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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110966
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】床用目地装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012524
(22)【出願日】2022-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA24
2E001FA71
2E001PA03
2E001PA11
(57)【要約】

【課題】 落ち葉やゴミにより目地プレートの摺動が阻害されることを防止でき、地震による揺れ動きを確実に吸収できる床用目地装置を提供すること。
【解決手段】一方の躯体と他方の躯体と目地部を塞ぐ床用目地装置において、床用目地装置は、一方の躯体に設けられ、前後方向に延在する支持レールと、他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、一端部が支持レールに前後方向にスライド移動可能に支持され、他端部が目地プレート支持部に支持される目地プレートと、目地プレートの前後方向の端部に設けられ、支持レールを覆うカバー部材とで構成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体と目地部を塞ぐ床用目地装置において、
前記一方の躯体に設けられ、かつ前後方向に延在する支持レールと、前記他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、一端部が前記支持レールに前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部に支持される目地プレートと、前記目地プレートの前後方向の端部に設けられ、かつ前記支持レールを覆うカバー部材とで構成される床用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートの一端部は、目地プレート支持体を介して前記支持レールに支持されており、前記目地プレート支持体は目地プレートの前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出していることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、断面視略L字状に形成されており、前記支持レールの前後方向の端部には、前記カバー部材の前後方向へのスライド移動に干渉せず、かつ、前記カバー部材の前後方向の端部を略閉塞する蓋体が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の床用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地装置としては、例えば「目地部を介して設けられた左右の床躯体の一方の目地部側床躯体の上面に形成された凹部と、前記左右の床躯体の他方の目地部側床躯体にほぼ水平状態で固定されたレールに後端部が前後方向にスライド移動可能に支持され、先端部が前記凹部のほぼ中央部に位置する該凹部をスライド移動可能な支持体と、この支持体に支持されるように後端部が該支持体の後端部に取付けられた他方の目地プレートと、この他方の目地プレートの先端部との間に隙間なく、あるいはわずかな隙間を介して先端部が前記支持体に支持され、後端部が前記凹部の反目地部側の一方の床躯体に取付けられた一方の目地プレートと、前記目地部が狭くなるように前記左右の床躯体が揺れ動いた場合に、前記他方の目地プレートあるいは一方の目地プレートが他方側の目地プレートの下部へ侵入できる傾斜面に形成するとともに、下部へ侵入される目地プレートを上下方向に移動できるように取付部に介装した取付機構とを備えることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような床用目地装置では、地震によって一方の躯体と左右の躯体が左右方向に揺れ動いた場合だけでなく、前後方向に揺れ動いた場合であっても目地プレートが前後方向にスライド移動し地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0004】
しかし、通常時においてはレールの前後端部が常時露出しているため、この部位に落ち葉やゴミがたまり、地震時に目地プレートの前後方向へのスライド移動を阻害するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4099478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、落ち葉やゴミにより目地プレートの摺動が阻害されることを防止でき、地震による揺れ動きを確実に吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0008】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の床用目地装置は、一方の躯体に設けられ、かつ前後方向に延在する支持レールと、他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、一端部が前記支持レールに前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部に支持される目地プレートと、前記目地プレートの前後方向の端部に設けられ、かつ前記支持レールを覆うカバー部材とで構成されることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
