(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011094
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】感圧転写式粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230117BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114708
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岸本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】落合 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 順一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隆
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA06
4J004AB01
4J004BA02
4J004BA08
4J004FA08
4J040DM001
4J040MA09
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA10
4J040PA23
4J040PA27
(57)【要約】
【課題】粘着剤の塗布面積率をより高めつつ、それでいて糊切れのよい感圧転写式粘着テープ又は転写具を提供する。
【解決手段】転写方向に延伸するテープ基材11とテープ基材11の一面に粘着剤を塗工してなる複数個の粘着剤ブロック122とを備え、テープ基材11の各部が転写ヘッド33により順次転写対象面に押し付けられることによって粘着剤12が転写対象面に転写されるように構成された感圧転写式粘着テープ1であって、粘着剤ブロック122は、外縁に角を有しない主たる粘着剤領域13と、主たる粘着剤領域13よりも小さな面積を有し主たる粘着剤領域13の一部から一体に突出させた極小粘着剤領域14とを備えたものであり、隣り合う粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13間に形成される隙間に他の粘着剤ブロック122の極小粘着領域が入り込むようにして複数個の粘着剤ブロック122を空隙部を介して配列させた粘着テープ1を構成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写方向に延伸するテープ基材と、このテープ基材の一面に粘着剤を塗工してなる複数個の粘着剤ブロックとを備え、前記テープ基材の各部が転写ヘッドにより順次転写対象面に押し付けられることによって前記粘着剤が前記転写対象面に転写されるように構成された感圧転写式粘着テープであって、
前記粘着剤ブロックは、外縁に角を有しない主たる粘着剤領域と、この主たる粘着剤領域よりも小さな面積を有し当該主たる粘着剤領域の一部から一体に突出させた極小粘着剤領域とを備えたものであり、
隣り合う粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域間に形成される隙間に他の粘着剤ブロックの極小粘着領域が入り込むようにして複数個の粘着剤ブロックを空隙部を介して配列させている感圧転写式粘着テープ。
【請求項2】
前記極小粘着剤領域が、先細り形状のものである請求項1記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項3】
前記極小粘着剤領域が、前記主たる粘着剤領域から前記転写方向に沿って先方側に突設されている請求項1又は2記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項4】
前記極小粘着剤領域が、前記主たる粘着剤領域から前記転写方向に沿って後方側にも突設されている請求項3記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項5】
前記主たる粘着剤領域の外縁と、これに連なる前記極小粘着剤領域の外縁とが、その接線の伸びる方向又は湾曲度合いが変化する転換点を介して連続している請求項1、2、3又は4記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項6】
前記主たる粘着剤領域の外縁と、極小粘着剤領域の外縁とが、前記転換点において同一の接線を有するようにして連続している請求項5記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域の外縁と、当該粘着剤ブロックに最も近い他の粘着剤ブロックの極小粘着剤領域の外縁との間に、略一定幅の空隙部が形成されるように構成されている請求項5又は6記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項8】
前記主たる粘着剤領域は、外縁の一部又は全部が凸曲線により形成されたものであり、
前記極小粘着剤領域は、外縁が先端同士を漸近させた一対の凹曲線により形成されたものであり、
前記主たる粘着剤領域の凸曲線と前記極小粘着剤領域の凹曲線とが前記転換点において連続している請求項5又は6記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項9】
前記主たる粘着剤領域は、円弧状の凸曲線を外縁とするものであり、
前記極小粘着剤領域の外縁を形成する凹曲線は、他の粘着剤ブロックの主たる接着剤領域の外縁である前記凸曲線との間に略一定幅の空隙部を形成し得る形状のものである請求項8記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項10】
隣接する前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域同士を部分的に重なり合わせている請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の感圧転写式粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域の面積に対する極小粘着剤領域の面積の比は、約0.071以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の感圧転写式粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封筒等の紙類その他の被着物を接着する用途に供される粘着剤を支持する感圧転写式粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「テープ糊」、即ち長尺なテープ状の基材に粘着剤層が設けられた感圧転写式粘着テープ、そしてこれを装填した転写具が広く流通している(例えば、下記先行技術文献を参照)。転写具は、感圧粘着式粘着テープを巻いた状態に保持する繰出リール、テープが巻き掛けられる転写ヘッド、及びテープを巻き取る巻取リールを具備する。
