特開 2023-11095 円弧状耐力壁を備えた木造構造物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023011095

(43)【公開日】2023-01-24

(54)【発明の名称】円弧状耐力壁を備えた木造構造物

(51)【国際特許分類】

   E04B 1/32 20060101AFI20230117BHJP

   E04B 1/10 20060101ALI20230117BHJP

   E04B 2/72 20060101ALI20230117BHJP

【ＦＩ】

E04B1/32 102E

E04B1/10 C

E04B2/72 C

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021114710

(22)【出願日】2021-07-12

【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り

(71)【出願人】

【識別番号】513057751

【氏名又は名称】株式会社ひらつか建築

(74)【代理人】

【識別番号】100092727

【弁理士】

【氏名又は名称】岸本 忠昭

(74)【代理人】

【識別番号】100146891

【弁理士】

【氏名又は名称】松下 ひろ美

(72)【発明者】

【氏名】平塚 一弘

(57)【要約】      （修正有）

【課題】木造軸組構造体と円弧状の壁体を組み合わせた建造物において充分な強度を確保することができる木造構造物を提供すること。
【解決手段】基礎の上面に固定された木造軸組構造体２と、木造軸組構造体２の外周面を覆う壁面組立体とを備えた木造建造物。木造軸組構造体２は、基礎に固定された土台２０と、土台２０に組み付けられた複数の柱部材３０と、柱部材３０の下部間に組み付けられた固定ベース部材３８とを有し、壁面組立体は、円弧状の外壁体と、この外壁体を円弧状に保持するための支持壁とを含み、外壁体は、複数の壁部材を周方向に組み付けることにより構成される。支持壁は柱部材３０に取り付けられ、外壁体は、木造軸組構造体２の固定ベース部材３８及び壁面組立体の支持壁に固定されて円弧状耐力壁として機能する。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

基礎の上面に固定された木造軸組構造体と、前記木造軸組構造体の周面を覆う壁面組立体とを備え、
前記木造軸組構造体は、前記基礎の上面に固定された土台と、前記土台に間隔をおいて下端部が組み付けられた複数の柱部材と、前記隣接する一対の柱部材の下部間に組み付けられた固定ベース部材とを有し、
前記壁面組立体は、前記木造軸組構造体に組み付けられる円弧状の壁体と、前記壁体を円弧状に保持するための支持壁とを含み、前記壁体は、複数の壁部材を周方向に組み付けることにより構成され、前記壁面組立体の前記支持壁は前記木造軸組構造体の前記複数の柱部材に取り付けられ、前記壁体は、前記木造軸組構造体の前記固定ベース部材及び前記壁面組立体の支持壁に固定されて円弧状耐力壁として機能することを特徴とする木造構造物。

【請求項2】

前記壁体の前記複数の壁部材の各々は、断面が円弧状の細長い壁部材から構成され、前記壁部材の片側側面には係合凹部が設けられ、その他側側面には係合凸部が設けられ、前記係合凹部及び前記係合凸部は前記壁部材の全長にわたって延びており、隣接する一対の壁部材は、それらの一方の壁部材の係合凹部にそれらの他方の壁部材の係合凸部を嵌合させた後前記他方の壁部材の係合凹部を通して前記一方の壁部材まで第１結合部材を取り付けることによって、相互に結合されることを特徴とする請求項１に記載の木造建造物。

【請求項3】

前記壁面組立体の前記支持壁は、前記柱部材に固定された一対の挟持部材の間に配設され、一方の挟持部材及び前記支持壁を通して他方の挟持部材まで第２結合部材を取り付けることによって、前記支持壁が前記一対の挟持部材間に挟持固定されることを特徴とする請求項２に記載の木造建造物。

