(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011103
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】有機無機コンポジット材料の断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20230117BHJP
D04H 1/413 20120101ALI20230117BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20230117BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230117BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
F16L59/02
D04H1/413
D04H1/425
C08L1/02
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114723
(22)【出願日】2021-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年2月19日 株式会社KRIのウェブサイトに公開。 公開のウェブページ:http://www.kri-inc.jp/tech/1275521_11451.html
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】林 裕之
【テーマコード(参考)】
3H036
4J002
4L047
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB23
3H036AB24
3H036AC03
4J002AB011
4J002DE236
4J002FA036
4J002FD016
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4L047AA08
4L047CB06
(57)【要約】
【課題】 中空粒子やキセロゲル、エアロゲルなど煩雑でコスト高な合成法で得られる無機フィラーではなく、天然に存在する無機フィラーとセルロースナノファイバーの天然資源を有効利用して優れた断熱性能を発揮する低環境負荷な断熱材の提供。
【解決手段】
フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成された断熱材であって、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径30nm未満のセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーが分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与することにより前記フィラーを固定した断熱材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成された薄膜状またはシート状の断熱材であって、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径30nm未満のセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーが分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与することにより前記フィラーを固定し、前記薄膜状またはシート状の断熱材の厚さが1mm以下であり、熱伝導率が0.01~0.04W/m・Kである断熱材。
【請求項2】
フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成されたバルク状の断熱材であって、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径30nm未満のセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーが分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与することにより前記フィラーを固定し、前記バルク状の断熱材の厚さが2~5mmであり、熱伝導率が0.04~0.09W/m・Kである断熱材。
【請求項3】
前記フィラーが目開き25ミクロンのメッシュをパスした微細粒子である請求項1または請求項2に記載の断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来またはそれに類する素材で構成され、低環境負荷でかつ優れた断熱性能を有する断熱材料として好適な有機無機コンポジット材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱マネージメントという言葉が使われる昨今、省エネの観点から断熱という機能が益々重要となっている。断熱素材は、電子部品などから大型機器、冷蔵庫、自動車、住宅、ボイラ、工場設備など小型・薄膜サイズから大型の板やシート、ブロックまで幅広く利用されている。
【0003】
中でも、電子機器用途は薄く高性能であることが求められ、スチレンフォーム、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなどの発泡樹脂やグラスウール、ロックウールなどの無機系繊維では薄膜化が難しく、セルロースファイバー、ウールなど天然系繊維では断熱性能が劣る。
【0004】
薄膜断熱材としては、特許文献1があるが、その熱伝導率は0.046W/m・Kを達成しているに過ぎない。
