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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110995
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20230803BHJP
   B65B 13/18 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B65B13/18 G
B65B13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012593
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森村 好一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴大
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA42
3E052BA18
3E052CA18
3E052CB05
3E052CB07
3E052FA09
3E052GA15
3E052HA09
3E052JA01
3E052LA20
(57)【要約】
【課題】結束機の使用者が一対のローラの間にワイヤを挿入する操作で、モータの駆動によりワイヤを送る動作が開始されることを認識可能とした結束機を提供する。
【解決手段】鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを送るワイヤ送り部3Aと、ワイヤ送り部3Aで正方向に送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回すワイヤの送り経路を構成するカール形成部5Aと、ワイヤ送り部3Aで逆方向に送られて鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7Aと、ワイヤ送り部3Aと結束部7Aを制御する制御部14Aを備える。ワイヤ送り部3A、ワイヤWを挟持して回転動作で送る一対の送りギア30を備え、制御部14Aは、一対の送りギア30でワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されると、第1の状態と第2の状態に状態を変化させて、ワイヤWを正方向に送る。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを第1の方向に送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で第1の方向に送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回すワイヤの送り経路を構成するカール形成部と、
結束物の周囲に巻かれたワイヤを捩じる結束部と、
前記ワイヤ送り部と前記結束部を制御する制御部とを備え、
前記ワイヤ送り部は、
ワイヤを挟持して、回転動作でワイヤを送る一対の送り部材と、
前記送り部材を駆動してワイヤを第1の方向に送る第1の回転方向に回転する送りモータとを備え、
前記制御部は、一対の前記送り部材でワイヤを第1の方向に送ることが可能な位置にワイヤが挿入されると、第1の状態と第2の状態に状態を変化させて、ワイヤを第1の方向に送る
結束機。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の状態と前記第2の状態で、前記送りモータの第1の回転方向への回転の有無及び回転速度を制御する
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の状態と前記第2の状態で、報知情報の出力の有無を切り替える
請求項1または請求項2に記載の結束機。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の状態で前記送りモータを第2の回転速度で第1の回転方向に回転させる前に、前記第1の状態で前記第2の回転速度より低速の第1の回転速度で前記送りモータを第1の回転方向に回転させる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結束機。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の状態で前記送りモータを非回転としたワイヤ送り待機時間経過後、前記第2の状態で前記送りモータを第1の回転方向に回転させる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結束機。
【請求項6】
前記制御部は、一対の前記送り部材でワイヤを第1の方向に送ることが可能な位置にワイヤが挿入されると、前記第1の状態で報知情報を出力する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結束機。
【請求項7】
前記制御部は、前記送りモータを第1の方向と逆方向の第2の回転方向に回転させ、一対の前記送り部材で挟持したワイヤを、一対の前記送り部材から離れる位置まで第2の方向に送る
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の結束機。
【請求項8】
一対の前記送り部材の間にワイヤが非挿入である状態で、一対の前記送り部材の間隔を確保する保持部材を備えた
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の結束機。
【請求項9】
一対の前記送り部材の間にワイヤを誘導する誘導部を有したワイヤガイドを備えた
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋などの結束物をワイヤで結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている。結束機は、リールに巻かれたワイヤを送り出して鉄筋に巻き回す結束線送り機構と、鉄筋に巻回されたワイヤを掴む把持機構と、把持機構を回転駆動してワイヤを捩じる結束線捩り機構とを備えており、トリガ操作によりワイヤ送り機構と把持機構とワイヤ捩り機構とが順に動作して1サイクルの結束動作を行う。
【0004】
鉄筋をワイヤで結束する場合、結束が緩いと、鉄筋同士がずれてしまうため、鉄筋同士を強固に保持することが求められている。そこで、鉄筋の周囲に巻き回されたワイヤを逆方向に送り、鉄筋に巻き付けるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、回転駆動される一対のローラでワイヤを送る技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-34305号公報
【特許文献2】実公平7-34110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一対のローラでワイヤを挟持して送る結束機において、ワイヤが挿入されたことを検知して、ワイヤの装填を自動で行えるようにする技術が考えられる。
【0007】
しかし、結束機の使用者が一対のローラの間にワイヤを挿入する操作で、モータの駆動によりワイヤを送る動作が開始される技術では、使用者は、結束機がどのタイミングでワイヤが挿入されたことを検知してワイヤを送る動作が開始したのかということを認識することが困難である。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、結束機の使用者が一対のローラの間にワイヤを挿入する操作で、モータの駆動によりワイヤを送る動作が開始されることを認識可能とした結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワイヤを第1の方向に送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で第1の方向に送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回すワイヤの送り経路を構成するカール形成部と、結束物の周囲に巻かれたワイヤを捩じる結束部と、ワイヤ送り部と結束部を制御する制御部とを備え、ワイヤ送り部は、ワイヤを挟持して、回転動作でワイヤを送る一対の送り部材と、送り部材を駆動してワイヤを第1の方向に送る第1の回転方向に回転する送りモータとを備え、制御部は、一対の送り部材でワイヤを第1の方向に送ることが可能な位置にワイヤが挿入されると、第1の状態と第2の状態に状態を変化させて、ワイヤを第1の方向に送る結束機である。
【0010】
本発明では、ワイヤを第1の方向に送る動作を実行する際に、第1の状態と第2の状態に状態を変化させることで、送りモータの駆動によりワイヤが第1の方向へ送られることを認識させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結束機の使用者が一対の送りギアの間にワイヤを挿入する操作で、送りモータの駆動によりワイヤが第1の方向へ送られることを認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】鉄筋結束機の一例を示す側面図である。
図1B】鉄筋結束機の内部の構成の一例を示す側面図である。
図1C】鉄筋結束機の一例を示す斜視図である。
図2A】ワイヤ送り部の一例を示す斜視図である。
図2B】ワイヤ送り部のワイヤ装填時の動作の一例を示す断面図である。
図2C】ワイヤ送り部のワイヤ装填時の動作の一例を示す断面図である。
図3A】ワイヤガイドの一例を示す側面図である。
図3B】ワイヤガイドの一例を示す下面図である。
図3C】ワイヤ送り部とワイヤガイドの一例を示す側断面図である。
図3D】ワイヤガイドとワイヤ送り部の関係を示す鉄筋結束機の要部拡大断面図である。
図4A】結束部の一例を示す斜視図である。
図4B】結束部の一例を示す断面平面図である。
図4C】結束部の一例を示す断面平面図である。
図5】鉄筋結束機の制御機能の一例を示すブロック図である。
図6】自動装填排出モードの動作の一例を示すフローチャートである。
図7】自動装填排出モードの動作の一例を示すフローチャートである。
図8】自動装填排出モードの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
【0014】
<鉄筋結束機の構成例>
図1Aは、鉄筋結束機の一例を示す側面図、図1Bは、鉄筋結束機の内部の構成の一例を示す側面図、図1Cは、鉄筋結束機の一例を示す斜視図である。鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部10Aとハンドル部11Aを備える。
【0015】
また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを矢印Fで示す第1の方向である正方向に送り、結束物である鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す第2の方向である逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。
