(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111073
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】圧電素子アレイ基板の製造方法、圧電素子アレイ基板及び分極装置
(51)【国際特許分類】
H10N 30/045 20230101AFI20230803BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20230803BHJP
【FI】
H01L41/257
H01L41/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012710
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】世良 賢二
(72)【発明者】
【氏名】林 健一
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 浩史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸
(57)【要約】
【課題】好適に圧電素子アレイ基板を製造する。
【解決手段】圧電素子アレイ基板の製造方法は、基板上に、1以上の薄膜トランジスタを含む、複数の圧電素子制御回路を形成する。製造方法は、基板上に、複数の圧電素子を形成する。製造方法は、複数の圧電素子及び複数の圧電素子制御回路を形成した後に、1以上の薄膜トランジスタを、リーク電流が増加した状態に維持して、複数の圧電素子の圧電材料層に電界を与えて圧電材料を分極させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
基板上に、1以上の薄膜トランジスタを含む、複数の圧電素子制御回路を形成し、
前記基板上に、複数の圧電素子を形成し、
前記複数の圧電素子及び前記複数の圧電素子制御回路を形成した後に、前記1以上の薄膜トランジスタを、リーク電流が増加した状態に維持して、前記複数の圧電素子の圧電材料層に電界を与えて圧電材料を分極させる、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記圧電素子アレイ基板を加熱することで、前記1以上の薄膜トランジスタを前記リーク電流が増加する状態に維持する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記圧電素子アレイ基板を、60℃以上100℃以下の状態に維持する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記圧電素子アレイ基板を、70℃以上90℃以下の状態に維持する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記1以上の薄膜トランジスタに光を照射することによって、前記1以上の薄膜トランジスタを前記リーク電流が増加する状態に維持する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記基板側から前記1以上の薄膜トランジスタに光を照射する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
前記1以上の薄膜トランジスタに光を照射すると共に前記圧電素子アレイ基板を加熱することによって、前記1以上の薄膜トランジスタを前記リーク電流が増加する状態に維持する、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の圧電素子アレイ基板の製造方法であって、
増加された前記リーク電流は、前記圧電素子の面積×0.1A以上である、
圧電素子アレイ基板の製造方法。
【請求項9】
圧電素子アレイ基板であって、
基板と、
前記基板上の、複数の圧電素子を含む圧電素子アレイと、
前記基板上の、前記複数の圧電素子を制御する薄膜トランジスタアレイと、
を含み、
薄膜トランジスタアレイは、前記複数の圧電素子それぞれを制御する、複数の圧電素子制御回路を含み、
前記1以上の薄膜トランジスタそれぞれの、80℃におけるリーク電流は、前記圧電素子の面積×0.1A以上である、
圧電素子アレイ基板。
【請求項10】
請求項8に記載の圧電素子アレイ基板であって、
前記1以上の薄膜トランジスタそれぞれの、80℃におけるリーク電流は、2.5E-11A以上である、
圧電素子アレイ基板。
【請求項11】
圧電素子アレイ基板の圧電材料を分極させる分極装置であって、
前記圧電素子アレイ基板は、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上の、1以上の薄膜トランジスタを含む、複数の圧電素子制御回路と、
前記絶縁基板上の、圧電材料層を含む複数の圧電素子と、
を含み、
前記分極装置は、
プラズマ放電装置と、
前記圧電素子アレイ基板を前記絶縁基板側から支持する光透過性ステージと、
前記圧電素子アレイ基板を加熱する加熱装置と、
前記光透過性ステージの裏側から前記圧電素子アレイ基板に光を照射する光源システムと、
