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特開2023-110994外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁
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  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図1
  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図2
  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図3
  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図4
  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図5
  • 特開-外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110994
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】外装材、外壁材のセットおよび鎧張り構造の外壁
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012592
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】320013517
【氏名又は名称】東レ建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】永山 義通
(72)【発明者】
【氏名】安田 真洋
(72)【発明者】
【氏名】坂口 尚大
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AA26
2E110AA57
2E110BB02
2E110BB23
2E110DA03
2E110DC06
2E110GB01W
(57)【要約】
【課題】
複雑で自然な意匠表現を可能とする外壁材を提案する。
【解決手段】
周期をもたないか、10m以上の周期をもつ模様を意匠面として有する外壁材であって、前記の外壁材は長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面を有し、前記外壁材の短辺側には相決り加工が施されている外壁材とし、また、模様が異なった複数種の外壁材による外壁材のセットとする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期をもたないか、10m以上の周期をもつ模様を意匠面として有する外壁材であって、前記の外壁材は長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面を有し、前記外壁材の短辺側には相決り加工が施されている外壁材。
【請求項2】
前記の模様において、模様部と地部のJIS Z 8781-4にて求められる、明度(L)の差が7.34以上であるか、彩度(√((a+(b))の差が0.84以上である、ことを特徴とする請求項1記載の外壁材。
【請求項3】
前記の模様は、木目調または石調であることを特徴とする請求項1記載の外壁材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の外壁材が2枚以上包装された外壁材のセットであって、そのうち少なくとも2枚の外壁材の模様は異なる模様である外壁材のセット。
【請求項5】
請求項4に記載の外壁材のセットであって、外壁材の模様は少なくとも3種以上の模様から選択されたものである外壁材のセット。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の外壁材のセットによって施工された鎧張り構造の外壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に用いる外装材に関し、特に鎧張りに適した外壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁は、その建築物の所有者の美意識やステータスまたは機能性を象徴するものとしてその意匠性には粋が凝らされていることがある。
【0003】
意匠性を高めるひとつの方法としては、意匠面を有した外壁材を用いることがあげられる。外壁材に意匠面を形成する方法としては多くの方法が知られている。また、外壁全体の設計手法として、特許文献1では多くの外壁パネルの情報を入力し、外郭フレームによって囲繞された架構面内に桟材と外壁パネルとを配置する配置パターンを決定する設計支援システムの提案がなされている。
【0004】
また、鎧張り構造は、欧米の民家の家屋構造として良く採用されており、また、日光によって生成される陰影が時々刻々と変化することから、高い意匠性を有する外壁構造として人気を博している。
【0005】
ところで、外壁材が用いられる場合、外壁は複数枚の外壁材によって構成される。該複数の外壁材が無地の単色の場合は、外観は極めて単調なものとなる。また、外壁材に模様が施された場合であっても、同じ模様が繰り返されることによって全体の印象が単調なものとなり、または、意匠の規則性による人工的な違和感を発生させることがある。
【0006】