請求項2に記載の床用目地装置の前記目地プレートの一端部は、目地プレート支持体を介して前記支持レールに支持されており、前記目地プレート支持体は目地プレートの前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出していることを特徴とする。
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバー部材は、断面視略L字状に形成されており、支持レールの前後方向の端部には、前記カバー部材の前後方向へのスライド移動に干渉せず、かつ、前記カバー部材の前後方向の端部を略閉塞する蓋体が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、支持レールを覆うカバー部材を備えているので、落ち葉やゴミが支持レール上に蓄積することを防止できる。したがって、落ち葉やゴミにより目地プレートの摺動が阻害されることを防止できる。
(2)請求項2及び請求項3に記載の各発明においても、前記(1)と同様の作用効果を得られるとともに、より確実に支持レール上に落ち葉等のゴミが入り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図7は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図8乃至図10は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の床用目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】端部に位置する目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の説明図。
図7】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の説明図。
図8】第2の実施形態の床用目地装置の平面図。
図9図8の9-9線に沿う断面図。
図10図9の10-10線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1乃至図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4と目地部2を塞ぐ床用目地装置である。すなわち、図1を参照にすると、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
【0015】
なお、左右方向とは図1における左右方向であり、前後方向とは図1における上(後)下(前)方向をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。
【0016】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0017】
この床用目地装置1は、例えば図1乃至図3に示すように、一方の躯体3に設けられ、前後方向に延在する支持レール5と、前記他方の躯体4に設けられた目地プレート支持部6と、一端部が前記支持レール5に前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部6に支持される目地プレート7と、前記目地プレート7の前後方向の端部に設けられ、前記支持レール5を覆うカバー部材8とで構成されている。
【0018】
まず、一方の躯体3には、目地部2側の床面に前後方向に延在する断面視略クランク形状の支持レール5が設けられている。この支持レール5の支持部11には、ローラー等の滑動部材9が設けられ、この滑動部材9に支持されるように前後方向に延在するバー状の目地プレート支持体10が支持される。目地プレート7は、この目地プレート支持体10に支持されている。すなわち、目地プレート7は、やや厚みがある長板状の目地プレート支持体10を介して、その一端部が支持レール5の支持部11に間接的に支持されている。
【0019】
この目地プレート支持体10は、前記支持レール5の支持部11に略係合する角柱状又は両端部が閉塞された角パイプ状等の断面形状に形成されており、その両端部は目地プレート7の前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出している。また、本実施形態においては、この目地プレート支持体10には、目地プレート7を取り付けるための係止杭14が複数個固定されている。
【0020】
ここで、本発明における「目地プレート7の前後方向に端部」とは、複数個の目地プレート7を用いる場合には、この複数個の目地プレート7のうち、端部に位置する目地プレート7の前方の端部(7a)又は後方の端部(7b)をいう。すなわち、最も前方側に位置する目地プレート7の前方側の端部7aと最も後方側に位置する目地プレート7の後方側の端部7bが「目地プレート7の前後方向の端部」となる(図3を参照)。
【0021】
次に、他方の躯体4の床面には目地プレート7の他端部が左右方向にスライド移動可能な凹所状の目地プレート支持部6が形成されている。この目地プレート支持部6の目地部2と反対側の端部には、地震によって目地部2が狭くなった場合に、目地プレート7の他端部が乗り上げる乗り上げ傾斜面12が形成されている。
【0022】