を含み、
前記プラズマ放電装置は、前記圧電素子アレイ基板に前記光を照射しかつ加熱した状態において、前記圧電素子アレイ基板を帯電させることで前記複数の圧電素子の圧電材料層を分極させる、
分極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子アレイ基板の製造方法及び圧電素子アレイ基板及び分極装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子アレイは、超音波センサ、超音波トランスデューサアレイ、指紋センサ等、様々な装置で利用されている。近年、圧電素子と、その圧電素子を駆動制御する薄膜トランジスタ(TFT)画素回路とを、アレイ化し構成した、アクティブマトリクス超音波指紋センサが製品化された。
【0003】
LCD等に使用されている低温ポリシリコン(LTPS)TFTアレイの上部に薄膜圧電素子を作成することで、超音波指紋センサを構成する。超音波指紋センサの製造工程は、通常のLTPSの工程を用いてTFTアレイを作成したのちに圧電素子を作成する。そして、最後に、圧電素子の圧電性発現のために、1000V程度の高電圧処理(分極)が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0046836号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0031686号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子の製造は、圧電材料に抗電界より高い電界を印加することで、材料を分極させる処理を含む。具体的には、通常圧電性能を発現させるため、100V/μm程度(実電圧1000V)の高電界が必要である。一方、TFTアレイにより圧電素子アレイを駆動制御する超音波センサ等では、圧電素子にTFTが接続されている。圧電素子からの信号の読み出し検出のためには、これらTFTのOFF電流が小さいことが求められる。しかしTFTのリーク電流が小さいと、分極処理中にTFTにかかる電圧が高くなり、分極処理中工程で破損しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、圧電素子アレイ基板の製造方法であって、基板上に、1以上の薄膜トランジスタを含む、複数の圧電素子制御回路を形成し、前記基板上に、複数の圧電素子を形成し、前記複数の圧電素子及び前記複数の圧電素子制御回路を形成した後に、前記1以上の薄膜トランジスタを、リーク電流が増加した状態に維持して、前記複数の圧電素子の圧電材料層に電界を与えて圧電材料を分極させる、ことを含む。
【0007】
本開示の一態様は、圧電素子アレイ基板であって、基板と、前記基板上の、複数の圧電素子を含む圧電素子アレイと、前記基板上の、前記複数の圧電素子を制御する薄膜トランジスタアレイと、を含み、薄膜トランジスタアレイは、前記複数の圧電素子それぞれを制御する、複数の圧電素子制御回路を含み、前記1以上の薄膜トランジスタそれぞれの、80℃におけるリーク電流は、前記圧電素子の面積×0.1A以上である。
【0008】
本開示の一態様は、圧電素子アレイ基板の圧電材料を分極させる分極装置であって、前記圧電素子アレイ基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板上の、1以上の薄膜トランジスタを含む、複数の圧電素子制御回路と、前記絶縁基板上の、圧電材料層を含む複数の圧電素子と、を含む。前記分極装置は、プラズマ放電装置と、前記圧電素子アレイ基板を前記絶縁基板側から支持する圧電素子アレイ光透過性ステージと、前記圧電素子アレイ基板を加熱する加熱装置と、前記光透過性ステージの裏側から前記圧電素子アレイ基板に光を照射する光源システムと、を含む。前記プラズマ放電装置は、前記圧電素子アレイ基板に前記光を照射しかつ加熱した状態において、前記圧電素子アレイを帯電させることで前記複数の圧電素子の圧電材料層を分極させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、好適に圧電素子アレイ基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の超音波センサの構成を示したブロック図である。
【
図2】実施形態の圧電素子アレイ基板の画素の回路構成を示した回路図である。
【
図3】本開示の超音波センサで、超音波を発振し、さらに、反射超音波を受信するための動作を示したタイミングチャートである。
【
図4】超音波センサの断面構造の一部を模式的に示す。
【
図5】超音波センサの製造方法の一例のフローチャートを示す。
【
図6】分極処理における画素回路の構成を模式的に示す。
【
図7】Pチャネル型の薄膜トランジスタの、異なる温度における、ゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。
【
図8】異なる温度における、圧電素子への印加電界Eと電荷密度Dのヒステリシス曲線(D-Eヒステリシス曲線)の測定結果を示す。
【
