溶融欠点の発生量が低下し、薄肉成形性と強度のバランスに優れた組成物が得られる。
なお、100以上高分子量成分とは、後述の実施例の欄で説明する通り、GPCから求められる各種平均分子量を算出する前の100万以上分子量の重量割合です。
【0099】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とを有し、かつ樹脂(A)及び樹脂(B)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、65~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは75~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(C)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及び樹脂(C)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(C)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(C)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とゴム状重合体粒子(D)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及びゴム状重合体粒子(D)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは75~95質量%、さらに好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とゴム状重合体粒子(D)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、ゴム状重合体粒子(D)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、80~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは85~97質量%、さらに好ましくは90~95質量%でありうる。
特に射出成形体のシャルピー衝撃強度を向上する点を重視する場合、スチレン系樹脂組成物が、樹脂(A)と樹脂(B)とゴム状重合体粒子(D)がスチレン系樹脂組成物に対して70~100質量%以上であることが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(E)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及び樹脂(E)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(E)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(E)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とエラストマー(F)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及びエラストマー(F)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とエラストマー(F)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、エラストマー(F)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とエラストマー(G)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及びエラストマー(G)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)とエラストマー(G)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、エラストマー(G)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と無機粒子(H)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及び無機粒子(H)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、60~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは75~98質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と無機粒子(H)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、無機粒子(H)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、75~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~98質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(E)とエラストマー(F)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(E)及びエラストマー(F)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは85~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(E)とエラストマー(F)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(E)、エラストマー(F)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(C)とエラストマー(G)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(C)及びエラストマー(G)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは75~95質量%、さらに好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)、樹脂(C)、エラストマー(G)と任意添加成分とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(C)、エラストマー(G)及び任意添加成分の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、80~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは85~97質量%、さらに好ましくは90~95質量%でありうる。
スチレン系樹脂組成物が樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(C)とエラストマー(G)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(C)及びエラストマー(G)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることで、低温衝撃強度と剛性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0100】