【0003】
転写具を使用して粘着剤を被着物の転写対象面、例えば封筒のフラップ(折返し片、蓋)等に塗り付けようとするユーザは、転写具を把持し、転写ヘッドを転写対象面に押し当て、その状態で転写具を一定の方向に引くように操作する。この操作を通じて、粘着剤を裏打ちするテープ基材が繰出リールから繰り出されて転写ヘッドに向かい、テープ基材及びこれに支持された粘着剤が転写ヘッドを介して転写対象面に押圧され、その帰結として粘着剤がテープ基材から転写対象面に転写される。粘着剤を転写した後のテープ基材は、繰出リールに連動する巻取リールに巻き取られて回収される。
【0004】
この種の製品にあって、粘着力とともに重要視されているのが、使用する際の「糊切れ」のよさである。糊切れが悪いと、テープ基材と転写対象面とで粘着剤を取り合うような綱引きが起こり、両者の間で粘着剤が糸を引きながらちぎれ、粘着剤の一部がテープ基材上に残留してしまう。
【0005】
糊切れを良化する有効な手法として、従来より、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷技術を援用し、無数の小さな粘着剤のブロックをテープ基材上に間欠的に塗工するドットパターン塗工が採用されている。ドットパターンの別の長所として、粘着剤を転写対象面に転写するときに、点在する粘着剤ブロックの間から空気を抜いて逃がすことができ、粘着剤と被着物との間に空気が閉じ込められて気泡や皺を生ずる問題を有効に回避できる点も挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“テープのり<ドットライナー>|コクヨ ステーショナリー”(ドットライナー、コクヨはそれぞれ登録商標)、[online]、令和3年、コクヨ株式会社、[令和3年5月11日検索]、インターネット<URL:https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/dotliner/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既製の粘着テープにおける粘着剤層は、互いに分離した多数個の円形ドット状の粘着剤ブロックが、互いに等間隔で規則正しく配列された構造をなしている。このようなドットパターンでは、必然的に、粘着剤が塗工されていない空隙がある程度以上生じることになる。
【0008】
被着物を確実に接着し、その接着強度を強めるためには、単位面積あたりに占める粘着剤の割合である塗布面積率をできる限り高くする、換言すれば、粘着剤ブロックの密度が増すよう粘着剤ブロック間の空隙をできる限り狭めることが望ましい。塗布面積率が低いと、粘着テープから被着物の転写対象面に粘着剤を転写したときに、転写対象面上で粘着剤が存在しない空隙の面積が大きくなる。要するに、塗布される粘着剤の量が減少し、その分だけ接着強度が弱まる懸念がある。
【0009】
だが、円形ドットである粘着剤ブロックの径を大きくしても、必ずしも粘着剤ブロック間の空隙の面積は縮小しない。翻って、粘着剤ブロックの径を小さくすることには、技術的な限界がある。
【0010】
本発明は、粘着剤の塗布面積率をより高めつつ、それでいて糊切れのよい感圧転写式粘着テープ又は転写具を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するべく、本発明では、転写方向に延伸するテープ基材と、このテープ基材の一面に粘着剤を塗工してなる複数個の粘着剤ブロックとを備え、前記テープ基材の各部が転写ヘッドにより順次転写対象面に押し付けられることによって前記粘着剤が前記転写対象面に転写されるように構成された感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤ブロックは、外縁に角を有しない主たる粘着剤領域と、この主たる粘着剤領域よりも小さな面積を有し当該主たる粘着剤領域の一部から一体に突出させた極小粘着剤領域とを備えたものであり、隣り合う粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域間に形成される隙間に他の粘着剤ブロックの極小粘着領域が入り込むようにして複数個の粘着剤ブロックを空隙部を介して配列させている感圧転写式粘着テープを構成した。
【0012】
前記極小粘着剤領域の形状は、先細り形状のものであり得る。
【0013】
前記極小粘着剤領域が、前記主たる粘着剤領域から前記転写方向に沿って先方側に突設されているとすると、一個の粘着剤ブロックについて、その極小粘着剤領域が同ブロックの主たる粘着剤領域よりも早く転写対象面に転写されることになる。
【0014】
前記極小粘着剤領域が、前記主たる粘着剤領域から前記転写方向に沿って後方側にも突設されているとすると、一個の粘着剤ブロックについて、その極小粘着剤領域が同ブロックの主たる粘着剤領域よりも遅れて転写対象面に転写されることになる。
【0015】
前記主たる粘着剤領域の外縁と、これに連なる前記極小粘着剤領域の外縁とは、その接線の伸びる方向又は湾曲度合いが変化する転換点を介して連続していることが好ましい。
【0016】
その場合において、前記主たる粘着剤領域の外縁と、極小粘着剤領域の外縁とが、前記転換点において同一の接線を有するようにして連続していることがある。
【0017】
前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域の外縁と、当該粘着剤ブロックに最も近い他の粘着剤ブロックの極小粘着剤領域の外縁との間には、略一定幅の空隙部が形成されるように構成され得る。
【0018】
より具体的には、前記主たる粘着剤領域が、外縁の一部又は全部が凸曲線により形成され、前記極小粘着剤領域が、外縁が先端同士を漸近させた一対の凹曲線により形成されたものであり、前記主たる粘着剤領域の凸曲線と前記極小粘着剤領域の凹曲線とが前記転換点において連続している態様をとり得る。
【0019】
特に、前記主たる粘着剤領域は、円弧状の凸曲線を外縁とし、前記極小粘着剤領域の外縁を形成する凹曲線は、他の粘着剤ブロックの主たる接着剤領域の外縁である前記凸曲線との間に略一定幅の空隙部を形成し得る形状のものである。
【0020】
隣接する前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域同士は、部分的に重なり合うことがある。
【0021】
前記粘着剤ブロックの主たる粘着剤領域の面積に対する極小粘着剤領域の面積の比は、例えば、約0.071以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粘着剤の塗布面積率をより高めつつ、それでいて糊切れのよい感圧転写式粘着テープ又は転写具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】同実施形態の転写具をリフィルカートリッジと本体ケースとに分解した状態を示す側面図。
