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特開2023-111038熱可塑性樹脂発泡シート、熱可塑性樹脂発泡シート成形体及び熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111038
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡シート、熱可塑性樹脂発泡シート成形体及び熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230803BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20230803BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230803BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
C08J9/04 CFG
B29C51/08
B29C44/00 F
B65D81/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012661
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】田井 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】田積 皓平
【テーマコード(参考)】
3E067
4F074
4F208
4F214
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB31
3E067AC01
3E067BA10A
3E067BA15A
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3E067BB25A
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3E067GA11
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3E067GD03
4F074AA66
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4F074BA37
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4F214AA32
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4F214AG20
4F214AR06
4F214UA18
4F214UB01
(57)【要約】
【課題】従来技術では、絞り比が大きい容器や、複雑な凹凸形状を有する容器においては、成形が困難であるという事情に鑑み、本発明は、成形性に優れる熱可塑性樹脂発泡シートを提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含むシート状の発泡層を備え、前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有する、熱可塑性樹脂発泡シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含むシート状の発泡層を備え、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有する、熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記極小値(E’)は、1.0~10.0MPaである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項3】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる温度30℃における貯蔵弾性率(E’30)と、前記極小値(E’)との比(E’30/E’)が40~400である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂のZ平均分子量(M)が300,000~700,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項5】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、60~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合は、5~40質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項7】
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~21J/gである、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【請求項8】
熱可塑性樹脂を含むシート状の発泡層を備え、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率の最小値(E’)が、測定温度30~200℃の範囲において、1.0~10.0MPaである、熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項9】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる温度30℃における貯蔵弾性率(E’30)と、前記最小値(E’)との比(E’30/E’)が40~200である、請求項8に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂のZ平均分子量(M)が300,000~700,000である、請求項8又は9に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項11】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃である、請求項8~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、60~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合は、5~40質量%である、請求項8~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項13】
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が7~28J/gである、請求項8~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項14】
平面視真円形の底壁部及び前記底壁部の周縁から立設された側壁部を備える有底円筒状の容器本体を備え、前記容器本体は、開口部から前記底壁部に向かうに従い窄まっており、(前記側壁部の高さ)/(前記開口部の開口径)で表される絞り比が0.5~2.0である、請求項8~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡シートを加熱する加熱工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートを雌型と雄型とで挟み込んで成形する成形工程と、を備え、
前記成形工程は、下記(I)式を満たす前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記雌型と前記雄型とで挟み込んで成形する、熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造方法。
(T-30)℃≦(T)℃≦(T+30)℃ ・・・(I)
[前記(I)式において、Tは、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面温度を表し、Tは、前記極小値(E’)となるときの温度を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡シート、熱可塑性樹脂発泡シート成形体及び熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を発泡させた樹脂発泡シート及びその成形体は、軽量で断熱性が高いという特徴から、食品容器等に用いられている。
コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の小売店で調理済食品を購入し、これを家庭等で喫食する中食市場が拡大している。中食市場において、電子レンジでの加熱調理に対応できる食品容器が求められている。加熱調理に対応する食品容器には、電子レンジ等での加熱時に変形しにくいこと(加熱寸法安定性に優れること)、加熱した後に軟弱にならず容易に取り扱えること(耐熱強度に優れること)が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、ガラス転移温度(Tg)が単一である熱可塑性樹脂発泡シートが提案されている。特許文献1の発明によれば、耐熱強度を高めることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6864775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、食品容器用の熱可塑性樹脂発泡シートには、熱成形等によって所望の形状の容器に成形できること(成形性に優れること)が求められる。特に、(容器深さの内寸)/(容器開口部の開口径)で表される絞り比が大きい容器や、複雑な凹凸形状を有する容器においては、優れた成形性が求められる。
また、熱可塑性樹脂発泡シートを成形した熱可塑性樹脂発泡シート成形体には、調理済食品を容器に入れて輸送する際、輸送過程の落下等の物理的衝撃を受けても容器が破損しないこと(耐衝撃性に優れること)が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、成形性に優れる熱可塑性樹脂発泡シートを提供することを目的とする。また、本発明は、耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂発泡シート成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含む熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有することで、成形性を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
<1>
熱可塑性樹脂を含むシート状の発泡層を備え、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有する、熱可塑性樹脂発泡シート。
<2>
前記極小値(E’)は、1.0~10.0MPaである、<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
<3>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる温度30℃における貯蔵弾性率(E’30)と、前記極小値(E’)との比(E’30/E’)が40~400である、<1>又は<2>に記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
<4>
前記熱可塑性樹脂のZ平均分子量(M)が300,000~700,000である、<1>~<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
<5>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃である、<1>~<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
<6>
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、60~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合は、5~40質量%である、<1>~<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
<7>
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~21J/gである、<1>~<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
【0009】
<8>
熱可塑性樹脂を含むシート状の発泡層を備え、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含み、
