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特開2023-111082情報処理装置、情報処理方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111082
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20230101AFI20230803BHJP
【FI】
G06Q30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012729
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】立浪 秀喜
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】エリア内における個々の利用者の行動分析をより適切に行う。
【解決手段】本発明の一態様は、エリア内で利用者が利用する通信デバイスの位置及び時刻を含む動線情報を取得する動線取得部と、動線取得部により取得された動線情報に基づいて、エリア内の通信デバイスの滞在時間を示す滞在時間情報を取得する第1取得部と、動線情報に基づいて、エリア内の通信デバイスの移動距離を示す移動距離情報を取得する第2取得部と、動線情報に基づいて、エリア内を分割した複数の分割領域のうち通信デバイスが滞在した分割領域を示す滞在領域情報を取得する第3取得部と、第1取得部により取得された滞在時間情報、第2取得部により取得された移動距離情報、及び第3取得部により取得された滞在領域情報に基づいて、動線取得部により取得された2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する動線解析部と、を備えた情報処理装置である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内で利用者が利用する通信デバイスの位置及び時刻を含む動線情報を取得する動線取得部と、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの滞在時間を示す滞在時間情報を取得する第1取得部と、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの移動距離を示す移動距離情報を取得する第2取得部と、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内を分割した複数の分割領域のうち前記通信デバイスが滞在した分割領域を示す滞在領域情報を取得する第3取得部と、
前記第1取得部により取得された滞在時間情報、前記第2取得部により取得された移動距離情報、及び前記第3取得部により取得された滞在領域情報に基づいて、前記動線取得部により取得された2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する動線解析部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記動線解析部は、前記2以上の動線情報の前記滞在時間情報、前記移動距離情報、又は前記滞在領域情報の合致度合いがそれぞれの閾値以上である場合に、前記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析する、
請求項1に記載された情報処理装置。
【請求項3】
前記動線解析部は、
前記2以上の動線情報のうち基準となる動線情報である基準動線情報、及び、前記基準動線情報以外の動線情報の2つの動線情報の前記滞在時間情報の合致度合いを、前記2つの動線情報のそれぞれに対応する2つの滞在時間が近いほど大きくなるように設定し、
前記2つの動線情報の前記移動距離情報の合致度合いを、前記2つの動線情報のそれぞれに対応する2つの移動距離の長さが近いほど大きくなるように設定し、
前記2つの動線情報の前記滞在領域情報の前記合致度合いを、前記2つの動線情報のそれぞれが共通に示す滞在領域の数が近いほど大きくなるように設定する、
請求項2に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記動線解析部は、前記2以上の動線情報の前記滞在時間情報、前記移動距離情報、及び、前記滞在領域情報の合致度合いに基づくスコアを、前記滞在領域情報の合致度合いに対する重み付けが相対的に大きくなるように算出し、算出したスコアに基づいて前記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項5】
前記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析された場合に、前記2以上の動線情報に基づいて特定される滞在領域を、前記同一の利用者に対応付ける対応付け部を備えた、
請求項1から4のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析され、かつ前記2以上の動線の動線情報のうち第1の動線情報において通信デバイスの位置情報が含まれていない期間が存在する場合、前記第1の動線情報の前記期間に対応する通信デバイスの位置情報を、前記2以上の動線の動線情報のうち前記第1の動線情報以外の動線情報の前記期間に対応する通信デバイスの位置情報により補間する補間部を備えた、
請求項1から5のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項7】
前記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析された場合に前記2以上の動線情報を1利用者に基づく動線情報であるとしてカウントすることにより、前記動線取得部によって取得された複数の動線情報から前記エリアに滞在した利用者数を特定する利用者数特定部を備えた、
請求項1から6のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項8】
前記エリアは、商品を販売する店舗を含み、
前記通信デバイスは、買い物かご及びカートの少なくともいずれかに設けられる、
請求項1から7のいずれか一項に記載された情報処理装置。
【請求項9】