【請求項4】

前記壁面組立体の前記支持壁は、前記複数の柱部材の外面に取り付けられ、前記支持壁の先端面の片側部位に位置する前記壁体の片側部位と前記支持壁の先端面の他側部位に位置する前記壁体の他側部位とは、前記支持壁の前記先端面で突き合わされるように取り付けられ、前記壁体の前記片側部位は、前記壁体を通して前記支持壁まで第３結合部材を取り付けることによって、前記支持壁の前記先端面の前記片側部位に固定され、また前記壁体の前記他側部位は、前記壁体を通して前記支持壁まで前記第３結合部材を取り付けることによって、前記支持壁の前記先端面の前記他側部位に固定されることを特徴とする請求項１～３のいずれかに記載の木造建造物。

【請求項5】

前記木造軸組構造体は、前後方向前側の複数の柱部材と後側の複数の柱部材との間の上方に配設された棟木を更に含み、前記壁体の上端部は、前記壁体を通して前記棟木まで第４結合部材を取り付けることによって、前記棟木に固定されることを特徴とする請求項１～３のいずれかに記載の木造建造物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、円弧状の壁体を耐力壁として機能させる円弧状耐力壁を備えた木造構造物に関する。

【背景技術】

【0002】

建造物として、円筒状の外壁体を備えた建物ユニットが提案されている（例えば、特許文献１参照）。この建物ユニットでは、床面が円板状床体から構成され、この円板状床体の外周面に外壁体が設けられ、建造物全体として略円筒形状に形成されている。

【0003】

この建物ユニットの外壁体は、略環状の上梁と略環状の下梁とを備え、この上梁と下梁との間に周方向に間隔をおいて柱部材が配設され、これら上梁、下梁及び柱部材により規定された弧状空間に壁体が取り付けられている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開平６－１０４１４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、この建物ユニットにおいては、次の通りの解決すべき問題がある。第１に、床体が円板状であるので、この建物ユニットを設置しようとすると略正方形状の設置スペースを必要とし、細長い設置スペースなどには設置するのが難しいという問題がある。第２に、建物ユニットの強度を確保するために、上梁、下梁及び柱部材などの骨組み材料が鋼製角パイプから構成されており、それ故に、このような建物ユニットは環境に優しくないという問題がある。

【0006】

近年、環境に優しい木材を用い、骨組みとして従来の木造軸組構造体が見直され、このような木造軸組構造体と円弧状の壁体とを組み合わせた建造物の実現が望まれていた。

【0007】

本発明の目的は、木造軸組構造体と円弧状の壁体を組み合わせた建造物において充分な強度を確保することができる木造構造物を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明の請求項１に記載の木造建造物は、基礎の上面に固定された木造軸組構造体と、前記木造軸組構造体の周面を覆う壁面組立体とを備え、
前記木造軸組構造体は、前記基礎の上面に固定された土台と、前記土台に間隔をおいて下端部が組み付けられた複数の柱部材と、前記隣接する一対の柱部材の下部間に組み付けられた固定ベース部材とを有し、
前記壁面組立体は、前記木造軸組構造体に組み付けられる円弧状の壁体と、前記壁体を円弧状に保持するための支持壁とを含み、前記壁体は、複数の壁部材を周方向に組み付けることにより構成され、前記壁面組立体の前記支持壁は前記木造軸組構造体の前記複数の柱部材に取り付けられ、前記壁体は、前記木造軸組構造体の前記固定ベース部材及び前記壁面組立体の支持壁に固定されて円弧状耐力壁として機能することを特徴とする。

【0009】

この木造構造物では、壁体の各壁部材を断面が円弧状の細長い壁部材から構成し、その片側側面に係合凹部を設け、他側側面に係合凸部を設けるのが好ましく、このように構成することにより、隣接する一対の壁部材の結合は、一方の壁部材の係合凹部に他方の壁部材の係合凸部を嵌合させ、その後他方の壁部材の係合凹部を通して一方の壁部材まで第１結合部材を取り付けることによって、両者を強固に結合することができ、壁体自体の強度を高めることができる。