さらに、特許文献2では、卵殻廃棄物粉末を有効利用するための手段として、セルロースミクロフィブリルファイバーと組み合わせて、生分解性で汎用性のある材料を凍結乾燥して製造し、断熱材として使用できるとの記載があるが、その断熱性能に関する記載は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-95046号公報
【特許文献2】特開2020-516782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、中空粒子やキセロゲル、エアロゲルなど煩雑でコスト高な合成法で得られる無機フィラーではなく、天然に存在し、中空粒子やキセロゲル、エアロゲルと同等の構造を有する無機フィラーとセルロースナノファイバーの天然資源の有効利用しつつ、優れた断熱性能を発揮する低環境負荷な断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の構成からなる本発明を完成した。
[1] フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成された薄膜状またはシート状の断熱材であって、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径30nm未満のセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーが分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与することにより前記フィラーを固定し、前記薄膜状またはシート状の断熱材の厚さが1mm以下であり、熱伝導率が0.01~0.04W/m・Kである断熱材。
[2] フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成されたバルク状の断熱材であって、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径30nm未満のセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーが分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与することにより前記フィラーを固定し、前記バルク状の断熱材の厚さが2~5mmであり、熱伝導率が0.04~0.09W/m・Kである断熱材。
[3] 前記フィラーが目開き25ミクロンのメッシュをパスした微細粒子である前記[1]または前記[2]に記載の断熱材。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、無機フィラーの低コスト化が図れ、かつ天然素材あるいは廃棄される資源を有効利用することが出来る。また、CO2を含む組成で構成された無機フィラーであることから、合成ドロマイトなどはCO2固定にも繋がり、環境に優しく、かつ高性能な断熱材を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例の有機無機コンポジット断熱材の概念図である。
【
図2】本発明で使用した熱流束評価法の測定装置概念図である。
【
図3】本発明の実施例1で作製した有機無機コンポジット断熱シートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の断熱材は、フィラーとセルロースを含み内部に空隙が形成されており、前記フィラーが天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩であり、前記セルロースが繊維径10~30nmのセルロースナノファイバーであり、前記セルロースナノファイバーは、分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与し前記フィラーを固定している断熱材である。
【0011】
そして、本発明の薄膜状またはシート状の断熱材が、前記断熱材の厚さが1mm以下であり、熱伝導率が0.01~0.04W/m・Kであり、本発明のバルク状の断熱材が、前記断熱材の厚さが2~5mmであり、熱伝導率が0.04~0.09W/m・Kである。
【0012】
本発明に用いるフィラーは、無機フィラーであり天然素材の卵殻もしくはドロマイトまたは卵殻の主成分である炭酸カルシウムもしくはドロマイトの主成分である炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩である。
【0013】
本発明に用いる卵殻は、炭酸カルシウムを主成分とする動物の卵の殻であれば制限はないが、大量に入手できる鶏卵の殻が好ましい。卵殻は、卵の呼吸と湿度調整に必要な細孔をもつ多孔質体となっている。本発明に用いる卵殻は、25μm以下の微細な粉末であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いる炭酸カルシウムは、市販のナノサイズの炭酸カルシウムを用いることが好ましい。天然の炭酸カルシウムを再処理して得られる市販のナノサイズの炭酸カルシウムは、粒径が30nm前後の微粉末は凝集体を形成するため細孔を有し、疑似的な卵殻パウダーの構造となっている。このため、本発明の断熱材のフィラーとして利用可能である。
また、天然物の貝殻も炭酸カルシウムが主成分となっており、ナノサイズに粉砕すれば本発明の断熱材のフィラーとして利用できる。
【0015】
ドロマイトは海底に堆積したサンゴが長い年月を経て石灰石(CaCO3)となり、石灰石のカルシウムの一部が海水中のマグネシウムと置換してできた天然鉱石である。よって炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合炭酸塩が主成分であり、化学式CaMg(CO3)2で表され本発明の断熱材のフィラーとして利用できる。
ドロマイトとしては、天然ドロマイトと合成ドロマイトがあるが、品質が一定しており安定的な性能が得られる合成ドロマイトを用いるのが好ましい。
【0016】