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率の最小値(E’)が、測定温度30~200℃の範囲において、1.0~10.0MPaである、熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<9>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる温度30℃における貯蔵弾性率(E’30)と、前記最小値(E’)との比(E’30/E’)が40~200である、<8>に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<10>
前記熱可塑性樹脂のZ平均分子量(M)が300,000~700,000である、<8>又は<9>に記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<11>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃である、<8>~<10>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<12>
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、60~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合は、5~40質量%である、<8>~<11>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<13>
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が7~28J/gである、<8>~<12>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
<14>
平面視真円形の底壁部及び前記底壁部の周縁から立設された側壁部を備える有底円筒状の容器本体を備え、前記容器本体は、開口部から前記底壁部に向かうに従い窄まっており、(前記側壁部の高さ)/(前記開口部の開口径)で表される絞り比が0.5~2.0である、<8>~<13>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シート成形体。
【0010】
<15>
<1>~<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡シートを加熱する加熱工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートを雌型と雄型とで挟み込んで成形する成形工程と、を備え、
前記成形工程は、下記(I)式を満たす前記熱可塑性樹脂発泡シートを前記雌型と前記雄型とで挟み込んで成形する、熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造方法。
(T-30)℃≦(T)℃≦(T+30)℃ ・・・(I)
[前記(I)式において、Tは、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面温度を表し、Tは、前記極小値(E’)となるときの温度を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートによれば、成形性を高められる。また、本発明の熱可塑性樹脂発泡シートを成形することで、耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂発泡シート成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る熱可塑性樹脂発泡シートの一例を示す断面図である。
図2】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図3】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図4】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図5】本実施形態に係る熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置の一例を示す模式図である。
図6】本実施形態に係る熱可塑性樹脂発泡シート成形体の斜視図である。
図7】熱可塑性樹脂発泡シート成形体の製造装置の一例を示す模式図である。
図8】実施例5の貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
図9】比較例2の貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
図10】実施例5の損失正接の測定結果を示すグラフである。
図11】実施例5のDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本稿において、「~」はその両端の値を下限値及び上限値として含む範囲を表す。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ということがある)は、熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)を発泡してなる。発泡シートの表面の一部又は全部には、樹脂の非発泡層が設けられていてもよい。
例えば、発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造のシートのままでもよいし、その片面又は両面に非発泡層が設けられて熱可塑性樹脂積層発泡シート(以下、単に「積層発泡シート」ということがある)とされてもよい。以下、発泡層のみからなる単層構造のシート、及びこれを含む積層発泡シートを総じて「熱可塑性樹脂発泡シート」(発泡シート)ということがある。なお、発泡層のみからなる単層構造には、1層の発泡層で構成された発泡シート、及び2層以上の発泡層のみで構成された発泡シートが含まれる。
以下、本発明の実施形態を挙げて、本発明を説明する。
【0015】
[熱可塑性樹脂発泡シート]
図1の発泡シート2は、熱可塑性樹脂発泡シート成形体(単に、「発泡シート成形体」ということがある)の原反、又は平板状の緩衝材等に用いられる。発泡シート成形体としては、例えば、熱成形体、圧空成形体、深絞成形体等の容器等が挙げられる。
図1は、本実施形態の発泡シート2の断面図である。発泡シート2は、1層の発泡層22で構成されている。
発泡シート2の厚さTは、用途を勘案して決定できる。例えば、発泡シート2が容器成形用であれば、厚さTは、0.3~5.0mmが好ましく、0.4~3.0mmがより好ましく、0.5~2.5mmがさらに好ましい。厚さTが上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性、剛性を高められる。厚さTが上記上限値以下であると、発泡シート2の成形性を高められる。
【0016】
発泡層22は、熱可塑性樹脂組成物を発泡してなる層である。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と発泡剤とを有する。熱可塑性樹脂組成物を発泡してなる発泡層22は、熱可塑性樹脂で形成されたマトリクス内に、2以上の気泡を有する。
【0017】
<熱可塑性樹脂>
発泡層22の熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とを含む。ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂との双方を含むことで、本実施形態の発泡シート2は、耐熱強度を高められる。
【0018】
熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~30,000が好ましく、15,000~25,000がより好ましく、20,000~23,000がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のMnが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をより高められる。熱可塑性樹脂のMnが上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
【0019】
熱可塑性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、50,000~200,000が好ましく、80,000~150,000がより好ましく、100,000~140,000がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のMwが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をより高められる。熱可塑性樹脂のMwが上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
【0020】
熱可塑性樹脂のZ平均分子量Mzは、300,000~700,000が好ましく、350,000~600,000がより好ましく、400,000~550,000がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のMzが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をより高められる。熱可塑性樹脂のMzが上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
【0021】
熱可塑性樹脂のMn、Mw及びMzは、実施例に記載の方法で測定できる。
熱可塑性樹脂のMn、Mw及びMzは、ポリエステル系樹脂及びポリエーテルイミド系樹脂のMn、Mw及びMz、熱可塑性樹脂の組成、架橋剤の種類、架橋剤の含有量、押出時の樹脂温度及びこれらの組合せにより調節できる。
【0022】
≪ポリエステル系樹脂≫
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(C-PET)がより好ましい。C-PETは、酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコールであるポリエステル系樹脂である。
ポリエステル系樹脂は、石油化学品由来のポリエステル系樹脂でもよいし、いわゆるバイオPET等の植物由来のポリエステル系樹脂でもよいし、これらの混合物でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料でもよい。
これらのポリエステル系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0023】
以下、植物由来のポリエステル系樹脂について説明する。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0024】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0025】
PETの合成反応を(1)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen-1,4-dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0026】
【化1】
【0027】
[(1)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1,100の数である。]
【0028】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、図2に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、図3に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0029】
PEFの合成反応を(2)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0030】
【化2】
【0031】
[(2)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1,100の数である。]
【0032】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図4に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0033】
発泡シート2に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエステル系樹脂の含有割合は、60~95質量%が好ましく、65~90質量%がより好ましく、70~85質量%がさらに好ましい。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記下限値以上であれば、成形性をより高められる。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、耐熱強度をより高められる。