【0016】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWが収容されるマガジン2Aと、ワイヤWを送るワイヤ送り部3Aと、ワイヤ送り部3Aに送られるワイヤWをガイドするワイヤガイド4Aを備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部5Aと、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを切断する切断部6Aを備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7Aと、結束部7Aを駆動する駆動部8Aを備える。
【0017】
マガジン2Aは、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が回転、着脱可能に収納される。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。リール20は、1本または複数本のワイヤWが図示しないボビン部に巻かれ、リール20から1本または同時に複数本のワイヤWを引き出せるようになっている。
【0018】
ワイヤ送り部3Aは、1本または並列された複数本のワイヤWを挟持して送る一対の送り部材として、回転動作でワイヤWを送る一対の送りギア30(第1の送りギア30L、第2の送りギア30R)を備える。ワイヤ送り部3Aは、後述する送りモータの回転動作が伝達されて一対の送りギア30が回転する。これにより、ワイヤ送り部3Aは、一対の送りギア30の間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成では、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0019】
カール形成部5Aは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWに巻き癖をつける第1のガイド部の一例であるカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7Aに誘導する第2のガイド部の一例である誘導ガイド51を備える。鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWの経路がカール形成部5Aで規制されることで、ワイヤWの軌跡が図1Bに二点鎖線で示すようなループRuとなり、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0020】
切断部6Aは、図示しない固定刃部と、固定刃部との協働でワイヤWを切断する図示しない可動刃部と、結束部7Aの動作を可動刃部に伝達する伝達機構62を備える。伝達機構62は、結束部7Aの動作を、移動部材83を介して切断部6Aに伝達し、結束部7Aの動作と連動してワイヤWを切断する。
【0021】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70を備える。結束部7Aの詳細な実施形態は後述する。駆動部8Aは、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0022】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ係止体70で係止されるワイヤWの送り経路に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。また、鉄筋結束機1Aは、上述したカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51が、本体部10Aの前側の端部に設けられる。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91が、本体部10Aの前側の端部で、カールガイド50と誘導ガイド51との間に設けられる。
【0023】
また、鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aが本体部10Aから下方向に延在する。更に、ハンドル部11Aの下部にバッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。また、鉄筋結束機1Aは、マガジン2Aがハンドル部11Aの前方に設けられる。鉄筋結束機1Aは、上述したワイヤ送り部3A、切断部6A、結束部7A,結束部7Aを駆動する駆動部8Aなどが本体部10Aに収納される。
【0024】
鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aの前側にトリガ12Aが設けられ、ハンドル部11Aの内部に操作スイッチ13Aが設けられる。また、本体部10Aに後述する制御部14Aを構成する回路などが実装された基板100が設けられる。
【0025】
鉄筋結束機1Aは、電源のオン、オフ、ワイヤWによる結束強さの設定、ワイヤWの自動装填、自動排出などを実行する操作を受ける操作部16を備える。操作部16は、本体部10Aの後面に設けられ、電源のオン、オフを行う電源スイッチ16aと、自動装填排出モードを実行する操作を受ける自動装填排出スイッチ16bを備える。また、操作部16は、ワイヤWによる結束強さを設定可能な結束力設定部の一例として、ワイヤWによる結束強さを選択可能なトルクダイヤル16cを備える。
【0026】
操作部16は、電源スイッチ16a、自動装填排出スイッチ16b及びトルクダイヤル16cの周囲に、本体部10Aの後方に突出する形状の凸部16dを備えることで、電源スイッチ16a、自動装填排出スイッチ16b及びトルクダイヤル16cが設けられる位置が凹状となる。これにより、電源スイッチ16a、自動装填排出スイッチ16b及びトルクダイヤル16cが本体部10Aの後方に突出せず、誤作動が抑制される。また、ワイヤWの排出や装填は、電源のオフ、オンの後に行われるので、自動装填排出スイッチ16bを電源スイッチ16aの近く、本例では同じ操作部16に設けることで操作性が向上する。
【0027】
図2Aは、ワイヤ送り部の一例を示す斜視図、図2B及び図2Cは、ワイヤ送り部のワイヤ装填時の動作の一例を示す断面図であり、次に、各図を参照して、ワイヤ送り部3Aの構成について説明する。
【0028】
一対の送りギア30の一方を構成する一方の送り部材である第1の送りギア30Lは、ワイヤ送り部3Aの支持部材301に、軸300Lにより回転可能に支持される。第1の送りギア30Lは、駆動力の伝達を行う歯部31Lを備える。歯部31Lは、本例では平歯車を構成する形状で、第1の送りギア30Lの外周の全周に形成される。また、第1の送りギア30Lは、ワイヤWが入る溝部32Lを備える。溝部32Lは、本例では断面形状が略V字形状の凹部で構成され、第1の送りギア30Lの外周の全周に、円周方向に沿って形成される。
【0029】
一対の送りギア30の他方を構成する他方の送り部材である第2の送りギア30Rは、駆動力の伝達を行う歯部31Rを備える。歯部31Rは、本例では平歯車を構成する形状で、第2の送りギア30Rの外周の全周に形成される。また、第2の送りギア30Rは、ワイヤWが入る溝部32Rを備える。溝部32Rは、本例では断面形状が略V字形状の凹部で構成され、第2の送りギア30Rの外周の全周に、円周方向に沿って形成される。
【0030】
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rを対向させて、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが、ワイヤWの送り経路を挟んで設けられる。
【0031】
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWを挟持した状態で、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rが噛み合う。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間で回転による駆動力が伝達される。
【0032】
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの一方、本例では第1の送りギア30Lを駆動する送りモータ33と、送りモータ33の駆動力を第1の送りギア30Lに伝達する駆動力伝達機構34を備える。
【0033】
駆動力伝達機構34は、送りモータ33の軸に取り付けられた小ギア33aと、小ギア33aとかみ合う大ギア33bを備える。また、駆動力伝達機構34は、大ギア33bから駆動力が伝達され、第1の送りギア30Lとかみ合う送り小ギア34aを備える。小ギア33a、大ギア33b及び送り小ギア34aは、それぞれ平歯車で構成される。
【0034】
第1の送りギア30Lは、送りモータ33の回転動作が駆動力伝達機構34を介して伝達されて回転する。第2の送りギア30Rは、第1の送りギア30Lの回転動作が歯部31Lと歯部31Rとの噛み合いにより伝達され、第1の送りギア30Lに従動して回転する。
【0035】
これにより、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。2本のワイヤWを送る構成では、第1の送りギア30Lの溝部32Lと一方のワイヤWとの間に生じる摩擦力、第2の送りギア30Rの溝部32Rと他方のワイヤWとの間に生じる摩擦力、及び、一方のワイヤWと他方のワイヤWとの間に生じる摩擦力により、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0036】
ワイヤ送り部3Aは、送りモータ33の回転方向の正逆を切り替えることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
【0037】
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挟持するため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが互いに近づく方向に押圧される構成を備える。すなわち、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挟持すると共に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填できるようにするため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが互いに離接する方向に変位可能に構成される。本例では、送りモータ33の駆動力を第1の送りギア30Lから受け、送りモータ33の駆動力が直接伝達されない第2の送りギア30Rを、第1の送りギア30Lに対して変位させる。
【0038】
そこで、ワイヤ送り部3Aは、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して接近及び離間させる方向に変位させる第1の変位部材36を備える。また、第1の変位部材36を変位させる第2の変位部材37を備える。第1の変位部材36及び第2の変位部材37は変位部の一例で、一対の送りギア30の一方または両方を、互いが接近及び離間する方向に変位させる。本例では、上述したように、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して接近及び離間させる方向に変位させる。