【0010】

また、この木造構造物では、柱部材に固定された一対の挟持部材の間に支持壁を配設し、一方の挟持部材及び支持壁を通して他方の挟持部材まで第２結合部材を取り付けることが好ましく、このようにすることによって、支持壁を柱部材に強固に固定することができる。

【0011】

また、このような木造建造物では、支持壁の先端面の片側部位に位置する壁体の片側部位と支持壁の先端面の他側部位に位置する壁体の他側部位とを、この支持壁の先端面で突き合わされるように取り付けるのが好ましく、このように構成することにより、壁体の片側部位を、この壁体を通して支持壁まで第３結合部材を取り付けることによって強固に固定することができ、また壁体の他側部位についても、この壁体を通して支持壁まで第３結合部材を取り付けることによって強固に固定することができる。

【0012】

更に、このような木造建造物では、木造軸組構造体に棟木を設けるようにすることができ、このように構成した場合、壁体の上端部の固定は、この壁体を通して棟木まで第５結合部材を取り付けることによって、両者を強固に固定することができる。

【発明の効果】

【0013】

本発明の木造建造物によれば、木造軸組構造体は、土台に間隔をおいて組み付けられた複数の柱部材と、隣接する一対の柱部材の下部間に組み付けられた固定ベース部材とを有し、壁面組立体は、木造軸組構造体に組み付けられる円弧状の壁体と、壁体を円弧状に保持するための支持壁とを含んでいる。そして、この壁面組立体の壁体は、複数の壁部材を周方向に組み付けることにより構成され、壁面組立体の支持壁は木造軸組構造体の複数の柱部材に取り付けられ、壁体は、木造軸組構造体の固定ベース部材及び壁面組立体の支持壁に固定され、これによって、この壁体を木造建造物の円弧状耐力壁として機能させることができる。尚、壁体とは、木造建造物の外壁を構成する外壁体として適用することができきるとともに、その内壁を構成する内壁体としても適用することができる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】本発明に従う木造構造物の一実施形態を簡略的に示す正面図。

【図2】図１の木造構造物を簡略的に示す側面図。

【図3】図１におけるＩＩＩ－ＩＩＩ線による断面図。

【図4】図１の木造構造物における木造軸組構造体を簡略的に示す斜視図。

【図5】図４の木造軸組構造体の柱部材に支持壁を取り付けた状態を簡略的に示す斜視図。

【図6】図５の木造軸組構造体を上方から見た簡略平面図。

【図7】図１の木造建造物における外壁体に用いる壁部材を示す斜視図。

【図8】図７の壁部材を周方向に結合した状態を示す部分断面図。

【図9】図１の木造構造物における外壁体の下端部の木造軸組構造体への固定状態を示す部分断面図。

【図10】図１の木造構造物における壁面組立体の支持壁と外壁体との固定状態を示す部分正面図。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、添付図面を参照して、本発明に従う木造構造物の一実施形態について説明する。図１～図３において、図示の木造構造物１は、建造物の骨組みを構成する木造軸組構造体２（図４参照）と、この木造軸組構造体２の外周面を覆う壁面組立体４（図１及び図３参照）を備えており、この木造軸組構造体２に壁面組立体４が後述するように固定される。

【0016】

この木造構造物１を概説すると、地面に基礎６が設けられ、この基礎６は例えばセメントなどから形成される。この基礎６上に木造軸組構造体２が取り付けられる。木造軸組構造体２は、図４に示すように、横方向（図１において左右方向、図２及び図３において紙面に垂直な方向、図４において左下から右上の方向）に細長い骨組構造であり、この木造軸組構造体２に壁面組立体４が取り付けられる。壁面組立体４は円弧状の外壁体８を備え、この実施形態では、外壁体８は横方向に延びる略円筒状に形成され、この外壁体８の内部に部屋空間１０が規定される（図４参照）。