【0034】
≪ポリエーテルイミド系樹脂≫
ポリエーテルイミド系樹脂(PEI)としては、特に限定されないが、環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであることが好ましく、溶融成形性を有するポリマーであることが好ましい。ポリエーテルイミド系樹脂は、エーテル結合を有する構造単位を有するポリイミド系樹脂である。本実施形態の熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド系樹脂を含むため、ポリエステル系樹脂との相溶性を高められる。このため、発泡シート2の成形性をより高められる。
【0035】
ポリエーテルイミド系樹脂としては、例えば、米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号公報、特許第2606912号公報、特許第2606914号公報、特許第2596565号公報、特許第2596566号公報、特許第2598478号公報等に記載されるポリマー等が挙げられる。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリエーテルイミド系樹脂の主鎖に環状イミド以外の構造単位が含まれていてもよい。環状イミド以外の構造単位としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が挙げられる。
また、ポリエーテルイミド系樹脂は、リサイクル原料でもよい。ポリエーテルイミド系樹脂は、バイオPEI等の植物由来の樹脂でもよい。
これらのポリエーテルイミド系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0036】
ポリエーテルイミド系樹脂は、例えば、下記(3)式で表される化合物が好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
[(3)式中、Rは、炭素数6~42の炭素原子を有する芳香族基であり、R’は、炭素数6~30の2価の芳香族基、炭素数2~30の脂肪族基及び炭素数4~30の脂環族基からなる群から選ばれた少なくとも1種の2価の有機基であり、R及びR’の少なくとも一方は、エーテル結合を有する。pは繰り返し単位を表す数である。]
【0039】
(3)式のpは、例えば、5~250の数である。
【0040】
ポリエーテルイミド系樹脂は、従来公知の製造方法により調製できる。例えば、(3)式中のRを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸並びにその酸無水物のいずれかもしくは双方と、(3)式中のR’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミン並びに芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物を脱水縮合することにより得られる。ポリエーテルイミド系樹脂の製造方法として具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミド等の化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法等を例示できる。
【0041】
テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、1,1’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,2’-ビス[(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン及びその酸無水物等が挙げられる。
【0042】
ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p-フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等及びこれらの芳香族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する芳香族一級ジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、2-メチル-1,3-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等及びこれらの脂肪族、並びに脂環族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する脂肪族及び脂環族一級ジアミン等を例示できる。
【0043】
発泡シート2に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエーテルイミド系樹脂の含有割合は、5~40質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましく、15~30質量%がさらに好ましい。ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合が上記下限値以上であれば、耐熱強度をより高められる。ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
【0044】
発泡シート2の(ポリエステル系樹脂の含有量)/(ポリエーテルイミド系樹脂の含有量)で表される質量比(以下、「ポリエステル/PEI比」ともいう)は、1.5~19が好ましく、1.8~9がより好ましく、2.3~5.7がさらに好ましい。ポリエステル/PEI比が上記下限値以上であれば、成形性をより高められる。ポリエステル/PEI比が上記上限値以下であれば、耐熱強度をより高められる。
【0045】
[ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合の測定方法]
発泡シート2に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエーテルイミド系樹脂の含有割合を把握することが必要である場合には、以下の方法でポリエーテルイミド系樹脂の含有割合を測定できる。例えば、発泡シート2の厚み方向に直交する方向(平面方向)に沿って発泡シート2をスライスして薄片試料(例えば、0.2mm厚みの試料)を作製し、下記に示すように、この試料に対してポリエーテルイミド系樹脂の含有割合の測定を実施すればよい。下記に、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂との混合樹脂の総質量に対するポリエーテルイミド系樹脂の含有割合について、その測定方法を例示する。ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる。
【0046】
発泡シート2の表面から厚み方向に直交する方向(平面方向)に沿って発泡シート2を0.2mmにスライスし、測定試料とする。測定試料表面の赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC(株)製「Nicolet iS10」フーリエ変換赤外分光光度計及びThermo SCIENTIFIC(株)製一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS-5(角度=42°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~675cm-1
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
【0047】
得られた赤外吸収スペクトルのチャートから、D1410とD1778のピーク高さを求め、標準試料を用いて作成した検量線から得られた下記(p)式よりポリエーテルイミド系樹脂の含有割合を算出する。
ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合(質量%)=100-{19.00ln(R)+37.95}×100 ・・・(p)
R=D1410/D1778
【0048】
D1410とは、ポリエステル系樹脂由来の波数1410cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度-ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。ベースラインは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1400cm-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1420cm-1±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
また、D1778とは、ポリエーテルイミド系樹脂の波数1778cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度-ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。ベースラインは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1760cm-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1800cm-1±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
【0049】
〔標準試料の作成〕
前記標準試料は以下のように作製した。
まず、表1に示した配合に従い、ポリエステル系樹脂(PET:遠東新世紀(株)製、商品名「CH-653」)と、ポリエーテルイミド系樹脂(PEI:SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1000」)と、架橋剤である無水ピロメリット酸(PMDA)を混合して、混合物を用意する。この混合物をラボプラストミル二軸押出機((株)東洋精機製作所製、型式:2D15W、口径15mm、L/D=17)に投入し、350℃で溶融混練して樹脂組成物とする。樹脂溶融物をラボプラストミル二軸押出機前端に取り付けたノズル金型(直径3.0mm)から押出す。押出した樹脂組成物を、直ちに冷却水槽で冷却する。そして、冷却されたストランド状の樹脂組成物を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて長さが約2mmで、直径が約3mm小粒状に切断して標準試料(A~I)を作製する。
標準試料(A~I)の組成を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
〔検量線の作成〕
検量線は以下のように作成する。
前記標準試料(A~I)の表面の赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC(株)製「Nicolet iS10」フーリエ変換赤外分光光度計およびThermo SCIENTIFIC(株)製一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS-5(角度=42°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~675cm-1
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
・測定回数:10回。
【0052】
各測定において得られた赤外吸収スペクトルのチャートから、上記ポリエーテルイミド系樹脂の含有割合の測定方法と同様にデータ処理を実施し、D1410とD1778のピーク高さを求め、吸光度比(R=D1410/D1778)を算出する。各標準試料(A~I)の吸光度比に対するポリエステル系樹脂の配合割合をプロットし、前記プロットにおける対数近似式を検量線とする。
【0053】
発泡シート2に含まれる熱可塑性樹脂は、リサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂の何れか一方にリサイクル原料を含んでいてもよく、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂の両方にリサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂の一部又は全部がポリエステル系樹脂のリサイクル原料であってもよく、ポリエーテルイミド系樹脂の一部又は全部がポリエーテルイミド系樹脂のリサイクル原料であってもよい。
リサイクル原料は、例えば、次の原料等が挙げられる。
1)発泡シート又は発泡シート成形体を粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした回収ペレット。
2)PETボトルを粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした再生PET。