図9】圧電素子の抗電界Ecと温度の関係、及び、残留分極Prと温度の関係を示す。
【
図10】光を照射した状態での分極処理を模式的に示す。
【
図11】圧電素子アレイ基板の薄膜トランジスタのOFF電流とその破壊電界との関係を示す。
【
図12】光を照射した状態での分極処理を行う装置の構成例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本開示のイメージセンサについて図面を参照して詳細に説明する。各図面における各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも切断面を意味するものではない。また、スイッチング素子あるいは増幅素子として用いられる非線形素子についてトランジスタという呼称を用いるが、トランジスタはThin Film Transistor(TFT)を含む。
【0012】
本開示の圧電素子アレイ基板は、例えば、医療又は産業用の検査分野で利用される超音波センサや、指紋や物体の検出のために超音波センサに利用可能である。また様々用途で利用され得る音波発生装置に適用することができる。現在実用化されている超音波センサは孤立の圧電素子を複数配列し構成されているが、薄型で高精細な超音波センサのために薄膜トランジスタのアレイで駆動するアクティブマトリクス型の超音波センサの実用化がはじまっている。
【0013】
圧電素子の製造は、圧電材料に抗電界より高い電界を印加することで、材料を分極させる処理を含む。具体的には、通常圧電性能を発現させるため、100V/μm程度(実電圧1000V)の高電界が必要である。一方、TFTアレイにより圧電素子アレイを駆動制御する圧電素子アレイ基板では、圧電素子に薄膜トランジスタが接続されている。圧電素子からの信号の読み出し検出のためには、これら薄膜トランジスタのOFF電流が小さいことが求められる。しかし薄膜トランジスタのリーク電流が小さいと、分極処理中に薄膜トランジスタにかかる電圧が高くなり、破損しやすい。
【0014】
本明細書一実施形態は、圧電素子の分極処理において薄膜トランジスタが所望のリーク電流を有するように、圧電素子アレイ基板を構成又は製造する。これにより、圧電素子アレイ基板の製造における薄膜トランジスタの破損の可能性を大きく低減することができる。
【0015】
[装置構成]
図1は実施形態1に係る超音波センサの構成例を示したブロック図である。本開示の超音波センサ10は、圧電素子アレイ基板11と制御回路を含む。制御回路は、マルチプレクサ回路15、駆動回路14、信号検出回路16、主制御回路18を含む。
【0016】
圧電素子アレイ基板11は、絶縁性基板(たとえばガラス基板)と、絶縁性基板上に画素13が縦横のマトリクス状に配置された画素領域12を含む。マルチプレクサ回路15は、圧電素子アレイ基板11の絶縁性基板上に形成されており、
図1における縦方向に配列した画素列の各々の信号線に接続され、マルチプレクサ回路で時系列に変換することにより、信号線の本数を削減したうえで、信号検出回路で検出を行う。
【0017】
駆動回路14は、画素13による超音波の生成及び検出ため、画素13を駆動制御する。マルチプレクサ回路15は、信号線が伝送する画素13からの超音波検出信号を受けて、信号検出回路16に対して出力する。信号検出回路16は、マルチプレクサ回路で時系列に変換された信号線それぞれからの信号を検出する。主制御回路18は、駆動回路14及びマルチプレクサ回路15、信号検出回路16を制御する。駆動回路14、信号検出回路16及び主制御回路18は、圧電素子アレイ基板11上に、又は、圧電素子アレイ基板11と別の部品として実装されよい。
【0018】
[画素回路]
図2は一つの画素13及びその画素回路(圧電素子制御回路)の構成を示した回路図である。画素13は、圧電素子PEである。この圧電素子PEは超音波の発振と受信の両方の機能を有する。圧電素子PEの上部電極が符号TXで指示されている。圧電素子PEにおいて、受信した反射超音波振動に応じた電圧VRXが誘起される。本開示の超音波センサ10の一つの画素回路は、3つの薄膜トランジスタTR1、TR2、TR3、及びダイオードD1を含んでいる。薄膜トランジスタの半導体材料は、例えば、低温ポリシリコン、酸化物半導体、又はアモルファスシリコンである。
【0019】
ダイオードD1のカソード端子が、トランジスタTR1のゲート端子とトランジスタTR3のソース/ドレイン端子との間のノードN1に接続されている。アノード端子は、ダイオードバイアス線PAに接続されている。トランジスタTR1のソース/ドレイン端子の一方は電源線PPに接続され、ソース/ドレイン端子の他方は、トランジスタTR2のソース/ドレイン端子の一方に接続されている。
【0020】
トランジスタTR2のゲート端子は制御線Gnに接続されている。トランジスタTR2のソース/ドレイン端子の他法は、信号線Dmに接続されている。トランジスタTR3のゲート端子は制御線Rnに接続されている。トランジスタTR3のソース/ドレイン端子は、ダイオードD1のアノード端子及びカソード端子に接続されている。
【0021】
