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特開2023-111076ステアリング用ボールねじ装置及びねじ軸の振れ測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111076
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ステアリング用ボールねじ装置及びねじ軸の振れ測定方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20230803BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20230803BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F16H25/22 Z
F16H25/20 E
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012717
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚越 賢治
(72)【発明者】
【氏名】萬 雄介
【テーマコード(参考)】
3D333
3J062
【Fターム(参考)】
3D333CB30
3D333CC15
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD14
3D333CD16
3D333CE07
3D333CE08
3J062AA07
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA22
3J062CD04
3J062CD23
3J062CD45
3J062CD64
(57)【要約】
【課題】ねじ軸の振れ測定における負担を低減する。
【解決手段】ステアリング用ボールねじ装置は、内周面に内周軌道面を有するナットと、ナットを貫通し、外周面のうち回転軸の軸方向の一方の第1端部側に外周軌道面を有し、軸方向の他方の第2端部側に少なくとも第2端部を含む範囲に軸方向に沿った平面部を有するねじ軸と、内周軌道面と外周軌道面との間に配置された複数のボールと、ねじ軸の第2端部側を挿通する挿通部を有し、軸回り方向について平面部に係止される係止部が挿通部に設けられる回り止め部材とを備え、ねじ軸は、第1端部及び第2端部の少なくとも一方の端面に当該ねじ軸と回転軸を共有する円筒部を有し、円筒部は、端面における外周面の端辺及び平面部の端辺よりも径方向の内側に設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に内周軌道面を有するナットと、
前記ナットを貫通し、外周面のうち回転軸の軸方向の一方の第1端部側に外周軌道面を有し、前記軸方向の他方の第2端部側に少なくとも前記第2端部を含む範囲に前記軸方向に沿った平面部を有するねじ軸と、
前記内周軌道面と前記外周軌道面との間に配置された複数のボールと、
前記ねじ軸の前記第2端部側を挿通する挿通部を有し、軸回り方向について前記平面部に係止される係止部が前記挿通部に設けられる回り止め部材と
を備え、
前記ねじ軸は、前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方の端面に当該ねじ軸と回転軸を共有する円筒部を有し、
前記円筒部は、前記端面における前記外周面の端辺及び前記平面部の端辺よりも径方向の内側に設けられる
ステアリング用ボールねじ装置。
【請求項2】
前記ねじ軸は、前記第1端部まで前記外周軌道面が形成される
請求項1に記載のステアリング用ボールねじ装置。
【請求項3】
前記円筒部は、内周面にねじ部を有する
請求項1又は請求項2に記載のステアリング用ボールねじ装置。
【請求項4】
前記平面部は、前記外周面の周方向に複数設けられ、
前記係止部は、前記平面部に対応して配置されるように複数設けられる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステアリング用ボールねじ装置。
【請求項5】
複数の前記平面部は、前記外周面の周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられる
請求項4に記載のステアリング用ボールねじ装置。
【請求項6】
外周面のうち軸方向の一方の第1端部側に外周軌道面を有し、前記軸方向の他方の第2端部側に前記軸方向に沿った平面部を有し、前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方の端面に円筒部を有するねじ軸の振れを測定する振れ測定方法であって、
前記ねじ軸の前記外周面を支持した状態で前記ねじ軸を軸回り方向に回転するステップと、