[スチレン系樹脂組成物の物性と性状]
以下に本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物の物性と性状について述べる。
<ビカット軟化温度>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は105℃以上であることが好ましく、より好ましくは109℃以上、より更に好ましくは112℃以上である。当該ビカット軟化温度を105℃以上とすることにより、一般の500W前後の電子レンジにおける加熱調理に適用可能なシート、容器が得られ、112℃以上にすることでコンビニエンスストアーなどに置かれる1000W以上の業務用高出力電子レンジでの加熱料理にも耐えることができる。当該ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して、荷重50N、昇温速度50℃/hの条件で測定することができる。
【0101】
<メルトマスフローレート>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の200℃でのメルトフローレートは0.1~2.0g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.5g/10分であり、さらに好ましくは0.4~1.0g/10分である。メルトフローレートを0.3g/10分以上にすることにより、良好な成形性が得られ、2.0g/10分以下にすることにより、強度に優れた樹脂を得ることができる。
【0102】
<共役ジエン系単量体単位の含有量>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量は、スチレン系樹脂組成物全体に対し、0~10質量%が好ましく、より好ましくは0.3~5.0質量%、より更に好ましくは0.5~4.8質量%、最も好ましくは0.6~4.0の範囲である。共役ジエン系単量体単位の含有量を0.6~4.0質量%の範囲とすることにより、低温衝撃強度と剛性のバランスに優れた組成物及び該組成物を成形してなる成形体、シート、容器を得ることができる。
なお、上記共役ジエン系単量体単位は、上記の通り、共役ジエン系単量体(c2)、共役ジエン系単量体(d1)、共役ジエン系単量体(e2)及び共役ジエン系単量体(f2)の総称である。
【0103】
<スチレン系樹脂組成物における(メタ)アクリル酸単量体又は(メタ)アクリル酸エステル単量体>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、2~20質量%含有することが好ましく、好ましくは3~15質量%、より好ましくは4~10質量%、より更に好ましくは5~8質量%である。組成物全体における(メタ)アクリル酸単量体の含有量が上記範囲であると、耐熱性向上効果を十分に得ることができる。
なお、上記全(メタ)アクリル酸単量体の含有量とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する全(メタ)アクリル酸単量体単位の合計量を示すため、樹脂(A)、樹脂(B)及びその他の成分(樹脂(C)、ゴム状重合体粒子(D)、樹脂(E)、エラストマー(G)及び任意添加成分)中の(メタ)アクリル酸単量体単位の各含有量も換算される。
【0104】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して6~55質量%含有することが好ましく、好ましくは10~50質量%、より好ましくは14~45質量%、更に好ましくは16~40質量%である。組成物全体における(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が上記範囲であると、耐熱油性の向上に必要な耐油性、及び機械強度の向上効果を十分に得ることができる。
なお、上記全(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量を示すため、樹脂(A)、樹脂(B)及びその他の成分(樹脂(C)、ゴム状重合体粒子(D)、樹脂(E)、エラストマー(G)及び任意添加成分)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の各含有量も換算される。
【0105】
上記範囲にスチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸単量体単位、及び全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を制御することにより、前記(メタ)アクリル酸単量体単位による耐熱性の向上効果及び前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位による耐油性向上効果を同時に効率的に得ることができ、結果として耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを成形してなる発泡シート、容器を得ることができる。
【0106】
<スチレン系樹脂組成物中のスチレン系成分の含有量の含有量>
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン系成分を含有する。ここでいうスチレン系成分とは、スチレン系単量体(単位)(a1)及びその他の成分(樹脂(B)、樹脂(C)、ゴム状重合体粒子(D)、樹脂(E)、エラストマー(F)及び任意添加成分)に含まれうるスチレン系単量体(単位)の総称をいう。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、スチレン系成分(全スチレン系単量体(単位))の含有量は50~85質量%であることが好ましく、より好ましくは55~83質量%、更に好ましくは58~80質量%である。50~85の範囲であると成形性、耐熱油性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0107】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物の好ましい態様は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、全スチレン系単量体単位の含有量は50~85質量%であり、全(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は2~20質量%であり、全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は6~55質量%である。また、別の好ましい態様は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、全スチレン系単量体単位の含有量は50~70質量%であり、全(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は3.5~10質量%であり、全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は17~45質量%であり、全共役ジエン系単量体単位の含有量は0.5~10質量%である。
【0108】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含有された全ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.08~5.0μmであることが好ましく、0.10~4.0μmであることがより好ましく、0.20~2.5μmであることがさらに好ましく、0.25~2.0μmであることがよりさらに好ましい。
