(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111084
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/12 20060101AFI20230803BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20230803BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20230803BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230803BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230803BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E04C2/12 E
B27M3/00 N
B32B21/08
B32B27/00 E
B32B7/12
B32B37/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012734
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 凌佑
【テーマコード(参考)】
2B250
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2B250AA01
2B250BA02
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2B250FA33
2E162CC08
2E162EA18
4F100AK01C
4F100AK01D
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4F100JD04E
4F100JL10
4F100JL10D
4F100JL11
4F100JL11E
(57)【要約】
【課題】木質ボードの表面にラミネートフィルムを貼り付けたとしても、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる建材の製造方法を提供する。
【解決手段】木質ボード21の表面に、接着剤を介して、第1の熱可塑性樹脂からなる印刷用の下地シート22Aを貼り付けて、木質ボード21の表面に下地層22を形成する。下地層22に、紫外線硬化型の樹脂インクを付着させることにより、所定の印刷模様24Aを付与する。印刷模様24Aが付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層25を介して、第2の熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルム26を、第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様が付された下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷模様が付された建材の製造方法であって、
前記建材の基材となる木質ボードの表面に、接着剤を介して、第1の熱可塑性樹脂からなる印刷用の下地シートを貼り付けて、前記木質ボードの表面に下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層に、紫外線硬化型の樹脂インクを付着させることにより、所定の印刷模様を付与する印刷工程と、
前記印刷模様が付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層を介して、第2の熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルムを、前記第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、前記印刷模様が付された前記下地層に対して熱圧しながら、前記印刷模様が付された前記下地層に前記ラミネートフィルムを貼り付けるラミネート加工工程と、を含むことを特徴とする建材の製造方法。
【請求項2】
前記ラミネート加工工程の前に、前記木質ボードの裏面に、防湿シートを貼り付けることを特徴とする請求項1に記載の建材の製造方法。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂とは、同種の樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の建材の製造方法。
【請求項4】
前記印刷工程において、前記樹脂インクにより複数の凸条が一方向に沿って形成されるように前記印刷模様を付与し、
前記ラミネート加工工程で、前記印刷模様が付与された前記凸条が延在する方向に沿って、前記下地層の一端側から前記下地層の他端側に向かって、前記ラミネートフィルムを熱圧しながら、前記ラミネートフィルムを貼り付けることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の建材の製造方法。
【請求項5】