トランジスタTR1(増幅トランジスタ)は、圧電素子PEの一端の電位を増幅する機能を実現する。トランジスタTR2は、スイッチ素子であって、画素回路からの出力を制御する機能を実現する。トランジスタTR3はスイッチ素子であって、圧電素子PEの一端及びトランジスタTR1のゲート電極の電位をリセットする機能を実現する。
【0022】
図1に示した超音波センサ10では、縦方向に複数の画素13が配列した画素列1つに対して1本の信号線Dmが存在する。同一画素列の画素13は、すべて信号線Dmに接続されている。この信号線Dmは、圧電素子アレイ基板11端部において、一つのマルチプレクサ回路15に接続されている。
【0023】
図3は、本開示の超音波センサ10で、超音波を発振し、さらに、反射超音波を受信するための動作を示したタイミングチャートである。時刻T1から時刻T2の期間は、超音波発振期間である。
【0024】
時刻T1において、駆動回路14は、制御線Rnの電位を、ローレベルからハイレベルに変化させる。これにより、トランジスタTR3はONとなる。駆動回路14は、ダイオードバイアス線PAの電位をローレベルに維持する。この結果、圧電素子PEの下部電極の電位が固定される。トランジスタTR3ONした後、駆動回路14は、圧電素子PEの上部電極TXに励起信号を与える。これにより、全ての圧電素子PEが振動して、超音波が発振される。その後、駆動回路14は、上部電極TXへの信号を停止する。
【0025】
上部電極TXへの信号を停止した後、時刻T2において、駆動回路14は、制御線Rnの電位を、ハイレベルからローレベルに変化させる。これにより、トランジスタTR3はOFFとなる。
【0026】
時刻T2から、圧電素子PEは、反射超音波を受信する。TR3がOFFの状態なので下部電極がフローティングになり超音波の受信によって下部電極に誘起電圧VRXが発生する。
図3において、圧電素子PEが超音波を受信していない場合、誘起電圧VRXは0であり、超音波を受信している場合、誘起電圧VRXは0より大きい。
【0027】
時刻T2において、駆動回路14は、ダイオードバイアス線PAの電位を、ローレベルからハイレベルに変化させる。ダイオードバイアスは、誘起電位VRXを、トランジスタTR1が信号線Dmに出力する最適なバイアス電圧に調整する。
【0028】
時刻T2において、駆動回路14は制御線Gnの電位をローレベルからハイレベルに変化させる。これにより、トランジスタTR2がON状態になり、トランジスタTR1は、誘起電位VRXを増幅して、信号線Dmに出力する。
【0029】
時刻T3において、駆動回路14は制御線Gnの電位をハイレベルからローレベルに変化させる。これにより、トランジスタTR2がOFF状態になり、誘起電圧VRXの読み取りが終了する。本タイミングチャートは1画素のみの動作を説明したものであるが、複数の画素を有する場合複数の制御線Rn、Gn及び複数の信号線Dmを用いて各画素のVrxを読み取る。
【0030】
[素子構造]
図4は、超音波センサ10の断面構造の一部を模式的に示す。以下の説明において、上下は、図面における上下を示す。超音波センサ10は、絶縁基板151と、絶縁基板151と対向する媒体200とを含む。媒体200は、例えば、樹脂又はガラスの可撓性又は不当性の絶縁基板である。均一な絶縁体の他、超音波に影響をあたえない薄型ディスプレイ基板を用いることも可能である。超音波センサ10から発信された超音波は、媒体200の超音波センサに対抗する面で反射され超音波センサ10にもどってくる。媒体200の表面に例えば人体の皮膚などが存在すると、超音波の反射率が変化する。反射超音波の強弱で、皮膚の有無をセンスすることができる。
【0031】
超音波センサ10は、絶縁基板151上に、複数の下部電極162と、1つの上部電極166と、圧電材料層165とを含む。圧電材料は有機又は無機材料であってよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使用できる。
【0032】
一つの下部電極162、上部電極166の一部、及び圧電材料層165の一部が、一つの圧電素子(画素とも呼ぶ)を構成する。上部電極や圧電材料層は、圧電素子毎に分離されていてもよい。上部電極166と下部電極162との間に、1つの圧電材料層165が配置されている。複数の下部電極162は、平坦化膜161の面上に配置され、下部電極162の上に圧電材料層165が配置されている。
【0033】
超音波センサ10は、それぞれが複数のスイッチを含む複数の回路を含む。複数の回路の各々は、圧電素子を駆動制御し、画素回路とも呼ぶ。画素回路は、絶縁基板151と下部電極162との間に形成され、複数の下部電極162の各々に供給する電位を制御する。
図2に示す構成例は、超音波を発し、反射波を受ける側(図面上側)に、複数の圧電素子に共通の上部電極166が配置される。上部電極166は、画素領域12の全面を完全に覆う形状を有する。なお、圧電素子と回路の積層位置関係が逆であってもよい。
【0034】