全ゴム状重合体粒子、いわゆるみかけのゴム状重合体粒子の平均粒子径が上記範囲であると、スチレン系樹脂組成物に対する強度付与効果が最大になる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物全体における全ゴム状重合体粒子の総量(内包樹脂を含む)は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.5~8.0質量%であることが好ましく、0.6~6.5質量%であることがより好ましく、0.7~5.5質量%であることがさらに好ましく、0.8~4.5質量%であることがよりさらに好ましい。
スチレン系樹脂組成物に含有される全ゴム状重合体粒子の含有量が上記範囲であると、スチレン系樹脂組成物に対する強度付与効果が最大になる。
なお、全ゴム状重合体粒子の含有量とは、各ゴム状重合体粒子、すなわちABSゴム状重合体粒子(C-2)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)及びゴム状重合体粒子(E-2)がそれぞれ共役ジエン系単量体単位以外の成分(ポリマードメイン相)を包摂している場合は、当該共役ジエン系単量体単位以外の成分(ポリマードメイン相)も全ゴム状重合体粒子の含有量に含まれる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物全体における全ゴム状重合体粒子における共役ジエン系単量体の含有量(=ゴム量)は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0~10質量%が好ましく、より好ましくは0.3~5.0質量%、より更に好ましくは0.5~4.8質量%、最も好ましくは0.6~4.0の範囲である。強度と剛性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物及び該組成物を成形してなる成形体、シート、容器を得ることができる。
前記全ゴム状重合体粒子としては、ゴム状重合体粒子(C-2)とコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)とゴム状重合体粒子(E-2)とを全て包含する。
【0109】
[押出シート]
本開示の別の態様は、上述した本発明のスチレン系樹脂組成物を用いて形成されてなる押出シートを提供する。押出シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は2軸押出成形機で、1軸延伸機又は2軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができ、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
【0110】
<発泡押出シート>
本発明の発泡押出シートの製造方法としては従来公知の所謂押出発泡により得ることができる。即ち、押出機を用いて前記基材樹脂と必要に応じて添加される後述の発泡核剤(気泡調整剤)等の各種の添加剤を加熱、溶融、混練し、物理発泡剤を圧入してさらに混練した後、適切な樹脂温度に調整された発泡性溶融樹脂を、ダイを通して大気圧下に押出して発泡させることによって形成される。
【0111】
本実施形態において、発泡押出シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としてはノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水、ジエチルエーテル等を使用することができ、ブタン、イソブタン、ジエチルエーテルが好適であり、上記発泡から2種類以上を組みわせて使用することもできる。発泡成形時の発泡剤の添加量としては、発泡せしめるスチレン系樹脂組成物を100質量部としたときに、0.5~8.0質量部が好ましく、より好ましくは1.0~6.0質量部、更に好ましくは2.0~5.0質量部、より更に好ましくは2.5~4.5質量部の範囲である。特に2.0~5.0質量部の範囲とすることで樹脂の可塑化効果と発泡性に優れる。
【0112】
本実施形態において、発泡押出シートを形成する場合、押出発泡時の発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。例えば前記無機粒子(H)として挙げたタルク、シリカ、マイカ等を使用できる。発泡核剤の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量を100質量部としたときに、0.1~7.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~6.0質量部、より更に好ましくは0.3~4.0質量部である。0.1~7.0質量部の範囲とすることで、食品包装向け発泡シートに好適な発泡倍率のシートが得ることができる。発泡核剤を添加する方法としては、直接添加しても良いし、あるいはあらかじめ高濃度の発泡核剤を押出混練により分散させた樹脂ペレットを添加するマスターバッチを用いても良い。
【0113】
本実施形態において、発泡押出シートの厚みは0.3mm~5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.5~3.0mmの範囲である。0.5~3.0mmの範囲とすることで強度と生産性のバランスに優れた発泡押出シートを提供することができる。
【0114】
本実施形態において、発泡押出シートの見かけ密度は0.05~0.30g/cmであることが好ましく、より好ましくは、0.06~0.20g/cm、より好ましくは、0.07~0.10g/cmである。特に0.07~0.10g/cmの範囲とすることで強度と生産性のバランスに優れた発泡押出シートを提供することができる。
【0115】
本実施形態において、発泡押出シートの坪量は70~300g/mであることが好ましく、より好ましくは75~250g/m、更に好ましくは80~200g/m、より更に好ましくは90~150g/mである。特に80~200g/mの範囲とすることで強度と生産性のバランスに優れた発泡押出シートを提供することができる。
【0116】
本実施形態において、発泡押出シートの発泡倍率は5~18倍が好ましく、より好ましくは6~17倍、更に好ましくは7~16倍、より更に好ましくは8~15倍である。
【0117】
本実施形態において、JIS K7138:2006の方法に準拠して求められる発泡押出シートの独立気泡率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、83%以上がさらに好ましく、86%以上がより更に好ましい。特に独立気泡率を80%以上とすることで、脆弱な連続気泡が少ないことになるので、強度に優れた発泡シートを得ることができる。
【0118】
本実施形態において、発泡押出シートの平均気泡径は200~500μmが好ましく、より好ましくは250~450μmの範囲である。200~500μmの範囲とすることで強度と生産性のバランスに優れた発泡押出シートを提供することができる。
【0119】
本発明の発泡押出シートは、フィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。使用するフィルムの種類は、一般のポリスチレンに使用されるもので差し支えない。例えばPP(ポリプロピレン)/PS(ポリスチレン)ドライラミネートフィルム等が挙げられ、ラミネートするフィルムの厚みとしては5~200μmが好ましく、より好ましくは10~150μm、より更に好ましくは20~100μmの範囲である。20~100μmの範囲の範囲とすることで、軽量化、強度、耐油性補強のバランスに優れる。