【
図3】同実施形態の転写具の転写ヘッド及び感圧転写式粘着テープを拡大して示す側面図。
【
図4】同実施形態の感圧転写式粘着テープの斜視図。
【
図5】同実施形態の感圧転写式粘着テープの粘着剤層の構造を示す平面図。
【
図6】同実施形態の感圧転写式粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤ブロックの形状を拡大して示す平面図。
【
図7】本発明に関連する参考例の感圧転写式粘着テープの粘着剤層の構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図3に、本実施形態における感圧転写式粘着テープ1を具備した転写具2を示している。本転写具2は、粘着テープ1の繰出リール31及び巻取リール32並びに転写ヘッド(ローラ)33を有するリフィルカートリッジ3と、リフィルカートリッジ3が装着されてこれを保持する本体ケース4と、本体ケース4にヒンジを介して回動可能に連結したアーム5とを主要な要素とする。
【0025】
図2は、リフィルカートリッジ3を本体ケース4に装填する前(又は、リフィルカートリッジ3を本体ケース4から脱離させた後)の状態を示している。感圧転写式粘着テープ1は、予め繰出リール31に巻き回されている。繰出リール31から繰り出される粘着テープ1は、回転可能に軸承された円筒状の転写ヘッド33の外周に巻き掛けられ、これを経由して巻取リール32に巻き取られる。
【0026】
本体ケース4には、繰出リール31を軸支する主ホイール41と、巻取リール32を軸支する副ホイール42と、両ホイール41、42間に介在するギア43とが組み付けられている。これらホイール41、42及びギア43により、繰出リール31の回転に従動して巻取リール32が回転する。本転写具2では、リール31、32及び当該リール31、32を支持するホイール41、42、並びにギア43が、粘着テープ1を順次転写ヘッド33に供給するテープ供給機構を構成する。
【0027】
アーム5は、本体ケース4(及び、ケースに装着したリフィルカートリッジ3)とともに、粘着剤122が転写されるべき転写対象面を有する被着物0を挟持する役割を担う。
【0028】
図1及び
図3に示しているように、被着物、例えば紙製の封筒0のフラップを転写具2の本体ケース4及びアーム5により挟持しながら、同封筒0のフラップに対して転写具2を相対的に一定の方向、典型的には封筒0の幅方向に沿ってスライド移動させると、転写ヘッド33に巻き掛けられた感圧転写式粘着テープ1の各部が順次、転写対象面であるフラップの内向面に押し付けられる。そして、そのテープ1の基材11に塗工されている粘着剤(のブロック)122が、フラップの内向面に転写される。
【0029】
このとき、感圧転写式粘着テープ1が繰出リール31から徐々に繰り出されつつ、巻取リール32に徐々に巻き取られる。詳細には、封筒0のフラップに押し当てられたテープ1が粘着剤122を介して一時的にフラップに保定されるとともに、転写ヘッド33がテープ1を封筒0のフラップに向けて押圧しながら繰出リール31の存在する側に向かって移動する。その過程で、転写ヘッド33が繰出リール31からテープ1を引き出し、かつテープ1に引かれた繰出リール31が回転することで巻取リール32もまた連動して回転する。これら繰出リール31及び巻取リール32の各々の回転速度は、封筒0のフラップに対する転写具2の相対移動の速度に相応する。
【0030】
フラップの内向面に粘着剤122が転写された後、そのフラップを封筒0の本体(胴)の開口端を閉塞するように折り返し、封筒0のフラップと本体との間に粘着剤122を挟むようにして双方を圧接すれば、フラップが本体の開口近傍部に貼着されて、封筒0が封緘される。
【0031】
以降、本実施形態における感圧転写式粘着テープに関して詳述する。
図4ないし
図6に示すように、本実施形態の感圧転写式粘着テープ1は、フィルムを長尺なテープ状に成形した基材11と、このテープ基材11の一方面、即ち転写具2の転写ヘッド33に巻き掛けられたときに表出する(転写ヘッド33に接しない)面に粘着剤を塗工してなる粘着剤層12とからなる。
【0032】
テープ基材11の素材となるフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムであるが、粘着剤12を剥離可能に支持し得るものであれば何でもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムや、グラシン紙、金属箔等であっても構わない。また、粘着剤12を剥離できる性能を有さない物の外表面に、シリコン樹脂やフッ素樹脂等からなる剥離層を設けて粘着剤12の剥離効果を付与した基材11を採用することも許される。
【0033】
図4ないし
図6に示すように、粘着剤層12は、テープ基材11上に、僅かな空隙部により隔てられた多数の粘着剤ブロック122を間欠的に配置したものである。このような粘着剤層12は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷技術を援用したパターン塗工により形成することが可能である。
【0034】
粘着剤12の種類は、アクリル系、スチレン系、ゴム系、シリコン系、ロジン系、ウレタン系等、任意である。が、既知の印刷方法によってテープ基材11に精確かつ効率よく塗工するためには、アクリル系共重合体を含有するアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0035】
中でも、製造時や保管時に必要な耐熱性及び耐候性に優れ、粘着力、凝集力にも優れた粘着剤組成物として、アクリル系トリブロック共重合体を含むものが挙げられる。アクリル系トリブロック共重合体は、式A-B-A又は式A-B-C(式中、A、B及びCはそれぞれ異なる重合体ブロックを表す)で表されるトリブロック共重合体である。
【0036】
アクリル系トリブロック共重合体において、重合体ブロックA、B及びCのうち少なくとも一つはアクリル酸アルキルエステル単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単位からなることがより好ましく、重合体ブロックA、B及びCの全てがアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単位からなることがさらに好ましく、特に重合体ブロックAがメタクリル酸アルキルエステルからなり、重合体ブロックBがアルキル酸アルキルエステルからなり、重合体ブロックCがメタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルからなることが好ましい。
【0037】