本発明に用いるセルロースナノファイバーは、繊維径が30nm未満であればどのようなセルロースナノファイバーであってもよい。無修飾のセルロースナノファイバーでも良いし、変性セルロースナノファイバー又は修飾セルロースナノファイバーであってもよい。変性セルロースナノファイバーの代表的なものとしては、TEMPO酸化セルロースナノファイバーがあり、市販品を使用することができる。修飾セルロースナノファイバーとしては、硫酸エステルセルロースナノファイバー、アセチル化修飾セルロースナノファイバー、ウレタン化修飾セルロースナノファイバーなどがある。これらセルロースナノファイバーの平均繊維長は、通常0.2~50μmである。
セルロースナノファイバーは、本発明の断熱材において分散剤、バインダおよびマトリックスとして寄与し前記フィラーを固定している
【0017】
本発明の薄膜状またはシート状断熱材は、無機フィラーとセルロースナノファイバーの含有量の比率は、重量比で無機フィラー:セルロースナノファイバーが10:90~90:10の比率にすることが好ましい。無機フィラーの比率が、10未満であるとフィラーの均一分散ができなくなるので好ましくない。また、無機フィラーの比率が、90を超えると成型後の断熱材からフィラーが脱落するため好ましくない。
【0018】
本発明のバルク状断熱材は、無機フィラーとセルロースナノファイバーの含有量の比率は、重量比で無機フィラー:セルロースナノファイバーが50:50~99:1の比率にすることが好ましい。より好ましくは、重量比で無機フィラー:セルロースナノファイバーが80:20~99:1の比率、最も好ましくは、重量比で無機フィラー:セルロースナノファイバーが90:10~99:1の比率である。無機フィラーが50未満であると、成型時の収縮率が大きく成型が難しくなる。また、99を超えると成型後断熱材からフィラーが脱落し型崩れするため好ましくない。
【0019】
次に、本発明の断熱材の製造方法を説明する。
本発明の断熱材の製造は、まず、以下のようにセルロースナノファイバー無機フィラー分散溶液を作製する。最初にセルロースナノファイバーと溶媒を混合し、ゲル状のセルロースナノファイバーがゾル状となるまで撹拌する。
溶媒としてはセルロースナノファイバーと無機フィラーを分散できる溶媒であればよく、水(蒸留水)、アルコール等の有機溶媒を用いることができるが、通常は蒸留水で良い。溶媒の添加量は、セルロースナノファイバーと無機フィラーの配合量、使用される溶媒、断熱材の形態(シート状、薄膜状、バルク状など)によって決めればよいが、流動性が確保できる量で良い。通常、セルロースナノファイバーと無機フィラーの総重量の等倍~10倍程度の溶媒を加えればよい。 セルロースナノファイバーに溶媒を加えてゾル状となった溶液に無機フィラーを加えて撹拌混合して、セルロースナノファイバーと無機フィラーを分散させた分散水溶液を得る。
前記分散液を用いてシート状断熱材およびバルク状断熱材を製造することができる。
【0020】
続いて、薄膜状またはシート状断熱材の製造方法について各々説明する。
まず、薄膜状断熱材の製造方法について説明する。
本発明の断熱材は、基材表面に薄膜状にコーティングすることができる。
薄膜状断熱材の製造方法は、前記セルロースナノファイバー無機フィラー分散水溶液を用いて通常のコーティング方法により金属、セラミック、樹脂など基材に直接製膜して後、乾燥すればよい。
コーティング方法としては、噴霧法、スピン法、ブレード法、バーコート法、ディップコートなどがあるが、噴霧法で行うのが最も良い。乾燥は溶媒の沸点より数度程度高い温度に基材毎加熱することにより、基材に製膜することができる。急激な熱処理は膜の変形を招くので、加熱は段階的に熱処理温度を上げていくことが望ましく、収縮や剥離の抑制をすることができる。
【0021】
次に、シート状断熱材の製造方法について説明する。
本発明の断熱材は、独立したシート状の断熱材の形状に製造することができる。
シート状断熱材の製造方法は、前記セルロースナノファイバー無機フィラー分散水溶液を射出成形、押出成形或はブレード法、バーコート法、抄紙法、噴霧法により製膜して製造することができる。
製膜法により製造する場合は、基板上に製膜し乾燥後基板からシートを剥がして独立したシート状の断熱材を得ることができる。基板は、金属、セラミック、樹脂などが使用可能であるが、良好な吸水性をもつ珪藻土あるいは石膏を基板として用いるのがより好ましい。そして、基板上に型枠を形成して、前記分散水溶液を載せて製膜することが好ましい。その後、基板上に製膜した前記分散液を基板ごと常温で風乾により乾燥させる。製膜と風乾を繰り返すことにより所望の厚みとなるように調整することができる。厚さ調整後、終日静置して風乾することにより水分が揮発したシートを得ることが出来る。より入念に溶媒を抜く場合は、溶媒の沸点より数度程度高い温度に加熱した乾燥器内で乾燥させると良い。加熱は段階的に熱処理温度を上げていくことが望ましい。乾燥後、乾燥したシートを基板から剥がして、独立シートを得ることが出来る。
【0022】
次に、バルク状断熱材の製造方法について説明する。
バルク状断熱材の製造は、加圧成型あるいは鋳込み成型で製造することができる。
鋳込み成型によるバルク状断熱材の製造は、前記セルロースナノファイバー無機フィラー分散液を容器に流し込み、乾燥させる。容器は、金属製でも樹脂製でも良い。樹脂製容器の場合、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの容器が良い。乾燥は、室温乾燥で成形容器から自然にサンプルが外れるまで静置し、その後容器から取り出し溶媒の沸点より数度程度高い温度に加熱した乾燥器内で3時間以上乾燥してバルク状断熱材を得る。
加圧成型によるバルク状断熱材の製造は、溶媒を添加することなく無機フィラーとセルロースナノファイバーを均一になるまで十分に混合攪拌して、その後金型に充填して、室温下で加圧してバルク状断熱材を得る。
【0023】
前記のような製造方法でシート、膜あるいはバルク体を作製することにより、