【0054】
≪その他の樹脂≫
発泡シート2は、熱硬化性樹脂を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、全く含まないか、発泡シート2の品質に影響しない程度に含むことをいう。発泡シート2に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部が最も好ましい。
【0055】
熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂及びポリエーテルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
熱可塑性樹脂の総質量に対して、ポリエステル系樹脂及びポリエーテルイミド系樹脂の合計割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。ポリエステル系樹脂及びポリエーテルイミド系樹脂の合計割合が上記下限値以上であれば、発泡シート2の耐熱強度をより高められる。
【0057】
≪物性≫
発泡シート2は、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有する。
発泡シート2の貯蔵弾性率は、固体粘弾性測定(DMA測定)によって求められる。
【0058】
[貯蔵弾性率]
DMA測定装置として、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用い、発泡シート2から、長さ約40mm、幅約10mmの試料(試験片)を切り出す。試験片の寸法測定には、(株)Mitutoyo Corporation製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いる。DMA測定の条件は、以下の通りとする。
【0059】
〔測定条件〕
・モード:引張制御モード。
・雰囲気:窒素雰囲気。
・周波数:1Hz。
・加熱速度:5℃/分。
・測定温度:30℃~300℃。
・チャック間隔:20mm。
・歪振幅:5μm。
・最小張力:100mN。
・張力ゲイン:1.5。
・力振幅初期値:100mN。
【0060】
貯蔵弾性率の極小値(E’)は、DMA測定によって得られる温度に対する貯蔵弾性率の変化曲線から、装置付属の解析ソフトを用いて求められる。具体的には、貯蔵弾性率における各測定点について、温度(x軸)に対して貯蔵弾性率(y軸)をプロットし、近接する3つの測定点の直線近似式(y=ax+b)(ここで、aは、直線近似式の傾きであり、bは、直線近似式の切片である。)の傾きaが、a<0からa>0となる場合に、発泡シート2が「極小値(E’)を有する」と判定する。前記変化曲線において極小値が複数観測される場合は、各極小値のうち貯蔵弾性率の値が最も小さい極小値を極小値(E’)として採用する。
発泡シート2が、貯蔵弾性率の極小値(E’)を有すると、加熱時に発泡シート2が適度な柔軟性を維持でき、成形性をより高められる。
なお、前記変化曲線が、測定温度30~200℃の範囲において単調減少曲線の場合、発泡シート2は、貯蔵弾性率の極小値(E’)を有しない。
【0061】
発泡シート2の貯蔵弾性率の極小値(E’)は、1.0~10.0MPaが好ましく、2.0~9.0MPaがより好ましく、3.0~8.0MPaがさらに好ましい。貯蔵弾性率の極小値(E’)が上記下限値以上であれば、加熱寸法安定性及び耐熱強度をより高められる。貯蔵弾性率の極小値(E’)が上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
発泡シート2の貯蔵弾性率の極小値(E’)は、熱可塑性樹脂の分子量(数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、Z平均分子量Mz)、熱可塑性樹脂の組成、押出時の樹脂温度、発泡シート2の結晶化度及びこれらの組合せにより調節できる。
【0062】
発泡シート2の30℃における貯蔵弾性率の値をE’30とした場合、E’30/E’で表される比(E’30/E’)は、40~400が好ましく、50~300がより好ましく、60~200がさらに好ましい。比(E’30/E’)が上記下限値以上であれば、成形性をより高められる。比(E’30/E’)が上記上限値以下であれば、耐熱強度をより高められる。
【0063】
測定温度30~200℃の範囲における、発泡シート2の貯蔵弾性率の最小値をE’とした場合、E’30/E’で表される比(E’30/E’)は、40~400が好ましく、50~300がより好ましく、60~200がさらに好ましい。比(E’30/E’)が上記下限値以上であれば、成形性をより高められる。比(E’30/E’)が上記上限値以下であれば、加熱寸法安定性及び耐熱強度をより高められる。
なお、E’は、E’と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
発泡シート2の加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃が好ましく、90~125℃がより好ましく、100~120℃がさらに好ましい。t’MAXが上記下限値以上であれば、発泡シート2が軟化する温度が高くなり、耐熱強度をより高められる。t’MAXが上記上限値以下であれば、発泡シート2が軟化する温度が過度に高くなりすぎず、成形性をより高められる。
損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、上述した貯蔵弾性率のDMA測定と同様の条件により、装置付属の解析ソフトを用いて求められる。
【0065】
発泡シート2におけるガラス転移温度(Tg)は、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性をより高められる。
発泡シート2におけるガラス転移温度(Tg)は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量(DSC)測定で求められる。
なお、発泡シート2におけるガラス転移温度(Tg)は、発泡シート2を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)と同一視できる。
【0066】
発泡シート2における吸熱量と発熱量との差の絶対値(吸熱発熱差)は、3~21J/gが好ましく、4~15J/gがより好ましく、5~10J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であれば、結晶化度が高まり、耐熱強度及び加熱寸法安定性をより高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であれば、結晶化度が高まりすぎず、成形性をより高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分におけるDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
なお、発泡シート2における吸熱発熱差は、発泡シート2を構成する熱可塑性樹脂の吸熱発熱差と同一視できる。
【0067】
発泡シート2の融点は、230~270℃が好ましく、235~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。発泡シート2の融点が上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。発泡シート2の融点が上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
なお、発泡シート2における融点は、発泡シート2を構成する熱可塑性樹脂の融点と同一視できる。
【0068】
<発泡剤>
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0069】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~12質量部が好ましい。
【0070】
<任意成分>
本実施形態の発泡シート2は、熱可塑性樹脂及び発泡剤以外のその他成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
【0071】
架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物に架橋剤を配合することで、発泡時の破泡が抑制され、連続気泡率をより低められる。
架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.08~0.80質量部が好ましく、0.10~0.40質量部がより好ましく、0.15~0.30質量部がさらに好ましい。架橋剤の含有量が上記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂の分子量(数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz))を高められ、耐衝撃性をより高められる。架橋剤の含有量が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂の分子量の増加を抑制でき、成形性をより高められる。
【0072】
気泡調整剤は、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等である。これらの気泡調整剤は、発泡層22の独立気泡率を高め、発泡層22を形成しやすい。
気泡調整剤の含有量は熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.2~5質量部が好ましい。
【0073】
安定剤は、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等である。
安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0074】
紫外線吸収剤は、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等である。
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0075】
酸化防止剤は、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等である。
酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0076】
着色剤は、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、酸化亜鉛、沈降性シリカ、カドミウム赤等である。
本実施形態の発泡シート2を食品用の容器に用いる場合には、上記の着色剤の中から衛生協議会登録品を選択することが好ましい。
着色剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、2質量部以下が好ましい。
【0077】
結晶化促進剤は、例えば、ケイ酸塩、炭素、金属酸化物等である。ケイ酸塩としては、例えば、含水ケイ酸マグネシウムであるタルクが挙げられる。炭素としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、グラフェン、コークス、メソポーラスカーボン、ガラス状炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
結晶化促進剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、3質量部以下が好ましい。
【0078】
上述の任意成分は、それぞれ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
発泡層22に含まれる任意成分の総量は、発泡層22の総質量に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0079】
<物性>
発泡層22の連続気泡率は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。発泡層22の連続気泡率が上記上限値以下であると、発泡シート2の耐衝撃性をより高め、成形性をより高められる。発泡層22の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により求められる。
【0080】
発泡層22の坪量は、例えば、50~900g/mが好ましく、100~700g/mがより好ましく、150~500g/mがさらに好ましい。発泡層22の坪量が上記下限値以上であると、発泡シート2の耐衝撃性をより高められる。発泡層22の坪量が上記上限値以下であると、発泡シート2をより軽量にできる。加えて、発泡層22の坪量が上記上限値以下であると、加熱成形の際の加熱時間が長くなり過ぎず、発泡シート成形体の生産性をより高められる。
【0081】
発泡層22の坪量は、以下の方法で測定することができる。