エリア内で利用者が利用する通信デバイスの位置及び時刻を含む動線情報を取得する動線取得ステップと、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの滞在時間を示す滞在時間情報を取得する第1取得ステップと、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの移動距離を示す移動距離情報を取得する第2取得ステップと、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内を分割した複数の分割領域のうち前記通信デバイスが滞在した分割領域を示す滞在領域情報を取得する第3取得ステップと、
前記第1取得部により取得された滞在時間情報、前記第2取得部により取得された移動距離情報、及び前記第3取得部により取得された滞在領域情報に基づいて、前記動線取得部により取得された2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する動線解析ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
エリア内で利用者が利用する通信デバイスの位置及び時刻を含む動線情報を取得する動線取得部、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの滞在時間を示す滞在時間情報を取得する第1取得部、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの移動距離を示す移動距離情報を取得する第2取得部、
前記動線情報に基づいて、前記エリア内を分割した複数の分割領域のうち前記通信デバイスが滞在した分割領域を示す滞在領域情報を取得する第3取得部、及び、
前記第1取得部により取得された滞在時間情報、前記第2取得部により取得された移動距離情報、及び前記第3取得部により取得された滞在領域情報に基づいて、前記動線取得部により取得された2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する動線解析部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スーパーマーケット、ショッピングモール等の店舗において、利用者の消費動向を把握し、さらに販売を増加させるため、消費者がどのように施設内を移動しているかについての情報を分析することが求められている。例えば、特許文献1には、ショッピングエリア内においてユーザが携行可能であって、商品が収容される可搬コンテナに配設される信号発信器から発信される信号を受信することで、ショッピングフロアにおける顧客ユーザの行動ログ(移動履歴)を集積するようにした、位置情報収集装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-33442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば商品運搬用具としてかごとカートに通信デバイスが取り付けられており、利用者がかごとカートを同時に運搬する場合には、1人の利用者に対して2以上の動線データが得られることになる。その場合、当該2以上の動線データが1人の利用者の行動に起因するデータであることを特定できないとしたならば、多数の通信デバイスの動線データを集計した後に店舗を利用した利用者数を特定できず、また、個々の利用者の店舗内における行動分析ができないという課題がある。
そこで、本発明は、エリア内における個々の利用者の行動分析をより適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、エリア内で利用者が利用する通信デバイスの位置及び時刻を含む動線情報を取得する動線取得部と、前記動線取得部により取得された動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの滞在時間を示す滞在時間情報を取得する第1取得部と、前記動線情報に基づいて、前記エリア内の前記通信デバイスの移動距離を示す移動距離情報を取得する第2取得部と、前記動線情報に基づいて、前記エリア内を分割した複数の分割領域のうち前記通信デバイスが滞在した分割領域を示す滞在領域情報を取得する第3取得部と、前記第1取得部により取得された滞在時間情報、前記第2取得部により取得された移動距離情報、及び前記第3取得部により取得された滞在領域情報に基づいて、前記動線取得部により取得された2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する動線解析部と、を備えた情報処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、エリア内における個々の利用者の行動分析をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の利用者行動分析システムを概略的に示す図である。
図2】動線データセットのデータ構成例を示す図である。
図3】実施形態の利用者行動分析システムが適用される例示的な店舗において1つの無線タグの動線を例示する図である。
図4】一人の利用者が店舗において運搬するかごとカートを示す図である。
図5】店舗内における例示的な5本の動線を示す図である。
図6】グループデータのデータ構成例を示す図である。
図7】実施形態の利用者行動分析システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
図8】実施形態の利用者行動分析システムの動作を示すフローチャートである。
図9図5に示した5本の動線のうち同一の利用者として特定された2本の動線を示す図である。
図10】グループIDと滞在ゾーンを対応付けたデータを例示する図である。
図11】一利用者に対して割り当てられたゾーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムの一実施形態について説明する。以下では、情報処理装置を含むシステムの一例として、買い物カートや買い物かご等の商品運搬用具に取り付けられた通信デバイスの動線情報から利用者の動線情報を特定する利用者行動分析システムについて説明する。
【0009】
