(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111088
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012738
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郎 鵬飛
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA14
5E021FB07
5E021FC25
5E021FC31
5E021HB04
5E021HB05
(57)【要約】
【課題】レバーを良好に回動させることができるレバー式コネクタを提供する。
【解決手段】レバー式コネクタ1は、第1ハウジング10と、第1ハウジング10に取り付けられ、初期位置と嵌合完了位置との間で回動可能なレバー30と、レバー30を初期位置から嵌合完了位置に回動させることによって第1ハウジング10に嵌合される第2ハウジング20と、を備える。さらに、レバー式コネクタ1は、第2ハウジング20に設けられた補助力付与部23Aを備えている。補助力付与部23Aは、レバー30の嵌合方向への回動過程のうち少なくとも嵌合完了位置に至る前において、レバー30の回動方向と直交する向きにレバー30を弾性変形させる補助力蓄積部23Bと、補助力蓄積部23Bによってレバー30に蓄積された弾性力Fを、レバー30が初期位置から嵌合完了位置に向かう補助力F1に変換してレバー30に付与する変換部23Cと、を有している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに取り付けられ、初期位置と嵌合完了位置との間で回動可能なレバーと、
前記レバーを前記初期位置から前記嵌合完了位置に回動させることによって前記第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、
を備えたレバー式コネクタであって、
さらに、前記第1ハウジング又は前記第2ハウジングのいずれかに設けられた補助力付与部を備え、
前記補助力付与部は、
前記レバーの嵌合方向への回動過程のうち少なくとも前記嵌合完了位置に至る前において、前記レバーの回動方向と直交する向きに前記レバーを弾性変形させる補助力蓄積部と、
前記補助力蓄積部によって前記レバーに蓄積された弾性力を、前記レバーが前記初期位置から前記嵌合完了位置に向かう補助力に変換して前記レバーに付与する変換部と、を有しているレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記レバーの嵌合方向への回動過程において、前記第1ハウジング側と前記第2ハウジング側との間で摩擦抵抗が生じ始めたときの前記レバーの位置を、嵌合開始位置と設定したときに、
前記レバーが前記初期位置から前記嵌合完了位置へ回動する過程で前記嵌合開始位置に到達したときに、前記変換部が前記レバーへの前記補助力の付与を開始する請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記補助力蓄積部には、前記初期位置から前記嵌合完了位置に向かうにつれて、前記レバーの弾性変形の度合いを増加させる向きに傾斜する第1傾斜面が形成され、
前記変換部には、前記初期位置から前記嵌合完了位置に向かうにつれて、前記レバーの弾性変形の度合いを減少させる向きに傾斜する第2傾斜面が形成されている請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記レバーは、
前記第1ハウジングに設けられた軸部に基端部が係合して前記軸部の中心軸から放射方向に延び、前記中心軸周りに回動可能に設けられたアーム部と、
前記アーム部の先端部に設けられ、前記レバーを操作するための操作部と、
を有しており、
前記補助力蓄積部は、前記アーム部を前記回動方向に直交する向き、且つ前記中心軸方向に弾性変形させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【請求項5】
前記補助力付与部は、前記レバーを前記中心軸方向から見て、前記中心軸よりも前記操作部寄りに配置されている請求項4に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レバー部材を回動させることによって、第1コネクタと、第2コネクタとを嵌合させるレバー式コネクタが開示されている。第1コネクタと第2コネクタの嵌合過程では、両コネクタの端子同士が嵌合を開始した後に、さらにレバー部材を回動させると、両コネクタが正規の嵌合状態となる。両コネクタの端子同士が嵌合すると、摩擦抵抗が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成において、両コネクタの端子の数が多くなった場合、端子間の摩擦抵抗が大きくなるため、レバー部材を回動させる際に要する力が大きくなってしまい、レバー部材を回動させ難くなる懸念がある。