回転する前記ねじ軸の前記円筒部の外周面の位置を測定するステップと
を含むねじ軸の振れ測定方法。
【請求項7】
前記ねじ軸を軸回り方向に回転するステップでは、前記ねじ軸の前記外周面を前記軸方向について少なくとも2か所支持する
請求項6に記載のねじ軸の振れ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング用ボールねじ装置及びねじ軸の振れ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるステアリング装置において、回転運動を直線運動に、又は直線運動を回転運動に効率良く変換するボールねじ装置が設けられる。ボールねじ装置は、内周面に内周軌道面を有するナットと、ナットを貫通し外周面に外周軌道面及び回り止めのための平面部を有するねじ軸と、内周軌道面と外周軌道面との間に配置された複数のボールと、ねじ軸の平面部に係止される回り止め部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-62412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなボールねじ装置においては、ねじ軸の軸方向の端部における振れ精度が要求される。この振れ精度を測定する際には、例えばねじ軸を回転させた状態でねじ軸の外周面の円筒状の部分に測定子を当接し、測定子の移動を測定することにより行う方法がある。ねじ軸の外周面に円筒状の部分が設けられない場合、ねじ軸に円筒状の治具を装着して測定を行う必要がある。この場合、治具を装着する工程を含むため、作業者の負担となってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ねじ軸の振れ測定における負担を低減することが可能なステアリング用ボールねじ装置及びねじ軸の振れ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステアリング用ボールねじ装置は、内周面に内周軌道面を有するナットと、前記ナットを貫通し、外周面のうち回転軸の軸方向の一方の第1端部側に外周軌道面を有し、前記軸方向の他方の第2端部側に少なくとも前記第2端部を含む範囲に前記軸方向に沿った平面部を有するねじ軸と、前記内周軌道面と前記外周軌道面との間に配置された複数のボールと、前記ねじ軸の前記第2端部側を挿通する挿通部を有し、軸回り方向について前記平面部に係止される係止部が前記挿通部に設けられる回り止め部材とを備え、前記ねじ軸は、前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方の端面に当該ねじ軸と回転軸を共有する円筒部を有し、前記円筒部は、前記端面における前記外周面の端辺及び前記平面部の端辺よりも径方向の内側に設けられる。
【0007】
この構成によれば、ねじ軸に円筒部が設けられることにより、ねじ軸を軸回り方向に回転させた状態で円筒部の外周面の位置を測定することで、ねじ軸に治具等を装着することなく、ねじ軸の振れ測定を行うことができる。また、円筒部が端面における外周面及び平面部の端辺よりも径方向の内側に設けられるため、係止部と干渉することなく、ねじ軸の第2端部を回り止め部材に挿通することができる。
【0008】
上記のステアリング用ボールねじ装置の好ましい態様として、前記ねじ軸は、前記第1端部まで前記外周軌道面が形成される。この構成によれば、外周軌道面を軸方向に長く確保することができる。
【0009】
上記のステアリング用ボールねじ装置の好ましい態様として、前記円筒部は、内周面にねじ部を有する。この構成によれば、円筒部の内周面のねじ部を介して他の部材等を装着することができる。これにより、振れ測定で用いられる円筒部を有効利用することができる。
【0010】
上記のステアリング用ボールねじ装置の好ましい態様として、前記平面部は、前記外周面の周方向に複数設けられ、前記係止部は、前記平面部に対応して配置されるように複数設けられる。この構成によれば、平面部として2面幅、3面幅、4面幅等が適用される場合においても、係止部により適切に回り止めを行うことができる。
【0011】
上記のステアリング用ボールねじ装置の好ましい態様として、複数の前記平面部は、前記外周面の周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられる。この構成によれば、複数の平面部が外周面の周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられるため、複数の平面部が周方向にバランスよく係止部に係止した状態で回り止めを行うことができる。
【0012】