発泡層22の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片5個以上を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、発泡層22の坪量(g/m)とする。
【0082】
発泡層22の見掛け密度は、例えば、0.050~0.666g/cmが好ましく、0.066~0.500g/cmがより好ましく、0.100~0.400g/cmがさらに好ましい。発泡層22の見掛け密度が上記下限値以上であると、発泡シート2の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。発泡層22の見掛け密度が上記上限値以下であると、発泡シート2をより軽量にできる。
【0083】
発泡層22の発泡倍率は、例えば、2~20倍が好ましく、3~15倍がより好ましく、3.5~10倍がさらに好ましい。発泡層22の発泡倍率が上記下限値以上であると、樹脂発泡成形体の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。発泡層22の発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡シート2の成形性をより高められる。
【0084】
発泡層22の平均気泡径は、例えば、80~1000μmが好ましく、150~750μmがより好ましく、200~500μmがさらに好ましい。発泡層22の平均気泡径が上記下限値以上であると、発泡シート2の耐衝撃性をより高められる。発泡層22の平均気泡径が上記上限値以下であると、発泡シート2の表面平滑性をより高められる。
【0085】
[発泡シートの製造方法]
発泡シート2は、従来公知の製造方法により製造される。
発泡シート2の製造方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
図5の発泡シートの製造装置1は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置1は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるタンデム型押出機である。押出機10は、第一の押出部11と、第一の押出部11に配管16で接続された第二の押出部12とを備える。第一の押出部11はホッパー14を備える。第一の押出部11には、発泡剤供給源18が接続されている。
第二の押出部12には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
なお、製造装置1の押出機10はタンデム型押出機以外の押出機でもよい。例えば、押出機10は、第一の押出部11にサーキュラーダイ20が接続された押出機でもよい。また、製造装置1の押出機10は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0086】
発泡層を構成する原料をホッパー14から第一の押出部11に投入する。ホッパー14から投入される原料は、発泡層を構成する樹脂、無機粒子の群、及び必要に応じて配合される任意成分である。
第一の押出部11では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第一の押出部11に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。
【0087】
熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂(原料ポリエステル系樹脂)のガラス転移温度(Tg)は、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。原料ポリエステル系樹脂のTgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。原料ポリエステル系樹脂のTgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性をより高められる。なお、「成形性」は、例えば、発泡シートを金型に挟んで熱成形した際に、金型のキャビティに発泡シートが追随して、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
【0088】
原料ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性をより高められる。
【0089】
原料ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.5~1.5が好ましく、0.6~1.3がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。原料ポリエステル系樹脂のIV値が上記下限値以上であれば、発泡時の破泡が抑制されて連続気泡率をより低められる。原料ポリエステル系樹脂のIV値が上記上限値以下であれば、密度をより低くし、表面をより平滑にして、外観の美麗さを高められる。
原料ポリエステル系樹脂のIV値は、JIS K7367-5:2000の方法で測定できる。
【0090】
原料ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~50,000が好ましく、15,000~45,000がより好ましく、20,000~40,000がさらに好ましい。原料ポリエステル系樹脂のMnが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエステル系樹脂のMnが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
【0091】
原料ポリエステル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、50,000~150,000が好ましく、60,000~140,000がより好ましく、70,000~130,000さらに好ましい。原料ポリエステル系樹脂のMwが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエステル系樹脂のMwが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
【0092】
原料ポリエステル系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、60,000~250,000が好ましく、80,000~200,000がより好ましく、90,000~180,000がさらに好ましい。原料ポリエステル系樹脂のMzが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエステル系樹脂のMzが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
原料ポリエステル系樹脂のMn、Mw及びMzは、熱可塑性樹脂のMn、Mw及びMzと同様の方法で測定できる。
【0093】
熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリエーテルイミド系樹脂(原料ポリエーテルイミド系樹脂)のガラス転移温度(Tg)は、190~240℃が好ましく、200~230℃がより好ましく、210~220℃がさらに好ましい。原料ポリエーテルイミド系樹脂のTgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。原料ポリエーテルイミド系樹脂のTgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性をより高められる。
【0094】
原料ポリエーテルイミド系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、3~30g/10分が好ましく、5~25g/10分がより好ましく、7~20g/10分がさらに好ましい。MFRが上記下限値以上であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性をより高められる。MFRが上記上限値以下であれば、耐衝撃性をより高められる。
本明細書において、原料ポリエーテルイミド系樹脂のMFRは、337℃、6.6kgfにおける値であり、ASTM D1238に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0095】
原料ポリエーテルイミド系樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~50,000が好ましく、15,000~30,000がより好ましく、20,000~25,000がさらに好ましい。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMnが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMnが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
【0096】
原料ポリエーテルイミド系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20,000~80,000が好ましく、30,000~70,000がより好ましく、40,000~60,000がさらに好ましい。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMwが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMwが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
【0097】
原料ポリエーテルイミド系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、40,000~120,000が好ましく、50,000~100,000がより好ましく、60,000~90,000がさらに好ましい。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMzが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をさらに高められる。原料ポリエーテルイミド系樹脂のMzが上記上限値以下であれば、成形性をさらに高められる。
原料ポリエーテルイミド系樹脂のMn、Mw及びMzは、熱可塑性樹脂のMn、Mw及びMzと同様の方法で測定できる。
【0098】
熱可塑性樹脂組成物は、第一の押出部11から配管16を経て第二の押出部12に供給され、さらに混合される。その後、樹脂組成物は、任意の温度に冷却された後、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
樹脂流路に導かれた熱可塑性樹脂組成物は、サーキュラーダイ20から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート2となる。
円筒状の発泡シート2は、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の発泡シート2は、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却され、カッター32によって2枚に切り裂かれて発泡シート2となる。発泡シート2は、各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
【0099】
押出時の樹脂温度(サーキュラーダイ20に導かれる前の熱可塑性樹脂組成物の温度)は、285~315℃が好ましく、290~310℃がより好ましく、295~305℃がさらに好ましい。押出時の樹脂温度が上記下限値以上であれば、過度な分子量増加を抑制し、成形性をより高められる。押出時の樹脂温度が上記上限値以下であれば、過度な分子量低下を抑制し、耐衝撃性をより高められる。
【0100】
[熱可塑性樹脂発泡シート成形体]
本実施形態の熱可塑性樹脂発泡シート成形体(発泡シート成形体、以下、単に「成形体」ともいう)は、発泡シート2を成形してなる。発泡シート成形体としては、食品用トレー等の容器、電気製品又は自動車等の工業部材に用いる緩衝材、梱包材、構造部材、断熱材等が挙げられる。
発泡シート成形体の一例として、容器について図面を参照して説明する。
【0101】
図6の容器100は、平面視真円形の底壁部及び底壁部の周縁から立設された側壁部を備える有底円筒状の容器本体110を備え、開口部112の周縁には、外方に張り出すリップ部114が形成されている。容器本体110は、開口部112から底壁部に向かうに従い窄まっている。リップ部114は、断面半円形とされている。本実施形態においては、容器本体110により容器100が構成されている。
【0102】
容器本体110の開口径R1は、容器100の用途等を勘案して決定され、例えば、飲料用容器であれば、50~100mmとされる。
容器本体110の高さH1は、容器100の用途等を勘案して決定され、例えば、飲料用容器であれば、70~200mmとされる。