図4は、画素回路において、トランジスタTR3と、トランジスタTR1のゲート電極157Bとを示す。絶縁基板151は、例えばガラス又は樹脂で形成されており、不撓性又は可撓性基板である。なお、以下の説明において、絶縁基板151に近い側を下側、遠い側を上側と記す。絶縁体の下地絶縁層152が、絶縁基板151上に形成され、その上に、半導体活性層155が積層されている。半導体活性層155は、低抵抗のソース/ドレイン領域と、それらの間の高抵抗のチャネル領域とを含む。
【0035】
半導体活性層155は、ゲート絶縁層156で覆われている。ゲート絶縁層156を介して、半導体活性層155の上にゲート電極が形成されている。
図4は、トランジスタTR3のゲート電極157Aと、トランジスタTR1のゲート電極157Bとを示す。ゲート電極157A、157Bの層上に層間絶縁膜158が形成されている。
【0036】
画素領域12内において、層間絶縁膜158上にソース/ドレイン電極159、160が形成されている。ソース/ドレイン電極159、160は、例えば、Al系合金で形成される。ソース/ドレイン電極159、160は、層間絶縁膜158のコンタクトホールに形成されたコンタクト部168、169によって、半導体活性層155に接続されている。
【0037】
配線部171が、トランジスタTR3のソース/ドレイン電極160から延びており、層間絶縁膜158のコンタクトホールに形成されたコンタクト部172によって、トランジスタTR1のゲート電極157Bに接続されている。配線部171とソース/ドレイン電極160とは、同一金属層含まれ、連続している。
【0038】
ソース/ドレイン電極159、160及び配線部171の上に、絶縁性の平坦化膜161が形成される。絶縁性の平坦化膜161の上に、下部電極162が形成されている。下部電極162は、平坦化膜161のコンタクトホールに形成されたコンタクト部によってソース/ドレイン電極160に接続されている。画素回路は、下部電極162の下側に形成されている。
【0039】
下部電極162の上に、圧電材料層165が形成されている。圧電材料層165は、下部電極162の上面及び平坦化膜の上面に接触している。圧電材料層165の上に、接触して、上部電極166が形成されている。下部電極162、圧電材料層165の一部及び上部電極166の一部の積層膜が、圧電素子を構成する。
【0040】
[製造方法]
超音波センサ10の製造方法の一例を説明する。以下の説明において、同一工程で(同時に)形成される要素は、同一層の要素である。
図5は、超音波センサ10の製造方法の一例のフローチャートを示す。
【0041】
超音波センサ10の製造は、まず、TFTアレイを絶縁基板151上に形成する(S11)。具体的に説明する。製造は、まず、絶縁基板151上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)等によって例えばシリコン窒化物やシリコン酸化物を堆積して、下地絶縁層152を形成する。
【0042】
次に、公知の低温ポリシリコンTFT製造技術を用いて、半導体活性層155を含む層(ポリシリコン層)を形成する。例えば、CVD法によってアモルファスシリコンを堆積し、ELA(Excimer Laser Annealing)により結晶化してポリシリコン層を形成できる。
【0043】
次に、半導体活性層155を含むポリシリコン層上に、CVD法等によって、例えばシリコン酸化膜を付着してゲート絶縁層156を形成する。更に、スパッタ法等により金属材料を堆積し、パターニングを行って、ゲート電極157A、15Bを含む金属層を形成する。
【0044】
金属層は、ゲート電極157の他、配線を含むことができる。金属層は、例えばMo、W、Nb、MoW、MoNb、Al、Nd、Ti、Cu、Cu合金、Al合金、Ag、Ag合金からなる群より選択される一つの物質の単一層で形成する、又は、配線抵抗を減少させるために低抵抗物質であるMo、Cu、Al、またはAgの2層構造またはそれ以上の多重膜構造からなる群より選択される一つの積層であってもよい。
【0045】
次に、N型TFTを形成するためには、ゲート電極157A、157Bの形成前にN型の高濃度不純物をドーピングしておいた半導体活性層155に、ゲート電極157Aをマスクとして追加不純物ドーピングを施して低濃度不純物層を形成することにより、TFTにLDD(Lightly Doped Drain)構造を形成する。次にP型TFTを形成するためN型TFTを作成した部分以外に、ゲート電極157Aをマスクとして、P型の不純物をドーピングしてソースドレイン構造を形成する。次に、CVD法等によって、例えばシリコン酸化膜等を堆積して層間絶縁膜158を形成する。
【0046】
層間絶縁膜158及びゲート絶縁層156、に異方性エッチングを行い、コンタクトホールを開口する。ソース/ドレイン電極159、160と半導体活性層155とを接続するコンタクト部168、169、並びに、配線部171とゲート電極157Bとを接続するコンタクト部172等のためのコンタクトホールが、層間絶縁膜158及びゲート絶縁層156に形成される。
【0047】
次に、スパッタ法等によって、例えば、Ti/Al/Ti等のアルミ合金を堆積し、パターニングを行って、金属層を形成する。金属層は、ソース/ドレイン電極159、電極160、配線部171、及びコンタクト部168、169、172を含む。この他の配線も形成される。