【0005】
本開示のレバー式コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、レバーを良好に回動させることができるレバー式コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレバー式コネクタは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに取り付けられ、初期位置と嵌合完了位置との間で回動可能なレバーと、
前記レバーを前記初期位置から前記嵌合完了位置に回動させることによって前記第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、
を備えたレバー式コネクタであって、
さらに、前記第1ハウジング又は前記第2ハウジングのいずれかに設けられた補助力付与部を備え、
前記補助力付与部は、
前記レバーの嵌合方向への回動過程のうち少なくとも前記嵌合完了位置に至る前において、前記レバーの回動方向と直交する向きに前記レバーを弾性変形させる補助力蓄積部と、
前記補助力蓄積部によって前記レバーに蓄積された弾性力を、前記レバーが前記初期位置から前記嵌合完了位置に向かう補助力に変換して前記レバーに付与する変換部と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レバーを良好に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1において第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合する前の状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1ハウジングと第2ハウジングを浅く嵌合した状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合過程を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合した状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、レバーの操作部側から電線カバーを見た側面図であって、アーム部の離隔部が第1傾斜面に接触した状態を示す。
【
図6】
図6は、レバーの操作部側から電線カバーを見た側面図であって、アーム部の離隔部が第2傾斜面に接触した状態を示す。
【
図7】
図7は、タブが雌端子金具の弾性接触片に接触した状態、及びタブが雌端子金具に挿入され弾性接触片を押しのけた状態を示す側断面図である。
【
図8】
図8は、レバーの操作部側から電線カバーを見た側面図であって、アーム部の離隔部が第2傾斜面に接触した状態を示す。
【
図9】
図9は、補助力付与部の変換部にアーム部の離隔部が接触した状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態の第1ハウジング、及びレバーを示す側面図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態の電線カバーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のレバー式コネクタは、
(1)第1ハウジングと、第1ハウジングに取り付けられ、初期位置と嵌合完了位置との間で回動可能なレバーと、レバーを初期位置から嵌合完了位置に回動させることによって第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、を備える。さらに、本開示のレバー式コネクタは、第1ハウジング又は第2ハウジングのいずれかに設けられた補助力付与部を備えている。補助力付与部は、補助力蓄積部と、変換部と、を有している。補助力蓄積部は、レバーの嵌合方向への回動過程のうち少なくとも嵌合完了位置に至る前において、レバーの回動方向と直交する向きにレバーを弾性変形させる。変換部は、補助力蓄積部によってレバーに蓄積された弾性力を、レバーが初期位置から嵌合完了位置に向かう補助力に変換してレバーに付与する。この構成によれば、作業者がレバーを嵌合完了位置に向けて回動させる際、レバーが蓄積した弾性力を、変換部によって嵌合完了位置に向かう補助力に変換し、この補助力をレバーに付与することによって、作業者がレバーを操作する操作力を低減することができる。
【0010】
(2)レバーの嵌合方向への回動過程において、第1ハウジング側と第2ハウジング側との間で摩擦抵抗が生じ始めたときのレバーの位置を、嵌合開始位置と設定したときに、レバーが初期位置から嵌合完了位置へ回動する過程で嵌合開始位置に到達したときに、変換部がレバーへの補助力の付与を開始することが好ましい。この構成によれば、作業者がレバーを操作する操作力が増加するタイミングに合わせて、作業者がレバーを操作する操作力を低減することができる。