本実施形態の好ましい発泡押出シートは、スチレン系樹脂組成物の発泡体層と、当該発泡体層の少なくとも一方の面上に設けられるポリスチレン層と、当該ポリスチレン層の綿上に設けられるポリプロピレン層と、を有する積層体である。当該構造により、食品などと接触しうる最外側の層にポリプロピレン層が設けられるため、耐油性に優れた容器を提供しうる。また、スチレン系樹脂組成物の発泡体層はスチレン系単量体単位を含有するため、前記ポリスチレン層との相溶性及び密着性に優れた容器を提供しうる。
【0120】
[2次成形品]
発泡シートを熱成形して得られる成形体は電子レンジ加熱食品用容器として好適に用いられるものである。熱成形法としては、真空成形や圧空成形等が挙げられる。かかる熱成形法は、短時間に連続して容器を得ることができるので、好ましい方法である。尚、前述のラミネートフィルムを熱圧着した積層シートを熱成形する場合、得られる成形体の内側に耐油性に優れるポリオレフィン系樹脂フィルムが位置するように成形することが好ましい。
【実施例0121】
次に本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂及び押出シート等の分析、評価方法は、下記の通りである。
【0122】
[各樹脂及び樹脂組成物の特性評価]
(1)分子量及び100万以上分子量成分比率の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物の平均分子量(Mn、Mw、Mz)及び100万以上の高分子量成分の比率を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で標準ポリスチレンを用いた検量線法により、標準ポリスチレン換算分子量として測定した。
測定機器:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:示差屈折率計
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。なお組成部中中にTHF不溶物がある場合は、0.2~0.4μm程度のメンブレンフィルターによりTHF不溶分除去して測定した。
【0123】
(2)スチレン系樹脂組成物中における炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量の測定
スチレン系樹脂組成物全体に対する炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量を、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
試料調製:樹脂1.0gをメチルエチルケトン5mLに溶解後、更に標準物質としてp-ジエチルベンゼンを200μg/gになるように調整したヘキサン5mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
測定機器:Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:DB-WAX
長さ:60m
膜厚:0.50μm
径:0.320mmφ
注入量:1μL
スプリット比:50:1
カラム温度:100℃で5分保持→10℃/分で130℃まで昇温→10℃/分で180℃まで昇温→180℃で10分保持→20℃/分で220℃まで昇温→220℃で10分保持
注入口温度:230℃
検出器温度:300℃
キャリアガス:ヘリウム
なお、炭素原子数10以上の1価アルコール(C)のピークの検出に際し、他ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプルの希釈率等の前処理や、使用するカラムや、検出条件を適宜調整してもよい。
【0124】
(3)各単量体単位の含有量の測定
以下の条件にて熱分解GC/MSにて実施例及び比較例で調製した樹脂組成物中に含まれる共役ジエン系単量体単位の含有量の測定を行なった。
試料調製:実施例及び比較例で調製した樹脂組成物を精密天秤にて50μgサンプルカップに秤量し、以下の条件で測定した。
測定条件
熱分解ユニット
機器 :フロンティアラボ製 PY-3030D
加熱炉温度 :600℃
GC
機器 :島津製作所製 GCMS-GP2020NX
カラム :Ultra Alloy-5
(長さ30m、膜厚0.25μm、径0.250mmφ)
カラム温度 :50℃に5分間保持し、10℃/分で昇温させ、100℃からは7℃/分で昇温させ、300℃で10分間保持した。
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/300
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :質量分析計(MSD)
なお、各単量体ピークの検出に際し、ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプル量の調整、使用するカラムや検出条件を適宜調整してもよい。
【0125】
(4)ゴム状重合体粒子(C-2)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)及び耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中のゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径
ゴム状重合体粒子(C-2)、コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)及び耐衝撃性スチレン系樹脂(E)中のゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径(μm)は、透過型電子顕微鏡による断面観察によって観察された200個のゴム状重合体粒子について、下記式(2):
平均粒子径=Σ(ni×Di)/Σ(ni×Di
{上記式(2)中、niは粒子径Diを有するゴム状重合体粒子の個数であり、Diはゴム状重合体粒子の長径と短径の平均値である。}
により5視野の画像から得られた粒子径を平均することで計算した。
【0126】
(5)メルトマスフローレート(MFR)の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)を、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
【0127】
(6)ビカット軟化温度の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度をISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。ビカット軟化温度が105℃を超えるものがシート成形物、容器成形物をレンジ加熱する際に想定する温度下での寸法安定性に優れ、特に115℃を超えるものについては実用温度にてほとんど寸法変化しない傾向であった。
【0128】
(7)耐熱油性の評価
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて2.5mmプレートに成形し、該スチレン系樹脂組成物プレートを105℃のヤシ油(和光純薬製)に15分間浸漬後、浸漬前後における寸法変化率を、以下の式により算出し、以下の評価基準で耐熱油性を評価した。
(熱油浸漬後の寸法変化率)
={(元の寸法)-(浸漬後の寸法)}/(元の寸法)×100