例えば、スーパーマーケット等、複数の売り場が混在する店舗では、多数の来店者が店舗内を移動して売り場から商品をピックアップし、レジ(キャッシュレジスタ)で会計する。このとき、商品をピックアップし、レジまで運搬するために、買い物カートが使用される。そのため、店舗を利用する利用者の行動を分析するために、例えば買い物カートに通信デバイスを取り付けて買い物カートの動線(言い換えると、通信デバイスが移動した軌跡)を取得することが考えられる。
【0010】
ところで、店内の利用者は、買い物カートのみを使用する場合もあり、買い物かごのみを使用する場合もあり、また、買い物カートと買い物かごの両方を使用することもある。そのため、店舗の利用者の行動分析をより正確に行うためには、買い物カートのみならず、買い物かごにも通信デバイスを取り付ける必要がある。しかしながら、買い物カートと買い物かごの両方を使用する場合、同一の利用者に対して複数の通信デバイスの動線が得られることになる。
【0011】
そこで、以下で説明する一実施形態の利用者行動分析システムは、複数の通信デバイスの動線から個々の利用者の動線に対応する1以上の動線を特定する。それによって、多数の通信デバイスの動線が得られた後に利用者の行動分析を行う場合に、多数の通信デバイスの動線から店舗を利用した利用者の人数を特定できるとともに、エリア内における個々の利用者の行動分析をより適切に行うことが可能となる。
【0012】
以下では、買い物カート及び買い物かごに取り付けられる通信デバイスが無線タグである場合について説明するが、通信デバイスの種類についてはその限りではなく、スマートフォン、ウェアラブル端末、タブレット端末等の他の通信デバイスであってもよい。
【0013】
一実施形態の利用者行動分析システム1の概要について、図1図6を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態の利用者行動分析システム1を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態の利用者行動分析システム1は、例えば店舗内で各利用者が使用するカートCTやかご等に取り付けられた無線タグ2、受信機3、店舗端末4、及び、サーバ5(情報処理装置の一例)を備える。図1では、カートCTに無線タグ2が取り付けられる場合を例示している。
【0015】
無線タグ2は、通信デバイスの一例であり、例えば比較的小型の無線通信装置である。無線タグ2は、所定周期で電波(ビーコン信号)を放射する。ビーコン信号は、周囲の電波環境にもよるが、所定の範囲で受信可能となるように放射される。ビーコン信号には、例えば、無線タグ2を識別する識別情報(タグID等)の情報が含まれる。
受信機3とサーバ5は、ネットワークNWで接続され、来店者の店舗内での位置を特定する位置特定システムを構成する。ネットワークNWは、例えば、セルラー網や、Wi-Fi網、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆回路、専用回路、無線基地局等である。
【0016】
一実施形態では、無線タグ2の測位は、店舗の天井に受信機3を設置し、無線タグ2から放射される電波(ビーコン信号)を受信機3が受信し、受信したビーコン信号の入射角を算出するAOA(Angle of Arrival)方式を利用する。受信機3では、無線タグ2から受信するビーコン信号の入射角(到来方向)を測定し、測定した入射角の情報をサーバ5に送る。サーバ5では、送信元の受信機3の店舗内での位置(XYZ座標の位置)と、当該位置を基準とした入射角とから、無線タグ2の位置(XY座標)を特定する。無線タグ2と受信機3との通信プロトコルは問わないが、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以下、BLE)等が挙げられる。
【0017】
1つの受信機3(ロケータ)によっても無線タグ2の位置を推定可能であるが、ビーコン信号の受信信号強度(RSSI)の大きさや店舗面積、店舗の電波環境に応じて、より多くの受信機3を設けることが好ましい。例えば、店舗の天井には、等間隔で受信機3を配置し、売り場が密集している場所等の特に測位精度が要求される場所には、より短い間隔で受信機3を配置することが好ましい。なお、無線タグ2の測位方法はAOA方式に限定するものではなく、TOA(Time of Arrival)方式等の他の方法を利用してもよい。無線タグ2の測位間隔は、任意に設定してよいが、利用者の行動を正確に把握するために必要な時間(例えば、100ms~2秒)に設定される。なお、無線タグ2と受信機3との通信不良、あるいは、無線タグ2のスリープ動作等により、受信機3が少なくとも一時的に無線タグ2からのビーコン信号を受信できない(ビーコン信号をロストする)場合もある。
【0018】
店舗端末4は、例えば、店舗の事務所等に配置され、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の表示パネルを備えた端末である。店舗端末4は、ネットワークNWを介してサーバ5と通信可能である。店舗端末4は、例えば、サーバ5から動線データを取得して店舗フロアと対応付けて動線を表示したり、サーバ5から動線解析プログラムの実行結果を取得して表示したりする端末であるが、利用者行動分析システム1に必ずしも必須の構成ではない。
【0019】
サーバ5は、無線タグ2の位置を算出(取得)し、無線タグ2の動線データセットを記録する。図2は、動線データセットのデータ構成例を示す図である。図2に示すように、動線データセットは、無線タグ2の識別情報であるタグIDごとに、無線タグ2の位置(XY座標の位置)のデータ(位置情報の一例)と、時刻(タイムスタンプts)のデータ(時刻情報)とが対応付けられている。以下の説明では、1つのタグIDに対して、無線タグ2の位置情報と時刻情報とが対応付けられたデータを「動線データ」(動線情報の一例)という。つまり、動線データセットは、複数のタグIDの各々に対応する複数の動線データを含む。
【0020】
図2に示す動線データセットにおいて各タグIDに対応する動線データは、1つの動線に対応する。図3は、実施形態の利用者行動分析システムが適用される例示的な店舗において1つの無線タグの動線を例示する図である。図3では、商品棚SHやレジゾーンRZが設けられた店舗フロア(エリアの一例)の平面図において、1つのタグIDに対応する動線FLを例示している。
【0021】