特に好適なアクリル系トリブロック共重合体の例としては、ポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸n-ブチル-b-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸エチル-b-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸n-ブチル-b-ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸n-ブチル-b-ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸2-エチルヘキシル-b-ポリメタクリル酸メチル、等々の式A-B-A又はA-B-Cの構造で示されるトリブロック共重合体が挙げられる。
【0038】
アクリル系粘着剤は、上述したトリブロック共重合体のみからなっていてもよいが、適宜他の成分が配合されていてもよい。アクリル系粘着剤に配合されてもよい成分としては、トリブロック共重合体との相容性がよく、均一性を向上させ、耐熱性及び耐候性により優れた粘着剤を得るという観点から、アクリル系ジブロック共重合体、粘着付与剤等が考えられる。
【0039】
アクリル系ジブロック共重合体は、一般式X-Y(式中、Xは炭素数が1ないし4のアルキル基、又は環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表し、Yは炭素数が1ないし20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位及び/又は炭素数が5ないし20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表す)で表されるジブロック共重合体である。好ましくは、重合体ブロックXが炭素数1ないし4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなり、重合体ブロックYが炭素数1ないし20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位から主としてなるジブロック共重合体とする。
【0040】
重合体ブロックXにおいて、炭素数が1ないし4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、環構造を有するアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、イソボルニル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよく、かかる置換基の例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等のアミノ基、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0041】
炭素数が1ないし4のアルキル基、又は環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸トリフルオロメチル等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上で使用することができる。
【0042】
前記一般式中のXで示される重合体ブロックは、メタクリル酸アルキルエステル単位のみを含有することができるが、効能を損なわない範囲の少割合(重合体ブロックXの総量に対して通常20質量%以下)であれば、炭素数が1ないし4のアルキル基又は環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位を含有することができる。かかる他の単量体単位としては、例えばメタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル等の炭素数が5以上のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリメチルシリル等のアルキルエステル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸トリメチルシリル等のアルキルエステル以外のアクリル酸エステル、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー、エチレン、プロピレン等のオレフィン、ε-カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン等のモノマーに由来する構成成分が挙げられる。
【0043】
重合体ブロックYにおいて、炭素数が1ないし20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基等が挙げられる。炭素数が5ないし20のアルキル基としては、例えばn-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよく、かかる置換基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等のアミノ基、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0044】
炭素数が1ないし20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上で使用することができる。
【0045】
炭素数が5ないし20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、例えばメタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2-メトキシペンチル、メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)ペンチル、メタクリル酸パ-フルオロペンチル、メタクリル酸2-トリメトキシシリルペンチル等が挙げられる。これらもまた、一種又は二種以上で使用することができる。
【0046】
前記一般式中のYで示される重合体ブロックは、炭素数が1ないし20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又は炭素数が5ないし20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位のみを含有することができるが、効能を損なわない範囲の少割合(重合体ブロックYの総量に対して20質量%以下)であれば、炭素数が1ないし20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又は炭素数が5ないし20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位を含有することができる。かかる単量体単位としては、例えば、炭素数が21以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数が1ないし4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、炭素数が21以上のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリメチルシリル等のアルキルエステル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸トリメチルシリル等のアルキルエステル以外のアクリル酸エステル、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー、エチレン、プロピレン等のオレフィン、ε-カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン等のモノマーに由来する構成成分が挙げられる。