【0017】

この壁面組立体４の横方向中央部には、部屋空間１０に出入りするための矩形状の出入り開口１２が設けられ、この出入り開口１２に一対の引き戸１４が開閉自在に取り付けられている。尚、この出入り開口１２に一枚の引き戸を開閉自在に取り付けるようにしてもよく、このような構成に代えて、開閉扉を開閉自在に取り付けるようにしてもよい。

【0018】

この木造建造物１の両端部には、円形状の端壁１６（図２において一方の端壁のみを示す）が設けられ、横方向に細長い部屋空間１０（即ち、外壁組立体４）の両端側がこの端壁１６によって閉塞されている。この形態では、図２に示すように、一方の端壁１６の略中央部に窓開口１８が設けられ、この窓開口１８に一対の窓部材２０が開閉自在に取り付けられている。このような窓開口１８は、必要に応じて設けることができ、図示していないが、他方の端壁にも設けることができる。尚、窓開口１８の大きさは、部屋空間１０に適度の開放感を持たせることができるように適宜の大きさ設定することができる。

【0019】

次に、主として図３及び図４を参照して木造軸組構造体２について説明すると、図示の木造軸組構造体２は、基礎６の上面に設置固定された土台２０を備え、この土台２０は、基礎６に埋め込まれたアンカーボルト２２（図３参照）及びナット（図示せず）により基礎に固定される。この実施形態では、基礎６は、前後方向に間隔をおいて配設された一対の横基礎部と、これら一対の横基礎部の間に間隔をおいて設けられた縦接続基礎部２４（図４においてそれらの一つを示す）とを有し、一対の横基礎部の上面に横土台２６が設置固定され、縦接続基礎部２４の上面に縦土台２８が設置固定されている。

【0020】

尚、木造建築物１の横方向の長さを長く（又は短く）するには、基礎６の一対の横基礎部（これに設置固定される横土台２６）の長さを長く（又は短く）すればよく、この場合、縦接続基礎部２４の数を増やす（又は減らす）ようになる。また、木造建築物１の前後方向の長さを長くするには、一対の横基礎部（一対の横土台２６）の前後方向の間隔を大きく（又は小さく）すればよい。

【0021】

一対の横土台２６には、それらの軸方向に間隔をおいて複数（この形態では、合計８つ）の柱部材３０が配設されている。この実施形態では、横土台２６と縦土台２８とが交差する部位に、柱部材３０の下端部が組み付けられ、これら柱部材３０は、横土台２６から上方に延びている。また、木造軸組構造体２の両端部に位置する柱部材３０の間に縦桁部材３６が組み付けられ、これら縦桁部材３６は、両端側に位置する縦土台２８の上方に配置される。

【0022】

この実施形態では、更に、横方向に隣接する一対の柱部材３０の下部に固定ベース部材３８が組み付けられている。図４に示すように、円弧状の外壁体８の一端側が前側の固定ベース部材３８に後述するように固定され、またこの外壁体８の他端側が後側の固定ベース部材３８に後述するように固定される。

【0023】

この実施形態では、更に、隣接する一対の縦接続基礎部２８間の上側に、例えば釘（図示せず）などを用いて大引き３９が取り付けられ、この大引き３９の表面側に床部材４０が取り付けられている。この木造軸組構造体２の骨組み構造、即ち土台２０（横土台２６及び縦土台２８）、柱部材３０、縦桁部材３６）及び固定ベース部材３８は木材から構成されており、これらの部材２０，３０，３６に木材を用いることにより、上述した木造軸組構造体２を組み付けることができる。

【0024】

次に、主として図３とともに図５及び図６を参照して、壁面組立体４について説明する。図示の壁面組立体４は、木造軸組構造体２の外周面を覆う外壁体８と、この外壁体８を円弧状に保持するための支持壁４２を備え、この外壁体８は、細長い壁部材４４を周方向に複数組み付けることによって構成される。尚、この実施形態では、壁面構造体４を木造軸組構造体２の外周面を覆う外壁体８に適用しているが、この木造軸組構造体２の内周面を覆う内壁体にも同様に適用することができる。