高さH1(mm)/開口径R1(mm)で表される絞り比は、容器100の用途等を勘案して決定される。絞り比は、例えば、0.5~2.0が好ましく、1.0~1.8がより好ましい。絞り比が上記下限値以上であれば、容器として使用しやすい。絞り比が上記上限値以下であれば、成形時に亀裂や皺を生じにくく、成形性をより高められる。
底壁部に対する側壁部の角度(傾斜角度)θは、容器100の用途等を勘案して決定される。例えば、飲料用容器であれば、80~88°とされる。上記下限値以上であれば、飲料用容器としての意匠性を高められ、上記上限値以下であれば、容器本体110をより容易に成形できる。
容器本体110の側壁部の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.3~3mmが好ましい。側壁部の厚さが上記下限値以上であれば、容器100の耐衝撃性をより高められる。側壁部の厚さが上記上限値以下であれば、容器本体110をより容易に成形できる。
【0103】
なお、本実施形態の容器100は、平面視で真円形であるが、本発明はこれに限定されない。容器の平面視形状は、楕円形でもよいし、四角形等の多角形でもよい。
【0104】
本実施形態の容器100は、発泡シート2を成形して得られる。即ち、容器100は、熱可塑性樹脂中に気泡を有する。
容器100は、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率の最小値(E’)が、測定温度30~200℃の範囲において、1.0~10.0MPaであり、2.0~9.0MPaが好ましく、3.0~8.0MPaがより好ましい。貯蔵弾性率の最小値(E’)が上記下限値以上であれば、耐熱強度をより高められる。貯蔵弾性率の最小値(E’)が上記上限値以下であれば、耐衝撃性をより高められる。
容器100の貯蔵弾性率の最小値(E’)は、固体粘弾性測定によって求められる。測定条件等は、発泡シート2の貯蔵弾性率の極小値(E’)を求めるときと同様である。
容器100の貯蔵弾性率の最小値(E’)は、熱可塑性樹脂の分子量(数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、Z平均分子量Mz)、熱可塑性樹脂の組成、容器100の結晶化度及びこれらの組合せにより調節できる。
【0105】
容器100の30℃における貯蔵弾性率の値をE’30とした場合、E’30/E’で表される比(E’30/E’)は、40~200が好ましく、45~150がより好ましく、50~100がさらに好ましい。比(E’30/E’)が上記下限値以上であれば、耐衝撃性をより高められる。比(E’30/E’)が上記上限値以下であれば、耐熱強度をより高められる。
【0106】
容器100の加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定によって求められる損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、測定温度30~200℃の範囲において、80~130℃が好ましく、85~128℃がより好ましく、95~125℃がさらに好ましい。t’MAXが上記下限値以上であれば、容器100が軟化する温度が高くなり、耐熱強度をより高められる。t’MAXが上記上限値以下であれば、耐衝撃性をより高められる。
損失正接(tanδ)が最大になる温度(t’MAX)は、上述した貯蔵弾性率のDMA測定と同様の条件により、装置付属の解析ソフトを用いて求められる。
【0107】
容器100のガラス転移温度(Tg)は、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、耐衝撃性をより高められる。
【0108】
容器100における吸熱量と発熱量との差の絶対値(吸熱発熱差)は、7~28J/gが好ましく、8~20J/gがより好ましく、10~15J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であれば、結晶化度が高まり、耐熱強度をより高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であれば、結晶化度が高まりすぎず、耐衝撃性をより高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分におけるDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
なお、容器100における吸熱発熱差は、容器100を構成する熱可塑性樹脂の吸熱発熱差と同一視できる。
【0109】
[発泡シート成形体の製造方法]
容器100の製造方法としては、例えば、発泡シート2を加熱して、これを雌型(キャビティ)と雄型(コア)とで挟み込んで成形する方法(熱成形方法)が挙げられる。
容器100の製造方法に用いられる成形装置の一例を図7に示す。
図7の成形装置200は、シャフト221と、一対の供給ローラ222と、搬送コンベア223と、予熱部203と、加熱金型204と、冷却金型205と、型抜機224とを有する。
予熱部203は、上加熱板231と、上加熱板231に対向する下加熱板232とを有する。予熱部203は、上加熱板231と下加熱板232との組み合わせに代えて、加熱炉でもよい。
加熱金型204は、加熱キャビティ241と、加熱コア242とを有する。加熱金型204としては、真空成形機、圧空成形機等が挙げられる。
冷却金型205は、冷却キャビティ251と、冷却コア252とを有する。
なお、加熱キャビティ241と冷却キャビティ251とは同形状であり、加熱コア242と冷却コア252とは同形状である。
【0110】
まず、シャフト221に発泡シートロール4を取り付ける。発泡シートロール4から発泡シート2を繰り出し、一対の供給ローラ222でX方向に発泡シート2を間欠的に移送する。予熱部203は、移送された発泡シート2を加熱する(予備加熱工程)。予備加熱工程直後の発泡シート2の表面温度(T)は、例えば、90~230℃が好ましく、95~210℃がより好ましく、100~190℃がさらに好ましい。表面温度(T)が上記下限値以上であれば、発泡シート2を軟化して、成形性をより高められる。表面温度(T)が上記上限値以下であれば、発泡シート2の過度な結晶化度の上昇を抑制して、成形性をより高められる。
予備加熱工程における加熱時間は、5~90秒が好ましく、7~60秒がより好ましく、10~30秒がさらに好ましい。
【0111】
次いで、加熱金型204は、加熱キャビティ241と加熱コア242とで発泡シート2を挟み込んで、発泡シート2を加熱しつつ成形する(成形工程)。成形工程における加熱金型の温度(加熱温度)は、30~240℃が好ましく、35~200℃がより好ましく、40~180℃がさらに好ましい。加熱温度が上記下限値以上であれば、発泡シート2を軟化し、加熱キャビティ241内に押し付けて、成形性をより高められる。加熱温度が上記上限値以下であれば、発泡シート成形体の離型性をより高められる。成形工程における成形時間は、1~10秒が好ましく、2~8秒がより好ましく、3~7秒がさらに好ましい。成形時間が上記下限値以上であれば、発泡シート2を軟化し、加熱キャビティ241内に押し付けて、成形性をより高められる。加えて、加熱寸法安定性をより高められる。成形時間が上記上限値以下であれば、1サイクル当たりの時間を短縮して、生産性を高められる。
【0112】
成形工程においては、下記(I)式を満たす発泡シート2を加熱キャビティ241と加熱コア242とで挟み込んで成形することが好ましい。
(T-30)℃≦(T)℃≦(T+30)℃ ・・・(I)
(I)式において、Tは、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面温度を表し、Tは、前記極小値(E’)となるときの温度を表す。
表面温度(T)と、前記温度Tとが、上記(I)式の関係を満たすように成形工程を行うことで、発泡シート2の柔軟性が適度に維持され、成形性をより高められる。
【0113】
加熱金型204は、成形工程の後、加熱金型204内で発泡シート2をさらに加熱してもよい(ヒートセット工程)。ヒートセット工程を設けることで、発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性をより高められる。ヒートセット工程における加熱金型の温度(ヒートセット温度)は、130~240℃が好ましく、140~220℃がより好ましく、150~200℃がさらに好ましい。ヒートセット温度が上記下限値以上であれば、発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性をより高められる。ヒートセット温度が上記上限値以下であれば、発泡シート成形体の離型性をより高められる。ヒートセット工程における加熱時間(ヒートセット時間)は、3~90秒が好ましく、5~60秒がより好ましく、7~50秒がさらに好ましい。ヒートセット時間が上記下限値以上であれば、発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性をより高められる。ヒートセット時間が上記上限値以下であれば、1サイクル当たりの時間を短縮して、生産性を高められる。
なお、本実施形態の発泡シート2は、ヒートセット工程を省略しても、耐熱強度が低下せず、加熱寸法安定性が著しく損なわれることがない。
【0114】
次いで、加熱金型203を開き、所望の形状に成形された発泡シート2を冷却金型205の位置に移送し、発泡シート2を冷却キャビティ251と冷却コア252とで挟み込む(冷却工程)。
なお、冷却工程は、省略することができる。
【0115】
次いで、型抜機224で発泡シート2から発泡シート成形体である容器100を切り出す。
【0116】
本実施形態の発泡シートは、ポリエステル系樹脂とポリエーテルイミド系樹脂とが相溶しており、固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率が、測定温度30~200℃の範囲において極小値(E’)を有するため、加熱時に適度な柔軟性を維持でき、成形性をより高められる。
本実施形態の発泡シート成形体は、固体粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率の最小値(E’)が、測定温度30~200℃の範囲において、1.0~10.0MPaであるため、耐熱強度及び耐衝撃性をより高められる。
【実施例0117】
以下、本発明について実施例を示して説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。
【0118】
(使用原料)
<ポリエステル系樹脂>
・PET(A):ポリエチレンテレフタレート、遠東新世紀(株)製、商品名「CH-611」、ガラス転移温度(Tg):78℃、融点:251℃、IV値:1.04、バイオマス度:0%。
・PET(B):ポリエチレンテレフタレート、遠東新世紀(株)製、商品名「CH-653」、ガラス転移温度(Tg):79℃、融点:248℃、IV値:1.01、バイオマス度:27~30%。
・PET(C):ポリエチレンテレフタレート、INDRAMA社製、商品名「RAMAPET N1B」、ガラス転移温度(Tg):78℃、融点:247℃、IV値:0.80、バイオマス度:30%。
・PEN(D):ポリエチレンナフタレート、帝人(株)製、商品名「テオネックス TN8050SC」、ガラス転移温度(Tg):120℃、融点:265℃、IV値=0.51、バイオマス度:0%。
【0119】
<ポリエーテルイミド系樹脂(PEI)>
・PEI(E):ポリエーテルイミド、SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1000」、ガラス転移温度(Tg):217℃、MFR:9g/10分。
・PEI(F):ポリエーテルイミド、SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1010」、ガラス転移温度(Tg):217℃、MFR:17.8g/10分。
【0120】
<タルクマスターバッチ>
・タルクMB:PET=72質量%、タルク=28質量%からなるマスターバッチ。
【0121】
<架橋剤>
・PMDA:無水ピロメリット酸。
【0122】
(発泡シートの特性)
<厚さ>
発泡シートの幅方向(TD方向)の両端20mmを除いた部分を、幅方向に等間隔9点について、ダイヤルシックネスゲージSM-112((株)テクロック製)を使用して厚さを測定し、測定値を相加平均した値を厚さとした。
【0123】
<坪量>
発泡シートの幅方向(TD方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片6個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、発泡シートの坪量(g/m)とした。
【0124】
<見掛け密度>
発泡シートの坪量と厚みから、下記(s1)式にて算出した。
見掛け密度(g/cm)=坪量(g/m)÷厚さ(mm)÷1000・・・(s1)
【0125】
<発泡倍率>