また、耐水性や防水性を確保する必要から、外壁材と他の外壁材との隙間にはシーリング材が施されるところ、このシーリング材部分には意匠を施すことができず、また、シーリング材自体が視認されることで、外壁全体としての意匠性が損なわれることがある(図5参照)。また、外壁材の意匠としてもこれを前提に設計することとなるので、用いる意匠に制約を受けることとなる。
【0007】
同じ意匠の外壁材が複数枚並べて用いられることでの意匠の規則性によってもたらされる人工的な違和感は、外壁材を横方向にずらして配置する方法、例えば千鳥張りや乱張り、によって幾分緩和することができるが、完全に解消することは困難であり、また、シーリング材の施工による制約までは緩和または解消することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-135590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来技術の問題を解決するため、複雑で自然な意匠表現を可能とする外壁材を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決する本発明の要旨は、次のとおりのものである。
(1) 周期をもたないか、10m以上の周期をもつ模様を意匠面として有する外壁材であって、前記の外壁材は長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面を有し、前記外壁材の短辺側には相決り加工が施されている外壁材。
(2) 前記の模様において、模様部と地部のJIS Z 8781-4にて求められる、明度(L)の差が7.34以上であるか、彩度(√((a+(b))の差が0.84以上である、ことを特徴とする前記(1)記載の外壁材。
(3) 前記の模様は木目調または石調であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の外壁材。
(4) 前記(1)~(3)のいずれかに記載の外壁材が2枚以上包装された外壁材のセットであって、そのうち少なくとも2枚の外壁材の模様は異なる模様である外壁材のセット。
(5) 前記(4)に記載の外壁材のセットであって、外壁材の模様は少なくとも3種以上の模様から選択されたものである外壁材のセット。
(6) 前記(4)または(5)に記載の外壁材のセットによって施工された鎧張り構造の外壁。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建築物の壁面に施工した際に、自然で複雑な意匠性に優れた外壁、特には鎧張り構造の外壁、を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の外壁材の例を表す正面図および断面図である。
図2】本発明の外壁材を短辺部で接続した部分の拡大断面図である。
図3】本発明の外壁材のセットの例を説明するための図である。
図4】本発明の外壁材のセットによる施工例を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図5】典型的な外壁材の施工例を説明するための図である。
図6】本発明の外壁材を用いた施工例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の外壁は、周期をもたないか、10m以上の周期をもつ模様を意匠面として有する外壁材であって、前記の外壁材は長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面を有し、前記外壁材の断面は、少なくとも一方の長辺の端部において、意匠面側とは反対の面側が薄いことで中央部よりも薄い厚みの部分を有し、かつ、前記外壁材の短辺側には相決り加工が施されている。
【0014】
長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面を有し、また、意匠面は周期を持たないか10m以上の周期を有する模様を有することで、模様に周期性がない場合はもちろんのこと、周期性がある場合でも外壁材を複数並べて配置したとしても、意匠の規則性によってもたらされる人工的な違和感を与えることが非常に緩和されるか、解消される。また、長辺が1,000mm以上3,030mm以下、短辺が150mm以上235mm以下の長方形の意匠面とすることで、外壁材としてのハンドリング性を損なわない一方で、意匠面の視認性を損なわず、また、壁面での複雑かつ自然な意匠表現を可能とできる。
【0015】
また、模様としては、自然な外観を与えることから、木目調または石調であることが望ましい。木目調としては、板目、柾目、杢目などの模様あり、また、石調としては、堆積岩(砂岩、泥岩、礫岩、チャート、石灰岩、火砕岩、凝灰岩、トラバーチンなど)、火成岩(流紋岩、安山岩、玄武岩、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、石英岩、カンラン岩など)、変成岩(大理石、粘板岩、千枚岩、片岩、片麻岩、蛇紋岩、角閃岩、緑色岩、輝岩、泥質岩、塩基性岩、珪質岩など)の模様とすることができる。こうした模様は、天然の木材あるいは石材を参考に生成することができる。
【0016】
また、光沢を帯びた金属板や錆びた金属板の模様を採用することもできる。模様としては、自然界に存在する周期性がない模様はもちろんのこと、人工的に生成された模様であっても構わない。なお、本発明にいう「模様」には線画以外にも色彩の変化を含む。色彩の変化は連続的な変化であっても断続的な変化であっても構わない。
【0017】