【0025】

更に説明すると、図７及び図９に示すように、複数の壁部材４４は実質上同一の形状であり、各壁部材４４の片側側面に、断面矩形状の係合凹部４６が設けられ、その他側側面に、この係合凹部４６に対応した形状の断面矩形状の係合凸部４８が設けられ、係合凹部４６及び係合凸部４８は、壁部材４４の長手方向一端から他端まで延びている。この壁部材４４は、幅方向（即ち、周方向）に円弧状に湾曲している。

【0026】

隣接する一対の壁部材４４は、次のように組み付けて相互に結合される。即ち、一方の壁部材４４の係合凹部４６に他方の壁部材４４の係合凸部４８を嵌合させ、かかる嵌合状態において、他方の壁部材４４の係合凹部４６からこれを通して一方の壁部材４４まで結合部材５０（第１結合部材を構成する）を取り付けることにより、両者が強固に結合される。

【0027】

そして、複数の壁部材４４を組み付けると、図３及び図９から理解されるように、円弧状の外壁体８として組み付けることができ、これによって、全体として略円筒状体を横にした形状の外壁体８を組み付けることができる。この結合の際には、結合部材５０は、隣接するものが重ならないように壁部材４４の長手方向にずらして取り付けられる。尚、結合部材５０としては、例えば釘、スクリュー釘、木工用ビスなどを用いることができる。

【0028】

支持壁４２は、図３、図５、図６及び図１０に示すように、木造軸組構造体２の各柱部材３０に対応して設けられ、各柱部材３０の外側面に取り付けられている。支持壁４２は板状部材から構成され、その片側（先端側）が円弧状に形成され、その他側（基部側）が直線状に形成されている。この支持壁４２は、図５、図６及び図１０に示すように、各柱部材３０の外側面に取り付けられた一対の挟持部材５２の間に配設され、かく配設した状態で釘などの結合部材（第２固結合材）を用いて一対の挟持部材５２に固定される（例えば、一方の挟持部材５２及び支持壁４２を通して他方の挟持部材５２まで固定部材を打ち付けて固定する）。この取付状態においては、前側の支持壁４２の先端側は、前側の柱部材３０の外側面（前面）から外側（前側）に突出し、それらの先端面は、前面側の円弧状の取付支持面を規定し、また後側の支持壁４２の先端側は、後側の柱部材３０の外側面（後面）から外側（後側）に突出し、それらの先端面は、後面側の円弧状の取付支持面を規定する。

【0029】

外壁体８の下端部は、図８に示すようにして、木造軸組構造体２に組み付けられて固定される。この実施形態では、柱部材３０の下部には、横土台２６に対応してその上方に固定ベース部材３８設けられ、この固定ベース部材３８の上面形状は壁部材４４の外面形状に対応して凹状の弧状になっている。外壁体８の下端部（最下位の壁部材４４）は、この固定ベース部材３８の上面に位置付けられ、釘などの結合部材５６を用いて固定される。尚、図３から理解されるように、外壁体８の両下端部（前側及び後側の下端部）は、上述したようにして前側及び後側の固定ベース部材３８に固定される。

【0030】

この外壁体８の上部内周面は、図４から理解されるように、柱部材３０の上端面に当接支持されるように構成され、この外壁体８（壁部材４４）を通して柱部材３０まで釘などの結合部材を取り付けることによって、外壁体８がこの柱部材３０に固定される。

【0031】

この形態では、更に、図３及び図１０に示すように、壁面組立体４の外壁体８の内周面は、柱部材３０に設けられた支持壁４２の円弧状先端面に当接支持されるように構成されている。また、支持壁４２を境にして例えば片側（図１０において左側）に位置する外壁体８の片側部位（左側部位）と例えば他側（図１０において右側）に位置する外壁体８の他側部位（右側部位）とは、この支持壁４２の先端面で突き合わされるように取り付けられる。