【0047】
前記一般式で示されるジブロック共重合体は、必要に応じ、分子側鎖中又は分子主鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基等の官能基を有していてもよい。
【0048】
さらに、タック、粘着力、保持力の向上及び調整を容易なものとするためには、アクリル系粘着剤に粘着付与剤を配合することが好ましい。配合可能な粘着付与剤としては、例えばロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体、テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂、(水添)石油樹脂、クマロン-インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上で使用することができる。
【0049】
ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、粘着付与剤の配合の有無及び配合比は、粘着製品の用途、被着物の種類等に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。
【0050】
粘着剤12は、エマルション型粘着剤であってもよく、ホットメルト型粘着剤であってもよい。
【0051】
本実施形態の感圧転写式粘着テープ1にあっては、基材11の全面に均一に粘着剤を塗工、俗称すれば「べた塗り」をせず、その代わりに、空隙部を介在させて分断した多数の粘着剤ブロック122を塗工している。各粘着剤ブロック122は、互いに略同一の形状及び寸法である。粘着剤層12を空隙部を介して多数の粘着剤ブロック122に分割しているのは、被着物0の転写対象面に粘着剤12を転写して塗布するときの糊切れを良好なものとし、並びに、粘着剤12により被着物0を接着する際の空気抜けをよくするためである。
【0052】
他方、空隙部が介在するということは、転写対象面に塗布することのできる単位面積あたりの粘着剤12の量が減少するということでもある。粘着剤12の量が減少すると、その分だけ粘着剤12による接着の強度が弱まりかねない。
【0053】
テープ基材11から被着物0の転写対象面に粘着剤12を適切かつ円滑に転写でき、しかも必要十分量の粘着剤12を転写対象面に塗布して被着物0を強固に接着できるよう、本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、個々の粘着剤ブロック122の形状を、既存の従来品の如き単純な円形状のドットではなく、円形状13からひげのようなもの14が前後に突き出している形、いわば「レモン」形に成形した。これにより、粘着剤層12における空隙部の面積を狭小化し、塗布面積率、即ちテープ基材11の単位面積に占める粘着剤ブロック122の面積の比率(=粘着剤ブロック122の占有面積/テープ基材11の面積)を高めて、転写対象面に塗布される実際の粘着剤の量を増量している。
【0054】
図5及び
図6に、本感圧転写式粘着テープ1の粘着剤層12の構造を示す。
図5及び
図6は、感圧転写式粘着テープ1の基材11が透明であると仮定し、これを転写ヘッド33に接する(転写対象面には接しない)内面側から転写対象面に接する(転写ヘッド33には接しない)表面側に向けて透かし見たときの形態を表している。また、感圧転写式粘着テープ1の基材11から転写対象面に粘着剤12を転写したならば、その転写対象面には
図5及び
図6に示すような粘着剤ブロック122群が現れることになる。
【0055】
図5及び
図6中の上下方向であるT方向が、テープ基材11が延伸する長寸方向であり、これに対して直交する左右方向であるS方向が、テープ基材11の幅方向である短寸方向である。延伸方向Tは、転写対象面に対して粘着剤ブロック122を順次転写してゆく方向でもある。転写具2を使用して転写対象面に粘着剤12を転写し塗布しようとするユーザは、転写具2の本体ケース4を把持し、粘着テープ1が巻き掛けられた転写ヘッド33を転写対象面に押し当て、その状態で転写具2を転写対象面をなぞるように引く操作を行う。
図5及び
図6を転写対象面に見立てるならば、ユーザの手による転写操作を通じて、図中の転写方向Tに沿って、即ち上方から下方に向かって転写ヘッド33が転動しながら変位し、その過程で粘着テープ1の各部が順次転写対象面に押し付けられてゆく。同時に、図中のより上方に位置する粘着剤ブロック122が先に、より下方に位置する粘着剤ブロック122が後に(要するに、図中の上方にある粘着剤ブロック122から順番に)、テープ基材11から転写対象面に転写されるということになる。
【0056】
感圧転写式粘着テープ1の基材11に支持される粘着剤層12は、テープ短寸方向Sに沿って横に並ぶ複数個の粘着剤ブロック122の集合である帯状粘着剤部121が、転写方向Tに沿って多段に配列されて構成されている。一つの帯状粘着剤部121に包含される複数個の粘着剤ブロック122間、及び各段の帯状粘着剤部121間には、何れも粘着剤が塗工されていない空隙部が介在している。つまり、各粘着剤ブロック122は、空隙部によって互いに殆ど又は完全に分断されながら、基材11に裏打ちされている。
図5及び
図6中、粘着剤が塗工されてなる粘着剤ブロック122に、網点を付している。網点を付していない箇所が、粘着剤の存在しない空隙部である。
【0057】
一個の粘着剤ブロック122に着目すると、当該粘着剤ブロック122は、主たる粘着剤領域13と、これに連なり主たる粘着剤領域13よりも面積の小さい極小粘着剤領域14とを備える。
図6に示すように、主たる粘着剤領域13は、図中に一点鎖線で描画しているような略円形状をなしている。一個の粘着剤ブロック122の外縁の大部でもある、主たる粘着剤領域13の外縁は曲線状であり、そこに明確な角はない。
【0058】
同一の帯状粘着剤部121に属し、テープ短寸方向に沿って隣り合う二個の粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13同士は、テープ基材11上にある段階、即ち転写対象面に転写される前の段階では、空隙部を介して殆ど又は完全に切り離されている。但し、