評価基準
◎・・熱油浸漬後、寸法変化無し
〇・・熱油浸漬後の寸法変化率が2%以下
△・・熱油浸漬後の寸法変化率が2%超~10%以下
×・・熱油浸漬後の寸法変化率が10%超
【0129】
(8)ソリッドシートの面衝撃の評価(kg・cm)
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を80℃で2時間以上乾燥した後、圧縮成型機にて0.7mm厚のソリッドシートを作成。8×8cmに切り出した後、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてによりフィルムインパクトを測定、n8平均を値とした。
【0130】
(9)ソリッドシートの低温衝撃強度(-30℃)
実施例及び比較例のスチレン系樹脂組成物を用いて220℃に設定した熱プレスにて厚さ0.7mmソリッドシートを作製し、6cm×6cmに切り出し、-30℃に設定した恒温槽にて2時間以上冷却したのち、東洋精機社製のデュポン衝撃試験機(No.451)を用いて、速やかに落錘衝撃強度を測定した。撃心突端の半径6.3mm、撃心受台の半径9.4mmとし、落錘衝撃強度は50%破壊の値を、(落下重錘の質量kg)×(高さcm)で求めた。
【0131】
(10)引張試験、曲げ試験及び衝撃試験
(10―1)スチレン系樹脂組成物のダンベル成形
実施例及び比較例で製造した各ペレット状樹脂組成物を東芝機械社製EC60NにてタイプAの4mmダンベルを以下の条件にて成形した。
ペレット乾燥:80℃で2時間以上
計量:63mm
射出時間:20秒
保圧時間:10秒
シリンダー温度:ノズル側からホッパー側にかけて220-240-220-200℃
スクリュー回転速度:100回/分
クッション:5.5mm
金型温度:45℃
冷却時間:25秒
(10-2)ダンベル引張試験(ダンベル引張破断点、ダンベルSSカーブ面積)
前項(10―1)で得られた4mm厚ダンベルについてダンベル引張試験をJIS K7161に準拠して実施(引張速度5mm/分)し、ダンベル引張破断点を測定した。また得られたSSカーブからダンベルSSカーブ面積(N・mm)を算出した。
(10-3)曲げ試験(曲げ弾性率、曲げ最大点)
前項(10―1)で得られたダンベル片から切削機を用いて80×10×4mmの試験片を作製した。JIS K7171に準拠し、曲げ速度2mm/分にて曲げ試験を実施し、曲げ弾性率と曲げ最大点を測定した。
(10-4)シャルピー衝撃試験(ノッチ有)
前項(10―1)で得られたダンベル片から切削機を用いてノッチを有する80×10×4mmの試験片を作製した。JIS K7111/1eAに準拠し、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0132】
[押出シートの特性評価]
(11)押出シートの耐熱性評価
実施例及び比較例で製造した押出シートのMD方向を長辺とし、10cm×1.5cmの短冊に切り出し、112℃に設定したオーブンに30分間入れた後、発泡押出シートの変形を測定し、熱変形から耐熱性について以下の評価をした。具体的には、上記寸法変化は、以下の式(I)により、熱変形前後の10cmの長さの変化量を測定し、n5平均を値とした。
式(I):寸法変化(%)=(オーブンに60分間入れた後の非発泡シートのMD方向の長さ-オーブンに入れる前の非発泡シートのMD方向の長さ)/オーブンに入れる前の非発泡シートのMD方向の長さ
◎:寸法変化なし
〇:寸法変化0.5%以下
△:寸法変化0.5%超2%以下
×:寸法変形2%超
【0133】
(12)押出シートの耐熱油性評価
実施例及び比較例で製造した押出シートのMD方向を長辺とし10cm×1.5cmの短冊を5枚切り出し、短冊中心部にヤシ油(和光純薬製)を約直系1cmに塗布後、直径円状110℃に設定したオーブンに15分間入れた後、オーブンから取り出した後の外観を以下の基準で評価した。
◎:5枚すべて変化なし
〇:5枚中、1~2枚が白化
△:5枚中3枚以上白化
×:5枚中3枚以上白化し、シートの割れが生じる
【0134】
(13)押出シートの面衝撃
実施例及び比較例で製造した押出シートを8×8cmに切り出した後、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてによりフィルムインパクトを測定、n8平均を値とした。上記測定は23℃に保たれた恒温室にて行った。
【0135】
(14)押出シートの低温衝撃強度(-30℃)
実施例及び比較例で製造した押出シートを6cm×6cmに切り出し、-30℃に設定した恒温槽にて2時間以上冷却したのち、東洋精機社製のデュポン衝撃試験機(No.451)を用いて、速やかに落錘衝撃強度を測定した。落下重錘の質量0.15kg、撃心突端の半径6.3mm、撃心受台の半径9.4mmとし、落錘衝撃強度は50%破壊の値を、(落下重錘の質量0.15kg)×(高さcm)で求め、以下の基準で評価した。
◎:2.0kg・cm超
○:1.0kg・cm超2.0kg・cm以下
△:0.1kg・cm超1.0kg・cm以下
×:0.1kg・cm以下
【0136】
[押出シートを2次成形してなる成形容器の特性評価]
実施例及び比較例にて製造した押出シートを熱板成型機にて、熱板温度を275℃、加熱時間5.0秒の条件で、口径200mm、高さ45mmの内嵌合蓋を嵌め込み可能な押出シート成形容器に成形し、以下の(14)、(15)に記載の評価に供した。
(15)押出シート成形容器の電子レンジ加熱時の耐油性
上記押出シート成形容器の中央部にMCTオイルを直径約1cmの円形に塗布し、霧吹きで湿らせ、ポリ塩化ビニリデンフィルムで水分が蒸発しないように覆ったサンプルを10点用意し、1500Wの電子レンジで30秒間加熱下後、MCTオイル付着部分の様子を目視で破れがないか確認し、以下の評価基準で評価した。
◎:10点すべて変化無し
〇:1~2点塗布部が破れた
△:3~7点塗布部が破れた
×:8点以上塗布部が破れた
(16)押出シート成形容器の衝撃強度(kg・cm)
上記押出シート成形容器の底面の中央部から縦80×横80mmの試験片を切り出し、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてにより、容器外側部分に衝撃を加える向きでフィルムインパクトを測定、n8平均を値とした。
【0137】
[発泡押出シートの特性評価]
(17)発泡押出シートの坪量(g/m
実施例及び比較例で製造した発泡押出シートから両端20mmを除き、0.10×0.10mのシート切片を作製した。各切片の質量を測定し、1.0mあたりに換算した質量を坪量(g/m)として算出した。
【0138】
(18)発泡押出シートの独立気泡率
発泡押出シートの独立気泡率はJIS K7138に準拠し測定した。
【0139】
(19)発泡押出シートの面衝撃
実施例及び比較例で製造した発泡押出シートを8×8cmに切り出した後、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてによりフィルムインパクトを測定、n8平均を値とした。
【0140】
(20)発泡押出シートの耐熱性の測定
実施例及び比較例で製造した発泡押出シートのMD方向を長辺とし10cm×1.5cmの短冊に切り出し、110℃に設定したオーブンに60分間入れた後、発泡押出シートの変形を測定し、熱変形から耐熱性について以下の評価をした。
具体的には、上記寸法変化は、以下の式(I)により、熱変形前後の10cmの長さの変化量を測定し、n5平均を値とした。
式(I):寸法変化(%)=(オーブンに60分間入れた後の発泡シートのMD方向の長さ-オーブンに入れる前の発泡押出シートのMD方向の長さ)/オーブンに入れる前の発泡押出シートのMD方向の長さ