図4は、一人の利用者が店舗において運搬するかごとカートを示す図である。図4に示すカートCTには、かごBKが載せられている。ここで、店内の利用者は、カートCTのみを使用する場合もあり、かごBKのみを使用する場合もあるため、店舗の利用者の行動分析をより適切に行うために、カートCTと、かごBKの両方に無線タグ2が取り付けられる。無線タグ2は、例えば、かごBKやカートCTの側部や底部等、かごBKや商品を入れたり取り出したりする際に無線タグ2が外れることがない位置に取り付けられる。好ましくは、無線タグ2は、無線タグ同士の電波が干渉することがない位置に取り付けられる。
図4では、カートCTの脚部に無線タグ2-1が設置され、かごBKの側部に無線タグ2-2が設置されている例が示されるが、無線タグの設置位置は図4に示した例に限定されない。
図4に示すように、かごBKが載せられたカートCTを利用者が運搬する場合、当該利用者に対して、2つの動線データが取得される。店舗の利用者が所持する利用者端末(スマートフォンやウェアラブル端末等)が無線タグとして機能する場合には、利用者端末からも動線データが取得され得る。
そこで、サーバ5は、動線解析プログラムを実行することで、複数の動線データから、個々の利用者の動線データに対応する1以上の動線データを特定する。サーバ5は、例えば所定時間(例えば1日)内に取得された複数の動線データ(複数のタグIDの各々に対応付けられた複数の動線データ)に基づいて、同一の利用者に対応する1以上の動線データを特定する。
【0022】
図5は、店舗内における例示的な5本の動線を示す図である。例えば、図5には、例示的な店舗フロア(エリアの一例)内において所定時間内に取得された5個の動線データに対応する5本の動線FL1~FL5を示している。この例では、サーバ5は、動線解析プログラムを実行することで5本の動線FL1~FL5のうち同一の利用者に対応する1以上の動線を特定する。サーバ5は、同一の利用者に対応する1以上の動線を特定するために、店舗フロアを複数のゾーン(分割領域の一例)に分割して各動線データに対する処理を行う。図5に示す例では、ゾーンZ11~Z44からなる4×4の16ゾーンに店舗フロアを分割した例が示される。なお、図5は個々のゾーンを矩形又は正方形で示した例であるが、その限りではなく、例えば正六角形等の多角形等とすることもできる。なお、サーバ5は、店舗フロアの平面上の二次元情報と、店舗フロアの各ゾーンの境界位置に関する二次元情報と、を含む店舗マップを有する。
【0023】
図6は、グループデータのデータ構成例を示す図である。サーバ5は、例えば所定時間内に取得された複数の無線タグから得られる複数の動線データから、同一の利用者に対応する1以上の動線データを特定した結果として、グループデータを生成する。
グループデータは、動線データセット(図2)に含まれる各動線データに対応するタグIDをグルーピングした結果を示しており、同一の利用者に対応する1以上のタグIDに対して、固有のグループIDが割り当てられている。図6の例では、2つのタグID(xxx01,xxx65)に対して1つのグループIDが割り当てられている。1つのグループIDは、一人の利用者の店舗内の行動に起因した動線データであることを意味している。このグループデータから、同一の利用者に対応する1以上のタグIDを認識することができる。
【0024】
次に、利用者行動分析システム1の内部構成について、図7のブロック図を参照して説明する。図7は、実施形態の利用者行動分析システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。図7に示すように、無線タグ2は、例えば、制御部21と通信部22を備える。制御部21は、マイクロコントローラを主体として構成され、無線タグ2の全体を制御する。例えば、制御部21は、受信信号および送信信号に対する処理(ベースバンド信号の処理)を行う。通信部22は、受信機3と通信を行うためのインタフェースであり、例えば、受信機3への送信信号(例えばビーコン信号)の変調を行い、例えばBLEに従ってブロードキャスト送信する。ビーコン信号には、無線タグ2のタグIDが含まれる。
【0025】
図7に示すように、受信機3は、電波受信部31、入射角測定部32、および、通信部33を備える。電波受信部31は、無線タグ2から送信されるビーコン信号(電波)を受信するアンテナを含む。入射角測定部32は、電波受信部31で受信した無線タグ2からの電波の入射角を測定する。通信部33は、無線タグ2およびサーバ5と通信を行うためのインタフェースである。例えば、通信部33は、無線タグ2からの受信信号を復調する。また、通信部33は、入射角測定部32によって測定された入射角の情報を、受信したビーコン信号に含まれるタグIDと対応付けて、ネットワークNWを介してサーバ5に送信する。
【0026】
図7に示すように、店舗端末4は、制御部41、表示部42、および、通信部43を備える。制御部41は、マイクロコントローラを主体として構成され、店舗端末4の全体を制御する。制御部41は、例えば、通信部43を介して表示のために、サーバ5から動線データを取得して図3に示すように動線を表示部42に表示し、及び/又は、サーバ5から動線解析プログラムの実行結果を取得して表示部42に表示する。表示部42は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル等の表示パネルと、サーバ5から取得する表示データに基づいて表示パネルを駆動する駆動回路とを含む。例えば、制御部41は、所定のプログラムを実行することで、サーバ5から取得したタグIDごとの動線データセット、および、図6に示すグループデータ等に基づいて、無線タグ2の動線や利用者ごとの動線等を表示部42に表示する。通信部43は、ネットワークNWを介してサーバ5との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0027】
図7に示すように、サーバ5は、制御部51、ストレージ52、および、通信部53を備える。制御部51は、マイクロコントローラを主体として構成され、サーバ5の全体を制御する。例えば、制御部51のマイクロコントローラが動線解析プログラムを実行することで、制御部51は、動線取得部511、第1データ取得部512、第2データ取得部513、第3データ取得部514、及び、動線解析部515として機能する。
【0028】
動線取得部511は、店舗フロア内で利用者が利用する無線タグ2の位置及び時刻を含む動線データを取得する。動線取得部511は、例えば受信機3から受信するタグIDごとの入射角の情報等に基づいて、タグIDごとに動線データを取得する。