【0039】
第1の変位部材36は、一方の端部側に第2の送りギア30Rが軸300Rにより回転可能に支持される。第1の送りギア30Lの軸300Lと第2の送りギア30Rの軸300Rは、互いに平行である。また、第1の変位部材36は、ワイヤ送り部3Aの支持部材301に、他方の端部が軸36aを支点として回転可能に支持される。
【0040】
第1の変位部材36は、回転動作の支点となる軸36aが、第2の送りギア30Rの軸300Rと平行な向きである。これにより、第1の変位部材36は、軸36aを支点とした回転動作により変位し、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して離接させる。
【0041】
第1の変位部材36は、第2の変位部材37から押圧される被押圧部36bを一方の端部側に備える。被押圧部36bは、第2の送りギア30Rの軸300Rを支持する部位の側方に設けられる。
【0042】
第2の変位部材37は、ワイヤ送り部3Aの支持部材301に、軸37aを支点として回転可能に支持される。また、第2の変位部材37は、軸37aを挟んだ一方の端部側に、第1の変位部材36の被押圧部36bを押圧する押圧部37bを備える。
【0043】
第2の変位部材37は、軸37aを支点とした回転動作により変位し、押圧部37bが第1の変位部材36の被押圧部36bを押圧、及び、押圧部37bによる被押圧部36bの押圧を解除する。
【0044】
ワイヤ送り部3Aは、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに押圧するバネ38を備える。バネ38は、例えば圧縮コイルバネで構成され、第2の変位部材37の軸37aを挟んだ他方の端部側を押圧する。
【0045】
第2の変位部材37は、バネ38による押圧により、軸37aを支点とした回転動作で変位し、押圧部37bが第1の変位部材36の被押圧部36bを押圧する。第2の変位部材37の押圧部37bが第1の変位部材36の被押圧部36bを押圧すると、第1の変位部材36は、軸36aを支点とした回転動作で変位する。これにより、第2の送りギア30Rは、バネ38の力で第1の送りギア30L方向に押圧される。
【0046】
第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが装填されている場合、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWが挟持される。
【0047】
また、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWを挟持した状態で、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rが噛み合う。
【0048】
ワイヤ送り部3Aは、第2の変位部材37を変位させる操作ボタン39を備える。操作ボタン39は操作部材の一例で、第2の変位部材37を介してバネ38に対向する位置に設けられる。操作ボタン39は、本体部10Aの一方の側面から外側に突出し、矢印T1で示す本体部10Aに対して押す方向、矢印T2で示す本体部10Aから突出する方向に移動可能に支持される。操作ボタン39を本体部10Aに対して押す矢印T1方向に押圧することによりバネ38は収縮し、操作ボタン39とバネ38に挟まれた第2の変位部材37が、軸37aを支点とした回転動作により変位して矢印Y1方向に回転する。
【0049】
第2の変位部材37が矢印Y1方向に回転すると、押圧部37bによる被押圧部36bの押圧が解除され、第1の変位部材36に支持された第2の送りギア30Rが、第1の送りギア30Lから離れる方向である矢印U1方向に移動可能となる。
【0050】
操作ボタン39を本体部10Aに対して押す矢印T1方向に押圧する力が解除されるとバネ38が伸長し、操作ボタン39とバネ38に挟まれた第2の変位部材37が、軸37aを支点とした回転動作により変位して矢印Y2方向に回転するとともに、バネ38及び第2の変位部材37に押されて操作ボタン39が本体部10Aから突出する方向である矢印T2方向に移動する。
【0051】
第2の変位部材37がバネ38の力で矢印Y2方向に回転すると、押圧部37bが第1の変位部材36の被押圧部36bを押圧し、第1の変位部材36に支持された第2の送りギア30Rが、第1の送りギア30Lに近づく方向である矢印U2方向にバネ38の力で押圧される。これにより、第1の送りギア30Lの溝部32Lに挿入された一方のワイヤWと、第2の送りギア30Rの溝部32Rに挿入された他方のワイヤWが、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持される。
【0052】
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが非挿入である状態で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間隔を確保する保持部39aを備える。保持部39aは保持部材の一例で、本例では操作ボタン39に設けられる。保持部39aは、操作ボタン39の側方から突出する形態で、第2の変位部材37を介して操作ボタン39がバネ38の力で矢印T2方向に押圧されることで、操作ボタン39が移動可能に設けられた部位の本体部10Aの内側の面に突き当てられる。
【0053】
これにより、第2の変位部材37を介してバネ38で押圧される操作ボタン39の矢印T2方向の移動範囲が規制されることで、バネ38で押圧される第2の変位部材37の軸37aを支点とした矢印Y2方向への回転動作による移動範囲が規制される。
【0054】
操作ボタン39の保持部39aが本体部10Aに突き当てられた状態では、図2Bに示すように、第2の変位部材37の押圧部37bと第1の変位部材36の被押圧部36bとの間に隙間G1を形成し得る。したがって、第2の送りギア30Rが、第1の送りギア30Lに対してバネ38の力を受けずに離れる方向に、隙間G1だけ移動することが可能である。
【0055】
これにより、図2Cに示すように、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが非挿入である状態で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に隙間G2を形成し得る状態が保持される。
【0056】
図3Aは、ワイヤガイドの一例を示す側面図、図3Bは、ワイヤガイドの一例を示す下面図、図3Cは、ワイヤ送り部とワイヤガイドの一例を示す側断面図、図3Dは、ワイヤガイドとワイヤ送り部の関係を示す鉄筋結束機の要部拡大断面図であり、次に、各図を参照して、ワイヤガイドの構成について説明する。
【0057】
ワイヤガイド4Aは、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、送りギア30(第1の送りギア30L及び第2の送りギア30R)の上流側に配置される。ワイヤガイド4Aは、鉄筋結束機1Aが2本のワイヤWで鉄筋を結束する構成では、進入してきた2本のワイヤWを、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの並ぶ方向に沿って並列させて、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間にガイドする。
【0058】
ワイヤガイド4Aは、ワイヤWが通るガイド穴40Aを備える。ガイド穴40Aは、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して下流側の導出側開口40A1が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの並ぶ方向に沿った方向が長手方向となる長円状または楕円状の開口で構成される。
【0059】
導出側開口40A1は、長手方向の長さがワイヤWの直径の2倍程度の長さを持ち、短手方向の長さがワイヤWの直径程度の長さを持つ。これにより、ワイヤガイド4Aを通り導出側開口40A1から導出される2本のワイヤWの並列する向きが規制される。
【0060】
ガイド穴40Aは、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して上流側の導入側開口40A2が、下流側の導出側開口40A1に比べて開口面積が大きく構成される。これにより、ガイド穴40Aは、導入側開口40A2と導出側開口40A1の間の内面の一部または全てがテーパ状となり、導入側開口40A2から導出側開口40A1に向けて、徐々に開口面積が小さくなる錐状である。
【0061】
ワイヤガイド4Aは、導入側開口40A2と導出側開口40A1との間にワイヤWの誘導部41A(41A1、41A2)を備える。誘導部41Aは、ワイヤガイド4Aに導入されるワイヤWに対し、マガジン2Aに収納されるリール20に巻かれたワイヤWの巻き方向の外側に位置する誘導部41A1と、ワイヤWの巻き方向の内側に位置する誘導部41A2を備える。誘導部41A1及び誘導部41A2は、導入側開口40A2と導出側開口40A1との間のガイド穴40Aの内面で構成され、導入側開口40A2と導出側開口40A1との間の一部または全てがテーパ状となっている。
【0062】
第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが対向する部位において、溝部32Lと溝部32Rに挟持されたワイヤWは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った中心を通る。そこで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが対向する部位において、溝部32Lと溝部32Rが設けられた第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った中心と、導出側開口40A1の短手方向の中心を直線で結んだワイヤWが通る経路を基準経路Lと称す。
【0063】
ワイヤガイド4Aを通るワイヤWの延伸する方向が、基準経路Lと平行に近づくと、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、ワイヤガイド4Aを通過したワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32R間に入る成功率が高くなる。
【0064】
ワイヤガイド4Aに導入されるワイヤWが通る経路は、リール20に巻かれたワイヤWの量に応じて変化する。マガジン2Aに収納されたリール20とワイヤガイド4Aとの間でワイヤWが通る経路として、リール20に巻かれたワイヤWの量が多い場合の経路を図3DにW1で示し、リール20に巻かれたワイヤWの量が少ない場合の経路を図3DにW2で示す。
【0065】
リール20に巻かれたワイヤWの量が多い場合、リール20の外周付近からワイヤWが引き出されるので、ワイヤガイド4Aに導入されるワイヤWが通る経路W1は、基準経路Lに沿った経路となる。
【0066】