各例の配合割合から熱可塑性樹脂の密度を求め、熱可塑性樹脂の密度を得られた発泡シートの見掛け密度で除した値を発泡倍率とした。なお、各樹脂の密度は以下の値を用いた。
・PET:1.35g/cm
・PEN:1.33g/cm
・PEI:1.28g/cm
【0126】
<連続気泡率>
発泡シートから、縦25mm×横25mmのシート状サンプル2枚以上を切り出し、切り出したサンプルを空間があかないよう重ね合わせて厚さ25mmとして試験片を得た。得られた試験片の外寸を、(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」ノギスを用いて、1/100mmまで測定し、見掛け上の体積(V1:cm)を求めた。次に、東京サイエンス(株)製「1000型」空気比較式比重計を用いて、1-1/2-1気圧法により試験片の体積(V2:cm)を求めた。下記(s2)式により連続気泡率(%)を計算し、5つの試験片の連続気泡率の平均値を求めた。試験片は予め、JIS K7100:1999の記号「23/50」(温度23±2℃、相対湿度50±5%)、2級の標準雰囲気下で24時間以上かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下にて測定した。なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm、小8.58cm)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=(V1-V2)/V1×100・・・(s2)
(V1:ノギスを用いて測定される見掛け上の体積、V2:空気比較式比重計で測定される体積)
【0127】
(発泡シート及び発泡シート成形体(以下、単に「成形体」ともいう)の特性)
<融点、結晶化温度、ガラス転移温度>
融点、結晶化温度及びガラス転移温度は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法に準拠して測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
発泡シート又は成形体から切り出した試料をアルミニウム製測定容器の底に、隙間のないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~4で試料の加熱と冷却とを施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温し(1回目昇温過程)、10分間保持。
(ステップ3)試料を速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷。
(ステップ4)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温(2回目昇温過程)。
なお、基準物質としてアルミナを用いた。装置付属の解析ソフトを用いて、図11に示すように2回目昇温過程にみられる融解ピーク及び結晶化ピークのトップの温度を読みとって融点及び結晶化温度とした。ガラス転移温度(Tg)は2回目昇温過程にみられるDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度を算出した。この中間点ガラス転移温度は前記規格JIS K7121:2012の9.3(1)より求めた。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定チャート(DSC曲線)において、2回目昇温過程にみられる結晶化ピークよりも低温側におけるガラス転移温度を採用した。但し、2回目昇温過程において結晶化ピークが観測されない場合は、2回目昇温過程の温度範囲(30~300℃)におけるガラス転移温度を採用した。
【0128】
<貯蔵弾性率及び損失正接>
貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)は、固体粘弾性測定(DMA測定)によって測定した。固体粘弾性測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いた。発泡シート又は成形体から、長さ約40mm、幅約10mmに試料(試験片)を切り出した。試験片の寸法測定には、(株)Mitutoyo Corporation製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。固体粘弾性測定の条件は次の通りとした。
〔測定条件〕
・モード:引張制御モード。
・雰囲気:窒素雰囲気。
・周波数:1Hz。
・加熱速度:5℃/分。
・測定温度:30℃~300℃。
・チャック間隔:20mm。
・歪振幅:5μm。
・最小張力:100mN。
・張力ゲイン:1.5。
・力振幅初期値:100mN。
【0129】
測定温度30~200℃の範囲における貯蔵弾性率の極小値(E’)は、図8に示すように、温度に対する貯蔵弾性率の変化曲線から、装置付属の解析ソフトを用いて求めた。具体的には、貯蔵弾性率における各測定点について、温度(x軸)に対して貯蔵弾性率(y軸)をプロットし、近接する3つの測定点の直線近似式(y=ax+b)(ここで、aは、直線近似式の傾きであり、bは、直線近似式の切片である。)の傾きaが、a<0からa>0となる場合に、極小値(E’)が「有」と判定した。また、傾きaが、a<0からa>0となる各測定点において、最も小さい貯蔵弾性率の値を貯蔵弾性率の極小値(E’)とした。前記変化曲線において極小値が複数観測される場合は、各極小値のうち貯蔵弾性率の値が最も小さい極小値を極小値(E’)として採用した。
測定温度30~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値(E’)及び損失正接(tanδ)は、装置付属の解析ソフトを用いて求めた。
なお、図8は、後述する実施例5の貯蔵弾性率の測定結果であり、図9は、後述する比較例2の貯蔵弾性率の測定結果である。また、図10は、後述する実施例5の損失正接(tanδ)の測定結果である。
【0130】
<吸熱量(a)、発熱量(b)、結晶化度>
吸熱量(a)(融解熱量)及び発熱量(b)(結晶化熱量)は、示差走査熱量測定(DSC測定)により、JIS K7122:1987、JIS K7122:2012に記載されている方法で測定した。サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
発泡シート又は成形体から切り出した試料をアルミニウム製測定容器の底に、隙間のないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~2で試料の加熱及び冷却を施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)加熱速度10℃/分で30℃から300℃まで昇温(1回目昇温過程)。
この時の基準物質にはアルミナを用いた。吸熱量(a)及び発熱量(b)は、装置付属の解析ソフトを用いて算出した。具体的には、図11に示すように、吸熱量(a)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。発熱量(b)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。
結晶化度は、前記吸熱量(a)と前記発熱量(b)を用いて、下記(s3)式により算出した。
結晶化度(%)={(吸熱量(a)の絶対値(J/g)-発熱量(b)の絶対値(J/g))÷完全結晶の融解熱量(J/g)}×100・・・(s3)
完全結晶の融解熱量は、100%結晶化した場合の熱量を表す。なお、上記(s3)式における完全結晶の融解熱量は、PETの完全結晶の融解熱量である140.1J/gを用いた。
【0131】
<数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びZ平均分子量(Mz)>
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びZ平均分子量(Mz)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
発泡シート又は成形体から試料5mgを取り、これにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に追加して軽く手動で振とうした。これを浸漬時間6±1.0hrで放置した。試料が完全に溶解したことを確認後に、クロロホルムで希釈して全量を10mLにして、軽く手動で振とうして混合した。その後、ジーエルサイエンス(株)製の非水系0.45μmのクロマトディスク、又は(株)島津ジーエルシー製の非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過して、測定試料とした。測定試料を次の測定条件にて、クロマトグラフで測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びZ平均分子量(Mz)を求めた。
【0132】
〔測定装置〕
・測定装置=東ソー(株)製、「HLC-8320GPC EcoSEC」、ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
〔GPC測定条件〕
・カラム
〈サンプル側〉
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列。
〈リファレンス側〉
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列。
カラム温度=40℃。
移動相=クロロホルム。
〈移動相流量〉
サンプル側ポンプ=1.0mL/分。
リファレンス側ポンプ=0.5mL/分。
検出器=UV検出器(254nm)。
注入量=15μL。
測定時間=25分。
サンプリングピッチ=500m秒。
【0133】
〔検量線用標準ポリスチレン試料〕
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量(Mw)が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)及びB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解させた。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解させた。
標準ポリスチレン検量線は、作製した各A及びB溶解液を50μL注入して、測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得た。その検量線を用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)を算出した。
【0134】
(発泡シートの性能評価方法)
<発泡シートの加熱寸法安定性(加熱変形試験)>
発泡シートから一辺が約10cmの平面正方形状の試験片を5個、各辺が前記発泡シートの押出方向(MD方向)又は幅方向(TD方向)に平行な状態となるように切り出した。
次いで、各試験片の発泡シート上に、互いに対向する辺の中央部同士を結ぶ直線を二本、十字状に描いた。このとき、加熱前の各方向における直線の長さをMD1、TD1とした。次に、各試験片を所定の温度に設定した湿度調整無しのオーブン中の平台に静置して、150秒間加熱した後、オーブンから取り出して室温にて30分間冷却した。その後、加熱前に描いた各方向の直線の長さを測定し、各試験片の測定長の相加平均値を加熱後の長さとした。得られた加熱後の長さMD2、TD2と、加熱前の長さMD1、TD1から、押出方向の加熱前の長さ(MD1)と加熱後の長さ(MD2)の比(MD比=MD2/MD1)、幅方向の加熱前の長さ(TD1)と加熱後の長さ(TD2)の比(TD比=TD2/TD1)を算出した。下記評価基準に基づいて、各例の発泡シートの加熱寸法安定性を評価した。
【0135】
≪評価基準≫
◎:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97以上。
〇:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97以上。
△:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.95以上0.97未満。
×:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.95未満。
【0136】
<発泡シートの耐熱強度(加熱引張試験)>
加熱引張試験における引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して、(株)島津製作所製「オートグラフAG-Xplus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。試験片は、ダンベル形タイプ5とし、その長さ方向が押出方向(MD)となるように切り出した。試験速度200mm/分、つかみ具間隔80mmとした。試験片はJIS K7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で24時間以上状態調節した後試験に用いた。
