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特開2023-110934異物侵入防止機能を有するガスケット
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  • 特開-異物侵入防止機能を有するガスケット 図1
  • 特開-異物侵入防止機能を有するガスケット 図2
  • 特開-異物侵入防止機能を有するガスケット 図3
  • 特開-異物侵入防止機能を有するガスケット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110934
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】異物侵入防止機能を有するガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
F16J15/06 P
F16J15/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012471
(22)【出願日】2022-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107283
【弁理士】
【氏名又は名称】塩出 洋三
(72)【発明者】
【氏名】大道 康仁
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓資
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA12
3J040BA03
3J040BA08
3J040EA01
3J040FA01
3J040FA07
3J040FA11
3J040FA13
3J040HA02
3J040HA15
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】配管系統で配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に侵入するのを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミ等の異物についても、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる締め切り性能の不良を防止する。定期的なメンテナンスを行わなくてもストレーナの様に配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンス無での運用を可能とする。
【解決手段】配管系統に機器を取り付ける際に使用するガスケット1の底面に堰構造体4を設けることで、配管底部にたまったゴミ等の異物が配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に持ち込まれることを防止する。堰構造体4については、板状やメッシュ状、網状等が考えられ、配管内部の流体流れをできる限り阻害しない形で配管底部に流れる異物の侵入を防止できればどのような構造でもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れて互いに対向する二部材間に設置されシール性を保持するガスケットにおいて、流体が流れるガスケット本体の空洞部底部に、異物の侵入を防止するための堰構造体を設けたことを特徴とする異物侵入防止機能を有するガスケット。
【請求項2】
堰構造体が、板状構造物、メッシュ状構造物及び網状構造物のいずれかである請求項1に記載の異物侵入防止機能を有するガスケット。
【請求項3】
ガスケットを蒸気配管で使用する場合、逆止弁の入口側及び出口側にガスケットを設置するとともに、スチームトラップの入口側及び出口側にガスケットを設置し、堰構造体で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ系統から蒸気ドレンとともに排出されるようにすることができるとともに、スチームトラップにおいても堰構造体で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、スチームトラップバイパス弁から蒸気ドレンとともに排出されるようにした請求項1又は2に記載の異物侵入防止機能を有するガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁やドレントラップなどの機器の弁座面への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによるプロセスや各種接続機器の不具合を防止するガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器でゴミかみが発生すると、本来流れるべきではない系統へ流体が流れることで、プロセスや各種接続機器に不具合が生じることがある。ゴミかみとは、逆止弁やドレントラップなどの機器の弁座面への異物噛み込みであり、配管系統内で経年により発生した錆や系外より混入した異物が機器の弁座面に付着し、締め切り性能が不良となることが知られている。
【0003】
配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に異物が侵入することを防止するために、機器一次側にストレーナを設置することがあるが、ストレーナは定期的なメンテナンスが必要であり、メンテナンスを怠るとストレーナが目詰まりを起こすことで配管圧損の増大につながり、計画通りの流量が流れずプロセスに悪影響を及ぼすことがある。
水平配管においては配管底部には、重力によりゴミなどの異物が滞留しやすく、配管底部を伝って逆止弁にゴミが持ち込まれることがある。
【0004】
また、下記の特許文献1には、エンジンの上部にマフラとフィルタとを配設すると共に、上記フィルタ側の下方に冷却ファンを収納するブロワハウジングを配設した汎用エンジンの異物侵入防止装置であって、上記エンジンの排気ポートと上記マフラとの間に装着されるガスケットに、上記マフラと上記フィルタとの間に生じて上記ブロワハウジングに連通する隙間を覆う拡張部を延設した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-251148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水平配管では、配管底部に沿って異物が流れやすく、特に蒸気配管においては、配管底部には蒸気のドレン流れが生じて二層流の形態をなしている。蒸気ドレンは配管内を流れる蒸気流れと比べると、ゴミなどの異物を捕集しやすく、蒸気ドレンの流れを介して配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に異物を持ち込むことが予想される。
【0007】
また、ガスケットは、構造体において一次側/二次側の流体遮断を目的としており、構造体の流体遮断が必要な形状により、様々な形状に加工される。
ガスケット形状は任意に変更可能だが、あくまで流体遮断が目的であり、 ガスケットを設置することで他機器への異物侵入機能を付加する目的では、使用されることは無い。
本発明は、ガスケットに新たな付加機能を提案するものである。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器を配管に組み込む際に使用されるガスケットの底部のみにメッシュや板状、網状等の堰(せき)を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる締め切り性能の不良を防止するガスケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の異物侵入防止機能を有するガスケットは、流体が流れて互いに対向する二部材間に設置されシール性を保持するガスケットにおいて、流体が流れるガスケット本体の空洞部底部に、異物の侵入を防止するための堰構造体を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明のガスケットにおいて、堰構造体としては、板状構造物、メッシュ状構造物、網状構造物等を用いることができる。要するに、配管内部の流体流れをできる限り阻害しない形で、配管底部に流れる異物の侵入を防止できれば、どのような構造でもよい。