マガジン2Aにリール20を収容し、ワイヤWを装填する動作では、鉄筋結束機1Aの使用者がワイヤガイド4Aから第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが挿入される。新しいリール20は、巻かれたワイヤWの量が多いことから、リール20の外周付近からワイヤWが引き出される。これにより、導入側開口40A2からワイヤガイド4Aに挿入されたワイヤWは、送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った方向については、誘導部41A1に沿うようにして導出側開口40A1に誘導される。
【0067】
そこで、ワイヤガイド4Aを通るワイヤWの延伸する方向を、基準経路Lと平行に近づけるためには、ワイヤガイド4Aにおける誘導部41Aの基準経路Lに対する角度のうち、誘導部41A1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った角度α1を小さくする程よい。
【0068】
ワイヤガイド4Aにおいて、導出側開口40A1に近い側の誘導部41A(41A1、41A2)は基準経路Lと平行であっても良く、この場合、ワイヤガイド4Aにおいて、導出側開口40A1に近い側の誘導部41A(41A1、41A2)の基準経路Lに対する角度αは0°である。
【0069】
但し、ワイヤガイド4Aにおいて、導入側開口40A2に近い側の誘導部41A(41A1、41A2)の基準経路Lに対する角度αが小さくなると、導入側開口40A2の第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った長さL1が小さくなる。導入側開口40A2の長さL1が小さくなると、ワイヤWをガイド穴40Aに挿入しづらくなる。
【0070】
これに対し、上述したように、誘導部41A1の基準経路Lに対する角度α1は小さくした方がよい。そこで、誘導部41A1の基準経路Lに対する角度α1は小さい程好ましいが、導入側開口40A2の長さL1を確保する観点から、誘導部41A1の基準経路Lに対する角度α1は、0°以上17°以下であることが好ましく、0°超9°以下であることがより好ましい。
【0071】
一方、リール20に巻かれたワイヤWの量が少ない場合、リール20の中心のボビン部20aの付近からワイヤWが引き出されるので、ワイヤガイド4Aに導入されるワイヤWが通る経路W2は、基準経路Lに対し、リール20に巻かれるワイヤWの巻き方向の内側に向けて傾斜した経路となる。
【0072】
このため、ワイヤガイド4Aにおける誘導部41Aの基準経路Lに対する角度のうち、誘導部41A2の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った角度α2を小さくすると、リール20に巻かれたワイヤWの量が少ない場合、結束動作で送られるワイヤWが誘導部41A2に接し、ワイヤWを送る動作における負荷となったり、ワイヤWに折り癖が付く可能性がある。
【0073】
そこで、ワイヤガイド4Aにおける誘導部41Aの基準経路Lに対する角度のうち、誘導部41A2の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの軸方向に沿った角度α2は、下限値が10°以上であることが好ましく、角度α2の上限値は、90°未満であることが好ましい。誘導部41A2の基準経路Lに対する角度α2は、10°以上70°以下であることが好ましく、10°以上50°以下であることがより好ましい。
【0074】
図4Aは、結束部の一例を示す斜視図、図4B図4Cは、結束部の一例を示す断面平面図であり、次に、各図を参照して、結束部の構成について説明する。
【0075】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させる回転軸72を備える。結束部7Aと駆動部8Aは、回転軸72とモータ80が減速機81を介して連結され、回転軸72が、減速機81を介してモータ80に駆動される。
【0076】
ワイヤ係止体70は、回転軸72と連結されるセンターフック70Cと、センターフック70Cに対して開閉する第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lと、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを作動させると共に、ワイヤWを所望の形状に成形するスリーブ71とを備える。
【0077】
結束部7Aにおいて、センターフック70C及び第1のサイドフック70R、第2のサイドフック70Lが設けられた側を前側、回転軸72が減速機81と連結される側を後側とする。
【0078】
センターフック70Cは、回転軸72の一方の端部である前端に、回転軸72に対して回転可能、かつ、回転軸72と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0079】
第1のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して一方の側部に位置する。また、第1のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0080】
第2のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して他方の側部に位置する。また、第2のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0081】
これにより、ワイヤ係止体70は、軸71bを支点とした回転動作で、第1のサイドフック70Rの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2のサイドフック70Lの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。
【0082】
回転軸72は、減速機81と一体的に回転可能、かつ、減速機81に対して軸方向に移動可能とする構成を有した連結部72bを介して、他方の端部である後端が減速機81に連結される。連結部72bは、回転軸72を減速機81に近づく方向である後方へ付勢するバネ72cを備える。これにより、回転軸72は、バネ72cにより後方へ引っ張られる力を受けながら、減速機81から離れる方向である前方へ移動可能に構成される。
【0083】
スリーブ71は、支持枠76により回転及び軸方向に摺動可能に支持される。支持枠76は、環状の部材であり、周方向に回転不可及び軸方向に移動不可となる形態で、本体部10Aに取り付けられる。
【0084】
スリーブ71は、回転軸72が挿入される空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸72の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ72aの溝部に入る。スリーブ71は、回転軸72が回転すると、図示しない凸部と回転軸72の送りネジ72aの作用により、回転軸72の軸方向に沿った方向である前後方向へ、回転軸72の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ71は、回転軸72と一体的に回転する。
【0085】
スリーブ71は、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを開閉する開閉ピン71aを備える。
【0086】
開閉ピン71aは、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lに設けられた開閉ガイド孔73に挿入される。開閉ガイド孔73は、スリーブ71の移動方向に沿って延在し、スリーブ71と連動して移動する開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸71bを支点とした第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0087】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A2で示す後方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cから離れる方向に移動する。
【0088】
これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に、ワイヤWが通る送り経路が形成される。
【0089】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開いた状態では、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通る。センターフック70Cと第1のサイドフック70Rとの間を通るワイヤWは、カール形成部5Aに誘導される。そして、カール形成部5Aで巻き癖が付けられ、結束部7Aに誘導されたワイヤWは、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間を通る。
【0090】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A1で示す前方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cに近づく方向に移動する。これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じる。
【0091】
第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0092】
スリーブ71は、ワイヤWの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c1と、切断部6Aで切断されたワイヤWの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c2を備える。
【0093】
スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を曲げ部71c1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を曲げ部71c2で押して、鉄筋S側へ曲げる。
【0094】
結束部7Aは、回転軸72の回転動作と連動したワイヤ係止体70及びスリーブ71の回転を規制する回転規制部74を備える。回転規制部74は、スリーブ71に回転規制羽根74aが設けられ、本体部10Aに回転規制爪74bが設けられる。
【0095】
回転規制羽根74aは、スリーブ71の外周から径方向に突出する複数の凸部を、スリーブ71の周方向に所定の間隔で設けて構成される。回転規制羽根74aは、スリーブ71に固定され、スリーブ71と一体的に移動、回転する。
【0096】
回転規制爪74bは、回転規制羽根74aが通過可能な間隔で対向する一対の爪部として第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2を備える。第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2は、回転規制羽根74aの回転方向に応じて回転規制羽根74aに押されることで、回転規制羽根74aの軌跡上から退避可能に構成される。