第1データ取得部512は、動線取得部511により取得された無線タグ2の動線データに基づいて、店舗フロア内の無線タグ2の滞在時間を示す滞在時間情報を取得する。第2データ取得部513は、動線取得部511により取得された無線タグ2の動線データに基づいて、店舗フロア内の無線タグ2の移動距離を示す移動距離情報を取得する。第3データ取得部514は、動線取得部511により取得された無線タグ2の動線データに基づいて、店舗フロア内を分割した複数のゾーンのうち無線タグ2が滞在したゾーンを示す滞在ゾーン情報(滞在領域情報の一例)を取得する。動線解析部515は、第1データ取得部512により取得された滞在時間情報、第2データ取得部513により取得された移動距離情報、及び、第3データ取得部514により取得された滞在ゾーン情報に基づいて、動線取得部511により取得された2以上の動線データが同一の利用者の動線データであるか否か解析する。
【0029】
一実施形態では、動線解析部515は、上記2以上の動線情報の滞在時間情報、移動距離情報、又は滞在領域情報の合致度合いがそれぞれの閾値以上である場合に、上記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析する。各情報の合致度合いを閾値と比較する簡易な処理であるため、分割領域を細かく設定した場合であっても演算負荷を軽減できる。
【0030】
一実施形態では、動線解析部515は、以下の(i)~(iii)に示すように設定する。
(i)上記2以上の動線情報のうち基準となる動線情報である基準動線情報、及び、基準動線情報以外の動線情報の2つの動線情報の滞在時間情報の合致度合いを、当該2つの動線情報のそれぞれに対応する2つの滞在時間が近いほど大きくなるように設定する。
(ii)(i)における2つの動線情報の移動距離情報の合致度合いを、当該2つの動線情報のそれぞれに対応する2つの移動距離の長さが近いほど大きくなるように設定する。
(iii)(i)における2つの動線情報の滞在領域情報の合致度合いを、当該2つの動線情報のそれぞれが共通に示す滞在領域の数が近いほど大きくなるように設定する。
これにより、各情報の合致度合いを設定するときの演算負荷を軽減できる。
【0031】
一実施形態では、動線解析部515は、上記2以上の動線情報の滞在時間情報、移動距離情報、及び、滞在領域情報の合致度合いに基づくスコアを、滞在領域情報の合致度合いに対する重み付けが相対的に大きくなるように算出し、算出したスコアに基づいて上記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であるか否か解析する。
このように、各スコアに対する重み付けを設定することで、個々の店舗の規模や業態に応じた最適な解析を行うことができる。
【0032】
一実施形態では、制御部51は、対応付け部として機能してもよい。対応付け部は、上記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析された場合に、上記2以上の動線情報に基づいて特定される滞在領域を、同一の利用者に対応付ける。
制御部51が対応付け部として機能することで、同一の利用者の滞在領域を精度良く網羅することができるとともに、同一の利用者に対して特定された滞在領域をより有効に利用することができる。
【0033】
一実施形態では、制御部51は、上記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析され、かつ2以上の動線の動線情報のうち第1の動線情報において通信デバイスの位置情報が含まれていない期間が存在する場合、第1の動線情報の当該期間に対応する通信デバイスの位置情報を、2以上の動線の動線情報のうち第1の動線情報以外の動線情報の当該期間に対応する通信デバイスの位置情報により補間する補間部を備える。
制御部51が補間部として機能することで、1つの通信デバイスからの位置情報を一時的に取得できない場合であっても他の通信デバイスの位置情報により補うことができるため、店舗内における利用者の行動をより精度良く分析できる。
【0034】
一実施形態では、制御部51は、利用者数特定部として機能してもよい。利用者数特定部は、上記2以上の動線情報が同一の利用者の動線情報であると解析された場合に上記2以上の動線情報を1利用者に基づく動線情報であるとしてカウントすることにより、動線取得部511によって取得された複数の動線情報からエリアに滞在した利用者数を特定する。これにより、店舗を利用した利用者の数を特定することが可能となる。
【0035】
ストレージ52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)装置等の大容量記憶装置であり、店舗マップ、動線データセット(動線DS;図2参照)、及び、グループデータ(図6参照)を格納する。ストレージ52内の各データは、制御部51からのアクセスに応じて適宜、更新、追加、又は削除される。店舗マップは、店舗フロアの複数のゾーンのうち無線タグ2の位置に対応するゾーンを特定するために制御部51に参照される。通信部53は、ネットワークNWを介して、受信機3、及び、店舗端末4との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0036】
次に、図8を参照して、サーバ5によって実行される動線解析処理について説明する。図8は、実施形態の利用者行動分析システムの動作を示すフローチャートである。動線解析処理は、サーバ5の制御部51が動線解析プログラムを実行することで行われる処理であり、取得された複数の無線タグの動線データセットから、同一の利用者に対応する1以上の動線データを特定する。例えば図5に示した例示的な5本の動線FL1~FL5にそれぞれ対応する動線データFD1~FD5を含む処理について適宜説明する。
【0037】
図8を参照すると、動線解析処理では先ず、処理対象の複数の無線タグの動線データ(図5の例では、5本の動線FL1~FL5に対応する5個の動線データ)から基準動線データ(基準動線情報の一例)を決定する(ステップS2)。処理対象の複数の無線タグの動線データを順に基準動線データとし、ステップS2~S14の処理が完了した場合にステップS18へ進む(ステップS16)。例えば、図5に示す動線FL1に対応する動線データFD1を基準動線データに決定する。制御部51は、基準動線データFD1と、基準動線データ以外の動線データFD2~FD5の各々との間で、滞在時間のマッチ度(ステップS4)、移動距離のマッチ度(ステップS6)、及び、滞在ゾーンのマッチ度(ステップS8)を順に算出する。マッチ度は、合致度合いの一例である。以下、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度の例示的な算出方法について説明する。