図1に示した概念図のように溶媒が蒸発した際に無機ファイラーにセルロースナノファイバーが絡まることにより、空隙を確保し、低密度であっても崩壊しない、優れた断熱性能を発揮する有機無機コンポジット断熱材料を製造することができる。
【実施例0024】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
本実施例で用いた原料は以下の通りである。
(フィラー)
卵殻パウダー:市販の卵殻パウダーを目開き25ミクロンのメッシュを通過させて回収することで粒径調整した粉末を用いた。
合成ドロマイト:株式会社白石中央研究所製の白艶華Aを目開き25ミクロンのメッシュを通過させて回収することで粒径調整した粉末を用いた。
ナノサイズ炭酸カルシウム:株式会社白石中央研究所製の白艶華Oを用いた。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバー:第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(繊維径3nm)を用いた。
【0026】
断熱材の熱伝導率、密度、気孔率は以下のようにして求めた。
(断熱材の熱伝導率)
GreenTTEG社製の熱流束センサを用い、
図2に示す装置を組み上げ定常法で熱流束を評価した。
熱伝導率は以下の式より求めた。
熱伝導率(W/m・K)=測定電圧値(μV)/センサ感度[μV/(W/m
2)]×試料厚み(m)/温度差(K)
(断熱材の密度)
得られた断熱材を10×10mmのサイズに切断し、その重量(g)をマイクロ電子天秤で、その厚み(mm)をマイクロメータで測り、次式より密度を算出した。
密度(g/cm
3)=重量(g)÷[10(mm)×10(mm)×厚み(mm)×10
-3]
(断熱材の気孔率)
理論密度は、フィラーとセルロースナノファイバーの密度を基に混合則より算出し、次式より気孔率を算出した。
気孔率(%)=(1-密度÷理論密度)×100
【0027】
<実施例1>
前記卵殻パウダーと前記セルロースナノファイバーの固形分重量を、それぞれ1g:9g、2g:8g、5g:5g、8g:2gおよび9g:1gとなるように秤量して十分に撹拌混合した後、蒸留水を固形分総重量の等倍加えて混合しペーストとした。
前記ペーストを、50×50mmの塗布面積を確保できるようガイドを取り付けた珪藻土板にバーコート法でシート成形を行った。塗布後のシートは若干の減圧による気流下で室温乾燥した。100μm以上のシート厚を確保するために、成膜、乾燥を繰り返し行い十分乾燥させた後、さらに水分を抜くために110℃以下の温度で乾燥を行った。その後、珪藻土板よりシートを剥離することで自立膜としての断熱シートを得た。
得られたシート状断熱材のフィラーとセルロースナノファイバーの総重量に対するフィラーの重量割合、シートの厚み、密度、気孔率及び熱伝導率をまとめて表1に示す。
卵殻パウダーとセルロースナノファイバーの重量比が、1:9及び9:1の場合のシート状断熱材の写真を
図3に示す。
【0028】
<実施例2>
フィラーに合成ドロマイト(株式会社白石中央研究所製白艶華A)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシート状の断熱材を作製した。得られたシート状断熱材のフィラーとセルロースナノファイバーの総重量に対するフィラーの重量割合、シートの厚み、密度、気孔率及び熱伝導率をまとめて表1に示す。
【0029】
<実施例3>
フィラーにナノサイズ炭酸カルシウム(株式会社白石中央研究所製白艶華O)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシート状の断熱材を作製した。得られたシート状断熱材のフィラーとセルロースナノファイバーの総重量に対するフィラーの重量割合、シートの厚み、密度、気孔率及び熱伝導率をまとめて表1に示す。
【0030】
<実施例4>
前記卵殻パウダーと前記セルロースナノファイバーの固形分重量を、それぞれ9.5g:0.5g、9g:1gおよび9.9g:0.1gとなるように秤量して十分に撹拌混合した後、蒸留水を固形分総重量の2倍加えて混合しペーストとした。
前記ペーストをポリプロピレン製鋳型に流し込み、若干の減圧による気流下で十分に乾燥を行った。さらに水分を抜くために110℃以下の温度で乾燥を行った。
得られたバルク状断熱材のフィラーとセルロースナノファイバーの総重量に対するフィラーの重量割合、シートの厚み、密度、気孔率及び熱伝導率をまとめて表1に示す。
【0031】
<比較例1>
関東化学株式会社製ポリビニルアルコール(重合度500)をポリビニルアルコール濃度が10%とるように蒸留水を秤量し、その中にポリビニルアルコール粉末を加えて十分に溶解させた。前記卵殻パウダーと前記ポリビニルアルコールの固形分の重量を、9.5g:0.5gと成るように秤量して添加したものを十分に撹拌混合し、ペーストを作製した。
前記ペーストをポリプロピレン製鋳型に流し込み、若干の減圧による気流下で十分に乾燥を行った後、最終的に110℃温度で硬化処理を行った。
得られたバルク体のフィラーの重量割合、シートの厚み、密度、気孔率及び熱伝導率をまとめて表1に示す。
【0032】
<比較例2>
日本化薬株式会社製エポキシ樹脂(GAN:グリシジルアミン型エポキシ樹脂)と新日本理化株式会社製エポキシ硬化剤リカシッド(MH-700G:酸無水物当量164)を10:8の重量比で混合した溶液を調整した。
前記卵殻パウダーと前記エポキシ樹脂溶液の重量を、9.5g:0.5g、9g:1gと成るように秤量し、十分に撹拌混合し、ペーストを作製した。
前記ペーストをアルミ箔製鋳型に流し込み、150℃、1時間で硬化処理を行った。
得られたバルク体は、卵殻パウダーが沈降して2層構造となったため、密度、熱伝導率の評価は未実施となった。これはエポキシ樹脂の気孔への侵入で無機フィラー粒子の重量が上がったことによる影響である。
【0033】