【0097】
回転規制部74は、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されると、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制され、回転軸72の回転動作でスリーブ71が前後方向へ移動する。また、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。
【0098】
図5は、鉄筋結束機の制御機能の一例を示すブロック図である。鉄筋結束機1Aは、図1A図1Bなどに示すトリガ12Aの操作で押される操作スイッチ13Aの状態に応じて、制御部14Aがモータ80及び送りモータ33を制御し、鉄筋SをワイヤWで結束する一連の動作を実行する。また、制御部14Aは、電源スイッチ16aの操作により、電源の入切を切り替える。更に、制御部14Aは、自動装填排出スイッチ16bの操作によるマイクロスイッチ17の出力に基づき送りモータ33を制御し、ワイヤ送り部3AでのワイヤWの装填及び排出を行う。自動装填排出スイッチ16bは、本例では押しボタン形式のスイッチで、押下によりマイクロスイッチ17を作動させる構成である。
【0099】
送りモータ33は、本例ではブラシレスモータで構成され、ロータの回転位置を検出するホールICなどの回転検知部18を備える。ワイヤ送り部3Aは、送りモータ33の駆動力を第1の送りギア30Lに伝達する駆動力伝達機構34が平歯車で構成される。これにより、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWの先端を入れ、ワイヤWを押すと、送りモータ33が通電により回転していない状態で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの挙動(回転)により、送りモータ33を外力で回転させることが可能である。すなわち、回転検知部18は、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの挙動による動きを検知する検知部を構成する。
【0100】
制御部14Aは、自動装填排出スイッチ16bの操作でマイクロスイッチ17が押されると、ワイヤWの自動排出動作及び自動装填動作を実行する自動装填排出モードを実行する。制御部14Aは、自動装填排出モードが実行されると、報知部16eで自動装填排出モードが実行されていることを報知してもよい。報知部16eは、音を出力するブザーなどでもよく、光や表示などの視認可能な情報を出力するランプやディスプレイなどでもよい。また、制御部14Aは、電源スイッチ16aが操作されて電源がオンとなると、報知部16eで電源がオン(電源ON)であり、結束待機状態であることを報知してもよい。
【0101】
制御部14Aは、自動装填排出モードが実行されると、まず、鉄筋結束機1Aに残るワイヤWを排出するため、自動排出動作を実行する。自動排出動作では、送りモータ33を逆方向に回転させ、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間からワイヤWが抜ける排出動作の規定回転量、送りモータ33を逆転させると、送りモータ33を停止する。
【0102】
また、制御部14Aは、自動装填排出モードが実行されて鉄筋結束機1Aに残るワイヤWが排出されると、新しいワイヤWを鉄筋結束機1Aに装填するため、自動装填動作を実行する。自動装填動作では、制御部14Aは、送りモータ33が通電により回転していない状態で、送りモータ33が回転したことを回転検知部18で検知すると、送りモータ33を正回転方向に駆動し、ワイヤWを正方向に送る。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先にワイヤWが所定量送られる装填動作の規定回転量、送りモータ33を正回転方向に駆動すると、送りモータ33を停止する。
【0103】
制御部14Aは、自動装填動作を実行する前に、自動装填排出モードがタイムアウトとなる規定時間が経過すると、自動装填排出モードを終了し、送りモータ33が通電により回転していない状態で、送りモータ33が回転したことを回転検知部18で検知しても、上述した装填動作を実行しない。
【0104】
また、制御部14Aは、自動装填排出スイッチ16bが押され(1回目の操作)、自動装填排出モードの開始後、自動装填排出モードのタイムアウトとなる規定時間が経過する前に、自動装填排出スイッチ16bが再度押された場合(2回目の操作)、自動装填排出モードを終了し、送りモータ33が通電により回転していない状態で、送りモータ33が回転したことを回転検知部18で検知しても、上述した装填動作を実行しない。
【0105】
自動装填動作で制御部14Aは、送りモータ33が通電により回転していない状態で、送りモータ33が回転したことを回転検知部18で検知すると、第1の状態と第2の状態に状態を変化させて、ワイヤWを正方向に送る。
【0106】
制御部14Aは、第1の状態と第2の状態で、送りモータ33の正回転方向への駆動の有無及び回転速度を制御する。報知部16eでの報知情報の出力の有無を組み合わせてもよい。第1の状態とは、報知部16eで所定の報知をする状態である。また、送りモータ33を停止させた状態、あるいは、送りモータ33を第2の回転速度より低速の第1の回転速度で正転させた状態である。さらに、報知部16eで所定の報知をする状態と、送りモータ33を停止させた状態の組み合わせであってもよい。
【0107】
<鉄筋結束機の結束動作例>
次に、各図を参照して、鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0108】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持され、このワイヤWの先端が、一対の送りギア30の挟持位置と、切断部6Aとの間に位置した状態が待機状態(待機位置)となる。また、鉄筋結束機1Aは、待機状態では、図4A図4Bに示すように、第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して開き、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して開いた状態である。
【0109】
鉄筋Sがカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、トリガ12Aが操作されると、制御部14Aは、送りモータ33を第1の回転方向である正回転方向に駆動し、ワイヤ送り部3AでワイヤWを第1の方向である矢印Fで示す正方向に送る。
【0110】
複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成の場合、ワイヤガイド4Aにより、2本のワイヤWが当該ワイヤWにより形成されるループRuの軸方向に沿って並列された状態で送られる。
【0111】
正方向に送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通り、カール形成部5Aのカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0112】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3Aで正方向に送られることで、誘導ガイド51によりセンターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間に誘導される。そして、ワイヤWは、先端が送り規制部90に突き当てられるまで送られる。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、制御部14Aは、送りモータ33の駆動を停止する。
【0113】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、制御部14Aは、モータ80を正回転方向に駆動する。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、スリーブ71は、モータ80の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印A1方向に移動する。
【0114】
スリーブ71が前方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0115】
また、第2のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0116】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが閉じる動作でワイヤWを係止する位置までスリーブ71を前進させた後、制御部14Aは、モータ80の回転を一時停止し、送りモータ33を第1の回転方向の逆方向の第2の回転方向である逆回転方向に駆動する。これにより、一対の送りギア30が逆転する。
【0117】
よって、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、第2の方向である矢印Rで示す逆方向に送られる。ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに巻き付けられる。
【0118】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける位置までワイヤWを引き戻し、制御部14Aは、送りモータ33の逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させる。スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cで係止されたワイヤWが切断される。
【0119】
ワイヤWを切断するとほぼ同時に曲げ部71c1、71c2が鉄筋Sに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を、曲げ部71c1で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c1で挟まれた状態で保持される。
【0120】
また、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を、曲げ部71c2で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c2で挟まれた状態で保持される。
【0121】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動することで、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域に到達すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。
【0122】
これにより、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸72と連動してワイヤ係止体70が回転し、ワイヤWを捩じる。
【0123】