前記ラミネート加工工程において、前記ラミネートフィルムに形成された前記粘着層の厚さが、前記印刷模様からなる印刷層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、たとえば、特許文献1には、以下に示すような建材の製造方法が開示されている。この製造方法では、まず、木質ボードの表面の一部が露出するように、紫外線により硬化した第1樹脂からなるインク層を形成する。次に、インク層が形成された木質ボードの表面を覆うように、第1樹脂とは異なる第2樹脂を主剤とした可視光線を透過する表面保護層を、熱圧成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す建材の製造方法を利用して、建材の基材となる木質ボードの表面のうち印刷模様が付された表面に、ラミネートフィルムを貼り付けようとすると、ラミネートフィルムと木質ボードとの間に、空気が噛み込むおそれがある。この空気の噛み込みに起因して、建材の表面に、シルバリング(白化現象)が発生し、建材の美観が損なわれることがある。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、木質ボードの表面にラミネートフィルムを貼り付けたとしても、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる建材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る建材の製造方法は、印刷模様が付された建材の製造方法であって、前記建材の基材となる木質ボードの表面に、接着剤を介して、第1の熱可塑性樹脂からなる印刷用の下地シートを貼り付けて、前記木質ボードの表面に下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層に、紫外線硬化型の樹脂インクを付着させることにより、所定の印刷模様を付与する印刷工程と、前記印刷模様が付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層を介して、第2の熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルムを、前記第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、前記印刷模様が付された前記下地層に対して熱圧しながら、前記印刷模様が付された前記下地層に前記ラミネートフィルムを貼り付けるラミネート加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ラミネート加工工程において、第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様が付された下地層に対してラミネートフィルムを熱圧する。これより、ラミネートフィルムに形成された表面状態(シボ、平滑面などの状態)を保持しながら、ラミネートフィルムの可撓性を高めた状態で、木質ボードの表面にラミネート加工を行うことができる。このような結果、ラミネート加工時に、下地層(または印刷層)と、ラミネートフィルムとの間に、空気が噛み込むことを抑えることができ、建材の表面のシルバリングを抑えることができる。
【0008】
さらに、本発明では、下地層形成工程において、第1の熱可塑性樹脂からなる下地シートが貼り付けられるため、熱圧ロール等によって熱せられたラミネートフィルムからの熱が、下地層により、木質ボードの表面に伝達され難い。さらに、木質ボードに含有する空気が、ラミネートフィルム側に向かう移動を、下地シート(下地層)により遮断することができるので、木質ボードの表面に間接的にラミネートフィルムを貼り付けて、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる。
【0009】
ここで、木質ボードの裏面、すなわち、木質ボードのうち、下地シートが形成される表面の、反対側の面は、木質ボード表面が露出してもよいが、より好ましい態様としては、前記ラミネート加工工程の前に、前記木質ボードの裏面に、防湿シートを貼り付ける。
【0010】
上述した発明において、ラミネート加工工程の際には、印刷模様が付された下地層に対して熱圧しながら、印刷模様が付された下地層にラミネートフィルムを貼り付けるので、木質ボードに含まれる水分が蒸発し、木質ボードから抜けやすく、これにより、木質ボードに反りが発生するおそれがある。しかしながら、この態様によれば、ラミネート加工工程において、木質ボードが加熱されたとしても、防湿シートにより、木質ボードの裏面側から木質ボードの水分は抜けず、木質ボードの含水率は、保持され易い。このような結果、木質ボードの反りなどを抑えることができる。
【0011】
ここで、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とは、異種の樹脂でもよいが、より好ましい態様としては、前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂とは、同種の樹脂からなる。
【0012】
下地シート(下地層)とラミネートフィルムとは、どちらも同種の樹脂からなるため、ラミネート加工時の熱により、下地シートとラミネートフィルムとがともに同程度延びる。これにより、ラミネート加工時に熱膨張差に起因して、これらの間に空気が噛み込むことを抑えることができる。このようにして、印刷模様が付された下地層にラミネートフィルムを貼り付けたとしても、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる。
【0013】
より好ましい態様としては、前記印刷工程において、前記樹脂インクにより複数の凸条が一方向に沿って形成されるように前記印刷模様を付与し、前記ラミネート加工工程で、前記印刷模様が付与された前記凸条が延在する方向に沿って、前記下地層の一端側から前記下地層の他端側に向かって、前記ラミネートフィルムを熱圧しながら、前記ラミネートフィルムを貼り付ける。
【0014】