【0048】
次に、感光性の有機材料を堆積し、平坦化膜161を形成する。TFTのソース/ドレイン電極160等に接続するためのコンタクトホールを開口する。コンタクトホールを形成した平坦化膜161上に、下部電極162を形成する。下部電極162は、例えば、ITO、IZO、ZnO、Ag、Mg、Al、Pt等を使用した単層又は積層であってよい。下部電極162は、コンタクト部を介して、ソース/ドレイン電極160と接続される。
【0049】
上述のようにTFTアレイが形成されると、製造方法は、次に、圧電素子形成工程S12~S14を実行する。具体的には、製造方法は、厚電材料層を形成する(S12)。厚電材料層の形成は、例えば、スピンコート法、印刷法、インクジェット印刷法等によって、PVDFを付着して、圧電材料層165を成膜する。なお、PVDFと異なる圧電材料が、それに適した方法により成膜されてよい。
【0050】
次に、製造方法は、圧電材料層165上に上部電極を形成する(S13)。上部電極の形成は、圧電材料層165上に、上部電極166のための金属材料を付着する。上部電極166の層は、例えば、Al及び/又はAgを、スパッタ、蒸着、印刷法、又はインクジェット印刷法によって成膜する。圧電材料層165及び上部電極166は、例えば、画素領域12の外側の配線等に影響を与えない範囲で、画素領域12の全面を覆う。
【0051】
次に、製造方法は、基板上に形成されている圧電材料層165の分極処理を実行する(S14)。分極処理S14は、圧電材料層165の厚電性を発現させるため、圧電材料層165に高電圧を与えて分極させる。所望の圧電性能を発現させるためには、100V/μm程(実電圧1000V程)の高電界(高電圧)が印加される。
【0052】
図6は、分極処理における画素回路の構成を模式的に示す。薄膜トランジスタアレイ(画素回路アレイ)の全線が共通線31により結線され、接地されている。具体的には、電源線PP、制御線Rn、Gn、ダイオードバイアス線PA、信号線Dmが接地されている。分極処理は、薄膜トランジスタアレイの配線の接地した状態で上部電極TXに対して高電圧を与え、圧電材料層165を分極させる。
【0053】
なお、一般に、圧電素子アレイ基板の製造は、一つのマザー基板上に、複数の圧電素子アレイ基板の画素アレイ及び薄膜トランジスタアレイを形成して、複数の圧電素子アレイ基板それぞれを切り出す。分極処理は、マザー基板上の全ての薄膜トランジスタアレイの配線を結線して接地する。
【0054】
上述のように、圧電素子には薄膜トランジスタアレイが接続されている。圧電材料層165への高電圧印加において、薄膜トランジスタアレイ内の薄膜トランジスタが破壊されない条件が必要となる。
【0055】
圧電素子からの信号の読み出し検出のためには、画素回路内の薄膜トランジスタのOFF電流(リーク電流)は、小さいことが望ましい。しかし、薄膜トランジスタのOFF電流が小さいことは、分極処理中に薄膜トランジスタにかかる電圧が高くなり、破損しやすいという問題点がある。
【0056】
本明細書の一実施形態は、分極処理において、薄膜トランジスタのOFF電流が増加する状態(条件)において、高電圧を圧電材料層に加える。これにより、分極処理における薄膜トランジスタの破損の可能性を大きく低減できる。薄膜トランジスタのOFF電流を増加させる方法は、例えば、加熱又は光照射である。
【0057】
薄膜トランジスタを室温より高い温度に加熱することで、OFF電流を増加させ、分極処理のための高電圧印加時の破損の可能性が低減される。
図7は、Pチャネル型の薄膜トランジスタの、異なる温度における、ゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。横軸はゲート電圧を示し、縦軸はドレイン電流を示す。Pチャネル型の薄膜トランジスタのドレイン電流は、ゲート電圧の減少共に増加する。0より大きいゲート電圧におけるドレイン電流が、OFF電流を示す。
【0058】
説明の容易のために、
図7のグラフが示す異なる温度における一部の温度の線が、符号により指示されている。線411は、-40℃におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。線412は、0℃におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。線413は、20℃におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。線414は、50℃におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。線415は、80℃におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。
図7に示すように、薄膜トランジスタの温度の上昇と共に、OFF電流が増加する。
【0059】
さらに、加熱により圧電材料の分極に必要な電圧(電界)を下げることができる。温度上昇に伴い圧電材料の分子が動きやすくなるため、分極に必要な電圧(電界)が低下する。