結束部7Aは、スリーブ71が回転する動作域では、鉄筋Sが突き当て部91に突き当てられ、鉄筋Sが結束部7A方向に近づく方向である後方への移動が規制されるので、ワイヤWが捩じられることで、ワイヤ係止体70を回転軸72の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。
【0124】
回転軸72は、軸方向に沿って前方に移動させる力がワイヤ係止体70に加わると、バネ72cにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動可能に構成される。これにより、結束部7Aは、スリーブ71が回転する動作域では、ワイヤ係止体70及び回転軸72が前方に移動しながらワイヤWを捩じる。
【0125】
<ワイヤの自動装填排出モードの動作例>
図6図7及び図8は、自動装填排出モードの動作の一例を示すフローチャートで、次に、鉄筋結束機1AでワイヤWを自動的に排出する動作及び装填する動作について説明する。
【0126】
鉄筋結束機1Aは、本例では、トリガ12Aの所定の操作と自動装填排出スイッチ16bの所定の操作の組み合わせが、ワイヤWの自動装填排出モードの実行に割り当てられる。以下の例では、トリガ12Aを操作せずに、自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填排出モードが開始される設定とする。
【0127】
まず、図6に記載の自動装填排出モードについて説明すると、制御部14Aは、図6のステップSA1でトリガ12Aが操作されたか判断し、ステップSA2で自動装填排出スイッチ16bが操作されたか判断する。以下の説明では、トリガ12Aが操作されたことをトリガONとも称し、自動装填排出スイッチ16bが操作されたことを装填排出スイッチONとも称す。
【0128】
制御部14Aは、トリガ12Aが操作されると、上述した結束動作を実行する。
【0129】
制御部14Aは、自動装填排出モードが実行されていない状態であって、トリガ12Aが非操作で自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填排出モードを開始する操作が行われたと判断する。制御部14Aは、自動装填排出モードを実行する操作が行われたと判断すると、まず、自動装填排出モードで自動排出動作を実行する。自動排出動作では、図6のステップSA3で、送りモータ33をワイヤWの排出方向である逆回転方向に駆動する。
【0130】
送りモータ33を逆回転方向に駆動することでワイヤWが排出方向である逆方向に送られると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持されているワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を抜けて、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rから離れる。
【0131】
制御部14Aは、図6のステップSA4で、送りモータ33の逆回転方向への回転量が、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を抜ける排出動作の規定回転量に到達すると、ステップSA5で送りモータ33の逆回転方向への回転を停止する。
【0132】
なお、送りモータ33を逆回転方向に駆動することでワイヤWが逆方向に送られ、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持されたワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を抜けると、送りモータ33に掛かる負荷が低下し、送りモータ33に流れる電流値が低下する。
【0133】
そこで、制御部14Aは、送りモータ33に流れる電流値と、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが無いことを検出する所定の設定閾値を比較し、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間から抜けたか否か判断してもよい。
【0134】
また、上述した自動装填排出モードにおいて、自動排出動作でワイヤWを逆方向に送る前に、切断部6Aを駆動してワイヤWを切断する動作、結束部7Aを待機状態に戻す動作を行ってもよい。例えば、制御部14Aは、上述した自動装填排出モードを開始する操作が行われたと判断すると、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させて、切断部6Aでワイヤ切断動作を実行する。ワイヤWが切断部6Aで切断可能な位置にある場合、このワイヤWが切断され、切断部6Aより結束部7A側にあるワイヤWと、切断部6Aよりワイヤ送り部3A側にあるワイヤWが分離される。
【0135】
制御部14Aは、モータ80を所定量正回転方向に駆動した後、モータ80を逆回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A2で示す後方向に移動させて、結束部7Aを上述した待機状態に戻す動作を実行する。制御部14Aは、上述した切断部6Aを作動させる動作、結束部7Aを待機状態に戻す動作を行うと、上述したステップSA3で、送りモータ33を逆回転方向に駆動して、自動排出動作を実行する。
【0136】
制御部14Aは、自動装填排出モードの実行中に、自動排出動作でワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間から排出して送りモータ33の駆動を停止した後、所定の操作で自動装填動作を実行する。本例では、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置に次のワイヤWが挿入されると、自動装填動作を開始する。
【0137】
但し、制御部14Aは、自動装填動作を実行する前に、自動装填排出モードを終了する所定の状態となったか判断する。すなわち、制御部14Aは、自動装填排出モードの実行中であって、上述した図6のステップSA1からSA5の自動排出動作の実行後に、ステップSA6で自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたか判断し、自動排出動作の実行後に自動装填排出モードを終了する規定時間が経過したかステップSA7で判断する。
【0138】
制御部14Aは、ステップSA6で自動装填排出モードの実行中に自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。すなわち、ワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間から排出した後、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置に次のワイヤWが挿入されるより前に自動装填排出スイッチ16bが再度操作されると、自動装填排出モードが終了する。
【0139】
また、制御部14Aは、自動排出動作の実行後に、自動装填動作を開始する所定の操作が行われず、ステップSA7で自動装填排出モードを終了する規定時間が経過したと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。すなわち、ワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間から排出した後、自動装填排出スイッチ16bが再度操作されなくても、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されるより前に規定時間が経過すると、自動装填排出モードが終了する。
【0140】
制御部14Aは、ワイヤWの自動排出動作を実行した後、自動装填排出スイッチ16bが操作されず、また、自動装填排出モードを終了する規定時間が経過するより前に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RからワイヤWが離れた挿入待機状態で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されると、自動装填排出モードで自動装填動作を実行する。
【0141】
ワイヤWの自動装填動作を開始するため、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが回転し、第1の送りギア30Lと駆動力伝達機構34を介してつながる送りモータ33が回転する。そこで、制御部14Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されたことを検出するため、図6のステップSA8で、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したか回転検知部18で判断する。なお、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されたことを、ワイヤWの位置を図示しないセンサで検出して判断してもよい。
【0142】
制御部14Aは、ワイヤWの自動排出動作を実行した後、自動装填排出スイッチ16bが操作されず、また、自動装填排出モードを終了する規定時間が経過するより前に、回転検知部18が制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したと判断すると、第1の状態として、図6のステップSA9で報知部16eを駆動してブザーを鳴らすなどにより、自動装填動作を実行することを報知する報知情報である自動装填動作実行報知情報の出力を開始する。
【0143】
制御部14Aは、図6のステップSA10で自動装填動作実行報知情報の出力を所定時間行ったと判断すると、ステップSA11で自動装填動作実行報知情報の出力を停止する。制御部14Aは、第1の状態としての自動装填動作実行報知情報の出力中は、送りモータ33を駆動せず非回転とする。これにより、自動装填動作実行報知情報の出力中は、ワイヤWが正方向に送られず、ワイヤ送り待機時間となる。
【0144】
制御部14Aは、自動装填動作実行報知情報の出力を終了すると、第2の状態として、図6のステップSA12で送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に駆動する。送りモータ33が正回転方向に駆動されると、ワイヤWが装填方向である正方向に送られる。
【0145】
制御部14Aは、送りモータ33の回転量が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先にワイヤWが所定量送られる規定回転量に到達したか判断する。制御部14Aは、図6のステップSA13で送りモータ33の正方向への回転量が装填動作の規定回転量に到達したと判断すると、ステップSA14で送りモータ33の正回転方向への回転を停止する。
【0146】
なお、送りモータ33の駆動を停止してワイヤWの正方向への送りを停止した後、ワイヤWの先端の位置を所定の位置とする位置出しを行う所謂イニシャライズ動作を行ってもよい。
【0147】