【0032】

そして、このことに関連して、支持壁４２の片側（図１０において左側）においては、外壁体８（壁部材４４）を通して支持壁４２まで釘などの結合部材６４（第３結合部材）を取り付けることによって、外壁体８の上記片側部位が支持壁４２の先端面の片側部位に固定され、またその他側（図１０において右側）においては、外壁体８（壁部材４４）を通して支持壁４２まで釘などの結合部材６４（第３結合部材）を取り付けることによって、外壁体８の上記他側部位が支持壁４２の先端面の片側部位に固定され、このようにして外壁体８は支持壁４２に強固に固定され、これら支持壁４２を介して木造軸組構造体２に充分な強度でもって固定支持される。

【0033】

この木造構造物１は、例えば、次のようにして組み建てることができる。主として図３～図６を参照して説明すると、木造構造物１を設置するには、図３及び図４に示すように、地面に基礎６（横基礎部及び縦接続基礎部２４）を設ける。そして、この基礎６（横基礎部及び縦接続基礎部２４）の上に土台２０（横土台２６及び縦土台２８）を設置固定する。更に、土台２０（横土台２６）に柱部材３０を組み付け、これら柱部材３０の下部に固定ベース部材３８を組み付けるとともに、両端側の柱部材３０間に縦桁部材３６を組み付け、このように組み付けることによって、図４に示す構造の木造軸組構造体２が完成する。

【0034】

その後、この木造軸組構造体２に壁面組立体４を次のようにして組み付ける。図５及び図６に示すように、木造軸組構造体２の柱部材３０に一対の挟持部材５２を取り付け、かかる挟持部材５２間に支持壁４２の基部を取り付ける。そして、木造軸組構造体２の固定ベース部材３８に外壁体８の下端部を支持固定する。この外壁体８の固定については、例えば、最下位の壁部材４４を固定ベース部材３８に載置し、かく載置した状態で固定ベース部材３８に固定する。

【0035】

次に、その上側の壁部材４４の係合凸部４８を下側の壁部材４４の係合凹部４６に嵌合して固定するとともに、これら壁部材４４を支持壁４２の先端面に支持固定する。このようにして上側の壁部材４４の係合凸部８を下側の壁部材４４の係合凹部４６に嵌合して固定するとともに、これら壁部材４４を支持壁４２の先端面に固定し、このようにして外壁体８が固定ベース部材３８及び支持壁４２に支持固定され、この外壁体８を木造軸組構造体２により強固に支持される。かくして、この円弧状の外壁体８を木造軸組構造体２の円弧状耐力壁として機能させ、地震などに対しても充分な強度が得られ、安全性の高い木造建造物を提供することができる。

【0036】

以上、本発明に従う木造構造物の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。

【0037】

例えば、上述の実施形態において、この木造軸組構造体２に棟木（前後方向前側の柱部材３０と後側の柱部材３０との間の中央上方に配設される）を設けるようにし、外壁体８を通してこの棟木まで釘などの結合部材（第４結合部材を構成する）を取り付けるようにすることによって、外壁体８の上端部を棟木に支持固定するようにしてもよい。

【0038】

また、上述の実施形態では、外壁体８（複数の壁部材４４）が木造建造物１の外面となっているが、耐久性、耐水性、断熱性などを持たせるために、例えば、必要に応じて、この外壁体８の表面側を断熱材で覆うようにしたり、この断熱材の表面側に金属製又は樹脂製の波板でもって覆うようにしたり、或いは断熱材と波板との間に通気層を設けるようにしてもよい。

【符号の説明】

【0039】

１ 木造建造物
２ 木造軸組構造体
４ 壁面組立体
６ 基礎
８ 外壁体
２０ 土台
３０ 柱部材
３６ 固定ベース部材
４２ 支持壁
４４ 壁部材
４６ 係合凹部
４８ 係合凸部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】