◎:寸法変化なし
〇:寸法変化1%以下
△:寸法変化1%以上3%以下
×:寸法変形3%以上
【0141】
(21)発泡シートの耐熱油性測定
実施例及び比較例で製造したスチレン系樹脂組成物を成形してなる発泡押出シートにヤシ油(和光純薬製)を約1cm直径円状に5か所塗布し、80℃のオーブンにて10分加熱後、ヤシ油塗布部分の様子を目視で評価した。
〇:変化無し
△:塗布部の5か所中、1~2か所破れた
×:塗布部が3か所以上破れた
【0142】
(22)ポリオレフィン系樹脂フィルムと発泡押出シートとを積層した積層発泡シートの作製と評価
CPP25μm(サントックスKT)とCPS20μm(大石産業SPH)とがドライラミネートにより積層されたフィルム(45μm厚)であるCPP/PSラミネートフィルムと、実施例及び比較例で製造した発泡押出シートとを、195℃の熱ロールとバックアップロールの間を通して、該フィルムを発泡シートに圧着ラミネートし、積層発泡シートを得た。このとき、ライン速度は16m/分、熱ロールとバックアップロールの間隙を0.5mmに設定した。前項(18)及び(20)の手順にて、積層発泡シートの耐熱油性、面衝撃について評価した。
【0143】
[発泡押出シートを2次成形してなる成形容器の特性評価]
実施例及び比較例にて製造した発泡押出シートを熱板成型機にて、熱板温度を285℃、加熱時間5.0秒の条件で、口径200mm、高さ45mmの内嵌合蓋を嵌め込み可能な発泡容器に成形し、以下の(22)~(24)に記載の評価に供した。
【0144】
(23)発泡容器の電子レンジ加熱時の耐油性
上記発泡容器の中央部にMCTオイルを直径10mm程度の円形に塗布し、霧吹きで湿らせ、ポリ塩化ビニリデンフィルムで水分が蒸発しないように覆ったサンプルを10点用意し、1500Wの電子レンジで30秒間加熱下後、MCTオイル付着部分の様子を目視で破れがないか確認し、以下の評価基準で評価した。
◎:10点すべて変化無し
〇:1~2点塗布部が破れた
△:3~7点塗布部が破れた
×:8点以上塗布部が破れた
【0145】
(24)トレー容器の腰強度測定
上記発泡容器の腰強度を、図1に示す方法により測定した。より詳細には、発泡容器であるトレー容器1のTD方向に対して、クロスヘッド2を圧縮速度5mm/minで圧縮し、トレー容器1の腰強度(N)を測定した。
【0146】
(25)発泡容器の衝撃強度
上記発泡容器底の中央部から縦80×横80mmの試験片を切り出し、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてにより、容器外側部分に衝撃を加える向きでフィルムインパクトを測定、n8平均を値とし、以下の観点で評価した。
◎:4.0kg以上
〇:2.0kg・cm以上~4.0kg・cm以下
×:2.0kg・cm未満
2.0kgf未満の容器では、運搬容器の割れが発生する傾向であった。
【0147】
(26)発泡シートの低温衝撃強度(-30℃)
実施例・比較例にて作製した各発泡シートを-30℃に設定した恒温槽にて2時間以上冷却したのち、100gの重りを高さ120cmから落とした際にシートが割れるか評価した。
10個サンプルの内、何点破壊が認められたかを集計し、以下の観点で評価した。
◎:10個中1個も割れない
〇:10個中1~2個割れた
△:10個中3~4個割れた
×:10個中5個以上割れた
【0148】
[各樹脂の調製及びスチレン系樹脂組成物の製造例]
以下各樹脂の調整とスチレン系樹脂組成物の具体的な製造方法について述べる。
<スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)の製造例>
-樹脂(A1)の調製-
スチレン65.5質量部、メタクリル酸メチル3.3質量部、メタクリル酸5.8質量部、エチルベンゼン22.9質量部、2-エチル-1-ヘキサノール2.5質量部及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.027質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は130℃とした。単軸押出機の温度を210~230℃、圧力を10torrに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。脱揮された揮発成分を-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収し、スチレン系樹脂は樹脂ペレットとして回収した。上述の分析法によって得られた樹脂(A1)の物性を以下の表1に示す。
【0149】
-樹脂(A2)及び樹脂(A3)の調製-
表1に記載の各単量体のフィード量を用いて、上記樹脂(A1)の調製における重合条件により、上記樹脂(A1)と同様の手順で樹脂(A2)及び樹脂(A3)を調製した。得られた樹脂(A2)及び樹脂(A3)の組成及び物性を表1に示す。
【0150】
-樹脂(A4)の調製-
モノマーとしてスチレンのみを用いて、上記と同様の手順にてスチレン単独重合体として樹脂(A4)を表1に示す組成、物性にて得た。
【0151】
【表1】
【0152】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造例>
-樹脂(B1)の調製-
攪拌機を有する5L容器に水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、それらを混合・撹拌することで懸濁剤を調製した。次に60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、懸濁重合の準備を行った。80℃に達して恒温状態になったことを確認した後、重合原料としてメタクリル酸メチル1.52kg、アクリル酸メチル0.22kg、ラウロイロパーオキサイド0.99g、n-オクチルメルカプタン4.93g、及び上記懸濁剤を投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、92℃で60分間温度を保持した。続いて50℃まで冷却した後、20質量%硫酸を投入して懸濁剤を溶解させた。次いでその重合反応溶液を60L反応器から取り出し、篩目開き1.7mmの篩にかけて巨大凝集物を除去した後、ブフナー漏斗にて水層と固形物とを分離し、ビーズ状ポリマーを得た。当該ビーズ状ポリマーをブフナー漏斗上で、5回、約20Lの蒸留水で洗浄、脱水を繰り返した後、乾燥させ、単軸押出機を用いてペレタイズし、ペレット状樹脂として樹脂(B1)を得た。
【0153】
-樹脂(B2)~樹脂(B6)の調製-
表2に記載の各単量体のフィード量を用いて、上記樹脂(B1)の調製における重合条件により、上記樹脂(B1)と同様の手順で樹脂(B2)~樹脂(B6)を調製した。得られた樹脂(B2)~樹脂(B6)の組成及び物性を表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
<実施例で使用した(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)>
本実施例で用いた(メタ)アクリロニトリル-ジエン-スチレン系樹脂(C)の調製方法の概略は、まずブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体粒子(ゴム状重合体粒子(C-2))を高濃度で含む樹脂(C-2-1)を製造し、別途調製しておいたスチレン-アクリロニトリル共重合体(C-1-1)と前記ブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体粒子(C-2-1)(ゴム状重合体粒子(C-2)に対応)とを混練希釈し、ゴム状重合体粒子(C-2)とポリマーマトリックス(C-1)の濃度を所望の値に調整する手法である。以下、調製方法の具体例について説明する。