すなわち、送りモータ33の回転量などから、正方向に送られるワイヤWの先端が切断部6Aを通過し、ワイヤWを切断部6Aで切断可能な位置まで、ワイヤWの先端が送られたか否かを判断する。制御部14Aは、ワイヤWの送り量が所定量になって、ワイヤWを切断部6Aで切断可能な位置まで、ワイヤWの先端が送られたと判断すると、送りモータ33の駆動を停止する。
【0148】
次に、制御部14Aは、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させて、切断部6AでワイヤWを切断する。そして、制御部14Aは、モータ80を逆回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A2で示す後方向に移動させて、結束部7Aを上述した待機状態とする。これにより、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持され、このワイヤWの先端が、一対の送りギア30の挟持位置と、切断部6Aとの間に位置した待機位置となる。
【0149】
なお、自動装填動作は、自動排出動作からの連続した動作ではなく、独立した動作であってもよい。この場合、トリガ12Aが操作されず、自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填動作を実行する操作が行われたと判断し、上述したステップSA8からの処理で自動装填動作が実行される。
【0150】
図6に記載の自動装填排出モードでは、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作が行われたことを、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したことを検知して判断すると、第1の状態として、自動装填動作実行報知情報の出力を開始する。自動装填動作実行報知情報の出力中は、送りモータ33を駆動せず非回転とする。そして、自動装填動作実行報知情報の出力を終了すると、第2の状態として、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に駆動する。
【0151】
これにより、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、送りモータ33の駆動によりワイヤWが正方向へ送られることを、自動装填動作実行報知情報によって認識させることができる。
【0152】
次に、図7に記載の自動装填排出モードについて説明する。ここで、図7のステップSB1からステップSB5に記載の自動排出動作は、上述した図6のステップSA1からステップSA5に記載の自動排出動作と同様である。すなわち、ステップSB1、ステップSB2で、自動装填排出モードが実行されていない状態であって、トリガ12Aが非操作で自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填排出モードを実行する操作が行われたと判断する。
【0153】
制御部14Aは、自動装填排出モードを実行する操作が行われたと判断すると、まず、自動装填排出モードで自動排出動作を実行する。自動排出動作では、図7のステップSB3、SB4及びSB5で、送りモータ33をワイヤWの排出方向である逆回転方向に駆動し、送りモータ33の逆回転方向への回転量が排出動作の規定回転量に到達すると、送りモータ33の逆回転方向への回転を停止する。
【0154】
制御部14Aは、上述した図7のステップSB1からSB5の自動排出動作の実行後に、ステップSB6で自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたか判断し、自動排出動作の実行後に所定時間が経過したかステップSB7で判断する。
【0155】
制御部14Aは、ステップSB6で自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。また、制御部14Aは、ステップSB7で所定時間が経過したと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。
【0156】
制御部14Aは、ワイヤWの自動排出動作を実行した後、自動装填排出スイッチ16bが操作されず、また、自動装填排出モードを終了する規定時間が経過するより前に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されると、自動装填排出モードで自動装填動作を実行する。
【0157】
すなわち、制御部14Aは、図7のステップSB8で、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したと判断すると、第1の状態として、ステップSB9で、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第1の回転速度V1で駆動する。送りモータ33が正回転方向に駆動されると、ワイヤWが装填方向である正方向に送られる。第1の回転速度V1は、上述した結束動作でワイヤWを正方向に送る回転速度や、ワイヤWの先端を待機位置まで送る回転速度である第2の回転速度V2より低速である。
【0158】
制御部14Aは、送りモータ33の回転量が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先にワイヤWが第1の所定量送られる第1の規定回転量に到達したか判断する。制御部14Aは、図7のステップSB10で送りモータ33の正方向への回転量が装填動作の第1の規定回転量に到達したと判断すると、ステップSB11で送りモータ33の正回転方向への回転を停止する。
【0159】
制御部14Aは、送りモータ33の第1の回転速度V1での回転を停止すると、第1の状態として、図7のステップSB12で自動装填動作実行報知情報の出力を開始する。制御部14Aは、図7のステップSB13で自動装填動作実行報知情報の出力を所定時間行ったと判断すると、ステップSB14で自動装填動作実行報知情報の出力を停止する。制御部14Aは、自動装填動作実行報知情報の出力中は、送りモータ33を駆動せず非回転とする。これにより、自動装填動作実行報知情報の出力中は、ワイヤWが正方向に送られない。
【0160】
制御部14Aは、自動装填動作実行報知情報の出力を終了すると、第2の状態として、図7のステップSB15で送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第2の回転速度V2で駆動する。送りモータ33が正回転方向に駆動されると、ワイヤWが装填方向である正方向に送られる。
【0161】
制御部14Aは、送りモータ33の回転量が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先に第1の所定量送られたワイヤWが、さらに第2の所定量送られる第2の規定回転量に到達したか判断する。制御部14Aは、図7のステップSB16で送りモータ33の正方向への回転量が装填動作の第2の規定回転量に到達したと判断すると、ステップSB17で送りモータ33の正回転方向への回転を停止する。
【0162】
なお、自動装填動作実行報知情報の出力を終了した後、図7のステップSB15で送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第1の回転速度V1で駆動し、送りモータ33の第1の回転速度V1での正方向への回転量が装填動作の第2の規定回転量に到達したと判断すると、送りモータ33の正回転方向への回転を停止してもよい。また、送りモータ33の駆動を停止してワイヤWの正方向への送りを停止した後、ワイヤWの先端の位置を所定の位置とする位置出しを行う所謂イニシャライズ動作を行ってもよい。
【0163】
また、自動装填動作は、自動排出動作からの連続した動作ではなく、独立した動作であってもよい。この場合、トリガ12Aが操作されず、自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填動作を実行する操作が行われたと判断し、上述したステップSB8からの処理で自動装填動作が実行される。
【0164】
図7に記載の自動装填排出モードでは、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作が行われたことを、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したことを検知して判断すると、第1の状態として、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第1の回転速度V1で駆動する。第1の回転速度V1は、上述した結束動作でワイヤWを正方向に送る回転速度や、ワイヤWの先端を待機位置まで送る回転速度である第2の回転速度V2より低速である。
【0165】
送りモータ33の第1の回転速度V1での正方向への回転量が装填動作の第1の規定回転量に到達したと判断すると、送りモータ33の正回転方向への回転を停止し、自動装填動作実行報知情報の出力を開始する。自動装填動作実行報知情報の出力中は、送りモータ33を駆動せず非回転とする。そして、自動装填動作実行報知情報の出力を終了すると、第2の状態として、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第2の回転速度V2または第1の回転速度V1で駆動する。
【0166】
これにより、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、送りモータ33の駆動によりワイヤWが正方向へ送られることを、送りモータ33の第1の回転速度V1での正方向への回転によるワイヤWの正方向への送り、及び、自動装填動作実行報知情報によって認識させることができる。
【0167】
次に、図8に記載の自動装填排出モードについて説明する。ここで、図8のステップSC1からステップSC5に記載の自動排出動作は、上述した図6のステップSA1からステップSA5に記載の自動排出動作と同様である。すなわち、ステップSC1、ステップSC2で、自動装填排出モードが実行されていない状態であって、トリガ12Aが非操作で自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填排出モードを実行する操作が行われたと判断する。
【0168】
制御部14Aは、自動装填排出モードを実行する操作が行われたと判断すると、まず、自動装填排出モードで自動排出動作を実行する。自動排出動作では、図8のステップSC3、SC4及びSC5で、送りモータ33をワイヤWの排出方向である逆回転方向に駆動し、送りモータ33の逆回転方向への回転量が排出動作の規定回転量に到達すると、送りモータ33の逆回転方向への回転を停止する。
【0169】
制御部14Aは、上述した図8のステップSC1からSC5の自動排出動作の実行後に、ステップSC6で自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたか判断し、自動排出動作の実行後に所定時間が経過したかステップSC7で判断する。
【0170】
制御部14Aは、ステップSC6で自動装填排出スイッチ16bが再度操作されたと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。また、制御部14Aは、ステップSC7で所定時間が経過したと判断すると、自動装填排出モードを終了し、以下の自動装填動作を実行しない。