図6に示しているように、粘着剤ブロック122がテープ基材11上にある転写前の段階で予め、あるブロック122の主たる粘着剤領域13と、これに隣接する他のブロック122の主たる粘着剤領域13とが極僅かながら接し又は重なり合う部位Cが存在していても構わない。また、テープ基材11から転写対象面に転写されるときに、転写ヘッド33と転写対象面との間で押圧されて変形する結果、それら二個の粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13同士が部分的に重なり合い連接することはあり得る。
【0059】
極小粘着剤領域14は、主たる粘着剤領域13から、転写方向Tに沿った先方側(図中上方。テープ1における、より早く転写ヘッド33に至り転写対象面に押し付けられる側)及び後方側(図中下方。テープ1における、より遅く転写ヘッド33に至り転写対象面に押し付けられる側)の両方に突き出して存在している。極小粘着剤領域14は、主たる粘着剤領域13から遠ざかるにつれて、テープ短寸方向Sに沿った幅寸が縮小してゆくような先細りの形状になっている。極小粘着剤領域14の外縁は、その先端を除き、曲線状であり明確な角はない。
【0060】
一個の粘着剤ブロック122の形状について補足すると、その主たる粘着剤領域13の外縁と、極小粘着剤領域14の外縁とは、転換点Pにおいて滑らかに連続しており、それらの間にも明確な角はない。
【0061】
ここで、説明の簡明化のため、
図5及び
図6に示すように、一個の粘着剤ブロック122の前後両方の極小粘着剤領域14の先端同士を結ぶ線分に平行な軸の方向をY方向、これに対して直交する軸の方向をX方向と定義する。X方向は、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122の各々における先方側に突き出した極小粘着剤領域14の先端同士を結ぶ線分が伸びる方向であり、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122の各々における後方側に突き出した極小粘着剤領域14の先端同士を結ぶ線分が伸びる方向であり、又は、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122の各々の主たる粘着剤領域13の中心同士を結ぶ線分が伸びる方向でもある。
【0062】
後述するが、Y方向は必ずしも転写方向Tと完全に一致はしておらず、X方向もまた必ずしもテープ短寸方向Sと完全に一致はしておらず、本実施形態では何れもある微小角度θだけ偏倚している。但し、θ=0°とし、Y方向を転写方向Tに一致させ、X方向をテープ短寸方向Sに一致させることを妨げるものではない。
【0063】
テープ基材11の表面又は転写対象面に等しい仮想的なXY平面上で、主たる粘着剤領域13の外縁は、その全部又は転換点Pの近傍を除く大部分が、例えば略円弧状、略楕円弧状、略双曲線状、略放物線状等の「凸曲線」となっている。凸曲線とは、平面を内と外とに二分し、その内(つまり、粘着剤が塗工されている領域13)にある任意の二点を結ぶ線分が必ずその内に含まれるような曲線を言う。
【0064】
翻って、極小粘着剤領域14の外縁は、Y軸に略対称な一対の、例えば略円弧状、略楕円弧状、略双曲線状、略放物線状等の「凹曲線」からなり、それら一対の凹曲線の先端同士が漸近するような様相を呈している。凹曲線とは、上記の凸曲線の条件を満たさない曲線、即ち平面を内と外とに二分し、その内(つまり、粘着剤が塗工されている領域14)にある任意の二点を結ぶ線分が必ずその内に含まれるとは限らない曲線を言う。
【0065】
一個の粘着剤ブロック122の外縁、即ち主たる粘着剤領域13の外縁及び極小粘着剤領域14の外縁は、それらが連続する転換点Pにおいて、同一の接線を有するようにして連続している。一個の粘着剤ブロック122の外縁を、XY平面上の関数曲線y=f(x)であると見なすと、転換点P[xP,yP]において、即ちx=xPにおいて、f(x)はxで微分可能である。
【0066】
また、一個の粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13の外縁及び極小粘着剤領域14の外縁は、転換点Pにおいて、当該外縁に接する接線の伸びる方向、又は当該外縁の湾曲の度合いが変化する。f(x)をxで一階微分した一次導関数をf’(x)と表し、f(x)をxで二階微分した二次導関数をf’’(x)と表すとすると、転換点Pにおいて、f’’(xP)=0が成立し、及び/又は、f’(xP)=0が成立する。f’’(xP)=0が成立する点Pは、殆どの場合「変曲点」である。変曲点とは、f’’(xP)=0でありかつ、f’(x1)>0及びf’(x2)<0、又は、f’(x1)<0及びf’(x2)>0が成立する点を言う。ここで、x1≒xP≒x2、x1<xP、xP<x2である。f’(xP)=0が成立する点Pは、「停留点」である。停留点は、殆どの場合極値(極大値又は極小値)であるが、停留点かつ変曲点である「停留変曲点(鞍点)」は極値ではない。
【0067】
しかして、
図5及び
図6に示しているように、ある帯状粘着剤部121に属する各粘着剤ブロック122の極小粘着剤領域14は、当該帯状粘着剤部121の先方又は後方に位置する他の帯状粘着剤部121に属する隣り合った二個の粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13間の隙間に入り込んでいる。
図5中に一点鎖線で描画しているように、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122の極小粘着剤領域14の先端同士を結ぶX方向に伸びる線分は、他の帯状粘着剤部121に属する粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13の上を通過する。
【0068】
一個の粘着剤ブロック122における、略円形状をなす主たる粘着剤領域13の直径は、例えば約0.5mmないし約2mmの範囲内の値に設定する。実験的に確かめたところ、主たる粘着剤領域13の直径が2mmを超えて大きい粘着剤ブロック122を成形した製品では、テープ基材11から粘着剤を転写対象面に転写する際の糊切れが顕著に悪化した。一個の粘着剤ブロック122は、前後に二つの極小粘着剤領域14を備えるが、それら二つの極小粘着剤領域14の面積の和αと、それらと一体化している主たる粘着剤領域13の面積βとの比α/βを求めると、
主たる粘着剤領域13の直径が約0.5mmの場合:約0.035
主たる粘着剤領域13の直径が約0.75mmの場合:約0.046
主たる粘着剤領域13の直径が約1mmの場合:約0.054
主たる粘着剤領域13の直径が約1.5mmの場合:約0.065
主たる粘着剤領域13の直径が約2mmの場合:約0.071
となった。ここでは、前提として、ある帯状粘着剤部121に属する粘着剤ブロック122の外縁と、他の帯状粘着剤部121に属する粘着剤ブロック122の外縁との間に約0.1mmの幅Gの空隙部を設けることとしている。空隙部の面積をできる限り縮小して粘着剤ブロック122の密度を増し、それでいて糊切れをよくするためには、主たる粘着剤領域13の直径を約2mm以下とし、及び/又は、極小粘着剤領域14の面積αと主たる粘着剤領域13の面積βとの比α/βを約0.071以下に設定することが好ましい。