本発明の一態様に係る振れ測定方法は、外周面のうち軸方向の一方の第1端部側に外周軌道面を有し、前記軸方向の他方の第2端部側に平面部を有し、前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方の端面に円筒部を有するねじ軸の振れを測定する振れ測定方法であって、前記ねじ軸の前記外周面を支持した状態で前記ねじ軸を軸回り方向に回転するステップと、回転する前記ねじ軸の前記円筒部の外周面の位置を測定するステップとを含む。
【0013】
この構成によれば、ねじ軸に治具等を装着することなくねじ軸の振れ測定を行うことができる。したがって、ねじ軸の振れ測定を効率的に行うことができる。
【0014】
上記の振れ測定方法の好ましい態様として、ねじ軸を軸回り方向に回転するステップでは、ねじ軸の外周面を軸方向について少なくとも2か所支持する。この構成によれば、ねじ軸を安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、ねじ軸の振れ測定における負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るステアリングシステムを示す模式図である。
図2図2は、転舵装置の一例を示す図である。
図3図3は、ねじ軸の一例を示す図である。
図4図4は、ねじ軸の他の例を示す図である。
図5図5は、ねじ軸の他の例を示す図である。
図6図6は、円筒部の例を示す図である。
図7図7は、図2におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る振れ測定方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、振れ測定方法の一工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るステアリング用ボールねじ装置及びねじ軸の振れ測定方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
図1は、本実施形態に係るステアリングシステム100を示す模式図である。ステアリングシステム100は、例えばステアバイワイヤ方式の電動パワーステアリングシステムである。ステアリングシステム100は、操舵装置10と、転舵装置20と、制御装置30とを備える。ステアリングシステム100は、操舵装置10と転舵装置20とが制御装置30を介して電気的に接続される。ステアリングシステム100では、一般的な電動パワーステアリング装置が備える、コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)12と機械的に結合されるインターミディエイトシャフトがなく、運転者によるステアリングホイール11の操作を電気信号によって、具体的には、反力装置13から出力される操舵角を電気信号として制御装置30に伝達する。操舵装置10は、運転者に適切な操舵感を与えるための操舵反力を生成することができる。操舵装置10は、舵角センサ、トルクセンサ等の不図示の各種センサ14を有する。
【0019】
転舵装置20は、制御装置30からの指令に基づいて一対のタイロッド26を押し引きさせ、操舵輪27に舵角を付与する。図2は、転舵装置20の一例を示す図である。図2に示すように、転舵装置20は、ボールねじ装置40と、駆動装置50とを有する。以下、ボールねじ装置40のナット41の回転中心を回転軸AXと表記する。また、回転軸AXと平行な方向を軸方向と表記し、回転軸AXを中心とする回転方向を軸回り方向と表記する。ボールねじ装置40及び駆動装置50は、ハウジング21、24に収容される。ハウジング21、24は、例えば円筒状であり、軸方向に一体に連結される。
【0020】
ボールねじ装置40は、ナット41と、ねじ軸42と、複数のボール43と、回り止め部材44とを備える。
【0021】
ナット41は、内周面41aに内周軌道面41bを有する。内周軌道面41bは、例えば軸方向に沿って螺旋状に形成される。内周面41aは、円筒状である。ナット41は、ベアリング22及びベアリング23を介してハウジング21に回転可能に支持される。ナット41は、駆動装置50により軸回り方向に回転する。
【0022】
ねじ軸42は、ナット41を貫通する。図3から図5は、ねじ軸の例を示す図である。図3から図5は、軸回り方向に90°異なる2つの方向から見た例(例えば、平面図と側面図)を併記している。図3に示すねじ軸42は、外周面42aのうち、軸方向の一方の第1端部E1に外周軌道面42bを有し、他方の第2端部E2に平面部42cを有する。外周軌道面42bは、例えば軸方向に沿って螺旋状に形成される。
【0023】
平面部42cは、例えば周方向に180°ごとに2箇所設けられる構成(いわゆる2面幅)である。平面部42cは、少なくとも第2端部E2を含む範囲に形成される。本実施形態において、平面部42cは、軸方向の中央部から第2端部E2までの範囲に形成される。
【0024】