次に、目地プレート7は、例えば図2図4等に示すように、浅皿状の目地プレート本体13と、前記目地プレート本体13の一端部側の両側部に設けられ、前記目地プレート支持体10に固定された係止杭14が挿入される1対の下部が開口した筒状の杭ケース15と、前記目地プレート本体13に充填されたセメントやモルタル等の充填部材16(図2参照)と、前記充填部材16の上部を覆うように設けられた化粧板17と、目地プレート本体13の他端部にヒンジ部材18を介して設けられたカバープレート19と、前方又は後方側の端部に儲けられたカバー部材8とで構成されている。
【0023】
なお、本実施形態のように複数個の目地プレート7によって目地部2を塞ぐ場合には、中間に位置する目地プレート7Aにはカバー部材8が設けられない。
【0024】
カバー部材8は、本実施形態においては、断面形状が略アングル状で前後方向に延在するレール状の部材で、支持レール5の上面及び目地部側の面の全体を覆うように目地プレート7に設けられている。なお、カバー部材8は支持レール5を覆うことができる形状であればどのような形状でもよく、例えば断面形状が略クランク形状や円弧状等に形成してもよい。
【0025】
本実施形態では、支持レール5にカバー部材8が前後方向にスライド移動可能に支持するカバー部材摺動部20を形成し、付勢具22の付勢力によりカバー部材8と目地プレート支持体10とが同調するように取り付けている。このカバー部材摺動部20にも滑動部材9を設けてカバー部材8を支持してもよく、滑動部材9を設けず、単に前後方向へのスライド移動をガイドできるものとしてもよい。
【0026】
このカバー部材8は、カバー部材摺動部20を支持レール5に形成しない場合には目地プレート7に係合片(図示せず)等を設け、この係合片にカバー部材8の被係合片(図示せず)を係合させ前後方向の移動のみ目地プレート7に同調するように着脱自在に設けてるとよい。このように設けることにより、地震によって目地プレート7の他端部が上方に回動した際に、カバー部材8はやや上方へ位置変異するものの、目地プレート7と同調して回動することがなく、カバー部材8とカバー部材摺動部20が干渉し破損することを防止できる。なお、目地プレート7の他端部が上方へ回動しないような目地プレート支持部6に支持される場合には、目地プレート7の前後端部に固定的に取り付けてもよい。
【0027】
本実施形態においては、カバー部材8の前後方向の端部には、前記カバー部材8と支持レール5の前後方向の端部の隙間を略閉塞する蓋体21が設けられている。この蓋体21は、支持レール5の前後方向の端部に略当接するようにカバー部材8に固定されており、このような蓋体21を設けることにより、落ち葉等が入り込むことを確実に防止できる。
【0028】
また、この蓋体21に一端部が取り付けられ前記目地プレート支持体10に他端部が取り付けられたコイルスプリング等の付勢具22が設けられており、常時蓋体21が支持レール5の端部に当接するように付勢するとともに、カバー部材8が目地プレート支持体10に略当接するように付勢している。
【0029】
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、図5に示すように、目地プレート7の他端部が目地プレート支持部6の乗り上げ傾斜面12により目地プレート7の他端部が上方にせり上がり地震による揺れ動きを吸収する。
【0030】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、目地プレート7の他端部が目地プレート支持部6の上面を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0031】
地震で躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動くと、図7に示すように目地プレート7は支持レール5上を前後方向にスライド移動し地震による揺れ動きを吸収する。このとき、複数個の目地プレート7は目地プレート支持体10に設けられた係止杭14によって一端部が取り付けられているので、複数個の目地プレート7と目地プレート支持体10とが一体となって前後方向にスライド移動する。
また、図7の状態においては、後方側のカバー部材8は、目地プレート支持体10と同調して前後方向にスライド移動するが、前方側のカバー部材8は蓋体21と支持レール5の端部が当接してカバー部材8のスライド移動を阻止し、目地プレート支持体10と同調せずに通常時の位置にとどまり、カバー部材8と目地プレート7の端部7aとの間の隙間は目地プレート支持体10により覆われる。これにより、地震による揺れ動き時においても支持レール5が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。地震による揺れ動きが終了すると自動的に目地プレート7やカバー部材8等は通常状態に復帰する。
【0032】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8乃至図10に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図8乃至図10示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、一端部側の底部に複数個の滑動部材9を備えた板状の目地プレート7Bを用いるとともに、この目地プレート7Bの一端部を、目地プレート支持体10を介さず支持レール5で支持した点で、このような目地プレート7Bを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0034】