また、特には木目調の場合、曲線によって描かれる模様は、意匠面の端部において、曲線がつながってみえるように、曲線の端の位置があらかじめ決められた位置になるようにされていることが好ましい。本発明の外壁材は描かれた曲線自体には周期性がないか、10m以上の周期があるので、この場合であったとしても、後述するように、本発明の外壁材は意匠面のつなぎ目自体が視認されがたい構造となっていることから、人工的な違和感にはつながりがたい。
【0018】
また、意匠面に模様が付されている場合、模様部と地部のJIS Z 8781-4にて求められる、明度(L)の差が7.34以上であるか、彩度(√((a+(b))の差が0.84以上である。このような模様とすることで、模様の視認性が高まるので、単調な外観となることがない。
【0019】
また、意匠面は、必要に応じて、平滑なものとしても良いし、つや消し加工が施されていても良いし、エンボス加工などによる微細な凹凸が設けられていても構わない。また、耐候性や耐水性などの機能を向上させることを目的として保護層が設けられていても構わない。
【0020】
本発明の外壁材は、外壁材の短辺側には相決り加工が施されている。図面を用いて以下説明する。
【0021】
図1は、本発明の外壁材の正面図と断面図を表している。B-B’断面図において、短辺部分の断面のB側は、意匠面側が欠けることで薄くなっており、B’側は意匠面側とは反対側がかけることで薄くなっている。図2はこの外壁材を短辺部で接続した状態を表しており、隣接する端部において薄くなっている部分が交互に表れていることで重ねあわせることができる。そして、重ね合わせ部3に窪み4または防水材を施すことで、耐水性や防水性を確保することができるとともに、窪みまたは防水材が視認されがたくなる。その結果、必要な耐水性能や防水性能を確保しつつも窪みまたは防水材によって外観が損なわれることがない。
【0022】
なお、本発明にいう「相決り加工」は典型的には図2に示すような構造を表すが、外壁材の軽量化を度外視して厚くしても良いのであれば、その均等範囲の例示として、端部断面を一方の外壁材を凹形状、他方の外壁材を凸形状とした凹凸形状として、凸部を凹部にかみ合わせ、かみ合わせの中に窪みまたは防水材を施すような構造を挙げることができる。
【0023】
本発明の外壁材の意匠面に意匠を施すにあたっては、インクジェット法による印刷を用いることが簡便である。
【0024】
インクジェット法を用いることで、模様の大きさの制約を解消することができ、また、自由かつ多彩な意匠を付与することができる。そして、印刷プログラムによって、枚葉毎に意匠を変えることも可能である。
【0025】
本発明の外壁材のセットは、複数枚の外壁材が包装されたものであり、そのうち、少なくとも2枚の外壁材の模様は異なっている。好ましくは3枚以上、より好ましくは5枚以上の外壁材のセット中の外壁材の模様が異なっていることが好ましい。典型的には、図3に示すように外壁材のセット中に含まれる全ての外壁材の模様が異なるものとできる。ただし、図3に図示された外壁材(1’、1’’、1’’’、1’’’’、1’’’’’)おいて、それぞれにハッチングで表された模様は、その外壁材に付された模様を表しているのではなく、単に異なる模様であることを表しているに過ぎない(図4においても同じ)。
【0026】
また、ひとつの外壁材のセットの中において、外壁材の模様は少なくとも3種以上の模様から選択されたものであることが望ましい。好ましくは5種以上の模様から選択され、更に好ましくは7種以上の模様から選択されたものが好ましい。このようにすることで、外壁材のセット間でもセット中の外壁材の組み合わせを多様なものとできるので、より自然な壁面の外観を実現することが可能である。
【0027】
外壁材は、通常積み重ねて出荷され、施工現場で梱包が解かれて施工される。このとき、通常はセット中の上の外壁材から施工に供されることが通常であるが、本発明の外壁材のセットとすることによって、積み重ねられた順に施工しても、自然な壁面の外観を実現することができる。なお、このことから理解できるように、予定される施工順を想定して外壁材のセットを構成することも可能である。
【0028】
このような外壁材のセットは、先述したインクジェット法による印刷によって意匠面に意匠を付与することで簡便に実現できる。すなわち、印刷プログラムによって枚葉毎に付与する意匠を制御できることから、外壁材の作製順に外壁材のセットとして梱包してゆけばよいのである。
【0029】
本発明の外壁材および外壁材のセットは、鎧張り構造の外壁に好適に用いることができる。図4は施工の例を表した図である。図4に示すように、異なる模様が付された外壁材を用いることで、人間に知覚できる範囲では模様の規則性を認識することはないか、極めて困難なものとできる。加えて、外壁材の長辺にあっては、上の外壁材が被さることで、また、外壁材の短辺にあっては、相決り加工が施されていることで窪みまたは防水材が視認されることがないので、壁面の外観を自然なものとすることができる。そして、鎧張り構造の特徴である陰影を効果的に利用して、よりいっそう自然に近い壁面の外観を実現することが可能である。また、図4に示すような、乱張り加工を採用することでよりいっそう自然な壁面の外観とすることが可能である。
【0030】
図6は、本発明の外壁材を用いて実験的な施工を行った例である。この例では、木目調の外壁材としている。図から理解できるとおり、人工的な要素を感じさせない、極めて自然な外観を実現できていることが理解される。
【符号の説明】
【0031】
1、1’、1’’、1’’’、1’’’’、1’’’’’: 外壁材
2: 意匠面
3: 重ね合わせ部
4: 窪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6