【0038】
(I)滞在時間のマッチ度
例えば、滞在時間のマッチ度とは、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの滞在時間の同一性の程度を意味し、例えば、2つの動線データの滞在時間の比率あるいは差分に基づいて算出される。2つの動線データのうち基準動線データの滞在時間をt1とし、基準動線データ以外の動線データの滞在時間をt2とした場合に、以下の式(1)により算出される比率が100%に近いほど、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの滞在時間のマッチ度が大きくなるように算出される。すなわち、2つの動線データの滞在時間情報のマッチ度は、2つの動線データに対応する2つの滞在時間の長さの比率が1に近いほど大きくなるように設定される。つまり、2つの動線データの滞在時間情報のマッチ度は、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの滞在時間が近いほど大きくなるように設定される。

(1-(|t1-t2|)/t1)×100[%]…式(1)

2つの滞在時間の差分(|t1-t2|)がゼロに近いほど(つまり、滞在時間の長さの差が小さいほど)、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの滞在時間のマッチ度が大きくなるように設定してもよい。
【0039】
上記式(1)に従って算出される比率を滞在時間のマッチ度とした場合、図5に示した動線FL2~FL5に対応する動線データFD2~FD5の各々について、基準動線データFD1との滞在時間のマッチ度は、以下となる。
・動線データFD2: 99%
・動線データFD3: 98%
・動線データFD4:100%
・動線データFD5: 50%
【0040】
(II)移動距離のマッチ度
例えば、移動距離のマッチ度とは、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの移動距離の同一性の程度を意味し、例えば、2つの動線データの移動距離の比率あるいは差分に基づいて算出される。2つの動線データのうち基準動線データの移動距離をd1とし、基準動線データ以外の動線データの移動距離をd2とした場合に、以下の式(2)により算出される比率が100%に近いほど、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの移動距離のマッチ度が大きくなるように算出される。すなわち、2つの動線データの移動距離情報のマッチ度は、2つの動線データに対応する2つの移動距離の長さの比率が1に近いほど大きくなるように設定される。つまり、2つの動線データの移動距離情報のマッチ度は、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの移動距離の長さが近いほど大きくなるように設定される。

(1-(|d1-d2|)/d1)×100[%]…式(2)

2つの移動距離の差分(|d1-d2|)がゼロに近いほど(つまり、移動距離の長さの差が小さいほど)、2つの動線データのそれぞれに対応する2つの移動距離のマッチ度が大きくなるように設定してもよい。
【0041】
上記式(2)に従って算出される比率を移動距離のマッチ度とした場合、図5に示した動線FL2~FL5に対応する動線データFD2~FD5の各々について、基準動線データFD1との移動距離のマッチ度は、以下となる。
・動線データFD2: 97%
・動線データFD3: 85%
・動線データFD4: 25%
・動線データFD5: 50%
【0042】
(III)滞在ゾーンのマッチ度
例えば、滞在ゾーンのマッチ度は、2つの動線データに基づき、対応する無線タグ2が滞在したゾーン(滞在ゾーン)の共通する程度を意味する。例えば、2つの動線データのうち、基準動線データが示す滞在ゾーンの数をNzとし、基準動線データ以外の動線データが示す滞在ゾーンのうち、基準動線データと共通する滞在ゾーンの数をNcとした場合、滞在ゾーンのマッチ度を(Nc/Nz)×100[%](式3)により算出する。2つの動線データのそれぞれが共通に示す滞在ゾーンが占める割合が大きいほどマッチ度が大きくなる。2つの動線データの滞在ゾーン情報のマッチ度は、2つの動線データのそれぞれが共通に示す滞在ゾーンの数の基準動線データが示す滞在ゾーンの数に対する比率が1に近いほど大きくなるように設定される。なお、(Nz-Nc)の値がゼロに近いほど、滞在ゾーンのマッチ度が大きくなるように設定してもよい。つまり、2つの動線データの滞在領域情報のマッチ度は、2つの動線データのそれぞれが共通に示す滞在領域の数が近いほど大きくなるように設定する。
【0043】
図5の例では、各動線データが示す滞在ゾーンは、以下のとおりである。
・動線データFD1:Z12,Z22,Z24,Z31,Z32,Z33,Z34
・動線データFD2:Z12,Z14,Z22,Z24,Z31,Z32,Z33,Z34,Z41
・動線データFD3:Z11,Z12,Z13,Z14,Z21,Z24,Z31,Z34,Z41,Z42,Z43,Z44
・動線データFD4:Z21,Z22,Z31,Z32
・動線データFD5:Z11,Z12,Z21,Z22,Z31,Z32
【0044】
よって、基準動線データである動線データFD1が示す滞在ゾーンの数Nzは7である。基準動線データ以外の動線データFD2~FD5のそれぞれの滞在ゾーンのマッチ度を上記式(3)により算出すると、以下となる。
・動線データFD2:100%(Nc=7)
・動線データFD3: 57%(Nc=4)
・動線データFD4: 43%(Nc=3)
・動線データFD5: 57%(Nc=4)
【0045】