【0011】
(3)補助力蓄積部には、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、レバーの弾性変形の度合いを増加させる向きに傾斜する第1傾斜面が形成されている。変換部には、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、レバーの弾性変形の度合いを減少させる向きに傾斜する第2傾斜面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、レバーにおける弾性変形と復元動作を滑らかに行うことができる。
【0012】
(4)レバーは、第1ハウジングに設けられた軸部に基端部が係合して軸部の中心軸から放射方向に延び、中心軸周りに回動可能に設けられたアーム部と、アーム部の先端部に設けられ、レバーを操作するための操作部と、を有している。補助力蓄積部は、アーム部を回動方向に直交する向き、且つ中心軸方向に弾性変形させることが好ましい。この構成によれば、アーム部から軸部に対して、軸部をせん断するような荷重がかかることを避けつつ、レバーに弾性力を蓄積させることができる。
【0013】
(5)補助力付与部は、レバーを中心軸方向から見て、中心軸よりも操作部寄りに配置されていることが好ましい。この構成によれば、レバーに作用する補助力のモーメントをより大きくすることができ、作業者がレバーを操作する操作力をより低減することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
以下、本開示を具体化した実施形態1を
図1から
図9を参照して説明する。実施形態1のレバー式コネクタ1は、
図1から
図4に示すように、第1ハウジング10と、第2ハウジング20と、レバー30と、一対の補助力付与部23Aと、を備えている。
図1から
図4において、補助力付与部23Aは、一対のうちの一方のみが示されている。
【0015】
[レバー式コネクタの構成について]
第1ハウジング10は、端子収容部11から正面側(
図1における上側)へ角筒状に突出するフード部12を有している。第1ハウジング10には、複数の雄端子金具13が取り付けられ、フード部12は、雄端子金具13の先端部に設けられたタブ14を包囲している。第1ハウジング10の背面(
図1における下端)からは、複数の雄端子金具13に接続された電線16が導出されている。
図1に示すように、フード部12を構成する左右両側壁部の外面には、左右一対の軸部18が、同軸状に突出形成されている。
図1から
図4において、軸部18は、一対のうちの一方のみが示されている。
【0016】
第2ハウジング20は、ブロック状をなしたハウジング本体部20Aと、電線カバー23とを有している。ハウジング本体部20A内には、複数の雌端子金具15が収容されている。ハウジング本体部20Aの左右両外側面には、一対のカムフォロア21が突出して形成されている。カムフォロア21は、レバー30のカム溝34に係合されるようになっている。
図1から
図4において、カムフォロア21は、一対のうちの一方のみが示されている。複数の雌端子金具15に接続された電線22は、
図1に示すように、ハウジング本体部20Aの背面(
図1における上端)から束になって導出されている。
【0017】
電線カバー23は、ハウジング本体部20Aの背面を覆うようにハウジング本体部20Aに組み付けられている。ハウジング本体部20Aから導出された電線22の束は、電線カバー23の内部でほぼ直角に屈曲し、ハウジング本体部20Aの背面とほぼ平行な方向へ向けて電線カバー23外へ導出されている。
【0018】
レバー30は、合成樹脂製である。レバー30は、左右一対の板状をなすアーム部31と、操作部32と、有している。
図1から
図4において、アーム部31は、一対のうちの一方のみが示されている。各アーム部31の基端部には、フード部12に設けられた軸部18に嵌合する軸受け孔33が開口して形成されている。各アーム部31の軸部18から離れた部分(以下、離隔部31Bともいう)は、軸部18に軸受け孔33が嵌合した状態において、軸部18の中心軸18Aから放射方向に長く延びた形態をなしている。レバー30は、軸受け孔33を軸部18に嵌合することによって、第1ハウジング10に対し、中心軸18A周りに初期位置(
図1参照)と嵌合完了位置(
図4を参照)との間で回動し得るように取り付けられている。初期位置と嵌合完了位置との間で回動する間、アーム部31は、第1ハウジング10の左右両外側面に沿った位置(つまり、接近して対向した状態)に保たれる。アーム部31の基端部の内面(第1ハウジング10の外側面に対向する面)には、アーム部31の軸受け孔33(レバー30の回動中心)を包囲するように延びるカム溝34が形成されている。