この態様によれば、ラミネート加工工程において、ラミネートフィルムを介して凸条同士の間に粘着剤を押し込まれ、下地層の一端側から下地層の他端側に向かって、ラミネートフィルムを熱圧することで、凸条同士の間に滞留した空気を凸条に沿って、ラミネートフィルムと下地層の間から外部に逃がすことができる。このため、空気の噛み込みを抑えつつ、印刷模様を覆うようにラミネートフィルムを貼り付けることができる。
【0015】
より好ましい態様としては、前記ラミネート加工工程において、前記ラミネートフィルムに形成された前記粘着層の厚さが、前記印刷層の厚さよりも厚い。
【0016】
この態様によれば、印刷層の厚さに比べて、ラミネート加工前の粘着層の厚さを厚くすることにより、粘着層に印刷層を埋設することができ、ラミネートフィルムと印刷層との間に空気が噛み込むことを抑えることができる。さらに、熱圧後にラミネートフィルムの温度が低下しても、粘着層がラミネートフィルムに均一に形成されているため、粘着層によるラミネートフィルムの収縮を吸収することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、木質ボードの表面にラミネートフィルムを貼り付けたとしても、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る製造方法で製造された建材の模式的斜視図であり、(b)は、裏面側から視た斜視図であり、(c)は、(a)の建材の要部断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る建材の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図3】
図2に示す、下地層形成工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、下地層形成工程後の木質ボードの断面図である。
【
図4】
図2に示す、印刷工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、印刷工程後の木質ボードの断面図である。
【
図5】
図2に示す、ラミネート加工工程を説明するための斜視図であり、(a)は、ラミネート加工時の木質ボードの模式的斜視図であり、(b)は、(a)の要部拡大斜視図である。
【
図6】(a)は、ラミネート加工工程前の状態を説明するための断面図であり、(b)は、ラミネート加工工程後の状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係る製造方法で製造された建材の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る製造方法で製造された建材の模式的斜視図であり、
図1(b)は、裏面側から視た斜視図であり、
図1(c)は、
図1(a)の建材の要部断面図である。なお、
図1(c)等では、便宜上、ラミネートフィルム26の厚さの方が、印刷層24の厚さおよび粘着層25の厚さよりも薄く描かれているが、これらの厚さに比べて、ラミネートフィルム26の厚さの方が厚い。
【0020】
1.建材10について
図1(a)~(c)に示すように、建材10は、印刷模様24Aが付与されており、建材10の本体となる木質ボード21を備えている。木質ボード21は、後述するように、たとえば、木質繊維板などからなる。木質ボード21の一方の表面には、下地層22が形成されており、その他方の表面には、防湿シート23が貼着されている。下地層22は、後述する第1の熱可塑性樹脂からなる。
【0021】
下地層22は、接着剤を介して木質ボード21に形成された層であり、
図1(c)に示すように、接着剤29の一部が、木質ボード21の表層21aに含浸されていてもよい。防湿シート23は、防水性が確保されているものであれば、樹脂製の防湿シート、または一般的に知られた防水紙など特に限定されるものではない。接着剤29は、塗布時には、流動性を有するが熱および乾燥により、硬化する。
【0022】
下地層22の表面には、紫外線により硬化した樹脂により、印刷模様24Aが付与されている。具体的には、印刷模様24Aは、上述した紫外線硬化型樹脂からなる印刷層24により形成されている。
図1(c)に示すように、印刷層24は、インクジェット印刷により、樹脂インクを吹き付けて形成されたものである。印刷層24は、下地層22の表面の全体を覆うように、紫外線により硬化した樹脂粒子24aが堆積された層であってもよく、キャラクタ等の印刷模様を付与することにより下地層22の一部を覆った層であってもよい。本実施形態では、木目状の印刷模様24Aが付与されており、一方向に沿って(木目模様に沿って)、樹脂粒子24aにより、後述する複数の凸条24bが形成されている(たとえば、
図5(b)参照)。凸条24bは、たとえば、木材の質感を出すために、印刷層24の厚みが部分的に厚くなった部分であってもよく、後述する粘着層25のアンカ効果を期待して、印刷層24の厚みが部分的に厚くなった部分であってもよい。
【0023】
印刷層24が形成された下地層22には、粘着剤からなる粘着層25を介して、ラミネートフィルム26が貼り付けられている。具体的には、印刷層24が下地層22の一部を覆っている場合、印刷層24および下地層22の表面に、粘着層25を介してラミネートフィルム26が貼り付けられる。一方、印刷層24が下地層22の全体を覆っている場合には、印刷層24の表面に、粘着層25を介してラミネートフィルム26が貼り付けられる。ラミネートフィルム26は後述する第2の熱可塑性樹脂からなり、ラミネートフィルム26および粘着層25は、可視光線が透過可能な樹脂材料からなる。
【0024】