【0011】
本発明のガスケットにおいて、ガスケットを蒸気配管で使用する場合、逆止弁の入口側及び出口側にガスケットを設置するとともに、スチームトラップ(蒸気トラップ)の入口側及び出口側にガスケットを設置し、堰構造体で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ系統から蒸気ドレンとともに排出されるようにすることができるとともに、スチームトラップにおいても堰構造体で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、スチームトラップバイパス弁から蒸気ドレンとともに排出されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器を配管に組み込む際に使用されるガスケットの底部のみにメッシュや板状、網状等の堰を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる締め切り性能の不良を防止する。また、ガスケット底部の一部のみに堰を設置することで、配管流路の大部分には圧損増加となる障害物はなくなるため、定期的なメンテナンスを行わなくてもストレーナの様に配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンス無しでの運用が可能となる。
【0013】
ガスケットを蒸気配管で使用する場合、堰構造体(堰構造部)で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ(蒸気トラップ)から蒸気ドレンとともに排出されることで、堰構造体(堰構造部)の分解清掃が不要となり、メンテナンスレスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の異物侵入防止機能を有するガスケットの概略構成の一例を示す正面説明図である。
図2図2は本発明の異物侵入防止機能を有するガスケットの概略構成の一例を示す側断面説明図である。
図3図3は本発明の異物侵入防止機能を有するガスケットを水平配管に設けられたフランジ部に設置する場合の概略構成の一例を示す側断面説明図である。
図4図4は本発明の異物侵入防止機能を有するガスケットを蒸気配管で使用する場合の概略構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
ガスケットは、構造体において一次側/二次側の流体遮断を目的としており、構造体の流体遮断が必要な形状により、様々な形状に加工される。この限りで、ガスケット形状は任意に変更可能である。
【0016】
本実施の形態は、一例として、内外輪付渦巻きガスケットの内輪を特殊設計し、堰(せき)構造体を設けたものである。なお、堰構造体の高さについては、任意に決めることができる。また、堰構造体については、板状やメッシュ状、網状などが考えられ、配管内部の流体流れをできる限り阻害しない形で、配管底部に流れる異物の侵入を防止できれば、どのような構造でもよい。ガスケットの材質としては、ジョイントシート(ゴム系、黒鉛系、繊維系、テフロン(登録商標)系、その他複合材など)、セミメタル(金属製フープ材とフィラー材を組み合わせたもの等)、メタル材(金属系全般)などを用いることができる。
【0017】
図1図2は、本発明のガスケットの概略構成の一例を示している。
配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器を配管に組み込む際に使用されるガスケット1において、ガスケット本体2の空洞部3の底部には、異物の侵入を防止するための堰構造体4が設けられている。このガスケット1は、配管に設けられたフランジ部に設置してシール性を保持する他、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器を配管に組み込む際に使用される。
【0018】
図3は、図1図2に示すガスケットを水平配管に設けられたフランジ部に設置する場合の概略構成の一例を示している。
水平配管5に設けられたフランジ部6に、堰構造体4を組み込んだガスケット1を設置することで、逆止弁やスチームトラップなど(図3では図示略)へのゴミの流入防止を図る機能が発揮される。
【0019】
このように、配管系統に機器を取り付ける際に使用するガスケットの底面に堰構造体を設けることで、配管底部にたまったゴミなどの異物が配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に持ち込まれることを防止する。詳しくいうと、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器を配管に組み込む際に使用されるガスケットの底部のみにメッシュや板状、網状等の堰を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、配管系統に設置される逆止弁やドレントラップ等の機器への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる締め切り性能の不良を防止する。また、ガスケット底部の一部のみに堰を設置することで、配管流路の大部分には圧損増加となる障害物はなくなるため、定期的なメンテナンスを行わなくてもストレーナの様に配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンスレスでの運用が可能となる。また、スチームトラップ系統の取り出し手前に堰構造のガスケットを設けることで、スチームトラップ系統へのドレン排出区画を明確にでき、効率的な蒸気ドレンの排出を実現することが出来る。
【0020】
図4は、ガスケットを蒸気配管で使用する場合に、逆止弁前後にスチームトラップ(蒸気トラップ)を設置して、蒸気ドレンによる自動洗浄効果(メンテナンスレス)を達成できるようにした構成の一例である。
【0021】
逆止弁7の入口側及び出口側にガスケット1を設置するとともに、スチームトラップ(蒸気トラップ)8、9の入口側及び出口側にガスケット1を設置し、ガスケット1に設けられた堰構造体4で逆止弁7への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁7の前後に設置のスチームトラップ8、9から蒸気ドレンとともに排出されるようにすることができる。スチームトラップ8は、具体的には、入口配管10から分岐した蒸気ドレン排出配管11に設けられている。同様に、スチームトラップ9は、具体的には、出口配管12から分岐した蒸気ドレン排出配管13に設けられている。スチームトラップ8、9手前にはドレン中ゴミを排出するバイパスライン14、15が設けられている。16、17はスチームトラップバイパス弁である。
ガスケット1に設けた堰構造体4で逆止弁7への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ8、9から蒸気ドレンとともに排出されることで、堰構造体4の分解清掃が不要となる。また、スチームトラップ系統の取り出し手前に堰構造のガスケットを設けることで、スチームトラップ系統へのドレン排出区画を明確にでき、効率的な蒸気ドレンの排出を実現することが出来る。
【符号の説明】
【0022】
1 ガスケット
2 ガスケット本体
3 空洞部
4 堰構造体
5 水平配管
6 フランジ部
7 逆止弁
8、9 スチームトラップ
10 入口配管
11、13 蒸気ドレン排出配管
12 出口配管
14、15 バイパスライン
16、17 スチームトラップバイパス弁
図1
図2
図3
図4