平面部42cは、回転軸AXの軸方向に沿った方向、例えば回転軸AXに平行又はほぼ平行に形成される。図3に示す例では、2つの平面部42cが互いに平行に形成されている。このため、2つの平面部42cの間の厚さが軸方向にほぼ均一になっている。
【0025】
図4に示すねじ軸142は、平面部42dが周方向に120°ごとに3箇所設けられる構成(いわゆる3面幅)である。平面部42dは、回転軸AXに平行又はほぼ平行に形成される。他の構成については、図3に示すねじ軸42と同様である。
【0026】
図5に示すねじ軸242は、平面部42eが周方向に90°ごとに4箇所設けられる構成(いわゆる4面幅)である。平面部42eは、回転軸AXに平行又はほぼ平行に形成される。図5に示す例では、周方向に180°ずれた2つの平面部42e同士が互いに平行に形成される。ねじ軸242は、このような2つの平行な平面部42eが2組設けられる。他の構成については、図3に示すねじ軸42と同様である。
【0027】
なお、平面部は、周方向に1箇所設けられた構成であってもよいし、5箇所以上設けられた構成であってもよい。
【0028】
以下、ねじ軸42の構成を例に挙げて説明するが、ねじ軸142、242についても同様の説明が可能である。
【0029】
ねじ軸42は、第2端部E2の端面42qに円筒部45を有する。図6は、円筒部45の一例を示す図である。図6には、上記のねじ軸42、142、242に円筒部45が設けられる例を併記している。図6に示すように、円筒部45は、端面42qから軸方向に突出して設けられる。円筒部45は、外周面45aが滑らかな円筒面状である。外周面45aには、ねじ軸42の振れ測定を行う際に、後述する測定子61が当接される。円筒部45は、端面42qにおける外周面42aの端辺42t及び平面部42cの端辺42uよりも径方向の内側に設けられる。つまり、円筒部45は、端辺42t及び端辺42uから径方向の外側にはみ出さない構成となっている。なお、ねじ軸142、242においても同様に、円筒部45は、端面42qにおける外周面42aの端辺42t及び平面部42d、42eの端辺42v、42wよりも径方向の内側に設けられる。これにより、円筒部45は、端辺42t及び端辺42v、42wから径方向の外側にはみ出さない構成となっている。
【0030】
円筒部45は、内周面45bにねじ部45cが形成される。内周面45bにねじ部45cが形成されることにより、ねじ軸42の第2端部E2側において他の部材等と連結することが可能となっている。
【0031】
円筒部45は、軸方向の寸法が例えば5mm以上25mm以下の範囲で設定することができる。5mm以上とすることにより、後述する測定子61が当接する面を十分に確保できる。また、25mm以下とすることにより、車両のレイアウトに及ぼす影響を抑制できる。
【0032】
また、ねじ軸42は、第1端部E1の端面42pに凹部42rを有する。凹部42rの内周面には、ねじ部42sが形成される。ねじ部42sが設けられることにより、ねじ軸42の第1端部E1側において他の部材等と連結することが可能となっている。
【0033】
複数のボール43は、ナット41の内周軌道面41bとねじ軸42の外周軌道面42bとの間に配置される。
【0034】
回り止め部材44は、ねじ軸42の第2端部E2側に配置される。回り止め部材44は、後述するハウジング24に固定される。回り止め部材44は、ハウジング24に対して軸回り方向への回転が規制された状態で固定される。例えば回り止め部材44は、図示しないキー、スプライン等により回転が規制されてもよいし、圧入により回転が規制されてもよい。回り止め部材44の回転を規制する構成としては、上記に限定されず、他の構成であってもよい。回り止め部材44は、例えば一部材の構成又は複数の部材が分割されないように一体化された構成である。回り止め部材44は、挿通部44aを有する。挿通部44aは、回り止め部材44を軸方向に貫通する貫通穴である。挿通部44aには、ねじ軸42の第2端部E2側が挿入される。ねじ軸42は、回り止め部材44に対して軸方向に摺動可能となるように、回り止め部材44との間で不図示の隙間を空けた状態で嵌め合っている。
【0035】
図7は、図2におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。図7に示すように、回り止め部材44は、挿通部44aの内周面に係止部44cを有する。当該係止部44cには、ねじ軸42の平面部42cが軸回り方向に係止される。係止部44cは、軸回り方向について、平面部42cと対応する位置に配置される。平面部42cが軸回り方向に2箇所設けられる場合、係止部44cは、平面部42cに係止されるように軸回り方向で対応する2箇所の位置に設けられる。
【0036】
なお、ねじ軸142が用いられる場合においては、平面部42dに対応する3箇所の位置に係止部44cが設けられる。また、ねじ軸242が用いられる場合においては、平面部42eに対応する4箇所の位置に係止部44cが設けられる。係止部44cは、平面部42cに対応するように例えば平面状に形成される。係止部44cは、回転軸AXに平行又はほぼ平行に形成される。