【0156】
-樹脂(C1)の調製-
ポリブタジエンゴムラテックス(平均粒子径0.280μm、固形分37質量%122質量部に対して、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部及び脱イオン水23質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。ついで、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル14質量部、スチレンを37質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部及びクメンハイドロパーオキシド0.15質量部からなる単量体混合液に対して、脱イオン水50質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部並びにエチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後にクメンハイドロパーオキシド0.02質量部を加えた後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完了した。
このようにして得られたスチレン-アクリロニトリル共重合体とブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体との混合物に、シリコーン樹脂製消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名TSA737)及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン(中京油脂株式会社製、製品名L-673)を添加した。その後、固形分濃度が10質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、70℃に加温した。その後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、スクリュープレス機にて固液分離を行った。この時の含水率は10質量%であった。これを乾燥させてブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体粒子を高濃度で含む樹脂(C-2-1)を得た。
上記樹脂(C-2-1)の組成比は、組成解析の結果、アクリロニトリル17質量%、ブタジエン45質量%、スチレン38質量%であった。またブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体はポリブタジエンゴムラテックス同様に粒子の形態をとり、その平均粒子径は0.30μmであった。
一方で、撹拌機付き完全混合型反応機に、スチレン63質量部、アクリロニトリル22質量部、エチルベンゼン15質量部からなる単量体混合物を連続的にフィードし、150℃、滞留時間2時間で重合反応を行った。得られた重合溶媒を押出機に連続的に供給し、脱揮押出機で未反応単量体、溶媒を回収し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(C-1-1)を得た。該共重合体(C-1-1)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR-IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル30質量%、スチレン70質量%であった。
上記の手順にて得られたブタジエン-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体粒子(ゴム状重合体粒子(C-2))を高濃度で含む樹脂(C-2-1)とスチレン-アクリロニトリル共重合体(C-1-1)を2軸押出機にて押出混練、ペレタイズすることで、ペレット状のABS樹脂としてABS樹脂(C1)を得た。得られたABS樹脂(C1)の組成及び物性を表3に示す。
【0157】
-ABS樹脂(C2)の調製-
各単量体のフィード量、重合条件を調整し、上記ABS樹脂(C1)と同様の手順により樹脂(C-2-1)を調製したのち、ABS樹脂90質量部とスチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体10質量部を2軸押出機にて押出混練、ペレタイズすることで、ペレット状のABS系コンパウンド樹脂としてABS樹脂(C2)を得た。得られたABS樹脂(C2)の組成及び物性を表3に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
<コアシェル型のゴム状重合体粒子(D)の製造例>
-ゴム状重合体粒子(D1)の調製-
撹拌機付耐圧容器に純水200質量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩0.002質量部、硫酸第一鉄0.0012質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩0.008質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム0.03質量部、を仕込み、脱酸した後に、ブタジエン100質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.05質量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.2質量部を添加し、それから6時間かけてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを1.4質量部滴下した後、反応溶液中のpH6.5~7.5において50℃で124時間保持し、転化率98重量%で、平均粒子径0.18μmのジエン系ゴムラテックスを得た。
続いて上記で得られたゴムラテックス(固形分約71部)を60℃に保持しながら、単量体としてのメタクリル酸メチル55質量部、アクリル酸(n-ブチル)5質量部を1時間にわたって添加した。また上記単量体の添加と同時に、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.09質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1質量部、の添加を開始し、それから反応溶液中のpHを6.5~7.5、温度を約60℃に保ちながら2時間かけて全量を添加した。さらに反応溶液を、約60℃で1時間保持して、平均粒子径200nmのグラフト共重合体ラテックスを調製し、酸化防止剤としてイルガノックス1076を1質量部添加した後、塩化カルシウム水溶液で凝析処理し、水洗、脱水乾燥を経ることで粉体としてゴム状重合体粒子(D1)を得た。ゴム状重合体粒子(D1)の組成及び物性を表4に示す。
【0160】
-ゴム状重合体粒子(D2)の調製-
各単量体のフィード量、重合条件を調整し、上記D1と同様の手順でD2を調製した。得られたゴム状重合体粒子(D2)の組成及び物性を表4に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
また、上記表4に示す組成物のほかに以下の製品を(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(d1)と共役ジエン系単量体単位(d2)とを含有するコアシェル型のゴム状重合体粒子(D)として実施例にて使用した。