なお、本実施形態においては、目地プレート7Bは地震時に他端部が上方へせり上がるものではないため、カバー部材8を目地プレート7Bに固定的に取り付けてもよく、そのような場合、蓋体21は支持レール5に干渉しないように固定するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0036】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:支持レール、 6:目地プレート支持部、
7:目地プレート、 8:カバー部材、
9:滑動部材、 10:目地プレート支持体、
11:支持部、 12:乗り上げ傾斜面、
13:目地プレート本体、 14:係止杭、
15:杭ケース、 16:充填部材、
17:化粧板、 18:ヒンジ部材、
19:カバープレート、 20:カバー部材摺動部、
21:蓋体、 22:付勢具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体と目地部を塞ぐ床用目地装置において、
前記一方の躯体に設けられ、かつ前後方向に延在する支持レールと、前記他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、一端部が前記支持レールに前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部に支持される目地プレートと、前記目地プレートの前後方向の端部に設けられ、かつ前記支持レールの上面の全体を覆うカバー部材とで構成される床用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートの一端部は、目地プレート支持体を介して前記支持レールに支持されており、前記目地プレート支持体は目地プレートの前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出していることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、断面視略L字状に形成されており、前記カバー部材の前後方向の端部には、前記カバー部材と支持レール前後方向の端部の隙間を略閉塞する蓋体が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の床用目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体の床面間の目地部を塞ぐ床用目地装置としては、例えば「目地部を介して設けられた左右の床躯体の一方の目地部側床躯体の上面に形成された凹部と、前記左右の床躯体の他方の目地部側床躯体にほぼ水平状態で固定されたレールに後端部が前後方向にスライド移動可能に支持され、先端部が前記凹部のほぼ中央部に位置する該凹部をスライド移動可能な支持体と、この支持体に支持されるように後端部が該支持体の後端部に取付けられた他方の目地プレートと、この他方の目地プレートの先端部との間に隙間なく、あるいはわずかな隙間を介して先端部が前記支持体に支持され、後端部が前記凹部の反目地部側の一方の床躯体に取付けられた一方の目地プレートと、前記目地部が狭くなるように前記左右の床躯体が揺れ動いた場合に、前記他方の目地プレートあるいは一方の目地プレートが他方側の目地プレートの下部へ侵入できる傾斜面に形成するとともに、下部へ侵入される目地プレートを上下方向に移動できるように取付部に介装した取付機構とを備えることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような床用目地装置では、地震によって一方の躯体と左右の躯体が左右方向に揺れ動いた場合だけでなく、前後方向に揺れ動いた場合であっても目地プレートが前後方向にスライド移動し地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0004】
しかし、通常時においてはレールの前後端部が常時露出しているため、この部位に落ち葉やゴミがたまり、地震時に目地プレートの前後方向へのスライド移動を阻害するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4099478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、落ち葉やゴミにより目地プレートの摺動が阻害されることを防止でき、地震による揺れ動きを確実に吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0008】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の床用目地装置は、一方の躯体に設けられ、かつ前後方向に延在する支持レールと、他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、一端部が前記支持レールに前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部に支持される目地プレートと、前記目地プレートの前後方向の端部に設けられ、かつ前記支持レールの上面の全体を覆うカバー部材とで構成されることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
請求項2に記載の床用目地装置の前記目地プレートの一端部は、目地プレート支持体を介して前記支持レールに支持されており、前記目地プレート支持体は目地プレートの前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出していることを特徴とする。