図8は、異なる温度における、圧電素子への印加電界Eと電荷密度Dのヒステリシス曲線(D-Eヒステリシス曲線)の測定結果を示す。使用した圧電材料はPVDFである。他の材料についても同様の変化を示す。
図8は、室温、60℃、70℃、80℃、90℃及び100℃におけるD-Eヒステリシス曲線を示す。
【0060】
説明の容易のため、一部の温度におけるD-Eヒステリシス曲線が符号で指示されている。
図8において、線431は、室温におけるD-Eヒステリシス曲線を示す。線433は、60℃におけるD-Eヒステリシス曲線を示す。線435は、100℃におけるD-Eヒステリシス曲線を示す。
【0061】
抗電界Ecと呼ばれる分極開始電界(分極が反転する電界)は、D-Eヒステリシス曲線において、電荷密度Dが0である正の外部電界である。圧電性能を示す分極後の残留分極Prは、D-Eヒステリシス曲線において、外部電界0における電荷密度で表すことができる。
図8に示すように、温度上昇に伴い、抗電界Ecの絶対値が小さくなる。特に、室温から60℃まで抗電界Ecが大きく低下し、60℃から100℃まで抗電界Ecの変化は小さい。
【0062】
図9は、
図8に示す測定値による、圧電素子の抗電界Ecと温度の関係、及び、残留分極Prと温度の関係を示す。横軸は温度を示す。左縦軸は抗電界Ecを示し、右縦軸は残留分極Prを示す。実線451は、抗電界Ecの温度変化の測定値を示す。実線453は、残留分極Prの温度変化の測定値を示す。破線454は、残留分極Prの温度変化の理論値を示す。残留分極Prは、キュリ温度に近づくにつれて大きく低下し、キュリ温度において0となる。
【0063】
図7から9を参照した説明から理解されるように、薄膜トランジスタのOFF電流を増加させると共に、圧電材料の分極を助けるためには、高い温度において分極処理を行うことが好ましい。一方、圧電材料の適切な残留分極を維持するためには、特定の温度以下において分極処理を行うことが必要である。
【0064】
上記発明者らの研究によれば、60℃~100℃(60℃以上100℃以下)の基板温度範囲において、圧電素子の分極と薄膜トランジスタの破損防止を好適に両立することができる。そのため、本明細書の一実施形態は、60℃~100℃の基板温度範囲内で、圧電材料層の分極処理を実行する。例えば、加熱チャンバ内で分極処理を行うことで、所望温範囲内での分極処理が可能である。さらに、薄膜トランジスタの破損防止の観点及びプロセスマージンの観点から、70℃~90℃(70℃以上90℃以下)の温度範囲において、圧電材料層の分極処理を実行することができる。
【0065】
分極処理工程S14は、圧電材料層に高電圧を与える方法として、プラズマ放電を用いた非接触分極を使用してもよい。この方法は上部電極に高電圧を直接加える方法の代わりに、コロナ放電により電荷を帯電させて電界を加える。高電圧を与えるための接続が不要であるので、生産性に優れる。なお、この方法においても、薄膜トランジスタアレイの配線は接地されていることが望ましい。またこのプラズマ放電を用いた非接触分極方法ではPVDF形成後、上部電極形成前にプラズマ放電分極を行う方法が一般的である
【0066】
上述のように、薄膜トランジスタのリーク電流を増加させる方法として、加熱の他に、薄膜トランジスタへの光照射が存在する。本明細書の一実施形態の分極処理は、圧電素子アレイの薄膜トランジスタに光を照射した状態において分極処理を行う。これにより、薄膜トランジスタのOFF電流を増加させて、分極処理における薄膜トランジスタの破損の可能性を低減できる。
【0067】
図10は、光を照射した状態での分極処理を模式的に示す。分極処理は、絶縁基板151側から光501を圧電素子アレイ基板に照射する。薄膜トランジスタのOFF電流を増加させる任意の波長の光を使用することができるが、例えば、緑から青の波長域内の波長の光を使用することができる。絶縁基板151は、照射する光を透過する。絶縁基板151側から光を照射することで、上部電極166に圧電素子に対して適切な任意材料を選択することができる。
【0068】
圧電材料層の分極処理工程S14は、加熱と光照射を同時に行ってもよい。つまり、分極処理工程は、圧電素子アレイ基板を加熱し、かつ、薄膜トランジスタに光を照射した状態において、分極処理のための電圧を圧電素子アレイ基板に与える。これにより、薄膜トランジスタの破損をより効果的に避けることができる。また、光強度又は加熱温度を小さくすることができる。
【0069】
圧電素子の画素回路内の薄膜トランジスタは、分極処理において大きいOFF電流を有することが求められる。発明者らの研究によれば、薄膜トランジスタが、所定の特性を有することで、分極処理における破損の可能性を大きく低減することができる。
【0070】
図11は、圧電素子アレイ基板の薄膜トランジスタのOFF電流とその破壊電界との関係を示す。実験結果の実線が示すように、OFF電流が増加すると破壊電界も増加する。ここでの破壊電界は、圧電素子に加えられる電界と考えてよい。圧電素子の適切な分極のためには、100MV/m以上の電界が求められる。製造マージンを考慮すると、2.5E-11(A)以上のOFF電流により、薄膜トランジスタの破壊を効果的に防ぐことができる。なお、通常動作温度(室温:例えば25℃)において、薄膜トランジスタは、1.0E-12(A)以下のOFF電流を有する。