測定は、標準雰囲気下(23℃)及び80℃にて実施した。80℃においては、(株)島津製作所製「TCR2A型」付帯恒温槽内に設置した冶具に試験片を挟み、1分間保持した後に測定した。前記雰囲気温度における試験片の数はそれぞれ5個とし、各試験片における引張弾性率測定値の相加平均を引張弾性率の値とした。引張弾性率は、引張比例限度内における傾きが最大となる領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて算出した。
80℃における引張弾性率(E80)と標準雰囲気下(23℃)における引張弾性率(E23)を用いて、下記(s4)式により保持率を算出した。下記評価基準に基づいて、各例の発泡シートの耐熱強度を評価した。
保持率(%)=(E80)/(E23)×100・・・(s4)
【0137】
≪評価基準≫
◎:保持率が50%以上である。
〇:保持率が40%以上50%未満である。
△:保持率が25%以上40%未満である。
×:保持率が25%未満である。
【0138】
<発泡シートの耐衝撃性(落錘衝撃試験)>
落錘衝撃試験における全吸収エネルギーは、ASTM D3763-15に準拠し測定した。全吸収エネルギーは、CEAST社製「CEAST9350」落錘衝撃試験機、計測ソフト「CEAST VIEW」を用いて測定した。試験片サイズは、長さ100mm×幅100mmとした。試験片の数は最少5個とし、各試験片の坪量は、実施例及び比較例の表に記載した発泡シートの坪量の値±5%の範囲であった。試験条件は次の通りとした。
【0139】
〔試験条件〕
・試験速度:1.76m/秒。
・落錘荷重:1.9265kg。
・試験片支持スパン:φ76mm。
・使用タップ:4.5kN計装化タップ(先端φ12.7mm半球状)。
試験片はASTM D618-13のProcedureA(23±2℃、相対湿度50±10%)の環境で16時間の状態調節を施し、測定に用いた。各試験片の全吸収エネルギーは、測定で得られたグラフの積分値を前記計測ソフトで自動計算して算出した。試験温度(23℃)における各試験片の全吸収エネルギーの平均値を発泡シートの全吸収エネルギーとした。下記評価基準に基づいて、各例の発泡シートの耐衝撃性を評価した。
【0140】
≪評価基準≫
◎:全吸収エネルギーが0.40J以上。
〇:全吸収エネルギーが0.25J以上0.40J未満。
△:全吸収エネルギーが0.15J以上0.25J未満。
×:全吸収エネルギーが0.15J未満。
【0141】
<発泡シートの成形性>
発泡シートから縦700mm×横1050mmの平面長方形状の試験片を切り出した。そして、単発成形機(東成産業(株)製、商品名「ユニック自動成形機 FM-3A」)を用意し、この単発成形機の上側ヒーターの平均温度を304℃、下側ヒーターの平均温度を267℃、上側雰囲気温度を206℃、下側雰囲気温度を206℃にした。次に、上記試験片を単発成形機に導入して発泡シートの表面温度(T)が表7~10に示した温度になるように各々所定時間加熱した後に、直径10mm(上面)×直径35mm(底面)で高さが違う円錐台を22個配置した金型(金型表面温度50℃)を用いて、成形を行なった。22個の円錐台の高さ及び絞り比は、表14に示す通りであった。成形体に裂けや穴あきが無く、形状が金型の通りに成形される絞り比を目視で観察し、下記評価基準に基づいて、各例の発泡シートの成形性を評価した。
【0142】
≪評価基準≫
◎:絞り比が1.6以上。
○:絞り比が1.3以上1.6未満。
△:絞り比が1.0以上1.3未満。
×:絞り比が1.0未満又は成形不可。
ここで、「成形不可」とは、表14中No.1の円錐台において、形状が金型の形状から著しくずれているか、成形体に裂けや穴あきがみられることをいう。
【0143】
≪発泡シートの総合評価≫
◎:全ての項目の評価が「◎」か「〇」であった。
〇:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が1つであった。
△:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が2つ以上であった。
×:いずれかの項目の評価が「×」であった。
【0144】
(成形体の性能評価方法)
<成形体の耐衝撃性>
各例の成形体(容器)を各5個ずつ用意し、250mLの水を入れ、-25℃で24時間静置し、容器入り凍結品を得た。-25℃の環境下で容器の長手方向を鉛直方向、短手方向を水平方向に向け、各容器入り凍結品を80cmの高さから、水平な鉄板面に落下させた。その後、落下させた全ての容器入り凍結品をそれぞれ目視で観察し、欠損(容器の割れや貫通)状況について、下記評価基準に基づいて、各例の成形体の耐衝撃性を評価した。
【0145】
≪評価基準≫
◎:欠損した容器の数が0~2個。
〇:欠損した容器の数が3個。
△:欠損した容器の数が4個。
×:欠損した容器の数が5個。
【0146】
<成形体の耐熱強度>
各例の成形体に100gのサラダ油を入れ、業務用電子レンジ(電子レンジ:パナソニック(株)製NE1901S型)にて1600Wの出力で60秒間加熱した。その後、直ちにサラダ油が入った状態で成形体を持ち上げ、目視にて成形体の変形の度合を確認し、下記評価基準に基づいて、各例の成形体の耐熱強度を評価した。
【0147】
≪評価基準≫
◎:変形なく、片手で持ち上げられる。
〇:少し変形するが、片手で持ち上げられる。
△:大きく変形するが、片手で持ち上げられる。
×:著しく大きく変形し、片手で持ち上げることができない。
【0148】
<成形体の総合評価>
◎:全ての項目の評価が「◎」であった。
〇:全ての項目の評価が「◎」か「〇」であり、1つ以上が「〇」であった。
△:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が1つ以上であった。
×:いずれかの項目の評価が「×」であった。
【0149】
(実施例1)
表2の配合に従い、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、タルクマスターバッチ及び架橋剤をミキサーにて混合して、配合物とした。
直径93mmの円環状スリットで、かつ、スリット幅が0.36mmのサーキュラーダイを単軸押出機(口径65mm、L/D=34)の先端にセットし、このサーキュラーダイの押出方向前方に円筒状の冷却用マンドレル(直径206mm、長さ310mm)を配置した。冷却用マンドレル内に冷却水を循環させた。押出機を所定の温度に設定し、押出機で配合物を混練して溶融混合物とした。押出機バレルの途中から発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=35:65(質量比))を圧入して樹脂溶融物に加え、さらに混練して、熱可塑性樹脂組成物とした。
押出時の樹脂温度を300℃に設定し、サーキュラーダイのダイスリットから溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を吐出量30kg/hにて押出発泡させ、円筒状の発泡体を形成させた。この円筒状の発泡体を冷却用マンドレルによって拡径し、冷却用マンドレルよりもさらに下流側に配した引取機によって引き取らせた。冷却用マンドレルの外周面を発泡体の内周面に沿わせて発泡体を冷却すると共に、冷却用マンドレルの下流側において円筒状発泡体を押出方向に沿って切断した。そして、円筒状発泡体を平坦な帯状の発泡シートにして引取機によりロール状に巻き取った。得られた発泡シートの特性を表2に、発泡シートの性能の評価を表7に示す。
【0150】
(実施例2~14、17~19、比較例1~4)
表2~6の配合に従い、押出時の樹脂温度と引取機の引取速度を調整した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの特性を表2~6に、発泡シートの性能の評価を表7~9に示す。
【0151】
(実施例15)
表4の配合に従い、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。作製した発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。裁断した発泡シートを180℃に加熱された一対の熱板で挟持し、発泡シートの表面温度が180℃となった状態で5秒間に亘って保持した。得られた発泡シートの特性を表4に、発泡シートの性能の評価を表8に示す。
【0152】
(実施例16)
表5の配合に従い、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。作製した発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。裁断した発泡シートを180℃に加熱された一対の熱板で挟持し、発泡シートの表面温度が180℃となった状態で10秒間に亘って保持した。得られた発泡シートの特性を表5に、発泡シートの性能の評価を表8に示す。
【0153】
(比較例5)
表6の配合に従い、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。作製した発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。裁断した発泡シートを180℃に加熱された一対の熱板で挟持し、発泡シートの表面温度が180℃となった状態で10分間に亘って保持した。得られた発泡シートの特性を表6に、発泡シートの性能の評価を表9に示す。
【0154】
(実施例20~27)
実施例1及び実施例5で得られた発泡シートを用いて、表面温度(T)が表10に記載した温度になるようにして成形を実施した。発泡シートの成形性の評価を表10に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
【表7】
【0161】
【表8】
【0162】
【表9】
【0163】
【表10】
【0164】
本発明を適用した実施例1~19の総合評価は「△」~「◎」であり、成形性において特に優れていた。
これに対して、ポリエーテルイミド系樹脂を含まない比較例1、貯蔵弾性率が極小値(E’)を有しない比較例2~5の総合評価は「×」であった。なお、比較例1は成形性の評価が「◎」であったが、発泡シートの基本機能である加熱寸法安定性と耐熱強度が「×」であるため、本発明の課題を解決していないと判断した。
【0165】
本発明を適用した実施例20~27の成形性の評価は「△」~「○」であり、成形工程において発泡シートの表面温度(T)を調整することで、成形性をさらに高められることを確認できた。
【0166】
(実施例28)
実施例1にて得たヒートセットする前の発泡シートを用意し、この発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。押出(MD)方向が容器の長手方向になるように発泡シートを固定する枠内にセットし、前記発泡シートを320℃のヒーター槽で10秒間予備加熱して、発泡シートの表面温度(T)を130℃にした。その後、マッチモールド成形法によって上部に開口部を有するトレー状の成形体(縦210mm×横180mm×高さ30mm)を得た。成形体が得られるまでにかかった時間(成形サイクル時間)は23秒間であった。得られた成形体の特性及び性能の評価を表11に示す。
【0167】
(実施例29~38、比較例6~7)
表2~6に示した発泡シートを用いて、成形条件を表11~13に示した条件としたこと以外は、実施例28と同様にして成形体を得た。得られた成形体の特性及び性能の評価を表11~13に示す。
【0168】
【表11】
【0169】
【表12】
【0170】
【表13】
【0171】
【表14】
【0172】
本発明を適用した実施例28~38の総合評価は「△」~「◎」であった。
これに対して、ポリエーテルイミド系樹脂を含まない比較例1の発泡シートを用いて成形した比較例6の総合評価は「×」であった。ヒートセット工程を施し、貯蔵弾性率の最小値(E’)が本発明の範囲外である比較例7の総合評価は「×」であった。なお、比較例6は、耐衝撃性の評価が「◎」であったが、熱可塑性樹脂発泡シート成形体の基本機能である耐熱強度が「×」であるため、本発明の課題を解決していないと判断した。
【0173】
以上の結果から、本発明を適用することで、熱可塑性樹脂発泡シートの成形性を高められることが確認された。
また、本発明を適用することで、熱可塑性樹脂発泡シート成形体の耐衝撃性を高められることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シート及び熱可塑性樹脂発泡シート成形体は、成形性、耐熱性、耐衝撃性に優れるため、食品容器、特に深絞り容器や複雑な凹凸形状を有する食品容器に好適に用いられる。また、食品容器以外の用途として、電気製品又は自動車等の工業部材に用いる緩衝材、梱包材、構造部材、断熱材等にも用いられる。
【符号の説明】
【0175】
2 発泡シート
22 発泡層
100 容器(成形体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11