本実施形態では、ラミネートフィルム26は、下地層22に対して、硬質であることが好ましい。ここで、「硬質」とは、その表面における硬さ(ショア硬さまたはビッカース硬さ)が硬いことをいう。より好ましくは、ラミネートフィルム26を構成する第2の熱可塑性樹脂のヤング率(縦弾性係数)は、下地層22を構成する第1の熱可塑性樹脂のヤング率(縦弾性係数)よりも、大きい。これにより、建材10の表面の凹みまたは傷の発生等を防止することができるとともに、軟質である下地層22と粘着層25とを、建材10の表面から作用する衝撃に対するクッション材として作用させることができる。
【0025】
2.建材10の製造方法について
以下に、
図1等で説明した建材10の製造方法について、
図2~
図6を参照しながら、説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る建材10の製造方法を説明するためのフロー図である。
図3は、
図2に示す、下地層形成工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、下地層形成工程後の木質ボードの断面図である。
【0026】
2-1.ボード準備工程S1について
まず、本実施形態では、
図3(a)に示すように、後述する粘着剤または接着剤を介して、防湿シート23が貼着された木質ボード21を準備する。木質ボード21が、建材10の基材として作用するのであれば、その厚さは特に限定されないが、たとえば、1.0mm~30mmであることが好ましく、より好ましくは、2.5mm~5.5mm程度である。
【0027】
ここで、木質ボード21としては、パーティクルボード(PB)、木質繊維板(MDF・ハードボードなど)、インシュレーションボード、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、合板、または無垢材などの木質系の板材を挙げることができ、これらの板材のいくつかを複合した板材であってもよい。さらに、この木質ボード21の表面に、突板または挽板などが貼着されていてもよい。特に、木質繊維板は、多孔質であり、木質繊維に対する水分の吸収または蒸発が生じ易いので、以下の製造方法において、有効である。
【0028】
防湿シート23としては、屋根の下葺き材などで使用されるルーフィング材、一般的に知られた防水紙または防湿紙、またはポリオレフィン系樹脂などの樹脂シートなどを挙げることができる。防湿シート23は、防湿シート23の厚さ方向に通過しようとする湿気を遮断する、または、通過する湿気の量を低減することができるものであれば、特に、その材料の構成は、限定されるものではない。
【0029】
ここで、後述するラミネート加工工程S4の前に、木質ボード21の裏面に、防湿シート23を貼り付けるのであれば、たとえば、後述する下地層形成工程S2の開始から、ラミネート加工工程S4を開始するまでの間に、木質ボード21の裏面に防湿シート23を貼り付けてもよい。
【0030】
2-2.下地層形成工程S2について
ボード準備工程S1で準備した木質ボード21に対して、下地層形成工程S2を行う。具体的には、
図3(a)および
図3(b)に示すように、建材10の基材となる木質ボード21の表面に、接着剤29を介して、第1の熱可塑性樹脂からなる印刷用の下地シート22Aを貼り付けて、木質ボード21の表面に下地層22を形成する。
【0031】
接着剤29としては、たとえば、尿素・メラミン樹脂系接着剤、または、変性酢酸ビニル接着剤などのエチレン酢酸ビニル共縮合樹脂系接着剤などの水性接着剤;一成分型のポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤などの湿気により化学反応し硬化する機能を有した接着剤;ポリアミド系接着剤、EVA系接着剤などのホットメルト系接着剤;その他にもユリア樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、イソシアネート樹脂接着剤等を挙げることができる。この他にも、接着材料となる樹脂に、炭化水素系の有機溶剤で溶解した接着剤であってもよい。
【0032】
このような接着剤29は、木質ボード21の表層21aにその一部が含浸される。これにより、木質ボード21に含有する水分が、下地層22側に移動することを確実に防止することができる。したがって、木質ボード21の表面に接着剤29を塗布した後、その一部の接着剤29を木質ボード21の表層21aに含浸させた後、下地シート22Aを木質ボード21の表面に貼り付けてもよい。
【0033】
下地シート22Aは、紫外線硬化型の樹脂インクを付着させることができ、その後の工程において印刷模様24Aを付すことができるものであれば、色および材質は特に限定されるものではない。下地シート22Aは、たとえば、白色の染料または顔料などの着色剤を含有した熱可塑性樹脂からなるシートであってもよく、茶色に着色された熱可塑性樹脂からなるシートであってもよい。下地シート22Aの厚さは、特に限定されるものではなく、木質ボード21の厚さよりも薄く、たとえば、0.05~1.0mm程度であることが好ましい。
【0034】
下地シート22A(下地層22)を構成する第1の熱可塑性樹脂としては、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリビニルアルコールなど)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂等を挙げることができる。
【0035】
2-3.印刷工程S3について
次に、下地シート22Aに対して行う印刷工程S3について、
図4を参照しながら、説明する。
図4は、
図2に示す、印刷工程を説明するための要部図であり、
図4(a)は、その斜視図であり、
図4(b)は、印刷工程S3後の木質ボードの断面図である。
【0036】