【0037】
平面部42c(又は平面部42d、42e)が係止部44cに係止されることにより、ねじ軸42の軸回り方向への回転が規制される。本実施形態において、ねじ軸42は、軸方向の中央部から第2端部E2までの範囲に平面部42cが形成されるため、第2端部E2を挿通部44aに挿入する際に回り止め部材44の他の部分と干渉することなく挿入することが可能となっている。
【0038】
回り止め部材44は、挿通部44aの内周面に湾曲部44bを有する。湾曲部44bは、ねじ軸42のうち軸回り方向について隣り合う平面部42cの間の外周面42aに対向する。したがって、挿通部44aの内周面は、湾曲部44bがねじ軸42の外周面42aに対向し、係止部44cがねじ軸42の平面部42cに対向する。
【0039】
また、図2に示すように、駆動装置50は、例えば中空モータである。駆動装置50は、ステータ51及びロータ52を有する。ステータ51は、ナット41の外周面に沿って軸回り方向に配置される。ステータ51は、複数のコイルを有する。ロータ52は、ナット41の外周面に固定される。ロータ52は、複数の永久磁石を有する。
【0040】
次に、上記のように構成されたステアリングシステム100の動作の一例を説明する。運転者が操舵装置10のステアリングホイール11を操作する場合、操作信号が制御装置30に送信される。制御装置30では、操作信号に基づいて、駆動装置50を制御する。
【0041】
制御装置30の制御により、ステータ51のコイルに所定の駆動電流が流れる。ステータ51のコイルに駆動電流が流れることにより磁場が発生し、ロータ52との間で作用する。ロータ52は、ステータ51との間の相互作用により、回転軸AXの軸回り方向に回転する。
【0042】
ロータ52が回転することにより、ナット41がロータ52と一体で回転軸AXの軸回り方向に回転する。ナット41が回転軸AXの軸回り方向に回転することにより、ねじ軸42がナット41に対して軸方向に移動する。これにより、ロータ52の回転運動がねじ軸42の軸方向への直線運動に変換される。
【0043】
ねじ軸42が軸方向に移動することで、ねじ軸42に連結される一対のタイロッド26が押し引きされ、一対の操舵輪27に舵角が付与される。なお、ハウジング21には、ナット41の回転量を検出する回転センサ25が設けられる。回転センサ25により、ナット41の回転量が検出される。検出結果は、制御装置30に送信される。
【0044】
次に、上記のように構成されたねじ軸42の振れ測定方法の一例を説明する。図8は、本実施形態に係る振れ測定方法の一例を示すフローチャートである。図9は、振れ測定方法の一工程を模式的に示す図である。図8に示すように、振れ測定方法は、回転ステップS10及び測定ステップS20を含む。
【0045】
回転ステップS10は、図9に示すように、ねじ軸42の例えば外周軌道面42bの2箇所を支持部材62により回転可能に支持した状態で、軸回り方向に回転させる。測定ステップS20は、回転するねじ軸42の円筒部45の外周面45aに測定器60の測定子61を当接させる。測定子61は、例えば回転軸AXに直交又は交差する方向から外周面45aに当接させる。測定子61により円筒部45の外周面45aの径方向への移動を検出することで、ねじ軸42の振れ測定が行われる。なお、振れ測定の後、円筒部45を除去してもよい。
【0046】
本実施形態に係るボールねじ装置40は、内周面41aに内周軌道面41bを有するナット41と、ナット41を貫通し、外周面42aのうち回転軸AXの軸方向の一方の第1端部E1側に外周軌道面42bを有し、軸方向の他方の第2端部E2側に少なくとも第2端部E2を含む範囲に軸方向に沿った平面部42cを有するねじ軸42と、内周軌道面41bと外周軌道面42bとの間に配置された複数のボール43と、ねじ軸42の第2端部E2側を挿通する挿通部44aを有し、軸回り方向について平面部42cに係止される係止部44cが挿通部44aに設けられる回り止め部材44とを備え、ねじ軸42は、第1端部E1及び第2端部E2の少なくとも一方の端面42qに当該ねじ軸42と中心軸を共有する円筒部45を有し、円筒部45は、端面42qにおける外周面42aの端辺42t及び平面部42cの端辺42uよりも径方向の内側に設けられる。
【0047】
この構成によれば、ねじ軸42に円筒部45が設けられることにより、ねじ軸42を軸回り方向に回転させた状態で円筒部45の外周面45aの位置を測定することで、ねじ軸42に治具等を装着することなく、ねじ軸42の振れ測定を行うことができる。また、円筒部45が端面42qにおける外周面42aの端辺42t及び平面部42cの端辺42uよりも径方向の内側に設けられるため、係止部44cと干渉することなく、ねじ軸42の第2端部E2を回り止め部材44に挿通することができる。