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバー部材は、断面視略L字状に形成されており、前記カバー部材の前後方向の端部には、前記カバー部材と支持レール前後方向の端部の隙間を略閉塞する蓋体が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、支持レールを覆うカバー部材を備えているので、落ち葉やゴミが支持レール上に蓄積することを防止できる。したがって、落ち葉やゴミにより目地プレートの摺動が阻害されることを防止できる。
(2)請求項2及び請求項3に記載の各発明においても、前記(1)と同様の作用効果を得られるとともに、より確実に支持レール上に落ち葉等のゴミが入り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図7は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図8乃至図10は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の床用目地装置の平面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3図1の3-3線に沿う断面図。
図4】端部に位置する目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の説明図。
図7】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の説明図。
図8】第2の実施形態の床用目地装置の平面図。
図9図8の9-9線に沿う断面図。
図10図9の10-10線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1乃至図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4と目地部2を塞ぐ床用目地装置である。すなわち、図1を参照にすると、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
【0015】
なお、左右方向とは図1における左右方向であり、前後方向とは図1における上(後)下(前)方向をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。
【0016】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0017】
この床用目地装置1は、例えば図1乃至図3に示すように、一方の躯体3に設けられ、前後方向に延在する支持レール5と、前記他方の躯体4に設けられた目地プレート支持部6と、一端部が前記支持レール5に前後方向にスライド移動可能に支持され、一方、他端部が前記目地プレート支持部6に支持される目地プレート7と、前記目地プレート7の前後方向の端部に設けられ、前記支持レール5を覆うカバー部材8とで構成されている。
【0018】
まず、一方の躯体3には、目地部2側の床面に前後方向に延在する断面視略クランク形状の支持レール5が設けられている。この支持レール5の支持部11には、ローラー等の滑動部材9が設けられ、この滑動部材9に支持されるように前後方向に延在するバー状の目地プレート支持体10が支持される。目地プレート7は、この目地プレート支持体10に支持されている。すなわち、目地プレート7は、やや厚みがある長板状の目地プレート支持体10を介して、その一端部が支持レール5の支持部11に間接的に支持されている。
【0019】
この目地プレート支持体10は、前記支持レール5の支持部11に略係合する角柱状又は両端部が閉塞された角パイプ状等の断面形状に形成されており、その両端部は目地プレート7の前後方向の端部よりも前後方向にそれぞれ突出している。また、本実施形態においては、この目地プレート支持体10には、目地プレート7を取り付けるための係止杭14が複数個固定されている。
【0020】
ここで、本発明における「目地プレート7の前後方向に端部」とは、複数個の目地プレート7を用いる場合には、この複数個の目地プレート7のうち、端部に位置する目地プレート7の前方の端部(7a)又は後方の端部(7b)をいう。すなわち、最も前方側に位置する目地プレート7の前方側の端部7aと最も後方側に位置する目地プレート7の後方側の端部7bが「目地プレート7の前後方向の端部」となる(図3を参照)。
【0021】
次に、他方の躯体4の床面には目地プレート7の他端部が左右方向にスライド移動可能な凹所状の目地プレート支持部6が形成されている。この目地プレート支持部6の目地部2と反対側の端部には、地震によって目地部2が狭くなった場合に、目地プレート7の他端部が乗り上げる乗り上げ傾斜面12が形成されている。
【0022】
次に、目地プレート7は、例えば図2図4等に示すように、浅皿状の目地プレート本体13と、前記目地プレート本体13の一端部側の両側部に設けられ、前記目地プレート支持体10に固定された係止杭14が挿入される1対の下部が開口した筒状の杭ケース15と、前記目地プレート本体13に充填されたセメントやモルタル等の充填部材16(図2参照)と、前記充填部材16の上部を覆うように設けられた化粧板17と、目地プレート本体13の他端部にヒンジ部材18を介して設けられたカバープレート19と、前方又は後方側の端部に儲けられたカバー部材8とで構成されている。
【0023】
なお、本実施形態のように複数個の目地プレート7によって目地部2を塞ぐ場合には、中間に位置する目地プレート7Aにはカバー部材8が設けられない。
【0024】