【0071】
薄膜トランジスタに係る電圧は、
図2に示す回路図において、ノードN1における電圧である。ノードN1の電圧は、圧電素子PEにおいて発生する電荷と薄膜トランジスタのリーク電流に依存する。圧電素子(の下部電極)の面積が小さければ発生する電荷が小さくなり、薄膜トランジスタに必要とされるOFF電流も小さくなる。
【0072】
図11に示すデータを取得した圧電素子の面積と上記OFF電流の値から、下記の関係が導出される。ノードN1の電圧は、分極のために加える電圧によってPVDFの容量に蓄積される電荷量と薄膜トランジスタのリーク電流によって減少する電荷量の相対比で決定される。PVDFの容量は画素面積に比例するため、薄膜トランジスタのリーク電流と面積がある比率になる点で電圧が決まる。発明者らは実験結果から係数を求めて、以下の式となることを明らかにした。
Ioff@80℃≧0.01×S
ここで、Ioff@80℃は、80℃におけるOFF電流であり、Sは圧電素子(下部電極又は画素電極)の面積である。OFF電流の単位はAであり、面積の単位はm
2である。
【0073】
圧電素子アレイ基板の製造について説明したように、例えば分極処理を60℃から100℃の範囲内で実行する場合、上記特性の薄膜トランジスタは、分極処理において、破損しないための十分なOFF電流を示すことができる。また、分極処理時に0.01×S(A)又は2.5E-11(A)以上のOFF電流を示す薄膜トランジスタは、より確実に破損を避けることができる。
【0074】
図12は、光を照射した状態での分極処理を行う装置の構成例を模式的に示す。分極装置は、光源601、加熱光透過性ステージ603、及び放電装置604を含む。放電装置604は、高電圧電源608に接続された放電電極605及び高電圧電源609に接続された制御グリッド607を含む。
図12に示す分極装置は、プラズマ放電を用いた非接触分極を行う。本方法は上部電極に高電圧を直接加える代わりに、コロナ放電により帯電させて電界を加える。個々のデバイスに電極接続する必要がないので、生産性に優れる。
【0075】
圧電素子アレイ基板11は、加熱光透過性ステージ603上に、絶縁基板151を下にして、設置される。
図12の例において、圧電素子アレイ基板11内の端子は接地されている。加熱光透過性ステージ603は、圧電素子アレイ基板11を加熱する。つまり、加熱光透過性ステージ603は、圧電素子アレイ基板11を加熱する加熱装置として機能する。例えば、加熱光透過性ステージ603は、ヒータを含む又は分極処理前に赤外線によって高温状態にされてもよい。なお、ステージに代えてチャンバ内を加熱装置によって加熱してもよい。
【0076】
分極装置は、加熱光透過性ステージ603側から、光源601からの光を圧電素子アレイ基板11に照射する。光源601は、加熱光透過性ステージ603の直下に配置されている。なお、光源601は、加熱光透過性ステージ603の直下に配置する必要はないが、プラズマ放電にさらされる領域に光が照射されるように配置する。装置は、光源601からの光を加熱光透過性ステージ603の裏側に照射する光学システム(光源システム)を含んでよい。
【0077】
加熱光透過性ステージ603は、照射する光を透過する。光源の光は、ガラス基板や透過性ステージを透過し半導体活性層が吸収しやすい波長300nmから600nmの間の光を使用することができる。分極装置は、圧電素子アレイ基板11を加熱光透過性ステージ603により加熱し、かつ、薄膜トランジスタに光源601からの光を照射した状態において、プラズマ放電を行う。
【0078】
放電電極605と圧電素子アレイ基板11との間で放電が起き、マイナスイオン(電荷)が圧電素子アレイ基板11の表面に帯電する。これにより、電界が圧電材料に与えられる。制御グリッド607は、帯電分布を好適に制御することができる。
【0079】
上述のように、プラズマ分極装置は、圧電材料薄膜及びスイッチ素子を形成した絶縁性基板を支持する、加熱機能付きの光透過性ステージを含み、光透過性ステージの裏面より光を照射する。プラズマ分極装置は、圧電素子アレイ基板に光を照射しかつ加熱した状態で、プラズマ放電による電界を印加する。これにより、圧電材料を分極させる。
【0080】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 超音波センサ、11 圧電素子アレイ基板、12 画素領域、13 画素、14 駆動回路、15 マルチプレクサ回路、16 信号検出回路、18 主制御回路、TR1、TR2、TR3 トランジスタ、D1 ダイオード、Gn、Rn 制御線、Dm 信号線、PE 圧電素子、TX 上部電極、PA ダイオードバイアス線、PP 電源線、151 絶縁基板、152 下地絶縁層、155 半導体活性層、156 ゲート絶縁層、157A、157B ゲート電極、158 層間絶縁膜、159、160 ソース/ドレイン電極、162 下部電極、165 圧電材料層、171 配線部、200 媒体