【0019】
操作部32は、レバー30を操作する際に作業者が把持する部分である。操作部32は、一対のアーム部31の離隔部31Bの先端部同士を橋渡し状に連結した形態とされている。一対のアーム部31と、操作部32と、は、一体に形成されている。
【0020】
一対の補助力付与部23Aは、電線カバー23の左右両外側面に一つずつ設けられている(
図5、6、8参照)。これら補助力付与部23Aは、第1ハウジング10と第2ハウジング20とが正規の嵌合状態の際に、軸部18の中心軸18A周りに同心状になるように延びて配置され(
図4参照)、電線カバー23の左右両外側面から外側に突出している。第1ハウジング10と、第2ハウジング20と、が正規の嵌合状態の際に軸部18に嵌合したレバー30を中心軸18A方向から見たとき、補助力付与部23Aは、中心軸18Aよりも操作部32寄りに配置されている(
図4参照)。各補助力付与部23Aは、補助力蓄積部23Bと、変換部23Cと、を有している。
【0021】
補助力蓄積部23Bは、第1ハウジング10を中心軸18A方向に見た側面視において、アーム部31の初期位置と嵌合完了位置との間の回動経路における初期位置寄りに設けられている(
図2参照)。補助力蓄積部23Bには、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、左右方向外側(すなわち、中心軸18A方向の外側)への突出寸法が徐々に大きくなるように傾斜した第1傾斜面23Dが形成されている(
図5、6、8参照)。
【0022】
変換部23Cは、アーム部31の初期位置と嵌合完了位置との間の回動経路における嵌合完了位置寄りに設けられている(
図4参照)。変換部23Cは、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、左右方向の外側への突出寸法が徐々に小さくなるように傾斜した第2傾斜面23Eが形成されている(
図5、6、8参照)。中心軸18Aに対し直交する方向であって、ハウジング本体部20Aの背面側から補助力付与部23Aを見たとき、補助力付与部23Aは、レバー30が回動する回動方向において、両端が低く、回動方向の中央部に向かうにつれて高く形成された山型をなしている(
図5、6、8参照)。補助力付与部23Aの山型の頂部は、弧状に形成され、第1傾斜面23Dと第2傾斜面23Eとが滑らかに繋がった形態とされている(
図5、6、8参照)。
【0023】
初期位置から嵌合完了位置に向かう方向に対して第1傾斜面23Dがなす角度θ1(以下、単に第1傾斜面23Dがなす角度θ1ともいう)は、初期位置から嵌合完了位置に向かう方向に対して第2傾斜面23Eがなす角度θ(以下、単に第2傾斜面23Eがなす角度θともいう)よりも小さい(
図9参照)。
【0024】
[第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合動作について]
第1ハウジング10と第2ハウジング20を嵌合する際には、まず、
図1に示すように、レバー30を初期位置に保持する。次に、この状態で、
図2に示すように、第1ハウジング10のフード部12内に第2ハウジング20を浅く嵌合し、カムフォロア21をカム溝34の入口に進入させる。そして、この状態から、レバー30を嵌合完了位置に向けて回動させる。レバー30の回動に伴い、カム溝34とカムフォロア21の係合によるカム作用(倍力作用)によって、第1ハウジング10と第2ハウジング20が引き寄せられて嵌合が進む。
【0025】
すると、
図5に示すように、各アーム部31の離隔部31Bの内面(第1ハウジング10の外側面に対向する面)が、各補助力付与部23Aの補助力蓄積部23Bの第1傾斜面23Dに接触する。さらに、レバー30を嵌合完了位置に向けて回動させると、各アーム部31の離隔部31Bは、各補助力蓄積部23Bの第1傾斜面23Dに沿って進む(
図3参照)。そして、各アーム部31の離隔部31Bは、第1傾斜面23Dによって左右方向の外側に押し広げられて弾性変形する(
図6参照)。このとき、各アーム部31の離隔部31Bは、各補助力蓄積部23Bによってレバー30が回動する回動方向と直交する向き、且つ中心軸18A方向へ膨らむように弾性変形する(
図6参照)。こうして、レバー30の各アーム部31は、各補助力蓄積部23Bによって弾性力を蓄積する。このように、第1傾斜面23Dは、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、レバー30のアーム部31の弾性変形の度合いを増加させる向きに傾斜している。第1傾斜面23Dがなす角度θ1をより小さくすることによって、初期位置から嵌合完了位置に向けて作業者がレバー30を操作する操作力をより小さくすることができる。
【0026】