【0069】
次に、多数個の粘着剤ブロック122群に着目すると、本実施形態では、厳密には、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122が、テープ短寸方向Sに沿って横並びとなってはいない。
図5及び
図6に示しているように、同一の帯状粘着剤部121に属する複数個の粘着剤ブロック122が並ぶX方向は、テープ短寸方向Sからある微小角度θだけ傾いている。そして、複数段の帯状粘着剤部121が配列されるY方向もまた、当該Y方向がX方向に対して直交するが故に、テープ基材11が延伸する転写方向T即ち転写ヘッド33が粘着テープ1及び転写対象面に対して相対移動する方向に完全一致はしておらず、転写方向Tから微小角度θだけ傾いている。
【0070】
既に述べた通り、
図5及び
図6は、その面を被着物0における転写対象面に見立て、当該転写対象面に転写具2の転写ヘッド33を押し当てて、転写具及びその転写ヘッド33を図中上方から下方に引く操作を行った結果、押圧されたテープ基材11から転写対象面に転写される粘着剤ブロック122群を表している。転写方向Tは、
図5及び
図6の上下方向に一致するが、Y方向は同図上で幾分右肩下がりとなる。テープ短寸方向Sは
図5及び
図6の左右方向に一致するが、X方向はそれから幾分反時計回りに偏倚した方向を向く。
【0071】
上記の転写操作を通じて、
図5及び
図6中、より上方に位置する帯状粘着剤部121が先に転写対象面に転写され、より下方に位置する帯状粘着剤部121が後に転写対象面に転写されることになる。一つの帯状粘着剤部121を構成する複数個の粘着剤ブロック122について言えば、各粘着剤ブロック122は概ね同時に転写対象面に転写されるのであるが、正確を期すれば、図中のより左方に位置する粘着剤ブロック122が先に転写対象面に転写され、より右方に位置する粘着剤ブロック122が後に転写対象面に転写される。これは、転写方向Tと直交するテープ短寸方向Sに対し、粘着剤ブロック122の並ぶX方向が角度θだけ右肩下がりになっているからであるが、そのような構造としている理由は、ユーザが右手で転写具を把持して転写操作を行ったときに、テープ基材11から転写対象面に粘着剤を転写でき、テープ基材11に粘着剤が残留しない傾向が見られたたである。
【0072】
一個の粘着剤ブロック122について言えば、当然ながら、まず図中上方に位置する極小粘着剤領域14が先に転写対象面に転写され、次いで主たる粘着剤領域13が転写対象面に転写され、最後に図中下方に位置する極小粘着剤領域14が転写対象面に転写される。
【0073】
転写操作においては、テープ基材11上の粘着剤層12が転写ヘッド33により転写対象面に押し付けられる圧接エリアAが、粘着テープ1及び転写対象面に対して相対的に、T方向に沿って、
図5及び
図6中の上方から下方に、また
図3中の左方から右方に向かって遷移する。転写ヘッド33は側面視円筒状をなし、これが当接する転写対象面は一応は平面であることが多い。よって、転写ヘッド33に巻き掛けられた粘着テープ1と転写対象面とは、純幾何的には線接触するはずである。だが、現実には、転写対象面、粘着剤ブロック122、テープ基材11、転写ヘッド33の何れか少なくとも一つが弾性変形し(尤も、テープ基材11は硬質樹脂製であろうことからその厚みが圧縮されるようには弾性変形し難いであろう)、
図3及び
図5に示しているように、圧接エリアAは転写方向Tに沿ってある程度拡張することになる。
【0074】
X方向はテープ短寸方向Sに対して角度θだけ傾いているが、その角度θは、一つの帯状粘着剤部121の面積の少なくとも半分以上が同時に圧接エリアA内に収まり得る値に設定する。より好ましくは、角度θを、一つの帯状粘着剤部121の面積の全部が同時に圧接エリアA内に収まり得る値に設定する。一つの帯状粘着剤部121を構成する複数個の粘着剤ブロック122は、転写操作時に加圧されて互いに(特に、その主たる粘着剤領域13同士が)連接することがあり、あるいは、粘着テープ1の製造工程でテープ基材11に塗工された時点で既に互いに連接している可能性もある。そのような帯状粘着剤部121を中途でちぎれさせず確実に転写対象面に転写するためには、角度θを不当に大きくすることは避けるべきである。
【0075】
角度θは、例えば、
H≧h+wtanθ
となるように設定する。
図5及び
図6に示しているように、hは、一つの帯状粘着剤部121を転写方向Tに平行な線に沿って切断することで得られる粘着剤122の断面の、同転写方向Tに沿った寸法の最大値である。並びに、wは、テープ基材11のテープ短寸方向Sに沿った幅である。
【0076】
現在広汎に流通している転写具の設計寸法に従い、θが最大となるような条件を想定すると、
テープの幅寸法w:約6mm
粘着剤の寸法h:約1.5mm
圧接エリアAの寸法H:約2.5mm
となる。
【0077】
ここで、w≒6mmは、代表的な粘着テープの中で最も狭小なものの幅寸であり、h≒1.5mmは、代表的な円形状のドットパターンの中で最も大きいものの直径である。
【0078】
H≒2.5mmは、外径Dが約4mmの転写ヘッド33を具備する一般的な転写具2を使用して実験的に求めた値である。具体的には、試験用の試料である転写具2の転写ヘッド33又はこれに巻き掛けたテープ1(若しくは、テープ基材11)に朱肉等の顔料を塗布しておき、それをある大きさの荷重をかけて転写対象面を模した紙面に押し付け、その結果紙面に付着した(紙面を着色した)顔料の寸法を圧接エリアAの寸法Hとして計測した結果から決定した。実験には、三個の転写具2を用い、かつそれら個体毎に計三回の計測を行い、計測した三回の圧接エリアAの寸法Hの最大値の平均及び最小値の平均を得た。
荷重約0.3kg:最大値約1.63mm、最小値約0.7mm
荷重約0.5kg:最大値約1.59mm、最小値約0.71mm
荷重約1kg:最大値約2.04mm、最小値約1.01mm
荷重約1.5kg:最大値約2.40mm、最小値約1.75mm
荷重約2kg:最大値約2.66mm、最小値約2.24mm
圧接エリアAの転写方向Tに沿った寸法Hは、転写ヘッドの直径の約20%ないし約62.5%の間の値をとる。上掲の条件の下では、tanθ≒0.167、θ≒9.55°となる。これに鑑み、0°<θ<約10°に設定することが考えられる。
【0079】
本実施形態の粘着テープ1における、配列される帯状粘着剤部121間のY方向に沿ったピッチλは、例えば、粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13の直径が約1.5mmの態様のもので約1.415mm、粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13の直径が約2mmの態様のもので約1.82mmである。これらのピッチλは、圧接エリアAの寸法Hよりも小さい。