【0171】
制御部14Aは、ワイヤWの自動排出動作を実行した後、自動装填排出スイッチ16bが操作されず、また、自動装填排出モードを終了する規定時間が経過するより前に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを正方向に送ることが可能な位置にワイヤWが挿入されると、自動装填排出モードで自動装填動作を実行する。
【0172】
すなわち、制御部14Aは、図8のステップSC8で、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したと判断すると、第1の状態として、ステップSC9で送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第1の回転速度V1で駆動する。送りモータ33が正回転方向に駆動されると、ワイヤWが装填方向である正方向に送られる。第1の回転速度V1は、上述した結束動作でワイヤWを正方向に送る回転速度や、ワイヤWの先端を待機位置まで送る回転速度である第2の回転速度V2より低速である。
【0173】
制御部14Aは、送りモータ33の回転量が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先にワイヤWが第1の所定量送られる第1の規定回転量に到達したか判断する。制御部14Aは、図8のステップSC10で送りモータ33の正方向への回転量が装填動作の第1の規定回転量に到達したと判断すると、第2の状態として、図8のステップSC11で送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第2の回転速度V2で駆動する。
【0174】
制御部14Aは、送りモータ33の回転量が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rがかみ合う箇所から先に第1の所定量送られたワイヤWが、さらに第2の所定量送られる第2の規定回転量に到達したか判断する。制御部14Aは、図8のステップSC12で送りモータ33の正方向への回転量が装填動作の第2の規定回転量に到達したと判断すると、ステップSC13で送りモータ33の正回転方向への回転を停止する。
【0175】
なお、送りモータ33の駆動を停止してワイヤWの正方向への送りを停止した後、ワイヤWの先端の位置を所定の位置とする位置出しを行う所謂イニシャライズ動作を行ってもよい。
【0176】
また、自動装填動作は、自動排出動作からの連続した動作ではなく、独立した動作であってもよい。この場合、トリガ12Aが操作されず、自動装填排出スイッチ16bが操作されると、自動装填動作を実行する操作が行われたと判断し、上述したステップSC8からの処理で自動装填動作が実行される。
【0177】
図8に記載の自動装填排出モードでは、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作が行われたことを、制御部14Aの駆動によらず送りモータ33が正回転方向に回転したことを検知して判断すると、第1の状態として、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第1の回転速度V1で駆動する。第1の回転速度V1は、上述した結束動作でワイヤWを正方向に送る回転速度や、ワイヤWの先端を待機位置まで送る回転速度である第2の回転速度V2より低速である。
【0178】
送りモータ33の第1の回転速度V1での正方向への回転量が装填動作の第1の規定回転量に到達したと判断すると、第2の状態として、送りモータ33をワイヤWの装填方向である正回転方向に第2の回転速度V2で駆動する。
【0179】
これにより、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、送りモータ33の駆動によりワイヤWが正方向へ送られることを、送りモータ33の第1の回転速度V1での正方向への回転によるワイヤWの正方向への送りによって認識させることができる。
【0180】
上述した自動装填排出モードで、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作を行うと、第2の送りギア30RがワイヤWで押され、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lから離す方向に移動させる力が生じる。図2Bに示すように、操作ボタン39が非操作の状態で、第2の送りギア30Rが、第1の送りギア30Lに対してバネ38の力を受けずに離れる方向に、隙間G1だけ移動することが可能である。
【0181】
これにより、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる方向に移動し、図2Cに示すように、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に隙間G2が形成される。したがって、対向する第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rの間隔が広がるため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入しやすくなる。
【0182】
上述した自動装填排出モードでは、図6のステップSA8、図7のステップSB8及び図8のステップSC8で説明した通り、送りモータ33が正回転方向に回転したことを検知して、ワイヤWの自動装填動作を開始している。送りモータ33は、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挿入されて第1の送りギア30Lが回転することで回転する。
【0183】
しかし、第2の変位部材37の押圧部37bと第1の変位部材36の被押圧部36bとの間に隙間G1が形成されるようにすることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に隙間G2を形成し得るようにした本実施の形態のような構成ではない場合、ワイヤWを延伸方向に押す力で、バネ38を圧縮しながら、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lから離れる方向に移動させる必要がある。これにより、ワイヤWに高負荷がかかり、ワイヤWが座屈するなど、ワイヤWの装填に不具合が生じる可能性がある。
【0184】
これに対し、第2の変位部材37の押圧部37bと第1の変位部材36の被押圧部36bとの間に隙間G1が形成されるようにすることで、バネ38の力がかからない状態で、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる方向に移動できる。
【0185】
これにより、ワイヤWを延伸方向に押す力が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rにかかると、バネ38の力がかからない状態で、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる方向に移動しながら、第1の送りギア30Lが回転する。したがって、ワイヤWに高負荷がかかることを抑制しつつ、第1の送りギア30Lを回転させることができるとともに、ワイヤWを装填する際のバネ38の押圧による負荷が軽減されることで、上述した自動装填排出モードの自動装填動作を開始するためのワイヤWの装填が容易になる。
【0186】
また、上述した自動装填動作で、制御部14Aの駆動により送りモータ33が正回転方向に駆動されると、送りモータ33の駆動力で第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが正方向に送られる。
【0187】
送りモータ33の駆動力で第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが送られると、ワイヤWの太さによって、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる矢印U1方向にさらに移動する。このため、第2の変位部材37の押圧部37bが第1の変位部材36の被押圧部36bに押圧され、第2の変位部材37が軸37aを支点に矢印Y1方向に回転する。そうする事で、第2の変位部材37が操作ボタン39から離れる。これにより、バネ38が伸びるようとする力が第2の変位部材37及び第1の変位部材36を介して第2の送りギア30Rに伝わり、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを挟み込むことになる。したがって、バネ38の力で第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWが挟持され、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RとワイヤWとの間に十分な摩擦力を発生させて、送りモータ33の駆動力によりワイヤWを確実に送ることができる。
【0188】
また、ワイヤガイド4Aにおいて、誘導部41A1の基準経路Lに対する角度α1が0°以上17°以下であると、ワイヤガイド4Aを通るワイヤWの延伸する方向が、基準経路Lと平行に近づく。これにより、上述した自動装填排出モードで、鉄筋結束機1Aの使用者が第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挿入する操作で、ワイヤガイド4Aを通過したワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32R間に入る成功率が高くなる。
【0189】
また、ワイヤガイド4Aにおいて、誘導部41A1の基準経路Lに対する角度α1が0°超9°以下であれば、導入側開口40A2からガイド穴40AにワイヤWが挿入しづらくなることを抑制しつつ、ワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32R間に入る成功率がより高くなる。
【符号の説明】
【0190】
1A・・・鉄筋結束機、10A・・・本体部、12A・・・トリガ、13A・・・操作スイッチ、14A・・・制御部、16・・・操作部、16a・・・電源スイッチ、16b・・・自動装填排出スイッチ、16e・・・報知部、18・・・回転検知部、2A・・・マガジン、20・・・リール、3A・・・ワイヤ送り部、30・・・送りギア(送り部材)、30L・・・第1の送りギア(送り部材)、30R・・・第2の送りギア(送り部材)、33・・・送りモータ、36・・・第1の変位部材(変位部)、37・・・第2の変位部材(変位部)、38・・・バネ、39・・・操作ボタン、39a・・・保持部、4A・・・ワイヤガイド、40A・・・ガイド穴、40A1・・・導出側開口、40A2・・・導入側開口、41A、41A1、41A2・・・誘導部、5A・・・カール形成部、50・・・カールガイド、51・・・誘導ガイド、6A・・・切断部、7A・・・結束部、8A・・・駆動部、80・・・モータ、81・・・減速機、W・・・ワイヤ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8