再度図8のフローチャートを参照すると、基準動線データと他のすべての動線データとの間で、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度の算出が終了した場合(ステップS10:YES)、制御部51はステップS12を実行する。ステップS12では、制御部51は、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度が所定の条件を満足する動線データがあるか否か判定する。一実施形態では、条件は「滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度がそれぞれの閾値以上であること」、又は「滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度を合算して3(=マッチ度を算出した回数)で除算したときの値が所定値以上であること」である。このようなシンプルな条件を設定することで高速で判断することができるが、当該条件に限定されない。
例えば、ステップS12の条件を「滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのそれぞれのマッチ度が90%以上であること」とした場合、条件を満たす動線データは、動線データFD2のみとなる。
【0046】
ステップS12で条件を満たす動線データがある場合には(ステップS12:YES)、制御部51は、当該動線データをメモリに記録する(ステップS14)。条件を満たす動線データが動線データFD2である場合には、基準動線データFD1に対して動線データFD2を対応付けて記録する。この場合、基準動線データFD1と動線データFD2は、同一の利用者の動線データとして解析する。
【0047】
以上が、動線データFD1を基準動線データとしたときの一連の処理である。同様に、制御部51は、動線データFD2~FD5の各々を順に基準動線データとしてステップS2~S14の処理を実行する。その結果、例えば、図5の5本の動線に対応する動線データに対して動線解析処理を適用した例では、動線FL1,FL2に対応する動線データFD1,FD2が、同一の利用者が利用する無線タグの動線データであると判断される。図9は、図5に示した5本の動線のうち同一の利用者として特定された2本の動線を示す図である。図9に示すように、動線FL1,FL2は、互いに類似した経路を辿る動線となっているが、例えば、動線FL2は動線FL1と異なり、ゾーンZ14,Z41への進入が見られる。
【0048】
なお、ステップS12の条件は、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度の重み付けを考慮して設定してもよい。例えば、滞在ゾーンのマッチ度の重みを相対的に高くする。
例えば、フロア面積が比較的小さい店舗では、滞在時間のマッチ度と移動距離のマッチ度が動線の形に関わらず大きくなる傾向にある。その場合、店舗内の各ゾーンを細かく設定しつつ、滞在ゾーンのマッチ度の重みを相対的に高くするとよい。店舗内の各ゾーンを細かく設定することで、複数の動線データに対する滞在ゾーンのマッチ度に有意な差を生じさせることが可能となる。
滞在ゾーンのマッチ度の重みを相対的に高くする場合、例えば、滞在時間のマッチ度と、移動距離のマッチ度と、及び、滞在ゾーンのマッチ度に対して1より大きい係数を乗じた値と、を合算したスコアを所定の閾値と比較することで、条件を満たすか否か判断する。
【0049】
動線データを基準動線データとした一連の処理が完了すると(ステップS16:YES)、制御部51は、制御部51は、ステップS14でメモリに記録した動線データに基づいて、グループデータ(図6参照)を作成する(ステップS18)。すなわち、制御部51は、基準動線データFD1に対して動線データFD2が対応付けて記録された場合、基準動線データFD1に対応するタグIDと、動線データFD2に対応するタグIDとを、グルーピングして固有のグループIDを割り当てる。基準動線データが、基準動線データ以外の動線データと対応付けられなかった場合には、制御部51は、当該基準動線データに対応するタグIDに対して固有のグループIDを割り当てる。1つのグループIDは、一人の利用者に対応している。したがって、同一のグループIDに割り当てられた1以上のタグIDは、同一の利用者に対応付けられた無線タグ2のタグIDであることを意味している。
【0050】
以上説明したように、一実施形態の利用者行動分析システム1では、複数の無線タグから得られる複数の動線データに対して、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度に基づいて、1以上の動線を同一の利用者に対応付ける。その際、滞在時間のマッチ度、移動距離のマッチ度、及び、滞在ゾーンのマッチ度の算出は、上述したように比較的簡易な演算で実行できる。したがって、例えば所定時間内に取得された多数の動線データから、同一の利用者に起因する1以上の動線データを高速で特定することができる。
また、同一の利用者に起因する1以上の動線データを特定することで以下の利点がある。(i)多数の無線タグ2の動線が得られた後に利用者の行動分析を行う場合に、多数の無線タグ2の動線から店舗を利用した利用者の人数を特定できる。(ii)個々の利用者と1以上の動線データが対応付けられるため、個々の利用者に対する店内でのより適切な行動分析が可能となる。
【0051】
動線解析処理を実行した後、制御部51は、同一のグループIDに対応付けられた1以上のタグIDを利用して、様々な後処理を行うことができる。
【0052】
[後処理の第1例]
例えば、制御部51は、同一のグループIDに対応する1以上のタグIDに対して取得された1以上の動線データに基づいて特定されるすべての滞在ゾーンを、同一の利用者に対応付けてもよい。すなわち、制御部51は、2以上の無線タグ2の動線データが同一の利用者の動線データであると判断された場合に、2以上の無線タグ2の動線データから特定される滞在ゾーンを、同一の利用者に対応付ける対応付け部として機能する。例えば、図9に示した例では、動線データFD1,FD2に基づいて特定される滞在ゾーンZ12,Z14,Z22,Z24,Z31,Z32,Z33,Z34,Z41が同一の利用者に対応付けられる。
対応付け部は、動線解析処理を実行することで得られたグループデータと動線データセットを基に、店舗マップを参照してグループIDと滞在ゾーンとを対応付ける。図10は、グループIDと滞在ゾーンを対応付けたデータを例示する図である。
【0053】