さらにレバー30を嵌合完了位置に向けて回動させると、タブ14の先端が雌端子金具15の弾性接触片15Aに接触する(
図7参照)。このときのレバー30の位置を、レバー30の嵌合方向への回動過程において、第1ハウジング10側のタブ14と、第2ハウジング20側の雌端子金具15との間で摩擦抵抗が生じ始めたときの嵌合開始位置と設定する(
図6参照)。そして、レバー30を嵌合開始位置から嵌合完了位置に向けて(すなわち、嵌合方向に)回動させると、第1ハウジング10と第2ハウジング20との嵌合が進み、弾性接触片15Aは、タブ14の先端部に形成された傾斜面14Aに押しのけられるように弾性変形する(
図7参照)。こうして、タブ14と弾性接触片15Aとの間に生じる摩擦力が徐々に大きくなり、これによって、レバー30を嵌合完了位置に向けて回動させるために必要な操作力も徐々に大きくなる。
【0027】
レバー30が嵌合開始位置(すなわち、
図6に示す位置)に到達したとき(タブ14の先端が雌端子金具15の弾性接触片15Aに接触したとき)に、各アーム部31の離隔部31Bの内面は、第1傾斜面23Dを通過して各変換部23Cの第2傾斜面23Eへの接触を開始する。そして、さらにレバー30を嵌合完了位置に向けて回動させると、タブ14と弾性接触片15Aとの間に生じる摩擦力が徐々に大きくなる。これとともに、弾性変形した各アーム部31の離隔部31Bは、第2傾斜面23Eに沿って弾性変形の度合いが徐々に減少する。このように、第2傾斜面23Eは、初期位置から嵌合位置に向かうにつれて、レバー30の弾性変形の度合いを減少させる向きに傾斜している。このとき、変換部23Cの第2傾斜面23Eは、アーム部31が蓄積した弾性力を、レバー30が初期位置から嵌合完了位置に向かう補助力に変換する。こうして、変換部23Cは、レバー30が初期位置から嵌合完了位置へ回動する過程で嵌合開始位置に到達したときに、レバー30への補助力の付与を開始する。第2傾斜面23Eがなす角度θをより大きくすることによって、初期位置から嵌合完了位置に向けて作業者がレバー30を操作する操作力をより小さくすることができる。
【0028】
具体的には、
図9に示すように、第2傾斜面23Eがなす角度がθであり、アーム部31の離隔部31Bが蓄積した弾性力をFとする。そして、アーム部31の離隔部31Bの内面と第2傾斜面23Eとの間の動摩擦係数をμとすると、レバー30が初期位置から嵌合完了位置に向かう方向の補助力F1は、数1に示す数式で表される。
【数1】
【0029】
こうして変換部23Cによって弾性力Fから変換された補助力F1をレバー30に付与することによって、作業者がレバー30に付与する操作力が大きくなり過ぎないようにして作業者にかかる負担を軽減することができる。
【0030】
そして、
図4に示すように、レバー30が嵌合完了位置に到達すると、第1ハウジング10と第2ハウジング20が正規の嵌合状態となる。このとき、各アーム部31の離隔部31Bは、弾性変形した状態から弾性変形しない状態になる。つまり、補助力蓄積部23Bは、レバー30の嵌合方向への回動過程のうち少なくとも嵌合完了位置に至る前において、レバー30の回動方向と直交する向きにレバー30のアーム部31を弾性変形させる。こうして、第2ハウジング20は、レバー30を初期位置から嵌合完了位置に回動させることによって第1ハウジング10に嵌合される。
【0031】
補助力付与部23Aは、レバー30が初期位置から嵌合完了位置へ回動する過程において、嵌合開始位置に至る前に、補助力蓄積部23Bによってレバー30のアーム部31を弾性変形させて弾性力Fを蓄積させる。そして、補助力付与部23Aは、レバー30が初期位置から嵌合完了位置へ回動する過程において、嵌合開始位置に至った後に、変換部23Cによってレバー30のアーム部31に蓄積した弾性力Fを補助力F1に変換する。
【0032】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
レバー式コネクタ1は、第1ハウジング10と、第1ハウジング10に取り付けられ、初期位置と嵌合完了位置との間で回動可能なレバー30と、レバー30を初期位置から嵌合完了位置に回動させることによって第1ハウジング10に嵌合される第2ハウジング20と、を備える。さらに、レバー式コネクタ1は、第2ハウジング20に設けられた補助力付与部23Aを備えている。補助力付与部23Aは、補助力蓄積部23Bと、変換部23Cと、を有している。補助力蓄積部23Bは、レバー30の嵌合方向への回動過程のうち少なくとも嵌合完了位置に至る前において、レバー30の回動方向と直交する向きにレバー30を弾性変形させる。変換部23Cは、補助力蓄積部23Bによってレバー30に蓄積された弾性力Fを、レバー30が初期位置から嵌合完了位置に向かう補助力F1に変換してレバー30に付与する。この構成によれば、作業者がレバー30を嵌合完了位置に向けて回動させる際、レバー30が蓄積した弾性力Fを、変換部23Cによって嵌合完了位置に向かう補助力F1に変換する。そして、この補助力F1をレバー30に付与することによって、作業者がレバー30を操作する操作力を低減することができる。