【0048】
本実施形態に係るボールねじ装置40において、ねじ軸42は、第1端部E1まで外周軌道面42bが形成される。この構成によれば、外周軌道面42bを軸方向に長く確保することができる。
【0049】
本実施形態に係るボールねじ装置40において、円筒部45は、内周面41aにねじ部を有する。この構成によれば、円筒部45の内周面41aのねじ部を介して他の部材等を装着することができる。これにより、振れ測定で用いられる円筒部45を有効利用することができる。
【0050】
本実施形態に係るボールねじ装置40において、平面部42cは、外周面42aの周方向に複数設けられ、係止部44cは、平面部42cに対応して配置されるように複数設けられる。この構成によれば、平面部42cとして2面幅、3面幅、4面幅等が適用される場合においても、係止部44cにより適切に回り止めを行うことができる。
【0051】
本実施形態に係るボールねじ装置40において、複数の平面部42cは、外周面42aの周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられる。この構成によれば、複数の平面部42cが外周面42aの周方向に互いに等しい間隔を空けて設けられるため、複数の平面部42cが周方向にバランスよく係止部44cに係止した状態で回り止めを行うことができる。
【0052】
本実施形態に係る振れ測定方法は、外周面42aのうち軸方向の一方の第1端部E1側に外周軌道面42bを有し、軸方向の他方の第2端部E2側に平面部42cを有し、第1端部E1及び第2端部E2の少なくとも一方の端面に円筒部45を有するねじ軸42の振れを測定する振れ測定方法であって、ねじ軸42の外周面42aを支持した状態でねじ軸42を軸回り方向に回転するステップと、回転するねじ軸42の円筒部45の外周面42aの位置を測定するステップとを含む。
【0053】
この構成によれば、ねじ軸42に治具等を装着することなくねじ軸42の振れ測定を行うことができる。したがって、ねじ軸42の振れ測定を効率的に行うことができる。
【0054】
本実施形態に係る振れ測定方法において、ねじ軸42を軸回り方向に回転するステップでは、ねじ軸42の外周面42aを軸方向について少なくとも2か所支持する。この構成によれば、ねじ軸42を安定して支持することができる。
【0055】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、ねじ軸42の第2端部E2の端面42qに円筒部45が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。ねじ軸42の第1端部E1の端面42pに円筒部が設けられてもよい。この場合、第1端部E1の端面42pに設けられた円筒部に測定子61を当接させることで振れ測定を行うことができる。
【0056】
また、上記実施形態では、ねじ軸42を軸回り方向に回転するステップでは、ねじ軸42の外周面42aを軸方向について少なくとも2か所支持する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。ねじ軸42を軸回り方向に回転するステップにおいて、ねじ軸42を1か所支持した状態で回転させてもよい。この場合、例えばねじ軸42のうち軸方向に一定以上の長さに亘って支持することにより、ねじ軸42を安定して支持することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、平面部42cが外周面42aの周方向に複数設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。平面部42cが外周面42aの周方向に1箇所設けられた構成(いわゆるDカット形状)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
E1 第1端部
E2 第2端部
AX 回転軸
10 操舵装置
11 ステアリングホイール
20 転舵装置
21,24 ハウジング
22,23 ベアリング
25 回転センサ
26 タイロッド
27 操舵輪
30 制御装置
40 ボールねじ装置
41 ナット
41a,45b 内周面
41b 内周軌道面
42,142,242 ねじ軸
42a,45a 外周面
42b 外周軌道面
42c,42d,42e 平面部
42p,42q 端面
42r 凹部
42s,45c ねじ部
42t,42u,42v,42w 端辺
43 ボール
44 回り止め部材
44a 挿通部
44b 湾曲部
44c 係止部
45 円筒部
50 駆動装置
51 ステータ
52 ロータ
60 測定器
61 測定子
62 支持部材
100 ステアリングシステム
図1
図2
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