このような処理を行うことで、同一の利用者が滞在したと考えられるゾーンをより広く網羅することができる。図9に示した例では、動線データFD1のみに基づいて利用者の行動を分析するよりも、動線データFD1,FD2に基づいて利用者の行動を分析することで、利用者の行動を幅広く捉えることができる。すなわち、利用者の行動を、漏れなく、より精度高く把握することができる。例えば、動線データFD2は、動線データFD1と比較して滞在ゾーンZ14,Z41を網羅しており、当該ゾーンで、利用者のカートにかごを積載する行動、かごをカートから一時的に下ろして場所を移動した行動等の情報を得ることが可能となる。つまり、1つの動線データでは得られない利用者の行動解析が可能となる。図9は4×4のゾーンからなる比較的簡易な例であるが、ゾーンを細かくすればするほど、同一の利用者が滞在したと考えられるゾーンをより精細に網羅することができる。
【0054】
図11は、一利用者に対して割り当てられたゾーンを示す図である。2以上の動線データに基づいて特定されるすべての滞在ゾーンを、同一の利用者に対応付ける場合、図11に示すように2値化すると利便性が高くなる。図11は、図9に示した動線データFD1,FD2が網羅する滞在ゾーンと、網羅しないゾーンとを異なる表示態様で表した図である。図11に示す例では、動線データFD1が網羅する滞在ゾーンがゾーンZ11,Z13,Z21,Z23,Z42~Z44であり、動線データFD2が網羅する滞在ゾーンがゾーンZ12,Z14,Z22,Z24,Z31~Z34,Z41である。
このような2値化した情報を例えば店舗端末4に表示させることで動線を表示するよりも利用者の行動の視認性が増す。また、2値化を施すことで利用者の滞在ゾーンを基にしたデジタル処理が可能となるため、滞在ゾーンによる利用者の行動分析がしやすくなるという利点がある。
【0055】
[後処理の第2例]
図2に例示したように、動線データは、無線タグ2の位置のデータと、時刻のデータとが対応付けられたデータであるが、すべての時刻に対して無線タグ2の位置が取得できるとは限らない。例えば、無線タグ2のスリープ動作や電波の状況等により、受信機3が一時的に無線タグ2からのビーコン信号を受信できない(ビーコン信号をロストした)場合も発生する。このような場合、サーバ5は、無線タグ2の位置情報を取得することができないため、利用者の行動を精度高く分析することができなくなる。そのような場合も、上述したように、図6に示す個々の利用者(例えばグループIDで特定される利用者)と2以上の動線データが対応付けられた場合(例えばタグID「xxx01」「xxx65」)には、2以上の動線データのうち位置情報を取得できなかった期間の位置情報(例えばタグID「xxx01」の動線データ(第1の動線情報の一例)のうち、例えば図5の滞在ゾーンZ12に割り当てられた動線の一部)を、他の動線データ(例えばタグID「xxx65」の動線データのうち、例えば図5の滞在ゾーンZ12に割り当てられた動線)によって補間(つまり、グループIDで特定される利用者の図5の滞在ゾーンZ12の動線データを特定)することができる。これにより、利用者に対応付けられた無線タグ2の動線データの一部が欠けている場合でも、同一の利用者の動線データとして対応付けた他の動線データを、利用者の動線データとして特定することができるため、店舗内における利用者の行動をより精度高く分析することが可能となる。
すなわち、サーバ5の制御部51は、2以上の動線データが同一の利用者の動線データであると解析され、かつ2以上の動線の動線データのうち第1の動線データにおいて無線タグ2の位置情報が含まれていない期間が存在する場合、第1の動線データの期間に対応する無線タグ2の位置情報を、2以上の動線の動線データのうち第1の動線データ以外の動線データの期間に対応する無線タグ2の位置情報により補間する補間部として機能してもよい。
【0056】
[後処理の第3例]
動線解析処理を実行することで、動線データセットに含まれる複数の動線データを取得した期間内に店舗を利用した利用者の数を把握することができる。サーバ5の制御部51は、複数の無線タグ2の動線データが同一の利用者の動線データであると解析された場合に、複数の無線タグ2の動線データを1利用者の動線データとしてカウントすることにより、取得された複数の無線タグ2の動線データから店舗フロアに滞在した利用者数を特定する利用者数特定部として機能する。具体的には、利用者数特定部は、グループデータを基にグループIDの数を特定することで利用者数を特定する。これにより、所定期間、店舗を利用した利用者の数を特定することが可能となる。
【0057】
以上、情報処理装置、情報処理方法、および、プログラムの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、店舗端末4とサーバ5の間のデータ授受がネットワークNW経由で行われる場合について説明したが、その限りではない。店舗端末4とサーバ5の間のデータ授受は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード、HDD装置、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を経由して行うこともできる。受信機3とサーバ5は、ネットワークNWを介して通信する場合に限られず、有線又は無線により1対1で通信を行ってもよい。
【0059】
上述した実施形態において、サーバ5の機能を実現するために複数のサーバ装置に分散させて処理を実行させてもよいし、サーバ5のストレージ52に記憶されているデータを、サーバ5の制御部51からアクセス可能な外部の複数のストレージ装置に分散して管理してもよい。サーバ5と店舗端末4の間では適宜、機能を分散させてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…利用者行動分析システム
2…無線タグ
21…制御部
22…通信部
3…受信機
31…電波受信部
32…入射角測定部
33…通信部
4…店舗端末
41…制御部
42…表示部
43…通信部
5…サーバ
51…制御部
511…動線取得部
512…第1データ取得部
513…第2データ取得部
514…第3データ取得部
515…動線解析部
52…ストレージ
53…通信部
BK…かご
NW…ネットワーク
CT…カート
RZ…レジゾーン
SH…商品棚
Z11~Z44…ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11