カバー部材8は、本実施形態においては、断面形状が略アングル状で前後方向に延在するレール状の部材で、支持レール5の上面及び目地部側の面の全体を覆うように目地プレート7に設けられている。なお、カバー部材8は支持レール5を覆うことができる形状であればどのような形状でもよく、例えば断面形状が略クランク形状や円弧状等に形成してもよい。
【0025】
本実施形態では、支持レール5にカバー部材8が前後方向にスライド移動可能に支持するカバー部材摺動部20を形成し、付勢具22の付勢力によりカバー部材8と目地プレート支持体10とが同調するように取り付けている。このカバー部材摺動部20にも滑動部材9を設けてカバー部材8を支持してもよく、滑動部材9を設けず、単に前後方向へのスライド移動をガイドできるものとしてもよい。
【0026】
このカバー部材8は、カバー部材摺動部20を支持レール5に形成しない場合には目地プレート7に係合片(図示せず)等を設け、この係合片にカバー部材8の被係合片(図示せず)を係合させ前後方向の移動のみ目地プレート7に同調するように着脱自在に設けてるとよい。このように設けることにより、地震によって目地プレート7の他端部が上方に回動した際に、カバー部材8はやや上方へ位置変異するものの、目地プレート7と同調して回動することがなく、カバー部材8とカバー部材摺動部20が干渉し破損することを防止できる。なお、目地プレート7の他端部が上方へ回動しないような目地プレート支持部6に支持される場合には、目地プレート7の前後端部に固定的に取り付けてもよい。
【0027】
本実施形態においては、カバー部材8の前後方向の端部には、前記カバー部材8と支持レール5の前後方向の端部の隙間を略閉塞する蓋体21が設けられている。この蓋体21は、支持レール5の前後方向の端部に略当接するようにカバー部材8に固定されており、このような蓋体21を設けることにより、落ち葉等が入り込むことを確実に防止できる。
【0028】
また、この蓋体21に一端部が取り付けられ前記目地プレート支持体10に他端部が取り付けられたコイルスプリング等の付勢具22が設けられており、常時蓋体21が支持レール5の端部に当接するように付勢するとともに、カバー部材8が目地プレート支持体10に略当接するように付勢している。
【0029】
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、図5に示すように、目地プレート7の他端部が目地プレート支持部6の乗り上げ傾斜面12により目地プレート7の他端部が上方にせり上がり地震による揺れ動きを吸収する。
【0030】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、目地プレート7の他端部が目地プレート支持部6の上面を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0031】
地震で躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動くと、図7に示すように目地プレート7は支持レール5上を前後方向にスライド移動し地震による揺れ動きを吸収する。このとき、複数個の目地プレート7は目地プレート支持体10に設けられた係止杭14によって一端部が取り付けられているので、複数個の目地プレート7と目地プレート支持体10とが一体となって前後方向にスライド移動する。
また、図7の状態においては、後方側のカバー部材8は、目地プレート支持体10と同調して前後方向にスライド移動するが、前方側のカバー部材8は蓋体21と支持レール5の端部が当接してカバー部材8のスライド移動を阻止し、目地プレート支持体10と同調せずに通常時の位置にとどまり、カバー部材8と目地プレート7の端部7aとの間の隙間は目地プレート支持体10により覆われる。これにより、地震による揺れ動き時においても支持レール5が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。地震による揺れ動きが終了すると自動的に目地プレート7やカバー部材8等は通常状態に復帰する。
【0032】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8乃至図10に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図8乃至図10示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、一端部側の底部に複数個の滑動部材9を備えた板状の目地プレート7Bを用いるとともに、この目地プレート7Bの一端部を、目地プレート支持体10を介さず支持レール5で支持した点で、このような目地プレート7Bを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0034】
なお、本実施形態においては、目地プレート7Bは地震時に他端部が上方へせり上がるものではないため、カバー部材8を目地プレート7Bに固定的に取り付けてもよく、そのような場合、蓋体21は支持レール5に干渉しないように固定するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0036】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:支持レール、 6:目地プレート支持部、
7:目地プレート、 8:カバー部材、
9:滑動部材、 10:目地プレート支持体、
11:支持部、 12:乗り上げ傾斜面、
13:目地プレート本体、 14:係止杭、
15:杭ケース、 16:充填部材、
17:化粧板、 18:ヒンジ部材、
19:カバープレート、 20:カバー部材摺動部、
21:蓋体、 22:付勢具。