印刷工程S3では、下地層22に、紫外線硬化型の樹脂インクを付着させることにより、所定の印刷模様24Aを付与する。本実施形態では、印刷工程S3において、樹脂インクにより複数の凸条24bが一方向に沿って形成された印刷模様24Aを付与する。本実施形態では、インクジェット印刷により、下地層22の表面から露出するように、印刷模様24Aからなる印刷層24を形成する。印刷模様24Aとしては、以下の示す木目模様の他に、石の表面の模様、石膏ボードの表面の模様、布地の表面の模様、または、市松模様などの幾何学模様、ばかりでなく、部分的に、キャラクタ、文字、ロゴなどを印刷した印刷模様であってもよく、これらを複合した印刷模様であってもよい。
【0037】
本実施形態では、印刷模様24Aとして、木目模様の印刷層24を形成する。このような木目模様の印刷層24を形成する際に、木目の模様のうち、木材の導管の模様に沿って、印刷層24を含む表面に筋状の凸部(すなわち凸条24b)を形成すると、木目模様の質感を得ることができる。ここで、印刷模様24Aを形成する印刷層24に、複数の凸条24bを配向するように形成する場合、その部分に対して樹脂粒子24aをより多く堆積させればよい。このような印刷は、以下のようにして実施される。
【0038】
具体的には、印刷層24の木目模様は、柾目などの木材の表面を画像として撮影し、撮影した画像に応じた模様(木材の表面模様)を、印刷することで得ることができる。木材の木目模様の印刷はインクジェットプリンタを用いて行われる。本実施形態では、インクジェットプリンタの樹脂インクは、反応性オリゴマーまたは反応性モノマーに光重合開始剤が添加された紫外線硬化型樹脂と、着色剤とを少なくとも含む。たとえばイエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの4色の着色剤を、紫外線硬化型樹脂に個別に含有した4種の樹脂インクを準備し、これらの樹脂インクを用いて、下地層22の表面に印刷層24を形成することで木目模様を印刷する。
【0039】
図4(a)に示すように、インクジェットプリンタ40は、ヘッド41と照射装置42とを備えており、木質ボード21を搬送方向Lに搬送する搬送装置(図示せず)をさらに備えている。
【0040】
本実施形態では、ヘッド41は、一般的な印刷に用いられる樹脂インクを収容し、上述した画像に基づいて印刷すべき木目模様に合わせて各樹脂インク(樹脂粒子)を個別に噴射する。照射装置42は、下地層22に付着した樹脂粒子を硬化させる紫外線を照射する。ヘッド41と照射装置42とは、搬送方向Lと直交する方向Sに往復動する。
【0041】
これにより、搬送された木質ボード21の下地層22に対して、所定の印刷模様24Aを印刷し、印刷模様24Aを形成する紫外線硬化型樹脂を、硬化させることができる。なお、本実施形態では、ヘッド41と照射装置42とを個別に設けたが、たとえば、これらを一体的に構成してもよい。
【0042】
2-4.ラミネート加工工程S4について
次に、ラミネート加工工程S4について、
図5および
図6を参照しながら、説明する。
図5は、
図2に示す、ラミネート加工工程S4を説明するための斜視図であり、
図5(a)は、ラミネート加工時の木質ボードの模式的斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の要部斜視図である。
図6(a)は、ラミネート加工工程前の状態を説明するための断面図であり、
図6(b)は、ラミネート加工工程後の状態を説明するための断面図である。
【0043】
ラミネート加工工程S4では、印刷模様24Aが付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層25を介して、印刷模様24Aが付された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。
【0044】
ラミネートフィルム26は、第2の熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、可視光線が透過可能なフィルムである。ラミネート加工時には、第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様24Aが付された下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。たとえば、ラミネートフィルム26の第2の熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニルである場合には、ポリ塩化ビニルの軟化点は、65℃~85℃程度であるため、ラミネートフィルム26の熱圧時の温度は、これによりも低い40℃程度である。
【0045】
このようにして、ラミネート加工工程S4において、第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様24Aが付された下地層22に対してラミネートフィルム26を熱圧する。したがって、ラミネートフィルム26に形成された表面状態(シボ、平滑面などの状態)を保持しながら、ラミネートフィルム26の可撓性を高めた状態で、ラミネートフィルム26を貼り付けることができる。このような結果、ラミネート加工時に、下地層22(または印刷層24)と、ラミネートフィルム26との間に、空気が噛み込むことを抑えることができ、建材10の表面のシルバリングを抑えることができる。
【0046】