【0033】
レバー30の嵌合方向への回動過程において、第1ハウジング10側と第2ハウジング20側との間で摩擦抵抗が生じ始めたときのレバー30の位置を、嵌合開始位置と設定したときに、レバー30が初期位置から嵌合完了位置へ回動する過程で嵌合開始位置に到達したときに、変換部23Cがレバー30への補助力F1の付与を開始する。この構成によれば、作業者がレバー30を操作する操作力が増加するタイミングに合わせて、作業者がレバー30を操作する操作力を低減することができる。
【0034】
補助力蓄積部23Bには、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、レバー30の弾性変形の度合いを増加させる向きに傾斜する第1傾斜面23Dが形成されている。変換部23Cには、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、レバー30の弾性変形の度合いを減少させる向きに傾斜する第2傾斜面23Eが形成されている。この構成によれば、レバー30における弾性変形と復元動作を滑らかに行うことができる。
【0035】
レバー30は、アーム部31と、操作部32と、を有している。アーム部31は、第1ハウジング10に設けられた軸部18に基端部が係合して軸部18の中心軸18Aから放射方向に延び、中心軸18A周りに回動可能に設けられている。操作部32は、アーム部31の先端部に設けられ、レバー30を操作するためのものである。補助力蓄積部23Bは、アーム部31を回動方向に直交する向き、且つ中心軸18A方向に弾性変形させる。この構成によれば、アーム部31から軸部18に対して、軸部18をせん断するような荷重がかかることを避けつつ、レバー30に弾性力を蓄積させることができる。
【0036】
補助力付与部23Aは、レバー30を中心軸18A方向から見て、中心軸18Aよりも操作部32寄りに配置されている。この構成によれば、レバー30に作用する補助力F1のモーメントをより大きくすることができ、作業者がレバー30を操作する操作力をより低減することができる。
【0037】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0038】
上記実施形態とは異なり、補助力付与部は、電線カバーの左右一方側面にのみ設けた形態でもよい。また、
図10に示すように、補助力付与部123Aを第1ハウジング10に設けてもよい。この場合、アーム部131に補助力付与部123Aに向けて延びる形態の離隔部131Bを設ける必要がある。
【0039】
上記実施形態とは異なり、
図11に示すように、補助力付与部223Aを電線カバー223の天面に設けてもよい。この場合、レバー230の操作部232は、補助力付与部223Aによってレバー230が回動する回動方向と直交する向き、且つ中心軸18Aに直交する向きに弾性変形する。
【0040】
上記実施形態とは異なり、アーム部に板バネを取り付け、この板バネを補助力付与部によって弾性変形させる構成としてもよい。
【0041】
上記実施形態とは異なり、軸部の中心軸周りに同心状になるように設ける必要はない。例えば、補助力付与部を、初期位置から嵌合完了位置に向かうにつれて、軸部の中心軸から徐々に離れるように(すなわち渦巻状に)設けてもよい。
【0042】
上記実施形態とは異なり、変換部が、レバーへの補助力の付与を開始するタイミングを、タブの先端が雌端子金具の弾性接触片に接触するよりも前にしてもよく、後にしてもよい。
【0043】
上記実施形態とは異なり、補助力付与部の山型の頂部を、中心軸に直交する方向に平坦に形成してもよい。
【0044】
異なる形態の端子が配置されたレバー式コネクタに補助力付与部を設けてもよい。この場合、最も早くタブの先端が雌端子金具の弾性接触片に接触する位置に嵌合開始位置を設定してもよく、最も遅くタブの先端が雌端子金具の弾性接触片に接触する位置に嵌合開始位置を設定してもよい。つまり、嵌合開始位置は、仕様に応じて設定すればよい。
【符号の説明】
【0045】
1…レバー式コネクタ
10…第1ハウジング
11…端子収容部
12…フード部
13…雄端子金具
14…タブ
14A…傾斜面
15…雌端子金具
15A…弾性接触片
18…軸部
18A…中心軸
20…第2ハウジング
20A…ハウジング本体部
21…カムフォロア
22…電線
23,223…電線カバー
23A,123A,223A…補助力付与部
23B…補助力蓄積部
23C…変換部
23D…第1傾斜面
23E…第2傾斜面
30,230…レバー
31,131…アーム部
31B,131B…離隔部
32,232…操作部
33…軸受け孔
34…カム溝
F…弾性力
F1…補助力