(D3)三菱ケミカル社製メタブレンC-223A
(D4)三菱ケミカル社製メタブレンE-875A
【0163】
<耐衝撃性スチレン系樹脂(E)の製造例>
-耐衝撃性スチレン系樹脂(E1)の調製-
攪拌機を備えた層流型反応器3基(1.5リットル)を直列に連結し、その後に二段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いて、耐衝撃性スチレン系樹脂(E1)(以下、樹脂(E1))を製造した。撹拌機付き原料タンクにスチレン82.4質量部、エチルベンゼン9.0質量部、ゴム状重合体(E-2)として宇部興産社製ハイシスブタジエンゴム13HBを8.6質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部を投入、撹拌機でゴム成分を溶解後、この原料溶液を反応器に0.75リットル/hrの容量で供給し、第1段の反応機の温度を110~120℃、第2段の反応機の温度を120~130℃、第3段の反応機の温度140~150℃で重合を行った。また押出機温度は210~240℃、真空度は3kPa、最終反応器から出た重合液中の全固形分は70.5質量%であった。ゴム状重合体粒子(E-2)の平均粒子径は第1段層流型反応機の撹拌機の回転数を110rpmに調整することで制御した。得られた樹脂(E1)の組成、特性を表5に示す。
【0164】
-樹脂(E2)の調製-
ゴム状重合体(E-2)として宇部興産社製ハイシスブタジエンゴム15HBを用いて、上記と同様の手順にて樹脂(E2)を表5に示す組成、物性にて得た。
【0165】
-樹脂(E3)の調製-
モノマーとしてスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ゴム状重合体(E-2)として旭化成製スチレン-ブタジエン共重合体625Aを用いて、上記と同様の手順にて樹脂(E3)を表5に示す組成、物性にて得た。
【0166】
【表5】
【0167】
<実施例で使用したスチレン系エラストマー(F)>
本明細書の実施例においてスチレン系エラストマー(F)として以下の2種を用いた。
(F1)旭化成社製スチレン-ブタジエンブロック共重合体アサフレックス835
(F2)旭化成社製スチレン-ブタジエンブロック共重合体タフプレン125
<実施例で使用したアクリル系エラストマー(G)>
本明細書の実施例においてアクリル系エラストマー(G)として以下の3種を用いた。
(G1)クラレ社製クラリティLA4285
(G2)クラレ社製クラリティLA2270
(G3)クラレ社製クラリティLA2250
上記いずれのアクリル系エラストマー(G)である樹脂(G1)~(G3)もポリ(メタクリル酸メチル‐b‐アクリル酸(n-ブチル)‐b‐メタクリル酸メチル)トリブロック共重合体であり、以下の表6に示す性状を有する。
【0168】
【表6】
【0169】
<実施例で使用した炭素原子数10以上の1価アルコール>
本明細書の実施例において炭素原子数10以上の1価アルコールとして以下アルコール種を使用した。
日産化学社製のファインオキソコール180(5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノールを使用した。
花王社製のエマルゲン109P(ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテルモノアルコール)を使用した。
【0170】
<<スチレン系樹脂組成物及び発泡押出シートの製造例>>
以下にスチレン系樹脂組成物及び発泡押出シートの詳細な製造方法について示す。
[実施例1]
-スチレン系樹脂組成物の製造-
スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(A)として表1記載の樹脂(A1)を93.0質量部、(メタ)アクリル系樹脂(B)として表2記載の樹脂(B1)を7.0質量部、ファインオキソコール180を0.12質量部の比率でドライブレンドし、芝浦機械社製二軸押出機TEM26SSを用いて混練押出、ペレタイズを経て、ペレット状樹脂としてスチレン系樹脂組成物[1]を得た。スクリュー回転数150rpm、シリンダー温度は180~230℃、フィード量10kg/hとした。樹脂温度は250~260℃であった。スチレン系樹脂組成物[1]の性状及び物性の評価結果を表7-1に示す。
【0171】
-押出シートの製造-
上記にて得られたスチレン系樹脂組成物[1]を、窒素パージ可能で真空ベントを有する押出機へ供給した。押出機のシリンダー最大温度は250℃に設定した。Tダイから押出される樹脂組成物を鏡面仕上げされた金属ロールにて巻き取り、巻き取り速度と樹脂の吐出量を調整することにより、0.25mm厚の押出シート[1]を製造した。得られた押出シート[1]の評価結果を表7-1に示す。
【0172】
-発泡押出シートの製造-
上記にて得られたスチレン系樹脂組成物[1]100質量部、無機微粒子(H)としてタルク(松村産業社製ハイフィラー#12)を1.0質量部の質量比でドライブレンドし押出機へ供給した。押出機のシリンダー最大温度は250℃に設定した。溶融混練された樹脂組成物に発泡剤としてイソブタン/ノルマルブタンの質量比が65/35である混合ブタンをスチレン系樹脂組成物[1]100に対して4.0質量部圧入し、環状ダイより円筒状に押出し、発泡させた。得られた円筒状発泡体にエアーを吹き付けて冷却した後、冷却マンドレルによる冷却工程を経て、押出方向に円筒状発泡体を切り開くことで、発泡押出シート[1]を得た。
得られた発泡押出シート[1]の評価結果、及び該発泡押出シート[1]を2次成形してなる発泡容器の評価結果を表7-1に示す。
【0173】
[実施例2~34]
配合を下記表7のように変更した以外は実施例1と同様にしてスチレン系樹脂組成物[2]~[34]、押出シート[2]~[34]及び発泡押出シート[2]~[34]を得た。得られたスチレン系樹脂組成物[2]~[34]及び押出シート[2]~[34]、発泡押出シート[2]~[34]、押出シートを2次成形してなる容器及び発泡押出シートを2次成形してなる容器の評価結果を表7-1~表7-3に示す。
【0174】
【表7-1】
【0175】
【表7-2】
【0176】
【表7-3】
【0177】
[実施例35~42]
配合を下記表8のように変更した以外は実施例1と同様にしてスチレン系樹脂組成物[35]~[42]および押出シート[35]~[42]を得た。得られたスチレン系樹脂組成物[35]~[42]、押出シート[35]~[42]、及び押出シートを2次成形してなる容器の評価結果を表8に示す。
【0178】
【表8】
【0179】
[比較例1~3]
配合を下記表9のように変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物、押出シート、発泡押出シート、押出シートを成形してなる容器及び発泡押出シートを成形してなる容器得た。得られた樹脂組成物、押出シート、発泡押出シート、及び各シートを2次成形してなる容器の評価結果を表9に示す。
【0180】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明にて得られるスチレン系樹脂組成物は、耐熱性、透明性、剛性、耐熱油性及び外観に優れる。そのため本発明のスチレン系樹脂組成物は、押出成形でも非発泡シート又は発泡シート、それらを用いた食品包装容器、又は射出成形による成形品(電気製品部品、玩具、日用品、各種工業部品)などに幅広く使用可能で、特に電子レンジ加熱調理対応の包装材において有用であり、産業界に果たす役割は大きい。
図1