【0080】
本実施形態では、転写方向Tに延伸するテープ基材11と、このテープ基材11の一面に塗工された粘着剤を有する粘着剤層12とを備え、前記テープ基材11の各部が前記転写方向Tに相対移動する転写ヘッド33により順次転写対象面に押し付けられることにより、前記粘着剤12が前記転写対象面に順次転写されるように構成された感圧転写式粘着テープ1であって、前記粘着剤層12は、帯状粘着剤部121と、粘着剤のない空隙部とを交互に転写方向に配列させたもので、前記各帯状粘着剤部121は、前記転写方向Tに直交するテープ短寸方向Sに対して微小角度θだけ傾斜させてあり、その微小角度θは、前記テープ基材11上の前記粘着剤層12が前記転写ヘッド33により前記転写対象面に押し付けられる圧接エリアAを通過する過程において、一時的に一つの前記帯状粘着剤部121の面積の半分以上(特に、全部)が当該圧接エリアA内に収まり得る値に設定されている感圧転写式粘着テープ1を構成した。本実施形態によれば、円滑に粘着剤を転写できより使い勝手のよい、利便性の高い粘着テープ1及び転写具2を実現できる。
【0081】
とりわけ、転写ヘッド33に支持されたテープ1における、粘着剤12の存在しない空隙部のみが転写対象面に向き合っている瞬間、又は転写対象面に接する粘着剤12の面積が極小となる瞬間が発生し難くなる。それ故、ユーザが転写具2を転写対象面に対し転写方向Tに沿って相対移動させる転写操作を行うときに、転写ヘッド33が転写対象面に対して接近及び離間を繰り返すようながたがたした振動が発生しにくく、振動が転写具2さらにはユーザの手指に伝わりにくくなることを期待できる。
【0082】
その上、テープ基材11から転写対象面に、好適に粘着剤を転写できる。即ち、粘着剤が転写対象面にうまく転写されずにテープ基材11上に残存するおそれがより一層低減し、粘着剤を残さずにテープ基材11の使用済み部分を巻取リール32に巻き取ることができる。転写操作の途中経過の作用としては、テープ短寸方向Sに沿ったテープ基材11の一側負縁(左側縁)から他側縁(右側縁)に向かって順次、粘着剤が転写対象面に押圧されて転写される。それでいて、各帯状粘着剤部121間には空隙部が介在しているので、糊切れがよい。
【0083】
しかも、粘着剤による被着物0の実効的な(実用上の)接着強度がより強化される。一例として、封筒0のフラップを本体に接着する場面を想定すると、ユーザは通常、転写具2を封筒0の幅方向に沿ってスライド移動させる操作を行い、粘着剤を転写対象面たるフラップの内向面に塗布する。しかる後、何人かがその封筒0のフラップを封筒0の本体から幅方向に沿って(左から右へ、又は右から左へ)引き剥がそうとする状況において、粘着力の強い箇所と、粘着力が弱い又は粘着力のない箇所とが、転写方向Tである封筒0の幅方向に沿って明らかに分断されて交互に連続しないので、封筒0のフラップが本体に強固に接着されて剥がしにくく、またそれを剥がそうとすると封筒0のフラップ及び/又は本体がその表層部分を相手方に残して剥離される紙破現象が起こる可能性が高まる。つまりは、何人かが封筒0を開封した事実、その痕跡が確実に残り得る。無論、封筒0のフラップを強固に接着できるということは、封筒0内に多量の内容物(紙葉類等)を収めて封筒0が分厚くなり又は嵩張ったとしても、封筒0を確実に閉止しておくことができるということでもある。
【0084】
前記各帯状粘着剤部121は、複数個の粘着剤ブロック122が同一直線上に配列されたものである。それら粘着剤ブロック122同士は一部接していてもよいし、完全に離れていてもよい。本実施形態にあって、各粘着剤ブロック122はX方向に近接しており、Y方向にはそれに比してより離れている。前記各帯状粘着剤部121は、前記粘着剤ブロック122同士が一部重なり合いながら隣接配置されたものであってよい。
【0085】
転写方向Tに沿って配列される帯状粘着剤部121間に形成される各空隙部は、テープ基材の短寸方向Sに沿って端縁の一方(左端)から他方(右端)まで連続している。このことは、粘着剤の糊切れをよりいっそう良化するために役立つ。
【0086】
並びに、本実施形態では、転写方向Tに延伸するテープ基材11と、このテープ基材11の一面に粘着剤を塗工してなる複数個の粘着剤ブロック122とを備え、前記テープ基材11の各部が転写ヘッド33により順次転写対象面に押し付けられることによって前記粘着剤12が前記転写対象面に転写されるように構成された感圧転写式粘着テープ1であって、前記粘着剤ブロック122は、外縁に角を有しない主たる粘着剤領域13と、この主たる粘着剤領域13よりも小さな面積を有し当該主たる粘着剤領域13の一部から一体に突出させた極小粘着剤領域14とを備えたものであり、隣り合う粘着剤ブロック122の主たる粘着剤領域13間に形成される隙間に他の粘着剤ブロック122の極小粘着領域が入り込むようにして複数個の粘着剤ブロック122を空隙部を介して配列させている感圧転写式粘着テープ1を構成した。本実施形態によれば、転写操作の際の糊切れのよさを確保しながら、粘着剤による粘着力を十分に強化することができる。
【0087】
前記粘着剤ブロック122における極小粘着剤領域14は、先細り形状となっているが、裏を返せば、主たる粘着剤領域13に連なる根元の部位が幅広になっているということでもある。これにより、粘着剤ブロック122がテープ基材11から転写対象面に転写されるときに、極小粘着剤領域14と主たる粘着剤領域13とが引き裂かれることなく確実に転写対象面に転写され、粘着剤ブロック122の一部が転写されずテープ基材11に残留してしまうようなことが避けられる。
【0088】
前記極小粘着剤領域14は、前記主たる粘着剤領域13から前記転写方向に沿って先方側(
図5及び
図6における上方)に突設されている。また、前記極小粘着剤領域14は、前記主たる粘着剤領域13から前記転写方向に沿って後方側(
図5及び
図6における下方)にも突設されている。従って、塗布面積率をより高め、粘着剤ブロック122の密度を増し、単位面積あたり塗布できる粘着剤の量を十分に増加させて、粘着剤による被着物0の接着強度を強化することができる。
【0089】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0090】
因みに、上記実施形態の感圧転写式粘着テープ1では、一つの帯状粘着剤部121が複数個に分割された粘着剤ブロック122により構成されていたが、
図7に示すように、一つの帯状粘着剤部121を、連続した一個の粘着剤ブロック122により構成することも考えられる。
【符号の説明】
【0091】
0…転写対象面を有する被着物(封筒)
1…感圧転写式粘着テープ
11…テープ基材
12…粘着剤層
121…帯状粘着剤部
122…粘着剤ブロック
13…主たる粘着剤領域
14…微小粘着剤領域
2…転写具
33…転写ヘッド
31、32、41、42、43…テープ供給機構(繰出リール、巻取リール、主ホイール、副ホイール、ギア)
A…圧接エリア
P…転換点
S…テープ短尺方向
T…転写方向
θ…微小角度