ここで、ラミネート加工工程S4の際には、印刷模様24Aが付された下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付された下地層22にラミネートフィルムを貼り付ける。したがって、木質ボード21に含まれる水分が蒸発し、木質ボード21から抜けやすく、これより、木質ボードに反りが発生するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、ボード準備工程S1において、防湿シート23を予め設けた木質ボード21を準備したので、ラミネート加工工程S4において、木質ボード21が加熱されたとしても、防湿シート23により、木質ボード21の裏面側から木質ボード21の水分は抜けず、木質ボード21の含水率は、保持され易い。このような結果、木質ボード21の反りなどを抑えることができる。
【0047】
本実施形態では、ラミネート加工工程S4で、印刷模様24Aが付与された凸条24bが延在する方向に沿って、下地層22の一端22a側から下地層22の他端22b側に向かって、熱圧ローラ(加熱されたローラ)30で押圧しながら転動させる。このようにして、熱圧ローラ30で、ラミネートフィルム26を熱圧しながら、ラミネートフィルム26を貼り付けることができる。
【0048】
本実施形態では、
図5(b)の矢印方向に、凸条24bに沿って空気Aを逃がしながら、下地層22の一端22a側から下地層22の他端22b側に向かって、ラミネートフィルム26を熱圧することができる。この結果、空気の噛み込みを抑えつつ、ラミネートフィルム26を下地層22に貼り付けることができる。特に、凸条24bは、樹脂粒子24aが堆積したポーラスな部分であるため、凸条24bの長手方向に沿って熱圧することで、その方向に沿って効率良く、空気を抜くことができる。
【0049】
ここで、ラミネートフィルム26を構成する第2の熱可塑性樹脂としては、第1の熱可塑性樹脂で例示した材料と同様の材料を挙げることができる。ここで、下地層22(下地シート22A)を構成する第1の熱可塑性樹脂と、ラミネートフィルム26を構成する第2の熱可塑性樹脂とは、同種の樹脂からなる。たとえば、第1の熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニルである場合には、第2の熱可塑性樹脂も、ポリ塩化ビニルである。
【0050】
粘着層25を構成する粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの粘着剤を挙げることができる。粘着層25を構成する粘着剤は、接着剤29とは異なり、硬化するものではなく粘弾性を有し、接着剤29に比べて、変形し易い材料である。
【0051】
ここで、ラミネートフィルム26の厚さは、特に限定されないが、たとえば、30~350μmの範囲にあり(たとえば、厚さ100μm)、さらに、粘着層25の厚さは、印刷層24の厚さよりも厚いことが好ましい。たとえば、印刷層24の厚さは、10~30μmであり、粘着層25の厚さは、35μm以上であり、好ましくは、100μm以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態では、
図6(a)および
図6(b)に示すように、印刷層24の厚さT1に対して、ラミネート加工前の粘着層25の厚さT2を厚くすることにより、ラミネート加工後の粘着層25に印刷層24を埋設することができる。これにより、ラミネートフィルム26と印刷層24との間に空気が噛み込むことを抑えることができる。
【0053】
これに加えて、熱圧後にラミネートフィルム26の温度が低下しても、粘着層25が印刷層24の凸条24bに分断されることなくラミネートフィルム26に均一に形成されているため、粘着層25によって、ラミネートフィルム26の収縮を吸収することができる。
【0054】
本実施形態によれば、下地層形成工程S2において、第1の熱可塑性樹脂からなる下地シート22Aが貼り付けられるため、熱圧ローラ30からの熱は、下地層22により、木質ボード21の表面に伝達され難い。また、木質ボード21に含有する空気が、ラミネートフィルム26に向かう移動を、下地層22により遮断することができる。
【0055】
さらに、下地層22とラミネートフィルム26とは、どちらも熱可塑性樹脂からなるので、ラミネート加工時の熱により、下地シート22Aとラミネートフィルム26とがともに線膨張により延びるため、ラミネート加工時にこれらの間に空気が噛み込み難い。
【0056】
このようにして、木質ボード21の表面に間接的にラミネートフィルム26を貼り付けて、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる。
【0057】
特に、下地層22とラミネートフィルム26との樹脂を、同種の樹脂にすることにより、ラミネート加工時の熱により、下地シート22Aとラミネートフィルム26とがともに同程度延びる。これにより、線膨張差によりラミネート加工時にこれらの間に空気が噛み込むようなことを抑えることができ、下地層22の表面にラミネートフィルム26を貼り付けたとしても、空気の噛み込みに起因したシルバリングを抑えることができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【0059】
たとえば、本実施形態では、印刷層24に、凸条24bを形成したが、例えば、下地層22の表面に、樹脂粒子24aを均一に堆積させることにより、印刷層24を形成してもよい。このような場合であっても、印刷層24の表面には、凹部および凸部が形成されるため、印刷層24の厚さT1よりも、粘着層25の厚さT2を厚くすることにより、空気の噛み込みを抑えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10:建材、21:木質ボード、21a:表層、22:下地層、22A:下地シート、23:防湿シート、24:印刷層、24A:印刷模様、24a:樹脂粒子、24b:凸条、25:粘着層、26:ラミネートフィルム、29:接着剤